特許第6891035号(P6891035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891035
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/02 20060101AFI20210607BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20210607BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20210607BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   B28B11/02
   C04B38/00 303Z
   B01J35/04 301E
   B01D39/20 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-89094(P2017-89094)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-187772(P2018-187772A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】北口 ダニエル勇吉
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−120652(JP,A)
【文献】 特開2012−076954(JP,A)
【文献】 特開2016−190397(JP,A)
【文献】 特開2007−289815(JP,A)
【文献】 特開2004−169586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/02
C04B 38/00
B01J 35/04
B01D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形原料を押出成形して、流体の流路となる一方の成形体端面から他方の成形体端面まで延びる複数のセルを区画形成する成形体隔壁を有するハニカム成形体を形成する成形工程と、
前記ハニカム成形体の前記一方の成形体端面及び前記他方の成形体端面のそれぞれの端面中心点を含む領域に、スラリー状の閉塞部材を塗布し、前記一方の成形体端面及び前記他方の成形体端面の少なくとも一部の前記セルの開口部を閉塞する多孔質性の一対の閉塞部を形成する閉塞部形成工程と、
前記閉塞部の形成された前記ハニカム成形体を焼成炉内で焼成する焼成工程と、
得られたハニカム焼成体の一方の焼成体端面及び他方の焼成体端面から前記閉塞部を除去する閉塞部除去工程と
を具備し、
前記閉塞部形成工程は、
気孔率が32%〜82%の範囲であり、かつ、前記一方の成形体端面及び前記他方の成形体端面に対する前記閉塞部により閉塞された閉塞領域の面積比率が36%以上から100%以下の前記閉塞部を形成するハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記閉塞部形成工程は、
前記端面中心点を円の中心とする円形状の前記閉塞領域の前記閉塞部を形成する請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
多孔質性の前記閉塞部の気孔率は、
前記ハニカム成形体の成形体隔壁の気孔率よりも大に形成され、
前記閉塞部の気孔率と前記成形体隔壁の気孔率との差が5%以上である請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程及び前記閉塞部形成工程の間に介設され、
前記ハニカム成形体の前記一方の成形体端面の前記セルの前記開口部を所定の配設基準にしたがって目封止材で目封止し、かつ、前記他方の成形体端面における残余の前記セルの前記開口部を更に前記目封止材で目封止した複数の目封止部を形成する目封止部形成工程を更に具備し、
前記閉塞部形成工程は、
少なくとも一部の前記目封止部に積層し、または前記目封止部の形成されていない未形成セルの一部に前記閉塞部が形成され、
前記閉塞部除去工程は、
前記閉塞部及び積層された前記目封止の一部、または、前記未形成セルの一部に形成された前記閉塞部及び前記目封止部の一部が研削加工によって除去される請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記成形原料及び前記閉塞部材は、
同一のセラミックス材料を前記成形原料の主成分として含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記成形原料は、
コージェライトを主成分とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記閉塞部の気孔率と前記成形体隔壁の気孔率との差が50%以上である請求項〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。更に詳しくは、押出成形機を用いて押出成形されたハニカム成形体を焼成炉内で焼成する際に、隔壁の変形や焼成キレ等の不具合の発生を抑制可能なハニカム構造体の製造方法に関する。
