(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を詳説することを目的とし、本発明を限定することを意図していない。
【0015】
本発明の易開封性延伸フィルムは、
結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む基材層と、
前記基材層の上に設けられ、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を含むシール層と
を含む。
【0016】
本発明の易開封性ラミネート材は、
本発明の易開封性延伸フィルムと、
前記易開封性延伸フィルムの前記基材層側に設けられた基材フィルムと
を含む。
【0017】
好ましい態様において、本発明の易開封性ラミネート材は、容器用蓋材として使用される。具体的には、本発明の易開封性ラミネート材は、シール層を介して容器本体の開口部上端とヒートシールされ、密封容器を形成することができる。かかる密封容器の開封時にシール層と基材層との間で層間剥離が起こり、これにより易開封性を実現することができる。
【0018】
<易開封性延伸フィルム>
図1に、本発明の易開封性延伸フィルム1の断面模式図を示す。
図1に示すように、本発明の易開封性延伸フィルム1は、基材層3と、基材層3の上に設けられたシール層5とを有する。本発明の易開封性延伸フィルム1は、基材層の上にシール層を積層して得られた積層フィルムを延伸することによって製造される。
【0019】
<基材層>
本発明において、基材層は、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む。好ましくは、基材層は、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分として含む。ここで「主成分として含む」とは、基材層が、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を、基材層の総質量に対して、60〜100質量%、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは99〜100質量%の量で含むことを表す。また、「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、20〜300℃(昇温速度:10℃/min.)の範囲で結晶の融解に伴うピーク(融点)が見られることをいう。このような結晶性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂は、延伸により配向結晶化することができる。
【0020】
結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、非変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂であってもよいし、変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂であってもよい。変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、たとえば、10モル%以下の変性率を有する変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、典型的には、10モル%以下のイソフタル酸変性率を有するイソフタル酸変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0021】
変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、たとえば10モル%以下、好ましくは1〜10モル%の変性率を有する。変性成分がジカルボン酸成分である場合、「変性率」とは、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる全ジカルボン酸成分のうち変性成分が占めるモル百分率を指す。同様に、変性成分がジオール成分である場合、「変性率」とは、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる全ジオール成分のうち変性成分が占めるモル百分率を指す。
【0022】
好ましい態様において、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、非変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。別の好ましい態様において、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、10モル%以下、一般的には1〜10モル%のイソフタル酸変性率を有するイソフタル酸変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0023】
イソフタル酸などの変性成分は、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点を低下させるため、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂が変性成分を含むことは、製膜性の点で好ましい。ただし、変性率が高いと、結晶性を低下させ、低吸着性に悪影響を及ぼすため、10モル%を超えないことが好ましい。また、このような低変性率を有する変性結晶性ポリエチレンテレフタレー樹脂は、ペットボトルを始め、汎用的に大量に使用されるため、経済性にも優れる。
【0024】
一方、非変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸などの変性成分を含む変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂と比べて、結晶性が高く、低吸着性に優れるという利点を有する。
