(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光子計数型の放射線検出器のチャンネル方向の移動を放射線管とは独立して制御し、前記第1の特徴点のエネルギー値と前記第2の特徴点のエネルギー値とを求める際の前記リファレンス検出素子のチャンネル方向における位置と、校正対象の検出素子が検出する複数の信号から前記第1の特徴点及び前記第2の特徴点を特定する際の当該検出素子のチャンネル方向における位置とが一致するように制御する移動制御部を更に備える、請求項2又は4に記載の放射線診断装置。
前記移動制御部は、前記第1の特徴点のエネルギー値と前記第2の特徴点のエネルギー値とを求める際に、前記リファレンス検出素子を前記放射線管に対して対向する位置に位置付け、前記校正対象の検出素子が検出する複数の信号から前記第1の特徴点及び前記第2の特徴点を特定する際に、当該校正対象の検出素子を前記放射線管に対して対向する位置に位置付ける、請求項6に記載の放射線診断装置。
前記移動制御部は、前記第1の特徴点のエネルギー値と前記第2の特徴点のエネルギー値とを求める際に、前記光子計数型の放射線検出器の中心が前記放射線管と対向する状態において、前記校正対象の検出素子と前記放射線管との相対的な位置と一致する位置に、前記リファレンス検出素子を位置付け、前記校正対象の検出素子が検出する複数の信号から前記第1の特徴点及び前記第2の特徴点を特定する際に、前記光子計数型の放射線検出器の中心を前記放射線管と対向する位置に位置付ける、請求項6に記載の放射線診断装置。
光子計数型の放射線検出器が有する、放射線を検出して検出信号を出力する複数の検出素子の各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて、前記複数の信号が単調増加もしくは単調減少する期間の波高値から、前記複数の信号のうち第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定し、前記特徴点を用いて算出した補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正し、
校正された前記各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する処理を含み、
校正するステップは、放射線照射条件に対して事前に導出されたX線スペクトルを用いて、第1の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した、前記比率が第1の前記所定の値となる第1の特徴点のエネルギー値と、第2の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した、前記比率が第2の前記所定の値となる第2の特徴点のエネルギー値とを求め、前記第1の特徴点と前記第2の特徴点とを用いた直線回帰によって前記補正値を算出することを含む、方法。
光子計数型の放射線検出器が有する、放射線を検出して検出信号を出力する複数の検出素子の各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて、前記複数の信号が単調増加もしくは単調減少する期間の波高値から、前記複数の信号のうち第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定し、前記特徴点を用いて算出した補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正し、
校正された前記各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する処理を含み、
校正するステップは、前記光子計数型の放射線検出器が有する検出素子よりエネルギー分解能が高いリファレンス検出素子を用いて検出された複数の信号から、第1の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した、前記比率が第1の前記所定の値となる第1の特徴点のエネルギー値と、第2の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した、前記比率が第2の前記所定の値となる第2の特徴点のエネルギー値とを求め、前記第1の特徴点と前記第2の特徴点とを用いた直線回帰によって前記補正値を算出することを含む、方法。
光子計数型の放射線検出器が有する、放射線を検出して検出信号を出力する複数の検出素子の各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて、前記複数の信号のうち所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、前記フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値が同一となる波高値を特徴点として特定し、前記特徴点を用いて算出した補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正し、
校正された前記各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する処理を含み、
校正するステップは、放射線照射条件に対して事前に導出されたX線スペクトルを用いて、第1の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した第1の特徴点のエネルギー値と、第2の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した第2の特徴点のエネルギー値とを求め、前記第1の特徴点と前記第2の特徴点とを用いた直線回帰によって前記補正値を算出することを含む、方法。
光子計数型の放射線検出器が有する、放射線を検出して検出信号を出力する複数の検出素子の各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて、前記複数の信号のうち所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、前記フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値が同一となる波高値を特徴点として特定し、前記特徴点を用いて算出した補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正し、
校正された前記各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する処理を含み、
校正するステップは、前記光子計数型の放射線検出器が有する検出素子よりエネルギー分解能が高いリファレンス検出素子を用いて検出された複数の信号から、第1の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した第1の特徴点のエネルギー値と、第2の放射線照射条件の前記第1の信号と前記第2の信号とから特定した第2の特徴点のエネルギー値とを求め、前記第1の特徴点と前記第2の特徴点とを用いた直線回帰によって前記補正値を算出することを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係る放射線診断装置及び方法を説明する。
【0009】
以下の実施形態では、放射線診断装置の一例としてX線CT装置について説明する。ここで、実施形態で説明するX線CT装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な装置である。すなわち、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、従来の積分型(電流モード計測方式)の検出器ではなく、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することで、SN比の高いX線CT画像データを再構成可能な装置である。なお、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置は、架台10と、寝台20と、コンソール30とを有する。
【0011】
架台10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線に関するデータを収集する装置であり、高電圧発生回路11と、X線管12と、検出器13と、データ収集回路14と、回転フレーム15と、架台駆動回路16とを有する。また、架台10において、
図1に示すように、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を定義する。すなわち、X軸は水平方向を示し、Y軸は鉛直方向を示し、Z軸は架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向を示す。
図2は、第1の実施形態に係る架台10の正面図である。
【0012】
図2に示すように、回転フレーム15は、X線管12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動回路16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
【0013】
X線管12は、後述する高電圧発生回路11により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。
【0014】
高電圧発生回路11は、X線管12に高電圧を供給する機能を有する電気回路であり、X線管12は、高電圧発生回路11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。すなわち、高電圧発生回路11は、X線管12に供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。高電圧発生回路11は、システム制御回路38による制御のもと、スキャン制御回路33から制御を受ける。
【0015】
架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線管12と検出器13とを旋回させる機能を有する電気回路である。架台駆動回路16は、システム制御回路38による制御のもと、スキャン制御回路33から制御を受ける。
【0016】
検出器13は、光子計数型の検出器であり、被検体Pを透過したX線に由来する光を計数するための複数のX線検出素子(「センサ」或いは単に「検出素子」とも言う)を有する。一例を挙げれば、第1の実施形態に係る検出器13が有するX線検出素子は、シンチレータと光センサとにより構成される間接変換型の面検出器である。ここで、光センサは、例えばSiPM(Silicon photomultiplier)である。検出器13の各X線検出素子は、入射したX線光子に応じた電気信号(パルス)を出力する。なお、各X線検出素子が出力する電気信号のことを検出信号とも言う。すなわち、検出器13は、放射線を検出して検出信号を出力する検出素子を複数有する。この電気信号(パルス)の波高値は、X線光子のエネルギー値と相関性を有する。
図3は、第1の実施形態に係る検出器13の一例を説明するための図である。
【0017】
図3では、
図2に示す検出器13を拡大して示す。
図3では、検出器13をY軸側から見た場合を示す。
図3に示すように、検出器13には、X線検出素子が、面上に2次元配置されている。例えば、チャンネル方向(
図3中のX軸方向)に配列されたX線検出素子列が被検体Pの体軸方向(
図3に示すZ軸方向)に沿って複数列配列されている。
【0018】
図2に戻って、データ収集回路14は、検出器13の検出信号を用いた計数処理の結果である計数結果を収集する機能を有する電気回路である。データ収集回路14は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線光子)を計数し、当該計数した光子のエネルギーを弁別した結果を計数結果として収集する。そして、データ収集回路14は、計数結果を、コンソール30に送信する。なお、データ収集回路14のことを、DAS(Data Acquisition System)とも言う。
