特許第6891079号(P6891079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6891079-建設機械の油圧駆動システム 図000002
  • 特許6891079-建設機械の油圧駆動システム 図000003
  • 特許6891079-建設機械の油圧駆動システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891079
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】建設機械の油圧駆動システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   F15B11/02 V
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-177344(P2017-177344)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-52703(P2019-52703A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武久
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−08009(JP,A)
【文献】 特開2016−148392(JP,A)
【文献】 特開2008−075365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
F15B 21/14
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーの傾倒角に応じた旋回操作信号を出力する旋回操作装置と、
旋回モータと、
一対の給排ラインにより閉ループを形成するように前記旋回モータと接続された可変容量型の両傾転ポンプと、
前記両傾転ポンプの傾転角を調整するレギュレータと、
前記両傾転ポンプと回転軸同士が連結され、逆止弁が設けられた吸入ラインを通じてタンクから作動油を吸入し、前記旋回モータ以外の油圧アクチュエータへ吐出ラインを通じて作動油を供給するメインポンプと、
圧油を蓄積するアキュムレータと、
前記アキュムレータを前記吐出ラインと連通させる蓄圧位置と、前記アキュムレータを前記吸入ラインにおける前記逆止弁の下流側部分と連通させる放圧位置と、前記アキュムレータを前記吐出ラインおよび前記吸入ラインにおける前記逆止弁の下流側部分から遮断する中立位置との間で切り換えられる切換弁と、
前記レギュレータおよび前記切換弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、旋回減速操作が行われるときに、前記旋回操作装置から出力される旋回操作信号の減少に対応して前記両傾転ポンプの傾転角が減少するように前記レギュレータを制御し、かつ、
旋回減速操作が単独で行われることを含む蓄圧条件を満たすときに前記切換弁を前記蓄圧位置に切り換え、放圧条件を満たすときに前記切換弁を前記放圧位置に切り換え、前記蓄圧条件と前記放圧条件のどちらも満たさないときに前記切換弁を前記中立位置に切り換える、建設機械の油圧駆動システム。
【請求項2】
前記建設機械は、油圧ショベルであり、
前記メインポンプとして、ブームシリンダへ作動油を供給する第1メインポンプと、アームシリンダへ作動油を供給する第2メインポンプを備え、
前記切換弁は、蓄圧ラインにより前記第2メインポンプの吐出ラインと接続されているとともに、放圧ラインにより前記第2メインポンプの吸入ラインと接続されている、請求項1に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項3】
前記蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることと、旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われることである、請求項2に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項4】
前記建設機械は、油圧ショベルであり、
前記メインポンプは、ブームシリンダおよびアームシリンダへ作動油を供給する、請求項1に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項5】
前記蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることと、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われるときであって前記メインポンプの吐出圧が閾値よりも低いことである、請求項4に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項6】
