【実施例】
【0073】
以下では、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
(燃料極支持基板グリーンシートの作製)
導電成分としての酸化ニッケル(正同化学工業社製、商品名「Green」)60質量部、骨格成分としての3モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(東ソー社製、商品名「TZ3Y」)40質量部、気孔形成剤としてのカーボンブラック(SECカーボン社製、SGP−3)10質量部、メタクリレート系共重合体からなるバインダー(分子量:30,000、ガラス転移温度:−8℃、固形分濃度:50質量部)30質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部及び分散媒としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比=3/2)の混合溶剤80質量部を、ボールミルにより混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、70℃で5時間乾燥させて、燃料極支持基板グリーンシートを作製した。なお、グリーンシートの厚さについては、同じ組成のスラリーを用いて予備実験を行い、グリーンシートと焼成後のシートとの厚さの関係を考慮して、焼成後のシートの厚さが400μmになるようにコントロールしてグリーンシート(1)を作製した。
【0075】
(ジルコニア系酸化物粉末(1)の作製)
塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%スカンジア安定化ジルコニア(8Yb1ScSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Sc
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Scが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した。超純水(抵抗率:17.5MΩ・cm)を用意し、加温機能付きのマグネチックスターラーを用いて水温が20℃になるようにコントロールし、上記塩化物を溶解させた。なお、30分経っても溶解しない場合には、さらに超純水を加え、目視で、塩化物が溶解するまで溶解させた。目視で塩化物が溶解したことを確認した後、それまで溶解に必要とした超純水の10質量%に当たる量の超純水をさらに加え、水溶液を25℃になるように加温・保温しながらさらに1時間攪拌して、塩化物を完全に溶解させた。得られた水溶液をアンモニア水に滴下して得られた沈殿物を、洗浄及び乾燥後、800℃で1時間仮焼した。仮焼した粉末にエタノールを加え、ボールミルで10時間粉砕混合してから乾燥させて、さらに乳鉢にて解砕を行い、解砕した粉を1200℃で焼成して焼成粉末を得た。得られた焼成粉末にエタノールを加え、ボールミルで平均粒径が0.5μm程度になるように粉砕し、乾燥させて、ジルコニア系酸化物粉末(1)として8Yb1ScSZ粉末を得た。なお、作製したジルコニア系酸化物粉末(1)は、後述の<粉末の組成の評価>により、目的の組成すなわちZr100モルに対して、Ybが18モル、Scが2.2モルになっていることを確認した。
【0076】
(燃料極層用粉末のボールミル処理)
ポリ容器に、導電成分としての酸化ニッケル(日興リカ株式会社、商品名「高純度酸化ニッケルF」)60質量部、骨格成分であり、かつイオン伝導成分としてのジルコニア系酸化物粉末(1)(8Yb1ScSZ粉末)40質量部、さらに分散媒としてのエタノールを加え、これをボールミルで粉砕混合してから乾燥させて、混合粉末(1b)(NiO/8Yb1ScSZ混合粉末)を得た。
【0077】
(燃料極層用ペースト(1)の作製)
上記のボールミル処理により得られた混合粉末(1b)60質量部、溶剤としてのα−テルピネオール(和光純薬工業社製)36質量部、バインダーとしてのエチルセルロース(和光純薬工業製)4質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業社製)6質量部及び分散剤としてのソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤4質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」、ロール材質:アルミナ)を用いて解砕し、燃料極層用ペースト(1)を作製した。なお、このペースト化処理では、3本ロールミル間のギャップと回転速度とを調整することによって、後述の<ペースト中の凝集物の評価>に記載されたグラインドメータで計測される最大粒子径の大きさが10μm以下になるまで解砕/混練した。
【0078】
(電解質用粉末のボールミル処理)
ポリ容器に、ジルコニア系酸化物粉末(1)、さらに分散媒としてのエタノールを加え、これをボールミルで粉砕してから乾燥させて、ボールミル処理したジルコニア系酸化物粉末(1b)を得た。なお、このボールミル処理では、回転時間を調整して、平均粒子径(D50)が0.24μmの粉末を得た。
【0079】
(固体電解質層用ペースト(1)の作製)
上記のボールミル処理により得られたジルコニア系酸化物粉末(1b)を60質量部、バインダーとしてエチルセルロース(和光純薬工業社製)を5質量部、溶剤としてα−テルピネオール(和光純薬工業社製)を40質量部、可塑剤としてジブチルフタレート(和光純薬工業社製)を6質量部及び分散剤としてソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名「イオネットS−80」)5質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」ロール材質:アルミナ)を用いて解砕し、固体電解質層用ペースト(1)を作製した。なお、このペースト化処理では、3本ロールミル間のギャップと回転速度を調整することによって、後述の<ペースト中の凝集物の評価>に記載されたグラインドメータで計測される最大粒子径の大きさが10μm以下になるまで解砕/混練した。