【0019】
寝台20は、被検体Pを載せる装置であり、天板22と、寝台駆動装置21とを有する。天板22は、被検体Pが載置される板であり、寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。なお、寝台駆動装置21は、天板22をX軸方向にも移動可能である。
【0020】
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。なお、以下の実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
【0021】
コンソール30は、操作者によるX線CT装置の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された計数結果を用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、
図2に示すように、入力装置31と、ディスプレイ32と、スキャン制御回路33と、前処理回路34と、投影データ記憶回路35と、画像再構成回路36と、画像記憶回路37と、システム制御回路38とを有する。
【0022】
入力装置31は、X線CT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御回路38に転送する。例えば、入力装置31は、操作者からX線CT画像データを再構成する際の再構成条件や、X線CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。また、例えば、入力装置31は、操作者からX線検出素子のキャリブレーションを実施する指示を受付ける。そして、入力装置31は、システム制御回路38を介して、スキャン制御回路33にX線CT画像データの再構成やキャリブレーションの実施を指示する。
【0023】
ディスプレイ32は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御回路38による制御のもと、X線CT画像データを操作者に表示したり、入力装置31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0024】
スキャン制御回路33は、後述するシステム制御回路38の制御のもと、高電圧発生回路11、検出器13、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10における計数結果の収集処理を制御する機能を有する電気回路である。
【0025】
また、第1の実施形態に係るスキャン制御回路33は、
図1に示すように、算出機能33aを実行する。なお、算出機能33aの詳細については、
図8及び
図9を用いて詳述する。ここで、例えば、
図1に示すスキャン制御回路33の構成要素である算出機能33aが実行する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でスキャン制御回路33内に記録されている。スキャン制御回路33は、例えば、プロセッサであり、プログラムを読み出し、実行することで読み出したプログラムに対応する機能を実現する。換言すると、プログラムを読み出した状態のスキャン制御回路33は、
図1のスキャン制御回路33内に示された算出機能33aを有することとなる。
【0026】
前処理回路34は、データ収集回路14から送信された計数結果に対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、エネルギー弁別域ごとの投影データを生成する機能を有する電気回路である。
【0027】
投影データ記憶回路35は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、前処理回路34により生成された投影データを記憶する。すなわち、投影データ記憶回路35は、X線CT画像データを再構成するための投影データを記憶する。
【0028】
画像再構成回路36は、検出器13の検出信号に基づいてCT画像を再構成する機能を有する電気回路である。すなわち、画像再構成回路36は、投影データ記憶回路35が記憶する投影データを、例えば、逆投影処理することで、X線CT画像データを再構成する。逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。なお、画像再構成回路36は、例えば、逐次近似法により、再構成処理を行なっても良い。また、画像再構成回路36は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行なうことで、画像データを生成する。画像再構成回路36は、再構成したX線CT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを画像記憶回路37に格納する。
【0029】
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、画像再構成回路36は、例えば、特定のエネルギー成分のX線CT画像データを再構成することができる。また、画像再構成回路36は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのX線CT画像データを再構成することができる。
【0030】
また、画像再構成回路36は、例えば、各エネルギー成分のX線CT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のX線CT画像データを重畳した画像データを生成することができる。また、画像再構成回路36は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。画像再構成回路36が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
【0031】
システム制御回路38は、架台10、寝台20及びコンソール30の動作を制御することによって、X線CT装置の全体制御を行う機能を有する電気回路である。具体的には、システム制御回路38は、スキャン制御回路33を制御することで、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、システム制御回路38は、前処理回路34や、画像再構成回路36を制御することで、コンソール30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、システム制御回路38は、画像記憶回路37が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。画像記憶回路37は、例えば、NAND型フラッシュメモリやHDDであり、各種画像データを記憶する。
【0032】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置は、フォトンカウンティング方式の検出器を用いてX線CT画像データを再構成する。
【0033】
フォトンカウンティングCTでは、光子の数を計数することで、X線の量を測定する。単位時間当たりの光子数が多いほど、強いX線となる。また、個々の光子は、異なるエネルギーを有するが、フォトンカウンティングCTでは、光子のエネルギー計測を行なうことで、X線のエネルギー成分の情報を得ることができる。すなわち、フォトンカウンティングCTでは、1種類の管電圧でX線を照射することで収集されたデータを複数のエネルギー成分に分けて画像化することができる。例えば、フォトンカウンティングCTでは、K吸収端の違いを利用した物質の同定が可能となる画像データを得ることができる。
【0034】
ところで、上述のような構成を有する光子計数型の検出器13を用いて光子をエネルギー別に正確に計数するためには、検出器13において測定される光子のエネルギー値のキャリブレーション処理が必要である。
図4から
図7は、従来技術を説明するための図である。
【0035】
図4では、既知の特定のエネルギーを有する単色のX線を照射可能なX線管を用いた従来技術に係るキャリブレーション方法を説明する。
図4上図は、X線管のX線スペクトルを示し、
図4下図は、X線検出素子が検出したX線のスペクトルを示す。ここで、例えば、
図4上図に示すようにX線CT装置に備えられるX線管12が、既知の特定のエネルギーを有する単色のX線を照射可能であれば、
図4下図に示すようにX線検出素子に入射するX線光子の検出信号のピークを検出することによって、光子の検出信号とエネルギー値との対応関係を求めることが可能である。
【0036】
しかしながら、X線CT装置に備えられるX線管12は、通常エネルギー分布を有する連続X線を発生する。このため、既知の特定のエネルギーを有する単色のX線を照射可能なX線管を用いたキャリブレーション方法を適用できない。
図5では、エネルギー分布を有する連続X線を照射するX線管を用いた従来技術に係るキャリブレーション方法を説明する。
図5上図は、X線管のX線スペクトルを示し、
図5下図は、X線検出素子AからX線検出素子Cそれぞれが検出したX線のスペクトルを左から順に示す。
図5上図に示すように、X線管12は、エネルギー分布を有する連続X線を照射する。そして、
図5下図に示すように各X線検出素子に入射するX線光子の検出信号のスペクトルは、広いエネルギー分布を有することになる。このように、連続X線を光子計数型のX線検出器に照射しても、検出器13のエネルギー分解能が不十分であれば、十分な精度で光子の検出信号のピークを検出することが困難となる。
【0037】
ここで、X線CT装置に備えられるX線管12が連続X線を発生する場合でも、X線の出力を高めればピークを算出できる可能性はある。
図6では、例えば、管電圧を同一にして管電流を異ならせたX線照射条件で連続X線を発生させた場合の3つのスペクトルを示す。
図6の例では、スペクトルA、スペクトルB、そしてスペクトルCの順で管電流を高くして連続X線を発生させた場合を示している。
図6に示すように、スペクトルCでは、スペクトルAやスペクトルBでは検出できないピークが検出可能である。なお、
図6の横軸はエネルギー値を示し、
図6の縦軸はX線の強度を示す。
【0038】
しかしながら、出力が高いピークを選択すると、パイルアップの発生頻度が高まる。
図7を用いて、X線の出力とパイルアップの発生頻度との関係について説明する。
図7の横軸はX線の線量を示し、
図7の縦軸は検出されたX線のカウント値を示す。
図7の破線で示すように、X線の線量と検出されるX線のカウント値とは、理論上比例する。すなわち、X線の線量の増加に比例してX線のカウント値も増加する。しかしながら実際には、
図7の実線で示すように、X線の線量が高くなると、X線の線量が増加しても、X線のカウント値は、X線の線量に比例して増加しない。すなわち、線量が高いとピークは強くなるがパイルアップの発生頻度が高くなり、線量が低いとピークは弱くなるがパイルアップの発生頻度が低くなる。
【0039】
また、パイルアップの発生頻度が高まると、キャリブレーションの精度が低下する。すなわち、キャリブレーションの際には、パイルアップが発生しない弱い線量でX線を照射することが適している。しかしながら、検出器13のエネルギー分解能が不十分であれば、十分な精度で光子の検出信号のピークを検出することが困難となり、キャリブレーションの精度が低下する。
【0040】
なお、核医学イメージング装置において、エネルギー値が既知である標準線源を各検出素子の上に配置するキャリブレーション方法が知られているが、この方法をX線CT装置の面検出器のキャリブレーションに適用する場合、長時間の作業になる。このようなことから、各X線検出素子のX線エネルギー感度のばらつきを校正するキャリブレーションを正確かつ簡便に実施することができないという課題があった。
【0041】
そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置は、キャリブレーションを正確かつ簡便に実施するため、光子計数型の放射線検出器が有する、放射線を検出して検出信号を出力する複数の検出素子の各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正する。例えば、第1の実施形態に係るX線CT装置は、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定し、特徴点を用いて補正値を算出する。そして、第1の実施形態に係るX線CT装置は、校正された各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する。このようなX線CT装置による補正値算出機能は、算出機能33aにより実現され、X線CT装置による各検出素子の検出信号を校正する機能は、データ収集回路14により実現される。以下では、
図8から
図10を用いて、第1の実施形態に係るデータ収集回路14及び算出機能33aについて詳細に説明する。
図8及び9は、第1の実施形態に係る算出機能33aの処理動作を説明するための図であり、
図10は、第1の実施形態に係るデータ収集回路14の構成例を示す図である。
【0042】
まず、算出機能33aによる補正値の算出処理について説明する。
図8上図は、複数の放射線照射条件として、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射した場合を示す。また、
図8上図は、この2つのX線照射条件でX線を照射した場合に、光子計数型の検出器13が有する検出素子により検出されたX線スペクトルの一例を示す。
図8上図の横軸は検出素子により検出された光子の波高値を示し、
図8上図の縦軸は検出素子により検出された光子のカウント値を示す。
図8上図に示す例では、例えば、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射した場合に検出されたX線スペクトルを示す。ここでは説明の便宜上140KVのX線スペクトルを第1の信号と称し、80KVのX線スペクトルを第2の信号と称す。なお、複数の放射線照射条件は、管電圧及び管電流の少なくともいずれかが異なる。また、X線照射条件として管電圧及び管電流を調整する際には、パイルアップの発生頻度が低くなるようなX線量とすることが望ましい。
【0043】
算出機能33aは、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定し、特徴点を用いて補正値を算出する。例えば、算出機能33aは、複数の信号のうち第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率を算出する。
図8中図は、検出器13が有する複数の検出素子のうち検出素子Aにおいて検出された第1の信号と第2の信号とについて、同一の波高値における第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率を波高値ごとにプロットしたグラフを示す。
【0044】
そして、算出機能33aは、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定する。ここで、特徴点は一意に決まる値とする。このようなことから、算出機能33aは、例えば、複数の信号が単調増加もしくは単調減少する期間の波高値から特徴点を特定する。より具体的には、算出機能33aは、複数の信号のうちいずれかのカウント値の変化量が最大となる波高値から特徴点を特定する。
図8中図に示す例では、算出機能33aは、カウント値の比率がM1となる値の波高値A1を特徴点として特定する。
【0045】
また、算出機能33aは、検出素子A以外の検出素子についても同様に、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率がM1となる波高値を特徴点として特定する。
図8下図は、検出素子A、検出素子B、及び検出素子Cにおいて検出された第1の信号と第2の信号とについて、同一の波高値における第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率を波高値ごとにプロットしたグラフを示す。そして、算出機能33aは、カウント値の比率がM1となる値の波高値を特徴点として特定する。
図8下図の例では、検出素子Aの特徴点を波高値A1で示し、検出素子Bの特徴点を波高値A2で示し、検出素子Cの特徴点を波高値A3で示す。このようにして、算出機能33aは、複数の信号のうち第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定する。言い換えると、算出機能33aは、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射した場合に、各検出素子の特徴点を特定する。なお、説明の便宜上、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件を第1の照射条件と称し、第1の照射条件で特定された特徴点を第1の特徴点と称する。なお、第1の照射条件は、第1の放射線照射条件の一例である。
【0046】
続いて、算出機能33aは、第1の照射条件と異なる第2の照射条件でも同様にして特徴点を特定する。なお、第2の照射条件は、第2の放射線照射条件の一例である。ここで、第2の照射条件は、第1の照射条件に含まれる複数のX線照射条件のうち少なくともいずれか一つが異なるX線照射条件を含めばよい。言い換えると、第2の照射条件は、第1の照射条件に含まれるX線照射条件と管電圧及び管電流の少なくともいずれかが異なる。例えば、第2の照射条件は、第1の照射条件に含まれるX線照射条件と異なるX線照射条件として、管電流を第1の照射条件と同一にして管電圧を100KVと140KVとしてもよいし、管電圧を60KVと100KVとしてもよい。或いは、第2の照射条件は、管電圧を第1の照射条件と同一にし、第1の照射条件とは異なる管電流としてもよい。また、或いは、第2の照射条件は、管電流及び管電圧を第1の照射条件とは異なるようにしてもよい。なお、第2の照射条件で特定された特徴点を第2の特徴点と称する。
【0047】
算出機能33aは、例えば、第2の照射条件における第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定する。例えば、算出機能33aは、カウント値の比率がM2となる値の波高値を第2の特徴点として特定する。一例をあげると、算出機能33aは、検出素子Aの第2の特徴点を波高値B1とし、検出素子Bの第2の特徴点を波高値B2とし、検出素子Cの第2の特徴点を波高値B3として特定する。
【0048】
また、第1の照射条件で特定された波高値と、第2の照射条件で特定された波高値とが近接する場合、キャリブレーションの精度が低下する。このため、第1の照射条件で特定された波高値と、第2の照射条件で特定された波高値とが近接しないように、第1の照射条件及び第2の照射条件が決定されることが望ましい。
【0049】
そして、算出機能33aは、第1の照射条件の第1の信号と第2の信号とから特定した第1の特徴点と、第2の照射条件の第1の信号と第2の信号とから特定した第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、補正値を算出する。
図9では、算出機能33aによる直線回帰を用いた補正値の算出処理を説明する。
【0050】
図9の横軸は、カウント値の比率を示し、
図9の縦軸は、波高値を示す。
図9に示す例では、第1の照射条件における検出素子Aの第1の特徴点を波高値A1とし、第2の照射条件における検出素子Aの第2の特徴点を波高値B1とする。また、
図9に示す例では、第1の照射条件における検出素子Bの第1の特徴点を波高値A2とし、第2の照射条件における検出素子Bの第2の特徴点を波高値B2とする。また、
図9に示す例では、第1の照射条件における検出素子Cの第1の特徴点を波高値A3とし、第2の照射条件における検出素子Cの第2の特徴点を波高値B3とする。
【0051】
ここで、エネルギーと波高値とは線形の関係がある。例えば、波高値をAnとし、エネルギーをEnとし、ゲインをαとし、オフセットをβとした場合、「An=αEn+β」の関係が成立する。そこで、算出機能33aは、波高値とカウント値の比率とを
図9に示すようにプロットすることで、各検出素子のゲイン(α)とオフセット(β)とを算出する。また、かかる場合、カウント値の比率がM1である場合のエネルギー値と、カウント値の比率がM2である場合のエネルギー値とが事前に設定される。例えば、算出機能33aは、各放射線照射条件に対して事前に導出されたX線スペクトルを用いて、第1の特徴点のエネルギー値と第2の特徴点のエネルギー値とを求める。一例をあげると、M1及びM2に対するエネルギー値は、管電圧とX線スペクトルとのモデルにより解析的に求められる。より具体的には、各管電圧に対して事前に導出されたX線スペクトルを用いて、カウント値の比率がM1となるエネルギー値と、カウント値の比率がM2となるエネルギー値とを求める。なお、各管電圧に対してX線スペクトルを事前に導出する例について説明したが、各管電圧において更に管電流を変化させたX線スペクトルを事前に導出するようにしてもよい。或いは、M1及びM2に対するエネルギー値は、
図16を用いて後述するようにGe検出器等のエネルギー分解能の高い検出器で事前に測定されてもよい。算出機能33aは、各検出素子に対して算出したゲイン(α)とオフセット(β)とを補正値として、後述する補正値記憶回路142に記憶させる。
【0052】
次に、
図10を用いて、データ収集回路14について説明する。
図10に示すように、データ収集回路14は、複数の収集ユニット140を有する。この収集ユニット140は、各X線検出素子に対応している。したがって、X線検出素子の数だけ収集ユニット140が設けられる。また、各収集ユニット140は、チャージアンプ141、補正値記憶回路142、波形成形回路143、波形弁別回路144及びカウンタ145を有する。
【0053】
補正値記憶回路142は、例えば、ROM(Read Only Memory)やNAND型フラッシュメモリやHDDであり、各X線検出素子の検出信号をキャリブレーションするための補正値を記憶する。この補正値は、スキャン制御回路33が有する算出機能33aによって算出される。
【0054】
チャージアンプ141は、X線検出素子に入射した光子に応答して集電される電荷を積分・増幅して電気量のパルス信号として出力する機能を有する電気回路である。より具体的には、チャージアンプ141は、増幅機能を有する電子回路である。チャージアンプ141によって出力されるパルス信号は、光子のエネルギー量に対応する波高及び面積を有する。
【0055】
また、チャージアンプ141の出力側には、波形成形回路143及びスキャン制御回路33が接続される。そして、チャージアンプ141は、スキャン制御回路33の指示に従って、スキャン制御回路33及び波形成形回路143のいずれか一方にパルス信号の出力を切り替える。例えば、チャージアンプ141は、キャリブレーションのための補正値を算出する処理を実施する場合には、パルス信号をスキャン制御回路33の算出機能33aに出力する。これにより、算出機能33aは、補正値を算出する。一方、チャージアンプ141は、X線CT画像データを再構成する場合には、パルス信号を波形成形回路143に出力する。
【0056】
波形成形回路143は、各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正する機能を有する電気回路である。例えば、波形成形回路143は、X線検出素子ごとに算出された補正値に基づいて、光子計数型の検出器13により検出された検出信号をX線検出素子ごとに校正する。より具体的には、波形成形回路143は、チャージアンプ141から出力されるパルス信号の周波数特性を調整し、かつゲイン及びオフセットを与えることによってパルス信号の波形を整形する。波形成形回路143の出力側には、波形弁別回路144が接続される。
【0057】
