特許第6890987号(P6890987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6890987ネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法およびネジ鉄筋接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890987
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法およびネジ鉄筋接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20210607BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20210607BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20210607BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   E04C5/18 102
   E04G21/12 105E
   E04G21/02 103Z
   E01D21/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-17793(P2017-17793)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-59387(P2018-59387A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年7月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-191221(P2016-191221)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】山田 直人
(72)【発明者】
【氏名】木上 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】萩原 浩
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−055571(JP,A)
【文献】 特開平06−306957(JP,A)
【文献】 特開2008−184738(JP,A)
【文献】 特開2002−021253(JP,A)
【文献】 特開昭58−013848(JP,A)
【文献】 特開昭55−152298(JP,A)
【文献】 特開2016−156163(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0110610(KR,A)
【文献】 米国特許第04618291(US,A)
【文献】 特開2012−021355(JP,A)
【文献】 特開平07−269025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00−5/20
E04G 21/02,21/12
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆打ち工法における上階の躯体に予め埋設され雌ネジ部と底面からなる内面を有する受け部材に、下階の柱を構成し雄ネジ部を有するネジ鉄筋を螺合接合する際に、
前記雌ネジ部と前記雄ネジ部との隙間に充填する充填材が保持され、前記充填材を放出する放出口が設けられた容器本体を有するカートリッジを、前記放出口が前記ネジ鉄筋とは反対の位置となる状態で、前記ネジ鉄筋の端部と前記受け部材の前記内面との間に配置し、
前記受け部材に対する前記ネジ鉄筋の螺進に伴って、前記ネジ鉄筋の端面と前記受け部材の前記内面とで前記カートリッジを押圧して前記充填材を前記雌ネジ部の最奥部で前記放出口から放出し、
前記ネジ鉄筋の更なる螺進によって、前記充填材を前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との隙間に圧入するネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法。
【請求項2】
前記ネジ鉄筋の螺合に際し、前記カートリッジを、前記ネジ鉄筋の端部に接着剤或いは粘着材を用いて固定する請求項1に記載のネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法。
【請求項3】
前記カートリッジが、撓み変形可能な材料で構成され前記雌ネジ部の内径よりも大きな外径寸法を有する仮止部材を、接着剤或いは粘着材を用いて前記容器本体に固定したものであり、前記ネジ鉄筋の螺合に際して、前記カートリッジを前記雌ネジ部に固定しておく請求項1に記載のネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法。
【請求項4】
逆打ち工法における上階の躯体に予め埋設され雌ネジ部と底面からなる内面を有する受け部材と、
下階の柱を構成し前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を有するネジ鉄筋と、
所定量の充填材を保持するカートリッジと、を備え、
前記カートリッジが、
前記充填材の放出口が前記ネジ鉄筋とは反対の位置に設けられた容器本体と、
撓み変形可能な材料で構成され前記雌ネジ部の内径よりも大きな外径寸法を有し、接着剤或いは粘着材を用いて前記容器本体のうち前記放出口とは反対側に固定された仮止部材と、を備え、
前記カートリッジを、前記ネジ鉄筋の螺合に際して前記容器本体を奥側に配置しつつ前記仮止部材の撓み変形によって前記雌ネジ部に固定し、前記ネジ鉄筋の端面と前記受け部材の前記内面とで前記容器本体を押圧することで、前記充填材を前記放出口から放出し前記雌ネジ部と前記雄ネジ部との間に充填するネジ鉄筋接合構造。
【請求項5】
前記仮止部材の周囲に、前記充填材が流動する隙間が備えられている請求項4に記載のネジ鉄筋接合構造。
【請求項6】
前記仮止部材が十字形状を備えている請求項5に記載のネジ鉄筋接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
RC構造の建築物における上階部分のネジ鉄筋と下階部分のネジ鉄筋とを接続する接続部に対するネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法およびネジ鉄筋接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
