(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記エコノマイザの給水入口温度がエコノマイザ入口給水設定温度よりも所定値以上高い場合、前記給水加熱器に供給される蒸気の抽気量を減少させることを特徴とする請求項2に記載の発電プラント。
前記蒸気タービンから蒸気を抽気して前記給水を加熱する給水加熱器に供給される蒸気の抽気量を減少させることを特徴とする請求項10に記載の発電プラントの運転方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、大型焼却場で得られた蒸気や温水によってボイラ給水を加熱して発電効率の向上を行っているが、発電プラントの各機器仕様に伴う運転の制約があることや、発電プラント全体の熱の有効利用までは行われておらず、さらなる発電効率向上技術が望まれる。
【0005】
一方、木質系や農業系・汚泥系などのバイオマス由来のバイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。例えば、化石燃料とバイオマス燃料とを用いてボイラで混焼を行う発電プラントが検討されている。
【0006】
しかし、バイオマス燃料の良質なものは高価であり、化石燃料に対してコスト競争力の点で課題がある。また、バイオマス燃料の廉価なものは腐食成分を多く含むため実際にはボイラでは少量しか混焼ができない。さらに、ボイラの燃料供給設備や環境装置の技術的制約から混焼率には上限があり、ボイラの出力が低いときには一層にバイオマス燃料の投入量も少なくならざるを得ない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発電効率を向上させることができるボイラ給水加熱用ボイラを備えた発電プラント及びその運転方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、環境影響の低減からカーボンニュートラルなバイオマス燃料を用いる場合には、バイオマス燃料の使用比率を高めて化石燃料の消費量を削減し、二酸化炭素の排出量を削減させることができる発電プラント及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の発電プラント及びその運転方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる発電プラントは、エコノマイザ及び過熱器を有するボイラと、該ボイラにて生成された蒸気によって駆動される蒸気タービンと、該蒸気タービンによって駆動される発電機と、前記ボイラから排出された排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記ボイラに供給される給水を加熱する給水加熱用ボイラと、該給水加熱用ボイラによる前記給水の加熱量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記エコノマイザの出口水温度が飽和温度未満でかつ、前記排ガス処理装置に供給される前記排ガスが該排ガス処理装置の
触媒反応温度から決まる運転温度の上限温度未満となるように前記加熱量を制御することを特徴とする。
【0009】
ボイラに供給される給水を給水加熱用ボイラによって加熱することで、ボイラに供給される給水のエンタルピ(単位流量あたりの熱量)を増大させて、タービン効率を向上して化石燃料エネルギに対する発電効率(以下、単に「発電効率」という。)を向上させることができる。さらに、エコノマイザの出口水温度が、蒸気化しない飽和温度未満となるように給水加熱用ボイラの加熱量を制御することとしたので、給水を可能な限り加熱することができる。ここで、エコノマイザの出口水温度は、飽和温度に近い温度すなわち飽和温度よりも数℃(例えば2℃)から10℃程度低い温度とすることが好ましい。これにより、給水のエンタルピをエコノマイザの出口水温度が蒸気化しないよう可能な限り増大させて、タービン効率を向上して発電効率を向上させることができ、ボイラに投入する化石燃料を削減することができ、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の発生量を削減することができる。
【0010】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記ボイラから排出される排ガスを処理する排ガス処理装置を備え、前記制御部は、前記排ガス処理装置に供給される排ガスの上限温度未満でかつ該上限温度に近い温度となるように前記加熱量を制御することを特徴とする。
【0011】
脱硝装置等の排ガス処理装置には、供給される排ガスの上限温度が規定されている。この上限温度未満でかつ上限温度に近い排ガス温度となるように給水加熱用ボイラの加熱量を増加させるよう制御することができる。ここで、上限温度未満でかつ上限温度に近い排ガス温度とは、例えば脱硝装置の触媒温度など排ガス流れ下流側に設置した機器の運転温度の上限温度よりも数℃(例えば2℃)から数10℃程度低い温度である。排ガスの上限温度未満としたので、給水を可能な限り加熱することができる。これにより、給水のエンタルピを増大させて、タービン効率を向上して発電効率を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記蒸気タービンから蒸気を抽気して前記給水を加熱する給水加熱器を備え、前記制御部は、前記給水加熱器に供給される蒸気の抽気量を減少させることを特徴とする。
【0013】
