(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気体抽出部は、複数台からなり、1台当たり、前記蒸気タービンの定格運転時に前記ホールディング運転を行うことが可能な前記復水器から抽出する気体の抽出容量を有し、
前記ガス化炉の起動時に前記ホールディング運転を行うとき、前記気体抽出部を2台以上で運転されることを特徴とする請求項2に記載のガス化炉設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス化炉の起動期間において、ガス化炉の内部を、酸露点を超える温度に予め上昇させるため、ガス化炉内部に設けられたシンガスクーラ(熱交換器)に温水を供給する。温水は、ガス化炉内部に対する加温用のウォーミング給水であり、例えば、排熱回収ボイラ(HRSG)の節炭器出口から供給される。シンガスクーラに供給された温水は、循環ポンプによって、熱交換器の伝熱管内部を通過し、ガス化炉の内部の気体と熱交換して、ガス化炉の内部を温度上昇させる。
【0007】
排熱回収ボイラで発生した温水は、高温高圧の加圧温水であり、一方、ガス化炉の起動時に常圧又は若干の加圧状態で、所定圧力には至っていない状態であるシンガスクーラに供給されると、排熱回収ボイラとシンガスクーラを結ぶ配管に設けられた流量調整弁の下流側で圧力が低下して飽和圧力以下となり、フラッシュする。そのため、低温での酸腐食抑制のための操作により、新たに配管内にエロージョンが発生するおそれがあり、また、フラッシュが生じない程度に徐々に温水の供給量を増加させる必要がある。そのため、ガス化炉の起動時間が長時間必要になるという課題があった。
【0008】
これに対し、シンガスクーラに設けられた蒸気ドラムの内部を窒素によって加圧することで、シンガスクーラの伝熱管内部が高圧になり、シンガスクーラに温水を供給する際、フラッシュの発生を防止できる。したがって、フラッシュの発生を考慮して徐々に排熱回収ボイラから供給する温水の供給量を増加させる必要がなく、単位時間当たりの温水の供給量を増加させる、すなわち急速に温水の供給量を増加させることができるため、ガス化炉の起動時間を短縮化できる。
【0009】
しかし、ガス化炉の起動時間は、依然として数時間オーダーである。その間、ガス化炉設備の通常運転前のガス化炉起動のために、ガスタービンが軽油等の補助燃料を消費し、窒素発生のため高動力の空気分離装置(ASU)を運転しており、エネルギー消費やコスト上昇の原因となっている。そこで、ガス化炉の起動において、さらなる省エネルギー化や低コスト化を図る必要がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ガス化炉の起動時間をより短縮化し、省エネルギー化や低コスト化を図ることが可能なガス化炉設備、ガス化複合発電設備及びガス化炉設備の起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様に係るガス化炉設備は、ガス化炉と、前記ガス化炉の内部に設けられた水系統熱交換器と、前記水系統熱交換器に接続された蒸気ドラムと、前記水系統熱交換器に対して加圧された温水を供給する温水供給部と、前記水系統熱交換器と前記蒸気ドラムを結び、前記温水が前記水系統熱交換器と前記蒸気ドラムを循環する循環系統と、前記蒸気ドラムに対して加圧された不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、蒸気タービンの出口に設けられつつ、前記蒸気ドラムに接続され、前記蒸気ドラムから水が供給される復水器と、前記復水器に接続され前記復水器内の気体を抽出し排気する気体抽出部とを備え、前記ガス化炉の起動時に、前記気体抽出部は、前記蒸気タービンの定格運転時よりも大きい抽出量で
前記蒸気ドラムから供給された水に溶存していた不活性ガスを含む気体を前記復水器から抽出し排気することで
、前記復水器の
真空状態を維持することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ガス化炉の内部には熱交換器が設けられ、熱交換器は、熱交換器に接続された蒸気ドラムとの間で、ガス化炉の起動時に、温水供給部から供給された加圧温水が循環するため、ガス化炉を起動する際、ガス化炉の内部が温度上昇する。また、ガス化炉の起動時に、蒸気ドラムに対して加圧された不活性ガス、例えば窒素が供給されて、循環系統や熱交換器の内部も加圧されるため、温水供給系統から加圧温水を供給する際、加圧温水がフラッシュすることがない。したがって、循環系統に対して供給する加圧温水を徐々に増加させる必要がなく、起動時間を短縮できる。温水供給系統は、例えば排熱回収ボイラである。
【0013】
また、復水器は、蒸気タービンの出口に設けられつつ、蒸気ドラムにも接続されて、ガス化炉の起動時に蒸気ドラムから水が供給され、蒸気ドラムに対して加圧した不活性ガスが、水に溶存して復水器に供給されて復水器で不活性ガスが気中へ放出される。このとき、復水器に接続された気体抽出部によって、復水器内の気体が抽出される。気体抽出部は、例えば真空ポンプであり、蒸気タービンの定格運転時に復水器から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、ガス化炉の起動時に復水器から気体を抽出することから、蒸気ドラムから復水器へ供給される水の中に蒸気ドラムに対して加圧した不活性ガスが溶存した場合でも、復水器内の真空度を高めることができる。
【0014】
したがって、気体抽出部が抽出できる気体の抽出量に応じて、ガス化炉の起動時に熱交換器に対して供給される加圧温水の量を増加させることもできる。加圧温水の量を増加させると、水に対する不活性ガスの溶存量も増加して復水器での不活性ガスの放出が増加するが、上述したとおり、ガス化炉の起動時に復水器から大きい抽出量で気体を抽出できることから、復水器内の真空度を高い状態のまま維持できる。ガス化炉の起動時に熱交換器に対して供給される加圧温水の量を増加することができるので、ガス化炉の起動時間を更に短縮できる。
【0015】