RC構造の建築物においては、構造物に加わる荷重のうち特に引張荷重を負担する鉄筋が用いられる。このような鉄筋の表面には、コンクリートやグラウト材の付着性を高めて引き抜き力に対抗するために凹凸状のリブが形成されている。鉄筋は、溶接によって接続される他、雄ネジ状に形成した端部の夫々を雌ネジが設けられた筒状の接続部材に螺合して接続されたり、接続する鉄筋の端部どうしを筒状のカプラに差し込んだのちカプラをかしめる方法等により接続される。
【0003】
特に、これらの接続方法のうちネジ構造を用いるものは、施工品質のばらつきが少なく、強度的に安定した継ぎ手が得易い。このようなネジ構造に関する従来技術としては例えば特許文献1に示すものがある。
【0004】
特許文献1は、ネジ構造を有する鉄筋を例えば逆打ち工法に利用するものである。逆打ち工法は、最初に地上で1階部分を施工し、順次下方階を構築していく手法である。地上の1階部分が構築されると、この1階部分を支持しつつその下方に地下1階部分を構築する空間を形成する。この空間に地下1階部分を構築する際に、1階部分に設けたネジ鉄筋と地下1階部分に設けたネジ鉄筋とを接続する。
【0005】
当該接続に先立ち、上下階のRC部材の夫々に鉄筋が取り付けられる。この取り付けも鉄筋のネジ構造が用いられ、夫々のRC部材に予め埋設された雌ネジ部を有する埋設部材に対して鉄筋が螺合される。
【0006】
この特許文献1は、上下階に接続した鉄筋どうしを上下階の間の空間で接続する技術であって、特に上階に鉄筋を接続する方法等についての言及はない。ただし、ネジ鉄筋を天井位置にある埋設部材に螺合させる場合、通常はネジ鉄筋の螺合に先立ってグラウト材などの充填材を注入する。このグラウト材は、ネジ鉄筋の雄ネジ部と埋設部材の雌ネジ部との間に充填されて硬化し雄ネジ部材の抜け出しを抑止し、当該接合部の剛性を高める。
【0007】
このようなグラウト材の埋設部材への注入には、例えば、別容器に収容された主剤と硬化剤とを混合しつつ吐出する注入器具が用いられる。この注入器具は通常作業者が手で保持し、天井に開口した埋設部材の孔部に向けて上向き姿勢に保持しつつ、吐出トリガを操作する。トリガの操作毎に所定量のグラウト材が吐出され、操作者は、使用するネジ鉄筋の太さに応じてグラウト材の吐出回数を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-317393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の方法では、上向きに注入したグラウト材の幾分かがネジ鉄筋の螺合を待たずに落下する。グラウト材の粘度は気温によって多少の変動はあるものの大よそ一定である。よって、当該落下を完全に防止することは不可能であって、グラウト材の充填量が適切とはならない。そのためネジ鉄筋の接合部の強度と剛性にバラつきが生じる。
【0010】
また、注入器具は所定の重量があるうえ、グラウト材の粘度のために注入器具のトリガは重く、これを上向きに保持したまま何度もトリガを引くことは作業者に多大な負担を強いる。そればかりか、落下したグラウト材が作業現場や作業者の衣服を汚すなど作業環境が劣悪となる。グラウト材の落下により、当然にグラウト材の歩留まりも悪化する。
【0011】
このような実情に鑑み、従来から、簡易な作業で確実な強度を発揮し得るネジ鉄筋のネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法およびネジ鉄筋接合構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴構成)
本発明に係るネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法は、
逆打ち工法における上階の躯体に予め埋設され雌ネジ部と底面からなる内面を有する受け部材に、下階の柱を構成し雄ネジ部を有するネジ鉄筋を螺合接合する際に、
前記雌ネジ部と前記雄ネジ部との隙間に充填する充填材が保持され、前記充填材を放出する放出口が設けられた容器本体を有するカートリッジを、前記放出口が前記ネジ鉄筋とは反対の位置となる状態で、前記ネジ鉄筋の端部と前記受け部材の前記内面との間に配置し、
前記受け部材に対する前記ネジ鉄筋の螺進に伴って、前記ネジ鉄筋の端面と前記受け部材の前記内面とで前記カートリッジを押圧して前記充填材を前記雌ネジ部の最奥部で前記放出口から放出し、
前記ネジ鉄筋の更なる螺進によって、前記充填材を前記雄ネジ部と前記雌ネジ部との隙間に圧入する点に特徴を有する。
【0013】
(効果)
本方法のごとく、充填材を保持したカートリッジをネジ鉄筋の端部に配置し、このネジ鉄筋を受け部材に螺合することで、受け部材の雌ネジ部とネジ鉄筋の雄ネジ部との隙間に対する充填材の充填作業が極めて効率的なものになる。
【0014】
例えば、逆打ち工法など、作業空間の天井部に鉄筋を接続するような場合、鉄筋を天井の受け部材に螺合させるだけの作業で充填材を注入することができる。この場合、従来のごとく充填器具を上向き姿勢に保持する必要がなく充填作業が極めて容易となる。しかも、充填材は、例えば鉄筋のサイズに合わせた所定量を予めカートリッジに保持しておける。つまり、カートリッジへの充填材の充填作業は、ネジ鉄筋の接続現場とは別の場所で行えるから、気温や湿度などの作業環境が厳しい場所におけるネジ鉄筋の接続作業時間を短縮することができる。
【0015】
特に、本方法におけるカートリッジは、カートリッジの容器本体に設けられた充填材の放出口がネジ鉄筋とは反対の位置となる状態でネジ鉄筋の端部に配置される。つまり、ネジ鉄筋の螺進により、充填材を受け部材の最も奥部で放出することができ、充填材がネジ鉄筋の周縁部の一方に偏って放出されることが防止される。この結果、ネジ鉄筋の螺進が完了した状態では、充填材が雄ネジ部と雌ネジ部との間に確実に充填されることとなる。
【0016】
尚、カートリッジは、少なくともネジ鉄筋を受け部材に螺合させる際に充填材を保持できるものであればよい。カートリッジは、例えば充填材を完全に包持する構成であっても良いし、カートリッジの一部が開放されたまま一時的に充填材を保持できるものであっても良い。また、カートリッジとネジ鉄筋の一部が協働して充填材を保持するものであっても良い。
【0017】
逆打ち工法に限らず、受け部材が、二本のネジ鉄筋どうしを突き合わせて接続する筒状の部材である場合にも本方法は適用可能である。例えば一方の鉄筋に受け部材を浅く螺合させておき、カートリッジを受け部材の内部に挿入しつつ他方のネジ鉄筋を螺合させ、受け部材および他方のネジ鉄筋を螺進させることで双方のネジ鉄筋どうしの間隔を狭めながら受け部材の中央位置で双方のネジ鉄筋を突き合わせ配置することができる。この場合、充填材の充填という作業工程が特に発生するわけではなく、受け部材に対する二本のネジ鉄筋の接続位置に留意するだけで充填材を適切に注入することができる。
【0018】
(特徴構成)
本発明に係る充填材の注入方法にあっては、前記ネジ鉄筋の螺合に際し、前記カートリッジを、前記ネジ鉄筋の端部に接着剤或いは粘着材を用いて固定することができる。