【0002】
従来、セラミックス製ハニカム構造体は、種々の産業技術分野において利用されており、例えば、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)、ガソリン微粒子除去フィルタ(Gasoline Particulate Filter:GPF)、或いは燃焼装置用蓄熱体等の広範な用途に使用されている。
【0003】
セラミックス製ハニカム構造体(以下、単に「ハニカム構造体」と称す。)は、所定の配合比率に調製された成形原料(坏土)を、押出成形機を用いて所望のハニカム形状に押出成形し、生切断、乾燥、及び仕上げ切断した後、高温で焼成する焼成工程を経て製造されている。また、必要に応じて、ハニカム構造体の端面のセルの開口部を所定の配設基準に従って目封止した複数の目封止部を設けた目封止ハニカム構造体が製造されている。
【0004】
焼成工程において発生する隔壁の変形や焼成キレ等は、焼成炉内で高温に晒されるハニカム成形体の成形体内部の温度(内部温度)と、ハニカム成形体の外周面付近の温度(外周面温度)との温度差が著しく大きくなることで発生することが知られている。
【0005】
そこで、例えば、焼成炉内の炉内雰囲気を制御すること、特に、加熱温度や燃焼温度を変化させる要因となる、酸素濃度を制御して、昇温速度を緩やかにする試みが行われる。その結果、ハニカム成形体の各部位(成形体内部及び外周面付近等)において、急激な温度上昇を抑えることができ、局所的な温度差が生じることを回避できる。
【0006】
特に、隔壁厚さが薄いハニカム成形体の焼成や、ハニカム径が大きなサイズのハニカム成形体の焼成に優れた効果を奏することができる。更に、ハニカム成形体が焼成温度に到達するまでの加熱時間(昇温時間)を従来と比較して長くし(例えば、7時間程度)、緩やかな昇温カーブに沿って加熱することが行われている。一方、セラミックス材料を主成分とする成形原料(坏土)の中に、各種の無機バインダを添加し、ハニカム成形体の成形体内部の温度が急激に上昇することを抑えることも実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−274954号公報
【特許文献2】国際公開第2006/035674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような酸素濃度を制御してハニカム成形体を焼成を行う場合、酸素濃度を調整するために比較的大掛かりな設備が必要となり、新たな設備投資によるコストがかかることとなった。また、酸素濃度を制御するための複雑な調整作業を適宜行う必要があり、作業者に過大な負担を強いる可能性があった。また、昇温カーブを緩やかにして焼成時間を長くすることは、ハニカム構造体の製造時間を長くすることとなり、製造効率の低下を招来する可能性があった。
【0009】
加えて、無機バインダ等の添加物を添加するものは、成形原料のコストアップとなる等の各種問題が懸念される。そこで、上記問題を発生することなく、既存の設備を流用することが可能であり、かつコストアップや製造効率を低下させることなく、焼成工程における焼成キレ等の不具合の発生を抑制可能なハニカム構造体の製造方法の開発が期待されている。
【0010】
ここで、既に説明したように、焼成キレ等の主たる発生要因は、ハニカム成形体の成形体内部及び外周面付近の温度差が大きくなることである。そこで、本願出願人は、鋭意研究を重ねた結果、焼成工程における上記温度差を小さくするため、特にハニカム成形体の成形体内部への酸素を含んだ空気の流入量を物理的に制限することで、成形体内部の急激な温度上昇を抑えることを見出した。
【0011】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、新たな設備を必要とすることなく、比較的簡易な構成で、焼成キレ等の不具合の発生を抑えたハニカム構造体の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記課題を解決したハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0013】
[1] 成形原料を押出成形して、流体の流路となる一方の成形体端面から他方の成形体端面まで延びる複数のセルを区画形成する成形体隔壁を有するハニカム成形体を形成する成形工程と、前記ハニカム成形体の前記一方の成形体端面及び前記他方の成形体端面のそれぞれの端面中心点を含む領域に、スラリー状の閉塞部材を塗布し、前記一方の成形体端面及び前記他方の成形体端面の少なくとも一部の前記セルの開口部を閉塞する多孔質性の一対の閉塞部を形成する閉塞部形成工程と、前記閉塞部の形成された前記ハニカム成形体を焼成炉内で焼成する焼成工程と、得られたハニカム焼成体の一方の焼成体端面及び他方の焼成体端面から前記閉塞部を除去する閉塞部除去工程とを具備し、前記閉塞部形成工程は、気孔率が32%〜82%の範囲であり、かつ、前記一方の成形体端面及び前記他方の成形体端面に対する前記閉塞部により閉塞された閉塞領域の面積比率が36%以上から100%以下の前記閉塞部を形成するハニカム構造体の製造方法。