給水加熱用ボイラによって給水を加熱しているので、蒸気タービンからの蒸気の抽気量を減少させて、蒸気タービンの蒸気流量を蒸気タービンの機械的限度の規定範囲内で増大させてタービン出力が増大する。また、蒸気の抽気量を減少させる前と後とを比較するにあたり、同じタービン出力となるようにボイラから蒸気タービンへ供給される総蒸気量を調整した場合は、抽気量を減少することによって、総蒸気流量を減少させることができるので、タービン効率を向上させることができる。
特に、ボイラが部分負荷とされている場合には、蒸気タービンへ流通する蒸気量を増加しても十分に蒸気タービンの機械的強度の規定値範囲内にあるので、抽気量をゼロとすることで、さらにタービン効率を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記制御部は、前記エコノマイザの給水入口温度がエコノマイザ入口給水設定温度よりも所定値以上高い場合、前記給水加熱器に供給される蒸気の抽気量を減少させることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記蒸気タービンの異なる位置から各蒸気を抽気して供給する少なくとも2つの前記給水加熱器を備え、前記制御部は、前記ボイラの負荷と前記給水加熱用ボイラによる前記給水の加熱量とに基づき、前記各蒸気が各前記給水加熱器に供給される抽気量を変化させるタイミングを異ならせることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記制御部は、前記蒸気タービンのタービン翼の強度に基づいて、前記蒸気の抽気量を制御することを特徴とする。
【0017】
蒸気タービンの機械的強度の規定値範囲としてタービン翼の強度がある。タービン翼の強度は、タービン翼の前後にかかる差圧に対して耐久性を有するように設計されていて、この差圧は蒸気タービンの内部を流通する蒸気の流量および圧力バランスによって決まり、この差圧は、蒸気の抽気量に応じて変化する。そこで、タービン翼の強度を考慮して蒸気の抽気量を制御することとした。これにより、タービン翼の強度を考慮して抽気量を可能な限り減少させて蒸気タービンに流れる総蒸気流量を減少させることができ、タービン効率をさらに向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記制御部は、前記給水加熱用ボイラで発生した蒸気により前記給水の加熱量を制御し、前記給水加熱用ボイラは、蒸気ダンプ弁を備え、前記給水加熱用ボイラで発生した蒸気の圧力が所定の圧力より大きな場合は、前記蒸気ダンプ弁によって余剰の蒸気を排出することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記過熱器から供給される過熱蒸気の温度を制御する過熱器スプレイを備え、前記制御部は、前記加熱量の変化量に基づいて前記過熱器スプレイのスプレイ量を制御することを特徴とする。
【0020】
給水加熱用ボイラの加熱量や抽気量の変化によって過熱器から供給される過熱蒸気の温度が変動するおそれがある。過熱蒸気の温度は、高温高圧下で使用される金属材料(蒸気配管やタービン翼など)の設計温度以下となる規定値以内に設定される。この過熱蒸気の温度変動を過熱器スプレイによって素早く抑制することで、蒸気配管やタービン翼の劣化や損傷を抑制することができる。
なお、ボイラが再熱器を備えている場合には、再熱器から供給される再熱蒸気の温度を制御する再熱器スプレイの流量も併せて制御することが好ましい。
【0021】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記給水加熱用ボイラで発生した蒸気と前記ボイラへ供給される前記給水を熱交換する給水加熱用熱交換器と、前記給水加熱用熱交換器をバイパスする給水バイパス配管と、記給水バイパス配管に設けた給水バイパス弁と、を備え、前記制御部は、前記給水加熱用ボイラで発生した蒸気の温度が前記給水加熱用熱交換器の入口における前記給水の温度よりも所定値以上高い場合、前記給水バイパス弁を閉とし、前記給水加熱用ボイラで発生した蒸気で前記給水を加熱することを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明の発電プラントでは、前記給水加熱用ボイラは、バイオマス燃料を主燃料として用いるバイオマスボイラとされていることを特徴とする。
【0023】
給水加熱用ボイラを、バイオマス燃料を主燃料として用いるバイオマスボイラとすることで、ボイラにてバイオマス燃料を混焼させずに給水加熱用ボイラでバイオマス燃料を専焼させることができる。したがって、ボイラで燃焼させる化石燃料に対するバイオマス燃料の使用比率を高めることができる。また、腐食成分を含む廉価なバイオマス燃料をボイラ本体での燃焼に影響を及ぼすことなく用いることができ、化石燃料使用量を低減し、高効率な発電を行うことができる。
【0024】
また、本発明の発電プラントの運転方法は、エコノマイザ及び過熱器を有するボイラと、該ボイラにて生成された蒸気によって駆動される蒸気タービンと、該蒸気タービンによって駆動される発電機と、前記ボイラから排出された排ガスを処理する排ガス処理装置と、前記ボイラに供給される給水を加熱する給水加熱用ボイラと、を備えた発電プラントの運転方法であって、前記エコノマイザの出口水温度が飽和温度未満でかつ、前記排ガス処理装置に供給される排ガスが該排ガス処理装置の
触媒反応温度から決まる運転温度の上限温度未満となるように加熱量を制御することを特徴とする。