また、気体抽出部が抽出できる気体の抽出量に応じて、ガス化炉の起動時に熱交換器に対して供給される加圧温水の温度を上昇させることもできる。なお、加圧温水の温度を上昇させると、加圧温水がフラッシュしないように蒸気ドラムをより加圧する必要があり、その結果、水に対する不活性ガスの溶存量も増加する。しかし、本実施形態では、上述したとおり、ガス化炉の起動時に復水器から大きい抽出量で気体を抽出できることから、復水器内の真空度を高く維持できる。ガス化炉の起動時に熱交換器に対して供給される加圧温水の温度が上昇することから、ガス化炉の起動時間を更に短縮できる。
【0016】
上記第1態様において、前記気体抽出部は、真空ポンプと、エゼクタとを有し、所定の圧力以上では、前記真空ポンプのみによるホギング運転が行われ、前記所定の圧力未満では、前記真空ポンプと前記エゼクタによるホールディング運転が行われ、前記気体抽出部は、前記蒸気タービンの定格運転時に前記ホールディング運転を行っているときの前記復水器から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、前記ガス化炉の起動時に前記ホールディング運転を行いながら前記復水器から気体を抽出し排気してもよい。
【0017】
この構成によれば、気体抽出部は、蒸気タービンの定格運転時にホールディング運転を行っているときの復水器から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、ガス化炉の起動時にホールディング運転を行いながら復水器から気体を抽出する。
【0018】
上記第1態様において、前記気体抽出部は、複数台からなり、1台当たり、前記蒸気タービンの定格運転時に前記ホールディング運転を行うことが可能な前記復水器から抽出する気体の抽出容量を有し、前記ガス化炉の起動時に前記ホールディング運転を行うとき、前記気体抽出部を2台以上で運転されてもよい。
【0019】
この構成によれば、気体抽出部は、蒸気タービンの定格運転時にホールディング運転を行っているとき、1台で運転され、ガス化炉の起動時にホールディング運転を行っているとき、複数台で運転され、復水器から気体を抽出するにあたり効率的な運用ができる。
【0020】
上記第1態様において、前記ガス化炉の内部に設けられ、前記ガス化炉の起動完了後に前記蒸気ドラムから供給された蒸気が流通する蒸気系統熱交換器と、前記蒸気系統熱交換器と前記復水器とを結び、前記ガス化炉の起動完了後に前記蒸気系統熱交換器からの蒸気を前記復水器へ排出するダンプ系統と、前記ダンプ系統に設けられ、前記ダンプ系統を流れる蒸気の流量を調整する調整弁と、前記ダンプ系統において前記調整弁よりも前記復水器側に設けられ、前記ガス化炉の少なくとも起動時に前記ダンプ系統を流れる蒸気の流通を遮断する遮断弁とを更に備えてもよい。
【0021】
この構成によれば、ガス化炉の内部に蒸気系統熱交換器が設けられ、蒸気系統熱交換器には、ガス化炉の起動完了後に蒸気ドラムから供給された蒸気が流通する。また、ガス化炉の起動完了後、蒸気系統熱交換器から復水器へダンプ系統を介して、蒸気系統熱交換器からの蒸気を排出できる。ダンプ系統には、ダンプ系統を流れる蒸気の圧力を調整する調整弁と、調整弁よりも復水器側に遮断弁が設けられる。遮断弁は、ガス化炉の起動時にダンプ系統を流れる蒸気の流通を遮断する。これにより、ダンプ系統に調整弁のみ設けられる場合に比べて、ガス化炉を起動する際、ダンプ系統を介して復水器へ流入する不活性ガスの量を低減でき、復水器内の真空度が一時的にも低下することを抑制して真空度を高めることができる。
【0022】
本発明の第2態様に係るガス化複合発電設備は、炭素含有固体燃料を燃焼・ガス化することで生成ガスを生成する上記第1態様のガス化炉設備と、前記ガス化炉設備で生成した前記生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排出されるタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気を含む蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記ガスタービン及び前記蒸気タービンと連結された発電機とを備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の第3態様に係るガス化炉設備の起動方法は、ガス化炉と、前記ガス化炉の内部に設けられた水系統熱交換器と、前記水系統熱交換器に接続された蒸気ドラムとを備えるガス化炉設備の起動方法であって、前記ガス化炉の起動時に、前記水系統熱交換器に対して加圧された温水を供給するステップと、前記水系統熱交換器と前記蒸気ドラムを結ぶ循環系統において、前記温水が前記水系統熱交換器と前記蒸気ドラムを循環するステップと、前記ガス化炉の起動時に、前記蒸気ドラムに対して加圧された不活性ガスを供給するステップと、蒸気タービンの出口に設けられつつ、前記蒸気ドラムに接続された復水器が、前記ガス化炉の起動時に前記蒸気ドラムから水を回収するステップと、
前記ガス化炉の起動時に、前記復水器に接続された気体抽出部が、前記蒸気タービンの定格運転時に前記復水器から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で
前記蒸気ドラムから供給された水に溶存していた不活性ガスを含む気体を前記復水器から抽出し排気することで
、前記復水器の
真空状態を維持するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガス化炉の起動時間をより短縮化し、省エネルギー化や低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[石炭ガス化複合発電設備]
図1は、本発明の一実施形態に係るガス化炉設備を適用した石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【0027】
