特許第6890971号(P6890971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890971モデルベースセグメンテーションを用いた像撮像誘導
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890971
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】モデルベースセグメンテーションを用いた像撮像誘導
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20210607BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   A61B8/14
   A61B8/12
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-537564(P2016-537564)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2017-502729(P2017-502729A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】IB2014066618
(87)【国際公開番号】WO2015087218
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/913,477
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヒター−シュテーレ,イリーナ
(72)【発明者】
【氏名】モルス,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ビュルガー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥレスク,エミル ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ホァン,シェン−ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーゼ,ユルゲン
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−056125(JP,A)
【文献】 特開2007−312980(JP,A)
【文献】 特開2009−082240(JP,A)
【文献】 特開2003−135459(JP,A)
【文献】 特開2004−016268(JP,A)
【文献】 特開2006−271588(JP,A)
【文献】 特開2005−124712(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059668(WO,A1)
【文献】 特開2013−135738(JP,A)
【文献】 特開平05−344968(JP,A)
【文献】 特表2015−500083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面を有する身体に対して実行される医用撮像を誘導するための医用撮像誘導装置であって、
現在位置、現在向き、画像空間、及び軸方向を有する撮像プローブと、
撮像プロセッサであって、
前記撮像プローブを利用して超音波を介して、関心物の画像を取得することであって、前記画像は前記画像空間内にある、取得することと、
解剖学的モデルを使用して、前記の取得された画像をセグメント化して、モデルにより提供された位置及びモデルにより提供された向きの両方を前記画像空間内で集合的に有する1以上のセグメントを生成することと、
前記撮像プローブに関して、前記向きに基づいて、前記関心物を見るための起点となるターゲット向きを決定することであって、前記ターゲット向きが前記現在向きと異なれば、前記ターゲット向きを実現することが、前記軸方向を傾けるように前記撮像プローブを傾けることを伴うように、前記ターゲット向きを決定することと、
を行うよう構成されている撮像プロセッサと、
を備え、
前記医用撮像誘導装置は、前記モデルにより提供された位置に基づいて前記身体の前記外面上のターゲット位置に移動させる前に、前記関心物の撮像が、前記ターゲット位置において肋骨により妨害されるかどうかを判定し、前記関心物の撮像が妨害されると判定された場合に、前記ターゲット向きの決定の繰り返しにおいて前記撮像プローブを前記現在位置から前記ターゲット位置に移動させるかどうかを決定するようさらに構成されている、医用撮像誘導装置。
【請求項2】
前記撮像プロセッサは、前記決定に動的に応じて、前記関心物を見るための前記ターゲット向きを実現するために、前記撮像プローブをどのように手で移動させるかについて具体的に指示するユーザフィードバックを提供することを行うようさらに構成されている、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項3】
前記ユーザフィードバックを提供することは、前記ユーザフィードバックが前記画像の視覚化を含む必要なしに実行される、請求項2記載の医用撮像誘導装置。
【請求項4】
前記医用撮像誘導装置は、ユーザ介入の必要なく自動的に、前記決定に応じて、前記ターゲット向きが前記現在向きと異なれば、前記撮像プローブに力を与えて、前記現在向きから前記ターゲット向きに前記撮像プローブを移動させることを行うよう構成されているロボットをさらに備え、
前記ロボットは、前記決定及び前記位置に基づいて、前記モデルにより提供された向きと整列している直線に沿って前記関心物を見るための起点となる、前記身体の前記外面上のターゲット位置を決定することを行うようさらに構成されている、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項5】
前記撮像プローブは、経胸壁心エコー(TTE)プローブを含む、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項6】
前記現在向きは、前記撮像プローブの前記軸方向であり、前記モデルにより提供された向きは、前記軸方向に関連する、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項7】
前記医用撮像誘導装置は、画像セグメンテーションに基づいて、前記関心物の少なくとも一部が、前記の取得された画像内で検出されたことを判定することを行うようさらに構成されている、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項8】
前記医用撮像誘導装置は、前記モデルにより提供された位置及び前記ターゲット向きに基づいて、前記身体の前記外面上の前記撮像プローブの前記現在位置及び前記現在向きのうちの少なくとも1つを変えることにより、前記関心物に対して最適視点及び最適方向を実現することに向けて、前記取得の現在視野がどれだけ向上が可能であるかを算出することを行うようさらに構成されている、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項9】
前記医用撮像誘導装置は、前記算出に基づいて情報を導出することを行うよう構成されており、前記医用撮像誘導装置は、前記向上に向けたユーザアクションを提案するために前記情報をユーザに対して提示することを行うようさらに構成されている、請求項8記載の医用撮像誘導装置。
【請求項10】
前記情報は、前記向上に向けて前記撮像プローブを並進させること又は前記撮像プローブを傾けることのどちらがより効果的であるかを前記医用撮像誘導装置が判定したことに応じた、前記撮像プローブを並進させること又は前記撮像プローブを傾けることのいずれかに関連するものである、請求項9記載の医用撮像誘導装置。
【請求項11】
前記算出することは、前記向上のための電子的誘導パラメータを算出することを含み、前記医用撮像誘導装置は、前記の算出された電子的誘導パラメータを使用して電子的に誘導することを行うよう構成されている、請求項8記載の医用撮像誘導装置。
【請求項12】
前記ターゲット位置は、前記撮像プローブの位置であり、長手方向の肋骨曲率を考慮に入れて算出され、前記ターゲット向きである軸に沿っている、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項13】
前記ターゲット向きは、前記関心物に対して最適視方向である、請求項1記載の医用撮像誘導装置。
【請求項14】
軸方向、現在位置、現在向き、及び画像空間を有する撮像プローブを介して、関心物の画像を取得することであって、前記画像は前記画像空間内にある、取得することを伴う、外面を有する身体に対して実行される医用撮像を誘導するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサに、
解剖学的モデルを使用して、前記の取得された画像をセグメント化して、モデルにより提供された位置及びモデルにより提供された向きの両方を前記画像空間内で集合的に有する1以上のセグメントを生成する動作と、
前記撮像プローブに関して、前記向きに基づいて、前記関心物を見るための起点となるターゲット向きを決定する動作であって、前記ターゲット向きが前記現在向きと異なれば、前記ターゲット向きを実現することが、前記軸方向を傾けるように前記撮像プローブを傾けることを伴うように、前記ターゲット向きを決定する動作と、
を実行させ、
前記モデルにより提供された位置に基づいて前記身体の前記外面上のターゲット位置に移動させる前に、前記関心物の撮像が、前記ターゲット位置において肋骨により妨害されるかどうかを判定し、前記関心物の撮像が妨害されると判定された場合に、前記ターゲット向きの決定の繰り返しにおいて前記撮像プローブを前記現在位置から前記ターゲット位置に移動させるかどうかを決定する動作
をさらに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像の誘導に関し、より詳細には、誘導においてモデルベースセグメンテーションを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は、米国だけで500万人の患者が存在し、全世界で数千万人の患者が存在するメジャーな疾患である。心不全のリスクがある人は、米国だけで6000万人いると推定されており、百万人が入院していて、残りの人は、心不全クリニックのケアを受けている。心不全クリニック又は一般開業医院においては、患者管理のために、心臓に関する基本的情報が必要とされる。この情報は、画像に加えて、画像が取得された後に画像から算出される駆出率(ejection fraction)等の定量化データを含む。超音波は、心臓等の軟部組織のための信頼性が高くコスト効率が高い撮像モダリティである。
【0003】