【0025】
以上より、10モル%以下の変性率を有する変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂および非変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂の何れも、高い結晶性を有するため、延伸により配向結晶化することができ、低吸着性に優れている。
【0026】
本発明の易開封性延伸フィルムでは、延伸により、基材層に含まれる結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂が配向結晶化し、基材層と、非晶性ポリエステル樹脂からなる隣接するシール層との層間強度を低下させる。これにより、基材層とシール層との間で層間剥離が起こり、易開封性が発現する。
【0027】
基材層は、延伸により結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂が配向結晶化し、基材層とシール層との層間強度が低下し、これにより易開封性が発現可能である限り、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、易開封性延伸フィルムの低吸着性、製膜性の点からポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0028】
また、基材層は、必要に応じて、一般に使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機系微粒子、有機系微粒子、着色剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
<シール層>
本発明において、シール層は、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を含む。好ましくは、シール層は、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を主成分として含む。ここで「主成分として含む」とは、シール層が、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を、シール層の総質量に対して、50〜100質量%、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは65〜90質量%、さらに好ましくは80〜90質量%の量で含むことを表す。また、「非晶性」とは、製膜工程において積層フィルムを延伸した後においても示差走査熱量測定(DSC)において、20〜300℃(昇温速度:10℃/min.)の範囲で結晶の融解に伴うピーク(融点)が見られないことをいう。このような非晶性を有するポリエステル樹脂は、延伸による配向結晶化が生じないため、延伸後もヒートシール性を有する。
【0030】
シール層に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、105℃〜120℃のガラス転移温度を有していれば、任意の非晶性ポリエステル樹脂を使用することができ、例えば、スピログリコール、イソソルビド、またはTMCD(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール)などのジオール成分で変性した非晶性ポリエステル樹脂などを使用することができる。
【0031】
105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、たとえば、スピログリコール、イソソルビド、またはTMCDなどのジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえば1,4−CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)などを含んでいてもよい。あるいは、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、たとえば、スピログリコール、イソソルビド、またはTMCDなどのジオール成分で変性した非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえばエチレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0032】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が105℃未満であると、基材層とシール層の間での層間剥離が発現できないため、好ましくない。また、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が120℃を超えると、延伸に必要な温度が高温化し、製膜性の点で好ましくない。加えて、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が120℃を超えると、ヒートシール時の温度を高くする必要があり、ヒートシートされる対象(たとえば、ポリエステル系樹脂容器)が変形する恐れがあるため、好ましくない。
【0033】
より具体的には、非晶性ポリエステル樹脂は、任意のジカルボン酸成分および任意のジオール成分を用いて調製した、105〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を用いることができる。ここで、樹脂のガラス転移温度は、例えば、スピログリコール、イソソルビド、TMCD(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール)などの脂環式ジオール成分を変性成分として用いることによって向上させることができる。すなわち、非晶性ポリエステル樹脂は、当該樹脂が105〜120℃のガラス転移温度を有することができるような量で上記変性成分を含むことができ、例えばスピログリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂であれば、35〜50モル%の変性率でスピログリコールを含むことができる。ここで「変性率」とは、非晶性ポリエステル樹脂に含まれる全ジオール成分のうち変性成分が占めるモル百分率を指す。このように105〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を調製し、それを使用することができる。