【0080】
(バリア層用のペースト(1)の作製)
セラミック質として、10モル%ガドリニアがドープされているセリア粉末(阿南化成株式会社製)60質量部、バインダーとしてのエチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)5質量部、溶剤としてのα−テルピネオール(和光純薬工業株式会社製)40質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート(和光純薬工業株式会社製)6質量部及び分散剤としてのソルビタン酸エステル系界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名「イオネットS−80」)5質量部、を乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」、ロール材質:アルミナ)を用いて解砕した。これにより、バリア層用ペースト(1)を得た。なお、このペースト化処理では、3本ロールミル間のギャップと回転速度を調整することによって、後述の<ペースト中の凝集物の評価>に記載されたグラインドメータで計測される最大粒子径の大きさが10μm以下になるまで解砕/混練した。
【0081】
(燃料極層用グリーン層の形成)
8Yb1ScSZ燃料極層用ペースト(1)をスクリーン印刷により、上記で得た燃料極支持基板グリーンシート(1)に、焼成後の厚さが20μmとなるように印刷し、100℃で30分間乾燥させ、燃料極層用グリーン層(1)を形成した。
【0082】
(固体電解質層用グリーン層の形成)
上記で得た燃料極層用グリーン層(1)上に、上記固体電解質層用ペースト(1)をスクリーン印刷により、焼成後の厚さが7μmとなるように印刷し、100℃で30分間乾燥させ、固体電解質層用グリーン層(1)を形成した。
【0083】
(バリア層用グリーン層の形成)
上記で得た固体電解質層用グリーン層(1)上に、上記バリア層用ペースト(1)をスクリーン印刷により、焼成後の厚さが3μmとなるように印刷した。これを100℃で30分間乾燥させることによって、バリア層用グリーン層(1)を形成した。
【0084】
(焼成)
バリア層用グリーン層(1)の乾燥後、上記で得たバリア層用グリーン層(1)、固体電解質層用グリーン層(1)、燃料極層用グリーン層(1)が形成された燃料極支持基板グリーンシート(1)を、焼成後の1辺が60mmの正方形になるように打ち抜いた。打ち抜いた後、1300℃で2時間焼成して燃料極支持基板上に燃料極層、固体電解質層およびバリア層をこの順に有するハーフセル(1)を得た。
【0085】
なお、後述する<結晶構造の評価>を行うに当たり、以下のハーフセル(ア)及び(イ)のサンプルも準備した。以下の実施例及び比較例においても同様である。
(ア)「SOFC用単セルの固体電解質層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造」を調べるために、燃料極支持基板グリーンシートに(バリア層グリーン層を形成せず)、燃料極層用グリーン層および電解質層グリーン層の形成を行ったものを作製し、焼成することで、燃料極基板上に燃料極層、固体電解質層をこの順に有するハーフセル(ア)のサンプルを得た。
(イ)「SOFC用単セルの燃料極層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造」を調べるために、燃料極支持基板グリーンシートに(バリア層グリーン層及び電解質層グリーン層を形成せず)、燃料極層用グリーン層の形成を行ったものを作製し、焼成することで、燃料極基板上に燃料極層を有するハーフセル(イ)のサンプルを得た。
【0086】
(空気極層用のLSCF粉末の調製)
空気極層の原料となる粉末材料として、LSCFの粉末(1)を以下のようにして調製した。すなわち、市販の純度99.9%のLa
2O
3、SrCO
3、純度99%のCoO及びFe
2O
3の粉末を元素比がLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8となるように混合した。得られた混合物にエタノールを加えて、これをビーズミルで1時間粉砕混合した。次いで、得られた混合物を乾燥させてから、800℃で1時間仮焼した。仮焼後の混合物に対し、さらにエタノールを加えてビーズミルで1時間粉砕混合してから、乾燥させた。その後、1200℃で混合物を5時間加熱することにより粉末を得た。得られた粉末にエタノールを加え、さらにこれをボールミルで10時間粉砕混合してから乾燥させて、粉末を得た。なお、得られた粉末は、XRD(スペクトリス株式会社製:X PERT−MPD)によって、ペロブスカイトからなる単一相であることが確認された。さらにその後、遊星ボールミルを用い、回転数と回転時間を調製しながら粉砕することによって、平均粒子径(D50)が0.52μmである、LSCF粉末(1)を得た。なお、得られたLSCF粉末は後述の<粉末の組成の評価>により、目的の組成すなわち、元素比がLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8であることを確認した。
【0087】
(空気極層用ペースト(1)の調製)
上記の方法で調製されたLSCF粉末(1)100質量部に対して、バインダーとしてのエチルセルロースが3質量%、溶剤としてのα−テルピネオールが30質量%の割合となるように加え、これを乳鉢を用いて予備混合した。その後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」、ロール材質:アルミナ)を用いて混練し、空気極層用ペースト(1)を得た。
【0088】
(空気極の形成)