【0025】
さらに、前記蒸気タービンから蒸気を抽気して前記給水を加熱する給水加熱器に供給される蒸気の抽気量を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
給水加熱用ボイラを用いて給水を可及的に高い温度まで加熱することとしたので、タービン効率を向上し、化石燃料を投入するボイラへの化石燃料の投入量を低減することができ、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の発生量を低減することができる。
また、給水加熱用ボイラをバイオマスボイラとすることで、ボイラにてバイオマス燃料を混焼させずに給水加熱用ボイラでバイオマス燃料を専焼させることとしたので、バイオマス燃料の使用比率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、一実施形態に係る発電プラント1が示されている。発電プラント1は、ボイラ3と、蒸気タービン5と、バイオマスボイラ(給水加熱用ボイラ)7とを備えている。
【0029】
ボイラ3は、ボイラ本体3aの火炉10内に石炭や油等の化石燃料を用いて火炎を形成するバーナ11を備えている。火炉10を形成する炉壁は伝熱管とフィンによって構成された水冷壁12とされており、水冷壁12で加熱された水は蒸気ドラム15へと導かれる。水冷壁12の鉛直下方側には水ドラム14が設けられている。水ドラム14へは、循環ポンプ20によって蒸気ドラム15内の水が導かれるとともに、水冷壁12へ水を供給するようになっている。なお、本実施形態では、ドラムを有する亜臨界圧ボイラを例としているが、ドラムを有さない超臨界圧ボイラにも適用することができる。
【0030】
バーナ11の火炎によって発生する燃焼排ガスは、火炉10の鉛直上方側へと流れ、過熱器13へと導かれる。過熱器13の燃焼排ガス流れ下流側には、再熱器17とエコノマイザ18とがこの順番で設けられている。
【0031】
エコノマイザ18と蒸気ドラム15との間には、エコノマイザ18にて加熱された後の水が流通するエコノマイザ出口配管22が接続されている。エコノマイザ出口配管22には、エコノマイザ出口温度センサ22Tと、エコノマイザ出口圧力センサ22Pとが設けられている。これらセンサ22T,22Pの計測値は、制御部30へ送られるようになっている。
【0032】
エコノマイザ18には、給水(水)を供給するための給水配管24が接続されている。給水配管24を通る給水は、後述するように、バイオマスボイラ7で発生した蒸気によって加熱された後にエコノマイザ18へと供給される。エコノマイザ18の入口側の給水配管24には、温度センサ58Tが設けられている。この温度センサ58Tの計測値は、制御部30へと送られる。
【0033】
エコノマイザ18を通過した燃焼排ガス流れ下流側には、エコノマイザ18を通過した後の燃焼排ガスの温度を計測する燃焼排ガス温度センサ25Tが設けられている。燃焼排ガス温度センサ25Tの計測値は、制御部30へと送られる。燃焼排ガス温度センサ25Tを通過した後の燃焼排ガスは、ボイラ本体3aに接続された排ガスダクトの途中位置に燃焼ガス中のNOxを除去するために設けられた脱硝装置(図示せず)へと導かれる。
【0034】
脱硝装置は、アンモニアを用いた選択触媒還元脱硝装置とされており、触媒反応温度の関係で上限温度(例えば400℃〜420℃程度)が定められている。したがって、燃焼排ガス温度センサ25Tの温度に基づいて、例えば、脱硝装置の上限温度を超えないように制御部30によってボイラ3内の熱交換量を調整して燃焼排ガス温度が制御される。脱硝装置を通過した燃焼排ガスは、例えば、燃焼ガス中のSOxを除去するために脱硫装置(図示せず)にてSOx等を除去された後に、更に下流側では図示しない煤塵処理装置、誘引送風機などが必要に応じて設けられており、排ガスダクトの下流端部の煙突から大気へと排出される。
【0035】
過熱器13には、過熱器スプレイ27が設けられている。過熱器スプレイ27から水や蒸気を噴射することで過熱器13内を流れる過熱蒸気を素早く冷却して所定範囲の温度へと制御する。過熱器スプレイ27で用いる水は、例えばエコノマイザ18の出口水の一部が用いられる。過熱器スプレイ27の水噴射量や噴射タイミングは、制御部30によって制御される。
【0036】
図1では過熱器スプレイ27の設置位置が模式的に示されているが、より具体的な設置位置について
図2を用いて説明する。
図2に示されたものは、過熱器13は、例えば1次過熱器13aと2次過熱器13bと3次過熱器13cとを備えている。過熱器スプレイ27は、1次過熱器13aと2次過熱器13bとの間と、2次過熱器13bと3次過熱器13cとの間とにそれぞれ設けられており、これらの位置で水を噴射して過熱蒸気温度を段階的に低下させる。すなわち、1次過熱器出口設定温度となるように1次過熱器13aの出口に水スプレイを行い、2次過熱器出口設定温度となるように2次過熱器13bの出口に水スプレイを行う。このように水スプレイを行って蒸気温度を制御することにより、各過熱器出口設定温度が調整され、蒸気タービン5へ供給される主蒸気の温度が所定範囲の温度になるよう制御される。
【0037】
また、図示しないが、再熱器17に対しても再熱器スプレイが設けられていてもよい。再熱器スプレイの水噴射量や噴射タイミングについても、制御部30によって制御される。
【0038】
過熱器13を出た過熱蒸気は、