超音波画像の取得は、熟練している超音波検査者を必要とする。超音波検査についてトレーニングされている超音波検査者又は他の臨床者が最適化する1つのパラメータは、視野である。心尖部四腔断層像は、定期的な心臓検査のための標準的なものである。臨床者は、超音波プローブすなわち「トランスデューサプローブ」のヘッドを患者の上に配置させる。様々な像のためにプローブを配置させる患者の皮膚上の効果的な部位は、臨床者のトレーニングの一部であり、効果的な部位は、患者に応じて変わり得る。心尖部四腔断層像に関して、プローブは、心臓の先端部(心尖)に対して配置される。プローブはまた、器官が撮像のために得られるまで、通常は様々な方向に手で傾けられることを必要とする。これは、臨床者がスクリーン上で通常は超音波画像である画像を見ながらインタラクティブに全て行われる。超音波画像を解釈することは、例えばトレーニング及び実務を通じて向上されなければならない技能である。臨床者の経験により、進行中の反復プロセスにおいて、効果的な音響窓を実現するためにプローブをどのように移動させ傾けるかが、臨床者自身に示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書において以下で提案することは、上記懸念事項のうちの1以上に対処することを対象とする。
【0005】
心不全クリニック及び一般開業医院における完全な超音波スキャンへのアクセスは容易ではない。超音波システムをポータブルにすることが役立つであろう。しかしながら、ほとんどの心臓専門医は、従来型のポータブル超音波システムを使用できるであろうが、この手順を自身で実行するには一般に忙しすぎる。
【0006】
さらに、例えば心臓の画像が周期的に得られる連続撮像は、患者処置を改善させるであろう。
【0007】
必要にされていることは、患者の定期的通院中の、超音波に基づく心臓の自動的な容積測定を可能にするポイントオブケアソリューションであり、これは、心不全クリニックにおいて特に有用であろう。ECGリード線を配置させることについてはトレーニングされているが心エコー検査についてはトレーニングされていない看護師が、ポータブルシステムを操作し、診断画像とともに、心室サイズ及び駆出率等の自動的な測定値が、心臓専門医に提供される。
【0008】
代替として、超音波撮像プローブを自身で操作するように完全に自動化されたシステムも価値があるであろう。
【0009】
そのような技術は、心臓診断及びフォローアップ検査のための超音波データの使用に対する障壁を下げるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に従うと、医用撮像誘導装置は、現在向き、画像空間、及び軸方向を有する撮像プローブを含み、前記撮像プローブを利用して超音波を介して、関心物(object of interest)の画像を取得することであって、前記画像は前記画像空間内にある、取得することと、解剖学的モデルを使用して、前記の取得された画像をセグメント化して、モデルにより提供された位置及びモデルにより提供された向きの両方を前記画像空間内で集合的に有する1以上のセグメントを生成することと、前記撮像プローブに関して、前記向きに基づいて、前記関心物を見るための起点となるターゲット向き(target orientation)を決定することであって、前記ターゲット向きが前記現在向きと異なれば、前記ターゲット向きを実現することが、前記軸方向を傾けるように前記撮像プローブを傾けることを伴うように、前記ターゲット向きを決定することと、を行うよう設計されている。
【0011】
そのような装置に関して、コンピュータ読み取り可能な媒体、又は代替として一時的な伝搬信号が、本明細書において提案することの一部である。以下に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体内に具現化される、又は代替として一時的な伝搬信号内に具現化されるコンピュータプログラムは、複数のセンサを介して、現在位置及び現在向きから、関心物の画像を取得する動作と、モデルに基づいて、取得された画像をセグメント化する動作と、セグメント化した結果に基づいて、ターゲット位置(target position)及びターゲット向きを決定する動作であって、ターゲット位置及び/又はターゲット向きは、現在位置及び/又は現在向きと相応に異なる、動作と、を実行するための、プロセッサにより実行可能な命令を有する。
【0012】
新規なリアルタイムユーザ停止駆動型/ロボット式音響窓識別誘導技術(real-time, user-pause-driven/robotic, acoustic-window identification guidance technology)の詳細が、縮尺通りには描かれていない図面を用いて、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従った装置の一形態の斜視図。
図2A】本発明に従った例示的な超音波臨床手順のフローチャート。
図2B】本発明に従った例示的な超音波臨床手順のフローチャート。
図3】装置が音響窓の配置をリアルタイムにどのように誘導できるかの概念図。
図4A】本発明に従った、超音波プローブの視野に対して配置されるセグメントのスクリーン上誘導画像を用いる、撮像妨害物回避のための方式の例を示す図。
図4B】本発明に従った、超音波プローブの視野に対して配置されるセグメントのスクリーン上誘導画像を用いる、撮像妨害物回避のための方式の例を示す図。
図5図4Aに関連する式リスト及びフローチャート。
図6A】本発明に従った、肺組織を心臓組織と区別するために使用される無線周波数データの例示的なグラフ。
図6B】本発明に従った、肺組織を心臓組織と区別するために使用される無線周波数データの例示的なグラフ。
図6C】本発明に従った、肺組織を心臓組織と区別する際に使用されるアルゴリズム。
図7】1次元プローブに基づく例示的な肺識別アルゴリズムを表すフローチャート。
図8】マトリックスプローブに基づく例示的な肺識別アルゴリズムを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本明細書において提案する新規なリアルタイムユーザ停止駆動型音響窓識別誘導技術の実装の一例としてのポータブル装置100を示している。装置100が、臨床環境において部屋から部屋へ容易に持ち運ぶことができるフォームファクタで図示されているが、装置100は、その代わりに、固定型デバイスとして実装されてもよい。装置100は、撮像プロセッサ(図示せず)に加えて、ディスプレイ110、ユーザコンソール120、経胸壁心エコー(TTE)プローブ130、及び、図1において破線により表される拡張長さを有するプローブケーブル140を含む。ディスプレイ110及びユーザコンソールは、ラップトップコンピュータにおいて使用されるものと同様であってよい。装置100は、総重量が約10ポンドであり、手で持ち運ぶことができる。ケーブル140は、無線実装では省くことができる。以下の説明では、超音波システムを想定しているが、任意の種類の撮像システムが、本発明の意図される範囲内にある。また、容積定量化及びライブ3次元撮像が、以下の実施形態の特徴であるが、本明細書において提案することは、2次元撮像にも適用可能である。
【0015】
装置100のロボット式固定型バージョンにおいて、ロボットアーム141は、プローブ143に力142を与えて、現在位置及び現在向きから、ターゲット位置及びターゲット向きに、プローブ143を移動させるように、制御される。ロボットが操作するプローブ143は、ハンドヘルドプローブ130と同じであるが、例えば、以下で説明するユーザフィードバック機能を取り除くことによって等、ロボット用に適合されてもよい。移動は、ターゲットパラメータの決定に応じて生じる。ロボットは、ユーザ介入の必要なく自動的に動作する。それでも、任意的なユーザによる制御又は変更が存在する。
【0016】
以下の説明は、別途示される場合を除いて、すなわち、ロボットバージョンが説明されている場合を除いて、手動プローブ操作バージョン又は「手動バージョン」を対象とする。
【0017】
装置100は、超音波を使用して容積撮像を実行し、心臓の左心室のサイズを算出することや駆出率を算出すること等を行うよう構成されている。算出結果は、メモリ(図示せず)に記憶される。プローブを介して取得されるライブ撮像(上記算出は、このライブ撮像に基づく)も、メモリに記憶される。動的ビームフォーミング、スキャン変換、及び画像レンダリング等の標準的機能のための回路(図示せず)も、装置100内に含まれている。2以上のビームフォーマが、以下で詳細に説明する画像妨害物自動検出のために含まれ得る。
【0018】
さらなる回路(図示せず)は、視覚的フィードバックすなわちユーザ指示(ユーザへの指示)を動的に提示するよう構成されているユーザ誘導プロセッサを含み得る。これは、特に、プローブ130を介する、プローブに関する位置及び向きの手動調整と、これに応じた音響窓と、を誘導する種類のものである。プローブ130の現在位置及び現在向きからの3次元視野すなわち現在視野をどのようにアップデートできるかが算出され、それにより、現在視野が、ターゲット位置及びターゲット向きを実現することに向けて向上される。このアップデートは、現在視野内の画像をセグメント化することにより生成される1以上のセグメントに基づく。セグメンテーションが基づくモデルは、最適視方向(optimum viewing directionality)及び1以上のセグメントの位置に基づいて、アップデートされた視野又は「新たな」視野を提供することができる。あるいは、プローブ130を移動させて最適視方向を得ることが、肋骨の妨害に起因して実現できない場合、新たな視野は、1以上のセグメントの位置に部分的に基づく。
【0019】
上記算出は、手動の実施形態において、視野の向上に向けたユーザアクションを提案するためにユーザに対して提示可能である情報を導出する。プロセッサは、この提示を動的に構成し、視野のアップデートに合わせてユーザを誘導するために、この提示を選択的に構成する。アップデートされた視野は、現在視野と比較すると、超音波検査についてトレーニングされていない臨床者に、プローブ130を次にどのように操作するかを通知することにおける指針(guidepost)としての役割を果たす。プロセッサは、最適音響窓を反復的に実現するためにプローブ130をどのように手で操作するかについて、全ての指示をユーザに対して発行する。本明細書において提案することの適用は、心臓検査又は医療検査に限定されるものではなく、その代わりに、物の向きを決定するために画像セグメンテーションを受ける任意の物が、像誘導のために使用可能である。したがって、単なる球形以外の任意の関心物が、このようにして潜在的に使用可能である。
【0020】
ロボットバージョンは、上述したロボットアーム141に加えて、譲受人に譲渡されたRoundhillの米国特許出願公開第2010/0262008号(「Roundhill」)に記載されている制御システム4と任意的にユーザコントロール3とを含む。この公開公報の開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。ロボットアーム141は、Roundhillにおけるロボットアーマチュア(robotic armature)として実装可能である。Roundhillのユーザコントロール3は、ユーザコンソール120から動作可能にされ得る。