本実施形態に係るガス化炉設備14が適用される石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)10は、空気を酸化剤として用いており、ガス化炉設備14において、燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。そして、石炭ガス化複合発電設備10は、ガス化炉設備14で生成した生成ガスを、ガス精製設備16で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、実施形態1の石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。ガス化炉設備14に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0028】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)10は、
図1に示すように、給炭設備11と、ガス化炉設備14と、チャー回収設備15と、ガス精製設備16と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20とを備えている。
【0029】
給炭設備11は、原炭として炭素含有固体燃料である石炭が供給され、石炭を石炭ミル(図示略)などで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉炭を製造する。給炭設備11で製造された微粉炭は、給炭ライン11a出口で後述する空気分離設備(ASU)42から供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧されて、ガス化炉設備14へ向けて供給される。イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5%以下に制限されるものではない。
【0030】
ガス化炉設備14は、給炭設備11で製造された微粉炭が供給されると共に、チャー回収設備15で回収されたチャー(石炭の未反応分と灰分)が戻されて再利用可能に供給されている。
【0031】
また、ガス化炉設備14には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉設備14に供給可能となっている。空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって空気分離設備42とガス化炉設備14とが接続されている。そして、この第1窒素供給ライン43には、給炭設備11からの給炭ライン11aが接続されている。また、第1窒素供給ライン43から分岐する第2窒素供給ライン45もガス化炉設備14に接続されており、この第2窒素供給ライン45には、チャー回収設備15からのチャー戻しライン46が接続されている。さらに、空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43及び第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47及び圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉設備14において酸化剤として利用される。
【0032】
ガス化炉設備14は、例えば、2段噴流床形式のガス化炉101(
図2参照)を備えている。ガス化炉設備14は、内部に供給された石炭(微粉炭)及びチャーを酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉設備14は、微粉炭に混入した異物(スラグ)を除去する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉設備14には、チャー回収設備15に向けて生成ガスを供給するガス生成ライン49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。この場合、
図2に示すように、ガス生成ライン49にシンガスクーラ102(ガス冷却器)を設けることで、生成ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収設備15に供給してもよい。
【0033】
チャー回収設備15は、集塵設備51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵設備51は、1つ又は複数のサイクロンやポーラスフィルタにより構成され、ガス化炉設備14で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備16に送られる。供給ホッパ52は、集塵設備51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵設備51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0034】
ガス精製設備16は、チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備16は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中にはまだ硫黄分(H
2Sなど)が含まれているため、このガス精製設備16では、アミン吸収液などによって硫黄分を除去回収して、有効利用する。
【0035】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製設備16からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉設備14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。したがって、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備16から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転駆動させることで発電機19を回転駆動させる。