図1に示すように、主蒸気配管32を通り蒸気タービン5へと導かれる。蒸気タービン5は、本実施形態では、例えば、高圧タービン34と中圧タービン35と低圧タービン36とを備えている。これらタービン34,35,36にて発生した回転動力によって発電機37が回転駆動され、発電が行われる。
【0039】
主蒸気配管32は、高圧タービン34の入口に接続されている。高圧タービン34の排気側には、高圧タービン出口配管38が接続されている。高圧タービン出口配管38の下流端は再熱器17に接続されており、高圧タービン34で所定の膨張を行ってタービンを回転駆動させる仕事を終えた蒸気が再熱器17へと導かれるようになっている。
【0040】
再熱器17の蒸気出口側と中圧タービン35との間には、再熱蒸気を中圧タービン35に供給する再熱蒸気供給配管40が設けられている。
【0041】
中圧タービン35の排気側には、中圧タービン出口配管42が接続されている。中圧タービン出口配管42の下流端は低圧タービン36の入口に接続されており、中圧タービン35で所定の膨張を行ってタービンを回転駆動させる仕事を終えた蒸気が低圧タービン36へと導かれるようになっている。
【0042】
低圧タービン36の排気側には、低圧タービン出口配管44が接続されている。低圧タービン出口配管44の下流端は復水器46に接続されている。復水器46では、図示しない冷却水によって蒸気が真空下へと冷却され凝縮液化する。復水器46にて液化した復水は給水となって、復水ポンプ48によって低圧給水加熱器50へと導かれる。
【0043】
本実施形態では、例えば、低圧給水加熱器50では、低圧タービン36から導かれた低圧蒸気によって復水からの給水が加熱される。低圧給水加熱器50にて加熱された給水は、給水ポンプ51を通り第1中圧給水加熱器52a及び第2中圧給水加熱器52bへ導かれて、中圧タービン35から抽気された中圧蒸気によって加熱される。各中圧給水加熱器52a,52bによって加熱された給水は、第1高圧給水加熱器54a及び第2高圧給水加熱器54bへと導かれる。
【0044】
第1高圧給水加熱器54aに導かれる高圧蒸気は、第1高圧抽気配管55aを介して導かれる。第1高圧抽気配管55aには、制御部30によって開度が制御される第1高圧抽気弁56aが設けられている。
第2高圧給水加熱器54bに導かれる高圧蒸気は、第2高圧抽気配管55bを介して導かれる。第2高圧抽気配管55bには、制御部30によって開度が制御される第2高圧抽気弁56bが設けられている。
なお、本実施形態では、一例として第1高圧抽気配管55aは、第2高圧抽気配管55bよりも高圧タービン34の上流側(高圧側)に接続されているので、第1高圧抽気配管55aによって導かれる高圧蒸気の圧力は、第2高圧抽気配管55bによって導かれる高圧蒸気の圧力よりも高くされている。
【0045】
図3には、本実施形態の一例としてボイラ3の負荷に対する各高圧抽気弁56a,56bの開度が示されている。
図3に示されたマップ(ロードプログラム)は、制御部30の記憶部に格納されていて、負荷に応じて事前に設定された弁開度とする。同図に示すように、ボイラ3の負荷が100%となる場合には、両高圧抽気弁56a,56bが全閉となる。負荷が所定値よりも小さくなる場合には、両高圧抽気弁56a,56bが全開となる。ただし、本実施形態では、全閉と全開とを切り替える負荷域を第1高圧抽気弁56aと第2高圧抽気弁56bとで異なるように設定することで、給水の加熱の制御性を向上している。具体的には、第1高圧抽気弁56aの方が第2高圧抽気弁56bよりも高負荷側で動作するようになっている。これにより、高圧蒸気の抽気流量を第1高圧抽気弁56aで変更し、その不足分を第2高圧抽気弁56bで変更することで、広い範囲で任意に制御することができる。なお、後述するように、バイオマスボイラ7を投入する場合には、
図3に示したマップに代えて、ボイラ3の負荷に関わらず高圧抽気弁56a,56bが閉じる方向に制御される。
【0046】
各給水加熱器50,52a,52b,54a,54bにて給水を加熱した後の蒸気は、
図1にて破線矢印で示すように、順次低圧段の給水加熱器50,52a,52b,54a,54bへと送られ、最終的には復水器46にて回収される。
【0047】
高圧給水加熱器54a,54bにて加熱された後の給水は、給水配管24を通り、給水加熱用熱交換器60へと導かれる。給水加熱用熱交換器60では、バイオマスボイラ7から加熱用伝熱管61に導かれた蒸気によって給水が加熱されるようになっている。バイオマスボイラ7と給水加熱用熱交換器60との間には、加熱用伝熱管61へ蒸気を供給する加熱用蒸気供給配管62と、加熱用伝熱管61を通過し熱交換した後にドレン化したドレン水をバイオマスボイラ7へと返送する返送配管64と返送ポンプ65が設けられている。
【0048】
加熱用蒸気供給配管62には、加熱用蒸気の温度を計測する加熱用蒸気温度センサ62Tと、加熱用蒸気の圧力を計測する加熱用蒸気圧力センサ62Pと、加熱用蒸気の流量を計測する加熱用蒸気流量センサ62Fとが設けられている。各センサ62T,62P,62Fの計測値は、制御部30へと送られる。
【0049】
返送配管64の途中には、返送ポンプ65が設けられており、返送ポンプ65によってドレン水がバイオマスボイラ7へと送られ、バイオマスボイラ7と給水加熱用熱交換器60との間で循環するようになっている。
【0050】
給水加熱用熱交換器60をバイパスするように、給水バイパス配管67が設けられている。給水バイパス配管67には、制御部30によって開閉が制御される給水バイパス弁68が設けられている。給水バイパス弁68は、給水加熱用熱交換器60を利用する場合は全閉とされ、給水加熱用熱交換器60を利用しない場合は全開とされる。給水バイパス配管67の上流側の給水配管24には、給水加熱用熱交換器入口温度を計測する温度センサ57Tが設けられている。この温度センサ57Tの計測値は、制御部30へと送られる。