【0014】
[2] 前記閉塞部形成工程は、前記端面中心点を円の中心とする円形状の前記閉塞領域の前記閉塞部を形成する前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0015】
[3] 多孔質性の前記閉塞部の気孔率は、前記ハニカム成形体の成形体隔壁の気孔率よりも大に形成され、前記閉塞部の気孔率と前記成形体隔壁の気孔率との差が5%以上である前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0016】
[4] 前記成形工程及び前記閉塞部形成工程の間に介設され、前記ハニカム成形体の前記一方の成形体端面の前記セルの前記開口部を所定の配設基準にしたがって目封止材で目封止し、かつ、前記他方の成形体端面における残余の前記セルの前記開口部を更に前記目封止材で目封止した複数の目封止部を形成する目封止部形成工程とを更に具備し、 前記閉塞部形成工程は、少なくとも一部の前記目封止部に積層し、または前記目封止部の形成されていない未形成セルの一部に前記閉塞部が形成され、前記閉塞部除去工程は、前記閉塞部及び積層された前記目封止の一部、または、前記未形成セルの一部に形成された前記閉塞部及び前記目封止部の一部が研削加工によって除去される前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0017】
[5] 前記成形原料及び前記閉塞部材は、同一のセラミックス材料を前記成形原料の主成分として含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0018】
[6] 前記成形原料は、コージェライトを主成分とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0020】
] 前記閉塞部の気孔率と前記成形体隔壁の気孔率との差が50%以上である前記[3]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、製造効率を低下させることなく、隔壁の変形や焼成キレ等の不具合の発生を抑制した製品形状のハニカム構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態のハニカム構造体の製造方法の流れの一部を模式的に示す説明図である。
図2】閉塞部が形成されたハニカム成形体の概略構成を示す斜視図である。
図3】閉塞部が形成されたハニカム成形体の概略構成を示す断面図である。
図4】閉塞部が形成され、かつ、複数の目封止部を有する目封止ハニカム成形体の概略構成を示す斜視図である。
図5】閉塞部が形成され、かつ、複数の目封止部を有する目封止ハニカム成形体の別例構成を示す斜視図である。
図6図5の目封止ハニカム成形体の概略構成を示す断面図である。
図7】外周付近に閉塞部を形成したハニカム成形体(比較例4等)の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明のハニカム構造体の製造方法の実施の形態について詳述する。なお、本発明のハニカム構造体の製造方法は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0024】
1.ハニカム構造体の製造方法
本発明の一実施形態のハニカム構造体の製造方法100(以下、単に「製造方法100」と称す。)は、予め所定の配合比率に沿って調製されたセラミックス材料(例えば、コージェライト或いは炭化珪素(SiC)等)を主成分とする成形原料(坏土)を、周知の押出成形機を用いて、口金から所望のハニカム形状のハニカム成形体1aを押出成形し、ハニカム成形体1aを形成する成形工程S1と、得られたハニカム成形体1aに一対の閉塞部2a,2bを形成する閉塞部形成工程S2と、閉塞部の形成されたハニカム成形体1bを焼成炉内で焼成する焼成工程S3と、得られたハニカム焼成体3から閉塞部2a,2bを研削加工により除去する閉塞部除去工程S4とを主に具備して構成されている(図1参照)。
【0025】
なお、本明細書において、閉塞部2a,2bの形成前のハニカム成形体を「ハニカム成形体1a」と表し、閉塞部2a,2bの形成後のハニカム成形体を「ハニカム成形体1b」と表し、それぞれ明確に区別する。また、閉塞部2a,2b以外については同一であるため、その他構成については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0026】