【0036】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。また、排熱回収ボイラ20で生成する蒸気には、ガス化炉101のシンガスクーラ102で生成ガスと熱交換して生成された蒸気を含んでもよい。したがって、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0037】
そして、排熱回収ボイラ20の出口から煙突75までには、ガス浄化設備74を備えている。
【0038】
ここで、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
【0039】
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭設備11に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、給炭設備11において細かい粒子状に粉砕されることで微粉炭となる。給炭設備11で製造された微粉炭は、空気分離設備42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を流通してガス化炉設備14に供給される。また、後述するチャー回収設備15で回収されたチャーが、空気分離設備42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を流通してガス化炉設備14に供給される。さらに、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉設備14に供給される。
【0040】
ガス化炉設備14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。そして、この生成ガスは、ガス化炉設備14からガス生成ライン49を通って排出され、チャー回収設備15に送られる。
【0041】
このチャー回収設備15にて、生成ガスは、まず、集塵設備51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャーが分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備16に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉設備14に戻されてリサイクルされる。
【0042】
チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61及び発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0043】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。
なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動しても良い。
【0044】
その後、ガス浄化設備74では排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0045】
次に、
図1及び
図2を参照して、上述した石炭ガス化複合発電設備10におけるガス化炉設備14について詳細に説明する。
図2は、
図1のガス化炉設備を示した概略構成図である。
【0046】
ガス化炉設備14は、
図2に示すように、ガス化炉101と、シンガスクーラ102と、を備えている。
【0047】
ガス化炉101は、鉛直方向に延びて形成されており、鉛直方向の下方側に微粉炭及び酸素が供給され、部分燃焼させてガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通している。ガス化炉101は、圧力容器110と、圧力容器110の内部に設けられるガス化炉壁(炉壁)111とを有している。そして、ガス化炉101は、圧力容器110とガス化炉壁111との間の空間にアニュラス部115を形成している。また、ガス化炉101は、ガス化炉壁111の内部の空間において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部116、ディフューザ部117、リダクタ部118を形成している。
【0048】
圧力容器110は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、上端部にガス排出口121が形成される一方、下端部(底部)にスラグホッパ122が形成されている。ガス化炉壁111は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、その壁面が圧力容器110の内面と対向して設けられている。本実施形態では圧力容器110は円筒形状で、ガス化炉壁111のディフューザ部117も円筒形状に形成されている。そして、ガス化炉壁111は、図示しない支持部材により圧力容器110内面に連結されている。
【0049】
ガス化炉壁111は、圧力容器110の内部を内部空間154と外部空間156に分離する。ガス化炉壁111は、後述するが、横断面形状がコンバスタ部116とリダクタ部118との間のディフューザ部117で変化する形状とされている。ガス化炉壁111は、鉛直上方側となるその上端部が、圧力容器110のガス排出口121に接続され、鉛直下方側となるその下端部が圧力容器110の底部と隙間を空けて設けられている。そして、圧力容器110の底部に形成されるスラグホッパ122には、貯留水が溜められており、ガス化炉壁111の下端部が貯留水に浸水することで、ガス化炉壁111の内外を封止している。ガス化炉壁111には、バーナ126、127が挿入され、内部空間154にシンガスクーラ102が配置されている。ガス化炉壁111の構造については後述する。
【0050】
アニュラス部115は、圧力容器110の内側とガス化炉壁111の外側に形成された空間、つまり外部空間156であり、空気分離設備42で分離された不活性ガスである窒素が、図示しない窒素供給ラインを通って供給される。このため、アニュラス部115は、窒素が充満する空間となる。なお、このアニュラス部115の鉛直方向の上部付近には、ガス化炉101内を均圧にするための図示しない炉内均圧管が設けられている。炉内均圧管は、ガス化炉壁111の内外を連通して設けられ、ガス化炉壁111の内部(コンバスタ部116、ディフューザ部117及びリダクタ部118)と外部(アニュラス部115)との圧力差を所定圧力以内となるよう略均圧にしている。
