(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業機を備える作業車両を遠隔操作するための操作装置の操作の有無に関わらず少なくとも画像の送受信中に、前記作業車両に搭載された撮像装置が撮像した画像であって、前記作業機の少なくとも一部、および一定時間ごとに外観に既知の変化が生じる物体である変化物が写る画像を表示する表示装置。
一定時間ごとに外観に既知の変化が生じる物体である変化物と、前記変化物が写る範囲を撮像する撮像装置とを備える作業車両から、前記撮像装置が撮像した画像を取得するステップと、
取得した前記画像が一定時間ごとに変化しているか否かを判定するステップと
を備える障害判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《システム》
図1は、第1の実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す概略図である。
遠隔操作システム1は、遠隔操作により動作する作業車両100と、遠隔運転室500とを備える。作業車両100は、作業現場(例えば、鉱山、採石場)に設けられる。遠隔運転室500は、作業車両100から離れた地点(例えば、市街、作業現場内)に設けられる。作業車両100と遠隔運転室500とは、インターネットなどのネットワークを介して接続される。
遠隔操作システム1は、遠隔運転室500を用いて作業車両100を操作するためのシステムである。
【0009】
作業車両100は、遠隔運転室500から受信する操作信号に従って動作する。
遠隔運転室500は、オペレータの操作により、作業車両100の操作を受け付け、操作信号を作業車両100に送信する。
【0010】
《作業車両》
図2は、第1の実施形態に係る作業車両の外観図である。
第1の実施形態に係る作業車両100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る作業車両100は、油圧ショベル以外の例えばホイールローダ、ブルドーザ等の作業車両であってもよい。
作業車両100は、油圧により作動する作業機110と、作業機110を支持する旋回体120と、旋回体120を支持する走行体130とを備える。
【0011】
作業機110は、ブーム111と、アーム112と、バケット113を備える。
【0012】
ブーム111の基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム112は、ブーム111とバケット113とを連結する。アーム112の基端部は、ブーム111の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット113は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を搬送するための容器とを備える。バケット113の基端部は、アーム112の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0013】
旋回体120には、運転室121が備えられる。
運転室121の前方には、モードランプ126が設けられる。モードランプ126は、複数のランプ(例えば、LED(Light Emitting Diode)など)を備え、作業車両100の運転状態に応じて複数のランプのうち少なくとも1つが点滅する。各ランプの点滅のパターンはあらかじめ定められている。すなわち、ランプは、一定時間ごとに外観に既知の変化が生じる変化物の一例である。
モードランプ126は、例えば、運転席から外側に向かって左から順に、緑色に発行する第1ランプ、黄色に発行する第2ランプ、赤色に発行する第3ランプを備え、以下のような挙動をしてもよい。作業車両100が有人運転状態である場合に、第1ランプが点滅する。作業車両100が遠隔操作状態である場合に、第2ランプが点滅する。作業車両100がエラー状態である場合に、第3ランプが点滅する。作業車両100が有人運転と遠隔操作との切替中である場合に、すべてのランプが点滅する。作業車両100がメンテナンス中である場合に、第1ランプと第2ランプとが点滅する。モードランプ126は、運転席510の前方のみならず、旋回体120の四隅に取り付けられていてもよい。また各ランプは、縦に並べて配置されてもよい。
これにより、作業車両100の外にいる作業者は、作業車両100の運転モードを認識することができる。作業車両100が駆動している間、操作信号の有無に関わらず、常にモードランプ126の少なくとも1つのランプが点滅する。なお、モードランプ126が備えるランプは、光源の周りを回転する反射鏡によって光源が放つ光を反射させる回転灯であってもよい。
【0014】
図3は、第1の実施形態に係る作業車両の撮像装置が撮像する画像の例である。
運転室121の上部には、撮像装置122が設けられる。撮像装置122は、運転室121内の前方かつ上方に設置される。撮像装置122は、運転室121前面のフロントガラスを通して、運転室121の前方の画像(例えば、動画像)を撮像する。撮像装置122の例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いた撮像装置が挙げられる。撮像装置122は、作業機110、モードランプ126および運転室121の前方の作業対象が写る範囲を撮像する。つまり、撮像装置122が撮像する画像P1には、
図3に示すように、作業機110、モードランプ126および運転室121の前方の作業対象範囲が写る。
【0015】
作業車両100は、制御装置125を備える。
制御装置125は、図示しない画像符号化装置を備え、撮像装置122が撮像した画像を符号化する。制御装置125は、符号化された画像を、遠隔運転室500に送信する。なお、画像符号化装置は、制御装置125と別個に設けられたものであってもよい。
制御装置125は、遠隔運転室500から操作信号を受信する。制御装置125は、受信した操作信号に従って、作業機110、旋回体120、または走行体130を駆動させる。
【0016】
《遠隔運転室》
遠隔運転室500は、運転席510、表示装置520、操作装置530、制御装置540を備える。