本実施形態の製造方法100におけるハニカム成形体1bは、図2及び図3に示すように、流体の流路となる一方の成形体端面4aから他方の成形体端面4bまで、ハニカム軸方向に沿って延びる複数のセル5を区画形成する成形体隔壁6を有して構成されている。
【0027】
そして、閉塞部2a,2bの形成されたハニカム成形体1bを焼成することで、ハニカム焼成体3(図1参照)が得られ、更に当該ハニカム焼成体3から閉塞部2a,2bを研削加工により除去することで最終製品であるハニカム構造体10(図1参照)を製造することができる。なお、ハニカム成形体1bの詳細については後述するため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
ここで、製造方法100における成形工程S1及び焼成工程S3は、従来から周知の工程をそのまま利用することができる。また、成形工程S1及び焼成工程S3に使用する各種設備等も従来のものをそのまま流用することができる。そのため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0029】
本実施形態の製造方法100における成形工程S1の中には、例えば、押出成形機から押出成形された直後の、押出方向に沿ってハニカム成形体が連続した連続体(図示しない)を、所定のハニカム長さに切断(生切断)するとともに(切断工程)、更に、マイクロ波乾燥や熱風乾燥等の周知の乾燥手段を用いて、ハニカム成形体に含まれる水分等を除去し、乾燥する(乾燥工程)等の各工程が含まれている。この成形工程S1により、例えば、略円柱状のハニカム成形体1a(図1参照)を得ることができる。
【0030】
一方、焼成工程S3は、焼成経路の一端及び他端に投入口及び排出口がそれぞれ設けられた、既設の連続焼成炉(例えば、トンネルキルン等)、或いはバッチ焼成炉(例えば、シャトルキルン等)を用いて実施することができる。ここで、例えば、連続焼成炉の場合、棚板の上に載せられたトチの上に、一方または他方の成形体端面4a,4bを下方に向けて直立させた状態で載置し(載置工程)、投入口から排出口に至る焼成経路に沿ってハニカム成形体1bを搬送することで焼成を行うことができる。このとき、投入口から排出口に至るまでの時間(焼成時間)、焼成温度、或いは焼成温度に到達するまでの昇温カーブ等を任意に調整することで焼成が行われる。
【0031】
本実施形態の製造方法100において、焼成工程S3の焼成対象となる、一対の閉塞部2a,2bの形成されたハニカム成形体1bを、ハニカム成形体1aから形成する工程(閉塞部形成工程S2)、及び、焼成工程S3の次工程として、閉塞部2a,2bをハニカム焼成体3の一方の焼成体端面7a(焼成前の一方の成形体端面4aに相当)及び他方の焼成体端面7b(焼成前の他方の成形体端面4b)から除去する工程(閉塞部除去工程S4)が、従来のハニカム構造体の製造方法と相違する特徴的な構成である。
【0032】
本実施形態の製造方法100を用いて製造されるハニカム構造体の使用用途は、特に限定されるものではなく、例えば、ガソリン微粒子除去フィルタ(GPF)、ディーゼル微粒子除去フィルタ(DPF)等の従来から周知のフィルタ部材として主に使用するものが想定される。そのため、ハニカム構造体を構成する隔壁等は、例えば、コージェライトやSiC等の周知のセラミックス材料を用いて構築することができる。
【0033】
そのため、上述したハニカム成形体1a,1bを形成するために押出成形される成形原料(坏土)として、コージェライトやSiC等のセラミックス材料を主成分として主に用い、その他、造孔材や増粘剤、有機バインダ、及び水等の液体等を適宜用いることができる。ここで、本明細書において、特に断りのない限り、ハニカム構造体及びハニカム成形体1a,1bを構成するセラミックス材料として、コージェライトを主成分とするものを想定し、以下に説明を行うものとする。
【0034】
上記以外のセラミックス材料としては、例えば、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、シリカ等を列挙することができ、造孔材としては、グラファイト、発泡樹脂、小麦粉、デンプン、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、シラスバルーン、フライアッシュバルーン等を列挙することができ、増粘剤としては、ポリエチレンオキシド等を列挙することができる。
【0035】
更に、有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドリキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、及びポリビニルアルコール等を列挙することができ、分散剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、及びポリアルコール等を列挙することができる。なお、水は、一般的な精製水或いはイオン交換水等を用いることができる。
【0036】