【0019】
(効果)
本方法であれば、鉄筋に対してカートリッジを極めて手軽に取り付けることができる。この場合の取り付けは、カートリッジの外面の一部をネジ鉄筋の端面に接着等してもよいし、カートリッジの一部をネジ鉄筋の先端部近傍の側面に接着等するものであってもよい。カートリッジを固定することで、ネジ鉄筋を受け部材に螺合する際に鉄筋の姿勢がある程度変化した場合でもカートリッジが動かず、ネジ鉄筋の螺合作業が容易となる。
【0020】
また、カートリッジの位置を固定することで、ネジ鉄筋を受け部材に螺合させる際に、カートリッジが受け部材の内面に不用意に接触することがない。よって、カートリッジに保持された充填材は、ネジ鉄筋が受け部材に対する予定位置に達したときに放出されることとなり、充填材を理想的な状態に注入することができる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係る充填材の注入方法にあっては、前記カートリッジが、撓み変形可能な材料で構成され前記雌ネジ部の内径よりも大きな外径寸法を有する仮止部材を、接着剤或いは粘着材を用いて前記容器本体に固定したものであり、前記ネジ鉄筋の螺合に際して、前記カートリッジを前記雌ネジ部に固定しておいてもよい。
【0022】
(効果)
ネジ鉄筋の端部にカートリッジを配置しつつネジ鉄筋を受け部材に螺合させる場合、ネジ鉄筋の重量のため当該螺合作業の負担が大きくなる。このため、受け部材の孔部に対するネジ鉄筋先端の位置合わせが困難となり、カートリッジを受け部材の孔部の周囲に干渉させてしまう恐れがある。その点、本方法のごとく、仮止部材によってカートリッジのみを先に受け部材の内部に固定するものであれば、カートリッジは軽量であるため、当該作業の負担が軽減され、受け部材の孔部に対するカートリッジの取付けが確実となる。
【0023】
特に、仮止部材は、撓み変形可能な材料で構成され雌ネジ部の内径よりも大きな外径寸法を有する。よって、各種の棒状部材などを用いてカートリッジを下方から雌ネジ部の内部に押し込むと、仮止部材の端部が雌ネジ部の内面に擦れて撓み変形し戻り防止機能が発揮される。
【0024】
このように、本方法であれば、受け部材に対するカートリッジの取付けが容易であり、ネジ鉄筋の雄ネジ部と受け部材の雌ネジ部との間に充填材を確実に注入することができる。
【0025】
(特徴構成)
本発明に係るネジ鉄筋接合構造は、
逆打ち工法における上階の躯体に予め埋設され雌ネジ部と底面からなる内面を有する受け部材と、
下階の柱を構成し前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を有するネジ鉄筋と、
所定量の充填材を保持するカートリッジと、を備え、
前記カートリッジが、
前記充填材の放出口が前記ネジ鉄筋とは反対の位置に設けられた容器本体と、
撓み変形可能な材料で構成され前記雌ネジ部の内径よりも大きな外径寸法を有し、接着剤或いは粘着材を用いて前記容器本体のうち前記放出口とは反対側に固定された仮止部材と、を備え、
前記カートリッジを、前記ネジ鉄筋の螺合に際して前記容器本体を奥側に配置しつつ前記仮止部材の撓み変形によって前記雌ネジ部に固定し、前記ネジ鉄筋の端面と前記受け部材の前記内面とで前記容器本体を押圧することで、前記充填材を前記放出口から放出し前記雌ネジ部と前記雄ネジ部との間に充填する点に特徴を有する。
【0026】
(効果)
本構成のネジ鉄筋接合構造であれば、カートリッジを雌ネジ部の内部に押し込むことで、撓み変形可能な材料で構成され雌ネジ部の内径よりも大きな外径寸法の仮止部材が雌ネジ部の内面に擦れて戻り防止機能が発揮され、カートリッジを受け部材に容易に取り付けることができる。
【0027】
また、充填材を放出するよう容器本体に設けられた放出口がネジ鉄筋とは反対の位置に配置されるから、ネジ鉄筋の螺進により、充填材を受け部材の最も奥部で放出することができる。これにより、充填材がネジ鉄筋の周縁部の一方に偏って充填されることが防止され、ネジ鉄筋の螺進が完了した状態では、充填材が雄ネジ部と雌ネジ部との間に確実に充填されることとなる。
【0028】
(特徴構成)
本発明に係るネジ鉄筋接合構造は、前記仮止部材の周囲に、前記充填材が流動する隙間が備えられていると好都合である。
【0029】
(効果)
本構成のごとく仮止部材に隙間を備えておくことで、受け部材の最も奥部で放出された充填剤が、雄ネジ部と雌ネジ部との間に流動し易くなる。よって、受け部材とネジ鉄筋との接続作業が確実なものとなる。
【0030】
(特徴構成)
本発明に係るネジ鉄筋接合構造は、前記仮止部材が十字形状を備えていると好都合である。
【0031】
(効果)
本構成のごとく仮止部材が十字形状であれば、受け部材の最も奥部で放出された充填剤が雄ネジ部と雌ネジ部との間により流動し易くなる。よって、受け部材とネジ鉄筋との接続作業がさらに確実なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係るネジ鉄筋の接続態様を示す説明図
図2】第1実施形態のカートリッジをネジ鉄筋に固定する方法の一例を示す斜視図
図3】第2実施形態に係るカートリッジの保持部材の一例を示す斜視図
図4】第2実施形態の保持部材を用いたカートリッジの固定態様を示す斜視図
図5】第3実施形態の放出方向が特定されたカートリッジの一例を示す斜視図
図6】第4実施形態の放出方向が特定されたカートリッジの一例を示す斜視図
図7】第5実施形態のカートリッジと支持部とが一体成形された例を示す斜視図
図8】第6実施形態の二液性の充填材を保持可能なカートリッジの一例を示す斜視図
図9】第7実施形態に係るカートリッジの一例を示す説明図
図10】第8実施形態に係るカートリッジの一例を示す説明図
図11】第9実施形態に係るカートリッジの一例を示す説明図
図12】第10実施形態に係る仮止部材を有するカートリッジの一例を示す説明図
図13】第10実施形態に係る仮止部材を有するカートリッジの一例を示す説明図
図14】本方法によるネジ鉄筋接合部の引張試験結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔概要〕
本発明に係るネジ鉄筋のネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法の一つの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3に示すごとく、本実施形態に係る充填材の注入方法においては、雌ネジ部1aを有する受け部材1に、雄ネジ部2aを有するネジ鉄筋2を螺合接合する際に、雌ネジ部1aと雄ネジ部2aとの隙間に充填材3が充填される。この充填材3は予めカートリッジ4に保持させてあり、ネジ鉄筋2の端部に配置した状態でネジ鉄筋2が受け部材1に螺合される。受け部材1に対するネジ鉄筋2の螺進に伴い、ネジ鉄筋2の端面2bと受け部材1の内面(底面1bと雌ネジ部1aの表面)とでカートリッジ4が押圧され充填材3が放出される。さらにネジ鉄筋2を螺進させることで、充填材3を雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの隙間に圧入するものである。