【0034】
あるいは、非晶性ポリエステル樹脂は、105〜120℃のガラス転移温度を有する市販の非晶性ポリエステル樹脂を使用してもよい。このような非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、商品名:「ALTESTER」(三菱ガス化学(株)製、スピログリコール変性ポリエステル樹脂)、商品名:「ECOZEN」(SK Chemical(株)製、イソソルビド変性ポリエステル樹脂)、および商品名:「TRITAN」(EASTMAN Chemical(株)製、TMCD変性ポリエステル樹脂)などを挙げることができる。
【0035】
好ましい態様において、シール層に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、105〜120℃のガラス転移温度を有する、スピログリコール変性非晶性ポリエステル樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリエステル樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリエステル樹脂である。より好ましい態様において、シール層に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、105〜120℃のガラス転移温度を有する、スピログリコール変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえば1,4−CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)などを含んでいてもよい。あるいは、より好ましい態様において、シール層に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、105〜120℃のガラス転移温度を有する、スピログリコール変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえばエチレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0036】
別の好ましい態様において、シール層に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、105℃〜115℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂である。より好ましい態様において、105℃〜115℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、スピログリコール変性非晶性ポリエステル樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリエステル樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリエステル樹脂である。更に好ましい態様において、105℃〜115℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、スピログリコール変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえば1,4−CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)などを含んでいてもよい。あるいは、更に好ましい態様において、105℃〜115℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、スピログリコール変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえばエチレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0037】
別の好ましい態様において、シール層に含まれる非晶性ポリエステル樹脂は、110℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂である。より好ましい態様において、110℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、スピログリコール変性非晶性ポリエステル樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリエステル樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリエステル樹脂である。更に好ましい態様において、110℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、スピログリコール変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえば1,4−CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)などを含んでいてもよい。あるいは、更に好ましい態様において、110℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂は、スピログリコール変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂、イソソルビド変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂、またはTMCD変性非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂である。ここで、上記ジオール成分で変性した非晶性ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂は、追加のジオール成分、たとえばエチレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0038】