上記バリア層を有する燃料極支持型ハーフセル(1)のバリア層の表面に、スクリーン印刷により、上記空気極層用ペースト(1)を1cm×1cmの正方形に塗布し、90℃で1時間乾燥させ、空気極層用グリーン層(1)を形成した。この空気極層用グリーン層(1)を1000℃で2時間焼成して空気極を形成し、実施例1に係るSOFC用単セル(1)を得た。
【0089】
<実施例2>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に7モル%イッテルビア2モル%スカンジア安定化ジルコニア(7Yb2ScSZ:(Yb
2O
3)
0.07(Sc
2O
3)
0.02(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対してYbが15モル、Scが4.4モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(2)(7Yb2ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例2のSOFC用単セル(2)を作製した。
【0090】
<実施例3>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に11モル%イッテルビア0.5モル%スカンジア安定化ジルコニア(11Yb0.5ScSZ:(Yb
2O
3)
0.11(Sc
2O
3)
0.005(ZrO
2)
0.885、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが25モル、Scが1.1モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(3)(11Yb0.5ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例3のSOFC用単セル(3)を作製した。
【0091】
<実施例4>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化イットリウム(III)無水物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%イットリア安定化ジルコニア(8Yb1YSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Y
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Yが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(4)(8Yb1YSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例4のSOFC用単セル(4)を作製した。
【0092】
<実施例5>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化セリウム(III)水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%セリア安定化ジルコニア(8Yb1CeSZ:(Yb
2O
3)
0.08(CeO
2)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Ceが1.1モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(5)(8Yb1CeSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例5のSOFC用単セル(5)を作製した。
【0093】
<実施例6>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化エルビウム(III)無水物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%酸化エルビウム安定化ジルコニア(8Yb1ErSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Er
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Erが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例6と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(6)(8Yb1ErSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例6のSOFC用単セル(6)を作製した。
【0094】
<実施例7>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化ルテチウム(III)無水物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%酸化ルテチウム安定化ジルコニア(8Yb1LuSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Lu
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Luが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(7)(8Yb1LuSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例7のSOFC用単セル(7)を作製した。
【0095】
<実施例8>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化ツリウム(III)無水物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%酸化ツリウム安定化ジルコニア(8Yb1TmSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Tm