表示装置520は、運転席510の前方に配置される。表示装置520は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの眼前に位置する。表示装置520は、
図1に示すように、並べられたディスプレイ521、ディスプレイ522、ディスプレイ523、ディスプレイ524、ディスプレイ525によって構成される。なお、他の実施形態においては、表示装置520を構成するディスプレイの数はこれに限られない。例えば、表示装置520は1つのディスプレイによって構成されてもよい。また、表示装置520は、プロジェクタ等によって曲面や球面に画像を投影するものであってもよい。
【0017】
操作装置530は、運転席510の近傍に配置される。操作装置530は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。操作装置530は、例えば電気式レバーおよび電気式ペダルを備える。
【0018】
図4は、第1の実施形態に係る遠隔運転室の表示装置に表示される画像の例である。
制御装置540は、作業車両100から受信した画像のうち、撮像装置122が撮像した画像P1から、ディスプレイ521に表示させるための画像P11、ディスプレイ522に表示させるための画像P12、ディスプレイ523に表示させるための画像P13、ディスプレイ524に表示させるための画像P14、ディスプレイ525に表示させるための画像P15をそれぞれ切り出す。このとき、制御装置540は、画像P11から画像P15の少なくとも1つにモードランプ126および作業機110の一部が写る部分が残るように切り出しを行う。
図4に示す例では、制御装置540は、画像P11にモードランプ126が写る部分が残るように切り出しを行う。
【0019】
制御装置540は、ディスプレイ521に画像P11を表示させる。制御装置540は、ディスプレイ522に画像P12を表示させる。制御装置540は、ディスプレイ523に画像P13を表示させる。制御装置540は、ディスプレイ524に画像P14を表示させる。制御装置540は、ディスプレイ525に画像P15を表示させる。
【0020】
また、制御装置540は、図示しないバックカメラが撮像した画像や、車体情報(車体の傾斜状況など)を表す画像である画像P2を、画像P11から画像P15のいずれかに重畳して表示装置520の一部に表示させる。このとき、制御装置540は、撮像装置122が撮像した画像のうちモードランプ126が写らない部分に、図示しないバックカメラが撮像した画像や車体情報を表す画像を重畳させる。つまり、表示装置520には、常にモードランプ126の画像が表示される。
図4に示す例では、制御装置540は、画像P2を、画像P15に重畳させてディスプレイ525に表示させる。
【0021】
オペレータは、表示装置520に表示された作業車両100の前景を視認しながら、操作装置530を操作する。制御装置540は、操作装置530の操作を表す操作信号を作業車両100に送信する。
【0022】
《障害判定方法》
図5は、第1の実施形態に係る画像系の障害判定方法を示すフローチャートである。本実施形態において画像系とは、撮像装置122、制御装置125、制御装置540、および表示装置520を含む画像の伝達経路をいう。
上述の構成により、遠隔運転室500の制御装置540は、作業車両100の制御装置125からモードランプ126が写る画像P11からP15を取得し(ステップS1)、画像P11からP15を表示装置520に表示させる。オペレータは、表示装置520に表示された画像のうち、モードランプ126が表示される部分を視認し、表示された画像が一定時間ごとに変化しているか否かを判定する(ステップS2)。表示された画像が一定時間ごとに変化している場合(ステップS2:YES)、オペレータは、画像系の障害が発生していないと判定する(ステップS3)。他方、表示された画像が一定時間ごとに変化していない場合(ステップS2:YES)、オペレータは、画像系の障害が発生していると判定する(ステップS4)。
【0023】
《作用・効果》
上記構成により、表示装置520には、常にモードランプ126の画像が表示される。撮像装置122が撮像した画像は、画像系を経由して、表示装置520に到達する。画像系で障害が発生すると、画像の伝送が停止するため、表示装置520に表示される画像が更新されなくなる可能性がある。例えば、撮像装置122が動画像を撮像する場合、更新がされない間、表示装置520には、同じフレーム画像が表示され続ける。また例えば、撮像装置122が静止画像を連続撮像する場合、更新がされない間、表示装置520には、障害発生前に撮像された同じ静止画像が表示され続ける。
他方、作業機110が停止しているとき、または作業機110の移動量が極めて微小であるときにも、オペレータには表示装置520に表示される画像が止まったように見える。
【0024】
このとき、オペレータは、表示装置520に表示される画像のうち、モードランプ126が表示される部分を視認することで、画像系の障害により画像が停止してみえるのか、作業機110が停止しまたは移動量が微小であるために画像が停止してみえるのかを判断することができる。モードランプ126は、操作装置530の操作の有無に関わらず少なくとも画像の送受信中に外観が変化するため、オペレータは、作業機110が動いていなくても障害の有無を判断することができる。すなわち、本実施形態に係る作業車両100は、遠隔のオペレータに画像系の障害の有無を認識させることができる。オペレータは、画像系に障害があると認識した場合、作業車両100の操作を止め、障害の復旧を待機することができる。
【0025】
《比較例》
ここで、比較例として、撮像装置122がモードランプ126を撮像せず、制御装置125が、一定周期で変化するアニメーション画像を、撮像装置122が撮像した画像に合成する作業車両100を考える。比較例に係る作業車両100においては、画像系が正常であるとき、表示装置520に表示されるアニメーション画像は、一定周期で変化する。他方、画像系のうち制御装置125、制御装置540、または表示装置520に障害が発生している場合、アニメーション画像が停止するため、オペレータは、障害が発生していることを認識することができる。しかしながら、撮像装置122に障害が発生して、撮像装置122が同一の画像を出力し続ける場合には、当該同一の画像に制御装置125がアニメーション画像を合成してしまうため、画像系に障害が生じているにも関わらず、表示装置520に表示されるアニメーション画像は、一定周期で変化する。そのため、オペレータは、障害が発生していることを認識することができない。