前記放圧条件は、旋回減速操作が行われないときであって前記メインポンプの吐出圧が閾値よりも高いことである、請求項1〜4の何れか一項に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項7】
前記放圧条件は、旋回減速操作が行われないときであって前記メインポンプの吐出圧が前記閾値とは異なる閾値よりも高いことである、請求項5に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【請求項8】
前記メインポンプは、最低吐出流量がゼロよりも大きく設定された可変容量型のポンプであり、
前記吐出ラインから分岐するアンロードラインに設けられたアンロード弁をさらに備え、
前記制御装置は、旋回減速操作が単独で行われるときに前記アンロード弁を全閉にする、請求項1〜7の何れか一項に記載の建設機械の油圧駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルや油圧クレーンのような建設機械では、油圧駆動システムによって各部が駆動される。このような油圧駆動システムとしては、従来、走行回路に油圧式無段変速機(HST)を用いたものがあったが、近年では、旋回回路にHSTを用いたものが提案されている。
【0003】
旋回回路にHSTを用いた油圧駆動システムでは、両傾転ポンプ(オーバーセンターポンプともいう)が一対の給排ラインにより閉ループを形成するように旋回モータと接続される。両傾転ポンプの傾転角は、レギュレータにより調整される。レギュレータが電気信号により作動する場合、レギュレータは、旋回操作装置から出力される旋回操作信号に基づいて制御装置により制御される。
【0004】
さらに、特許文献1には、旋回回路にHSTを用いた油圧駆動システムであって、旋回減速時のエネルギーを回生できるように構成された油圧駆動システムが開示されている。この油圧駆動システムでは、両傾転ポンプが、旋回モータ以外の油圧アクチュエータへ作動油を供給するメインポンプと連結されている。そして、旋回減速操作が行われるときには、旋回操作装置から出力される旋回操作信号の減少に対応して両傾転ポンプの傾転角が減少するようにレギュレータが制御される。これにより、両傾転ポンプがモータとして機能するようになり、旋回モータから排出される作動油からエネルギーが回生され、この回生エネルギーがメインポンプの駆動をアシストする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−80009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された油圧駆動システムでは、旋回減速操作が行われるときに、その他の操作が同時に行われなければ、メインポンプの駆動に必要な動力が小さい故に両傾転ポンプの入口側の圧力が十分高くならず、旋回モータに十分なブレーキ力が発生しない問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、旋回回路にHSTを用いた構成で、旋回操作以外の操作の有無に拘らず十分なブレーキ力を確保することができる建設機械の油圧駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の建設機械の油圧駆動システムは、操作レバーの傾倒角に応じた旋回操作信号を出力する旋回操作装置と、旋回モータと、一対の給排ラインにより閉ループを形成するように前記旋回モータと接続された可変容量型の両傾転ポンプと、前記両傾転ポンプの傾転角を調整するレギュレータと、前記両傾転ポンプと回転軸同士が連結され、逆止弁が設けられた吸入ラインを通じてタンクから作動油を吸入し、前記旋回モータ以外の油圧アクチュエータへ吐出ラインを通じて作動油を供給するメインポンプと、圧油を蓄積するアキュムレータと、前記アキュムレータを前記吐出ラインと連通させる蓄圧位置と、前記アキュムレータを前記吸入ラインにおける前記逆止弁の下流側部分と連通させる放圧位置と、前記アキュムレータを前記吐出ラインおよび前記吸入ラインにおける前記逆止弁の下流側部分から遮断する中立位置との間で切り換えられる切換弁と、前記レギュレータおよび前記切換弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、旋回減速操作が行われるときに、前記旋回操作装置から出力される旋回操作信号の減少に対応して前記両傾転ポンプの傾転角が減少するように前記レギュレータを制御し、かつ、旋回減速操作が単独で行われることを含む蓄圧条件を満たすときに前記切換弁を前記蓄圧位置に切り換え、放圧条件を満たすときに前記切換弁を前記放圧位置に切り換え、前記蓄圧条件と前記放圧条件のどちらも満たさないときに前記切換弁を前記中立位置に切り換える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、旋回減速操作が行われるときには、旋回操作信号の減少に対応して両傾転ポンプの傾転角が減少するので、両傾転ポンプがモータとして機能するようになる。従って、旋回モータから排出される作動油からエネルギーが回生され、この回生エネルギーがメインポンプの駆動をアシストする。このため、切換弁が中立位置に位置する場合には、旋回減速操作が他の操作と同時に行われると、旋回モータ以外の油圧アクチュエータの作動に回生エネルギーが直接的に利用される。その結果、旋回モータに対して十分なブレーキ力が得られる。
