(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891110
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】永久磁石を有する電気モータ、およびそれを用いた始動制御システム
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20210607BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20210607BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20210607BHJP
F02N 15/00 20060101ALI20210607BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
H02K11/215
F02N11/04 A
F02N11/08 F
F02N15/00 Z
H02K7/18 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-505155(P2017-505155)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公表番号】特表2017-530666(P2017-530666A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】IB2015055713
(87)【国際公開番号】WO2016016812
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年6月1日
【審判番号】不服2020-1787(P2020-1787/J1)
【審判請求日】2020年2月10日
(31)【優先権主張番号】RM2014A000447
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514151524
【氏名又は名称】ピアッジオ・アンド・シー.・エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カポッツェラ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】カンティーニ,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ミラニ,ジャンポール
【合議体】
【審判長】
窪田 治彦
【審判官】
柿崎 拓
【審判官】
山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−292009(JP,A)
【文献】
特開2006−194200(JP,A)
【文献】
特開2007−252096(JP,A)
【文献】
特開2013−112176(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/084269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K11/215
H02K7/18
F02N11/04
F02N11/08
F02N15/00
H02P1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトに結合され、スタータモータおよび発電機として機能し、補強部(6)にステータ(1)を備えた、永久磁石を有する電気モータであって、
前記電気モータの監視ユニット(EMU)に位相信号を提供する、第1の位相センサ(14)、第2の位相センサ(15)、第3の位相センサ(16)と、
前記ステータ(1)に対する前記電気モータのロータの回転方向を示す信号を前記エンジンの監視ユニット(ECU)に提供する付加的方向センサ(18)と、
が設けられ、
前記付加的方向センサ(18)は、前記エンジンの監視ユニット(ECU)に接続されているが、前記電気モータの前記監視ユニット(EMU)には接続されず、
前記ステータ(1)に対する前記電気モータのロータの回転方向を示す前記信号は、前記エンジンの前記監視ユニット(ECU)には供給されるが、前記電気モータの前記監視ユニット(EMU)には供給されない、
電気モータ。
【請求項2】
前記第2の位相センサ(15)は、前記付加的方向センサ(18)も受容する前記補強部(6)の拡大された隔室(17)内に配置されている、請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記付加的方向センサ(18)は、ホール効果を利用した2チャンネルセンサである、請求項1または請求項2に記載の電気モータ。
【請求項4】
永久磁石を有する電気モータと、前記電気モータの監視ユニット(EMU)と、エンジンの監視ユニット(ECU)と、を備え、
前記電気モータは、前記エンジンのクランクシャフトに機械的に接続され、
前記電気モータには、
前記電気モータの監視ユニット(EMU)に位相信号を提供する、第1の位相センサ(14)、第2の位相センサ(15)、第3の位相センサ(16)と、
前記ステータ(1)に対する前記電気モータのロータの回転方向を示す信号を前記エンジンの監視ユニット(ECU)に提供する付加的方向センサ(18)と、
が設けられ、
前記付加的方向センサ(18)は、前記エンジンの監視ユニット(ECU)に接続されているが、前記電気モータの前記監視ユニット(EMU)には接続されず、
前記ステータ(1)に対する前記電気モータのロータの回転方向を示す前記信号は、前記エンジンの前記監視ユニット(ECU)には供給されるが、前記電気モータの前記監視ユニット(EMU)には供給されない、
始動制御システム。
【請求項5】
前記第2の位相センサ(15)は、前記付加的方向センサ(18)も受容する補強部(6)の拡大された隔室(17)内に配置されている、請求項4に記載の始動制御システム。
【請求項6】
