特許第6891043号(P6891043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891043
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20210607BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   H01F37/00 F
   H01F37/00 M
   H01F27/28 128
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-102563(P2017-102563)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-198268(P2018-198268A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健一
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−031453(JP,Y1)
【文献】 特開2010−073930(JP,A)
【文献】 特開2002−313637(JP,A)
【文献】 実開昭58−153428(JP,U)
【文献】 実開昭52−120313(JP,U)
【文献】 実開昭55−173120(JP,U)
【文献】 特開平04−137516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/28−27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、
アルミニウムで形成され、前記鉄心に巻き付けられる巻線と、
前記巻線の端部が接続される巻線接続部が一端に設けられ、かつ銅製のリード線が接続される棒状を成すリード線接続部が他端に設けられた黄銅製の接続端子と、
重なり合う前記リード線接続部と前記リード線の周囲を覆った状態でかしめられ、かつ半田が隙間に充填される筒状を成すスリーブと、
を備えるリアクトル。
【請求項2】
前記巻線の一方の端部と他方の端部に前記接続端子がそれぞれ取り付けられ、これらの接続端子が、前記鉄心に接合された台座から離れる方向に延びるとともに互いに並設され、
一方の前記接続端子の前記リード線接続部が、他方の前記接続端子の前記リード線接続部よりも前記台座から離れた位置に設けられ、
前記一方のリード線接続部と前記他方のリード線接続部とが、前記並設の方向に沿って同一方向に突出される請求項1に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アルミニウムの巻線を用いたリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リアクトルの巻線として、銅線に較べて安価に構成できるアルミニウム線が用いられている。このようなリアクトルでは、アルミニウム線の端部を、例えば黄銅製の電気端子の一端の圧着部に固定している。この電気端子の他端にコネクタ付きの銅製リード線が溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−74156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルの電気端子にコネクタが設けられることで、電源などから延びるリード線に設けられるコネクタとの接続作業が容易になる。しかしながら、コネクタ同士の接続部分には、流せる電流値に限度がある。例えば、一般的な平形接続端子では、流せる電流の最大値が約25Aとなっている。さらに、大電流を流す場合は、太いリード線を用いなければならず、電気端子とリード線との接続部分の強度を向上させる必要がある。
【0005】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、リード線との接続部分に、大電流を流すことができ、かつ接続強度を向上させることができるリアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るリアクトルは、鉄心と、アルミニウムで形成され、前記鉄心に巻き付けられる巻線と、前記巻線の端部が接続される巻線接続部が一端に設けられ、かつ銅製のリード線が接続される棒状を成すリード線接続部が他端に設けられた黄銅製の接続端子と、重なり合う前記リード線接続部と前記リード線の周囲を覆った状態でかしめられ、かつ半田が隙間に充填される筒状を成すスリーブと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のリアクトルを示す正面図。
図2】第1実施形態のリアクトルを示す側面図。
図3】第1実施形態の接続端子を示す正面図、側面図、断面図。
図4】第1実施形態の接続端子にリード線を接続する状態を示す正面図。
図5】第2実施形態のリアクトルを示す正面図。
図6】第2実施形態のリアクトルを示す側面図。
図7】第2実施形態の接続端子にリード線を接続する状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態のリアクトルについて図1から図4を用いて説明する。以下、図2の紙面左側をリアクトルの正面側(前方側)として説明する。
【0009】