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Tmが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(8)(8Yb1TmSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例8のSOFC用単セル(8)を作製した。
【0096】
<実施例9>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化ネオジム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%酸化ネオジム安定化ジルコニア(8Yb1NdSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Nd
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Ndが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(9)(8Yb1NdSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例9のSOFC用単セル(9)を作製した。
【0097】
<実施例10>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化ホルミウム(III)無水物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア1モル%酸化ホルミウム安定化ジルコニア(8Yb1HoSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Ho
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.91、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Hoが2.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(10)(8Yb1HoSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例10のSOFC用単セル(10)を作製した。
【0098】
<実施例11>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア0.01モル%スカンジア安定化ジルコニア(8Yb0.01ScSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Sc
2O
3)
0.0001(ZrO
2)
0.9199、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが17モル、Scが0.022モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(11)(8Yb0.01ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例11のSOFC用単セル(11)を作製した。
【0099】
<実施例12>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化ルテチウム(III)無水物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア0.02モル%酸化ルテチウム安定化ジルコニア(8Yb0.02LuSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Lu
2O
3)
0.0002(ZrO
2)
0.9198、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが17モル、Luが0.043モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(12)(8Yb0.02LuSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、実施例7のSOFC用単セル(12)を作製した。
【0100】
<実施例13>
実施例1における燃料極層用グリーン層の形成において、燃料極層用ペーストとして、実施例11で作製した8Yb0.01ScSZ燃料極層用ペーストを使用した以外は、実施例1と同様の方法で製造して、実施例13のSOFC用単セル(13)を得た。
【0101】
<実施例14>
実施例11における燃料極層用グリーン層の形成において、燃料極層用ペーストとして、実施例1で作製した8Yb1ScSZ燃料極層用ペーストを使用した以外は、実施例1と同様の方法で製造して、実施例14のSOFC用単セル(14)を得た。
【0102】
<実施例15>
実施例1における燃料極層用グリーン層の形成において、燃料極層用ペーストとして、実施例4で作製した8Yb1YSZ燃料極層用ペーストを使用した以外は、実施例1と同様の方法で製造して、実施例15のSOFC用単セル(15)を得た。
【0103】
<比較例1>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に7モル%イッテルビア安定化ジルコニア(7YbSZ:(Yb
2O
3)
0.07(ZrO
2)
0.93、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが15モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c1)(7YbSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例1のSOFC用単セル(c1)を作製した。すなわち、比較例1のジルコニア系酸化物粉末(c1)は、イッテルビウム以外の希土類元素の酸化物を含んでいなかった。