【0051】
バイオマスボイラ7は、バイオマス燃料を燃焼させて蒸気を発生する。バイオマスボイラ7の出力は、制御部30によって制御される。具体的には、バイオマスボイラ7に投入するバイオマス燃料の供給量、燃焼用空気の流量、発生した蒸気の供給量等が制御部30によって制御される。このように、制御部30によってバイオマスボイラ7の出力を制御することで、給水加熱用熱交換器60における給水の加熱量が制御される。
【0052】
バイオマスボイラ7には、制御部30によって開度制御される蒸気ダンプ弁72が設けられている。バイオマスボイラ7で生成した蒸気の圧力が過大となった場合等に、蒸気ダンプ弁72を介して余剰の蒸気が復水器46へと排出される。ただし、蒸気の排出先は、復水器46に限定されるものではなく、例えば別の冷却装置や大気放出でもよい。また、バイオマスボイラ7を循環する蒸気やドレン水が不足した場合は、返送配管64の返送ポンプ65より上流側へ図示しない給水ラインにより、復水器46の復水の一部を給水しても良い。
【0053】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0054】
上記構成の発電プラント1は、以下のように動作する。
ボイラ3の過熱器13にて生成された過熱蒸気は、蒸気タービン5の高圧タービン34へと導かれ、高圧タービン34を回転駆動させた後に、再熱器17へと導かれる。再熱器17へと導かれた蒸気はボイラ3によって再加熱され、再熱蒸気として中圧タービン35へと導かれる。再熱蒸気は、中圧タービン35を回転駆動させた後に、低圧タービン36へと導かれて低圧タービン36を回転駆動させる。このように得た回転動力によって発電機37が回転駆動され、発電が行われる。
【0055】
低圧タービン36にて所定の膨張を行ってタービンを回転駆動させる仕事を終えた蒸気は復水器46にて復水となり、給水として各給水加熱器50,52a,52b,54a,54bを順次通過することによって加熱される。その後、給水は、給水加熱用熱交換器60によってさらに加熱され、ボイラ3のエコノマイザ18に供給される。
【0056】
給水加熱用熱交換器60における給水の加熱量は、バイオマスボイラ7の出力を制御部30によって制御することで調整される。具体的には以下の通りである。
【0057】
<エコノマイザ出口温度に基づく制御>
エコノマイザ18で加熱した後の水の出口温度が飽和温度を超えて蒸気化しないように制御する。これにより、エコノマイザ18出口の水が蒸気となるのを防止しつつ、可能な限り高い給水温度を実現する。
制御部30は、エコノマイザ出口用圧力センサ22Pの計測圧力、温度センサ22Tの計測温度から飽和温度T1を得る。そして、この飽和温度T1を所定値(例えば2℃〜10℃)の範囲で下回る温度をエコノマイザ出口温度設定値T1setとし、このエコノマイザ出口温度設定値T1setとなるように、制御部30はバイオマスボイラ7の出力をフィードバック制御する。これにより、エコノマイザ18の出口水温度が蒸気化しないよう、給水の温度を可能な限り高くして、給水のエンタルピを可能な限り増大させる。
【0058】
<燃焼排ガス温度に基づく制御>
燃焼排ガス下流側に設置した機器の上限温度を考慮するにあたり、本実施形態では、脱硝装置の触媒反応温度から決まる上限温度T2を超えないように制御する。これにより、脱硝装置の触媒反応を維持しつつ、可能な限り高い給水温度を実現する。
制御部30は、燃焼排ガス温度センサ25Tの計測温度を得て上限温度T2を所定値(例えば5℃〜数10℃(例えば50℃))の範囲で下回る温度を燃焼排ガス温度設定値T2setとし、この燃焼排ガス温度設定値T2setとなるように、制御部30はバイオマスボイラ7の出力をフィードバック制御する。これにより、エコノマイザ18を通過した燃焼排ガスが上限温度を超えないように、給水の温度を可能な限り高くして、給水のエンタルピを可能な限り増大させる。
【0059】
制御部30は、上述のエコノマイザ出口温度に基づく制御と燃焼排ガス温度に基づく制御の両方を満たすようにバイオマスボイラ7からの加熱量(例えば、蒸気量・圧力・温度および出熱量)を制御する。
【0060】
<高圧抽気弁の制御>
上述のようにバイオマスボイラ7の加熱量を制御しつつ、さらに高圧抽気弁56a,56bを制御して、高圧蒸気の抽気量の制御を行う。具体的には、制御部30は、高圧抽気弁56a,56bの制御を以下のように行う。
バイオマスボイラ7を投入していない場合、すなわち給水加熱用熱交換器60によって給水を加熱していない場合は、
図3に示したマップにあるロードプログラムに従い、ボイラ3の負荷に応じて高圧抽気弁56a,56bの開度を制御する。
【0061】
バイオマスボイラ7を投入する場合は、高圧抽気弁56a,56bの開度が閉となるように、すなわち高圧蒸気の抽気量を減じるように制御する。具体的には、バイオマスボイラ7によって給水加熱用熱交換器60で給水を加熱すると、加熱量に相当する熱量に応じた高圧蒸気の抽気量を減じる。バイオマスボイラ7からの加熱量は、加熱用蒸気温度センサ62Tと、加熱用蒸気圧力センサ62Pと、加熱用蒸気流量センサ62Fとから、上述のエコノマイザ出口温度に基づく制御と燃焼排ガス温度に基づく制御の両方を満たすように制御部30にて演算される。
【0062】