【0034】
〔第1実施形態〕
図1(a)〜(e)は、例えば逆打ち工法において、下階の柱を構成するネジ鉄筋2を、上階の躯体5に予め埋設された受け部材1に螺合させる場合を示す。このように躯体5の受け部材1にネジ鉄筋2を固定する場合、ネジ鉄筋2であれば螺合によって受け部材1に吊り下げ固定できるからネジ鉄筋2の保持作業が容易となり作業性が非常に良い。
【0035】
ネジ鉄筋2が受け部材1から抜け出るのを防止するために、雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの間にグラウト材などの充填材3を注入する必要がある。従来、逆打ち工法では、鉄筋を挿入する前に注入ガンなどを用いて受け部材1の奥部に充填材3を注入していたが、充填材3の一部はネジ鉄筋2を挿入する前に受け部材1の外部に垂れ落ちてしまう。また、充填材3は手動式の注入ガンなどを用いて注入するが、気温が低い場合には充填材3の粘度が高まる傾向にあって、注入負荷が多大となる。このように従来の注入方法では充填材3の歩留まりが悪いばかりでなく作業環境が極めて悪いものであった。
【0036】
このような不都合を解決すべく、本実施形態では、充填材3を予めカートリッジ4に保持させておき、このカートリッジ4をネジ鉄筋2の先端に配置しつつ、ネジ鉄筋2を受け部材1に螺合させるものとする。充填材3は、例えばネジ鉄筋2のサイズに合わせて予めカートリッジ4に所定量が充填される。充填材3のカートリッジ4への充填作業はネジ鉄筋2の接続現場とは別の場所で行うことができる。また、カートリッジ4に保持された充填材3はネジ鉄筋2が受け部材1の底面1bの近傍に到達した後に放出される。よって、従来のように充填材3が垂れ落ちる前に急いでネジ鉄筋2を螺合させる必要はなく、ネジ鉄筋2の螺合作業を落ち着いて確実に行うことができる。このように、本法のネジ鉄筋2の接続方法は、気温や湿度などの作業環境が厳しい場所における接続作業の負荷を軽減するものである。
【0037】
〔ネジ鉄筋〕
用いるネジ鉄筋2としては、例えば、JIS G 3112に規定される呼び名D19からD51までのものが利用可能である。
【0038】
〔受け部材〕
受け部材1としては、図1に示す如く、筒状の本体部1cを有すると共に、長手方向の中央位置で仕切部1dを備えている。ネジ鉄筋2は原則としてこの仕切部1dに当接するまで螺合させる。この受け部材1にあっては、一方の雌ネジ部1aの奥部に充填材3を充填する孔部1eが形成してある。例えば、逆打ち工法の躯体5にこの受け部材1を埋設する場合には、この孔部1eがある雌ネジ部1aの側を上にして設置する。具体的には、上階の柱に埋設するネジ鉄筋2が施工され、そのネジ鉄筋2の下端部に当該受け部材1が螺合される。螺合が完了すると孔部1eから注入ガンを用いて充填材3が注入され、ネジ鉄筋2の雄ネジ部2aと受け部材1の雌ネジ部1aとの隙間から上方に充填材3があふれ出るまで注入する。その後、躯体5を構成すべくコンクリートの型板が組まれ、受け部材1の下端面のみが下方に露出する状態にコンクリートが打設される。
【0039】
尚、受け部材1のうち仕切部1dから下方の雌ネジ部1aについては、本実施形態の方法によって充填材3の注入を行うので、上記充填材3注入用の孔部1eは設けられていない。
【0040】
〔カートリッジ〕
図2に示すように、本実施形態では、受け部材1に螺合させるネジ鉄筋2の端面2bに、予め充填材3を充填したカートリッジ4を配置する。カートリッジ4の容器本体4aは、ネジ鉄筋2が受け部材1に螺合される際に、ネジ鉄筋2の端面2bと受け部材1の内面(底面1bと雌ネジ部1aの表面)とで押圧される。これにより容器本体4aの形状が、次第に狭くなる空間の形状に強制的に沿わされることとなり、内面からの充填材3の反力によって外皮が延伸される。その後、容器本体4aのうち何れかの個所が最大引張強度を超えて伸ばされ容器本体4aが開封する。
【0041】
容器本体4aを構成する材質としては、このように押圧開封できるものであれば各種の材料が適用可能である。構造も適宜設定することができる。例えば、容器本体4aの材質としては、ゴム風船のように伸縮するものであっても良いし、伸縮性がなくとも厚みの薄い樹脂製の袋で構成されても良い。また、アルミ箔やコーティングを施した紙などでもよい。流動状態の充填材3を保持できて、所定の圧力が作用した時に開封できるものであれば何れの材料であってもよい。特に、伸縮性を有するゴム等であれば、一つの同じサイズの容器本体4aを用いながらネジ鉄筋2のサイズに応じて充填材3の量を変えることができ利便性が高まる。
【0042】
ネジ鉄筋2の固定に用いる充填材3としては、例えば、無機グラウト材や有機グラウト材がある。このうち有機グラウト材では主剤と硬化促進剤とを混合して使用するものがある。ただし、硬化促進剤を用いなくとも主剤は所定の時間で硬化する。よって硬化促進剤は、硬化時間の調節に利用可能である。尚、このような二液性のグラウト材の使用態様については後述する。
【0043】
充填材3を注入したカートリッジ4は、ネジ鉄筋2の接続作業に先立って他の場所で準備しておくことができる。よって、ネジ鉄筋2の接続作業工程に拘束されずにカートリッジ4を準備することができ、カートリッジ4使用の自由度が向上するうえ、接続現場での接続作業が円滑なものとなる。
【0044】
図2には、カートリッジ4がゴム風船である場合を示す。ゴム風船は伸縮性があるため複数サイズのネジ鉄筋2に応じて充填材3の注入量を変化させることができる。充填材3の注入には、例えば、手動式あるいは電動式の充填材注入機を用いる。充填材3の注入量は、手動式であれば注入トリガの操作回数等によって計測し、電動式であれば注入駆動部の作動時間等によって計測する。充填材3の注入後は、ゴム風船の口部4bを縛るか粘着テープなどで封止する。
【0045】
〔カートリッジの固定方法〕
ネジ鉄筋2を受け部材1に螺合させる際に、カートリッジ4を受け部材1の内部に投入する方法は任意である。例えば、カートリッジ4を手で保持し、ネジ鉄筋2の端部を受け部材1に螺合させる直前に受け部材1の内部に投入しても良い。しかしながら、逆打ち工法の上階の躯体5に設けた受け部材1にカートリッジ4を直に投入するのは極めて煩雑である。よって、カートリッジ4は、ネジ鉄筋2の端面2bに固定しておくのが好ましい。例えば、接着剤や粘着材を用いて固定することができる。これら接着剤や粘着材はネジ鉄筋2に設けておいても良いし、カートリッジ4に設けておいても良い。あるいは、カートリッジ4の載置に際して、ネジ鉄筋2あるいはカートリッジ4に貼付したり塗布するものであっても良い。