【0010】
一方、蓄圧条件を満たすとき(代表的には、旋回減速操作が単独で行われるとき)には切換弁が蓄圧位置に切り換えられるので、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われなくても、回生エネルギーを圧力としてアキュムレータに蓄積することができる。換言すれば、アキュムレータを蓄圧させることによりメインポンプがある程度大きな動力を必要とする状態となって旋回モータの出口側の圧力を高くできるので、減速するのに必要なブレーキ力を確保できる。従って、旋回操作以外の操作が無くても、十分なブレーキ力が得られる。
【0011】
また、放圧条件を満たすときには、切換弁が放圧位置に切り換えられるので、アキュムレータからメインポンプの吸入側へ高い圧力の作動油が供給される。従って、蓄積した回生エネルギーを利用して、メインポンプが行うべき動力、延いては仕事量を減少させることができる。このように、本発明では、回生エネルギーを有効に活用することができる。
【0012】
前記建設機械は、油圧ショベルであり、上記の油圧駆動システムは、前記メインポンプとして、ブームシリンダへ作動油を供給する第1メインポンプと、アームシリンダへ作動油を供給する第2メインポンプを備え、前記切換弁は、蓄圧ラインにより前記第2メインポンプの吐出ラインと接続されているとともに、放圧ラインにより前記第2メインポンプの吸入ラインと接続されていてもよい。この構成によれば、圧油を供給するメインポンプを2つ備える(中型または大型の油圧ショベルに適した)油圧回路を構築することができる。
【0013】
前記蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることと、旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われることであってもよい。この構成によれば、旋回減速操作が単独で行われるときだけでなく、旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われるときにも、回生エネルギーをアキュムレータに蓄積しつつ十分なブレーキ力を確保することができる。
【0014】
前記建設機械は、油圧ショベルであり、前記メインポンプは、ブームシリンダおよびアームシリンダへ作動油を供給してもよい。この構成によれば、圧油を供給するメインポンプを1つだけ備える(小型の油圧ショベルに適した)部品点数の少ない油圧回路を構築することができる。
【0015】
前記蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることと、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われるときであって前記メインポンプの吐出圧が閾値よりも低いことであってもよい。この構成によれば、旋回減速操作が単独で行われるときだけでなく、旋回減速操作が特殊な操作と同時に行われるときにも、回生エネルギーをアキュムレータに蓄積しつつ十分なブレーキ力を確保することができる。
【0016】
前記放圧条件は、旋回減速操作が行われないときであって前記メインポンプの吐出圧が閾値(前記蓄圧条件の閾値とは異なる閾値)よりも高いことであってもよい。この構成によれば、アキュムレータに蓄積した回生エネルギーを、メインポンプから作動油が供給される油圧アクチュエータの負荷が比較的に大きなときに利用することができる。
【0017】
前記メインポンプは、最低吐出流量がゼロよりも大きく設定された可変容量型のポンプであり、上記の油圧駆動システムは、前記吐出ラインから分岐するアンロードラインに設けられたアンロード弁をさらに備え、前記制御装置は、旋回減速操作が単独で行われるときに前記アンロード弁を全閉にしてもよい。この構成によれば、旋回減速操作が単独で行われるときには、アンロードラインを通じたブリードオフを中断して回生エネルギーを蓄積することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、旋回回路にHSTを用いた構成で、旋回操作以外の操作の有無に拘らず十分なブレーキ力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械の油圧駆動システムの概略構成図である。
