【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 愛知地域スーパークラスタープログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)を用いることにより、シリコン(Si)等の従来の半導体材料では実現困難な、高出力、高周波、高耐圧、高耐環境性を有する半導体素子を実現することが可能となる。そのため、GaNは、大電力制御や省エネルギーを可能とするパワーデバイス材料、高速大容量の通信デバイス材料、車載用の耐熱性デバイス材料、耐放射線デバイス材料等の広い範囲への応用が期待されている。特に近年では、ハイブリッド自動車のインバータや太陽光発電施設のパワーコンディショナ等において使用される高耐圧かつ低オン抵抗のスイッチング素子の有望な候補として、GaNを用いたトレンチ型のMOSFET(トレンチ型GaN MOSFET)が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図13は、このようなトレンチ型GaN MOSFET(以下、単に「トレンチ型MOSFET」とも呼ぶ)の構成を模式的に示す断面模式図であり、
図14は、トレンチ型MOSFETを構成するGaNの結晶方位を示す説明図である。
図13の例に示すトレンチ型MOSFETでは、n
+−GaN基板の(0001)面(Ga面)上において、[0001]方向に、n
−−GaN層、p−GaN層およびn
+−GaN層がこの順にエピタキシャル成長されている。そして、n
+−GaN層からn
−−GaN層にわたって、[000−1]方向に穿たれた溝(トレンチ)が形成され、当該トレンチの内側に絶縁体に囲まれたゲート電極が配置される。
【0004】
このトレンチ型MOSFETにおいて、ドレイン電極に対して正の電圧をゲート電極に印加すると、p−GaN層のゲート電極側(絶縁体側)の端部、すなわちトレンチの側壁には、電子が集中する。このように形成された電子が集中した領域(チャネル)は、ソース電極とドレイン電極間で流れる電流の経路となる。一般的に、トレンチは、その側壁が(1−100)面(m面)および(11−20)面(a面)の少なくとも一方を含むように形成される。上述のように、チャネルは、トレンチの側壁に形成されるため、トレンチ型MOSFETの素子特性は、m面あるいはa面における結晶欠陥の密度や分布の影響を受ける。
【0005】
また、従来、GaN、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)あるいはこれらの混晶である窒化物系半導体を用いて発光デバイスを製造する場合には、上述のトレンチ型MOSFETと同様に、[0001]方向あるいは[000−1]方向(c軸方向)にエピタキシャル成長が行われる。しかしながら、エピタキシャル成長が行われるGa面あるいは(000−1)面(N面)においては、c軸方向に分極が発生する。そのため、Ga面やN面(極性面)に積層された活性層では、電子とホールの分布に位置ずれが生じ、内部量子効率が低下する。そこで、法線方向に分極が発生しないm面やa面(非極性面)を基板主面とするGaN基板にエピタキシャル成長を行い、内部量子効率がより高い発光デバイスを作成することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。この場合においても、発光デバイスの素子特性は、m面あるいはa面における結晶欠陥の密度や分布の影響を受ける。
【0006】
このように、m面あるいはa面における結晶欠陥の密度や分布は、トレンチ型MOSFETや、非極性面上にエピタキシャル成長された発光デバイスの素子特性に影響を与える。この問題は、これらのトレンチ型MOSFETや発光デバイスに限らず、窒化物系半導体を用いた種々の電子デバイスに共通する。そのため、窒化物系半導体において、m面あるいはa面における結晶欠陥を検出する技術が強く求められている。
【0007】
一般的に、結晶欠陥を検出する技術としては、電子線照射で発生する発光(カソードルミネセンス:CL)の強弱分布を走査型電子顕微鏡等を用いて観察するCLイメージングや、シンクロトロン放射光などの高輝度X線光源を用いたX線トポグラフィが知られている。これらの方法によれば、窒化物半導体の任意の面における結晶欠陥を検出することが可能である。しかしながら、いずれの方法も、高価な設備が必要であり、結晶欠陥を簡便かつ低コストで検出することは困難である。
【0008】