【0051】
コンバスタ部116は、微粉炭及びチャーと空気とを一部燃焼させる空間となっており、コンバスタ部116におけるガス化炉壁111には、複数のバーナ126からなる燃焼装置が配置されている。コンバスタ部116で微粉炭及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。
【0052】
リダクタ部118は、ガス化反応に必要な高温状態に維持されコンバスタ部116からの燃焼ガスに微粉炭を供給し部分燃焼させて、微粉炭を揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)へと分解してガス化されて生成ガスを生成する空間となっており、リダクタ部118におけるガス化炉壁111には、複数のバーナ127からなる燃焼装置が配置されている。
【0053】
シンガスクーラ102は、ガス化炉壁111の内部に設けられると共に、リダクタ部118のバーナ127の鉛直方向の上方側に設けられている。シンガスクーラ102は熱交換器であり、ガス化炉壁111の鉛直方向の下方側(生成ガスの流通方向の上流側)から順に、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134が配置されている。これらのシンガスクーラ102は、リダクタ部118において生成された生成ガスと熱交換を行うことで、生成ガスを冷却する。また、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134は、図に記載されたその数量を限定するものではない。
【0054】
ここで、上述のガス化炉設備14の動作について説明する。
ガス化炉設備14のガス化炉101において、リダクタ部118のバーナ127により窒素と微粉炭が投入されて点火されると共に、コンバスタ部116のバーナ126により微粉炭及びチャーと圧縮空気(酸素)が投入されて点火される。すると、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温燃焼ガスが発生する。また、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温ガス中で溶融スラグが生成され、この溶融スラグがガス化炉壁111へ付着すると共に、炉底へ落下し、最終的にスラグホッパ122内の貯水へ排出される。そして、コンバスタ部116で発生した高温燃焼ガスは、ディフューザ部117を通ってリダクタ部118に上昇する。このリダクタ部118では、ガス化反応に必要な高温状態に維持されて、微粉炭が高温燃焼ガスと混合し、高温の還元雰囲気において微粉炭を部分燃焼させてガス化反応が行われ、生成ガスが生成される。ガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通する。
【0055】
[ガス化炉設備の起動]
次に、本発明の一実施形態に係るガス化炉設備の起動について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るガス化炉設備の起動時に使用する蒸気ドラム、循環系統及びブロー系統を示す概略構成図である。
【0056】
図2に示したシンガスクーラ102は、蒸気ドラム21が接続されており、ガス化炉設備14の通常運転時は、蒸気ドラム21とシンガスクーラ102の水系統各部(水系統熱交換器)22との間で、水が循環し、蒸気ドラム21からシンガスクーラ102の蒸気系統(蒸気系統熱交換器)23へ蒸気が供給される。ここで、シンガスクーラ102の水系統各部22は、例えば、上述した蒸発器131、節炭器134であり、シンガスクーラ102の蒸気系統23は、例えば上述した過熱器132である。
【0057】
図3に示した蒸気ドラム21は、ガス化炉設備14の通常運転時、給水系統(図示せず。)から水が供給されて、循環系統24を介して水系統各部22に水を供給する。ガス化炉設備14の通常運転時、蒸気ドラム21内の蒸気は、蒸気系統23へ供給される。蒸気ドラム21は、ガス化炉101の起動時、循環系統24を介して、温水供給部としての排熱回収ボイラ(HRSG)20で生成された加圧温水が供給され、空気分離設備42で生成され加圧された窒素が供給される。
【0058】
循環系統24は、蒸気ドラム21と水系統各部22とを結び、ガス化炉設備14の通常運転時、蒸気ドラム21と水系統各部22の間で水が循環する。循環系統24には、ガス化炉循環ポンプ25が設置され、ガス化炉循環ポンプ25の駆動力によって、循環系統24内を水が循環する。また、循環系統24には、後述する排熱回収ボイラ20で生成された温水を受け入れる温水受入部26が設けられている。本実施形態の例では、温水受入部26は、ガス化炉循環ポンプ25と水系統各部22の間に設置されている。なお、本願発明は、この例に限定されず、温水受入部26は、水系統各部22と蒸気ドラム21の間に設置されてもよい。温水受入部26は、例えばマニホールドなどである。
【0059】
ガス化炉101の起動時、すなわち、ガス化炉設備14が停止した状態から、ガス化炉101に石炭等の炭素含有固体燃料が投入されて点火されるまでの起動期間において、循環系統24には、排熱回収ボイラ(HRSG)20で生成された温水が、ウォーミング給水として供給される。この温水は、例えば排熱回収ボイラ20の高圧節炭器で生成され、高温高圧である。排熱回収ボイラ20で生成された温水は、循環系統24に設けられた温水受入部26へ供給される。
【0060】
蒸気供給管27は、蒸気ドラム21とシンガスクーラ102の蒸気系統23を結び、蒸気供給管27を介して、ガス化炉設備14の通常運転時、蒸気ドラム21から蒸気系統23へ蒸気が供給される。
【0061】