また、ハニカム焼成体3から形成されるハニカム構造体の最終的な形状は、特に限定されるものではなく、例えば、一般的な略円柱状の構造を呈するもの以外に、多角柱状構造、或いは、楕円柱状構造のものであっても構わない。更に、流体の流路として区画形成されたセルの形状も特に限定されるものではなく、正四角形状以外に、六角形状或いは八角形状、または複数種類の多角形状を組合わせたものであっても構わない。
【0037】
ここで、コージェライトを主成分とする隔壁によって区画されたハニカム構造体のセルのセル密度や隔壁の隔壁厚さについても、特に限定されるものではなく、任意のものを採用することができる。例えば、85〜900cpsi(13〜140セル/cm)のセル密度、及び2〜25mil(0.05〜0.64mm)の隔壁厚さのものを挙げることができる。ここで、“cpsi(cell per square inch)”は、1平方インチ当たりの面積に含まれるセルの個数を示すものである。ここで、本実施形態の製造方法100は、特に0.05〜0.10mmのような非常に薄い隔壁を有するハニカム構造体を製造する際に特に好適である。
【0038】
閉塞部形成工程S2は、成形工程S1によって押出成形されたハニカム成形体1aに対し、一対の閉塞部2a,2bを形成するものであり、図1に模式的に示すように、形成する閉塞部2a,2bの形状に合わせて開口部8aが形成されたマスク8を、一方の成形体端面4a(または他方の成形体端面4b)に被せる“マスキング”を始めに行う。これにより、マスク8で被覆された部分に後述する閉塞部材9が接することがない。
【0039】
次に、スラリー状の閉塞部材9をマスク8の開口部8aに流し込み、スキージ操作等により一定の厚さになるように、閉塞部材9を塗布する(閉塞部材塗布)。ここで、閉塞部材9はスラリー状を呈するため、ハニカム成形体1aのセル5を通って他方の成形体端面4b(または一方の成形体端面4a)側まで流れ落ちることがなく、一方の成形体端面4a等付近に留まっている(図3等参照)。
【0040】
その後、一方の成形体端面4aからマスク8を取り外し、乾燥等を行うことにより、閉塞部2aが形成される。なお、上記と同様の処理を残余の他方の成形体端面4b(または一方の成形体端面4a)に対して行うことにより、一対の閉塞部2a,2bが形成されたハニカム成形体1bが完成する。このハニカム成形体1bに対して焼成が実施される。
【0041】
ここで、スラリー状の閉塞部材9は、特に限定されるものではないが、ハニカム成形体1a等を形成する際に使用した、例えば、コージェライトを主成分とするセラミックス材料等を用いることができる。これにより、乾燥させることにより、多孔質性の閉塞部2a,2bを簡易に構成することができる。
【0042】
閉塞部2a,2bの形成されたハニカム成形体1bを焼成すると、ハニカム成形体1bの成形体内部に流れ込む酸素を含んだ気体の流入量を制限することができる。焼成工程S3において、ハニカム成形体1bの成形体内部が高温になるためには、十分な量の酸素が必要である。
【0043】
しかしながら、本実施形態の製造方法100の場合、一対の閉塞部2a,2bが形成されることによって、気体の流入量が抑えられることで、ハニカム成形体1bの成形体内部の温度が急激に上昇することがない。すなわち、ハニカム成形体1bの成形体内部と外周面付近とでの温度差が大きくなるのを防ぐことができる。その結果、温度差によって生じる隔壁の変形や焼成キレ等の不具合を抑制することができる。
【0044】
なお、前述したように、閉塞部2a,2b自体は、ハニカム成形体1a,1bを構成する成形体隔壁6と同一のセラミックス材料を主成分としたものから構成することができ、複数の気孔を備えた多孔質性の材料である。そのため、酸素等の気体の流入を完全に遮断するものではない。そのため、成形体内部の温度を外周面付近と同じように変化させながら焼成工程S3を実施することができる。
【0045】
更に焼成工程S3が完了した後は、得られたハニカム焼成体3の一方の焼成体端面7a及び他方の焼成体端面7bを研削加工することで、閉塞部2a,2bを除去することができる(閉塞部除去工程S4)。これにより、最終的に従来の形状と変わらない略円柱状のハニカム構造体10を製造することができる。
【0046】
ここで、閉塞部2a,2bの研削加工による除去は、例えば、軸方向に従って回転可能なカップ型砥石(図示しない)を、それぞれの焼成体端面7a,7bに近接させることにより、閉塞部2a,2b及び焼成体端面7a,7bの一部を削り取ることができる。
【0047】
これにより、閉塞部2a,2bを除去するとともに、ハニカム構造体10の構造体端面11a,11bを整える仕上げ加工を併せて行うことができる。ここで、カップ型砥石等を含む研削設備は、従来から周知のものであり、既設設備を流用することができ、新たな設備コストを必要とするものではない。
【0048】