また、窒化物系半導体の結晶欠陥を検出するため、エッチングにより結晶欠陥を顕在化したエッチピットを形成することが種々提案されている。非特許文献2には、エッチピットを形成する方法として、共晶条件で混合された水酸化カリウム(KOH)および水酸化ナトリウム(NaOH)を融解し、融解した溶融液を用いてGaN基板をエッチングする方法、高温にした硫酸(H
2SO
4)とリン酸(H
3PO
4)の混合液を用いてGaN基板をエッチングする方法、および、KOH水溶液中においてGaN基板を光電気化学エッチングする方法が記載されている。しかしながら、これらの方法は、いずれも極性面において結晶欠陥を顕在化したエッチピットを形成する方法であり、非極性面において結晶欠陥を顕在化したエッチピットを形成する技術は確立していない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A1.結晶欠陥の検出
A2.実施例および比較例:
【0019】
A1.結晶欠陥の検出:
図1は、本発明の一実施形態として窒化ガリウム(GaN)試料の結晶欠陥を検出する際のエッチング工程の具体例を示す説明図である。詳細については後述するが、
図1に一例を示すエッチング工程を経ることにより、GaN試料の(11−20)面(a面)および(1−100)面(m面)には、結晶欠陥の位置に窪み(エッチピット)が形成される。なお、本実施形態のエッチングの対象となるGaN試料は、a面およびm面(「非極性面」と呼ばれる)の少なくとも一方が表面として露出している試料であれば良い。具体的には、本実施形態のエッチングは、a面あるいはm面を側壁とするトレンチが形成された電子デバイスやGaN基板、基板主面がa面あるいはm面のGaN基板等に適用される。
【0020】
本実施形態においてエッチングの対象となる面は、必ずしも正確なa面あるいはm面(以下、このような面を「ジャスト面」とも呼ぶ)である必要はない。一般的には、化学的な特性がほぼ同一とみなされる範囲であれば、a面あるいはm面のジャスト面からある程度の角度まで傾いた面(オフ面)を、エッチングの対象とすることも可能である。従って、本明細書および本発明においては、特に言及しない限り、a面とは、a面のジャスト面およびオフ面を包含し、m面とは、m面のジャスト面およびオフ面を包含するものとして扱う。同様に、非極性面とは、a面のジャスト面およびオフ面、ならびに、m面のジャスト面およびオフ面を包含するものとして扱う。なお、ジャスト面とオフ面とのなす角度(オフ角)は、10°以下であるのが好ましく、5°以下であるのがより好ましい。
【0021】
図1に示すエッチング工程においてエッチピットが形成され、結晶欠陥が顕在化された非極性面の形態を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察することにより、非極性面における結晶欠陥を検出することができる。また、エッチピットは、結晶欠陥の種類によってその形状が異なるため、エッチピットの形状を観察することにより、非極性面における結晶欠陥の種類を判別することが可能となる。さらに、エッチピットが形成された非極性面の形態観察による結晶欠陥の検出の他、例えば、エッチング工程により十分に小さなエッチピットを形成した後、SEMによりエッチピットの位置を特定し、特定されたエッチピット近傍の結晶構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することによって、結晶欠陥の発生原因や、結晶欠陥の伝播特性等を評価することも可能である。
【0022】
本実施形態において、エッチングは、空気雰囲気中で加熱・融解したエッチング剤(後述する)中にGaN試料SPC(以下、単に「試料SPC」とも呼ぶ)を浸漬することにより行われる。具体的には、まず、
図1(a)に示すように、ヒータ12内に、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、アルミナ(Al
2O
3)等のエッチング剤に対する耐食性を有する素材からなる坩堝21を配置する。坩堝21には、その内部に熱電対13が配置されるとともに、固体のエッチング剤が装入される。温度調節器11は、熱電対13により計測されたエッチング剤の温度に応じて、ヒータ12への供給電力を制御することにより、エッチング剤の温度を予め設定された温度(設定温度)に調節する。
【0023】
エッチング剤は、温度調節器11の設定温度を漸次高くしていくことにより、加熱され昇温する。加熱によりエッチング剤の温度が融解温度を超えると、
図1(b)に示すようにエッチング剤が融解して、坩堝21内に融解したエッチング剤(溶融エッチング剤)が収容された状態となる。エッチング剤の昇温は、エッチング剤が融解した後も、エッチング剤の温度が所定のエッチング温度(後述する)に到達するまで継続される。