主蒸気管28は、蒸気系統23と排熱回収ボイラ20とを結び、主蒸気管28を介して、蒸気系統23で生成された主蒸気(例えば、過熱器で生成された過熱蒸気)が排熱回収ボイラ20へ供給される。主蒸気管28には、主蒸気管28を流れる蒸気圧力を調整する主蒸気弁29と、主蒸気管28を流れる蒸気の流通を遮断する遮断弁30とが設けられる。ガス化炉設備14の通常運転時、遮断弁30は全開状態であり、主蒸気弁29の開度が調節されることによって、主蒸気管28を流れる蒸気圧力が調整される。ガス化炉101の起動時、主蒸気弁29と遮断弁30は、全閉状態である。
【0062】
蒸気ダンプ系統31は、蒸気系統23と復水器73とを結び、蒸気系統23で生成された余剰蒸気を復水器73へ排出(ダンプ)する。これにより、ガス化炉設備14の系外へ余剰蒸気が排出される。蒸気ダンプ系統31には、蒸気ダンプ系統31を流れる蒸気圧力を調整する蒸気ダンプ弁32と、蒸気ダンプ系統31を流れる蒸気の流通を遮断する遮断弁33とが設けられる。ガス化炉設備14の通常運転時、遮断弁33は全開状態であり、蒸気ダンプ弁32の開度が調節されることによって、蒸気ダンプ系統31を流れる蒸気圧力が調整される。ガス化炉101の起動時、蒸気ダンプ弁32と遮断弁33は、全閉状態である。
【0063】
これにより、ガス化炉101の起動時、蒸気ドラム21内の蒸気や窒素は、蒸気系統23よりも下流側へリークすることがない。従来、蒸気ダンプ弁32の下流側には、遮断弁33が設置されていなかった。蒸気ダンプ弁32は、圧力調整弁であるため、全閉であっても締め切り性が低く、高圧環境下では、流体のリークが生じる場合がある。そのため、ガス化炉101の起動時、蒸気ドラム21が窒素によって加圧されたとき、蒸気や窒素が蒸気ダンプ弁32の下流側へリークした場合は、復水器73へ導かれて、復水器73の真空度低下に影響していた。これに対し、遮断弁33が設置されることによって、蒸気ドラム21内の蒸気や窒素が、蒸気系統23よりも下流側へリークすることを確実に防止して、復水器73の真空度が低下することを防止できる。
【0064】
ブロー系統34は、蒸気ドラム21と復水器73とを結び、蒸気ドラム21内の余剰な水を復水器73へ排出(ブロー)する。これにより、ガス化炉設備14の通常運転時と、ガス化炉101の起動時のいずれの場合も、ガス化炉設備14の系外へ余剰な水が排出される。
【0065】
本実施形態では、起動時の蒸気ドラム21内の加圧には、空気分離設備42から供給される加圧された窒素を用いる。空気分離設備42は、不活性ガス供給部の一例である。なお、起動時の蒸気ドラム21内の加圧に用いる気体は、窒素に限定されない。例えば、不活性ガスが好ましく、二酸化炭素、アルゴンや水蒸気を供給してもよい。空気分離設備42は、窒素を生成し、ガス化炉101の起動時において、生成した窒素を蒸気ドラム21へ供給する。蒸気ドラム21内には、加圧された窒素が供給される。これにより、循環系統24やシンガスクーラ102の水系統各部22の内部も加圧されるため、排熱回収ボイラ20から温水受入部26で加圧温水を供給する際、加圧温水が流量調整弁38の下流側で圧力が大きく低下して飽和圧力以下となりフラッシュすることがない。
【0066】
復水器73は、ガス化炉設備14の通常運転時、蒸気タービン18のタービン69の駆動に用いられた蒸気が蒸気タービン18のタービン69から排気蒸気として回収され、熱交換して凝縮して復水とする。復水器73は図示しない外部から導入した冷却水により蒸気タービン18のタービン69から供給された排気蒸気と熱交換をして凝縮させること、及び気体抽出装置35によって、所定の真空状態に維持される。
【0067】
また、復水器73には、ガス化炉設備14の通常運転時、蒸気ダンプ系統31を介して余剰蒸気が回収され、ブロー系統34を介して余剰な水が回収される。さらに、復水器73には、ガス化炉101の起動時、ブロー系統34を介して余剰な水が供給されて回収される。
【0068】
気体抽出装置35は、気体抽出部の一例であり、復水器73内の気体を抽出して、大気へ放出する。気体抽出装置35は、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時に復水器73から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、ガス化炉101の起動時に復水器73から気体を抽出する。
【0069】
気体抽出装置35は、本実施形態では、例えば、真空ポンプとして水封回転式真空ポンプ36と、エゼクタとして排熱回収ボイラ20で生成した高圧蒸気の膨張エネルギーを利用するエゼクタ37を有する。復水器73内が所定の圧力以上の低真空域(例えば、大気圧から真空状態へ移行する圧力範囲)では、水封回転式真空ポンプ36によって、復水器73内の気体が大気へ排出される。このとき、復水器73内の気体は、エゼクタ37をバイパスして水封回転式真空ポンプ36のみによって、吸引される。この水封回転式真空ポンプ36のみによる運転をホギング運転という。
【0070】
復水器73内が所定の圧力未満の高真空域では、水封回転式真空ポンプ36とエゼクタ37によって、復水器73内の気体が大気へ排出される。このとき、復水器73内の気体は、エゼクタ37をバイパスせずに、エゼクタ37によって吸引されつつ、エゼクタ37で吸引された気体が水封回転式真空ポンプ36によって更に吸引されることで真空排気能力を高めている。水封回転式真空ポンプ36とエゼクタ37による運転をホールディング運転という。これにより、所定の圧力未満の高真空状態を維持できる。
【0071】
次に、本実施形態に係るガス化炉設備14の起動動作について説明する。
ガス化炉設備14の起動は、ガス化炉設備14が停止した状態から、ガス化炉101に石炭等の炭素含有固体燃料が投入されて点火されて所定の温度に昇温されるまでの期間であり、ガス化炉101の内部、少なくともシンガスクーラ102の出口部の温度が酸露点を超えるまでを起動として処置が必要とされる。起動完了後、ガス化炉101に軽油等の補助燃料が投入されて点火される。
【0072】
ガス化炉設備14の起動に際して、まず、軽油等の燃料を燃焼して、ガスタービン17を駆動し、ガスタービン17から排出された排ガスが、排熱回収ボイラ20を流通することによって、排ガスとの熱交換が行われ、温水及び蒸気が生成される。排熱回収ボイラ20ではボイラへの給水圧力を高くしてあるため、高圧の温水及び蒸気が生成される。また、空気分離設備42を起動して、空気分離設備42によって窒素が生成される。