【0046】
〔接着剤および粘着材〕
接着剤や粘着材の種類としては、ネジ鉄筋2を受け部材1に螺合させる際にカートリッジ4を固定できるものであれば任意である。カートリッジ4の材質にもよるが、例えば粘着材6としては一般の両面テープ6aを用いることができる。接着剤としては粘着特性の強いゴム系の接着剤あるいは瞬間接着剤などを用いることができる。これらであればカートリッジ4をネジ鉄筋2に非常に手軽に取り付けることができる。
【0047】
〔ネジ鉄筋の固定要領〕
ネジ鉄筋2の螺合に際しては、受け部材1に対してネジ鉄筋2が所定の長さ以上螺合していることが必要である。つまり、ネジ鉄筋2の接合部が所定の強度と剛性を発揮できるよう、ネジ鉄筋2と受け部材1との間で所定数のネジ山を係合させる。
【0048】
ネジ鉄筋2の螺合操作は、細径の鉄筋では人が保持して行うが、大径の場合は所定の治具などで保持しつつ行う。雌ネジ部1aの奥まで螺合させたあと所定のトルクを作用させる。これにより受け部材1とネジ鉄筋2との間の遊びが解消され、強固な接続部を得ることができる。この締め付け作業には、可搬式のトルクレンチなどを用いる。
【0049】
尚、ネジ鉄筋2の接続状態が適切であるか否かを確認するために、ネジ鉄筋2の側面2cに指標2dを設けておくとよい。例えば図1に示す如く、ネジ鉄筋2の側面2cのうちネジ部ではない平面状の側面2cに所定長さの指標2dを設ける。平面状の側面2cであれば指標2dの設置が容易である。この指標2dは、シールなどの別体を貼り付けても良いし塗料などで描いても良い。当該指標2dを設けることで、ネジ鉄筋2の螺合深さが確認でき、ネジ鉄筋2の接合部に所期の引張強度を持たせることができる。
【0050】
このような指標2dは、例えば中央部に仕切部1dがない単に筒状の受け部材1に対して両端からネジ鉄筋2を夫々螺合させるような場合に特に有効である。この場合、二本のネジ鉄筋2の突き合わせ部が受け部材1の略中央位置にあることが必要である。つまり、夫々のネジ鉄筋2が受け部材1に対して所定の長さ以上に螺合され、夫々のネジ鉄筋2が受け部材1に対して均等に螺合されていることを確認する。指標2dは例えば図1(e)に示すように、ネジ鉄筋2の螺合が終了した状態で、一部が受け部材1の外部に露出するように設ける。当該指標2dを設けることでこれらの要素を簡単に確認することができる。
【0051】
〔実施例〕
本実施形態の接続方法によるネジ鉄筋2の接続継手につき以下のごとく評価試験を行った。試験には、鋼種SD490・呼び名D38のJFE条鋼製のネジ鉄筋2と、同じくJFE条鋼製のネジカプラを用いて作製した同径間継手を用いた。充填材3としてはネジグラウトタイプM2(JFE条鋼製の無機グラウト)を用いた。
【0052】
評価試験は、「建築物の構造関係技術基準解説書(2015年版)、国交省国土技術政策総合研究所等監修」の鉄筋の機械式継手性能判定基準(170頁乃至177頁)の記載に基づき、弾性域正負繰返し試験および塑性域正負繰返し試験を行った。当該試験結果の一例を図14に示す。
【0053】
図14は、引張試験における伸びと応力との関係を示すものである。実際の試験では、降伏荷重σyの0.95倍の応力を付与する弾性域での引張りを20回繰り返したのち、塑性域での引張りを4回繰り返した。図14には弾性域および塑性域での夫々2回の引張り履歴を示した。試験の結果、継手のすべり変形は0.17mm(判定基準値0.3以内)であり、強度は720N/mm(判定基準値620以上)であって、A級継手の性能(「強度と剛性に関して母材並みであるが、その他に関しては母材よりもやや劣る継手」)を満たしていることが確認できた。
【0054】
〔第2実施形態〕
〔カートリッジの保持部材〕
ネジ鉄筋2に対するカートリッジ4の固定は、図3および図4に示すような専用の保持部材Aを用いることもできる。例えばカートリッジ4を挟持する挟持部と、自身をネジ鉄筋2の端部に固定する支持部とを有するクリップとすることができる。
【0055】
保持部材Aは、例えば図3に示すように、互いに組み合わせられる第1部材7と第2部材8とで構成される。何れの部材も屈曲部7a,8aを有するL型であり、屈曲部7a,8aを境にしてネジ鉄筋2の端面近傍に位置する部位が挟持部となり、ネジ鉄筋2の側面2c近傍に位置する部位が支持部となる。これらのうち、第1部材7の第1挟持部7bは、板状に構成すると共に端部に切欠部7dを構成しておく。一方、第2部材8の第2挟持部8bは、第1挟持部7bが挿入可能となるように板状の基部8dの両端をネジ鉄筋2の端面側とは反対方向に折り曲げた折返し部8eを備えている。これにより第2挟持部8bの長手方向に沿った垂直な断面形状は略C字状となる。二つの折返し部8eどうしの間には隙間8fが形成され、カートリッジ4の一部を係止する部位となる。また、基部8dにも、カートリッジ4の一部を係止する溝部8gが、第1挟持部7bの側に開口する状態に形成してある。尚、折返し部8eの折返し方向は、図3の例とは逆にネジ鉄筋2の端面2bの側であっても良い。
【0056】
図4(a)(b)は、カートリッジ4として例えばゴム風船を用いた場合の固定例を示す。容器本体4aの内部に充填材3を注入したあと口部4bを縛って封止し、この口部4bを第1挟持部7bの切欠部7dに当て付けつつ第1挟持部7bを第2挟持部8bの溝部8gに挿入する。第1挟持部7bの屈曲部7aおよび第2挟持部8bの屈曲部8aがネジ鉄筋2の側面2cに当接するまで第1挟持部7bを第2挟持部8bに挿入する。挿入が完了した状態では、第1部材7の第1支持部7cの先端と第2部材8の第2支持部8cの先端とが各自が有する弾性によりネジ鉄筋2の側面2cを押圧する。その結果、第1部材7および第2部材8には、第1支持部7cおよび第2支持部8cの先端どうしが離れるような回転モーメントが作用する。この回転モーメントによって第1挟持部7bと第2挟持部8bとにコジリが生じ、両挟持部7b,8bは互いに抜け出すことなくカートリッジ4を保持し、ネジ鉄筋2の側面2cを押圧しながらネジ鉄筋2に固定される。
【0057】
尚、第1挟持部7bと第2挟持部8bとが互いに奥まで挿入された状態でも、切欠部7dの奥部7fは溝部8gの奥部8hまで届かないように構成する。つまり、第1支持部7cと第2支持部8cとは全長に亘ってネジ鉄筋2の側面2cに完全に当接して受け部材1の内部に挿入される必要がある。よって、完全に当接した状態でもカートリッジ4の口部4bを挟めるだけの隙間を切欠部7dと溝部8gとの間に設けておく。
【0058】