図2】建設機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る建設機械の油圧駆動システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る建設機械の油圧駆動システム1Aを示し、図2に、その油圧駆動システム1Aが搭載された建設機械10を示す。図2に示す建設機械10は油圧ショベルであるが、本発明は、油圧クレーンなどの他の建設機械にも適用可能である。
【0021】
図2に示す建設機械10は自走式であり、走行体11と、走行体11に旋回可能に支持された旋回体12を含む。旋回体12には、運転席を含むキャビンが設けられているとともに、ブームが連結されている。ブームの先端にはアームが連結され、アームの先端にはバケットが連結されている。ただし、建設機械10は自走式でなくてもよい。
【0022】
本実施形態では、圧油を供給するメインポンプを2つ備える油圧回路であって、中型または大型の油圧ショベルに適した油圧回路が構築されている。具体的に、油圧駆動システム1Aは、油圧アクチュエータとして、図2に示すブームシリンダ13、アームシリンダ14およびバケットシリンダ15を含むとともに、図1に示す旋回モータ16ならびに図略の左走行モータおよび右走行モータを含む。また、油圧駆動システム1Aは、旋回モータ16専用の両傾転ポンプ51と、旋回モータ16以外の油圧アクチュエータへ作動油を供給する第1メインポンプ21および第2メインポンプ31を含む。なお、図1では、図面の簡略化のために、旋回モータ16、ブームシリンダ13およびアームシリンダ14以外の油圧アクチュエータを省略している。
【0023】
両傾転ポンプ51、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の回転軸同士は、互いに連結されている。また、両傾転ポンプ51、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の回転軸は、エンジン17の出力軸と連結されている。すなわち、両傾転ポンプ51、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31は、同一のエンジン17により駆動される。
【0024】
第1メインポンプ21および第2メインポンプ31のそれぞれは、傾転角が変更可能な可変容量型のポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)である。第1メインポンプ21の傾転角はレギュレータ22により調整され、第2メインポンプ31の傾転角はレギュレータ32により調整される。ただし、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の最低吐出流量は、ゼロよりも大きく設定されている。
【0025】
レギュレータ22,32のそれぞれは、例えば、電気信号により作動する。例えば、レギュレータ(22または32)は、メインポンプ(21または31)が斜板ポンプである場合、メインポンプの斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、メインポンプの斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0026】
本実施形態では、第1メインポンプ21がブームシリンダ13および図略の左走行モータへ作動油を供給し、第2メインポンプ31がアームシリンダ14および図略の右走行モータへ作動油を供給する。ただし、ブームシリンダ13へは、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の双方から作動油が供給されてもよい。この場合、ブーム下げ時には、第1メインポンプ21のみからブームシリンダ13へ作動油が供給されることが望ましい。同様に、アームシリンダ14へは、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の双方から作動油が供給されてもよい。バケットシリンダ15(図2参照)へは、第1メインポンプ21および第2メインポンプ31のどちらから作動油が供給されてもよい。
【0027】
第1メインポンプ21は、吸入ライン23によりタンクと接続されているとともに、吐出ライン24によりブーム制御弁41および図略の左走行制御弁と接続されている。ブーム制御弁41は、一対の給排ライン42によりブームシリンダ13と接続されている。つまり、第1メインポンプ21は、吸入ライン23を通じてタンクから作動油を吸入し、吐出ライン24、ブーム制御弁41および一方の給排ライン42を通じてブームシリンダ13へ作動油を供給する。