【0073】
排熱回収ボイラ20で生成された温水の一部は、ウォーミング給水として、流量調整弁38で流量を調整して循環系統24の温水受入部26へ供給される。温水受入部26へ供給された温水は、ガス化炉循環ポンプ25によって、循環系統24内を循環する。このとき、蒸気ドラム21には、空気分離設備42によって生成され加圧された窒素が供給され、循環系統24や水系統各部22が排熱回収ボイラ20で生成された温水がフラッシュしない圧力に加圧された状態で維持される。
【0074】
ガス化炉101の起動時には、ブロー系統34を介して、蒸気ドラム21内の余剰な水が復水器73へ排出(ブロー)されて、ガス化炉設備14の系外へ余剰な水が排出される。このとき、復水器73では、復水器73内が減圧状態にあるため、復水器73内へ供給された水から溶解度を超える気体が放出される。このため、気体抽出装置35によって、復水器73内の気体が抽出されて、大気へ排気し放出される。気体抽出装置35は、ガス化炉101の起動時には、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時にホールディング運転を行っているときの復水器73から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、ホールディング運転を行いながら復水器73から気体を抽出して排気する。
【0075】
また、ガス化炉101の起動時、主蒸気管28に設けられた主蒸気弁29と遮断弁30は、全閉状態であり、蒸気ダンプ系統31に設けられた蒸気ダンプ弁32と遮断弁33も、全閉状態である。蒸気ダンプ弁32は、圧力調整弁であるため、全閉であっても、高圧環境下では、流体のリークが生じるおそれがある。このため、ガス化炉101の起動時、蒸気ドラム21が窒素によって加圧されたとき、遮断弁33が全閉状態とされる。これにより、蒸気ドラム21内の蒸気や窒素が、蒸気系統23よりも下流側へリークすることが確実に防止されている。
【0076】
これにより、ガス化炉101の内部に設けられた水系統各部22は、水系統各部22に接続された蒸気ドラム21との間で、ガス化炉101の起動時に、排熱回収ボイラ20から供給された加圧温水が循環する。これにより、ガス化炉101を起動する際、ガス化炉101の内部が温度上昇する。また、排熱回収ボイラ20からの加圧温水の供給流量は、ガス化炉101の内部温度が少なくとも酸露点温度以上になるように、ガス化炉101の内部の温度上昇状況に対して、流量調整弁38で制御してもよい。
【0077】
また、ガス化炉101の起動時に、蒸気ドラム21に対して加圧された窒素が供給されて、循環系統24や水系統各部22の内部も加圧されるため、排熱回収ボイラ20から加圧温水を供給する際、加圧温水が飽和圧力以下となりフラッシュすることがない。したがって、循環系統24に対して供給する加圧温水を徐々に増加させる必要がなく、起動時間を短縮できる。
【0078】
また、復水器73は、蒸気タービン18の出口に設けられつつ、蒸気ドラム21にも接続されて、ガス化炉101の起動時に蒸気ドラム21から水が供給される。このとき、復水器73に接続された気体抽出装置35によって、復水器73内の気体が抽出し排気される。気体抽出装置35は、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時に復水器73から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、ガス化炉101の起動時に復水器73から気体を抽出して排気することから、蒸気ドラム21から復水器73へ供給される水に加圧用の窒素が溶存して復水器73で放出された場合でも、復水器73内の真空度を低下することなく真空度を維持することができる。
【0079】
したがって、気体抽出装置35が抽出できる気体の抽出量に応じて、ガス化炉101の起動時に水系統各部22に対して供給される加圧温水の量を増加させることもできる。加圧温水の量を増加させると、水に対する窒素の溶存量も増加するが、上述したとおり、ガス化炉101の起動時に復水器73から大きい抽出量で気体を抽出して排気することができることから、復水器73内の真空度を低下させることなく真空度を高いまま維持できる。ガス化炉101の起動時に水系統各部22に対して供給される加圧温水の量が増加することから、ガス化炉101の内部が温度の上昇が速くなりガス化炉101の起動時間を更に短縮できる。
【0080】
また、気体抽出装置35が抽出できる気体の抽出量に応じて、ガス化炉101の起動時に水系統各部22に対して供給される加圧温水の温度を上昇することや、蒸気ドラム21に供給される窒素の圧力を増加させることもできる。加圧温水の温度の上昇や窒素の圧力を増加させると、水に対する窒素の溶存量も増加するが、上述したとおり、ガス化炉101の起動時に復水器73から大きい抽出量で気体を抽出して排気できることから、復水器73内の真空度を高いまま維持することができる。ガス化炉101の起動時に水系統各部22に対して供給される加圧温水の温度が上昇することから、ガス化炉101の内部が温度の上昇が更に速くなり、ガス化炉101の起動時間を更に短縮できる。
【0081】
次に、気体抽出装置35のホールディング運転時における容量の選定方法について説明する。
気体抽出装置35による蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時における気体の抽出量は、蒸気タービン18の通常運転時、復水器73が蒸気タービン18から回収する蒸気量に基づいて、決定される。
【0082】
一方、気体抽出装置35によるガス化炉101の起動時における気体(窒素)の抽出量は、例えば、下記のとおり決定される。
【0083】