ここで、カップ型砥石等を用いた研削厚さHは、0.5mm〜5mmの範囲にすることが特に好適である。形成された閉塞部2a,2b等を確実に除去するとともに、研削加工に要する作業時間を勘案し、上記研削厚さHの範囲が設定される。なお、上記研削厚さHは、閉塞部2a,2bと、一方の焼成体端面7aまたは他方の焼成体端面7bとの削り量の合計を示している。
【0049】
2.ハニカム成形体
更に、閉塞部2a,2bの形成されたハニカム成形体1bについて詳述すると、閉塞部形成工程S2によって、一方の成形体端面4a及び他方の成形体端面4bに対する、閉塞部2a,2bにより閉塞された閉塞領域Rの面積比率が36%以上となるように、閉塞部2a,2bが形成されている。
【0050】
すなわち、一方の成形体端面4a等の全体の面積に対し、少なくとも36%以上の面積がセル5のセル開口部5aを被覆するように形成される。面積比率が36%以上ないと、成形体内部への気体の流入制限の効果が得られず、成形体内部の温度が急激に上昇する可能性が高くなるためである。
【0051】
ここで、当該閉塞領域R(閉塞部2a,2b)は、一方の成形体端面4a(または他方の成形体端面4b)のそれぞれの端面中心点C1,C2(図2参照)を含む領域で形成されている必要がある。すなわち、端面中心点C1,C2を閉塞領域に含まず、外周面14を基準として、例えば、ドーナツ状の閉塞部2cを形成したハニカム成形体1cは、本実施形態の製造方法100におけるハニカム成形体1bと同様の効果を奏しない(図7参照)。閉塞部2a,2bによって成形体内部の温度上昇を抑えるために、端面中心点C1,C2を含んで閉塞領域Rを設定する必要があるからである。
【0052】
なお、閉塞領域Rの形状(閉塞部2a,2bの形状)は、特に限定されるものではなく、図2等に示すような円形状以外の多角形状や楕円形状等であっても構わない。この場合であっても、端面中心点C1,C2を含む閉塞領域Rにする必要がある。更に、上記面積比率が36%以上であればよく、一方の成形体端面4a(または他方の成形体端面4b)の全体を閉塞部2a,2bで被覆したもの、すなわち、面積比率が100%であっても構わない。更に、ハニカム成形体1bの一方の成形体端面4a及び他方の成形体端面4bで、閉塞部2a及び閉塞部2bの形状や面積比率が互いに相違するものであっても構わない。
【0053】
更に、閉塞部形成工程S2によって形成されたハニカム成形体1bの多孔質性の閉塞部2a,2bの気孔率は、ハニカム成形体1bを構成する成形体隔壁6の気孔率よりも大に形成され、閉塞部2a,2bの気孔率と成形体隔壁6の気孔率との差(=閉塞部気孔率−成形体隔壁気孔率)が5%以上であることが好適であり、更に当該気孔率の差が50%であることが好ましい。
【0054】
すなわち、多孔質性の閉塞部2a,2bの方が、成形体隔壁6よりも気体等の流体を透過させやすい性質を有している。これにより、閉塞部2a,2bによって一部のセル5が閉塞されているものの、当該セル5の内部に適度な量の気体が流入することができ、焼成工程S3を良好に行うことができる。ここで、気孔率の計測方法は、既存の試験方法(アルキメデス法、水銀圧入法等)を利用することができる。
【0055】
更に、本実施形態の製造方法100において、セル5のセル開口部5aに複数の目封止部12を設けた目封止ハニカム成形体13(図4参照)を形成する目封止部形成工程(図示しない)を成形工程S1及び閉塞部形成工程S2の間に介設したものであっても構わない。
【0056】
これにより、多孔質セラミックス製の格子状の成形体隔壁6によって区画形成された、流体の流路となる複数のセル5を備え、所定のセル5の一方の成形体端面4aのセル開口部5aが目封止部材によって目封止されるとともに、残余のセル5の他方の成形体端面4bのセル開口部(図示しない)が目封止材によって目封止された複数の目封止部12を有する目封止ハニカム成形体13を形成することができる(図4参照)。
【0057】
なお、図4において、複数の目封止部12が交互に配設された市松模様(チェッカーボードパターン)となるように目封止部12の配設基準が設定されている。但し、係る配設基準は任意のものであり、これに限定されるものではない。また、目封止部12の形成方法は、既に周知のものであり、例えば、「スキージ方式」や「圧入方式」等の既存の手法を用いることができる。更に、目封止部材の原料は、例えば、セラミック原料、造孔材、増粘剤、有機バインダ、分散剤、及び水を混合及び混練して調製することができる。
【0058】
この場合、次工程となる閉塞部形成工程S2は、既に形成された目封止部12の一部の上に積層して閉塞部2a,2bを形成することとなる。また、閉塞部除去工程S4は、閉塞部2a,2b及び目封止部12の一部を研削加工によって除去することとなる。これにより、DPFやGPF等に使用可能な目封止ハニカム構造体(図示しない)を容易に製造することができる。ここで、図4に示した目封止ハニカム成形体13は、前述のハニカム成形体1bと略同一の構成については同一符号を付して示している。
【0059】