バイオマスボイラ7による加熱量が高圧蒸気の抽気量を上回る場合には、高圧抽気弁56a,56bを全閉として、高圧蒸気の抽気量をゼロとする。このときの高圧抽気弁56a,56bを全閉とするタイミングは、バイオマスボイラ7からの加熱量との関係を予め定めた制御マップに基づいて行うのが好ましい。
【0063】
高圧タービン34からの高圧蒸気の抽気量を減少させることによって、高圧タービン34に流れる蒸気流量を機械的強度の規定値範囲内で増大させてタービン効率を向上させることができる。ここで第1高圧給水加熱器54a,第2高圧給水加熱器54bへ供給する高圧蒸気の抽気量を高圧抽気弁56a,56bを閉方向に制御する際には、機械的強度の規定値範囲として高圧タービン34のタービン翼の強度が考慮される。すなわち、タービン翼の強度は、タービン翼の前後にかかる差圧に対して耐久性を有するように設計されている。この差圧は高圧タービン34内部を通過する高圧蒸気の流量・圧力バランスによって決まるので、差圧がタービン翼の強度上の許容値を超えないようにボイラ3の負荷を考慮して高圧抽気弁56a,56bの開度すなわち高圧蒸気の抽気量の減少量が決定される。例えば、高圧抽気弁56a,56bを全閉とする際には、MCR点(ボイラー最大連続蒸発量)のときのタービン強度が考慮される。MCR点において高圧抽気弁56a,56bを全閉としてもタービン強度に余裕がある場合には、負荷100%のときでも高圧抽気弁56a,56bを全閉とすることができる。またタービン強度に余裕がない場合には、負荷100%のときのタービン強度を考慮して高圧蒸気の抽気量の減少量が決定され、高圧抽気弁56a,56bの開度が設定される。
【0064】
<過熱器スプレイの制御>
制御部30は、バイオマスボイラ7の加熱量が変化した際や高圧抽気弁56a,56bによる高圧蒸気の抽気量が変化した際に、過熱器スプレイ27を制御する。バイオマスボイラ7の加熱量が変化すると(例えばバイオマスボイラ7の緊急停止やバイオマス燃料の発熱量変化など)、過熱器13を出た主蒸気の温度が変化するおそれがあるので、過熱器スプレイ27によって主蒸気温度を適正値の範囲に素早く制御する。また、第1高圧給水加熱器54a,第2高圧給水加熱器54bへ供給する高圧蒸気の抽気量が変化すると、過熱器13と再熱器17のバランスが変化するおそれがあるので、過熱器スプレイ27によって主蒸気温度や再熱蒸気温度を適正値の範囲に素早く制御する。再熱器スプレイが設けられている場合には、過熱器スプレイ27と協働して制御することが好ましい。したがって、バイオマスボイラ7で給水を加熱する場合には、バイオマスボイラ7で給水を加熱しない場合に比べて、冷却熱量が多く必要になり、過熱器スプレイ27及び再熱器スプレイの噴射量の制御範囲が大きくなるので、これに対応する噴射量の制御範囲を備える過熱器スプレイ27や再熱器スプレイが採用されると更に好ましい。
【0065】
<バイオマスボイラ起動制御>
次に、
図4を用いて、バイオマスボイラ7の起動制御について説明する。
先ず、ステップS1に示すように、ボイラ3の負荷が一定以上で、バイオマスボイラ7が停止しており、第1高圧給水加熱器54a,第2高圧給水加熱器54bへ高圧蒸気を供給する高圧抽気弁56a,56bが開とされており、給水バイパス弁68が開とされているときに、ステップS2に示すようにバイオマスボイラ7を起動する。これにより、バイオマスボイラ7にバイオマス燃料が投入され、蒸気の生成が行われる。
【0066】
そして、ステップS3にて、加熱用蒸気供給配管62に設けられた加熱用蒸気温度センサ62Tによって計測されたバイオマスボイラ出口蒸気温度が、温度センサ57Tで計測された給水加熱用熱交換器60に流入する給水温度よりも所定値α以上であるかを判断する。このステップS3の条件を満たした場合には、ステップS4へ進み、満たしていない場合はステップS3を繰り返しバイオマスボイラ7の起動を継続する。所定値αは、給水加熱用熱交換器60の伝熱特性から決まり、所定値αを小さくするには給水加熱用熱交換器60の伝熱面積を大きくする必要があり、熱交換器が大型化する。例えば、所定値αは2℃〜10℃、さらに好ましくは2℃〜5℃で設定される。
【0067】
ステップS4では、給水バイパス弁68を閉として、給水を給水加熱用熱交換器60へと導く。このとき、高圧抽気弁56a,56bは開とされたままである。
【0068】
給水配管24には、エコノマイザ18の給水入口温度を計測する温度センサ58Tが設けられている。この温度センサ58Tの計測値は、制御部30へと送られる。ステップS5では、温度センサ58Tで計測したエコノマイザ18の給水入口温度が設定温度よりも所定値β以上であるかを判断する。このステップS5の条件を満たした場合には、ステップS6へ進み、満たしていない場合はステップS5を繰り返してエコノマイザ18の給水入口温度が上昇するのを待機する。所定値βは、エコノマイザ18の給水入口温度が設定温度を超えたことで、高圧抽気弁56a,56bの開度を閉へと調整可能とするもので、所定値βを小さくすると給水加熱用熱交換器60の熱交換量に不安定な変動が発生した際に高圧抽気弁56a,56bの開度制御へ影響する。例えば、所定値βは2℃〜5℃で設定される。
【0069】