これに対し、第1の実施形態に係る作業車両100によれば、画像系のどこに障害が発生していても、モードランプ126の変化が止まるため、オペレータは、画像系の障害の有無を確実に認識することができる。
【0026】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、作業車両100は、一定時間ごとに外観に既知の変化が生じる変化物としてモードランプ126を備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業車両100は、変化物として他のランプ、点滅灯、時計(特に秒針)、一定時間で既知の変化をする画像を表示するモニタなどを備えてもよい。これらの変化物を作業車両100に追加して設ける場合、ピラーなど、視界を遮らない位置に設けることが好ましい。また、変化物は、少なくとも撮像装置122が撮像する画像の送受信中に外観に既知の変化が生じるものであればよい。すなわち、変化物は、画像を送受信がなされていない間、外観が変化しないものであってもよい。
【0027】
また、上述した実施形態に係るモードランプ126は、運転室121の前方に設置されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、変化物が撮像装置122の撮像範囲に含まれれば、運転室の内部に設置されていてもよい。また他の実施形態においては、作業車両100がミラーを備え、当該ミラーで反射した変化物の像が撮像装置122の撮像範囲に含まれるものであってもよい。また、他の実施形態においては、車体で反射した変化物の像が撮像装置122の撮像範囲に含まれるものであってもよい。
【0028】
また、上述した実施形態に係る制御装置540は、モードランプ126が写る部分が残るように切り出しを行うことで画像P11から画像P15を生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、モードランプ126が写る部分が残らないように切り出しを行うことで画像P11からP15を生成し、さらに画像P1からモードランプ126が写る領域を切り出し、これを画像P11からP15のいずれかに重畳させて表示してもよい。
【0029】
また、上述した実施形態では、オペレータが表示装置520に写るモードランプ126を視認することで障害の有無を判定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、コンピュータが画像P1のうちモードランプ126が写る個所の明度の変化量を監視することで、コンピュータが障害の有無を判定してもよい。
【0030】
図6は、他の実施形態に係る障害判定装置の構成を示す概略ブロック図である。
例えば、他の実施形態に係る遠隔操作システム1においては、遠隔運転室500内に
図6に示す障害判定装置900を備え、障害判定装置900が画像系の障害の有無を判定してもよい。
障害判定装置900は、プロセッサ910、メインメモリ920、ストレージ930、インタフェース940、撮像装置950を備えるコンピュータである。ストレージ930は、プログラムpを記憶する。プロセッサ910は、プログラムpをストレージ930から読み出してメインメモリ920に展開し、プログラムpに従った処理を実行する。障害判定装置900は、インタフェース940を介して撮像装置950に接続される。
撮像装置950は、表示装置520に表示された画像のうち少なくともモードランプ126が写る個所を撮像する。
【0031】
ストレージ930の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ930は、障害判定装置900の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース940を介して障害判定装置900に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ930は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0032】
プロセッサ910は、プログラムpの実行により、画像取得部911、明度特定部912、障害判定部913を備える。
画像取得部911は、撮像装置950から画像を取得する。
明度特定部912は、取得した画像のうちモードランプ126が写る個所の明度を特定する。
障害判定部913は、モードランプ126が写る個所の明度が一定時間ごとに変化しているか否かを判定することで、画像系の障害があるか否かを判定する。
【0033】
障害判定装置900は、
図5に示すフローチャートと同様の処理によって画像系の障害を判定する。すなわち、画像取得部911は、撮像装置950からモードランプ126が写る画像を取得する(ステップS1)。明度特定部912は、取得した画像のうち、モードランプ126が表示される部分の明度を特定する。障害判定部913は、明度が一定時間ごとに変化しているか否かを判定する(ステップS2)。明度が一定時間ごとに変化している場合(ステップS2:YES)、障害判定部913は、画像系の障害が発生していないと判定する(ステップS3)。他方、明度が一定時間ごとに変化していない場合(ステップS2:YES)、障害判定部913は、画像系の障害が発生していると判定する(ステップS4)。
【0034】
これにより、障害判定装置900は、画像系の障害の有無を判定することができる。なお、他の実施形態においては制御装置540が受信した画像に基づいて上記の判定を行ってもよい。一方で、制御装置540が判定する場合、制御装置540と表示装置520との間に障害が発生している場合にこれを検知することができないため、障害判定装置900のように、表示装置520に表示された画像に基づいて障害の判定を行うことが好ましい。