波形弁別回路144は、入射した光子への応答パルス信号の波高或いは面積を、弁別すべき複数のエネルギー帯域に対応して予め設定された閾値と比較し、閾値との比較結果を後段のカウンタ145に出力する機能を有する電気回路である。
【0058】
カウンタ145は、対応するエネルギー帯域毎に応答パルス信号の波形の弁別結果をカウントし、光子の計数結果をデジタルデータとしてコンソール30の前処理回路34に出力する機能を有する電気回路である。より具体的には、カウンタ145は、例えばクロックパルスを計数することにより数値を処理するデジタル回路である。
【0059】
具体的には、カウンタ145は、X線検出素子が出力した各パルスを弁別して計数したX線光子の入射位置(検出位置)と、当該X線光子のエネルギー値とを計数結果として、X線管12の位相(管球位相)ごとに収集する。カウンタ145は、例えば、計数に用いたパルスを出力したX線検出素子の位置を、入射位置とする。
【0060】
例えば、カウンタ145が収集する計数結果は、『管球位相「α1」では、入射位置「P11」のX線検出素子において、エネルギー弁別域「E1<E≦E2」の光子の計数値が「N1」であり、エネルギー弁別域「E2<E≦E3」の光子の計数値が「N2」である』といった情報となる。或いは、カウンタ145が収集する計数結果は、『管球位相「α1」では、入射位置「P11」のX線検出素子において、エネルギー弁別域「E1<E≦E2」の光子の単位時間当たりの計数値が「n1」であり、エネルギー弁別域「E2<E≦E3」の光子の単位時間当たりの計数値が「n2」である』といった情報となる。
【0061】
このように、検出器13の1つの画素に対応するX線検出素子からは、複数のエネルギー帯域に対応する計数結果がX線検出データとして前処理回路34に出力されることとなる。この結果、画像再構成回路36は、校正された各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する。
【0062】
図11は、第1の実施形態に係るX線CT装置による補正値を算出する処理の手順を示すフローチャートである。ステップS101は、スキャン制御回路33により実現されるステップである。ステップS101では、スキャン制御回路33は、X線管12を制御して複数のX線照射条件でX線を曝射させる。例えば、スキャン制御回路33は、第1の照射条件として、管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射する。
【0063】
ステップS102は、検出器13により実現されるステップである。ステップS102では、検出器13は、各X線照射条件でX線を検出する。例えば、検出器13は、第1の照射条件として、管電圧140KVのX線照射条件で照射されたX線を検出して第1の信号とし、管電圧80KVのX線照射条件で照射されたX線を検出して第2の信号とする。
【0064】
ステップS103からステップS105は、算出機能33aに対応するステップである。スキャン制御回路33がスキャン制御回路33内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、算出機能33aが実現される。ステップS103では、算出機能33aは、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定する。例えば、算出機能33aは、複数の信号のうち第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率を算出し、算出した比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定する。
【0065】
ステップS104では、算出機能33aは、各検出素子について複数の特徴点を特定したか否かを判定する。ここで、算出機能33aは、各検出素子について複数の特徴点を特定したと判定した場合(ステップS104、Yes)、ステップS105に移行する。例えば、算出機能33aは、カウント値の比率がM1である場合の波高値と、カウント値の比率がM2である場合の波高値とを特定したと判定し、ステップS105に移行する。一方、算出機能33aは、各検出素子について複数の特徴点を特定したと判定しなかった場合(ステップS104、No)、ステップS101に移行する。かかる場合、スキャン制御回路33は、例えば、第1の照射条件と異なる第2の照射条件でX線を曝射させる。
【0066】
ステップS105では、算出機能33aは、X線検出素子ごとに複数の特徴点を用いて補正値を算出する。かかる場合、カウント値の比率がM1である場合のエネルギー値と、カウント値の比率がM2である場合のエネルギー値とが事前に設定される。そして、例えば、算出機能33aは、カウント値の比率がM1である場合の波高値及びエネルギーと、カウント値の比率がM2である場合の波高値及びエネルギーとを用いた直線回帰によって、各検出素子に対してゲイン(α)とオフセット(β)とを補正値として算出する。算出機能33aは、X線検出素子ごとに算出した補正値をX線検出素子に対応する収集ユニット140の補正値記憶回路142に格納させる。
【0067】
図12は、第1の実施形態に係るX線CT装置によるX線CT画像を再構成する処理の手順を示すフローチャートである。ステップS201は、スキャン制御回路33により実現されるステップである。ステップS201では、スキャン制御回路33は、X線管12を制御してX線を曝射させる。ステップS202は、検出器13により実現されるステップである。ステップS202では、検出器13の各X線検出素子は、X線を検出する。ステップS203は、データ収集回路14の波形成形回路143により実現されるステップである。ステップS203では、波形成形回路143は、補正値に基づいて、光子計数型の検出器13により検出された検出信号をX線検出素子ごとに校正する。
【0068】
ステップS204は、画像再構成回路36により実現されるステップである。ステップS204では、画像再構成回路36は、校正された検出信号に基づいて、X線CT画像データを再構成する。ステップS205は、システム制御回路38により実現されるステップである。ステップS205では、システム制御回路38は、再構成されたX線CT画像をディスプレイ32に表示させる。
【0069】
上述したように、第1の実施形態では、各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正する。これにより、第1の実施形態によれば、容易にキャリブレーションを実現できる。
【0070】
また、第1の実施形態では、各検出素子の検出信号のピークを検出することなく、検出信号を校正する。これにより、直接変換型の検出素子よりも分解能が低いSiPMとシンチレータとで形成されたX線検出素子に連続X線を照射しても、十分な精度で各検出素子を校正することができる。
【0071】
更に、第1の実施形態では、パイルアップの頻度が低いX線照射条件でX線を照射して得られた複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて補正値を算出する。このため、パイルアップの影響を排除することができ、より正確なキャリブレーションを実現できる。
【0072】
また、検出器13の面積が広くX線検出素子の数が多い場合でも、容易でかつ正確にキャリブレーションを実現できるので、従来技術に係るキャリブレーション方法と比較して、キャリブレーション作業の工数を大幅に低減することが可能となる。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、既存のX線CT装置の標準的な構成において、事前に測定された特徴点におけるエネルギー値を用いることでキャリブレーション可能である。このため、定期的なキャリブレーションを容易に実施できるので、常に安定した精度の良いX線CT画像データを生成することができる。このように、第1の実施形態によれば、簡便さと正確さを併せ持ったキャリブレーション方法を提供することが可能である。
【0074】
また、算出機能33aは、検出器13のX線検出素子によるX線信号の検出を複数回実施して、特徴点における波高値の測定誤差を最小化するようにしてもよい。これにより、算出機能33aは、X線検出素子ごとに算出する補正値の精度をより高めることができる。
【0075】
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、算出機能33aは、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率を用いて特徴点を特定して、補正値を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、算出機能33aは、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との差分を用いて特徴点を特定して、補正値を算出するようにしてもよい。
【0076】
そこで、第1の実施形態の変形例では、算出機能33aは、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との差分を用いて特徴点を特定して、補正値を算出する場合について説明する。ここで、第1の実施形態の変形例では、フィルタを用いることによってスペクトルを変形させ、よりスペクトルの違いを強調することで、校正を行なう特徴点を強調して、校正の精度を高める。
図13から
図16は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
【0077】
単純に管電圧を80KVから140KVに変化させても、管電圧140KVのX線スペクトルは、X線エネルギーの低いX線成分まで含んでしまう。例えば、
図13に示すように、管電圧140KVのX線スペクトルは、管電圧80KVのX線スペクトルまでも含んでしまう。このため、管電圧140KVのX線投影データと管電圧80KVの被検体中の物質のX線吸収係数の差が比較的小さくなってしまい、管電圧の違いによる吸収係数の差を利用した校正には適さない。
【0078】
そこで、管電圧を140KVにしてX線を照射する際に、X線エネルギーの低いX線成分を除去するフィルタをかける。すなわち、管電圧140KVのX線スペクトルからX線エネルギーの低いX線成分を除去する。ここで、フィルタは、所定の帯域として第1の信号がピークを示す波高値を含む放射線を除去する。例えば、
図14に示すように、80KVのX線スペクトルのピークの値周辺(40keV)が、他のエネルギーの部分と吸収係数が逆転するようにフィルタを設計する。このとき収集した管電圧80KVのX線スペクトルにおいて、40keVに相当する波高値のカウント数は、管電圧140KVのX線スペクトルにおける波高値のカウント数を上回る。このように、第1の実施形態の変形例では、フィルタを用いることによって一方のX線スペクトルを変形させ、よりスペクトルの違いを強調することで、補正値の算出処理を実施する。以下では、
図15及び
図16を用いて、第1の実施形態の変形例に係る算出機能33aの処理動作について説明する。
【0079】
図15上図は、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射した場合に、光子計数型の検出器13により検出されたX線スペクトルを示す。
図15上図の横軸は波高値を示し、
図15上図の縦軸はカウント値を示す。ここで、
図15上図に示す例では、管電圧140KVでX線を照射する際に、管電圧140KVのX線スペクトルからX線エネルギーの低いX線成分を除去するフィルタを用いてX線スペクトルを検出した場合を示す。ここでは説明の便宜上、X線スペクトルからX線エネルギーの低いX線成分が除去された140KVのX線スペクトルを第1の信号と称し、80KVのX線スペクトルを第2の信号と称す。なお、複数の放射線照射条件は、管電圧及び管電流の少なくともいずれかが異なる。また、X線照射条件として管電圧及び管電流を調整する際には、パイルアップの発生頻度が低くなるようなX線量とすることが望ましい。
【0080】