ステップS6に進むと、高圧抽気弁56a,56bの開度を閉じる方向へ制御する。これにより、高圧蒸気の抽気量を減少させて、蒸気タービンの蒸気流量を機械的限度の規定範囲内で増大させてタービン出力が増大する。また、蒸気の抽気量を減少させる前と後とを比較するにあたり、同じタービン出力となるようにボイラから蒸気タービンへ供給される総蒸気量を調整した場合は、抽気量を減少することによって、総蒸気流量を減少させることができるので、タービン効率を向上させることができる。タービン効率が向上することによりボイラ3の負荷に対する発電効率が向上する。バイオマスボイラ7による給水への加熱後の発電出力が変わらない条件では、ボイラ3に投入する化石燃料量を低減できることになり、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の排出量が削減できる。以上により、バイオマスボイラ7の投入が完了し起動制御が終了する(ステップS7)。
【0070】
起動制御が終了すると、前述のように、バイオマスボイラ7の加熱量と、第1高圧給水加熱器54a,第2高圧給水加熱器54bへ供給する高圧蒸気の抽気量と、過熱器スプレイ27による主蒸気の温度とを制御して、発電プラント1の負荷に応じた適正なボイラ3とバイオマスボイタラ7と蒸気タービン5の運転を行う。
バイオマスボイラ7の加熱量は、加熱用蒸気温度センサ62Tと、加熱用蒸気圧力センサ62Pと、加熱用蒸気流量センサ62Fとから、エコノマイザ出口温度22Tに基づく制御と燃焼排ガス温度25Tに基づく制御の両方を満たすように制御部30により制御される。
また、第1高圧給水加熱器54a,第2高圧給水加熱器54bへ供給する高圧蒸気の抽気は、タービン翼の前後にかかる差圧がタービン翼の強度上の許容値を超えないように、高圧抽気弁56a,56bを閉方向に開度を設定し制御される。
さらに、バイオマスボイラ7の加熱量や、高圧抽気弁56a,56bによる高圧蒸気の抽気量が変化した際に、主蒸気の温度は、過熱器スプレイ27によりを適正値の範囲に素早く制御される。
【0071】
<バイオマスボイラ切離制御>
次に、
図5を用いて、バイオマスボイラ7による給水加熱を切り離す切離制御について説明する。
先ず、ステップS11に示すように、ボイラ3の負荷が一定以上で、バイオマスボイラ7が起動しており、高圧抽気弁56a,56bが閉とされており、給水バイパス弁68が閉とされているときに、ステップS12に示すようにバイオマスボイラ7を停止する。
【0072】
そして、ステップS13にて、温度センサ58Tで計測されたエコノマイザ18の給水入口温度が設定温度に所定値βを加えた値よりも低いかを判断する。このステップS13の条件を満たした場合には、ステップS14へ進み、満たしていない場合はステップS13を繰り返す。所定値βは、エコノマイザ18の給水入口温度が設定温度を超えたことで、高圧抽気弁56a,56bの開度を開へと調整可能とするもので、所定値βを小さくすると給水加熱用熱交換器60の熱交換量に不安定な変動が発生した際に高圧抽気弁56a,56bの開度制御へ影響する。例えば、所定値βは2℃〜5℃で設定される。
【0073】
ステップS14では、給水バイパス弁68を閉としたままで、高圧抽気弁56a,56bは開とする。
【0074】
ステップS15では、加熱用蒸気供給配管62に設けられた加熱用蒸気温度センサ62Tによって計測されたバイオマスボイラ出口蒸気温度が、温度センサ57Tで計測された給水加熱用熱交換器60に流入する給水温度に所定値αを加えた値よりも低いかを判断する。このステップS15の条件を満たした場合には、ステップS16へ進み、満たしていない場合はステップS15を繰り返す。所定値αは、給水加熱用熱交換器60の伝熱特性から決まり、所定値αを小さくするには給水加熱用熱交換器60の伝熱面積を大きくする必要があり、熱交換器が大型化する。例えば、所定値αは2℃〜10℃、さらに好ましくは2℃〜5℃で設定される。
【0075】
ステップS16に進むと、高圧抽気弁56a,56bの開度を開としたままで、給水バイパス弁68を開とする。これにより、給水は給水加熱用熱交換器60をバイパスして、バイオマスボイラ7による給水加熱を停止する。以上により、バイオマスボイラ7の切離制御が完了する(ステップS17)。
【0076】
図6及び
図7には、本実施形態のようにバイオマスボイラ7による給水加熱を行う場合(バイオマスボイラ追設後)と、比較例としてバイオマスボイラ7による給水加熱を行わない場合(バイオマスボイラ追設前)との効果の一例について説明する。
【0077】
図6において、横軸はボイラ3の負荷、縦軸はバイオマスボイラ7から給水に与えられた加熱量を示す。
図6に示すように、バイオマスボイラ7による給水加熱によって、熱量は給水へ与えられる。同図では、ボイラ負荷100%のときに給水に与えられる熱量を1.0として相対値として表している。
【0078】
図7において、横軸は発電プラントの出力、縦軸である発電効率は、発電プラントへ投入する化石燃料エネルギに対する発電効率を示している。同図において、出力100%のときのバイオマスボイラ追設前の発電効率を1.0として相対値として表している。同図から分かるように、ボイラ負荷が変化しても、バイオマスボイラ追設後はバイオマスボイラ追設前よりも発電効率が高くなることが分かる。特に、ボイラ負荷が低い場合には、発電効率の上昇割合が大きい。これば、発電出力が小さいときは蒸気タービンのタービン効率が低下するが、給水加熱による効果と高圧蒸気の抽気量を減少させた効果は、発電出力が低負荷となるほどタービン効率の向上に大きく寄与するからである。
なお
図7における発電効率とは、(得られる電気エネルギ)÷(投入する化石燃料のエネルギ)と定義している。また、タービン効率とは、(得られる電気エネルギ)÷[(タービンへ流入する蒸気のエネルギ)−(タービンから流出する蒸気のエネルギ)]と定義している。
【0079】