シール層は、易開封性が発現可能である限り、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、低吸着性、製膜性の点からポリエステル系樹脂であることが好ましい。他の樹脂として、たとえば、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂(主成分)と相溶性が高く、主成分より低いガラス転移温度を有するポリエステル樹脂を使用することができ、これによりガラス転移温度を低下させ、延伸性と低温シール性を向上させることができる。
【0039】
シール層は、必要に応じて、一般に使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機系微粒子、有機系微粒子、着色剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0040】
<易開封性延伸フィルムの製造方法>
基材層を構成する結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、およびシール層を構成する非晶性ポリエステル樹脂は、一般的に行われているポリエステル樹脂の製造方法、例えば、直接エステル化法やエステル交換反応法等によって製造することができる。
【0041】
本発明の易開封性延伸フィルムは、公知の方法によって製造することができる。具体的には、本発明の易開封性延伸フィルムは、2層構造の積層フィルムを製造し、得られた積層フィルムを延伸することにより製造することができる。
【0042】
積層フィルムは、例えば、共押出法によって製造することができる。共押出法では、基材層を形成する樹脂とシール層を形成する樹脂をそれぞれ押出機で溶融し、マルチマニホールド方式を備えたTダイ金型内で合流させて押出し、速やかに冷却ロールにより冷却することによって積層フィルムを製造する。得られた積層フィルムは、基材層と、基材層と隣接して積層されたシール層とからなる。
【0043】
次いで、得られた積層フィルムを延伸して、本発明の易開封性延伸フィルムを製造することができる。延伸は一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。積層フィルムを延伸することにより、基材層の結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂は配向結晶化するため、基材層と、隣接するシール層との層間強度が低下し、層間剥離による易開封性が発現できる。また、延伸することにより低吸着性が向上する。
【0044】
<延伸方法及び延伸倍率>
本発明の易開封性延伸フィルムは、一軸延伸および二軸延伸の何れの方法によっても製造することができる。延伸は、110〜130℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0045】
本発明の易開封性延伸フィルムの製造工程において、基材層とシール層とからなる積層フィルムを一軸延伸する方法としては、ロール方式、テンター方式などの周知の方法を用いることができる。ロール間の周速差により延伸する方法が、装置としては安価であるため、ロール方式による縦一軸延伸とすることがより好ましい。ロール方式による縦一軸延伸は、110〜130℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0046】
また、基材層とシール層とからなる積層フィルムを二軸延伸する方法としては、逐次二軸延伸および同時二軸延伸の何れの方法も用いることができ、たとえば、ロール方式とテンター方式とを組み合わせた逐次二軸延伸の方法を用いることができる。逐次二軸延伸では先に縦方向(MD)に延伸した後に、次いで横方向(TD)に延伸してもよいし、先に横方向に延伸した後に、次いで縦方向に延伸してもよい。逐次二軸延伸も、110〜130℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0047】
積層フィルムを一軸延伸する際の延伸倍率は、2.0〜5.0倍の範囲であることが好ましい。積層フィルムを二軸延伸する際の延伸倍率は、主延伸方向に2.0〜5.0倍の範囲であり、主延伸方向と直交する方向に1.1〜5.0倍の範囲であることが好ましい。ここで主延伸方向とは、縦方向と横方向の延伸倍率でより高い方の延伸方向のことをいう。
【0048】
延伸倍率が大きい程、基材層の結晶性が高くなり、低吸着性が向上する。また、延伸倍率が大きい程、基材層とシール層の間の層間強度が低下し、開封が容易になる。延伸倍率が低すぎる場合(たとえば、一軸延伸の延伸倍率が2.0倍未満である場合)、基材層とシール層の間の層間強度が十分に低下せず、開封強度が高くなることに加えて、層間剥離が安定的に生じない可能性があるため、好ましくない。一方で、延伸倍率が高すぎる場合(たとえば、一軸延伸の延伸倍率が5.0倍を超える場合)、基材層とシール層の間の層間強度が低下し過ぎて、開封強度が低くなり、ポリエステル系樹脂容器の蓋材シーラントフィルムとして使用したときに密封性が不十分となる可能性があるため、好ましくない。
【0049】
<易開封性延伸フィルムの厚さ>