算出機能33aは、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定し、特徴点を用いて補正値を算出する。例えば、算出機能33aは、複数の信号のうち所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値との差分値を算出する。
図15中図は、検出器13が有する複数の検出素子のうち検出素子Aにおいて検出された第1の信号と第2の信号とについて、第2の信号のカウント値から同一の波高値における第1の信号のカウント値を差分して得られた差分値を波高値ごとにプロットしたグラフを示す。
【0081】
そして、算出機能33aは、複数の信号のうち所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値が同一となる波高値を特徴点として特定する。
図15中図に示す例では、算出機能33aは、差分値が0となる値の波高値A1を特徴点として特定する。
【0082】
また、算出機能33aは、検出素子A以外の検出素子についても同様に、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との差分値が0となる波高値を特徴点として特定する。
図15下図は、検出素子A、検出素子B、及び検出素子Cにおいて検出された第1の信号と第2の信号とについて、同一の波高値における第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との差分値を波高値ごとにプロットしたグラフを示す。そして、算出機能33aは、差分値が0となる値の波高値を特徴点として特定する。
図15下図の例では、検出素子Aの特徴点を波高値A1で示し、検出素子Bの特徴点を波高値A2で示し、検出素子Cの特徴点を波高値A3で示す。このようにして、算出機能33aは、複数の信号のうち所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値が同一となる波高値を特徴点として特定する。言い換えると、算出機能33aは、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射した場合に、各検出素子の特徴点を特定する。なお、説明の便宜上、管電流を同一にして管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件を第1の照射条件と称し、第1の照射条件で特定された特徴点を第1の特徴点と称する。
【0083】
続いて、算出機能33aは、第1の照射条件と異なる第2の照射条件でも同様にして特徴点を特定する。ここで、第2の照射条件は、第1の照射条件に含まれる複数のX線照射条件のうち少なくともいずれか一つが異なるX線照射条件を含めばよい。例えば、第2の照射条件は、第1の照射条件に含まれるX線照射条件と異なるX線照射条件として、管電流を第1の照射条件と同一にして管電圧を100KVと140KVとしてもよいし、管電圧を60KVと100KVとしてもよい。或いは、第2の照射条件は、管電圧を第1の照射条件と同一にし、第1の照射条件とは異なる管電流としてもよい。また、或いは、第2の照射条件は、管電流及び管電圧を第1の照射条件とは異なるようにしてもよい。なお、第2の照射条件で特定された特徴点を第2の特徴点と称する。
【0084】
また、第1の照射条件で特定された波高値と、第2の照射条件で特定された波高値とが近接する場合、キャリブレーションの精度が低下する。このため、第1の照射条件で特定された波高値と、第2の照射条件で特定された波高値とが近接しないように、第1の照射条件及び第2の照射条件が決定されることが望ましい。
【0085】
算出機能33aは、例えば、第2の照射条件における第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との差分値が0となる波高値を特徴点として特定する。なお、説明の便宜上、第2の照射条件で特定された特徴点を第2の特徴点と称する。一例をあげると、算出機能33aは、検出素子Aの第2の特徴点を波高値B1とし、検出素子Bの第2の特徴点を波高値B2とし、検出素子Cの第2の特徴点を波高値B3として特定する。
【0086】
そして、算出機能33aは、第1の照射条件の第1の信号と第2の信号とから特定した第1の特徴点と、第2の照射条件の第1の信号と第2の信号とから特定した第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、補正値を算出する。
図16では、算出機能33aによる直線回帰を用いた補正値の算出処理を説明する。
図16では、第1の照射条件で差分値が0となるエネルギー値と、第2の照射条件で差分値が0となるエネルギー値とが、Ge検出器等のエネルギー分解能の高い検出器で事前に測定される場合について説明する。
【0087】
図16の横軸は、エネルギー値(keV)を示し、
図16の縦軸は、波高値を示す。
図16に示す例では、第1の照射条件における検出素子Aの第1の特徴点を波高値A1とし、第2の照射条件における検出素子Aの第2の特徴点を波高値B1とする。また、
図16に示す例では、第1の照射条件における検出素子Bの第1の特徴点を波高値A2とし、第2の照射条件における検出素子Bの第2の特徴点を波高値B2とする。また、
図16に示す例では、第1の照射条件における検出素子Cの第1の特徴点を波高値A3とし、第2の照射条件における検出素子Cの第2の特徴点を波高値B3とする。
【0088】
図9を用いて説明したように、エネルギーと波高値とは線形の関係がある。例えば、波高値をAnとし、エネルギーをEnとし、ゲインをαとし、オフセットをβとした場合、「An=αEn+β」の関係が成立する。そこで、算出機能33aは、波高値とエネルギーとを
図16に示すようにプロットすることで、各検出素子のゲイン(α)とオフセット(β)とを算出する。また、かかる場合、第1の照射条件で差分値が0となるエネルギー値E1と、第2の照射条件で差分値が0となるエネルギー値E2とが事前に設定される。例えば、Ge検出器等のエネルギー分解能の高い検出器(「リファレンス検出器」とも言う)を用いて、エネルギー値E1及びエネルギー値E2が事前に測定される。
【0089】
より具体的には、リファレンス検出器は、エネルギー分解能が高いので、特性X線を検出可能である。また、特性X線のエネルギー値は既知である。すなわち、リファレンス検出器により検出された特性X線のエネルギー値は、特定可能な値である。
図16に示す例では、リファレンス検出器により検出された特性X線のエネルギー値をE3とし、リファレンス検出器により検出された特性X線の波高値をC3とする。
【0090】
また、リファレンス検出器を用いて、第1の照射条件で差分値が0となる波高値C1と、第2の照射条件で差分値が0となる波高値C2とが算出される。波高値C1及びC3とエネルギー値E1及びE3との関係は、「C3:E3=C1:E1」となる。ここで、E1以外の値は既知となるので、第1の照射条件で差分値が0となるエネルギー値E1は、「E1=C1*E3/C3」を用いて算出される。同様に、波高値C2及びC3とエネルギー値E2及びE3との関係は、「C3:E3=C2:E2」となる。ここで、E2以外の値は既知となるので、第2の照射条件で差分値が0となるエネルギー値E2は、「E2=C2*E3/C3」を用いて算出される。
【0091】
算出機能33aは、第1の特徴点と、第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、補正値を算出する。ここで、算出機能33aは、リファレンス検出器を用いて算出されたエネルギー値を用いて、上記した「An=αEn+β」の関係から各検出素子のゲイン(α)とオフセット(β)とを算出する。言い換えると、算出機能33aは、光子計数型の検出器が有する検出素子よりエネルギー分解能が高いリファレンス検出素子を用いて検出された複数の信号から第1の特徴点のエネルギー値と第2の特徴点のエネルギー値とを求め、補正値を算出する。そして、算出機能33aは、各検出素子に対して算出したゲイン(α)とオフセット(β)とを補正値として、補正値記憶回路142に記憶させる。
【0092】
そして、波形成形回路143は、各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正する。
【0093】
(第2の実施形態)
第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例では、特徴点におけるエネルギー値を事前に測定しておくものとして説明した。ところで、事前に測定されたエネルギー値を使うのではなく、検出器13が有するX線検出素子よりエネルギー分解能が高いリファレンス検出素子を用いて特徴点におけるエネルギー値をリアルタイムで測定して、各X線検出素子をキャリブレーションしてもよいものである。このようなことから、第2の実施形態では、検出器13内にエネルギー分解能の高いリファレンス検出素子を組み合わせて利用する場合について説明する。すなわち、第2の実施形態に係る光子計数型の検出器13は、検出素子の少なくとも一部にリファレンス検出素子を含む。
【0094】
第2の実施形態に係るX線CT装置の構成は、検出器13が有するX線検出素子の構成とデータ収集回路14の構成が異なる点、及びスキャン制御回路33の構成が異なる点を除いて、
図1に示すX線CT装置の構成と同様である。このため、以下では、第2の実施形態に係る検出器13の構成、第2の実施形態に係るデータ収集回路14の構成、及び第2の実施形態に係るスキャン制御回路33の構成についてのみ説明する。なお、第2の実施形態に係るX線CT装置では、検出器13だけを回転フレーム15上で移動可能であるものとする。
【0095】
図17は、第2の実施形態に係る検出器13の一例を説明するための図である。
図17では、検出器13をY軸側から見た場合を示す。検出器13には、X線検出素子が、面上に2次元配置されている。例えば、チャンネル方向(
図17中のX軸方向)に配列されたX線検出素子列が被検体Pの体軸方向(
図17に示すZ軸方向)に沿って複数列配列されている。なお、
図17の例では、体軸方向に沿って複数配列されているX線検出素子を1つのX線検出素子群として示している。
【0096】
図17に示すように、第2の実施形態に係る検出器13は、1つのX線検出素子群13aと、複数のX線検出素子群13bとを有する。
図17に示す例では、X線検出素子群13aは、検出器13においてチャンネル方向の一方の端部に配置される。このX線検出素子群13bの各X線検出素子は、シンチレータと光センサとにより構成される間接変換型の検出器である。ここで、光センサは、例えばSiPMである。また、X線検出素子群13aの各X線検出素子は、X線検出素子群13bの各X線検出素子よりエネルギー分解能が高いリファレンス検出素子である。X線検出素子群13aの各X線検出素子は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe:cadmium telluride)半導体やテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe:cadmium zinc telluride)半導体等によって構成することが可能な直接変換型の検出器である。
【0097】
図18は、第2の実施形態に係るデータ収集回路14の構成例を示す図である。
図18に示すように、データ収集回路14は、収集ユニット140と収集ユニット150とを有する。
【0098】
この収集ユニット140は、X線検出素子群13bの各X線検出素子に対応している。したがって、X線検出素子群13bのX線検出素子の数だけ収集ユニット140が設けられる。また、各収集ユニット140は、チャージアンプ141、補正値記憶回路142、波形成形回路143、波形弁別回路144及びカウンタ145を有する。なお、第2の実施形態に係る収集ユニット140が有する各部の機能は、第1の実施形態に係る収集ユニット140が有する各部の機能と同様である。
【0099】
また、収集ユニット150は、X線検出素子群13aの各X線検出素子に対応している。したがって、X線検出素子群13aのX線検出素子の数だけ収集ユニット150が設けられる。また、各収集ユニット150は、チャージアンプ151、波形成形回路153、波形弁別回路154及びカウンタ155を有する。