【0021】
セグメンテーションは、視野の上述した「誘導」については細かいものである必要はない。なぜならば、セグメンテーションは、ターゲット音響窓が実現された後の定量化のためのものであるからである。粗いメッシュ及び細かいメッシュを用いるモデルベースセグメンテーションの一例が、譲受人に譲渡されたFradkinらの米国特許出願公開第2009/0202150号(「Fradkin」)において見出される。Fradkinにおける適応的終了条件が、装置100の本実施形態における視野誘導のためにセグメンテーションを粗いままにするように設定され得る、又は、本実施形態における容積データに基づく定量化のためにセグメンテーションを細かくすることに進むように設定され得る。誘導及び定量化については、以下で詳細に説明する。
【0022】
セグメンテーションのための画像を探すために、装置100は、一般化ハフ変換(GHT)を実行するようさらに構成されている。GHTを実行するための方法は、譲受人に譲渡されたSchrammらの米国特許出願公開第2008/0260254号(「Schramm」)に記載されている。
【0023】
これら両方の公開公報の開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
装置100は、少なくとも手動バージョンにおいて、プローブ130の動きを検出する機能をさらに有する。ユーザは、画像セグメンテーションが生じ得るように、プローブの移動をしばしば停止する。また、装置100は、例えば、プローブ130がターゲット音響窓に達することに近付いたことを理由とする、停止するための指示にまだ従っているかどうかについてチェックする。一実施形態において、装置100は、譲受人に譲渡されたAugustineらの米国特許第5529070号(「Augustine」)に開示されている増分計算器80を含む。プローブ130内に存在する加速度計(図示せず)に由来する値が、プローブケーブル140を介して、増分計算器80に提供される。Augustineにおけるものとは異なり、位置測定は、画像取得とマッチングされる必要はない。したがって、増分計算器は、単にプローブ130の位置及び/又は向きにおける動きを検出するように単純化され得る。加速度計は、Augustineの図4図5、及び図5aから分かるように、プローブ130の遠位部と近位部との間に分散配置され得る。加速度計の実施形態に関連するAugustineにおける開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、医療ツールのトラッキングにおいて電磁(EM)センサを使用する一例が、所有者が共通であるStantonらの米国特許第7933007号において提供されている。ツールに光学センサを取り付けている類似するシステムが、所有者が共通するShenらの米国特許出願公開第2010/0168556号に開示されている。動きはまた、所有者が共通するPetersonらの米国特許第6299579号に記載されているように、連続するリアルタイム画像を比較することにより検知され得る。これら3つの全文書が、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
装置100が実行するよう構成されている上記機能は、ソフトウェアとファームウェアとハードウェアとの任意の適切な既知の組合せにより実装され得る。例えば、ユーザ誘導プロセッサ及び制御システムは、1以上の集積回路を有するデバイス上で実現されてもよいし、適切にプログラムされたコンピュータ読み取り可能な媒体として実現されてもよい。
【0026】
プローブ130は、マトリックスアレイ160を含むヘッド150を有する。マトリックスアレイ160は、トランスデューサ素子170を含む。各素子170は、受信について、センサとして機能する。単純さのために、比較的少ない数の素子170が図1に示されているが、素子の数は、通常、数千の単位であり得る。また、アレイ160が、略長方形として図示されているが、アレイ160は、正方形、円形、楕円形、又は別の形状であってもよい。アレイ160はまた、直線アレイのようにフラットであってもよいし、曲線アレイのように湾曲していてもよい。
【0027】
例示の目的のために、特に、プローブ130を介する、アレイの位置及び向きの手動調整を誘導する種類の視覚的フィードバック144が、ディスプレイ110上に示されている。有利なことに、超音波検査についてトレーニングされていないユーザは、誘導のための超音波画像等のグレースケール画像に依拠する必要がない。したがって、図1に示される削除線が付されたスクリーン上の注釈175により表されるように、グレースケール標準表示関数(GSDF)には依拠しない。詳細には、図1に示される実施形態の視覚的フィードバック144は、プローブ130を介して取得された画像データのグレースケール表現を含まない。視覚的フィードバック144の別の例は、スクリーン上の進捗バー178全体である。進捗バー178には、「82%」等のパーセンテージが注釈として付けられてもよいし、進捗バー178は、100%すなわち終了を表すフレームにより漸進的に埋められ縁どられてもよい。
【0028】
プローブ130はまた、赤色/緑色発光ダイオード(LED)として実現可能な一対の停止/移動(pause/go)インジケータライト180(そのうちの一方は図1において見えており、他方はプローブの反対側にある)を有する。緑色であるときには、ライト180は、ユーザが方向に関してディスプレイ110に目を向け、次いで、指示されるようにプローブ130を移動させることにより進める必要があることを示す。赤色であるときには、ライト180は、ユーザがプローブ130の移動を停止する必要があることを示す。両方のライトは同時に同じ色である。
【0029】
ライト180に関する代替として、又はさらなるライトの実装として、方向インジケータライトが設けられてもよい。この代替実施形態において、一方のライトは緑色であり、他方のライトは赤色である。緑色であるときには、ライトは、ユーザが緑色光線の方向に移動させる必要があることを示す。この場合、以下で詳細に説明するように、装置100は、プローブ130が、マトリックスアレイ160を現在取り囲んでいる2つの肋骨の間の肋間腔に沿って有効に配置されることを既に決定していることになる。反対に、赤色であるときには、ライトは、ユーザが反対方向に移動させる必要があることを示す。この実施形態において、赤色ライトは「停止」を示さないので、この機能は、ビープ音等の報知音又は可聴指示により提供され得、ディスプレイ110上の視覚的インジケーションが伴い得る。また、ここでは、方向インジケータライトが設けられるが、移動させるための指示、及び方向は、追加的に、ディスプレイ110上に現れてもよいし、且つ/又は、人工音声により伝えられてもよい。
【0030】
プローブはまた、音響結合品質センサ(acoustic coupling quality sensor)(図示せず)を組み込むことができる。圧力を検出することに特化した圧力センサ190が、トランスデューサ素子170の間にまばらに分散される、すなわち、個々の素子の代わりに分散される。検出は、画像取得にはさまれ得る。圧力センサ190に近接するトランスデューサ素子170がアクティブであり、圧力センサ測定値が圧力のないことを示す場合、これは、弱い音響結合を示す。より一般的に、装置100が、音響結合品質センサの出力に基づいて、音響結合品質が不十分であるであると判定した場合、そのときに、その判定についてのユーザアラートが発せられる。視覚的又は聴覚的なユーザアラートが、プローブ130又は装置100の他の部分を介して、提供され得る。一例として、音響結合品質センサは、10000個のトランスデューサ素子170の間に配置される単に8つの圧力センサ190を備えることができる。ロボットバージョンにおいては、音響結合品質センサは、Roundhillの制御システム4、すなわち、印加力検知を含む制御フィードバック機構の一部である。力検知に関して、歪みゲージが、表面の下では浅いハウジング内において、プローブ143の軸方向において長手方向に提供され、プローブの周辺に離間して配置され、プローブの遠位端の近くに設けられ得る。類似する歪みゲージ構成の一例が、Blumenkranzらの米国特許出願公開第2007/0151390号の図2図7において提供されており、この公開公報の開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。歪みゲージの類似する構成は、追加的又は代替的に、ロボットアーム141に組み込まれてもよい。歪みゲージの軸方向歪み測定値が、この測定値に応じて、患者への音響結合を失うことなく検査手順中に小さな自動快適調整(comfort adjustment)を行う際に、使用可能である。
【0031】
図2A及び図2Bは、例示的で非限定的な例として、超音波検査について熟練してない看護師又は他のユーザを装置100がどのように視覚的に誘導するかを例示する超音波臨床手順200を示している。この実施形態において、撮像対象の心臓の心尖部四腔断層像が記録され、心臓容積測定値が得られて記憶される。このプロセスは、2つの段階からなる。第1段階において、ユーザは、心臓又は他の関心器官の少なくとも一部が撮像により検出されるまで、プローブ130を移動させる。第2段階において、ユーザは、プローブ130の移動を頻繁に停止し各停止のすぐ後にさらなる指示を受けながら、プローブ130を移動させる。時として、装置100は、第2段階から第1段階に戻る遷移がなされるべきであることを決定する。超音波手順200の成功した終了は、第2段階中に、すなわち、第2段階の最後に生じる。手順200に関して、別途示される場合を除いて、プローブ130は、幾何学的に固定された視野を維持すること、及び、より良い視野を実現するために電子的誘導は実施又は使用されないこと、が想定されている。したがって、プローブ130のナビゲーションは、ユーザによる手の動きに依拠する。視野を向上させるための電子的誘導、及びこの手順のロボットバージョンについては、以下で詳細に説明する。
【0032】