本発明の易開封性延伸フィルムにおいて、シール層の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。シール層の厚さが1μm未満である場合、安定なヒートシール強度を維持できない場合がある。一方、シール層の厚さが10μmを超えると、開封初期の剥離強度(初期開封強度)が大きくなるため、安定的に開封することが困難な場合がある。
【0050】
易開封性延伸フィルムの厚さは、10μm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。易開封性延伸フィルムの厚さが10μm未満である場合、延伸時に破断し易く、安定的に製膜することが困難である。一方で、易開封性延伸フィルムの厚さが50μmを超えると、経済性に劣ることに加えて、フィルムにコシがでて、ラミネート材を加工する際のハンドリング性が悪化する場合がある。
【0051】
<ラミネート材および蓋材>
本発明によれば、以上に述べた易開封性延伸フィルムを用いたラミネート材が提供される。
図2に、本発明のラミネート材2の断面模式図を示す。
図2に示すように、ラミネート材2は、基材フィルム7と、基材フィルム7の上に設けられた易開封性延伸フィルム1を有する。
図2において、易開封性延伸フィルム1は、基材層3と、基材層3の上に設けられたシール層5とを有する。
【0052】
基材フィルム7は、これらに限定されないが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどが好適に用いられる。
【0053】
基材フィルム7は、易開封性延伸フィルム1の基材層3と対向するように積層される。必要に応じて、基材フィルム7と基材層3との間にバリア層を設けてもよい。バリア層は、これらに限定されないが、アルミニウム等の金属蒸着フィルム、透明シリカ蒸着フィルム、アルミニウム箔等が好適に用いられる。
【0054】
易開封性延伸フィルム、基材フィルムおよびバリア層のそれぞれは、任意に接着剤を用いて接着することができる。接着剤は、樹脂フィルムの接着に用いることができる公知の接着剤を用いることができ、易開封性延伸フィルム、基材フィルム層、バリア層の成分によって適宜選択される。
【0055】
好ましい態様において、本発明のラミネート材は、容器用蓋材、易開封性パウチとして使用される。ラミネート材を容器用蓋材(以下、単に蓋材ともいう)として用いる場合には、容器本体の形状に対応させて適宜の形状を選択し、打ち抜き、切断等の加工をすることができる。たとえば、容器本体の形状が有底円筒状である場合、蓋材は、容器本体の開口部の形状に対応させて円形とすることができる。かかる円形の蓋材は、円形部の縁から外側に突出した摘み部を有していてもよい。また、ラミネート材を蓋材として用いる場合には、ラミネート材の基材フィルム側に印刷層または保護層を更に有していてもよい。
【0056】
蓋材は、開封強度(剥離強度ともいう)が、易開封となる目安である3〜15N/15mm巾の範囲であることが好ましい。より好ましくは、剥離強度は8〜13N/15mm巾の範囲である。剥離強度は、易開封性延伸フィルムの延伸倍率を調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0057】
容器本体は、任意の材料から構成され、たとえばポリエステル系樹脂から構成される。また、容器本体は、任意の形状を有し、たとえば有底円筒または有底角筒の形状を有する。
【0058】
容器本体に中身を収容し、その後、本発明のラミネート材のシール層を容器本体の開口部上端とヒートシールすることにより、容器を密封することができる。本発明のラミネート材を蓋材として含む蓋付き容器の一例を
図4および
図5に示す。
図4は蓋付き容器の密封状態を示し、
図5は、
図4に示される蓋付き容器の開封状態を示す。
【0059】
図4において、円形のラミネート材2は、有底円筒状の容器本体9の開口部を覆い、蓋材として機能する。ラミネート材2は、円形部の縁から外側に突出した摘み部2aを有する。ラミネート材2は、基材フィルム7/基材層3/シール層5からなる3層構造を有する。
図4に示されるとおり、容器本体9は、開口部にフランジ部9aを有し、ラミネート材2のシール層5がフランジ部9aとヒートシールされて、容器が密封される。
【0060】
図5に示されるとおり、容器の開封時に、ユーザーがラミネート材2の摘み部2aを摘んでラミネート材2を上方に引き上げると、まずシール層5のみが破断し、次にシール層5と基材層3との間で層間剥離が起こり、最後に再びシール層5のみが破断することにより、容器が開封される。
【0061】
以上述べたとおり、本発明によれば、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む基材層と、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を含むシール層とを含む易開封性延伸フィルムが提供される。本発明の易開封性延伸フィルムでは、延伸により、基材層の結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂が配向結晶化するため、基材層と、隣接するシール層との層間強度が低下する。その結果、基材層とシール層間の層間剥離による易開封性が発現できる。また、従来の易開封性フィルムでは、ポリエステル系樹脂からなるシール層と隣接する層に酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用するのに対し、本発明の易開封性延伸フィルムでは、ポリエステル系樹脂のみを使用して、層間剥離による易開封性を発現できるため、低吸着性に優れる。
【0062】