前記付加的方向センサ(18)は、ホール効果を利用した2チャンネルセンサである、請求項4または請求項5に記載の始動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタータモータおよび発電機として働き、エンジンのクランクシャフトとの連結に適した、永久磁石を有するタイプの電気モータ、およびその電気モータを含むエンジンの始動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、この電気モータは、エンジンの始動手順を実行しなければならず、また、車両が停止されるときに、そのエンジンの自動スイッチオフが実行され、且つ好ましくはスクーター等のような自動車のための単気筒エンジンに適し、勿論、発電機としても働く電気モータは、クランクシャフトに直接に嵌合される。
【0003】
この構成では、電気モータは、上述の手順を管理するために、電気モータの監視ユニットによっておよびエンジンの監視ユニットによって使用される特定のセンサを備えている。
【0004】
このために、エンジンが再始動されなければならないとき、すなわち、車両が停止してエンジンがスイッチオフされるとき、再始動が直ぐに起こらなければならないことに留意して、シリンダ内でピストンの停止を確実に回避することによって、再始動のための最も低い可能なトルクを必要とする位置にシリンダ内のピストンを配置するために電気モータの回転を行う再始動手順が使用される。
【0005】
米国特許第5,458,098A号には、自動車タイプの多気筒エンジンのために考案された、このタイプの手順が記載されている。
【0006】
一般的には、この相で電気モータが限られたトルクで回転されるので、ピストンは、クランクシャフトを順方向と逆方向の両方に回転することによって、圧縮相に対応する上死点を越えることができない。
【0007】
上記文献では、停止する毎に、逆方向回転が実行され、すなわち、より近接した圧縮相からピストンを離すように移動する逆方向回転が実行され、その瞬間から、電気モータは始動のために順方向に回転されるので、近接した相からの始動によって近接した相を越えるのに十分なトルクがない場合であっても、順方向回転中に蓄積される慣性によって、エンジンを再始動して近接した圧縮相を越えることが可能になる。
【0008】
逆方向回転は、ピストンが先に逆方向回転をロックしない限り、事前に確立された回転角度(回転のπ/2毎に圧縮相がある4気筒エンジンの場合、π/4である)だけ、または事前に確立された回転時間の間、実行される。
【0009】
しかしながら、単気筒エンジンでは、隣り合う圧縮相が2πの角度だけ回転角度に関して離間されている。したがって、再始動を確実に実行するための一定の逆方向回転角度および/または時間を確立することは困難である。
【0010】
米国特許第5,713,320A号には、上述の手順と同様な手順が記載され、電気モータは、より近接する圧縮相に達するまで、低い電力で逆方向に回転される。
【0011】
欧州特許第1,046,813号には、逆方向回転手順が記載され、逆方向回転が停止できるときを把握するために逆回転中に摩擦を検出するセンサが設けられている。
【0012】
逆に、欧州特許第1,233,175号には、クランクシャフトの絶対角度位置を検出できるセンサを使用した手順が記載されている。
【0013】
欧州特許第1,321,666号には、クランクシャフトに適用される逆方向回転角度が検出される手順が更に記載されている。
【0014】
欧州特許出願公開第1,396,629A2号には、エンジンの始動制御システムが記載され、位置センサが、他の位置センサとともに、回転方向の経路を示す信号を提供するために設けられている。
【0015】
米国特許出願公開第2008/0105230号には、三つの電圧センサと位相センサを設け、それら全てがエンジンの監視ユニットに接続された他の制御システムが記載されている。
【0016】
最後に、欧州特許第1,574,692号には、エンジンの始動制御システムが記載され、電気モータの回転方向、次いでエンジンの回転方向が、永久磁石を有するタイプの電気モータにあるホール効果を有する位相センサの位相パルスのシーケンスによって検出される。
【0017】
始動制御システムの、電気モータの監視ユニットからエンジンの監視ユニットに供給されるこの情報は、始動中にエンジンの順方向回転を検出するためにも使用され、そこでは、電流とエンジンに対する燃料混合物の供給が可能となる。
【0018】
エンジンの同じ監視ユニットが、一つのセンサだけを管理する代わりに三つのセンサを管理しなければならない、そのようなシステムは、エンジンの始動を調整する監視ユニットに対して利用可能な計算資源の必要以上の部分を占めることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の基礎をなす技術的課題は、既知の技術を参照して述べた欠点を克服することが可能な電気モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そのような課題は、上記の通り、永久磁石を有する電気モータによって克服され、電気モータは、電気モータの補強部にステータを備え、位相センサが設けられ、電気モータのロータの回転方向を示す信号を供給する、ホール効果を有する
付加的方向センサ
(方位センサともいう)が設けられている。
【0021】
そのような課題は、エンジンの始動制御システムによって克服され、始動制御システムは、永久磁石を有する電気モータと、電気モータの監視ユニットとエンジンの監視ユニットを備え、電気モータは、電気モータのロータの回転方向を表し、且つ前記エンジンの前記監視ユニットに接続される
付加的方向センサを備えている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電気モータおよびその電気モータを含む始動制御システムの主な利点は、電気モータが接続されるエンジンの、より効果的且つ単純な管理を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、一例として提供され、且つ添付図面を参照し、制限目的ではない好適な実施の形態の例に従って、
以下に記載される。
【
図1】
図1は、本発明の電気モータのステータの側面図である。
【
図2】
図2は、
図3に示す電気モータのステータの断面図の一部を拡大
した細部の
部分断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の電気モータのロータを示す側面図である。
【
図5】
図5は、強調表示された幾つかの構造細部を有し、
