特許第6891176号(P6891176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891176
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】埋込み可能な髄核プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20210607BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20210607BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20210607BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20210607BHJP
   A61L 31/18 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   A61F2/44
   A61B17/70
   A61L31/06
   A61L31/02
   A61L31/18
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-530671(P2018-530671)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-527145(P2018-527145A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】US2016049816
(87)【国際公開番号】WO2017040734
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】62/212,950
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518069450
【氏名又は名称】スパイナル スタビライゼーション テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ジェイムズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ダブリュ. ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ノボトニー マーク
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0277467(US,A1)
【文献】 特表2012−513243(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0112323(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0094914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端開口部を有する基端および末端開口部を有する末端を有する、充填可能な内側エンクロージャ;
基端および末端を有する、充填可能な外側エンクロージャであって、
該充填可能な内側および外側エンクロージャの該基端どうしが結合され、かつ該充填可能な内側および外側エンクロージャの該末端どうしが結合されて、該充填可能な内側エンクロージャを封入するようになっている、充填可能な外側エンクロージャ;
該充填可能な内側エンクロージャの該末端の該末端開口部を封止するための、末端プラグ;および
該充填可能な内側エンクロージャの該基端の該基端開口部を封止するための、基端プラグであって、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するためのアクセスルーメンと、該充填可能な外側エンクロージャへのアクセスを提供するため開口部を有するレセプタクルとを有し、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するための該アクセスルーメンが埋込み後でも開いたままであるように構成されている、基端プラグ
を含む、脊椎インプラント装置、ならびに
該基端プラグと嵌合するように適合されたインフレーションスタイラスであって、
該アクセスルーメンを通って移動可能に延びて該充填可能な内側エンクロージャから流体を送りかつ取り出すための、調節可能な第一のルーメン;および
流体を該充填可能な外側エンクロージャに送るための、第二のルーメン
を含む、インフレーションスタイラス
を含む、髄核代替装置を埋め込むためのキット。
【請求項2】
充填可能な外側エンクロージャの周囲を包囲する補強バンドをさらに含む、請求項1記載のキット。