操作上、最初に、看護師は、心電図(ECG)リード線を、患者、又は超音波対象の人間若しくは動物の上に配置させる(ステップS202)。ECGは、心臓検査の一部としての役割を果たす。ECGはまた、記録されるライブ心臓撮像の解析を容易にする。最初に、ユーザは、行われるべき撮像について全般的に指示される;指示は、ディスプレイ110上で見ることができ、ライト180を介して見ることができる;指示されたときには速やかにプローブ130の移動を止める;プローブを移動させるように指示されているときに、システムが測定できるように頻繁に停止する(ステップS204)。また、段階2フラグ(stage two flag)が、初期化の一部としてクリアされる。なぜならば、ユーザは、初期は、手順200の段階1にあるからである。次いで、ユーザは、患者をユーザの左側に横たわらせるように指示され(ステップS206)、これにより、より容易な撮像のために、心臓が患者の胸部において前方に倒れることになる。ユーザは、左乳首の下のポイントにおいて胸郭の最下部から開始して、初期音響窓のためにプローブ130のヘッド150を配置させるポイントについて、胸郭の最下部から4番目の肋骨と5番目の肋骨との間まで数え上げるように指示される(ステップS208)。プローブによる画像取得は、ライブであり連続的である。指示はまた、プローブが、第1の推定値としての、患者の首の付け根に向かうポイントまで上向きに傾けられる必要があることを示す。次の指示は、この配置を覚えておきながら、プローブ130を離すように持ち上げ;マトリックスアレイ160を覆うプローブ面の周りに結合ゲル(coupling gel)を塗布し;位置及び向きについてプローブ配置を元に戻すことである(ステップS210)。以下で詳細に説明する妨害物識別アルゴリズムにより、肋骨が検出されなかった場合(ステップS212、ステップS214)、ステップS206に再度分岐する。そうではなく、1つの肋骨のみが検出された場合(ステップS214)、ユーザは、上方又は下方にわずかに移動させて2つの肋骨の間に達するように指示される(ステップS216)。2つの肋骨の間の位置に上方/下方に移動されて1つの肋骨に向けられたプローブのグラフィック表現が、スクリーン上に表示され得る。処理は、ステップS212に戻る。この処理ループ、及びユーザ指示を発行することを伴う全ての処理ループにおいて、指示は、スクリーン上に既に表示されていれば、再度リストされない。一方、両方の肋骨が検出された場合(ステップS212)、この観点の正しいプローブ配置が妥当性検証される。肋骨測定フラグがセットされている場合(ステップS217a)、処理は、ステップS218にスキップする。そうではなく、肋骨測定フラグがまだセットされていない場合(ステップS217a)、肋骨測定が行われる(ステップS217b)。詳細には、撮像から自動的に得られた、2つの肋骨の間の距離、すなわち、肋間間隔に基づいて、肋骨幅が推定される。この推定は、統計アトラス(statistical atlas)を参照して、又は、解析若しくはテーブルルックアップにより別の形で、行われ得る。手順200における後の段階において解剖学的モデルから算出される理想的な視点、すなわち、最適視方向と整列した視点が、肋骨により妨害される場合には、この推定値を利用して、心尖部像のターゲット視点(target viewpoint)を変更することができる。任意的に、(利用可能である場合には、)現在の肋間腔にわたって長手方向にスイープする、プローブ130の現在位置に対する角度範囲にわたる対応する複数の連続した超音波セクタスキャンの複数の時間を電子的に誘導することにより、妨害物識別アルゴリズムが適用されてもよい。スキャンごとに肋間距離が測定される。次いで、肺が、プローブ130の現在視野を妨害しているかどうかについて、問合せがなされる(ステップS218)。この判定は、以下で詳細に説明する妨害物識別アルゴリズムにより行われる。肺組織が視野内にある場合(ステップS218)、ユーザは、患者に息を吐かせて止めさせるように指示される(ステップS220)。これは、肺を視野外にさせることができる。なぜならば、肺は、患者による各吸気及び呼気により、視野に入ろうとし視野から出ようとし得るからである。肺が再度検出され、したがって、肺がやはり視野を妨害している場合(ステップS222)、ユーザは、患者に通常の呼吸を再開させるように指示される(ステップS224)。心臓を妨害している肺は、左肺であり、肺は、胸部において心臓よりも中央側にはないので、ユーザは、プローブ130を上方に、すなわち、胸骨に向けて、移動させるように指示される(ステップS226)。プローブ130上の停止/移動インジケータライト180が緑色になる。プローブが上方に移動されると、ユーザはまた、プローブ130をわずかに傾けて患者のより左側に向くように指示され得る。次いで、ステップS212に戻る。代替的又は追加的に、逆さまの「V」の表示が、スクリーン上でユーザに対して表示されてもよい。この表示により、ユーザは、肺を回避するために、プローブ130をインタラクティブに移動させ傾けることができる。同じ「V」の表示を使用して、肋骨を回避するために、プローブ130を傾けて並進(平行移動)させるようにユーザを誘導することができる。一方、患者に息を止めさせた後(ステップS220)、肺が視野をもはや妨害していない場合(ステップS222)、又は、肺が、初めから妨害していなかった場合(ステップS218)、心臓の少なくとも一部が、プローブ130によるライブ撮像において検出されたかどうかについて、問合せがなされる(ステップS228)。上述したSchrammのGHTが、この検出のために利用される。このGTHを使用して、関心物すなわち関心生体組織(anatomy)を位置特定する。左心室(LV)が、定量化が望まれる対象である、心臓の一部であり得るが、心臓の一部を検出することは、例えば、単に左心房又は僧帽弁を検出することを含んでもよい。検出が生じたかどうかを判定するには、予め定められた信頼度レベルが満たされなければならない。例えば、Schrammの文献において、変換パラメータのセットを判定する際の最適性の基準は、予め定められた閾値を満たすことが要求され得る。
【0033】
心臓が検出されなかった場合(ステップS228)、ユーザは、「より時間をかけて胸骨から離れるようにゆっくりと下方に移動させ、より時間をかけて胸骨に向けてゆっくりと上方に移動させてください」と指示される。このパターンのグラフィカルな動き表現が、ディスプレイ110上に表示され得る(ステップS230)。代替的に、この指示は、例えば、「肋間腔内に留めながらより時間をかけて胸骨から離れるようにプローブ130をゆっくりと下方に移動させ、より時間をかけて再度胸骨に向けてゆっくりと上方に移動させることを交互にしてください」等、より詳細であってもよい。ユーザは、プローブ130を厳格に並進させる代わりに、ゆっくりとプローブ130の向きを変化させながらプローブ130を並進させることがある。これでも問題ない。なぜならば、ライブ撮像は、プローブ130の現在位置及び現在姿勢に基づくリアルタイムフィードバックを提供するために、動的にモニタリングされるからである。手順200は、ステップS212に戻る。
【0034】
一方、心臓の一部が検出された場合(ステップS228)、ステップS204における初期化中にクリアされた段階2フラグがセットされているかどうかについて、問合せがなされる(ステップS232)。段階2フラグがセットされていない場合(ステップS232)、ユーザは、停止して指示を待つように指示される(ステップS234)。停止が必要とされるのは、セグメンテーションが、粗いセグメンテーションでさえも、例えば2秒といった短い時間期間を必要とするからである。詳細には、プローブ130上の停止/移動インジケータライト180が、赤色になる、且つ/あるいは、ディスプレイ110が、停止するための指示を赤色で表示する。短いビープ音も発せられてもよい。装置100は、プローブ130内の加速度計を介して、プローブの動きが停止したかどうかを検出する(ステップS236)。動きが停止するまで(ステップS236)、停止するための視覚的及び聴覚的なフィードバックが保たれる(ステップS238)。停止が検出されると(ステップS236)、心臓の一部が検出されたかどうかについて、再度チェックされる(ステップS240)。この事前準備(precaution)は、心臓の撮像部分が依然として存在するよう十分迅速にユーザが停止したかどうかを判定するために行われる。
【0035】
心臓の一部が検出されなかった場合(ステップS240)、指示は、「あなたの最も直近の動きにゆっくり引き返し、心臓の(部分的な)像を再度得るように指示されたときに停止してください。そうでなければ、指示されるように移動させてください。」というものである(ステップS242)。次いで、ステップS212に戻る。
【0036】
一方、心臓の少なくとも一部が依然として検出された場合(ステップS240)、身体器官、ここでは心臓の粗い画像セグメンテーションが実行される(ステップS244)。このセグメンテーションでは、モデルが使用される(ステップS245)。詳細には、一例として、左心室心内膜のセグメンテーションが試みられ(ステップS245a)、左心室を取り囲む心筋層のセグメンテーションが試みられる(ステップS245b)。セグメンテーション結果の信頼度が、例えば、誤差メトリック(error metric)に基づいて評価され得る(ステップS245c)。
【0037】
1以上のセグメントから判定することで、生体組織が、プローブ130の現在視野内に完全に又はほとんどあるかどうかについて、問合せがなされる(ステップS246)。この判定は、妨害物の領域を特定する、以下で詳細に説明する妨害物識別アルゴリズムの使用により、精緻なものになり得る。詳細には、このアルゴリズムは、超音波セクタスキャンの諸部分を、すなわち、画像の、例えば肺又は肋骨による撮像の妨害に起因するアーチファクトを有する領域が、信頼できないとしてマークされることを可能にする。次いで、左心室心内膜及び左心室を取り囲む心筋層が、ほとんどの部分について、視野内にカバーされているかどうかについての判定が、画像の信頼できる領域に対してなされ得る。
【0038】
セグメンテーション結果が、集合的にこの生体組織が現在視野内にほとんどないことである場合(ステップS246)、又は、セグメンテーションにおける信頼度がない場合(ステップS246a)、座標系変換が算出される(ステップS247)。詳細には、粗いセグメント化が、プローブ130の画像空間において位置及び最適視方向を有する心臓の1以上のセグメントをもたらしている。この位置及び最適視方向は、モデルから知られる。この位置及び最適視方向に基づいて、調べられている生体組織、例えば左心室をカバーするプローブ130の幾何学的に固定された視野に関する最適視点及び視方向が何であるかが判定される。例えば、僧帽弁及び心尖が、セグメンテーションにより識別され得、僧帽弁と心尖とを結ぶ軸が、定量化及び心臓診断画像のための最適視方向であり得る、又はそのような最適視方向に近いものであり得る。この最適視方向が、ターゲット向きにされる。実際において、装置100は、モデルから軸を生成する。ターゲット向きの決定は、例えば、ターゲット向きをこの軸と整列させることである。ターゲット位置が、この向きに基づいて、肋骨の長手方向曲率を考慮に入れて算出される。視野が、幾何学的に固定されるのは、ユーザが、超音波検査についてトレーニングされておらず、単純さのために、視覚的指示に従ってプローブ130を単に移動させるように誘導されていることが想定されているからである。ターゲット位置すなわちターゲット「視点」、及びターゲット向きは、一般に、現在位置及び現在向きとは異なる。しかしながら、例えば、先端部が、焦点の下にある場合、現在視点が、ターゲット視点であり得る。視点及び向きは全て、プローブ130の画像空間内にある。装置100は、現在視点及び現在向きをターゲット視点及びターゲット向きと一致させるようにする座標系変換を算出する。この変換は、並進成分及び回転成分を有する。回転成分は、プローブの現在のz軸、すなわち、プローブ130の軸方向と、心尖の中心と僧帽弁とを結ぶ、上述したモデルに基づく軸と、間の角度に対応する。より詳細には、z軸が、同じ方向を保ちながら、横方向に(laterally)且つ/又は高さ方向(elevationally)に平行移動されて、モデルに基づく軸と交差した場合、これら2つの軸の間の角度が、回転成分を表す。ターゲット視点は、モデルに基づく軸とプローブ130の面に沿った平面との交点として推定され得る。この推定は、任意的に、肋間腔に沿った肋骨の長手方向曲率に関してわずかに調整される。並進成分は、現在視点からターゲット視点へのベクトルである。肋骨曲率は、経験的に推定され得る。肋骨曲率は、最適像が反復的に取得されるときのファクタとして減少する。なぜならば、肋骨曲率は、最適像に焦点を合わせたときに、段々小さくなる領域にわたって作用するからである。