図1のステータの部分拡大図である。
【
図6】
図6は、先の図面の電気モータを含み、本発明の電気モータで始動処理を実行する、本発明の始動制御システムのスキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に、
図6を参照すると、予備導入として、本実施の形態の一例の電気モータで始動処理を実行するのに適した始動制御システムが記載されている。
【0025】
始動制御システムは、バッテリーから受電する作動装置(モータドライバ)によって駆動される、永久磁石を有するブラシレスタイプの三相電気モータ(三相機械)と、を備えている。
【0026】
作動デバイスとバッテリーは、適切な入力部からモータを始動するためのコマンド(始動コマンド)を受信するように配置された電気モータの監視ユニット(EMU)によって管理されている。特定のケースでは、この入力部は、ボタンによって、キーの回転によって、アクセルから導出されたキャブレターのスロットルバルブの開放によって、アクセルコマンドへの圧力の検出等によって発生される信号を受信する。
【0027】
最後の二つのタイプの信号は、エンジンおよび車両の停止毎に、またはある期間を越える停止毎に、あたかもエンジンが先にスイッチオフしなかったように、ドライバが連続走行を意図していることを示すときに自動的にエンジンを再始動するために配置された始動システムに使用される信号である。
【0028】
電気モータの監視ユニット(EMU)は、適切な電気センサ(電流センサ)から電気モータへの電流の供給に関連する情報を受信する。
電気モータの監視ユニット(EMU)は、電気モータに配置された、典型的にはホール効果を有する位相センサからステータに対する電気モータのロータの相対位置を示すパルスを更に受信する。
【0029】
本実施の形態の一例では、そのようなパルスは、電気モータのステータの位相センサ(位置センサ)またはステータが備えるホール効果を有する三つの位相センサによって発生される位相パルスである。
【0030】
電気モータは、電気モータのシャフトと一致するクランクシャフトによって直接的にエンジンに機械接続されている。
【0031】
また、電気モータのステータは、ステータに対するロータの回転方向を示す信号を供給する、以下で詳述される特定の方向センサも備えている。
【0032】
そのような信号は、電気モータの監視ユニット
(EMU)に
は収集されないが、エンジンの電力供給、すなわち、点火プラグを調整するエンジンの監視ユニット(ECU)と燃料混合物の供給源に収集される。
【0033】
本実施の形態の一例では、そのような始動制御システムが、実質的にオートバイタイプの単気筒4サイクルエンジンのために配置されている。
【0034】
代わりに、図面を参照すると、本実施の形態の一例の電気モータがより詳細に記載されている。
【0035】
永久磁石を有するタイプのエンジ
ンであって、三相を有し、各相に対して三つの歯よりなる群に分割された九つの歯によって構成されるロータを有している。
【0036】
このタイプの電気モータは、スタータモータおよび発電機として働くため、4ストロークエンジン、特に単気筒エンジンのクランクシャフトの軸に組み立てられるのに特に適している。
【0037】
この電気モータは、断面で示されたステータを備え、このステータは
図1と
図3において参照番号1で指定されている。
【0038】
ステータ1は、中心コア2とその中心コア2から半径方向外方に延在する複数の歯3を備えた、強磁性材料からなる要素によって実現され、各歯3は、拡大されたヘッド4で終端し、それによって、歯と歯の間に各歯の回りに配置される銅製の導電ワイヤの巻き線5で満たされる隔室を実現している。
【0039】
次に、歯3は、夫々のヘッド4によって形成される外側接合表面を有している。
【0040】
ステータ1は、ステータの円形セクタに位置する外側補強部6を更に備えている(
図2)。全ての巻き線のケーブルは、そこから接続要素7を介してステータ1の外側に分岐し、次に、シース8の内側に接合され、且つバッテリーに接続される各プラグ9に接続されている。
【0041】
補強部6から他のケーブルも分岐し、前記補強部6とその中に配置される歯3の間に配置されたホールセンサ(
図2)、一般的には、位相位置センサに接続される。
【0042】
シース8は、次に夫々のコネクタ10,11に接続される前記他のケーブルも含んでいる。
【0043】
先に述べたように、歯3は三つの群に分割され、その群は、各々一つの相に対応し、各群の歯は互いに隣り合い、したがって、120°の幅を有するステータ1の単一の円形セクタを占めている。
【0044】
巻き線は、同じ歯の上の幾つかの層に配置された、エナメル銅線よりなる同じワイヤの複数回巻きによって実現される。
【0045】
電気モータは、図示されていないクランクシャフトに結合され、且つそれ自体のクラウンに、複数の適切に離間された永久磁石13を備えたロータ12(
図4)を更に備えている。
【0046】
先に述べたホールセンサを参照すると、それらは、補強部6の下に、隣り合うヘッド4間の自由空間に等間隔で配置されている。
【0047】
これらのホールセンサは三つ、すなわち、第1の位相センサ14、第2の位相センサ15および第3の位相センサ16(
図5Bの断面A−A)である。
【0048】
他の二つの位相センサの中心にある第2の位相センサ15は、方向センサ18(
図5Aの断面B−Bと断面C−C)も受容する補強部6(
図5の断面D−D)の拡大された隔室
17内に配置されている。
【0049】
この実施の形態の一例では、方向センサ18は、ホール効果を有するダブルチャネルセンサであり、ステータ1に対
するロータ12の回転方向を示す信号を提供できる。
【0050】
順方向回転に対して例えば0であり、且つ逆方向回転に対して1であるこの信号は、位相パルスを提供していない。
【0051】
次に、この信号は、この信号を直接に受信する、エンジ
ンの監視ユニット
(ECU)から点火プラグへの電力の供給およびその隔室への燃料混合物の供給を禁止する(逆方向回転)およびそれを許容する(順方向回転)
のに特に適している。
【0052】
当業者
であれば、追加のおよび付随するニーズを満たすために、幾つかの追加的変更および変形例を上述の電気モータに導入できるが、それら全ては、
添付の
特許請求の範囲に定義されるように、本発明の保護範囲内にある。