図3に示す如く、第1挟持部7bの先端は、その平面形状が先細とされている。これにより第2挟持部8bへの挿入が容易となる。また、第1挟持部7bには第2挟持部8bに弾性的に当接する角部7eを設けてある。つまり、上記先細の領域が終了する位置で第1挟持部7bの両側を角部7eとし、上記切欠部7dの長さを角部7eの位置よりも奥まで形成する。さらにフォーク状となった第1挟持部7bの先端部どうしを第1挟持部7bの幅方向に広げ、第2挟持部8bの折返し部8eどうしの内幅よりも広く形成しておく。これにより、第2挟持部8bに挿入された第1挟持部7bの先端部が折返し部8eによって狭められる。この結果、上記第1支持部7cおよび第2支持部8cどうしの反発力による第1挟持部7bと第2挟持部8bとのコジリに加え、両挟持部7b,8bどうしが確実に位置固定される。
尚、第1挟持部7bは、第2挟持部8bの基部8dと二箇所の折返し部8eとによって、第1挟持部7bの厚み方向に挟持されるものであっても良い。
【0059】
その他に、カートリッジ4を保持した保持部材Aをネジ鉄筋2に固定する際に、第1挟持部7bおよび第2挟持部8bの少なくとも何れか一方とネジ鉄筋2の端面2bとを接着してもよい。例えば、両面テープや瞬間接着剤などを用いて固定することで、保持部材Aをより確実にネジ鉄筋2に固定することができる。
【0060】
第1支持部7cおよび第2支持部8cの形状は、所定の弾性力が発揮できる範囲で極力薄くかつ幅を狭く構成するのが好ましい。この部位は、ネジ鉄筋2の平面状の側面2cと受け部材1の雌ネジ部1aの内面とで形成される空間に挿入される。よって、できるだけ占有体積は少ない方が良い。
【0061】
第1部材7および第2部材8は、いくつかの寸法のネジ鉄筋2に対して共通寸法のものを適用可能にすると、これら部材の製造や管理が合理的となり、カートリッジ4の取付作業性が向上するうえにコストが削減される。ただし、特定寸法の第1部材7および第2部材8を各種寸法のネジ鉄筋2に使用する場合、第1挟持部7bの先端が第2挟持部8bの内部に挿入する深さが異なる。よって、例えば第1挟持部7bに設けた切欠部7dの深さと第2挟持部8bに設けた溝部8gとの深さを十分に深く形成しておき、両挟持部7b,8bが最も深く挿入された場合であっても、容器本体4aの一部を挟持できる隙間を形成しておくのが好ましい。
【0062】
これら第1部材7や第2部材8は、弾性変形が可能な例えば各種の金属材料や樹脂材料で構成する。樹脂材料の場合にはインジェクション成形などにより、特に第1挟持部7bや第2挟持部8bの形状を任意に設定することができる。樹脂材料の場合には、一つの寸法の第1部材7および第2部材8を複数のネジ鉄筋2に適用すべく、第1挟持部7bの先端をネジ鉄筋2の寸法に応じて都度切断するものであっても良い。図示は省略するが、例えば、ネジ鉄筋2の寸法に応じた位置に切断のための目印を設けておき、カートリッジ4を装着する際に、ハサミなどで第1挟持部7bを最適な長さに切断する。これにより、第1挟持部7bと第2挟持部8bとを最も奥まで挿入させた場合でも、カートリッジ4をネジ鉄筋2の端面2bの中央に位置させることができる。
【0063】
〔第3実施形態〕
ネジ鉄筋2と受け部材1とでカートリッジ4が押圧される場合、カートリッジ4に内包される状態で充填された充填材3は所期の方向に放出されるのが好ましい。つまり、仮にネジ鉄筋2の周縁部の一方に偏って放出された場合、当該方向におけるネジ鉄筋2と受け部材1との隙間には充填材3が適切に充填される一方で、反対側の周縁部では充填材3が未充填となる領域が生じる場合がある。
【0064】
これを防止するために、容器本体4aの外皮のうちネジ鉄筋2の端面2bと反対側の頂部から開封されるように当該部位の開封強度を低く設定しておくことができる。例えば図5に示す如く、ゴム風船などの容器本体4aを用いる場合には、充填材3を充填した状態で容器本体4aの表面のうち頂部以外の領域に任意の補強テープ9を貼り付けておく。本構成であれば、充填材3を受け部材1の最奥部に確実に放出することができる。
【0065】
〔第4実施形態〕
また、図6に示す如く、容器本体4aを形成する膜部材につき、頂部近傍に充填材3の注入口であり放出口となる切込み10を設けておくこともできる。切込み10は例えば十字形状などに形成しておき、ここから充填材3を注入した後、テープなどの封止部材11で塞いでおく。この封止部材11は、容器本体4aの素材よりも破れ易いものにしておく。これにより、充填材3の注入作業が容易になると共に、全方向への均等な放出が可能となる。
【0066】
尚、この他に、上記切込み10を設けずに、容器本体4aの頂部の膜厚そのものを薄く形成して開封し易い構造としておき、充填材3が頂部から優先的に放出されるようにしても良い。
【0067】
これらの構成であれば、容器本体4aが押圧されたとき充填材3を頂部から放出することができ、ネジ鉄筋2と受け部材1との隙間に対して充填材3を全方向に均等に注入することができる。
【0068】
〔第5実施形態〕
保持部材Aを樹脂で構成する場合には、この保持部材Aを、カートリッジ4を構成する容器本体4aの側に支持部として一体形成することも可能である。例えば図7に示す如く、保持部材Aと同様の機能を発揮する第1支持部7cと第2支持部8cとを容器本体4aに一体形成しておく。その際には、適用するネジ鉄筋2の寸法に合わせて第1支持部7cと第2支持部8cとの間隔を予め所定の寸法に形成しておけばネジ鉄筋2に対する押圧力が適切なものとなる。ネジ鉄筋2への取り付けに際しては、容器本体4aに充填材3を注入するだけで素早い取り付けが可能である。特に、長期保存可能な充填材3を予め充填する場合には、実際のネジ鉄筋2の接続作業がさらに効率的なものとなる。
【0069】
さらに第1部材7および第2部材8を樹脂材料で形成する場合には、図7に示す如く、第1支持部7cおよび第2支持部8cについて自身の長手方向に垂直な断面形状を適宜設定することができる。例えば、ネジ鉄筋2の側面2cと雌ネジ部1aの内面とで形成される空間の形状に合わせ、第1支持部7cの外面7c1および第2支持部8cの外面8c1を円筒状に形成する。本構成であれば、第1支持部7cおよび第2支持部8cの幅が広く確保でき、ネジ鉄筋2の側面2cに対する押圧力が高まると共に両支持部7c,8cの押圧状態が安定化する。
尚、この場合にも、容器本体4aには充填材3の注入・放出のための切込み10および封止部材11を設けておくと良い。
【0070】
〔第6実施形態〕
充填材3として例えば主剤と硬化促進剤とからなる二液性のものを用いる場合には、図8(a)(b)に示す如く、容器本体4aの内部に仕切部12を設けておく。その場合、主剤と硬化促進剤とを上下に仕切るものが好ましい。仮に仕切部12が、両剤を横方向に仕切る場合、例えば主剤はネジ鉄筋2の側面2cのうち一方側に多く流動し、硬化促進剤はその反対側に多く流動して両剤の混合が不十分になる可能性がある。しかし、両剤が上下の位置関係にあれば、容器本体4aが押圧破壊した場合に、両剤がネジ鉄筋2の周囲の何れの個所にも均等に押し出され易くなる。よって、両剤はうまく混合されながらネジ鉄筋2の雄ネジ部2aと受け部材1の雌ネジ部1aとの間に圧入され、主剤の硬化促進が部位に寄らず均一となる。