【0039】
個人間の解剖学的差異に起因して、モデルにより見出される心尖部像は、実際には肋骨により妨害されるターゲット視点を有する場合がある。1以上の肋間間隔測定値、肋骨幅の結果の推定値、現在視野内で見えている肋骨、及び現在視点に基づいて、ターゲット視点が、肋骨により妨害されるかどうかについて、問合せがなされる(ステップS247a)。ターゲット視点が、肋骨によりブロックされる場合(ステップS247a)、モデルに基づく軸が、この軸を、心臓の中心から現在位置への直線で置換し(ステップS247b)、現在位置をターゲット位置にする(ステップS247c)ことにより、(現在の検査に関して恒久的に)修正される。次いで、変換ステップS247に戻る。次いで、変換ステップは、ターゲット向きを算出することにおいて、現在向きとは異なる向きをもたらすことがある。なぜならば、現在向きは、心臓に関して中心からはずれていることがあるからである。したがって、装置100は、肋骨妨害の評価に基づいて、ターゲット向きの決定の繰り返しにおいて、現在位置をターゲット位置にするかどうかを決定する。ステップS247cに関して代替的に、モデルに基づく軸の修正(同様に、現在の検査に関して恒久的)は、妨害肋骨をちょうど超える回転により行われてもよい。この回転は、肋骨による妨害が存在するかどうかを確認するための上述した測定値と、推定された肋骨幅と、に基づく。次いで、同様に変換ステップS247に戻る。
【0040】
必要に応じて修正を伴う変換が算出された後(ステップS247a)、スクリーン上の進捗バー178全体がアップデートされる(ステップS248)。
【0041】
進捗は、変換の並進成分の大きさと、より少ない程度に又は後の段階においては変換の回転成の大きさと、基づく。
【0042】
したがって、進捗バー178の長さは、パーセントでいうと、100から、負でなく単位元(unity)より小さい、これら2つの成分の重み付け平均値を減算したものであり得る。
【0043】
定量化と、任意的に、記憶のためのライブ撮像取得と、を開始するために、現在視野が、十分に的確であるかどうか、すなわち、最適視野に近いかどうかを判定するために、同一又は同様のメトリックが、装置100により使用される。
【0044】
プローブ130の現在視野が、最適視野に十分には近くないと判定された場合(ステップS249)、次のユーザ指示に関する選択として、傾けることが優位である(predominate)か又は移動させることが優位であるかについて判定がなされる(ステップS250)。一般に、何かが残っている場合には、移動させることが優位である。しかしながら、残っているものが十分小さい場合、傾けることが十分であり得る。この判定を行うためのパラメータは、経験的に設定され得る。したがって、移動させることがより効果的であるか又は傾けることがより効果的であるかが判定される。手順200においてこの点から前に進むと、視覚的フィードバック144のユーザに対する提示が、プローブ130の現在視野とステップS247からのターゲット位置及びターゲット向きとの比較に基づいて、動的且つ選択的に構成される。例えば、これは、移動させること及び/又は傾けることの必要性に基づき、このような必要性は、上記比較に基づいて評価される。固有に選択することは、下記のユーザ指示のうちどちらが手順200において発行されるかに応じて生じる。ここで、ステップS212〜ステップS228等における、手順200における前の方での視覚的フィードバック144の提示の構成が、動的且つ選択的に行われ、これは、上述した比較に基づいてではなく、取得された画像コンテンツに基づく。したがって、手順200における視覚的フィードバック144の動的且つ選択的な構成の全てではなく一部が、上記比較に基づく。
【0045】
シフトさせることが優位である場合(ステップS250)、示される並進が、肋骨の位置を所与として、隣接する肋間腔に入るために肋骨を横切ることを伴うかどうかについて、問合せがなされる(ステップS251)。装置100は、修正変換(ステップS247b、ステップS247c)により補足される可能性がある変換算出(ステップS247)によりこれを既に判定している。肋骨がスキップされる場合(ステップS251)、ユーザは、これに応じて、結合ゲルをプローブ130に再塗布した後、胸郭の上方又は下方に移動させるように指示される(ステップS253)。肋骨は、ここではスキップされているので、事前準備処理は、段階1に戻る。段階2フラグがクリアされ、処理がステップS210に戻る。一方、通常はこうであるが、検査が、同じ肋間腔内に留まっている場合(ステップS251)、ユーザは、頻繁に停止しながら、装置100により決定された方向にゆっくり移動させるように指示される(ステップS254)。したがって、このユーザ指示は、上述した比較に基づいて動的且つ選択的に構成された中のものである。
【0046】
一方、ステップS250において、移動させることが優位ではない場合、ユーザは、決定された方向においてプローブ130をゆっくり傾けるように指示される(ステップS255)。この指示は、「頻繁に停止しながら、胸骨に向けて内側を向くようにゆっくりと傾けてください」、「頻繁に停止しながら、患者の足に向けて下側を向くようにゆっくりと傾けてください」、又は、これら2つの指示の何らかの組合せ等であり得る。したがって、この指示は、上述した比較に基づいて動的且つ選択的に構成された中のものである。
【0047】
代替的又は追加的に、ディスプレイ110は、セグメント化された器官(ここでは、セグメントは心臓を規定するものである)のインタラクティブなグラフィカル表現を、プローブ130の視野を表す逆さまの「V」が重ねられた、スクリーン上のセグメント化されたオブジェクトとして、表示してもよい。第2の別個の同時表現が、直交方向における「V」について表示されてもよい。このグラフィカル表現については、以下で詳細に説明する。
【0048】
ステップS254又はステップS255に関する指示が発行された後、ステップS236以降に動きが生じたかどうかについて、問合せがなされる。これは、プローブ130内の加速度計を介して判定され得る。そのような動きが生じたが、現在は動きがない場合(ステップS256)、段階2フラグがセットされ(ステップS257)、処理がステップS212に戻る。
【0049】
一方、ステップS249において、プローブ130の現在視野が、最適視野に十分近いと判定された場合、装置100は、停止するための指示を発行する(ステップS258)。詳細には、プローブ130上の停止/移動インジケータライト180が、赤色になる、且つ/あるいは、ディスプレイ110が、停止するための指示を赤色で表示する。短いビープ音も発せられてもよい。装置100は、プローブ130内の加速度計を介して、プローブの動きが止まったかどうか、すなわち、停止したかどうか又は終了したかどうかを検出する(ステップS260)。動きが停止するまで(ステップS260)、停止するための視覚的及び聴覚的なフィードバックが保たれる(ステップS262)。動きが停止すると(ステップS260)、ステップS249におけるように、定量化と、任意的に、記憶のためのライブ撮像取得と、を開始するために、現在視野が、十分に的確であるかどうかについて、問合せがなされる(ステップS264)。現在視野が、的確ではない、すなわち、もはや的確ではない場合(ステップS264)、進捗バー178が、手順200の終了に向かう進捗における後退を反映するために、それに応じて短くされる。(ステップS266)。頻繁に停止しながら最も直近のプローブの動きにゆっくり引き返すように、ユーザに対する指示が発行される(ステップS268)。処理はステップS257に進む。一方、定量化と、任意的に、記憶のためのライブ撮像取得と、を開始するために、現在視野が、十分に的確である場合(ステップS264)、ユーザは、手順200の終了のためにプローブ130を依然として止めたままにするように通知される(ステップS270)。細かいセグメンテーションが、定量化のために実行される(ステップS272)。モデルが、この目的のために使用される(ステップS274)。装置100は、心臓又は心臓部位のライブ撮像を記録することを開始する(ステップS276)。装置100が、電子的誘導機能を含む場合、標準的像等の、心臓の様々な像が、この記録から再生され得る。装置100はまた、このセグメンテーションから、容積測定も行う(ステップS278)。例えば、LVサイズが、心臓周期にわたって、平均長さ又は最大長さを見つけ、平均幅又は最大幅を見つけることにより、又は、セグメンテーションの最終メッシュにおける点の座標を直接使用することにより、算出される。同様に、駆出率が、心臓周期にわたって、最小LV容積及び最大LV容積を検出し、1からこれら2つの値の比を減算することにより、算出される。このような定量化データがメモリに記憶される(ステップS280)。
【0050】
再度ステップS246を参照すると、セグメンテーション結果が、心臓が実際に完全に又はほとんど現在視野内にあることであり(ステップS246)、セグメンテーションにおいて信頼度が存在する(ステップS246a)場合、進捗バー178が、終了に近いことを反映するようにされる(ステップS282)。ステップS284において、停止するための指示が与えられる。プローブ130の動きが検出された場合(ステップS286)、停止するためのユーザアラートが保たれる(ステップS288)。プローブ130が停止したことが検出された場合(ステップS286)、心臓が、完全に又はほとんど現在視野内にあるかどうかについて、再度問合せがなされる(ステップS290)。心臓が、完全に又はほとんど現在視野内にある場合(ステップS290)、処理はステップS270に分岐し、ユーザは、手順200の終了のために停止するように指示される。そうではなく、心臓が、完全に又はほとんど現在視野内にない場合(ステップS290)、処理はステップS266に分岐し、心臓の画像を回復することを試みる。