ここで、本発明のハニカム構造体の製造方法の閉塞部形成工程S2は、図4に示すような、目封止部12の一部の上に積層して閉塞部2a,2bを形成するものに限定されるものではない。例えば、目封止部12の形成されていない未形成セル5bの一部に閉塞部2a,2bを形成した目封止ハニカム成形体13aであっても構わない(図5及び図6参照)。この場合、未形成セル5bへの閉塞部2a,2bは、目封止部12の形成と同様に、「スキージ方式」や「圧入方式」等を採用し、任意の一の未形成セル5bのみに閉塞部2a等を形成することができる。この場合、一方及び他方の成形体端面4a,4bからの目封止部12の目封止部深さH1に対し、閉塞部2a,2bの閉塞部深さH2を短くする必要がある(図6参照)。更に、閉塞部除去工程S4は、一方及び他方の焼成体端面7a,7bから閉塞部2a,2bの閉塞部深さH2に相当する量を少なくとも研削厚さHとする必要がある。なお、図5及び図6において、図示を簡略化するため、図4の目封止ハニカム成形体13と同一構成については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図5及び図6の場合、上記した閉塞領域Rは端面中心C1,C2から最も遠い閉塞部2a(または閉塞部2b)を含む領域とし、当該閉塞領域Rの面積が面積比率を算出するための基準となる。
【0060】
本実施形態の製造方法100において、通常の押出成形によって形成されたハニカム成形体1aに一対の閉塞部2a,2bを設けたハニカム成形体1bを形成することで、焼成工程S3の際に、酸素を含む気体(流体)がハニカム成形体1bの成形体内部への流入量を制限することができる。特に、閉塞部2a,2bと成形体隔壁6との気孔率差を5%以上(好ましくは、50%以上)に設定することで、安定した焼成を行うことができる。これにより、成形体内部の急激な温度上昇を抑え、隔壁の変形等の不具合の発生を効果的に回避することができる。
【0061】
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の実施例について説明するが、本発明のハニカム構造体の製造方法は、これらの実施の形態に特に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
(1)ハニカム成形体の形成
コージェライトを主成分とする成形原料(坏土)を用い、押出成形機を利用して略円柱状のハニカム成形体を形成した。乾燥後のハニカム成形体は、ハニカム径が144mm、ハニカム長さが152mm、セル密度が400cpsi、隔壁厚さが4mil(0.1mm)、外壁厚さが0.4mmのものである。更に、ハニカム成形体の成形体隔壁の気孔率は32%とした。なお、気孔率は、周知の測定手法である、水銀圧入法、またはアルキメデス法を適宜用いて測定を行った。
【0063】
(2)閉塞部の形成
上記(1)によって形成されたハニカム成形体の上端面(一方の成形体端面に相当)、及び、下端面(他方の成形体端面に相当)に閉塞部を形成した。なお、閉塞部の形成工程は、既に説明したため、ここではその詳細は省略する。ここで、実施例1〜9及び比較例2〜6はいずれもコージェライトを主成分とする多孔質性の閉塞部が形成されている。これに対し、比較例1は閉塞部を設けない従来のハニカム成形体であり、比較例7及び比較例8は緻密質のアルミナプレートを上端面及び下端面に当接させたものであり、比較例9及び比較例10はエポキシ樹脂を塗布し、乾燥硬化させたものである。
【0064】
(3)閉塞部の気孔率
実施例1〜5、及び、比較例2〜6の閉塞部は、閉塞部の気孔率が82%であり、成形体隔壁の気孔率(=32%)との差が+50%のものである。更に、実施例6〜9は、閉塞部の気孔率を65%から32%までそれぞれ変化させたものである。すなわち、実施例1〜9において、成形体隔壁との気孔率差が0〜+50%の範囲で変化している。一方、比較例7及び比較例8は緻密質のアルミナプレートを使用し、比較例9及び比較例10はエポキシ樹脂を使用したため、気孔率が0%であり、成形体隔壁との気孔率差が−32%となる。
【0065】
(4)閉塞部の形成端面
実施例1〜9、及び、比較例3〜9は、ハニカム成形体の上端面及び下端面(以下、「両端面」と称す。)にそれぞれ閉塞部を設けたものであり、比較例2及び比較例10は上端面に限定して閉塞部を設けたものである。
【0066】
(5)閉塞領域の基準位置
実施例1、比較例2、比較例7、比較例9及び比較例10は両端面または上端面の全面にわたって閉塞部を設け、全面被覆を行ったものである。一方、実施例2〜9、比較例3及び比較例8は両端面の端面中心点(図2及び図3等参照)を基準位置とし、当該基準位置から同心円状の範囲を閉塞領域Rとして円形状の閉塞部で被覆したものである。
【0067】
ここで、閉塞領域Rのサイズ(端面中心点からの距離(=半径))を変化させることにより、面積比率を変化させている。なお、実施例1等の全面被覆を行ったものは、端面中心点が当然被覆されたものである。これに対し、比較例4〜6は、外周面の辺縁を基準とし、当該外周面からドーナツ状の閉塞部で被覆したものである(図7参照)。ここで、面積比率(%)は、“面積比率(%)=閉塞部(閉塞領域)の面積/cm÷端面の全面積/cm×100”で表される。