【0104】
<比較例2>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に11モル%イッテルビア安定化ジルコニア(11YbSZ:(Yb
2O
3)
0.11(ZrO
2)
0.89、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが25モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c2)(11YbSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例2のSOFC用単セル(c2)を作製した。すなわち、比較例2のジルコニア系酸化物粉末(c2)は、イッテルビウム以外の希土類元素の酸化物を含んでいなかった。
【0105】
<比較例3>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に8モル%イッテルビア4モル%スカンジア安定化ジルコニア(8Yb4ScSZ:(Yb
2O
3)
0.08(Sc
2O
3)
0.04(ZrO
2)
0.88、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが18モル、Scが9.1モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c3)(8Yb4ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例3のSOFC用単セル(c3)を作製した。すなわち、比較例3のジルコニア系酸化物粉末(c3)は、イッテルビウム以外の希土類元素を、Zr100モルに対して8モルを超えて含んでいた。
【0106】
<比較例4>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に7モル%イッテルビア5モル%スカンジア安定化ジルコニア(7Yb5ScSZ:(Yb
2O
3)
0.07(Sc
2O
3)
0.05(ZrO
2)
0.88、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが16モル、Scが11モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c4)(7Yb5ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例4のSOFC用単セル(c4)を作製した。すなわち、比較例4のジルコニア系酸化物粉末(c4)は、イッテルビウム以外の希土類元素を、Zr100モルに対して8モルを超えて含んでいた。
【0107】
<比較例5>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に10モル%イッテルビア2モル%スカンジア安定化ジルコニア(10Yb3ScSZ:(Yb
2O
3)
0.10(Sc
2O
3)
0.03(ZrO
2)
0.87、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが23モル、Scが9.6モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c5)(10Yb3ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例5のSOFC用単セル(c5)を作製した。すなわち、比較例5のジルコニア系酸化物粉末(c5)は、イッテルビウム以外の希土類元素を、Zr100モルに対して8モルを超えて含んでいた。
【0108】
<比較例6>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)の作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に16モル%イッテルビア0.5モル%スカンジア安定化ジルコニア(16Yb0.5ScSZ:(Yb
2O
3)
0.16(Sc
2O
3)
0.005(ZrO
2)
0.835、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが38モル、Scが1.2モル含まれるジルコニア系酸化物)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c6)(16Yb0.5ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例6のSOFC用単セル(c6)を作製した。すなわち、比較例6のジルコニア系酸化物粉末(c6)は、イッテルビウムを、Zr100モルに対して30モルを超えて含んでいた。
【0109】
<比較例7>
実施例1におけるジルコニア系酸化物粉末(1)作製において、塩化イッテルビウム(III)水和物(和光純薬工業製)、塩化スカンジウム(III)六水和物(和光純薬工業製)及び塩化ジルコニウム(IV)(和光純薬工業製)を、焼成後に5モル%イッテルビア1モル%スカンジア安定化ジルコニア(5Yb1ScSZ:(Yb
2O
3)
0.05(Sc
2O
3)
0.01(ZrO
2)
0.94、すなわち、Zr100モルに対して、Ybが11モル、Scが2.1モル)になるように計量した以外は、実施例1と同様の方法でジルコニア系酸化物粉末(c7)(5Yb1ScSZ粉末)を製造し、さらに実施例1と同様にして、比較例7のSOFC用単セル(c7)を作製した。
【0110】
以下に、実施例及び比較例において実施した測定方法及び評価方法について説明する。
【0111】
<粉末の平均粒子径の測定方法>