【0051】
図3は、装置100が音響窓の配置をリアルタイムにどのように誘導できるかを、概念的に示している。プローブ302は、患者の皮膚306に対して、患者の手304により保持されている。より詳細には、プローブ302は、皮膚306に対して配置される面310を有するヘッド308を有し、面310は、専用ゲル等の音響結合媒質の分だけ皮膚から離間する。マトリックスアレイ312が、ヘッド308内に面310に沿って存在する。マトリックスアレイ312からの延長(extending)が、視野314である。この例において、視野314は3次元である。これが、図3において、「3D」という文字により示されているが、本発明の意図される範囲は、3次元撮像に限定されるものではなく、例えば、2次元撮像を包含し得る。患者の心臓316が、部分的に、図3ではほとんど、視野314内にあり、プローブ302を介して撮像されている。心臓316の一部が、十分な信頼度レベルをもって検出されたので、臨床者は、停止するように指示され、速やかにこれを行った。セグメント317への画像セグメンテーションの結果として、プローブ302、又は、マトリックスアレイ312等の、プローブの何らかの部分が、適切な位置318からの向きを想定される場合には、装置100は、モデルを使用して、心臓316の最適像すなわちターゲット像を提供する向き320を決定する。モデルは、位置318も提供する。説明の単純さのために、図3における湾曲矢印321は、プローブ302の位置322及び向き324で始まっている。矢印321は、画像セグメンテーションから導出された、モデルにより提供された位置318及びモデルにより提供された320で終わっている。湾曲矢印321は、視野314と、モデルにより提供された位置318及び向き320と、の比較を表している。この比較は、モデルにより提供された位置318及び向き320を、プローブ302の現在位置322及び現在向き324に一致させるようにする座標系変換を伴う。この変換は、並進成分326及び回転成分328を有する。手順200における視覚的フィードバック144が、例えば、図2AのステップS248及びステップS249、並びに図2BのステップS264におけるように、並進成分326及び回転成分328の大きさに基づいて選択される。図3における別の湾曲矢印330は、尖部像332をもたらせる、フィードバック144に基づく、臨床者の手304によるプローブ302の操作を示している。
【0052】
図示される例において、心臓316は、部分的に、現在視野314外にある。手順200における相対的に進んだ何らかのポイントとして、プローブ302を手で移動させる必要なくターゲット視野を実現するために、実装されている場合には電子的誘導を用いて、像を向上させることが可能である。現在視野がどれだけ向上が可能かを算出するにあたり、受信ビームフォーミングチャネル遅延等の電子的誘導パラメータが算出される。しかしながら、図3に示されるこの例において、心尖部像322に対応する好ましい視野への電子的誘導は、電子的誘導の前に像の外にあった画像コンテンツをそれでもキャプチャしない。したがって、手順200を短くするために図示される例において電子的誘導に依拠することは、その特定の画像コンテンツを有さないという影響に応じて、結果を損なう可能性がある。詳細には、画像コンテンツを利用できないことが、左心室心内膜及び左心室を取り囲む心筋層の大部分に満たない像をもたらす場合、電子的誘導は、駆出率算出のための心尖部像を得るには、それ自体としては十分ではないであろう。
【0053】
しかしながら、心臓316が完全に現在視野314内にあるように図3が再描画される場合、電子的誘導は、装置100が電子的誘導機能を有するという条件で、本明細書において直ちに説明したように進む。したがって、心尖部像332が、湾曲矢印330により表されるプローブ302の操作なく、得られる。代わりに、これは電子的誘導により実現される。プローブ302の手動操作が、心臓316の一部の検出(ステップS228)を実現するために、手順における前の方で必要とされ得るが、電子的誘導は、左心室心内膜及び左心室を取り囲む心筋層の全体又はほとんどを像にもたらすために使用されると、プローブ302のさらなる手動操作の必要性を軽減することができる。
【0054】
有利なことに、ユーザは、心臓の心尖部像を得るための手順全体を通して誘導される。
【0055】
本明細書において簡潔に上述したロボットバージョンにおいて、フィードバックをユーザに提供するための上記方法論の全てが、ロボットバージョンが自動的に動作する限りにおいて不要である。同様に、ユーザフィードバックを提供するためのインジケータライト180等の機能も、省くことができる。同様に、プローブ143のユーザによる停止及び移動のモニタリングも必要とされない。さらに、ロボットバージョンにおいて、プローブ143を並進させることがより効果的であるか又は傾けることがより効果的であるかを判定する必要がない。なぜならば、ロボットバージョンは、変換の両方の成分を同時にもたらすことができるからである。また、ステップS210を含むステップS210までの図2Aにおけるステップは、ロボットバージョンにおいても保たれる、ユーザによるステップである。これらのステップは、ユーザがプローブ143をロボットアーム141に把持させる等、ロボットのための初期化手順に伴うものである。
【0056】
本明細書において上述したように、現在の肋間腔に隣接する肋骨が視野内にあることを検出することは、最適音響窓を発見するにあたり配置されている現在の音響窓が妥当であるかの妥当性検証の一部である。心臓を見るためにプローブ302を肺の周囲でどのように操作するかについてのユーザ指示も、本明細書において上述されている。
【0057】
心臓が、肋骨及び肺組織により囲まれている場合には、心エコー検査は困難である。超音波は、石灰化している肋骨(通常は心尖部像内で遭遇する)及び肺組織をほとんど透過することができない。なぜならば、これらと他の軟部組織との間には大きな音響インピーダンス不整合(acoustic impedance mismatch)があるからである。さらに、肋骨における超音波吸収は、組織と比較して極めて高い。従来、超音波画像品質の最適化は、スクリーン上にリアルタイム表示されているグレースケール超音波画像に基づいて、ユーザによってのみ行われている。熟練しているユーザは、通常、画像劣化を認識し、それに応じてプローブ302をより良い位置に移動させることにより画像品質を向上させることができるが、それほど熟練していないユーザは、劣っている頭と眼との協調及びアーチファクトをあまり認識できないことを理由として、損なわれた画像を取得する可能性がある。超音波スキャニングの成功は、ユーザのトレーニング及び経験に強く依存する。無経験な又はそれほど熟練していないユーザが、心エコー検査を用いて心臓から意味のある情報を取得するのを支援するために、解剖学的にインテリジェントな超音波システムが望まれる。
【0058】
超音波は、石灰化している肋骨をほとんど透過することができないので、石灰化している肋骨にぶつかる超音波ビームの深部エコーは、肋骨下の組織からである可能性が非常に低い。むしろ、そのような深部エコーは、サイドローブによりピックアップされる可能性が高い。視覚的アーチファクトは、(グレースケール)超音波画像を見ている熟練した超音波検査者によって認識することはできるが、無経験のユーザによっては容易に認識することができない。
【0059】
また、無経験なユーザのために良好な画像品質を得るためには、超音波システムは、肺組織の存在を認識する必要がある。
【0060】
以下に記載の第1の障害物識別アルゴリズムは、視野を妨害する肺組織と、特に肋骨組織と、を検出するように特殊化されている。以下に記載の第2の障害物識別アルゴリズムは、特に肺組織妨害を検出するように合わせられている。これらのアルゴリズムについて、図面を参照して説明する。これらのアルゴリズムのより詳細な説明は、「Rib Blockage Delineation in Anatomically Intelligent Echocardiography」及び「Lung Tissue Identification in Anatomically Intelligent Echocardiography」と題された所有者が共通する特許出願において見出される。
【0061】
図4A及び図4Bは、超音波プローブ302の視野に対して配置されるセグメントのスクリーン上誘導画像を用いる、撮像妨害物回避のための方式の例を示している。
【0062】
これら両方の図は、超音波画像、特にセクタスキャンを主対象としている。図4Aの超音波画像は、患者の長さ方向に沿って広がる画像スライスである。一方、図4Bの超音波画像は、患者の幅方向に沿って広がる画像スライスである。
【0063】
図4Aは、上記第1のアルゴリズムだけでなく、視覚的フィードバック144の一部としてのインタラクティブ表示にも関連する。
【0064】
マトリックスアレイ160は、肋骨404及び408を部分的に含み、心臓412を部分的に含む(図4Aではほぼ全体を含む)現在視野314を有する。上記第1のアルゴリズムは、良好な超音波ビームと、肋骨404及び408による妨害に起因して良好でない超音波ビームと、の間の境界に対応する妨害物境界線416及び420を算出する。
【0065】
チャネルデータのコヒーレンスを使用して、妨害物を検出する。各チャネルは、そのそれぞれの固定トランスデューサ素子170又は素子のパッチに関連付けられた、そのそれぞれの無線周波数(RF)データの大きさを提供する。超音波エコーが戻ると、素子170に対する超音波エコーの入射圧が、迅速且つ周期的にサンプリングされる。これらのサンプルは、評価されるフィールド点の見通し線移動時間ジオメトリ(line-of-sight travel time geometry)に応じて、互いに対して遅延される。ここで、「コヒーレンス」とは、上述した受信集束遅延(receiving focusing delay)を適用した後の、アレイの異なるチャネルにより記録されたデータの間の類似性を意味する。
【0066】
コヒーレンスの1つの評価法は、Yenらの米国特許出願公開第2009/0141957号に記載されているもの等の、ビーム合計データに基づく(beamsummed-data-based)コヒーレンス推定方法であり、この公開公報の開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