【0024】
エッチング剤の温度がエッチング温度に到達した後、試料SPCをNiあるいはPtからなる試料ホルダ22に載せ、試料SPCを溶融エッチング剤に浸漬する(
図1(c))。試料SPCの溶融エッチング剤への浸漬を開始してから所定のエッチング時間(例えば、1〜6分)が経過した後、試料SPCは溶融エッチング剤から引き上げられる。なお、エッチング時間は、エッチング剤の組成、エッチング温度、および、試料SPCであるGaN試料の状態に応じて、適宜変更される。
【0025】
次いで、溶融エッチング剤から引き上げられた試料SPCは、水中に投入され、洗浄される。これにより、試料SPCを覆うエッチング剤が溶解し、
図1(d)に示すように、試料SPCが取り出される。なお、試料SPCの水中への投入は、急冷による試料SPCの破損を抑制するため、溶融エッチング剤からの引き上げから所定の冷却時間(例えば5分)経過してから行うのが好ましい。
【0026】
エッチング剤としては、水酸化カリウム(KOH)に過酸化ナトリウム(Na
2O
2)を適量添加したものを用いることができる。一般的に、GaNはバンドギャップが広く、ドープ型やキャリア濃度によるバンドギャップの中にあるフェルミ準位の変化範囲が広いため、GaNにおけるフェルミ準位とエッチング剤におけるフェルミ準位の差が大きくなる場合がある。フェルミ準位の差が大きくなると、GaNと溶融KOH等のエッチング剤との界面付近ではGaNのバンドベンディングが大きくなる。このようにして、例えば、バンドが上方に大きくベンドした場合、界面付近には多くの正孔が供給されるため、エッチング過程における電気化学エッチング成分が強くなる。電気化学エッチングは等方的なエッチングであるため、結晶欠陥の近傍領域以外においてもエッチングが進行し、エッチピットが形成されにくくなる。また、エッチピットが形成される場合においても、結晶欠陥の種類の違いによる形状の変化が現れにくいため、結晶欠陥の種類を特定することが困難となる。
【0027】
一方、本実施形態においては、KOHにNa
2O
2を添加することにより、Na
2O
2が分解して生成された酸素原子が化学エッチングを促進する。そのため、エッチング過程における化学エッチング成分が、電気化学エッチング成分よりも強くなる。化学エッチングは、異方性のエッチングであるため、結晶欠陥の近傍領域においてエッチングが進行して、エッチピットが形成される。また、エッチングの異方性により、結晶欠陥の種類の違いにより形状の異なるエッチピットが形成されるので、結晶欠陥の種類を特定することが可能となる。
【0028】
なお、Na
2O
2の添加量が少なくなると、上述した化学エッチングの促進効果が減弱し、エッチピットの形成が抑制される。一方、Na
2O
2の添加量が多くなると、反応性が高い酸素原子の分解生成量が多くなるため、坩堝21の腐食等が進行しやすくなる等、エッチング剤の取り扱いが必ずしも容易ではなくなる。このような特性を考慮して、Na
2O
2の添加量は、KOHに対する重量比(Na
2O
2/KOH)で1%から10%の範囲とするのが好ましく、3%から7%の範囲とするのがより好ましい。
【0029】
また、本実施形態では、KOHにNa
2O
2を添加したエッチング剤を用いているが、一般的に、エッチング剤は、アルカリ金属水酸化物からなる主剤に、酸化性固体からなる添加剤を添加したものを使用することができる。主剤としては、1種のアルカリ金属水酸化物(LiOH、NaOH、KOH、RbOHもしくはCsOH)、あるいは、これらの混合物を用いることができる。但し、入手がより容易である点で、エッチング剤としては、NaOH、KOH、あるいは、NaOHとKOHとの混合物を用いるのが好ましい。添加剤としては、Na
2O
2の他、熱分解により酸素原子を生成する種々の酸化性固体を用いることができる。添加剤としては、具体的には、アルカリ金属過酸化物(Na
2O
2、K
2O
2等)、アルカリ土類金属過酸化物(MgO
2、CaO
2、BaO
2等)、アルカリ金属塩素酸塩(NaClO
3、KClO
3等)、アルカリ金属硝酸塩(NaNO
3、KNO
3等)およびこれらの混合物を用いることができる。
【0030】
エッチング温度は、主剤の融解温度(KOHでは406℃)と添加剤の分解開始温度(Na
2O
