特許第6890995号(P6890995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6890995-布地調防水シートの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890995
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】布地調防水シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 38/06 20060101AFI20210607BHJP
   B32B 38/10 20060101ALI20210607BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20210607BHJP
   E04F 10/02 20060101ALI20210607BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   B32B38/06
   B32B38/10
   B32B27/12
   E04F10/02
   E04H15/54
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-24656(P2017-24656)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-130850(P2018-130850A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200666
【氏名又は名称】泉株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511131103
【氏名又は名称】IMSテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】竹中 友章
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆真
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/090877(WO,A1)
【文献】 特開昭58−090919(JP,A)
【文献】 特開2002−240176(JP,A)
【文献】 特開平05−057850(JP,A)
【文献】 特公昭48−028032(JP,B1)
【文献】 実開昭56−123235(JP,U)
【文献】 特開昭64−006185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29C53/00−53/84
57/00−59/18
B32B 1/00−43/00
E04F10/00−10/10
E04H15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地調防水シートの製造方法であって、
繊維性基布(1)を用意する工程、
前記繊維性基布(1)の表面又は表裏両面に天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂からなる防水層(2)を形成する工程、
前記防水層(2)の上に布目状の表面模様(21)を形成する工程を有し、
防水層(2)の上に布目状の表面模様(21)を形成する前記工程が、
布帛(3)を用意する工程と、
前記布帛(3)を表面処理剤に含浸させる工程と、
前記防水層(2)がまだ柔らかいうちに前記布帛(3)を貼り付けて前記防水層上に布目を形成させる工程と、
前記布帛(3)を前記防水層(2)から剥離する工程を有するものにおいて、
前記布帛(3)が、予め、前記防水層(2)と同一の色彩に着色されているものである
ことを特徴とする布地調防水シートの製造方法。
【請求項2】
前記布地調防水シートが布地調防水オーニング材である、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地調の外観を有し、高級感のある防水シート及びその製造方法に関する。このシートはオーニング材(テント、日除け、雨覆い)として開発されたものであり、その目的に最も好適であるが、その他の用途(衣服、カバン、内装材料、など)にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的に高級なタイプのオーニング材として、布地を素材にしたものが公知である。しかし、その布地素材のために、耐候性や耐久性において劣るものであった。
【0003】
この欠点を補うものとして、次のようなオーニング材が公知である。すなわち、中心部の繊維基布と、その表面又は表裏両面に形成されたポリ塩化ビニル樹脂層と、その上面の最外層として形成されるアクリル樹脂コーティング又はフッ素樹脂コーティングからなる積層シートである(例えば、特開昭56―60247、実開昭62―22824、などを参照)。このタイプのオーニング材は、比較的に安価であり、耐候性や耐久性もあるが、表面がつるつるした平滑なシートであり、高級感に乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56―60247
【特許文献2】実開昭62―22824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、比較的に安価な材料を使用しつつ、表面に微細な布地調の凹凸があって、つるつるした光沢がなく、高級感のある布地調防水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の布地調防水シートの製造方法は、
布地調防水シートの製造方法であって、繊維性基布を用意する工程、前記繊維性基布の表面又は表裏両面に天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂からなる防水層を形成する工程、前記防水層の上に布目状の表面模様を直接形成する工程を有し、
防水層の上に布目状の表面模様を直接形成する前記工程が、布帛を用意する工程と、前記布帛を表面処理剤に含浸させる工程と、前記防水層がまだ柔らかいうちに前記布帛を貼り付けて前記防水層上に布目を形成させる工程と、前記布帛を前記防水層から剥離する工程を有するものにおいて、
前記布帛が、予め、前記防水層と同一の色彩に着色されているものであることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
好ましくは、前記布地調防水シートは布地調防水オーニング材である(請求項2)。
【0008】
本発明の布地調防水シートの製造方法は、繊維性基布を用意する工程、前記繊維性基布の表面又は表裏両面に防水層を形成する工程、前記防水層の上に布目状の表面加工を直接形成する工程を有することを特徴とする(請求項3)。
【0009】
前記防水層の上に布目状の表面加工を直接形成する工程は、布帛を用意する工程と、前記布帛を表面処理剤に含浸させる工程と、前記防水層を加熱し、樹脂が柔らかいうちに前記布帛を押圧して前記防水層上に布目を形成させる工程と、その後、前記布帛を前記防水層から剥離する工程を有する(請求項4)。