この推定方法が、肋骨及び肺の妨害を検出することに合わせられ得、2つのビームフォーマを使用して、以下に例示される。s(r,θ)は、集束遅延を適用した後にj番目のチャネルにより受信された、深度rにおける(実数値の)チャネルデータを表し、C及びCはそれぞれ、第1のビームフォーマ及び第2のビームフォーマにおいて使用されるチャネルのセットを表す。第k(k=1、2)のビームフォーマの出力は、b(r,θ)であり、これに関する式が、図5に示されている。全てのチャネルデータs(r,θ)が、チャネルにわたって同一である場合、b(r,θ)及びb(r,θ)は、C及びCがどのように選択されたとしても、高い相関性がある。一方、チャネルデータが、サイドローブ領域における散乱体(scatterer)により主として寄与される場合、bとbとの間の相関性は、C及びCが適切に選択された場合、著しく低下し得る。C及びCは、相補的な交互開口(interleaving aperture)であり得る。要するに、bとbとの間の相関性に基づいて、軸上信号(on-axis signal)と軸外信号(off-axis signal)とを区別することが可能である。相関器の出力は、図5にリストされて定義されているb(r,θ)及びb(r,θ)の相関係数ρ(r,θ)であり、ここで、wは、実対称重み付け関数である。次いで、ρ(r,θ)がローパスフィルタリングされて、妨害物検出のために使用される平滑化された相関マップ
【数1】
が得られる。このアルゴリズムすなわち「第1のアルゴリズム」に関するフロー図が、図5に示されている。Cについて、s(r,θ)の合計が得られ(ステップS510)、Cについて、s(r,θ)の合計が得られる(ステップS520)。これらの相関が取られて(correlated)、相関係数ρ(r,θ)が算出され(ステップS530)、相関係数ρ(r,θ)がローパスフィルタリングされて(ステップS540)、妨害物検出のために使用される平滑化された相関マップ
【数2】
が生成される(ステップS550)。次いで、逆さまの「V」の表示のために、エッジ線が生成される(ステップS560)。
【0068】
具体的な例において、データは、80個の素子170を有するプローブを使用して、パルス反転(PI)モードにおいて、32MHzサンプリングレートで取得される。各フレームは、44本のビームを有し、ビーム密度は、1度当たり0.4944本のビーム(0.4944ビーム/度:0.4944 beam/degree)である。中心周波数は、送信及び受信のそれぞれについて、1.3MHz及び2.6MHzである。C={20−22,26−28,32−34,38−40,44−46,50−52,56−58}であり、C={23−25,29−31,35−37,41−43,47−49,53−55,59−61}である。相関器において使用される重み付け関数wは、51(軸方向すなわちr方向)×1(横方向すなわちθ方向)ボックスカー(矩形:boxcar)であり、平滑化フィルタは、501×3ボックスカーである。開口群の周期的構造に起因して、軸外信号に対する相関係数ρの感度は、軸外信号の方向によって周期的に変化する。この周期性は、両方の開口を相補的のまま保ちながらサブ開口サイズをランダム化することにより、緩和され得る。
【0069】
ビームが妨害されているかどうかを検証するために、深度72〜180mmの間において、0.55より高い相関係数(
【数3】
)を有する点の数がカウントされる。ビームにおける(32MHzサンプリングレートでの)少なくとも400個の点が、高コヒーレンスを有する場合、このビームは、組織に透過しているとみなされる。そうでない場合、このビームは、肋骨により妨害されているとみなされる。
【0070】
再度図4Aを参照し、左から右まで80本のビームをカウントしたとすると、おそらく20番目のビームが高コヒーレンスを示している。一方、19番目のビームは高コヒーレンスを示していない。したがって、図4Aでは、第1の妨害物境界線416が、19番目のビームにおいて示されている。同様に、59番目のビームが高コヒーレンスを示しているが、60番目のビームが高コヒーレンスを示していない場合、第2の妨害物境界線420が、60番目のビームに対応するように配置される。
【0071】
深度範囲の上限は重要ではない。一般に人間の肋骨の深度よりもはるかに大きい72mmが、下限として選択され得る。なぜならば、高コヒーレンスファクタ値は、複数の反射(又は反響)に起因して、肋骨直下の領域において存在し得、そのような反射は、深度につれて弱まる傾向にあるからである。
【0072】
説明している開口は、完全な開口の両端におけるチャネルを含まない。開口は、これらのチャネルを含むように拡大されてもよいが、大きな開口が使用される場合には、妨害されているビームの数が、少なく推定される可能性がある。これは、大きな相補的開口の一部が妨害されていない場合、相補的開口出力の相関係数が、それでも高い可能性があるからである。
【0073】
上記実施形態は、1Dプローブを使用して取得される2D画像を使用するが、この方法論は、容積取得を行う熟練していないユーザを誘導するために、マトリックスプローブに、したがって、3D容積撮像に適用することもできる。
【0074】
図4Aはまた、臨床者をインタラクティブに誘導するために表示され得る画像も示している。心臓412の画像は、粗いセグメンテーション(ステップS244)により心臓を規定する1以上のセグメントとして実装され得る。心臓412は、わずかではあるが部分的に視野314外にある。臨床者が、スクリーン上の視覚的フィードバック144又はプローブ上の緑色ライト180の形態の視覚的フィードバックに従って、プローブ302を移動させると、図4Aの画像は、リアルタイムにアップデートされる。境界線416及び境界線420から構成される逆さまの「V」が、所望の器官、ここでは心臓を完全に包含するように容易に生成され得る。図4Aの画像は、視覚的フィードバック144の一部として、図2A及び図2Bに関連して上述したステップS212、ステップS214、及びステップS255を補足することができる。
【0075】
プローブ配置を最適化するために、Vの広がりは、x−面ディスプレイを使用することにより拡大され得る。
【0076】
図4Aと同様に、図4Bは、上記第2のアルゴリズムだけでなく、視覚的フィードバック144の一部としてのインタラクティブ表示にも関連する。
【0077】
マトリックスアレイ160は、心臓424と肺428の一部とを含む現在視野314を有する。上記第2のアルゴリズムは、良好な超音波ビームと、肺428による妨害に起因して良好でない超音波ビームと、の間の境界に対応する妨害物境界線432を算出する。
【0078】
上記第2のアルゴリズムにおいて、PIモードにおいて取得されるRFデータの中心周波数は、肺組織を心臓組織と区別するためのパラメータとして使用される。
【0079】
2.1MHzという送信中心周波数を有するサンプルRFデータが、図6A及び図6Bに示されている。図6Aのグラフは、肺組織のインタロゲーション(interrogation)を表している。一方、図6Bのグラフは、心臓組織のインタロゲーションを表している。肺組織及び心臓組織は、慣用的な撮像においてよりもパルス反転撮像において、より異なって見える。例えば、肺組織は、より低い周波数により良く応答した。
【0080】
図6Aのグラフは、自己復調信号(self-demodulated signal)に対する肺組織の線形応答からもたらされた。広帯域送信を用いると、非線形伝播の後、正パルス及び負パルスの合計が、送信についての中心周波数のおおまかに半分である1MHz付近に有限信号を示し、これは、自己変調と呼ばれる現象である。肺組織は、心臓組織よりも良好に、この低周波数信号に応答する。一方、肺組織と比較すると、心臓組織は、PIモードにおいて、より高い周波数成分に応答する傾向にある。なぜならば、心臓組織のより強い動きが、より高い周波数におけるそれほど完全ではない抑圧(cancellation)をもたらすからである。
【0081】
上記第2のアルゴリズムの一部は、RFデータの中心周波数を推定することを含む。r(n)をサンプリングされたAライン信号とし、R(n)をその複素包絡線とする。r(n)の局所的中心周波数であるf(n)は、
【数4】
により、R(n)に関連付けられ、ここで、arg{・}は、位相/偏角を表し、fは、サンプリングレートである。f(n)の推定器(estimator)は、(1)に基づいて導出することができる。推定器の一例は、推定器としての
【数5】
である。窓関数w(i)に基づく平均化が、分散を低減させる。
【0082】
一例において、送信は、高分解能モードにおいて2.1MHzであり、サンプリングレートは、32MHzであり、ビーム密度は、1度当たり0.72本のビーム(0.72ビーム/度)である。1つの画像又はフレームは、64本のビームから構成され、1本のビームにつき2の送信である。フレームにおけるRFエコーは、{r(n,θ),r(n,θ)}と表され、ここで、下付き文字p及びnはそれぞれ、送信についての正パルス及び負パルスを表し、n及びθ=θ(k)(kはビームインデックス)はそれぞれ、時間インデックス及び角度を表す。
【0083】
図6Cは、上記第2のアルゴリズムの第1のバージョンのフロー図を示しており、ここで、
【数6】
であり、
【数7】
であり、
【数8】
は、畳み込み演算を表し、h(n)は、0.95MHz〜2.05MHzの間の121タップ片側複素バンドパスフィルタ(121-tap single-sided complex bandpass filter)である。中心周波数マップ
【数9】
が、301タップハミング窓を用い式(2)に基づいて、ビームごとに得られ、次いで、301(軸方向すなわちn方向)×5(横方向すなわちθ方向)ボックスカーフィルタにより平滑化されて、
【数10】
が得られる。最後のステップは、平滑化された中心周波数マップ
【数11】
を使用して、心臓と肺との間の境界角度を推定することである。図6Cにおけるステップは、合計(ステップS610)、複素時間フィルタリング(ステップS620)、中心周波数推定(ステップS630)、2Dフィルタリング(ステップS640)、及び境界推定(ステップS650)である。
【0084】
境界角度の推定は、複数の閾値処理を含む。1番目の閾値処理関係から始める:心臓領域として適格にするためのビームについて(すなわち、θを与える)、中心周波数は、以下の条件を満たさなければならない:
【数12】
すなわち、1500番目の点〜3000番目の点の間(36mm〜72mmの間)の平均中心周波数、1501番目の点〜3001番目の点の間の平均中心周波数、...、及び、2500番目の点〜4000番目の点の間(60mm〜96mmの間)の平均中心周波数が全て、fu1より小さくない場合に限り、ビームは、心臓組織を透過しているとみなされ得る。適格のあるビームのインデックスの集合は、集合Aと表される。例えば、fu1=1.37MHzについて、A={3,4,...,32}である(64本のビームは、図4Bにおいて右から左へカウントされており、最初の2つのビーム及び最後の2つのビームは、空間平滑化フィルタを理由として、適格でないことに留意されたい)。したがって、境界角度は、ビーム32及びビーム33にわたる平均角度として推定され得、ここで、θ(k)は、kの増加関数である。妨害物境界線432は、境界角度に対応する。
【0085】