【0028】
第1メインポンプ21の吐出圧は、図略のリリーフ弁によってリリーフ圧以下に保たれる。また、吐出ライン24からはアンロードライン25が分岐しており、このアンロードライン25にアンロード弁26が設けられている。
【0029】
第2メインポンプ31は、吸入ライン33によりタンクと接続されているとともに、吐出ライン34によりアーム制御弁43および図略の右走行制御弁と接続されている。アーム制御弁43は、一対の給排ライン44によりアームシリンダ14と接続されている。つまり、第2メインポンプ31は、吸入ライン33を通じてタンクから作動油を吸入し、吐出ライン34、アーム制御弁43および一方の給排ライン44を通じてアームシリンダ14へ作動油を供給する。
【0030】
第2メインポンプ31の吐出圧は、図略のリリーフ弁によってリリーフ圧以下に保たれる。また、吐出ライン34からはアンロードライン35が分岐しており、このアンロードライン35にアンロード弁36が設けられている。
【0031】
ブーム制御弁41は、ブーム操作装置71が操作されることによって、中立位置からブーム上げ作動位置またはブーム下げ作動位置に切り換えられる。本実施形態では、ブーム制御弁41が油圧パイロット式であり、一対のパイロットポートを有する。ただし、ブーム制御弁41は、電磁パイロット式であってもよい。
【0032】
ブーム操作装置71は、操作レバーを含み、操作レバーの傾倒角に応じたブーム操作信号を出力する。つまり、ブーム操作装置71から出力されるブーム操作信号は、操作レバーの傾倒角(操作量)が大きくなるほど大きくなる。
【0033】
本実施形態では、ブーム操作装置71がブーム操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックである。ブーム操作装置71から出力されるブーム操作信号は、制御装置8に入力される。例えば、制御装置8は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0034】
制御装置8は、ブーム制御弁41がブーム操作信号に応じた開口面積となるように、図略の一対の電磁比例弁を介してブーム制御弁41を制御する。ただし、ブーム操作装置71は、ブーム操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁であってもよい。この場合、ブーム制御弁41のパイロットポートがパイロットラインによりパイロット操作弁であるブーム操作装置71と接続される。また、ブーム操作装置71がパイロット操作弁である場合、ブーム操作装置71から出力されるパイロット圧が圧力センサにより検出されて制御装置8へ入力される。
【0035】
制御装置8は、上述したレギュレータ22およびアンロード弁26も制御する。ただし、図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。通常、制御装置8は、ブーム操作信号が大きくなるにつれて、第1メインポンプ21の吐出流量が大きくなるとともにアンロード弁26の開口面積が小さくなるように、レギュレータ22およびアンロード弁26を制御する。
【0036】
アーム制御弁43は、アーム操作装置72が操作されることによって、中立位置からアーム引き作動位置またはアーム押し作動位置に切り換えられる。本実施形態では、アーム制御弁43が油圧パイロット式であり、一対のパイロットポートを有する。ただし、アーム制御弁43は、電磁パイロット式であってもよい。
【0037】
アーム操作装置72は、操作レバーを含み、操作レバーの傾倒角に応じたアーム操作信号を出力する。つまり、アーム操作装置72から出力されるアーム操作信号は、操作レバーの傾倒角(操作量)が大きくなるほど大きくなる。
【0038】
本実施形態では、アーム操作装置72がアーム操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックである。アーム操作装置72から出力されるアーム操作信号は、制御装置8に入力される。
【0039】
制御装置8は、アーム制御弁43がアーム操作信号に応じた開口面積となるように、図略の一対の電磁比例弁を介してアーム制御弁43を制御する。ただし、アーム操作装置72は、アーム操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁であってもよい。この場合、アーム制御弁43のパイロットポートがパイロットラインによりパイロット操作弁であるアーム操作装置72と接続される。また、アーム操作装置72がパイロット操作弁である場合、アーム操作装置72から出力されるパイロット圧が圧力センサにより検出されて制御装置8へ入力される。
【0040】