ピロリン酸ナトリウム(和光純薬製、商品名「ピロリン酸ナトリウム+水和物」)を0.2重量%になるように純水に溶解し、分散媒とした。この分散媒に粉末を分散させ、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、型番LA−920)を用いて、粉末の平均粒子径を測定した。なお、ここで測定された平均粒子径とは、体積基準の累積粒度分布から求められるメジアン径、すなわち体積累積が50%に相当する粒子径(D50)のことである。
【0112】
<ペースト中の凝集物の最大粒子径の評価>
ペースト中の凝集物の最大粒子径は、JIS K5600−2−5.分散度に従い、グラインドメータを用いて測定した。具体的には、グラインドメータ(BYK社製)の溝にペーストを垂らし、スクレーバーを用いてしごき溝の中に厚さが連続して変化したペースト層を作る。この時、ペースト中の凝集物による顕著な斑点が現れ始めた箇所の層の厚さを読み取り、凝集物の最大粒子径とする。なお、この測定を3回行い、3回の平均値を求めてペースト中の凝集物の最大粒子径とした。
【0113】
<粉末の組成の評価>
作製したジルコニア系酸化物粉末及びLSCF粉末は以下の方法で分析を行い、目的の組成物であることを確認した。
・0.5mol%より大きな元素については、XRF(BRUKER社製:S8 TIGER)を用いて、粉体をペレット状に圧縮成型したものについて、分析を行ない、組成を求めた。
・0.5mol%以下の元素についてはICP(Thermo scientific社製:iCAP−6000series)を用いて、測定を行った。具体的には、得られたジルコニア系酸化物粉末:250mgと、硫酸アンモニウム(和光純薬製):4g、硫酸(和光純薬:超微量分析用):5mlを白金るつぼに入れ、550℃に設定したホットプレートにて加熱して溶解し、得られた溶液を超純水で希釈し、その希釈液を分析して、組成を求めた。
【0114】
<電池性能評価試験>
各実施例及び比較例のSOFC用単セルについて、以下の方法で電池性能を評価した。SOFC用単セルの燃料極に100mL/分の窒素を、空気極に100mL/分の空気を供給しつつ、100℃/時間の速度で測定温度(750℃)まで昇温した。昇温後、燃料極、空気極の出口側のガスについて、流量計で、流量を測定し、漏れが無いことを確認した。次いで、水温25℃のバブラーにより加湿した、水素6mL/分及び窒素194mL/分の混合ガス(水蒸気3vol%)を燃料極へ、400mL/分の空気を空気極へ供給した。10分以上経過後に起電力が発生し、漏れが無いことを再度確認した後、燃料極側のガスを、水温25℃のバブラーにより加湿した水素194mL/分に変更した。起電力が安定してから、10分以上経過後に、電流−電圧特性による電池性能評価試験を実施した。得られた電流−電圧特性から、0.4A/cm
2における出力密度W
H2O=3%を求めた。続けて燃料極側のガスを、水素/水蒸気が20/80vol%であって、かつ水素及び水蒸気の合計の流量が200mL/分になるようにバブラーの温度と水素流量とを調整して変更し、燃料極へ供給した。起電力が安定してから、10分以上経過後に、電流−電圧特性による電池性能評価試験を実施した。得られた電流−電圧特性から、0.4A/cm
2における出力密度:W
H2O=80%を求めた。上記により得られたW
H2O=3%とW
H2O=80%から、水蒸気濃度が3%から80%へ変化した際の出力低下率ΔWを以下の式により求めた。各実施例及び各比較例の電池性能評価試験の結果を表1及び表2に示す。
出力低下率:ΔW(%)=[{(W
H2O=80%)−(W
H2O=3%)}÷(W
H2O=3%)]×100
【0115】
<結晶構造の評価>
(1)ジルコニア系酸化物粉末の結晶構造
得られたジルコニア系酸化物粉末の、結晶構造については、XRD(スペクトリス株式会社製:X PERT−MPD)により、分析を行った。
(2)SOFC用単セルの固体電解質層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造
SOFC用単セルの固体電解質層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造については、ハーフセル(ア)を用い、電解質層について、XRD(スペクトリス株式会社製:X PERT−MPD)により、分析を行った。
(3)SOFC用単セルの燃料極層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造
SOFC用単セルの燃料極におけるジルコニア系酸化物の結晶構造については、ハーフセル(イ)を用い、燃料極層について、XRD(スペクトリス株式会社製:X PERT−MPD)により、分析を行った。
なお、実施例1〜12については、(1)ジルコニア系酸化物粉末の結晶構造、(2)固体電解質層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造、及び、(3)燃料極層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造が全て同じであった。したがって、実施例1〜12について、表1には、これら(1)〜(3)の全ての結晶構造を「結晶相」の欄にまとめて示す。表2における比較例1〜7も同様である。また、実施例13〜15については、固体電解質層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造と、その固体電解質層の作製に用いたジルコニア系酸化物粉末の結晶構造とは同じであり、さらに燃料極層におけるジルコニア系酸化物の結晶構造と、その燃料極層の作製に用いたジルコニア系酸化物粉末の結晶構造とは同じであった。したがって、実施例13〜15について、表1には、電解質層のジルコニア系酸化物及びその作製に用いられたジルコニア系酸化物粉末の結晶構造、並びに、燃料極層のジルコニア系酸化物及びその作製に用いられたジルコニア系酸化物粉末の結晶構造を、それぞれ「結晶相」の欄にまとめて示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】