図4Bに示される画像が実際には反転される場合を除いて、肺組織は、プローブ302が適切に配置される限りは、(患者の視点からすれば)心臓の右側に現れることはあり得ない。したがって、(3)で定められる条件を満たす最も左のビームに基づいて、境界を常に推定することができる。例えば、A={14,15,...,32}である場合、境界角度は、やはり、ビーム32及びビーム33にわたる平均角度として推定され得る。
【0086】
肺識別のロバスト性は、追加の基準を含めることにより向上され得る。2番目の閾値は、非常に低い中心周波数を有する領域を検出するために使用される:ビーム角度θを所与として、中心周波数が、
【数13】
を満たす場合、このビームは、肺組織を透過しているとみなされ得る。(4)を満たすビームのインデックスの集合は、Aと表される。図4Bに示される場合では、f=1.27MHzについて、A={3,4,...,32}であり、したがって、対応するAとの競合はない。
【0087】
3番目の(最後の)閾値は、非常に高い中心周波数を有する領域を検出するために使用される:ビーム角度θ(k)を所与として、中心周波数が、
【数14】
を満たす場合、このビームは、心臓組織を透過しているとみなされる。すなわち、5本の連続するビームが、非常に高い中心周波数を示す場合、その中央のビームは、心臓組織を透過している高い可能性を有する。(5)を満たすビームのインデックスの集合は、Aと表される。
【0088】
実際、A、A、及びAは、互いと一致する可能性は低い。例えば、AとAとの共通部分は、いくつかのビームが心臓組織及び肺組織の両方を透過しているとみなされ得ることを意味する非空集合である可能性がある。したがって、これらの集合が、優先度付けされ得る。詳細には、A((5)で定められる、非常に高い周波数の条件)には、最高優先度が与えられ、A((3)で定められる、高周波数の条件)には、最低優先度が与えられる。「調整された心臓組織集合」が、
【数15】
として定義され、ここで、max(A)は、Aのうちの最大要素であり、Aが空集合である場合には−∞と定義される。以下は、均等の定義である:
【数16】
であり、ここで、
【数17】
である。
心臓と肺との間の境界が、Aのうちの最大要素に基づいて推定される。例えば、A={5,6,...,50}であり、A={3,4,49,50,51}であり、A={11,12,13}である場合、A’={49,50,51}であり、A={5,6,...,48}であり、推定境界角度
【数18】
は、ビーム48及びビーム49にわたる平均角度である。空集合であるAは、肺組織が画像全体を占めていることを示す。Aが空集合でない場合、
【数19】
であり、ここで、Δθ=θ(k+1)−θ(k)である。2D平滑化フィルタは、サイドのビームを劣化させるので、max(A)≧(ビーム数)−(2D平滑化フィルタの横方向の寸法の半分)=64−(5−1)/2=62である場合、肺組織は、画像内に現れないと結論付けられる。
【0089】
u1の役割は、fの役割よりもはるかに重要であるが、時として、Aの存在が、境界を決定することにおいて、積極的に寄与する。まとめると、上記第2のアルゴリズムのこの第1のバージョンにおいて、fu1=1.37MHzであり、f=1.27MHzであり、fu2=∞である。
【0090】
上記第2のアルゴリズムの第2のバージョンも、1Dプローブ及びPIデータに関連する。上述したように、肺組織は、低周波数信号成分に直線的に良く応答し、動きは、PIモードにおいて、心臓組織におけるより高い周波数でのそれほど完全ではない抑圧を生じさせる。これは、図6Cに示される信号処理チェーンにおいて、r(n,θ)を複合信号r(n,θ)で置換することによる性能向上の可能性を示す。この理由から、上記第2のアルゴリズムの第2のバージョンが存在する。図7は、r(n,θ)がどのように形成されるかを示しており、ここで、
【数20】
は、ステップS710であり、
【数21】
は、ステップS720であり、ステップS730は、ステップS610と同一であり、
【数22】
は、ステップS740であり、
【数23】
は、ステップS750であり、h(n)は、0、8MHzでの101タップ実ローパスフィルタカットオフであり、h(n)は、1.15MHzでの101タップ実ハイパスフィルタカットオフである。肺組織からのエコーは、rd,l(n,θ)に有利に働き(低周波数成分に良く反応することを理由として)、心臓組織からのエコーは、rs,h(n,θ)に有利に働く(より多くの動きを理由として)。w及びwは、これら2つの強さをバランスさせるために使用される重みである。r(n,θ)に続く信号処理は、図6Cにおけるr(n,θ)に続く信号処理と同じままである。例示的なパラメータとして、w=1.2であり、w=1であり、fu1=1.4MHzであり、f=1.2MHzであり、fu2=1.5MHzである。
【0091】
上記第2のアルゴリズムのマトリックスプローブバージョンは、上記第2のバージョンに基づく−複合信号が、中心周波数推定のために使用される。RFデータは、例えば、PIが有効化された透過撮像モード(penetration imaging mode)と、2.2MHzという中心周波数と、を使用して、収集され得る。横方向の幅及び高さ方向の幅が、最大であり得る。
【0092】
各容積は、40個のθ(横方向)値及び33個のφ(高さ方向)値を伴うRFエコー{r(n,θ,φ),r(n,θ,φ)}を有する。横方向のビーム密度は、1度当たり0.41本のビーム(0.41ビーム/度)である。
【0093】
図8は、上記第2のアルゴリズムのマトリックスプローブバージョンのフロー図を示しており、ここで、時間サンプリングレートは、16MHzである。ステップは、減算(ステップS805)、ローパスフィルタリング(ステップS810)、合計(ステップS815)、ハイパスフィルタリング(ステップS820)、重み付け合計(ステップS825)、複素時間フィルタリング(ステップS830)、中心周波数推定(ステップS835)、2Dフィルタリング(ステップS840)、境界推定(ステップS845)、中央値フィルタリング(ステップS850)、及び面をまたがる視覚化(ステップS855)である。要するに、φ=φ(ν)であり、
【数24】
であり、
【数25】
であり、
【数26】
であり、
【数27】
であり、
【数28】
であり、h(n)は、0、8MHzでの51タップ実ローパスフィルタカットオフであり、h(n)は、1.3MHzでの51タップ実ハイパスフィルタカットオフであり、w=2であり、w=1である。複素包絡線R(n,θ,φ)は、
【数29】
であり、ここで、h(n)は、0.95MHz〜2.05MHzの間の61タップ片側複素バンドパスフィルタである。各高さ方向面において、中心周波数マップ
【数30】
が、151タップハミング窓を用い式(2)に基づいて、ビームごとに得られ、次いで、151(n方向)×3(θ方向)ボックスカーフィルタにより平滑化されて、
【数31】
が得られる。
【0094】
境界推定に関して、以下が定義される:
【数32】
であり、
【数33】
であり、
【数34】
であり、ここで、fu1=1.38MHzである。均等なものとして、
【数35】
であり、
【数36】
であり、A2,ν及びA3,νは空集合であり、調整された心臓組織集合Ah,ν=A1,νである。
【0095】
ν番目の面における心臓と肺との間の境界角度は、
【数37】
である。
【0096】
次いで、高さ方向における5タップ中央値フィルタ(νの関数)が、
【数38】
に適用され、その出力が、
【数39】
と表される。フィルタリングされた境界角度
【数40】
から、心臓領域を示すマップが、面をまたがる視覚化を提供するために導出され得る。時として現れる、心臓と肺との間の境界付近の外れ値を除去するために、最大接続領域のみが表示される。臨床者は、ステップS226において、肺を回避するために、図4Bの表示を使用して、プローブ302をインタラクティブに操作することができる。
【0097】
撮像誘導装置は、センサ及び撮像プロセッサを含む。撮像プロセッサは、センサのうちの複数のセンサを介して、現在位置及び現在向きから、関心物の画像を取得することと、モデルに基づいて、取得された画像をセグメント化することと、セグメント化した結果に基づいて、ターゲット位置及びターゲット向きを決定することであって、ターゲット位置及び/又はターゲット向きは、現在位置及び/又は現在向きと相応に異なる、決定することと、を行うよう構成されている。現在視野を向上させることに向けて有効な電子的誘導パラメータが算出され得、ユーザには、向上させることに向けて撮像プローブをナビゲートする際の指示フィードバックが提供され得る。ロボットは、ユーザ介入の必要なく自動的に、上記決定に応じて、撮像プローブに力を与えて、撮像プローブを移動させるよう構成され得る。
【0098】
特に超音波検査についてトレーニングされていない可能性がある看護師又は他の臨床者により行うことが可能な心臓診断検査を行うことに加えて、装置100は、無経験の超音波検査者を誘導することもできる。装置100は、この目的又はこのモードのために、本明細書において上述した視覚的フィードバック144とともに、通常の(グレースケール)超音波画像を特徴づけることができる。あるいは、装置100の新規な視覚的フィードバック144は、トレーニングされている又は熟練している超音波検査者の作業フローを速めることができる。
【0099】
本発明が、図面及び上記記載において、詳細に図示及び説明されているが、そのような図示及び説明は、限定的なものではなく、例示的なものと考えられるべきである。本発明は、開示している実施形態に限定されるものではない。例えば、プローブ誘導指示の形態の、スクリーン上のユーザフィードバックは、可聴の音声命令により補足されてもよいし置換されてもよい。
【0100】
開示している実施形態に対する他の変形が、図面、本開示、及び請求項を検討することから、特許請求される発明を実施する際に、当業者により理解され、もたらされ得る。請求項において、「備える、含む、有する(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。請求項中のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0101】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切なコンピュータ読み取り可能な媒体上に、瞬間的に、一時的に、又はより長い時間期間の間、記憶され得る。このような媒体は、一時的な伝搬信号ではないという意味においてのみ非一時的であり、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、RAM、及び他の揮発性メモリ等の他の形態のコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。
【0102】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項中に記載された複数のアイテムの機能を満たしてもよい。所定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8