【請求項3】
補強バンドが織物を含む、請求項2記載のキット。
【請求項4】
強バンドに結合された調節要素をさらに含む、請求項2記載のキット。
【請求項5】
強バンドの縁に結合された少なくとも1つのプルストリングをさらに含む、請求項4記載のキット。
【請求項6】
少なくとも1つのプルストリングが補強バンド中の溝に縫い込まれている、請求項5記載のキット。
【請求項7】
インフレーションスタイラスを包囲する送出しシースをさらに含み、該送出しシースが送出し位置から展開位置まで移動可能である、請求項5記載のキット。
【請求項8】
調節要素および少なくとも1つのプルストリングが送出しシースとインフレーションスタイラスとの間に配置されている、請求項7記載のキット。
【請求項9】
充填可能な外側エンクロージャに注入するための硬化性シリコーン材料をさらに含む、請求項1記載のキット。
【請求項10】
硬化性シリコーン材料が5分以内に実質的に硬化する、請求項9記載のキット。
【請求項11】
基端開口部を有する基端および末端開口部を有する末端を有する、充填可能な内側エンクロージャ;
基端および末端を有する、充填可能な外側エンクロージャであって、
該充填可能な内側および外側エンクロージャの該基端どうしが結合され、かつ該充填可能な内側および外側エンクロージャの該末端どうしが結合されて、該充填可能な内側エンクロージャを実質的に封入するようになっている、充填可能な外側エンクロージャ;
該充填可能な内側エンクロージャの該末端の該末端開口部を封止するための、末端プラグ;および
該充填可能な内側エンクロージャの該基端中の該基端開口部を封止するための、基端プラグであって、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するためのアクセスルーメンと、該充填可能な外側エンクロージャへのアクセスを提供するため開口を有するレセプタクルとを有し、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するための該アクセスルーメンが埋込み後でも開いたままであるように構成されている、基端プラグ
を含む、脊椎インプラント装置であって、
該基端プラグは、該基端開口部に結合し、かつ該基端プラグの該末端を通って該基端プラグの該基端から実質的に長手方向に伸びる少なくとも1つのルーメンを含むインフレーションスタイラスを受けるように適合されている、
該脊椎インプラント装置
【請求項12】
該充填可能な内側および外側エンクロージャが一体の材料片を含む、請求項11記載の脊椎インプラント装置。
【請求項13】
基端プラグが、基端開口部に結合され、かつインフレーションスタイラスの少なくとも1つのルーメンが、それぞれ充填可能な内側および外側エンクロージャに流体を送るための第一および第二のルーメンを含み、第一のルーメンが、アクセスルーメンを通って移動可能に延びて充填可能な内側エンクロージャから流体を送りかつ取り出すための、調節可能なルーメンを含む、請求項12記載の脊椎インプラント装置。
【請求項14】
充填可能な外側エンクロージャの周囲を包囲する補強バンドをさらに含む、請求項11記載の脊椎インプラント装置。
【請求項15】
補強バンドが織物を含む、請求項14記載の脊椎インプラント装置。
【請求項16】
補強バンドの中央ゾーンで該補強バンドに結合された取外し可能な調節要素をさらに含む、請求項14記載の脊椎インプラント装置。
【請求項17】
強バンドの縁に結合された少なくとも1つの取外し可能なプルストリングをさらに含む、請求項14記載の脊椎インプラント装置。
【請求項18】
充填可能な外側エンクロージャが硬化性シリコーン材料で充填される、請求項11記載の脊椎インプラント装置。
【請求項19】
装置をインフレーションスタイラス上に保持するための保持要素をさらに含む、請求項11記載の脊椎インプラント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容全体が参照により権利を放棄することなく特に本明細書に組み入れられる、2015年9月1日に出願された米国特許仮出願第62/212,950号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
1.発明の分野
本出願は概して、椎間板を交換する方法および装置に関する。より具体的には、本出願は、最小侵襲手術を使用して、または経皮的に埋め込まれ得る埋込み可能な椎間板代替物およびそのような椎間板代替物/プロテーゼを製造する方法に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