図1の符号1は、リアクトルである。このリアクトル1は、その巻線に流れる電流によって生じる磁場にエネルギーを蓄えることができる受動素子である。このリアクトル1は、空気調和機の室外機の電源側、所謂整流器における電流の入口側に設けられ、力率を向上させている。
【0010】
図1および図2に示すように、リアクトル1は、台座2を備える。この台座2は、四角形状を成す板材である。この台座2が、室外機の筐体3の内部の所定部位にネジを用いて強固に取り付けられる。
【0011】
また、台座2の上面には、鉄心4が溶接される。この鉄心4は、E字形状を成す第1コア5とI字形状を成す第2コア6とが、互いに溶接されることで形成される。鉄心4の中央部空間、すなわち第1コア5のE字状の中央の突出部7の周囲に巻線8が巻回され、巻回コイル9が形成される。
【0012】
この巻線8は、アルミニウム材で形成される。また、巻線8は、その表面にエナメル被膜が焼き付けられて、絶縁されている。なお、巻線8の端部は、電気的に導通可能なようにエナメル被膜が除去されている。巻線8の両端部は、巻回コイル9から正面側に導出されている。
【0013】
巻線8の端部には、それぞれに接続端子10が接続される。図2に示すように、これらの接続端子10は、上下方向に延びる長板状を成す板部11を備える。また、板部11の下部が側面視でJ字形状に屈曲されている。なお、J字の短部先端(図2中左側先端)となる、この屈曲された部分の正面側、つまり、接続端子10の一端である基端側の立ち上がり部分に巻線8の端部が接続される。各接続端子10は、1枚の薄板の黄銅材を打ち抜き、折曲することで形成される。
【0014】
また、接続端子10の一部は、短絡または外部との接触を防止するために絶縁紙12で覆われている。さらに、絶縁紙12は、硬度の高い樹脂製の絶縁材料を用いて薄いフィルム状に形成されており、絶縁紙12の巻回コイル9側の面が巻回コイル9に接着されている。この絶縁紙12を介して、接続端子10が巻回コイル9に固定される。なお、接続端子10が配置された部分は、絶縁紙12と同等の素材からなる絶縁カバー13で覆われる。絶縁カバー13は、絶縁機能を有する粘着テープなどでリアクトル1に固定される。
【0015】
第1実施形態の2つの接続端子10は、同一構成である。これらの接続端子10は、左右横方向に並設される。なお、接続端子10の板部11の基端側であって、巻線8の端部が接続される部分を巻線接続部14と称する。また、接続端子10の巻回コイル9側となる板部11の他端の上端側(先端側)には、電源などから延びるリード線15(図4参照)が接続されるリード線接続部16が設けられる。
【0016】
図3(A)は、接続端子10の正面図である。図3(B)は、接続端子10の側面図である。図3(C)は、図3(A)における接続端子10のC−C断面図である。以下、図3(B)の紙面左側を接続端子10の正面側(前方側)とし、図3(C)の紙面下側を接続端子10の正面側(前方側)として説明する。
【0017】
図3(A)および図3(B)に示すように、接続端子10の巻線接続部14には、巻線8の端部を保持する4つの保持片17が設けられる。なお、接続端子10において、保持片17の部分は、断面視でC字形状を成す(図3(C)参照)。
【0018】
巻線接続部14は、保持片17が巻線8の端部を保持した状態で、前後方向から所定の工具により挟持され、かしめられる。つまり、巻線8の端部と巻線接続部14が圧着される。また、巻線8の端部と保持片17との隙間には、半田18が流し込まれる。つまり、巻線8の端部と保持片17との隙間に半田18が充填される。なお、巻線接続部14には、上下方向に並んだ3つの穴部19が形成されている。これらの穴部19にも、半田18が入り込む。
【0019】
巻線8の端部と巻線接続部14とを、かしめるとともに両部材の隙間に半田18が流し込まれることで、接続強度を向上させることができる。また、巻線8の材質が、柔らかいアルミニウムであっても強固に接続することができ、その信頼性を確保することができる。また、巻線8の端部と保持片17との隙間に半田18が介在することで、異種金属同士の接触で生じる電蝕を生じ難くすることができる。
【0020】
図4(A)は、接続端子10の他端、すなわち、巻線接続部14と反対側の端部にリード線15を接続する前の状態を示す。図4(B)は、接続端子10にリード線15を接続した後の状態を示す。図4(A)に示すように、接続端子10の他端には、リード線接続部16が、板部11の上端側(先端側)から上方向に突出される。このリード線接続部16は、接続端子10の板部11と一体で形成されており、断面視が四角形の棒状を成す。なお、このリード線接続部16の形状は、断面視で円形を成していても良い。
【0021】
リード線15は、一般的な銅の線材が塩化ビニル樹脂で被覆されたものである。ただし、大電流を流すため、太くなっている。リード線15とリード線接続部16とを接続するために、筒状を成すスリーブ20が設けられる。このスリーブ20は、黄銅で形成された円筒形状を成す端子である。
【0022】
スリーブ20は、リード線接続部16に取り付けられる。その後に、リード線15がスリーブ20に挿入される。すると、リード線接続部16とリード線15が平行に配置され、その周囲をスリーブ20が覆った状態となる。つまり、リード線接続部16とリード線15が重なり合う。この状態で、スリーブ20は、前後方向または左右方向から所定の工具により挟持され、かしめられる。つまり、リード線接続部16とリード線15が圧着される。その後、スリーブ20の内部に半田21が流し込まれる(図4(B)参照)。つまり、スリーブ20の内部に半田21が充填される。
【0023】