2では450℃)とのいずれもより高ければよい。但し、エッチング温度が高くなると、エッチピットのサイズが大きくなりすぎてエッチピットが重なり合う(「オーバーラップ」と呼ばれる)ため、結晶欠陥の密度を正確に評価することが困難となる。そのため、エッチング温度は、600℃以下とするのが好ましい。また、エッチング温度が高くなると、電気化学エッチング成分が強くなり、結晶欠陥の種類が異なることによるエッチピットの形状の変化が現れにくくなる。そのため、エッチング温度は、550℃以下とするのがより好ましい。
【0031】
なお、本実施形態では、上述のエッチング方法を用いることによりGaN試料の結晶欠陥の検出を行っているが、当該エッチング方法は、GaN試料に限らず、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、および、GaNとAlNとInNとの少なくとも2つを含む混晶等を含む、窒化物系半導体全般の試料の結晶欠陥の検出にも用いることができる。また、本実施形態のエッチング方法および結晶欠陥の検出方法は、種々の基板上に窒化物系半導体をエピタキシャル成長した窒化物系半導体の単結晶膜、当該単結晶膜を加工して作成された電子デバイス等、窒化物系半導体一般に適用することができる。
【0032】
また、
図1の例では、予めKOHにNa
2O
2を添加したエッチング剤を坩堝21に装入しているが、KOHが融解しエッチング温度に達した後、試料SPCの浸漬の前にNa
2O
2を坩堝21に装入するものとしても良い。さらに、KOHにNa
2O
2を添加したエッチング剤と、試料SPCとを予め坩堝21に装入し、マッフル炉等により坩堝21全体を加熱するものとしても良い。
【0033】
A2.実施例および比較例:
本実施形態の実施例および比較例として、GaN試料をエッチングし、その表面形態を観察した。具体的には、まず、GaN試料として、一辺の長さが約2mmのほぼ直方体形状で、機械研磨により鏡面加工されたa面およびm面を有するGaN小片を準備した。次いで、準備したGaN小片のa面およびm面の表面形態を光学顕微鏡を用いて観察した。
【0034】
図2は、エッチング前におけるGaN小片の表面形態を示す光学顕微鏡像である。
図2
(a)および
図2(b)は、それぞれa面およびm面の表面形態を示している。
図2(a)および
図2(b)に示すように、機械研磨を行うことにより、a面およびm面は、十分に平坦であることが確認できた。
【0035】
表面形態の観察に引き続き、GaN小片のエッチングを行った。具体的には、まず、ニッケル(Ni)製の坩堝に、KOHおよびNa
2O
2からなるエッチング剤を装入した。次いで、ヒータで坩堝を加熱してエッチング剤を融解し、さらに昇温を継続してエッチング剤の温度を所定のエッチング温度とした。エッチング剤の温度が所定のエッチング温度に到達した後、溶融したエッチング剤にGaN小片を浸漬した。そして、所定のエッチング時間が経過した後、GaN小片を取り出し、エッチングされたGaN小片を水中に投入することによりエッチング剤を溶解させ、エッチングが行われたGaN小片を得た。また比較例として、Na
2O
2を含まないエッチング剤を坩堝に装入し、実施例と同様にエッチングを行った。次いで、エッチング後のGaN小片のa面およびm面の表面形態を、光学顕微鏡を用いて観察した。実施例および比較例において、エッチング剤の組成、エッチング温度およびエッチング時間は、以下の表1に示すように設定した。
【表1】
【0036】
[実施例1]
図3および
図4は、実施例1のエッチング後におけるGaN小片の表面形態を示す説明図である。
図3(a)は、GaN小片のa面のうち結晶欠陥の密度が低い領域(低欠陥密度領域)の光学顕微鏡像であり、
図3(b)は、GaN小片のa面のうち結晶欠陥密度が高い領域(高欠陥密度領域)の光学顕微鏡像である。
図4(a)は、GaN小片のm面の光学顕微鏡像であり、
図4(b)は、
図4(a)に示されるm面の一部を拡大した拡大像である。また、
図4(c)は、
図4(b)で観察されたエッチピットの形状を分類した様子を示している。
【0037】
図3に示すように、実施例1のエッチングを行うことにより、a面において、結晶欠陥がエッチピットとして顕在化されるとともに、機械研磨の際に生じた微小な傷(研磨傷)が顕在化された。また、
図4に示すように、m面においても、実施例1のエッチングを行うことにより、結晶欠陥がエッチピットとして顕在化されるとともに、研磨傷が顕在化された。m面においては、
図4(b)に示すように、異なる形状のエッチピットが観察された。これらのエッチピットの形状は、