したがって、本発明の易開封性延伸フィルムは、易開封性により、容易に中身を取り出すことができるという効果と、低吸着性により、香気成分や薬効成分を吸着しにくいという効果を奏する。これらの効果のため、本発明の易開封性延伸フィルムを用いて製造されたラミネート材は、食品、化粧品、医薬品等を収容するための容器の蓋材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0063】
1.シーラントフィルムの作製
[実施例1]
基材層を構成する樹脂として、イソフタル酸変性率5モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製、ベルペット PIFG5)(以下、IPET5)を使用し、シール層を構成する樹脂として、スピログリコール変性率45モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱ガス化学(株)製、ALTESTER S4500、ガラス転移温度110℃)(以下、SPET45)を使用した。
【0064】
IPET5およびSPET45を、Tダイ金型を用いて、基材層の厚さおよびシール層の厚さがそれぞれ48μmおよび12μmとなるように、270℃の温度で共押出しし、速やかに冷却ロールで冷却し、2層の積層フィルムを作製した。
【0065】
次いで、積層フィルムを120℃に加熱し、ロール延伸法によってフィルムの総厚さが20μmとなるように一軸延伸(縦延伸)した。一軸延伸倍率は3.0倍とした。縦延伸後は、いわゆる横延伸は行わずに速やかに冷却ロールで冷却し、基材層側にコロナ処理を施してロール状に巻き取ることで製膜工程を完了した。これによりシーラントフィルムを得た。得られたシーラントフィルムの基材層の厚さおよびシール層の厚さは、それぞれ16μmおよび4μmであった。
【0066】
[比較例1]
基材層を構成する樹脂として、イソフタル酸変性率5モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(IPET5)を使用し、シール層を構成する樹脂として、スピログリコール変性率10モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱ガス化学(株)製、ALTESTER S1000、ガラス転移温度86℃)(以下、SPET10)を使用した以外は、実施例1と同様の条件でシーラントフィルムを得た。
【0067】
[比較例2]
基材層を構成する樹脂として、イソフタル酸変性率5モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(IPET5)を使用し、シール層を構成する樹脂として、スピログリコール変性率20モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱ガス化学(株)製、ALTESTER S2000、ガラス転移温度95℃)(以下、SPET20)を使用した以外は、実施例1と同様の条件でシーラントフィルムを得た。
【0068】
[比較例3]
基材層を構成する樹脂として、イソフタル酸変性率5モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(IPET5)を使用し、シール層を構成する樹脂として、スピログリコール変性率30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱ガス化学(株)製、ALTESTER S3000、ガラス転移温度100℃)(以下、SPET30)を使用した以外は、実施例1と同様の条件でシーラントフィルムを得た。
【0069】
[比較例4]
基材層を構成する樹脂として、ポリエチレン樹脂((株)プライムポリマー製、エボリューSP2320)(以下、PE)を使用し、基材層とシール層の間の中間層を構成する樹脂として、酸変性ポリエチレン樹脂(三井化学(株)製、アドマー SF725)(以下、M−PE)を使用し、シール層を構成する樹脂として、シクロヘキサンジメタノール変性率30モル%の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(SK Chemical(株)製、Skygreen S2008)(以下、PETG)55質量%とイソフタル変性率30モル%の共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(ウィンテックポリマー(株)製、ジュラネックス 600LP)(以下、IBT30)45質量%との混合物(以下、PETG/IBT30)を使用した。
【0070】
PE、M−PE、およびPETG/IBT30を、Tダイ金型を用いて、基材層、中間層、シール層の厚さがそれぞれ15μm、10μm、および5μmとなるように共押出しし、速やかに冷却ロールで冷却し、基材層側にコロナ処理を施してロール状に巻き取り、3層のシーラントフィルムを作製した。
【0071】
比較例4のシーラントフィルムは、背景技術の欄に記載した日本国特許第5182183号明細書に記載される易開封性積層フィルムに相当する。
【0072】
2.ラミネート材の作製
実施例1および比較例1〜4で作製した各シーラントフィルム用いてラミネート材を作製した。具体的には、まず、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステル(PET)フィルムと厚さ9μmのアルミニウム箔とを、2液硬化型のイソシアネート系接着剤を用いてドライラミネートして基材フィルムを作製した。次に、得られた基材フィルムと各シーラントフィルムとを、基材フィルムのアルミニウム箔側の面とシーラントフィルムの基材層側の面とが向かい合うように、2液硬化型のイソシアネート系接着剤を用いてドライラミネートしてラミネート材を作製した。
【0073】
3.評価方法
[剥離性の評価および剥離強度の測定]
厚さ300μmのA−PETシートを、作製したラミネート材のシール層と対面させて、A−PETシートとラミネート材とを180℃、1秒でヒートシールして放冷した。その後、得られた試験サンプルを15mm巾の短冊状に切り出し、試験サンプル片とした。