【0068】
ハニカム成形体の主成分及び成形体隔壁の気孔率、閉塞部の気孔率等の各条件、及び面積比率等の閉塞部の各形成条件をまとめたものを下記表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
上記表1の通り形成された実施例1〜9、及び、比較例1〜10のハニカム成形体を焼成炉に投入し、焼成を行った(焼成工程)。ここで、各実施例及び比較例の焼成条件は、同一とし、焼成温度=1450℃で同一の焼成時間をかけてシャトルキルンによる焼成を行った。なお、焼成工程等は周知のものであるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
(6)焼成結果の評価(焼成キレの評価)
得られたハニカム焼成体を目視により確認し、ハニカム焼成体に隔壁の変形や焼成キレ等の不具合の発生がないものをA評価、次工程の閉塞部除去工程で除去可能な程度の僅かな焼成キレ等があるものをB評価、除去不可の大きな焼成キレ等があるものをC評価とした。その結果を上記表1に示す。
【0072】
(7)評価結果のまとめ
これによると、閉塞部を上端面のみに設けた比較例2がC評価であったのに対し、その他の条件を同一にし閉塞部を両端面に設けた実施例1がA評価を示した。すなわち、隔壁の変形や焼成キレ等の不具合に対し、ハニカム成形体の両端面に閉塞部を設けることが有効であることが確認された。
【0073】
また、実施例2〜5と比較例3との対比から、両端面に閉塞部を設けた場合であても、少なくとも面積比率が36%以上である必要があることが確認された。成形体内部に流入する気体の流入量を制限し、急激な温度上昇を抑制するためには、ある程度の範囲を被覆する必要がある。
【0074】
更に、比較例5,6との対比から面積比率が36%以上であっても閉塞領域の基準位置を外周面に設定したものは焼成キレ等の抑制効果がほとんどないことが確認された。上記と同様に成形体内部、特に端面中心点を含んだ領域を閉塞する必要があるためである。また、面積比率は36%以上であればよく、実施例1に示すように、全面被覆(面積比率=100%)の場合であっても焼成キレ等の発生を抑制する効果が示された。
【0075】
加えて、比較例7及び比較例8、並びに、比較例9及び比較例10に示されるように、閉塞部は多孔質性であり、かつ、セラミックス材料で構成される必要があることが示された。比較例7及び比較例8の場合、アルミナプレートでは成形体内部を十分に閉塞することができず、コージェライトの閉塞部よりも気体が成形体内部に流入しやすく、成形体内部の急激な温度上昇を抑えることができなかったものと推定される。一方、比較例9及び比較例10の場合、ハニカム成形体との熱挙動が大きく異なるために焼成キレ等が発生したものと推定される。また、ハニカム成形体の成形体隔壁の気孔率と成形体隔壁との気孔率差が大きくなる程、良好な結果を示すことが確認された。すなわち、実施例7〜9の結果から、気孔率差が0%や5%の場合は、実用上の問題はないものの若干の焼成キレ等が発生するのに対し、気孔率差が10%以上(更に好ましくは50%以上)であれば焼成キレがほとんど発生しないことが示された。
【0076】
以上説明した通り、本発明の製造方法は、ハニカム成形体の上端面(一方の成形体端面)及び下端面(他方の成形体端面)に多孔質性の閉塞部をそれぞれ形成し、当該閉塞部による端面中心点を基準とした面積比率が36%以上であれば、良好な焼成を行うことができる。
【0077】
これにより、焼成工程における不良の発生を抑えることができる。なお、実施例において示さなかったものの、複数の目封止部を設けた目封止ハニカム成形体を用いた場合でも同様の効果を奏するものと期待される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、焼成工程において、焼成キレ等の不具合の発生を抑え、安定したハニカム構造体を製造するために特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1a,1b,1c:ハニカム成形体、2a,2b,2c:閉塞部、3:ハニカム焼成体、4a:一方の成形体端面、4b:他方の成形体端面、5:セル、5a:セル開口部、5b:未形成セル、6:成形体隔壁、7a:一方の焼成体端面、7b:他方の焼成体端面、8:マスク、8a:マスク開口部、9:閉塞部材、10:ハニカム構造体、11a:一方の構造体端面、11b:他方の構造体端面、12:目封止部、13,13a:目封止ハニカム成形体、14:外周面、100:製造方法(ハニカム構造体の製造方法)、H:研削厚さ、H1:目封止部深さ、H2:閉塞部深さ、R:閉塞領域、S1:成形工程、S2:閉塞部形成工程、S3:焼成工程、S4:閉塞部除去工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7