【0100】
チャージアンプ151は、X線検出素子群13aの各X線検出素子に入射した光子に応答して集電される電荷を積分・増幅して電気量のパルス信号として出力する。チャージアンプ151の出力側には、波形成形回路153及びスキャン制御回路33が接続される。チャージアンプ151は、補正値を算出する処理を実施する場合には、パルス信号をスキャン制御回路33の算出機能33aに出力する。これにより、算出機能33aは、補正値を算出する。一方、チャージアンプ151は、チャンネル方向の一方の端部に配置されたリファレンス検出素子に対応する画素をX線CT画像の再構成に用いる場合には、パルス信号を波形成形回路153に出力する。
【0101】
波形成形回路153は、チャージアンプ151から出力されるパルス信号の周波数特性を調整し、かつゲイン及びオフセットを与えることによってパルス信号の波形を整形する。
【0102】
波形弁別回路154は、入射した光子への応答パルス信号の波高或いは面積を、弁別すべき複数のエネルギー帯域に対応して予め設定された閾値と比較し、閾値との比較結果を後段のカウンタ155に出力する回路である。
【0103】
カウンタ155は、対応するエネルギー帯域毎に応答パルス信号の波形の弁別結果をカウントし、光子の計数結果をデジタルデータとしてコンソール30の前処理回路34に出力する。
【0104】
図19は、第2の実施形態に係るスキャン制御回路33の構成例を示す図である。
図19に示すように、第2の実施形態に係るスキャン制御回路33は、算出機能33aと、移動制御機能33bとを実行する。ここで、例えば、
図19に示すスキャン制御回路33の構成要素である算出機能33aと移動制御機能33bとが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でスキャン制御回路33内に記録されている。スキャン制御回路33は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態のスキャン制御回路33は、
図19のスキャン制御回路33内に示された各機能を有することとなる。
【0105】
移動制御機能33bは、検出器13のチャンネル方向の移動をX線管12とは独立して制御する。言い換えると、移動制御機能33bは、検出器13だけを回転フレーム15上でチャンネル方向に移動させる。
図20は、第2の実施形態に係る移動制御機能33bの処理動作を説明するための図である。
図20左図では、X線管12に対して対向する位置にリファレンス検出素子が位置付けられている場合を示す。この状態でX線管12により複数のX線照射条件でX線を照射し、リファレンス検出素子が各X線照射条件でX線スペクトルを検出する。すなわち、移動制御機能33bは、リファレンス検出素子により検出された第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値とを用いて特徴点におけるエネルギー値を算出する際に、リファレンス検出素子をX線管12に対して対向する位置に位置付ける。
【0106】
続いて、移動制御機能33bは、検出器13をチャンネル方向に移動させる。これにより、リファレンス検出素子の1つ隣に配置されたX線検出素子群13bのX線検出素子が、
図20中図に示すように、X線管12に対して対向する位置に位置付けられる。この状態でX線管12により複数のX線照射条件でX線を照射し、X線検出素子群13bのX線検出素子が各X線照射条件でX線スペクトルを検出する。すなわち、移動制御機能33bは、校正対象のX線検出素子により検出された第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値とを用いて特徴点を特定する際に、当該校正対象のX線検出素子をX線管12に対して対向する位置に位置付ける。
【0107】
同様に、移動制御機能33bは、検出器13をチャンネル方向に移動させる。これにより、リファレンス検出素子の2つ隣に配置されたX線検出素子群13bのX線検出素子が、
図20右図に示すように、X線管12に対して対向する位置に位置付けられる。この状態でX線管12により複数のX線照射条件でX線を照射し、X線検出素子群13bのX線検出素子が各X線照射条件でX線スペクトルを検出する。すなわち、移動制御機能33bは、
図20中図に示す場合と同様に、校正対象のX線検出素子により検出された第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値とを用いて特徴点を特定する際に、当該校正対象のX線検出素子をX線管12に対して対向する位置に位置付ける。このように移動制御機能33bは、X線管12の位置を移動させずに、検出器13の位置をチャンネル方向に移動させる。そして、移動制御機能33bは、特徴点を特定する際のリファレンス検出素子のチャンネル方向における位置と、校正対象のX線検出素子が検出する検出信号から特徴点を特定する際の当該X線検出素子のチャンネル方向における位置とが一致するように制御する。
【0108】
このように、移動制御機能33bは、光子計数型の放射線検出器のチャンネル方向の移動をX線管12とは独立して制御する。また、移動制御機能33bは、第1の特徴点のエネルギー値と第2の特徴点のエネルギー値とを求める際のリファレンス検出素子のチャンネル方向における位置と、校正対象の検出素子が検出する複数の信号から第1の特徴点及び第2の特徴点を特定する際の当該検出素子のチャンネル方向における位置とが一致するように制御する。例えば、移動制御機能33bは、第1の特徴点のエネルギー値と第2の特徴点のエネルギー値とを求める際に、リファレンス検出素子をX線管12に対して対向する位置に位置付ける。また、移動制御機能33bは、校正対象の検出素子が検出する複数の信号から第1の特徴点及び第2の特徴点を特定する際に、当該校正対象の検出素子をX線管12に対して対向する位置に位置付ける。
【0109】
第2の実施形態に係る算出機能33aは、第1の実施形態で説明した算出機能33a及び第1の実施形態の変形例に係る算出機能33aと同様の機能を実行可能である。例えば、第2の実施形態に係る算出機能33aは、第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定しても良い。或いは、第2の実施形態に係る算出機能33aは、複数の信号のうち所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値が同一となる波高値を特徴点として特定しても良い。
【0110】
そして、第2の実施形態に係る算出機能33aは、校正対象のX線検出素子により検出された検出信号から特徴点の波高値を特定する。例えば、第2の実施形態に係る算出機能33aは、第1の特徴点における波高値と、第2の特徴点における波高値とを検出素子ごとに特定する。
【0111】
また、第2の実施形態に係る算出機能33aは、リファレンス検出素子を用いて検出された検出信号から特徴点と特性X線とを特定し、特徴点における波高値と、特性X線の波高値と、特性X線のエネルギー値とから特徴点におけるエネルギー値を算出する。例えば、第2の実施形態に係る算出機能33aは、第1の特徴点における波高値と、第2の特徴点における波高値と、特性X線の波高値と、特性X線のエネルギー値とから、第1の特徴点におけるエネルギー値と、第2の特徴点におけるエネルギー値とを算出する。そして、第2の実施形態に係る算出機能33aは、第1の特徴点と、第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、検出素子ごとに補正値を算出する。
【0112】
そして、データ収集回路14の波形成形回路143は、補正値に基づいて、光子計数型の検出器13により検出された検出信号をX線検出素子ごとに校正する。画像再構成回路36は、校正された検出信号に基づいて、X線CT画像データを再構成する。すなわち、画像再構成回路36は、校正された各検出素子の検出信号を用いて、画像を生成する。そして、システム制御回路38は、再構成されたX線CT画像をディスプレイ32に表示させる。なお、第2の実施形態に係るX線CT装置によるX線CT画像を再構成する処理の手順は、
図12に示す処理手順と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0113】
図21は、第2の実施形態に係るX線CT装置による補正値を算出する処理の手順を示すフローチャートである。なお、
図21の例では、補正値を算出する処理の開始時点において、エネルギー分解能の高いリファレンス検出素子がX線管12に対して対向する位置に位置付けられている場合を説明する。
【0114】
ステップS301は、スキャン制御回路33により実現されるステップである。ステップS301では、スキャン制御回路33は、X線管12を制御して複数のX線照射条件でX線を曝射させる。例えば、スキャン制御回路33は、第1の照射条件として、管電圧を80KVと140KVとで異ならせた2つのX線照射条件でX線を照射する。なお、スキャン制御回路33は、所定の帯域の放射線を除去するフィルタ存在下において管電圧140KVでX線を照射し、このフィルタ非存在下において管電圧80KVでX線を照射してもよい。
【0115】
ステップS302は、検出器13により実現されるステップである。ステップS302では、検出器13のリファレンス検出素子は、各条件でX線を検出する。例えば、検出器13のリファレンス検出素子は、管電圧140KVのX線照射条件で照射されたX線を検出して第1の信号とし、管電圧80KVのX線照射条件で照射されたX線を検出して第2の信号とする。なお、検出器13のリファレンス検出素子は、フィルタ存在下でX線を検出して第1の信号とし、フィルタ非存在下でX線を検出して第2の信号としてもよい。
【0116】
ステップS303からステップS305は、算出機能33aに対応するステップである。スキャン制御回路33がスキャン制御回路33内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、算出機能33aが実現される。ステップS303では、算出機能33aは、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定する。例えば、算出機能33aは、複数の信号のうち第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値との比率を算出し、算出した比率が所定の値となる波高値を特徴点として特定する。なお、算出機能33aは、フィルタ存在下で収集された第1の信号のカウント値と、フィルタ非存在下で収集された第2の信号のカウント値が同一となる波高値を特徴点として特定しても良い。
【0117】
ステップS304では、算出機能33aは、複数の特徴点を特定したか否かを判定する。ここで、算出機能33aは、リファレンス検出素子について複数の特徴点を特定したと判定した場合(ステップS304、Yes)、ステップS305に移行する。一方、算出機能33aは、リファレンス検出素子について複数の特徴点を特定したと判定しなかった場合(ステップS304、No)、ステップS301に移行する。かかる場合、スキャン制御回路33は、例えば、第1の照射条件と異なる第2の照射条件でX線を曝射させる。
【0118】
ステップS305では、算出機能33aは、各特徴点のエネルギー値を導出する。例えば、算出機能33aは、リファレンス検出素子を用いて検出された検出信号から特徴点と特性X線とを特定し、特徴点における波高値と、特性X線の波高値と、特性X線のエネルギー値とから特徴点におけるエネルギー値を算出する。
【0119】
ステップS306は、移動制御機能33bに対応するステップである。スキャン制御回路33がスキャン制御回路33内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、移動制御機能33bが実現される。ステップS306では、移動制御機能33bは、検出器13を移動させる。例えば、移動制御機能33bは、検出器13を1検出素子群だけ移動させる。これにより、リファレンス検出素子の1つ隣に配置された校正対象の検出素子がX線管12に対して対向する位置に位置付けられる。