制御装置8は、上述したレギュレータ32およびアンロード弁36も制御する。通常、制御装置8は、アーム操作信号が大きくなるにつれて、第2メインポンプ31の吐出流量が大きくなるとともにアンロード弁36の開口面積が小さくなるように、レギュレータ32およびアンロード弁36を制御する。
【0041】
上述した両傾転ポンプ51は、傾転角が軸方向に対して両方向に変更可能な可変容量型のポンプである。両傾転ポンプ51の傾転角は、レギュレータ52により調整される。本実施形態では、両傾転ポンプ51が、斜板がセンターから両側に傾倒可能な斜板ポンプである。すなわち、センターに対する斜板の角度が傾転角である。ただし、両傾転ポンプ51は、斜軸がセンターから両側に傾倒可能な斜軸ポンプであってもよい。
【0042】
両傾転ポンプ51は、一対の給排ライン53,54により、閉ループを形成するように旋回モータ16と接続されている。一対の給排ライン53,54同士は、橋架路55によって接続されている。橋架路55には、互いに逆向きに一対のリリーフ弁56が設けられている。橋架路55におけるリリーフ弁56の間の部分は、逃しライン62によって、リリーフ弁63と接続されている。
【0043】
リリーフ弁63の設定圧は、橋架路55に設けられたリリーフ弁56の設定圧よりも十分に小さく設定されている。リリーフ弁63からは、タンクライン64がタンクまで延びている。本実施形態では、タンクライン64が両傾転ポンプ51のドレンラインも兼ねている。
【0044】
給排ライン53,54のそれぞれは、バイパスライン57によって逃しライン62と接続されている。ただし、各リリーフ弁56をバイパスするように一対のバイパスライン57が橋架路55に設けられてもよい。各バイパスライン57には、逆止弁58が設けられている。
【0045】
さらに、逃しライン62は、補給ライン61によりチャージポンプ60と接続されている。チャージポンプ60は、逆止弁58を介して給排ライン53,54に作動油を補給するためのものである。チャージポンプ60は、両傾転ポンプ51と連結されており、エンジン17により駆動される。ただし、チャージポンプ60は、直接的にエンジン17に連結されてもよい。
【0046】
レギュレータ52は、電気信号により作動する。例えば、レギュレータ52は、両傾転ポンプ51の斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、両傾転ポンプ51の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。制御装置8には、旋回操作装置73から出力される旋回操作信号が入力され、制御装置8は、この旋回操作信号に基づいてレギュレータ52を制御する。
【0047】
旋回操作装置73は、操作レバーを含み、操作レバーの傾倒角に応じた旋回操作信号(右旋回操作信号または左旋回操作信号)を出力する。つまり、旋回操作装置73から出力される旋回操作信号は、操作レバーの傾倒角(操作量)が大きくなるほど大きくなる。
【0048】
そして、制御装置8は、旋回操作信号が大きくなるにつれて、旋回操作信号の種類(右旋回か左旋回か)に応じた方向における両傾転ポンプ51の吐出流量が大きくなるように、レギュレータ52を制御する。
【0049】
さらに、制御装置8は、旋回減速操作が行われるとき(旋回操作信号が減少するとき)に、旋回操作装置73から出力される旋回操作信号の減少に対応して両傾転ポンプ51の傾転角が減少するようにレギュレータ52を制御する。これにより、両傾転ポンプ51がモータとして機能するようになる(余剰の作動油はリリーフ弁56を通じて排出)。従って、旋回モータ16から排出される作動油からエネルギーが回生され、この回生エネルギーが第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の駆動をアシストする。
【0050】
さらに、本実施形態では、第2メインポンプ31を利用して回生エネルギーを蓄積するための構成が採用されている。
【0051】
具体的には、第2メインポンプ31の吸入ライン33に逆止弁37が設けられている。吸入ライン33における逆止弁37の下流側部分は、放圧ライン92により切換弁93と接続されている。また、切換弁93は、蓄圧ライン91により吐出ライン34と接続されているとともに、中継ライン94によりアキュムレータ95と接続されている。アキュムレータ95は、圧油を蓄積する。
【0052】
切換弁93は、中立位置と蓄圧位置(図1の上側位置)と放圧位置(図1の下側位置)との間で切り換えられる。中立位置では、切換弁93は、蓄圧ライン91、放圧ライン92および中継ライン94をブロックし、アキュムレータ95を吐出ライン34および吸入ライン33における逆止弁37の下流側部分から遮断する。蓄圧位置では、切換弁93は、蓄圧ライン91を中継ライン94とつなぎ、アキュムレータ95を吐出ライン34と連通させる。放圧位置では、切換弁93は、中継ライン94を放圧ライン92とつなぎ、アキュムレータ95を吸入ライン33における逆止弁37の下流側部分と連通させる。