リード線15とリード線接続部16とを、スリーブ20で覆った状態でかしめるとともに半田21がスリーブ20の内部に流し込まれることで、接続強度を向上させることができ、接続部分の電気抵抗を小さくして、電気を円滑に流すことができるようになる。また、スリーブ20の内部の隙間に半田21が流し込まれることで、異種金属同士の接触で生じる電蝕を生じ難くすることができる。なお、半田18,21には、銅を含まないものを使用することが好ましい。
【0024】
黄銅製の接続端子10を用いることで、アルミニウム製の巻線8と銅製のリード線15との接触を排除することができ、アルミニウムと銅との直接接触によって生じる電蝕を防ぐことができる。
【0025】
また、リード線15とリード線接続部16とがスリーブ20内でかしめられて直接的に強固に接触されることで、リード線との接続部分に、リード線15の許容電流に合わせた大きな電流を流すことができるようになる。この結果、アルミニウムの巻線8を用いたリアクトル1であっても、約25A以上の電流を流すことができるようになる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のリアクトル1Aについて図5から図7を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
図5および図6に示すように、第2実施形態では、2つの接続端子10A,10Bのうち、一方の接続端子10A(図5中左側)の板部11Aの上下寸法が、他方の接続端子10B(図5中右側)の板部11Bの上下寸法よりも長くなっている。つまり、一方の接続端子10Aの板部11Aの先端が、他方の接続端子10Bの板部11Bの先端よりも突出している。なお、各接続端子10A,10Bの他端側の形状は、第1実施形態と同一のため、説明を省略する。
【0028】
それぞれの接続端子10A,10Bの板部11A,11Bの先端側には、リード線接続部16A,16Bが形成される。つまり、一方の接続端子10Aのリード線接続部16Aが、他方の接続端子10Bのリード線接続部16Bよりも台座2から離れた位置に設けられる。
【0029】
第2実施形態の接続端子10A,10Bのリード線接続部16A,16Bは、板部11A,11Bから横方向に突出される。一方のリード線接続部16Aと他方のリード線接続部16Bとが、2つの接続端子10A,10Bの並設の方向、つまり、左右方向(水平方向)に向かって突出される。なお、両方のリード線接続部16A,16Bが同一方向(図5中右方向)に突出される。
【0030】
図7(A)は、接続端子10A,10Bにリード線15を接続する前の状態を示す。図7(B)は、接続端子10A,10Bにリード線15を接続した後の状態を示す。図7(A)に示すように、リード線15とリード線接続部16A,16Bとを接続するときに、筒状を成すスリーブ20が設けられる。
【0031】
スリーブ20がリード線接続部16A,16Bに取り付けられた状態で、リード線15がスリーブ20に挿入される。また、それぞれのリード線接続部16A,16Bとそれぞれのリード線15が平行に配置され、その周囲をスリーブ20が覆った状態となる。つまり、それぞれのリード線接続部16A,16Bとそれぞれのリード線15が重なり合う。この状態で、スリーブ20は、上下方向または前後方向から所定の工具により挟持され、かしめられる。つまり、それぞれのリード線接続部16A,16Bとそれぞれのリード線15が圧着される。また、スリーブ20の内部に半田21が流し込まれる(図7(B)参照)。つまり、スリーブ20の内部に半田21が充填される。
【0032】
第2実施形態では、一方の接続端子10Aのリード線接続部16Aが、他方の接続端子10Bのリード線接続部16Bよりも台座2から離れた位置に設けられることで、一方のリード線接続部16Aに接続されるリード線15と、他方のリード線接続部16Bに接続されるリード線15とが、互いに干渉しないように配置させることができる。このように、2本のリード線15を水平方向に引き出すことができ、配線の引き回しが容易にできるようになる。さらに、空気調和機の室外機などの機器へのリアクトル1Aの組込みにおいて、上部に他の部品や構造物が設けられる場合には、第1実施形態よりもリアクトル1Aの突出寸法を小さくできる利点がある。
【0033】
本実施形態に係るリアクトルを第1実施形態および第2実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。例えば、一方のリード線接続部を上方向に突出させるとともに他方のリード線接続部を横方向に突出させても良い。
【0034】
以上説明した各実施形態によれば、リード線接続部とリード線が平行に配置され、その周囲を覆った状態でかしめられ、かつ半田が流し込まれる筒状を成すスリーブを備えることにより、リード線との接続部分に、大電流を流すことができ、かつ接続強度を向上させることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
1(1A)…リアクトル、2…台座、3…筐体、4…鉄心、5…第1コア、6…第2コア、7…突出部、8…巻線、9…巻回コイル、10(10A,10B)…接続端子、11(11A,11B)…板部、12…絶縁紙、13…カバー、14…巻線接続部、15…リード線、16(16A,16B)…リード線接続部、17…保持片、18…半田、19…穴部、20…スリーブ、21…半田。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7