【0120】
ステップS307は、スキャン制御回路33により実現されるステップである。ステップS307では、スキャン制御回路33は、X線管12を制御して複数のX線照射条件でX線を曝射させる。例えば、スキャン制御回路33は、ステップS301と同じ複数のX線照射条件でX線を曝射させる。ステップS308は、検出器13により実現されるステップである。ステップS308では、検出器13の校正対象の検出素子は、各条件でX線を検出する。
【0121】
ステップS309からステップS311は、算出機能33aに対応するステップである。スキャン制御回路33がスキャン制御回路33内に記録されている所定のプログラムを呼び出し実行することにより、算出機能33aが実現される。ステップS309では、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定する。例えば、算出機能33aは、複数の信号を用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定する。例えば、算出機能33aは、ステップS303と同様にして特徴点を特定する。
【0122】
ステップS310では、算出機能33aは、複数の特徴点を特定したか否かを判定する。ここで、算出機能33aは、校正対象の検出素子について複数の特徴点を特定したと判定した場合(ステップS310、Yes)、ステップS311に移行する。一方、算出機能33aは、校正対象の検出素子について複数の特徴点を特定したと判定しなかった場合(ステップS310、No)、ステップS307に移行する。かかる場合、スキャン制御回路33は、例えば、第1の照射条件と異なる第2の照射条件でX線を曝射させる。
【0123】
ステップS311では、算出機能33aは、複数の特徴点を用いて補正値を算出する。例えば、算出機能33aは、第1の特徴点と、第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、補正値を算出する。
【0124】
ステップS312は、スキャン制御回路33により実現されるステップである。ステップS312では、スキャン制御回路33は、補正値を未算出であるX線検出素子が存在するか否かを判定する(ステップS312)。ここで、スキャン制御回路33は、補正値を未算出であるX線検出素子が存在すると判定した場合(ステップS312、Yes)、ステップS306に移行する。これにより、移動制御機能33bは、検出器13を1検出素子群だけ移動させ、照射位置に位置付けられているX線検出素子の補正値を算出する。一方、スキャン制御回路33は、補正値を未算出であるX線検出素子が存在すると判定しなかった場合(ステップS312、No)、補正値を算出する処理を終了する。
【0125】
上述したように、第2の実施形態では、X線CT装置は、リファレンス検出素子により検出された検出信号を用いて、特徴点のエネルギー値を算出し、校正対象のX線検出素子を用いて検出された信号から特徴点の波高値を特定する。そして、第2の実施形態では、X線CT装置は、各検出素子によって出力された複数の放射線照射条件の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正する。このように、第2の実施形態では、検出器13が有するリファレンス検出素子を用いて特徴点におけるエネルギー値をリアルタイムで測定して、各X線検出素子の補正値を算出することでキャリブレーションを簡便に且つより正確に実施することができる。
【0126】
ここで、CdTeのようなエネルギー分解能が高いX線検出素子は、高価であるとともに量産化が困難である。このため、CdTeは、大規模な面検出器に使用するまでは普及していない。一方で、実際のX線CT画像の再構成には、CdTeほどのエネルギー分解能を必要としない場合もある。しかしながら、CdTeよりもエネルギー分解能の劣るX線検出素子でもきちんとキャリブレーションを実施する必要があった。第2の実施形態では、検出器13内にエネルギー分解能の高いリファレンス検出素子を組み合わせ、エネルギー分解能の高いリファレンス検出素子により測定された特徴点のエネルギー値に基づいて、各検出素子に対して補正値を算出し、各検出素子により検出された検出信号を校正する。すなわち、第2の実施形態では、安価なSiPMとシンチレータとで形成されたX線検出素子により検出された検出信号をX線検出素子ごとに校正して、X線CT画像を再構成する。これにより、第2の実施形態によれば、コストの低減と精度の良い画像データを収集することとを両立することが可能となる。
【0127】
なお、第2の実施形態では、検出器13内にリファレンス検出素子を備える場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、リファレンス検出素子は、X線管12により照射されたX線スペクトルを測定可能な位置であれば、検出器13以外の場所に配置されてもよい。かかる場合、算出機能33aは、リファレンス検出素子の検出信号を、リファレンス検出素子がX線管12に対して対向する位置に位置付けられている場合としたときの検出信号にキャリブレーションして、特徴点のエネルギー値を算出する。
【0128】
また、第2の実施形態では、リファレンス検出素子は、検出器13においてチャンネル方向の一方の端部に配置されるものとして説明したが実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、リファレンス検出素子は、検出器13においてチャンネル方向の中央部等任意の位置に配置されてもよい。なお、リファレンス検出素子を検出器13においてチャンネル方向の一方の端部に配置した場合は、リファレンス検出素子からの検出信号をX線CT画像の再構成に使用しなくてもよい。
【0129】
図22及び
図23は、第2の実施形態に係る検出器の他の一例を説明するための図である。
図22に示す例では、X線検出素子群13aは、検出器13においてチャンネル方向の両方の端部に配置される。また、
図23に示す例では、X線検出素子群13aは、検出器13においてチャンネル方向の両方の端部と、検出器13においてチャンネル方向の中央部とに配置される。
【0130】
(第2の実施形態の変形例)
また、上述した第2の実施形態では、リファレンス検出素子をX線管12に対して対向する位置に位置付けてキャリブレーションする場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、検出器13において、X線管12に対して対向する位置を中央部と定義し、この中央部周辺の位置を周辺部と定義すると、中央部で検出されるX線の線質と周辺部で検出されるX線の線質とが異なる。また、周辺部の各位置においても検出されるX線の線質はそれぞれ異なる。言い換えると、X線管12と、各X線検出素子との相対的な位置関係に応じて、検出されるX線の線質が異なる。
【0131】
このようなことから、X線検出素子群13bのX線検出素子それぞれとX線管12との相対的な位置を保持して、キャリブレーションすることが望ましい。そこで、第2の実施形態の変形例として、X線検出素子それぞれとX線管12との相対的な位置を保持して、キャリブレーションする場合について説明する。なお、第2の実施形態の変形例に係るX線CT装置の構成は、移動制御機能33bの一部の機能が異なる点を除いて、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成と同様である。
図24は、第2の実施形態の変形例に係る移動制御機能33bの処理動作を説明するための図である。
【0132】
図24では、
図17に示す検出器13と同様に、チャンネル方向の一方の端部として左端にリファレンス検出素子が配置される場合について説明する。また、
図24では、リファレンス検出素子D
Rのチャンネル方向の右隣に配置されるX線検出素子D
Tをキャリブレーションする場合について説明する。なお、
図24左図では、検出器13の中央に配置されるX線検出素子D
Cが、X線管12と対向する位置に位置付けられている。また、
図24左図の状態を初期状態とする。
【0133】
移動制御機能33bは、検出器13のチャンネル方向の移動をX線管12とは独立して制御する。そして、移動制御機能33bは、リファレンス検出素子により検出された第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値とを用いて特徴点におけるエネルギー値を算出する際のリファレンス検出素子のチャンネル方向における位置と、校正対象のX線検出素子により検出された第1の信号のカウント値と第2の信号のカウント値とを用いて特徴点を特定する際の当該X線検出素子のチャンネル方向における位置とが一致するように制御する。
【0134】
例えば、移動制御機能33bは、検出器13をチャンネル方向の右側に1X線検出素子に相当する距離だけ移動させる。ここで、移動制御機能33bは、第2の実施形態と同様に、X線管12の位置を移動させずに、検出器13の位置をチャンネル方向に移動させる。これにより、リファレンス検出素子D
Rは、X線検出素子D
Tが移動前に位置付けられた位置に移動する。この状態でX線管12により複数のX線照射条件でX線を照射し、リファレンス検出素子D
Rが各X線照射条件でX線スペクトルを検出する。すなわち、移動制御機能33bは、特徴点におけるエネルギー値を算出する際に、光子計数型の検出器13の中心がX線管12と対向する状態において、校正対象のX線検出素子D
TとX線管12との相対的な位置と一致する位置に、リファレンス検出素子D
Rを位置付ける。
【0135】
続いて、移動制御機能33bは、検出器13をチャンネル方向の左側に1X線検出素子に相当する距離だけ移動させる。かかる場合も移動制御機能33bは、第2の実施形態と同様に、X線管12の位置を移動させずに、検出器13の位置をチャンネル方向に移動させる。これにより、X線検出素子D
Tが、初期状態と同じ位置に位置付けられる。この状態でX線管12により複数のX線照射条件でX線を照射し、X線検出素子D
Tが各X線照射条件でX線スペクトルを検出する。すなわち、移動制御機能33bは、校正対象のX線検出素子D
Tが検出する検出信号から特徴点を特定する際に、光子計数型の検出器13の中心をX線管12と対向する位置に位置付ける。
【0136】
このようにして、第2の実施形態の変形例に係る移動制御機能33bは、第1の特徴点のエネルギー値と第2の特徴点のエネルギー値とを求める際に、光子計数型の検出器13の中心がX線管12と対向する状態において、校正対象の検出素子とX線管12との相対的な位置と一致する位置に、リファレンス検出素子を位置付ける。また、第2の実施形態の変形例に係る移動制御機能33bは、校正対象の検出素子が検出する複数の信号から第1の特徴点及び第2の特徴点を特定する際に、光子計数型の検出器13の中心がX線管12と対向する位置に位置付ける。
【0137】
そして、第2の実施形態の変形例に係る算出機能33aは、リファレンス検出素子D
Rを用いて検出された検出信号から特徴点におけるエネルギー値を算出し、校正対象のX線検出素子D
Tを用いて検出された信号から特徴点の波高値を特定する。そして、第2の実施形態の変形例に係る算出機能33aは、第1の特徴点と、第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、検出素子ごとに補正値を算出する。
【0138】
続いて、データ収集回路14の波形成形回路143は、補正値に基づいて、光子計数型の検出器13により検出された検出信号をX線検出素子ごとに校正する。これにより、第2の実施形態の変形例では、X線検出素子群13bのX線検出素子それぞれとX線管12との相対的な位置を保持して、キャリブレーションすることが可能になる。
【0139】
なお、上述した第2の実施形態の変形例では、初期状態においてキャリブレーション対象のX線検出素子D
Tが配置される位置にリファレンス検出素子D