図8は、発電プラント1の発電により得られる電気エネルギと発電プラント1(ボイラ3およびバイオマスボイラ7)へ投入する燃料エネルギの関係と内訳を示している。ここでは、負荷を例えば中間の50%とした場合を比較している。なお、
図8(a)はバイオマスボイラ7の追設前、
図8(b)がバイオマスボイラ7の追設後を示している。バイオマスボイラ7の追設前と追設後の発電により得られる電気エネルギを同量とした場合、
図8(b)(バイオマスボイラ7の追設後)に示されるように、バイオマスボイラ追設後の燃料エネルギは化石燃料の投入量が低減され、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の排出量が削減できる。
【0080】
具体的には、バイオマスボイラ7で発生した蒸気をボイラ3へ供給する給水の加熱に利用し、蒸気タービン5からの蒸気の抽気量を減少(抽気量低減)させ、更にボイラ3へ供給される給水を飽和温度より所定範囲で低い温度となるように加熱する(給水エンタルピ増加させる)ことによるエネルギ変化分に相応して、ボイラ3に投入する化石燃料を更に低減でき、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の排出量をより削減できる。
【0081】
上述した実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ボイラ3に供給される給水をバイオマスボイラ7によって加熱することで、ボイラ3に供給される給水のエンタルピを増大させて、タービン効率を向上して発電効率を向上させることができる。さらに、エコノマイザ18の出口水温度が蒸気化しないように飽和温度未満でかつ飽和温度に近い温度となるようにバイオマスボイラ7の加熱量を制御することとしたので、給水を可能な限り加熱することができる。これにより、給水のエンタルピを増大させて、タービン効率を向上して発電効率を向上させることができる。これにより、発電効率が向上する前の発電量と同等の発電する場合、ボイラ3に投入する化石燃料を減少でき、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の排出量が削減できる。
【0082】
脱硝装置の上限温度未満でかつ上限温度に近い排ガス温度となるようにバイオマスボイラ7の加熱量を制御することとしたので、給水を可能な限り加熱することができる。これにより、給水のエンタルピを増大させて、タービン効率を向上して発電効率を向上させることができる。
【0083】
バイオマスボイラ7によって給水を加熱しているので、蒸気タービン5からの蒸気の抽気量を減少させることができる。抽気量を減少させる前と後を同じ発電出力として比較した場合、抽気量を減少することによって、蒸気タービン5に流通させる総蒸気流量を機械的強度の規定値範囲内で減少させ、タービン効率を向上させることができる。特に、ボイラ3が部分負荷とされている場合には、蒸気タービンへ流通する蒸気量を増加しても十分に機械的強度の規定値範囲内にあるので、高圧蒸気の抽気量をゼロとすることで、さらにタービン効率を向上させることができる。
【0084】
蒸気タービン5の機械的強度の規定値範囲としてのタービン翼の強度は、タービン翼の前後にかかる差圧に対して耐久性を有するように設計されていて、この差圧は蒸気タービン5へ流通する蒸気の流量および圧力バランスによって決まり、この差圧は抽気量に応じて変化する。そこで、タービン翼の強度を考慮して蒸気の抽気量を制御することとした。これにより、タービン翼の強度を考慮して抽気量を可能な限り減少させて蒸気タービン5に流れる総蒸気流量を減少させることができ、タービン効率をさらに向上させることができる。
【0085】
バイオマスボイラ7の加熱量や蒸気タービン5の蒸気の抽気量の変化によって過熱器13から供給される過熱蒸気の温度が変動するおそれがある。この過熱蒸気の温度変動を過熱器スプレイ27によって抑制することで、高温高圧下で使用される蒸気配管やタービン翼の温度を規定値以内に素早く設定することができ、劣化や損傷を抑制することができる。また、再熱器17から供給される再熱蒸気の温度を制御する再熱器スプレイの流量も併せて制御することとしたので、再熱蒸気の温度を所望値に容易に制御することができる。
【0086】
給水を加熱する追加的なボイラとして、バイオマス燃料を主燃料として用いるバイオマスボイラ7とすることで、ボイラ3にてバイオマス燃料を混焼させずにバイオマスボイラ7でバイオマス燃料を専焼させることができる。したがって、ボイラ3で燃焼させる化石燃料に対するバイオマス燃料の使用比率を高めることができ、カーボンニュートラルとならない二酸化炭素の発生量を削減できる。また、腐食成分を含む廉価なバイオマス燃料をボイラ3本体の燃焼に影響を及ぼすことなく用いることができ、低い燃料コストで高効率な発電を行うことができる。
【0087】
なお、上述した実施形態では、エコノマイザ18の出口温度22Tに基づいてバイオマスボイラ7の加熱量を制御することとしたが、エコノマイザ18の出口温度22Tに代えてエコノマイザ18の入口温度58Tを用いることとしても良い。
また、給水を加熱する追加的な蒸気発生装置としてバイオマスボイラ7を用いることとしたが、必ずしも燃料にバイオマスを用いなくともよい。燃料としては例えばゴミや燃焼可能な廃棄物などを用いることができる。
また、給水加熱用熱交換器60は、給水加熱器50,52a,52b,54a,54bに対して直列に配置することとしたが、給水加熱器50,52a,52b,54a,54bの少なくともいずれかに対して並列に配置することとしても良い。