【0053】
切換弁93は、制御装置8により制御される。制御装置8は、蓄圧条件および放圧条件を満たすか否かを判定し、蓄圧条件を満たすときに切換弁93を蓄圧位置に切り換え、放圧条件を満たすときに切換弁93を放圧位置に切り換え、蓄圧条件と放圧条件のどちらも満たさないときに切換弁93を中立位置に切り換える。
【0054】
本実施形態では、蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることと、旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われることである。なお、制御装置8へは、図略のバケット操作装置、左走行操作装置および右走行操作装置から出力される操作信号も入力されるため、制御装置8は、当該制御装置8に入力される全ての操作信号から、蓄圧条件を満たすか否かを判定することができる。また、蓄圧条件を満たすときは、制御装置8は、アンロード弁36を全閉にする。あるいは、蓄圧条件は、旋回減速操作が行われるときであって第2メインポンプ31の吐出圧が閾値γよりも低いことでであってもよい。このようにすれば、旋回操作装置73以外の操作装置の状態を制御装置8に入力する必要がない。
【0055】
また、制御装置8は、吐出ライン34に設けられた圧力センサ81と電気的に接続されている。圧力センサ81は、第2メインポンプ31の吐出圧を検出する。放圧条件は、旋回減速操作が行われないときであって圧力センサ81で検出される第2メインポンプ31の吐出圧が閾値α(上述した閾値γと異なる閾値)よりも高いことである。ただし、放圧条件は、これに限られるものではなく、特定の操作が行われることとしてもよい。放圧条件を満たすとき、制御装置8は、レギュレータ32を、通常と同様に制御する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の油圧駆動システム1Aでは、旋回減速操作が行われるときには、旋回モータ16から排出される作動油からエネルギーが回生され、この回生エネルギーが第1メインポンプ21および第2メインポンプ31の駆動をアシストする。そして、旋回減速操作がブーム上げ操作、アーム操作、バケット操作または走行操作と同時に行われる場合には、切換弁93が中立位置に位置する。従って、回生エネルギーが、旋回モータ16以外の油圧アクチュエータの作動に直接的に利用される。その結果、旋回モータ16に対して十分なブレーキ力が得られる。
【0057】
一方、蓄圧条件を満たすとき(旋回減速操作が単独で行われるとき、または旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われるとき)には切換弁93が蓄圧位置に切り換えられるので、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われなくても、回生エネルギーを圧力としてアキュムレータ95に蓄積することができる。換言すれば、アキュムレータ95を蓄圧させることにより第2メインポンプ31がある程度大きな動力を必要とする状態となって旋回モータ16の出口側の圧力を高くできるので、減速するのに必要なブレーキ力を確保できる。従って、旋回操作以外の操作が無くても、十分なブレーキ力が得られる。
【0058】
また、放圧条件を満たすときには、切換弁93が放圧位置に切り換えられるので、アキュムレータ95から第2メインポンプ31の吸入側へ高い圧力の作動油が供給される。従って、蓄積した回生エネルギーを利用して、第2メインポンプ31が行うべき動力、延いては仕事量を減少することができる。このように、本実施形態では、回生エネルギーを有効に活用することができる。
【0059】
なお、蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることだけであってもよい。ただし、この場合は、旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われたときにはブレーキ力が不足する。従って、蓄圧条件が本実施形態のように設定されていれば、旋回減速操作が単独で行われるときだけでなく、旋回減速操作がブーム下げ操作と同時に行われるときにも、回生エネルギーをアキュムレータ95に蓄積しつつ十分なブレーキ力を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、放圧条件が旋回減速操作が行われないときであって第2メインポンプ31の吐出圧が閾値αよりも高いことであるので、アキュムレータ95に蓄積した回生エネルギーを、第2メインポンプ31から作動油が供給される油圧アクチュエータの負荷が比較的に大きなときに利用することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、蓄圧条件を満たすときはアンロード弁36が全閉にされるので、蓄圧条件を満たすときには、アンロードライン35を通じたブリードオフを中断して回生エネルギーを蓄積することができる。