Rを移動させてX線を照射し、その後、初期状態に戻した後にキャリブレーション対象のX線検出素子D
TにX線を照射するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、キャリブレーション対象のX線検出素子とX線管12との相対的な位置を保持して、リファレンス検出素子D
Rを移動させれば、検出器13を任意の順序で移動させてもよい。例えば、初期状態でX線管12によりX線を照射し、キャリブレーション対象の各X線検出素子がX線スペクトルをそれぞれ検出する。そして、初期状態においてキャリブレーション対象のX線検出素子が配置された位置までリファレンス検出素子D
Rを移動させてからX線管12によりX線を照射し、リファレンス検出素子D
RがX線スペクトルを検出する。移動制御機能33bは、初期状態においてキャリブレーション対象のX線検出素子が配置されたすべての位置で、リファレンス検出素子D
RがX線スペクトルを検出するまで処理を所定の順序で繰り返す。
【0140】
また、第2の実施形態の変形例では、
図17と同様の検出器13を用いる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、
図22及び
図23に示したような検出器13を用いてもよい。かかる場合、複数のリファレンス検出素子を用いてキャリブレーション可能であるので、検出器13の移動回数やX線の照射回数を減らすことができる。
【0141】
(第3の実施形態)
また、上述した実施形態においては、算出機能33aは、検出素子やリファレンス検出素子によって検出されたX線スペクトルをそのまま用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定し、この特徴点を用いて補正値を算出するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、算出機能33aは、ノイズ除去等の前処理を施した後のX線スペクトルを用いた演算処理の結果に基づいて特徴点を特定し、この特徴点を用いて補正値を算出するようにしてもよい。
図25は、第3の実施形態に係るスキャン制御部33の構成例を示す図である。
【0142】
図25に示すように、第3の実施形態に係るスキャン制御回路33は、算出機能33aと、スペクトル処理機能33cとを実行する。ここで、例えば、
図25に示すスキャン制御回路33の構成要素である算出機能33aとスペクトル処理機能33cとが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でスキャン制御回路33内に記録されている。スキャン制御回路33は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出したプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態のスキャン制御回路33は、
図25のスキャン制御回路33内に示された各機能を有することとなる。
【0143】
スペクトル処理機能33cは、複数の信号を前処理する。
図26及び
図27は、第3の実施形態に係るスペクトル処理機能33cの処理動作を説明するための図である。なお、
図26及び
図27では、リファレンス検出素子によって検出されたX線スペクトルを前処理する場合について説明する。
【0144】
図26では、オフセットを除去する処理について説明する。
図26左図では、リファレンス検出素子であるX線検出素子Aによって検出された前処理を施す前の基準となるX線スペクトルを示す。スペクトル処理機能33cは、オフセットを除去することにより、
図26右図に示すX線スペクトルを生成する。なお、スペクトル処理機能33cは、X線スペクトルの帯域の上限値を以下のようにして決定する。例えば、スペクトル処理機能33cは、X線管12の管電圧に基づいて、エネルギー値の上限を推定し、推定した上限値以上となるエネルギー値を有するX線スペクトルを除去する。また、スペクトル処理機能33cは、X線スペクトルの帯域の下限値を以下のようにして決定する。例えば、スペクトル処理機能33cは、図示しないボウタイフィルタによって除去されるエネルギー値以下のエネルギー値を有するX線スペクトルを除去する。
【0145】
続いて、
図27では、スムージング処理について説明する。
図27左図では、リファレンス検出素子であるX線検出素子Aによって検出された前処理を施す前の基準となるX線スペクトルを示す。スペクトル処理機能33cは、
図27左図に示すX線スペクトルのノイズを除去することにより、
図27右図に示すように平均値の安定したX線スペクトルを生成する。
【0146】
そして、第3の実施形態に係る算出機能33aは、前処理後の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値をX線検出素子ごとに算出する。このように、X線スペクトルに前処理を行うことで、より正確な補正値を算出することが可能となる。続いて、データ収集回路14の波形成形回路143は、補正値に基づいて、光子計数型の検出器13により検出された検出信号をX線検出素子ごとに校正する。言い換えると、波形成形回路143は、前処理後の複数の信号を用いた演算処理の結果に基づく補正値を用いて、各検出素子の検出信号を校正する。
【0147】
なお、第3の実施形態では、リファレンス検出素子によって検出されたX線スペクトルを前処理する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態に係るスペクトル処理機能33cは、リファレンス検出素子によって検出されたX線スペクトルと、校正対象の各X線検出素子により検出されたX線スペクトルとを前処理してもよい。かかる場合、第3の実施形態に係る算出機能33aは、リファレンス検出素子によって検出され且つ前処理後のX線スペクトルから特徴点におけるエネルギー値を算出し、校正対象のX線検出素子を用いて検出され且つ前処理後のX線スペクトルから特徴点の波高値を特定する。そして、第3の実施形態に係る算出機能33aは、第1の特徴点と、第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、検出素子ごとに補正値を算出する。なお、第3の実施形態に係るスペクトル処理機能33cは、リファレンス検出素子によって検出されたX線スペクトルを前処理せずに、光子計数型の検出器13により検出されたX線スペクトルだけを前処理してもよい。
【0148】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0149】
上述した第1の実施形態から第3の実施形態では、補正値を算出する処理を実施する場合には、チャージアンプ141が、パルス信号をスキャン制御回路33の算出機能33aに出力するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、波形成形回路143がパルス信号をスキャン制御回路33の算出機能33aに出力してもよい。かかる場合、波形成形回路143は、スキャン制御回路33の指示に従って、スキャン制御回路33及び波形弁別回路144のいずれか一方にパルス信号の出力を切り替える。
【0150】
また、第1の実施形態から第3の実施形態では、X線CT装置が補正値を算出するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1の実施形態から第3の実施形態で説明した画像処理方法は、算出機能33aと同様の機能を有する算出回路を備えた画像処理装置が、補正値を算出するようにしてもよい。かかる場合、画像処理装置の算出回路は、例えば、リファレンス検出素子によって検出された検出信号と、校正対象の各X線検出素子によって検出された検出信号とをX線CT装置から取得する。そして、画像処理装置の算出回路は、リファレンス検出素子を用いて検出された検出信号から特徴点におけるエネルギー値を算出し、校正対象のX線検出素子を用いて検出された検出信号から特徴点の波高値を特定する。そして、画像処理装置の算出回路は、第1の特徴点と、第2の特徴点とを用いた直線回帰によって、検出素子ごとに補正値を算出する。
【0151】
また、上述した実施形態では、第1の特徴点と第2の特徴点とを用いた直線回帰によって補正値を算出するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補正値の算出に用いる特徴点の数は2つ以上であればよい。
【0152】
また、画像処理装置は、第3の実施形態に係るスペクトル処理機能33cと同様の機能を有するスペクトル処理部を更に有するようにしてもよい。かかる場合、画像処理装置の算出回路は、例えば、リファレンス検出素子によって検出され且つ前処理後のX線スペクトルから特徴点におけるエネルギー値を算出する。
【0153】
また、第1の実施形態から第3の実施形態では、X線CT装置がX線CT画像を再構成する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線CT画像の再構成は、X線CT装置によって収集された生データを取得できるのであれば、X線CT装置以外の装置で実行されてもよい。例えば、画像処理装置が、X線CT装置によって収集された検出信号をX線検出素子ごとに補正値に基づいて校正し、校正した検出信号を用いてX線CT画像を再構成する。
【0154】
また、第1の実施形態から第3の実施形態において説明した波形成形回路143及び画像再構成回路36の機能は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、波形成形回路143及び画像再構成回路36の機能は、上記の実施形態において波形成形回路143及び画像再構成回路36が行うものとして説明した処理の手順を規定した画像処理プログラムをコンピュータに実行させることで、実現される。この画像処理プログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、この画像処理プログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。なお、画像処理プログラムは、第1の実施形態から第3の実施形態に係る算出機能33aが行うものとして説明した処理の手順を更にコンピュータに実行させてもよい。同様に、第2の実施形態において説明した移動制御機能33bや第3の実施形態において説明したスペクトル処理機能33cの機能は、ソフトウェアによって実現することもできる。
【0155】
また、上述した実施形態では、放射線診断装置の一例としてX線CT装置について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、光子計数型のX線検出器を有するマンモグラフィ装置やX線診断装置にも適用可能である。
【0156】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはプロセッサの回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内にプログラムを組み込む代わりに、コンソール30が有する記憶回路にプログラムを保存するように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0157】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、算出機能33aと、波形成形回路143とを統合して「校正部」としてもよい。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0158】
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0159】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、キャリブレーションを正確かつ簡便に実施することができる。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。