【0071】
仕切部12を簡単に構成するには、例えば主剤と硬化促進剤とを個別に充填した容器本体4aを重ね配置するとよい。夫々の容器本体4aには上記と同様の切込み10と封止部材11を設けておく。主剤および硬化促進剤の上下の位置関係は任意である。また、この他に、一つの容器本体4aの上下方向の中ほどに仕切部12を別途設けるものであっても良い。その場合にも仕切部12と上側の頂部とに切込み10と封止部材11を設けておき、例えば先に主剤を下側の空間に注入し、封止部材11で封止した後、上側の空間に硬化促進剤を注入するとよい。
【0072】
尚、容器本体4aに二液性の充填材3を保持する場合、このようにカートリッジ4の開封時に両剤が混合されるものとは異なり、ネジ鉄筋2への載置に先立って作業者が仕切部12を開放して両剤を混合するものであっても良い。例えば、一つの容器本体4aの内部に主剤と硬化促進剤とを個別に充填した個別容器を入れておき、作業者が容器本体4aを任意に変形させることで夫々の個別容器を先に開封させ、容器本体4aの内部で両剤を混合させる。そのために、個別容器および容器本体4aの材料・構造は夫々異ならせておき、個別容器の強度を低く設定しておくと良い。本構成であれば、主剤と硬化促進剤とを確実に混合することができる。
【0073】
また、充填材3の硬化特性にもよるが、予め充填材3を充填した状態でカートリッジ4を長期保存しておく場合には、充填材3の充填量を区別するためにカートリッジ4の何れかの個所に着色したり記号を付しておくと良い。
【0074】
〔第7実施形態〕
容器本体4aは、図9(a)(b)に示す如く、互いに組み合わせ可能な複数の分割体で構成することができる。例えば容器本体4aを、カップ状の小径の第1容器本体4a1と、この第1容器本体4a1に外挿可能な大径の第2容器本体4a2とで構成する。これら第1容器本体4a1および第2容器本体4a2は、例えば平面状のアルミ箔をカップ状に成形して得ることができる。また、樹脂成形された一対の円筒カップ状の薄肉容器で構成してもよい。要するに、第1容器本体4a1および第2容器本体4a2の少なくとも何れか一方に充填材3を充填し、これに他方の容器本体を組み合わせて充填材3を封止できるものであれば何れの構成であっても良い。
【0075】
本構成であれば、カートリッジ4に対する充填材3の充填作業が極めて容易となる。また、分割構成にすることで、カートリッジ4の形状設定の自由度が高まるからネジ鉄筋2の端部に取り付け易い形状のカートリッジ4が得易くなるなど、ネジ鉄筋2と受け部材1との接続作業がさらに効率的なものとなる。
【0076】
図9(a)は、第1容器本体4a1および第2容器本体4a2の間に充填材3を充填し、外側に位置する大径の第2容器本体4a2が下方となる姿勢でカートリッジ4がネジ鉄筋2の端面2bに取り付けられる例である。本構成の場合、第1容器本体4a1と第2容器本体4a2とは互いに挿入し合うだけで、特段の係止構造等は設けていない。小径の第1容器本体4a1に充填材3を充填し、これに第2容器本体4a2を外挿して第2容器本体4a2の底面が充填材3と接触することで、充填材3の粘性により第2容器本体4a2は第1容器本体4a1と実質的に一体となる。よってその後、カートリッジ4は、例えば両面テープ6aを用いてネジ鉄筋2の端面2bに固定される。
【0077】
図9(a)の構成の場合、ネジ鉄筋2を受け部材1に螺進させる際に、充填材3を受け部材1の最も奥部で放出することができる。つまり、カートリッジ4が受け部材1の最奥部に到達したとき、第2容器本体4a2の開口側端部4a3が当該最奥部に位置する。この状態からさらにネジ鉄筋2を螺進させると、容器本体4aの内部の充填材3がネジ鉄筋2の端面2bと受け部材1の内面とで容器本体4aの壁部を介して押圧され、容器本体4aの外部に出ようとする。その際に、充填材3は第2容器本体4a2の側壁部を受け部材1の雌ネジ部1aの内面に押し付けつつ雌ネジ部1aの最奥部の位置に押し出され、第2容器本体4a2の開口側端部4a3から雌ネジ部1aの内部に放出される。このような放出により、充填材3は雌ネジ部1aの内面全体に塗布されることとなり、がネジ鉄筋2の螺進が完了したときには、ネジ鉄筋2の雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの間に充填材3が確実に充填されることとなる。
【0078】
一方、図9(b)に示すように、第1容器本体4a1および第2容器本体4a2を互いに組み合わせたのち、内側に位置する第1容器本体4a1をネジ鉄筋2の端面2bに取り付けても良い。この場合は、第2容器本体4a2の開口側端部4a3がネジ鉄筋2の側に向くから、ネジ鉄筋2を雌ネジ部1aに螺進させる際に開口側端部4a3が雌ネジ部1aの内面に引っ掛かることが防止される。これにより、ネジ鉄筋2の螺進に際してカートリッジ4を健全な形状のまま雌ネジ部1aの最奥部に移動させることができ、雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの間に充填材3を安定的に充填することができる。
【0079】
〔第8実施形態〕
図10(a)(b)に示す如く、第1容器本体4a1と第2容器本体4a2とを互いに係合可能あるいは嵌合可能な構成とすることもできる。ここでは、第1容器本体4a1をカップ状の容器とし、第2容器本体4a2が第1容器本体4a1の開口側端部4a4に嵌まり込む嵌合部4a5を備えたものとする。これら第1容器本体4a1および第2容器本体4a2は、紙・樹脂・アルミ箔など任意の材料で構成することができる。
【0080】
図10(a)は、第1容器本体4a1の開口側端部4a4をネジ鉄筋2とは反対の先端部に位置させた例である。第1容器本体4a1は、例えば両面テープ6aを用いてネジ鉄筋2の端面2bに固定する。本構成であれば、容器本体4aがネジ鉄筋2と受け部材1とで押圧され第2容器本体4a2の嵌合が外れたとき、充填材3を雌ネジ部1aの最奥部に放出することができる。よって、雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの間に充填材3を確実に充填することができる。
【0081】
図10(b)は、第1容器本体4a1をネジ鉄筋2とは反対の先端部に位置させた例である。第1容器本体4a1および第2容器本体4a2は各種の材料で構成することができる。よって、例えば充填材3の放出を容易にすべく、第1容器本体4a1を極めて薄肉の部材で構成する場合もある。そのような場合には、ネジ鉄筋2の端面2bにカートリッジ4を固定するのに、実質的な蓋部材である第2容器本体4a2にある程度の剛性を持たせておき、これに両面テープ6aを貼る構成も採り得る。
【0082】