よくある一般的な医学的問題は、外傷、加齢または他の障害によって生じる脊椎円板傷害による腰痛である。提案されてきた1つの治療法は、既存の髄核を除去し、それを、切開手術または最小侵襲手術を使用してインサイチューで形成される髄核プロテーゼと交換する方法である。1つの提案される方法は、以下の工程を含む:(i)インサイチューで硬化することができる流動可能な硬化性材料を収容するための、椎間板腔内の型、たとえばバルーンを提供する工程、(ii)型キャビティを流動可能な硬化性材料の供給源に接続するための、導管を提供する工程、(iii)流動可能な硬化性材料を型に送り込んで、キャビティを充填する工程、および(iv)硬化性材料を硬化させる工程。
【0004】
髄核プロテーゼをインサイチューで形成するための既存の技術は、納得のゆく臨床的受入れまたは商業的成功を達成していない。本発明者らによって確認された1つの課題は、一方では椎体終板および線維輪を含む椎骨要素と、他方では埋め込まれる要素との間の弾性率の実質的な差である。極端な曲げまたはねじれが起こっている間、特に高負荷ピーク時の衝撃または突然の椎間板内圧の増大を緩衝しないため、埋め込まれる材料の高い弾性率は不都合である。埋め込まれる椎間板材料と隣接組織との間の弾性率の大きな差はまた、椎体終板および隣接する骨の軟化を生じさせ、その結果、髄核インプラントの沈降をもたらし得る。インプラントの移動および脱出が起こることもある。
【0005】
したがって、改善された髄核インプラントが必要である。
【発明の概要】
【0006】
概要
別の例示的態様にしたがって、髄核代替装置を埋め込むためのキットは、脊椎インプラント装置およびインフレーションスタイラスを含む。充填可能な内側エンクロージャは、基端開口部を有する基端および末端開口部を有する末端を有する。充填可能な外側エンクロージャは基端および末端を有し、充填可能な内側および外側エンクロージャの基端どうしおよび末端どうしが結合されて、充填可能な外側エンクロージャが充填可能な内側エンクロージャを封入するようになっている。末端プラグが、充填可能な内側エンクロージャの末端の末端開口部を封止し、基端プラグが、充填可能な内側エンクロージャの基端の基端開口部を封止する。基端プラグは、内側エンクロージャへのアクセスを提供するための第一のルーメンと、外側のエンクロージャへのアクセスを提供するための第二のルーメンとを有する。インフレーションスタイラスは、基端プラグと嵌合するように適合され、インフレーションスタイラスは、流体を内側エンクロージャに送るための第一のルーメン、および流体を外側エンクロージャに送るための第二のルーメンを含む。
【0007】
いくつかの態様においては、補強バンドが充填可能な外側エンクロージャの周囲を包囲する。補強バンドは織物を含み得る。調節要素が環状補強バンドの中央ゾーンに結合されてもよい。少なくとも1つのプルストリングが環状補強バンドの縁に結合されてもよい。
【0008】
いくつかの態様においては、送出しシースがインフレーションスタイラスを包囲し、送出しシースは、送出し位置から展開位置まで移動可能である。調節要素および少なくとも1つのプルストリングは送出しシースとインフレーションスタイラスとの間に配置されている。
【0009】
例示的態様にしたがって、脊椎インプラント装置は、充填可能な内側エンクロージャおよび充填可能な外側エンクロージャを含む。充填可能な内側エンクロージャは、基端開口部を有する基端および末端開口部を有する末端を有する。充填可能な外側エンクロージャは基端および末端を有し、充填可能な内側および外側エンクロージャの基端どうしおよび末端どうしが結合されて、充填可能な外側エンクロージャが充填可能な内側エンクロージャを実質的に封入するようになっている。末端プラグが、充填可能な内側エンクロージャの末端の末端開口部を封止し、基端プラグが、充填可能な内側エンクロージャの基端の基端開口部を封止する。基端プラグが、充填可能な内側エンクロージャの基端の基端開口部を封止する。基端プラグは、内側エンクロージャへのアクセスを提供するための第一のルーメンと、外側のエンクロージャへのアクセスを提供するための第二のルーメンとを有する。いくつかの態様において、内側エンクロージャへのアクセスを提供するための第一のルーメンは、埋込み後でも開いたままである。
【0010】
いくつかの態様において、充填可能な内側および外側エンクロージャは一体の材料片を含む。
【0011】
いくつかの態様において、基端プラグは、それぞれ内側および外側エンクロージャに流体を送るための第一および第二のルーメンを含むインフレーションスタイラスを受けるように適合されている。
【0012】
いくつかの態様においては、補強バンドが充填可能な外側エンクロージャの周囲を包囲する。補強バンドは織物を含み得る。調節要素が環状補強バンドの中央ゾーンに結合されてもよい。少なくとも1つのプルストリングが環状補強バンドの縁に結合されてもよい。