ガス化炉101内部の温度が酸露点を超えるまでに要する起動時間を想定し、想定された起動時間となるように、排熱回収ボイラ20からの温水供給量や温水温度、蒸気ドラム21へ供給する窒素の圧力を決定する。温水供給量が決定されることで、ブロー系統34を介して蒸気ドラム21から復水器73へ排出される排水量が決定される。このとき、ブロー系統34を介して蒸気ドラム21から復水器73へ排出される排水に溶存されている窒素の量も、温水の水温や窒素の圧力によって算出される。
【0084】
そして、復水器73では、溶存されている窒素が水の溶解度を超えて気化することによって、真空状態が低下する。したがって、復水器73を高真空状態に維持するように、ガス化炉設備14の起動時において、気体抽出装置35がホールディング運転を行うときの気体(窒素)の抽出量が、復水器73へ排出される排水量や、溶存されている窒素の量に基づいて、決定される。
【0085】
したがって、本実施形態によれば、起動時間を短くするほど、排熱回収ボイラ20からの温水供給量や温水温度、蒸気ドラム21へ供給される窒素の圧力は増加する方向に決定される。そして、温水供給量が増加するほど、ブロー系統34を介して蒸気ドラム21から復水器73へ排出される排水量が増加する。それに伴い、蒸気ドラム21から復水器73に排出された水からの窒素の排出量も増加する。また、温水温度や窒素の圧力が増加するほど、ブロー系統34を介して蒸気ドラム21から復水器73へ排出される排水量に溶存する窒素の量が増加する。よって、ガス化炉101の起動時において、復水器73を高真空状態に維持できるようにするためには、気体抽出装置35がホールディング運転を行うときの気体からの抽出し排気する量も、蒸気ドラム21に対して加圧された窒素を供給しない場合に比べて上昇する。
【0086】
蒸気ドラム21に対して加圧された窒素を供給するとき、気体抽出装置35は、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時にホールディング運転を行っているときの復水器73から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量の抽出と排気を行う。また、ガス化炉101の起動時にホールディング運転を行いながら復水器73から気体を抽出して排気する。ガス化炉101の起動時における気体の抽出量は、例えば、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時にホールディング運転を行っているときにおける気体の抽出量の2倍以上である。
【0087】
図3に示すように、気体抽出装置35を1台設置する場合、決定されたガス化炉101の起動時における気体(窒素)の抽出量に基づいて、気体抽出装置35の1台の抽出し排気する容量が決定される。この場合、ガス化炉101の起動時、気体抽出装置35は、定格運転で運転され、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時、気体抽出装置35は、抽出し排気する能力を絞って運転する。
【0088】
また、
図4に示すように、気体抽出装置35を2台又は3台以上の複数台設置してもよい。この場合、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時にホールディング運転を行っているときの気体(窒素)の抽出量に基づいて、気体抽出装置35の1台の容量が決定される。そして、決定されたガス化炉101の起動時における気体(窒素)の抽出し排気する量に基づいて、残りの気体抽出装置35の容量や台数が決定される。この場合、ガス化炉101の起動時、気体抽出装置35は、ホールディング運転を行いながら複数台で運転され、蒸気タービン18の定格運転を含む通常運転時、気体抽出装置35は、1台で運転される。この例では、蒸気タービン18の通常運転時、運転される気体抽出装置35の台数が確実に減少することから、補機動力の低減が可能であり、効率的な運用が可能となる。また、蒸気タービン18の通常運転時、万一に異常発生によって、復水器73の真空度が低下した場合、他の複数台の気体抽出装置35を起動することによって真空状態が低下しないよう真空度の維持を図ることができるので、プラント運転の信頼性を向上することができる。
【0089】
決定されたガス化炉101の起動時における気体(窒素)の抽出量を有する気体抽出装置35を運転する際、及び、試運転した際において、復水器73の真空度を確認し、決定された気体抽出装置35の気体を抽出し排気する量の能力に応じて、排熱回収ボイラ20から循環系統24へ供給する温水の量を調整してもよい。
【0090】
気体抽出装置35は、蒸気タービン18の定格運転時に復水器73から抽出される気体の抽出量よりも大きい抽出量で、ガス化炉101の起動時に復水器73から気体を抽出することから、蒸気ドラム21から復水器73へ供給される水に窒素が溶存した場合でも、復水器73内の真空度を低下することなく真空度を高く維持することができる。これに伴い、ガス化炉101の起動時に水系統各部22に対して供給される加圧温水の量の増加や温度を上昇させることができ、ガス化炉101の起動時間を更に短縮できる。
【0091】
その結果、ガス化炉101の起動時に、ガスタービンが燃料(軽油)を消費する量や、窒素発生のため空気分離設備42を運転する時間を低減でき、省エネルギー化や低コスト化を図ることができる。また、ガスタービンがガス化炉101の起動時に使用する燃料(軽油)を貯蔵する貯蔵設備の容量も低減できる。
【0092】
また、ガス化炉101の起動時、蒸気ドラム21が窒素によって加圧されたとき、ダンプ系統の遮断弁が全閉状態とされ、蒸気ドラム21内の蒸気や窒素が、蒸気系統23よりも下流側の復水器73へリークすることが確実に防止されている。したがって、復水器73の真空状態の低下を防止することができる。
【0093】
なお、上述した実施形態では、燃料として石炭を使用したが、高品位炭や低品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0094】
また、本実施形態はガス化炉として、タワー型ガス化炉について説明してきたが、ガス化炉101はクロスオーバー型ガス化炉でも、ガス化炉101内の各機器の鉛直上下方向を生成ガスのガス流れ方向を合わせるように置き換えることで、同様に実施が可能である。