【0062】
(第2実施形態)
図3に、本発明の第2実施形態に係る建設機械の油圧駆動システム1Bを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0063】
本実施形態では、圧油を供給するメインポンプを1つだけ備える部品点数の少ない油圧回路であって、小型の油圧ショベルに適した油圧回路が構築されている。具体的に、油圧駆動システム1Bでは、1つのメインポンプ31から旋回モータ16以外の全ての油圧アクチュエータへ作動油が供給される。また、本実施形態では、蓄圧位置での切換弁93の開度が任意に調整可能である。
【0064】
さらに、本実施形態では、蓄圧条件が、旋回減速操作が単独で行われることと、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われるときであってメインポンプ31の吐出圧が閾値βよりも低いことである。蓄圧条件に関する閾値βは、放圧条件に関する閾値αよりも大きいか閾値αと同じである。つまり、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われるときであっても、メインポンプ31の吐出圧が閾値βよりも高い場合は、切換弁93は中立位置に位置する。
【0065】
制御装置8は、第1実施形態と同様に、蓄圧条件を満たすときに切換弁93を蓄圧位置に切り換え、放圧条件を満たすときに切換弁93を放圧位置に切り換え、蓄圧条件と放圧条件のどちらも満たさないときに切換弁93を中立位置に切り換える。ただし、蓄圧条件を満たすときの切換弁93およびアンロード弁36の制御が第1実施形態と異なる。
【0066】
旋回減速操作が単独で行われるときは、制御装置8は、アンロード弁36を全閉にするとともに、切換弁93の開口面積を最大とする。
【0067】
一方、同じ蓄圧条件を満たすときであっても、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われるときであってメインポンプ31の吐出圧が閾値βよりも低いときは、制御装置8は、アンロード弁36を、その他の操作の操作信号に応じた開口面積となるように制御する。また、制御装置8は、切換弁93の開口面積を、メインポンプ31の吐出圧とアキュムレータ95の設定圧のどちらが高いかに場合分けして調整する。
【0068】
メインポンプ31の吐出圧がアキュムレータ95の設定圧より高い場合は、制御装置8は、切換弁93の開口面積をそれらの差圧に応じて調整する。逆に、メインポンプ31の吐出圧がアキュムレータ95の設定圧より低い場合は、制御装置8は、切換弁93を全開とする(切換弁93の開口面積を最大とする)と同時に、その他の操作に対応する制御弁の開口面積を小さくする。
【0069】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、旋回減速操作が単独で行われるときには切換弁93が蓄圧位置に切り換えられ、旋回減速操作がその他の操作と同時に行われるときには切換弁93が中立位置または蓄圧位置に切り換えられるので、旋回操作以外の操作の有無に拘らず十分なブレーキ力を確保することができる。また、アキュムレータ95に蓄積された回生エネルギーはメインポンプ31から作動油が供給される油圧アクチュエータの負荷が比較的に大きなときに利用される。従って、回生エネルギーを有効に活用することができる。
【0070】
なお、蓄圧条件は、旋回減速操作が単独で行われることだけであってもよい。ただし、蓄圧条件が本実施形態のように設定されていれば、旋回減速操作が単独で行われるときだけでなく、旋回減速操作が特殊な操作(例えば、ブーム下げ操作)と同時に行われるときにも、回生エネルギーをアキュムレータ95に蓄積しつつ十分なブレーキ力を確保することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、アンロード弁36と切換弁93とを組み合わせて単一のバルブとすることも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1A,1B 油圧駆動システム
10 建設機械
13 ブームシリンダ
14 アームシリンダ
16 旋回モータ
21 第1メインポンプ
31 第2メインポンプ
23,33 吸入ライン
24,34 吐出ライン
25,35 アンロードライン
26,36 アンロード弁
37 逆止弁
51 両傾転ポンプ
52 レギュレータ
53,54 給排ライン
73 旋回操作装置
8 制御装置
91 蓄圧ライン
92 放圧ライン
93 切換弁
95 アキュムレータ
図1
図2
図3