【0074】
図3に、剥離性の評価の仕方を模式的に示す。
図3に示すように、ラミネート材2とA−PETシート11とから構成される試験サンプル片を、引張試験機の上下に位置するつかみ部12に取り付けた。
図3において、ヒートシール部は5aとして示される。引張試験機にて、
図3に矢印で示される引張方向に試験サンプル片を引っ張って、ラミネート材2をA−PETシート11から剥離した。
【0075】
剥離性を以下の基準で評価するとともに、剥離強度を測定した。
【0076】
シーラントフィルムが破断することなく、ヒートシール部5aにおいてラミネート材2をA−PETシート11から剥離することができた場合には、剥離性の評価結果を○とした。一方、剥離開始時や剥離途中でシーラントフィルムが破断した場合は、剥離性の評価結果を×とした。シーラントフィルムが剥離中に破断することは、このシーラントフィルムが、蓋材シーラントフィルムとして使用できないことを表す。
【0077】
[吸着性の評価]
実施例1および比較例4で作製した各シーラントフィルムを、厚さ20μmのアルミニウム箔と、シーラントフィルムの基材層とアルミニウム箔とが対面するように、2液硬化型のイソシアネート系接着剤により貼り合わせた。得られたラミネートフィルムを5cm角に切り取り、得られたフィルム片を、L−メントール100mgを含有する容器に、フィルム片とメントールとが直接接触しないように入れて密封した。40℃の温度で2週間保管後、フィルム片に吸着したL−メントールの量(吸着量)を以下の式により求めた。
吸着量[g/m
2]={(保管後のフィルム片の質量[g])−(保管前のフィルム片の質量[g])}×400
【0078】
4.評価結果
剥離性の評価結果および剥離強度の測定結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1では、A−PETシートに対するラミネート材の剥離性が良好であり、ヒートシール部(剥離部)において、基材層とシール層の間で層間剥離が起こっていることが確認できた。比較例1〜3では、剥離中にシーラントフィルムが破断してしまった。
【0081】
これらの結果から、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む基材層と、ガラス転移温度が高い非晶性ポリエステル樹脂を含むシール層とを含むシーラントフィルムが、良好な剥離性を実現できることが分かる。
【0082】
実施例1のラミネート材を容器(たとえばポリエステル系樹脂容器)の蓋材として使用した場合、
図5に示されるように、容器の開封時に優れた易開封性を示す。具体的には、
図5に示されるとおり、実施例1のラミネート材のシール層5は、容器本体9とヒートシールにより完全接着しているため、容器の開封時にまずシール層5のみが破断し、次にシール層5と基材層3との間で層間剥離が起こり、最後に再びシール層5のみが破断することにより、容器が開封され中身を取り出すことができる。
【0083】
一方、比較例1〜3のラミネート材を容器(ポリエステル系樹脂容器)の蓋材として使用した場合の容器の開封状態を
図6に示す。
図6に示されるとおり、比較例1〜3のラミネート材の場合、容器の開封時にまず基材層3とシール層5が同時に破断するため、シーラントフィルム(符号3および5)が容器本体9の上に残って中身を取り出すことができない。
【0084】
次に、吸着性の評価結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例1のシーラントフィルムは、比較例4のシーラントフィルムよりもL−メントールの吸着量が少なかった。実施例1のシーラントフィルムは、ポリエステル樹脂のみから構成され、ポリオレフィン系樹脂を使用していないため、優れた低吸着性を示したと推測される。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む基材層と、
前記基材層の上に設けられ、105℃〜120℃のガラス転移温度を有する非晶性ポリエステル樹脂を含むシール層と
を含む易開封性延伸フィルム。
[2] 前記非晶性ポリエステル樹脂が、スピログリコール変性非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である[1]に記載の易開封性延伸フィルム。
[3] 前記結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂が、非変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である[1]または[2]に記載の易開封性延伸フィルム。
[4] 前記結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂が、10モル%以下のイソフタル酸変性率を有するイソフタル酸変性結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂である[1]または[2]に記載の易開封性延伸フィルム。
[5] 前記易開封性延伸フィルムが、一軸延伸フィルムである[1]〜[4]の何れか1に記載の易開封性延伸フィルム。
[6] 前記一軸延伸フィルムが、2〜5倍の延伸倍率で延伸されたフィルムである[5]に記載の易開封性延伸フィルム。
[7] 前記シール層が1〜10μmの厚みを有する[1]〜[6]の何れか1に記載の易開封性延伸フィルム。
[8] 前記易開封性延伸フィルムが10〜50μmの厚みを有する[1]〜[7]の何れか1に記載の易開封性延伸フィルム。
[9] [1]〜[8]の何れか1に記載の易開封性延伸フィルムと、
前記易開封性延伸フィルムの前記基材層側に設けられた基材フィルムと
を含む易開封性ラミネート材。
[10] 前記基材層と前記基材フィルムとの間にバリア層を更に含む[9]に記載の易開封性ラミネート材。
[11] 容器用蓋材である[9]または[10]に記載の易開封性ラミネート材。