【0010】
好ましくは、前記布帛は、予め、前記防水層と同一の色彩に着色しておく(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
本発明請求項3〜5記載の方法によって得られる、請求項1、2記載の布地調防水シートは、完全につや消しされており、従来の安価なテント生地にみられるようなプラスチックシートの平滑さやつるつるした光沢は全く見られない。表面は布地調であり、一見すると、もともと布地を素材にしたものと見分けがつかないものである。しかも、表面は防水層を有する合成樹脂であるので耐候性や耐久性に優れたものである。さらに、製品加工に際しては、ミシン縫製を必要とせず、溶着、溶接が容易である。
【0012】
請求項5の方法によると、布帛を剥離したときに異なる色の糸くずを防水層の表面に残すことがなく、見栄えが良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る布地調防水シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る布地調防水シートの断面図である。
【0015】
この図において、中央に位置するのは繊維性基布1である。繊維性基布1としては、天然繊維(例えば、木綿、麻など)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維など)、再生繊維(例えば、ビスコースレーヨン、キュプラなど)、半合成繊維(例えば、ジ−およびトリ−アセテート繊維など)、及び合成繊維(例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリオレフィン繊維など)から選ばれる少なくとも1種からなる。
【0016】
基布中の繊維は、短繊維紡績糸条、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状のものであってもよく、また基布は、織物、編物、不織布又はこれらの複合布のいずれであってもよい。
【0017】
一般には、本発明の防水シートに用いられる繊維はポリエステル繊維であるのが好ましく、この繊維は長繊維(フィラメント)の形状にあるのが好ましく、かつ平織布を形成しているのが好ましい。
【0018】
この基布にフッ素重合体などの撥水剤を含浸させて、吸水防止処理しておくことが好ましい。
【0019】
この繊維性基布1の表面又は表裏両面に防水層2を形成して防水シートとする。
【0020】
この防水層2の材料としては、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ハイパロン、その他)、または合成樹脂(例えば、PVC樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、その他)を用いることができる。このような材料からなる防水層は、得られる防水シートに所望の防水性並びに難燃性や機械的強度を与えるのに十分な厚さ、例えば、0.05mm以上の、好ましくは0.05〜2.0mmの厚さを有する。
【0021】
これらの防水層は、公知の方法(例えば、トッピング、カレンダリング、コーティング、ディッピングなど)によって、繊維性基布上に形成することができる。これらのゴム又は樹脂中には、可塑剤、安定剤、着色剤、防炎剤、紫外線吸収剤などや他の機能付与剤が含まれていてもよい。
【0022】
本発明に特徴的なのは、前記防水層の表面最外層に布目状の表面模様が施されていることである。
【0023】
そのためには布目を付与するための型となる布帛3を用意し、その布帛3を表面処理剤に含浸させる。前記防水層2が温度150℃〜200℃で、まだ柔らかいうちにその布帛3を貼りあわせて防水層2上に布目模様21を形成させる。その後、布帛3を防水層2から剥離する。
【0024】
上記工程において使用する布帛3としては、天然繊維(例えば、木綿、麻など)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維など)、再生繊維(例えば、ビスコースレーヨン、キュプラなど)、半合成繊維(例えば、ジ−およびトリ−アセテート繊維など)、及び合成繊維(例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリオレフィン繊維など)から選ばれる少なくとも1種からなるものである。
【0025】
布帛3中の繊維は、短繊維紡績糸条、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状のものであってもよく、また布帛は、織物、編物、不織布又はこれらの複合布のいずれであってもよい。
【0026】
この布帛3は、予め、防水層2と同一の色彩に着色しておくことが望ましい。この布帛3は防水層2に布目を付与した後、剥離されるのであるが、他の色彩のものを使用すると、布帛3を剥離したときに異なる色の糸くずを防水層の表面に残して見栄えを悪くする原因となるからである。
【0027】
この布帛3は表裏を交替して使用することにより、2回使用することができ、その後廃棄されるか、別の目的に再利用される。
【0028】
表面処理剤としては、剥離しやすさと防汚性能を向上させるものであることが好ましく、例えば、フッ素系/アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0029】
このようにして形成した布地調積層シートは、完全につや消しされており、従来の安価なテント生地にみられるようなプラスチックシートのつるつるした光沢は全く見られない。一見すると、もともと布地を素材にしたものと見分けがつかないものであった。しかも、表面は防水層を有する合成樹脂であるので耐候性や耐久性に優れたものである。さらに、製品加工に際しては、ミシン縫製を必要とせず、溶着、溶接が容易である。
【実施例1】
【0030】
繊維性基布1として、フッ素重合体を有する撥水剤により吸水防止処理したポリエステル繊維を用意した。この基布1の両面に対してそれぞれ、塩化ビニル樹脂フィルムの防水層2をカレンダー加工により0.13mmの厚みでラミネートした。
【0031】
別にポリエステルスパン糸からなる平織織物3(糸使い20s/2×10s/1、密度51×42(本/インチ))を用意し、アクリルフッ素系樹脂からなる表面処理剤に含浸させて塗布量125g/mとした。前記塩化ビニル樹脂フィルム防水層2の温度180℃で加熱し、まだ柔らかいうちにその織物3を貼り合わせて防水層2上に布目模様21を転写させた。その後、織物3を防水層2から剥離した。
【0032】
完成した布地調積層シートは布目模様21を有し、完全につや消しされており、従来の安価なテント生地にみられるようなプラスチックシートのつるつるした光沢は全く見られなかった。
【0033】
この布地調積層シートを溶着・溶接加工してテント生地とした。
【符号の説明】
【0034】
1 繊維性基布
2 防水層
21 表面模様層
3 布帛
図1