図4(c)に示すように、概ね4種類(Aタイプ〜Dタイプ)に分類することが可能である。これらのエッチピットのうち、Aタイプのエッチピットは、貫通転位に由来すると考えられ、Bタイプのエッチピットは、基底面転位に由来すると考えられる。また、CタイプおよびDタイプのエッチピットは、二次元的に拡がる積層欠陥に由来すると考えられる。なお、m面に貫通転位に由来すると考えられるエッチピットが形成されたのは、試料としたGaN小片のm面がジャスト面ではなく、オフ面となっていたためと推測される。
【0038】
[実施例2]
図5は、実施例2のエッチング後におけるGaN小片の表面形態を示す説明図である。
図5(a)および
図5(b)は、それぞれ、GaN小片のa面およびm面の光学顕微鏡像である。上記表1に示すように、実施例2では、エッチング時間を実施例1よりも短くしている。そのため、エッチングが十分に進行せず、
図5に示すように、光学顕微鏡像では、エッチピットの形状を明瞭に把握することは困難であった。但し、a面およびm面のいずれにおいても、エッチピットは形成されていた。
【0039】
[実施例3]
図6および
図7は、実施例3のエッチング後におけるGaN小片の表面形態を示す説明図である。
図6(a)は、GaN小片のa面の光学顕微鏡像であり、
図6(b)は、
図6(a)に示されるa面の一部を拡大した拡大像である。
図7(a)は、GaN小片のm面の光学顕微鏡像であり、
図7(b)は、
図7(a)に示されるm面の一部を拡大した拡大像である。
図6および
図7に示すように、実施例3のエッチングによっても、結晶欠陥および研磨傷が顕在化された。また、実施例3では、エッチング時間を実施例1よりも長くしているため、結晶欠陥および研磨傷がより明瞭に現れた。なお、
図6(b)および
図7(b)に示すように、結晶欠陥が集中している領域では、エッチピットのオーバーラップが生じていた。そのため、結晶欠陥の数をカウントして欠陥密度を評価した場合、評価された欠陥密度の精度が実施例1よりも低下する可能性があることが分かった。
【0040】
[実施例4]
図8および
図9は、実施例4のエッチング後におけるGaN小片の表面形態を示す説明図である。
図8(a)は、GaN小片のa面の光学顕微鏡像であり、
図8(b)は、
図8(a)に示されるa面の一部を拡大した拡大像である。
図9(a)は、GaN小片のm面の光学顕微鏡像であり、
図9(b)は、
図9(a)に示されるm面の一部を拡大した拡大像である。
図8および
図9に示すように、実施例4のエッチングによっても、結晶欠陥が顕在化された。但し、実施例4では、エッチング温度を実施例1よりも低くしているため、エッチングが十分に進行せず、
図8(b)および
図9(b)に示すように、光学顕微鏡像においてエッチピットの形状を明瞭に把握することは困難であった。
【0041】
[実施例5]
図10および
図11は、実施例5のエッチング後におけるGaN小片の表面形態を示す説明図である。
図10(a)は、GaN小片のa面の光学顕微鏡像であり、
図10(b)は、
図10(a)に示されるa面の一部を拡大した拡大像である。
図11(a)は、GaN小片のm面の光学顕微鏡像であり、
図11(b)は、
図11(a)に示されるm面の一部を拡大した拡大像である。
図10および
図11に示すように、実施例5のエッチングによっても、結晶欠陥および研磨傷が顕在化された。しかしながら、実施例5のエッチングでは、実施例1のエッチングによりm面に形成されたエッチピット(
図4(b)参照)のように、結晶欠陥の種類によるエッチピットの形状の違いは明確に把握できなかった。これは、エッチング温度を実施例1よりも高くしたために、電気化学エッチング成分が強くなり、エッチングの異方性が低下したためと考えられる。
【0042】
[比較例]
図12は、比較例のエッチング後におけるGaN小片の表面形態を示す説明図である。
図12(a)は、GaN小片のa面の光学顕微鏡像であり、
図12(b)は、GaN小片のm面の光学顕微鏡像である。比較例では、エッチング剤としてKOHのみを用い、異方性の化学エッチングを促進するNa
2O
2を添加していない。そのため、比較例のエッチングを行っても、
図12に示すように、a面およびm面のいずれにおいてもエッチピットは形成されなかった。
【0043】
以上のように、KOHにNa
2O
2を添加したエッチング剤を融解し、溶融したエッチング剤にGaN試料を浸漬することにより、GaN試料のa面およびm面のいずれにおいても、エッチピットを形成することができた。また、結晶欠陥の種類に応じて異なる形状のエッチピットを形成することが可能であり、結晶欠陥の種類を特定することが可能であることが確認できた。さらに、エッチピットのオーバーラップを抑制することができたことから、結晶欠陥の密度をより正確に評価することが可能であることが確認できた。