本構成の場合、充填材3の放出位置が、カートリッジ4のうちネジ鉄筋2の側の端部となる。しかし、上記の如く第1容器本体4a1が薄肉で開封し易いものであれば、仮に充填材3がネジ鉄筋2の側で放出されたとしても、その後のネジ鉄筋2の螺進によって第1容器本体4a1は容易に潰れる。よって、放出された充填材3は雌ネジ部1aの最奥部まで流動するから雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの間に確実に行き渡らせることができる。
【0083】
〔第9実施形態〕
図11(a)(b)に示す如く、カートリッジ4は蓋を持たず一方が開放されたままのものであっても良い。つまり、カートリッジ4の内部に保持された充填材3は、カートリッジ4とネジ鉄筋2との協働で保持されるか、カートリッジ4の姿勢を適宜設定することで内部に保持するものとする。
【0084】
図11(a)は、蓋のないカップ状の第1容器本体4a1に充填材3を充填し、ネジ鉄筋2の先端部に第1容器本体4a1の開口側端部4a4を外嵌するものである。この場合、第1容器本体4a1の内部に所定量の充填材3を充填し、充填材3が垂れ落ちないように素早く第1容器本体4a1をネジ鉄筋2の端部に嵌めこむ。その際、第1容器本体4a1をネジ鉄筋2の側にあまり強く押し込むと充填材3があふれ出てしまう。よって、第1容器本体4a1の押込量は、開口側端部4a4から充填材3が僅かにあふれ出る程度かそれ以下に留めておくのが良い。この第1容器本体4a1の取り付けに際しては、図11(a)に記したように、開口側端部4a4の内側面とネジ鉄筋2の外面とを両面テープ6a等で固定すると、第1容器本体4a1の取り付けがより安定化する。
【0085】
尚、本実施形態の場合には、第1容器本体4a1を構成する材料は極力潰れ易いものにしておくのが好ましい。つまり、第1容器本体4a1が過剰な剛性を有する場合、ネジ鉄筋2が第1容器本体4a1の内部に進入し、内部の充填材3が第1容器本体4a1の開口側端部4a4の位置から雌ネジ部1aの内部に放出される可能性がある。この場合、雌ネジ部1aの内面のうち第1容器本体4a1の側面に対向する位置に充填材3が行き渡らない恐れがある。よって、第1容器本体4a1は紙やアルミ箔など容易に潰れる材料で構成するのが好ましい。
【0086】
本構成であれば、カートリッジ4の構成が極めて簡便なものとなり、しかも、ネジ鉄筋2に対するカートリッジ4の取り付けも簡単であるから、ネジ鉄筋2の接続作業が効率的なものとなる。
【0087】
このようなカートリッジ4は図11(b)に示す構成であってもよい。つまり、一方が開放している第1容器本体4a1を用いつつ、充填材3がこぼれない姿勢を保持する。ネジ鉄筋2をほぼ接続姿勢にしたあと、充填材3が充填された第1容器本体4a1を両面テープ6a等でネジ鉄筋2の端面2bに取り付ける。
【0088】
この方法で第1容器本体4a1を受け部材1の最奥部まで確実に移動させることができれば、充填材3は必ず雌ネジ部1aの最奥部に放出することができる。よって、ネジ鉄筋2と受け部材1との隙間に充填材3を確実に行き渡らせることができる。また、本方法や図11(a)に示す方法であれば、カートリッジ4に蓋が無く、第1容器本体4a1を構成する部材だけが受け部材1の内部に残留する。よって、雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの間に存在する異物の量が最も少なくなり、接合部の信頼性が向上する。
【0089】
尚、図11(b)では第1容器本体4a1の上部が開口しているが、第1容器本体4a1の壁部をもう少し上方まで延長させておき、充填材3を充填したのち、当該延長部分を捩じって簡易的に蓋部を形成しても良い。そうすることで、カートリッジ4が取り得る姿勢が広範囲なものとなり、ネジ鉄筋2の接続作業性がさらに向上する。
【0090】
〔第10実施形態〕
上記注入方法の他に、ネジ鉄筋2を受け部材1に取り付ける前にカートリッジ4を受け部材1に仮止めしておくこともできる。ネジ鉄筋2の端面2bにカートリッジ4を配置しつつネジ鉄筋2を受け部材1に螺合させる場合、ネジ鉄筋2の重量のため当該螺合作業の負担が大きくなる。このため、雌ネジ部1aに対するネジ鉄筋2の先端の位置合わせが困難となり、カートリッジ4を雌ネジ部1aの周囲に干渉させてしまう恐れがある。
【0091】
そこで、図12(a)(b)に示す如く、カートリッジ4を予め雌ネジ部1aの内面に仮固定しておくこともできる。例えば、容器本体4aの下面に仮止部材13を両面テープ6aなどで取り付けておく。この仮止部材13は、ある程度の剛性を有する紙や薄い樹脂板など体積の小さな部材で形成する。仮止部材13の外径寸法は、受け部材1の雌ネジ部1aの内径よりも大きく構成しておく。形状は十字形状等として、後に容器本体4aが開封された際に充填材3が下方に流動し易いように周囲に隙間を設けておく。
【0092】
各種の棒状部材などを用いて、容器本体4aおよび仮止部材13を下方から雌ネジ部1aの内部に押し込むと、仮止部材13の端部が雌ネジ部1aの内面に擦れて撓み変形し戻り防止機能が発揮される。これにより、受け部材1の内部にカートリッジ4を仮固定することができる。
【0093】
本方法であれば、カートリッジ4が軽量であるため当該作業の負担は小さい。よって、雌ネジ部1aに対するカートリッジ4の位置合わせが容易となり、カートリッジ4の配置作業が効率化される。尚、カートリッジ4の雌ネジ部1aに対する挿入深さは、カートリッジ4が雌ネジ部1aの底面1bに干渉して充填材3がこぼれ出ない限り任意である。ネジ鉄筋2の端部が雌ネジ部1aに螺合しさえすれば、後はネジ鉄筋2の螺進によってカートリッジ4を押し込むことができる。
【0094】
また、当該カートリッジ4は、図13に示す如く上方が開口した第1容器本体4a1を用いることもできる。第1容器本体4a1を雌ネジ部1aに挿入する直前に所定量の充填材3を充填し、仮止部材13に張り付けて雌ネジ部1aの内部に挿入する。この場合、第1容器本体4a1の姿勢は仮止部材13が下方となる姿勢であるから、上部が開口していることはそれほど問題とはならない。本構成であれば、充填材3の放出が何らの障害物もなく円滑に行われるから、雄ネジ部2aと雌ネジ部1aとの隙間に充填材3を確実に行き渡らせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のネジ鉄筋接合部に対する充填材の注入方法は、雄ネジ部を有するネジ鉄筋を雌ネジ部を有する受け部材に螺合し、充填材で固定する鉄筋接続部に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 受け部材
1a 雌ネジ部
2 ネジ鉄筋
2a 雄ネジ部
2b 端面
3 充填材
4 カートリッジ
4a 容器本体
6 粘着材
12 仕切部
13 仮止部材
A 保持部材
図1
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