【0013】
いくつかの態様において、外側エンクロージャは硬化性シリコーン材料を充填される。
【0014】
別の例示的態様にしたがって、線維輪によって包囲された髄核を有する椎間腔に補綴装置を埋め込む方法は、線維輪を貫通する工程;髄核を除去して除核椎間板腔を形成する工程;内側エンクロージャを形成する充填可能な内側エンクロージャと、充填可能な内側エンクロージャに結合された充填可能な外側エンクロージャとを有し、充填可能な外側エンクロージャが充填可能な内側エンクロージャを実質的に完全に包囲するような充填可能な椎間板インプラント装置を除核椎間板腔に挿入する工程;充填可能な内側エンクロージャを流体媒体で膨らませる工程;充填可能な外側エンクロージャを硬化性媒体で膨らませる工程;硬化性媒体を硬化させる工程;充填可能な内側エンクロージャから流体媒体を取り出す工程;および流体が充填可能な内側エンクロージャに出入りし得るように充填可能な内側エンクロージャを通気状態にしておく工程を含む。
【0015】
いくつかの態様において、流体媒体は、実質的に非圧縮性の流体、たとえば造影剤を含む。
【0016】
いくつかの態様においては、充填可能な椎間板インプラントの周囲を補強するための補強バンドが提供される。補強バンドは、除核椎間板腔に挿入され、充填可能な椎間板インプラントを受けるためのポケットを形成するように操作される。補強バンドは、補強バンドの下縁および補強バンドの上縁を引っ張って縁を除核椎間板腔の内部に向けて引っ張り;補強バンドの中央部分の調節要素を作動させて、この中央部分で環状補強バンドを除核椎間板腔の線維輪に向けて外に押すことによって操作され得る。補強バンドの下縁および上縁は、補強バンドの下縁および上縁に配置された下および上のプルストリングを使用することによって引っ張られ得る。調節要素は、可撓性のリボンを使用して環状補強バンドを線維輪に向けて外に押すことによって作動させ得る。プルストリングおよび可撓性のリボンは、充填可能な外側エンクロージャが充填されたのち、取り外され得る。
【0017】
さらに別の態様にしたがって、脊椎板インプラントのための補強バンドは、上縁、下縁、および上縁と下縁との間の中央ゾーンを有する織物バンドを含む。引っ張られたとき織物バンドの上縁を締め付けるための上ドローストリングが織物バンドの上縁に配置され、引っ張られたとき織物バンドの上縁を締め付けるための下ドローストリングが織物バンドの下縁に配置されている。中央ゾーンを拡張するための調節要素が中央ゾーンに配置されている。調節要素は金属リボンを含み得る。
【0018】
用語「結合されている」とは、必ずしも直接的ではないが、接続されていることと定義される。単数形不定冠詞は、そうでないことを本開示が明示的に要求しない限り、1つまたは複数と定義される。用語「実質的に」、「およそ」および「約」は、当業者によって理解されるような、指定されるものの、必ずしもすべてではないが大部分(かつ、指定されるものを含む。たとえば、実質的に90°は90°を含み、実質的に平行は平行を含む)と定義される。任意の開示される態様において、用語「実質的に」、「およそ」および「約」は、指定されるものの「〜%以内」と言い換えられてもよい(%は0.1、1、5および10%を含む)。
【0019】
用語「含む」(およびその任意の形、たとえば「含み」、「含んで」)、「有する」(およびその任意の形、たとえば「有し」、「有して」)、「包含する」(およびその任意の形、たとえば「包含し」、「包含して」)および「含有する」(およびその任意の形、たとえば「含有し」、「含有して」)は、非限定的連結動詞である。その結果、1つまたは複数の要素または特徴を「含む」、「有する」、「包含する」または「含有する」システムまたはシステムの構成部品は、そのような1つまたは複数の要素または特徴を所有するが、そのような要素または特徴のみを所有することに限定されない。同様に、1つまたは複数の工程を「含む」、「有する」、「包含する」または「含有する」方法は、そのような1つまたは複数の工程を所有するが、そのような1つまたは複数の工程のみを所有することに限定されない。加えて、「第一の」および「第二の」のような語は、構造または特徴を区別するためだけに使用され、様々な構造または特徴を特定の順序に限定するために使用されるものではない。
【0020】
ある特定のやり方で構成されている装置、システムまたは構成部品は、少なくともそのやり方で構成されているが、具体的に記載されたやり方以外のやり方で構成されることもできる。
【0021】
システムおよび方法のいずれかの任意の態様は、記載された要素、特徴および/または工程のいずれかからなる、または本質的になることができる(それを含む/包含する/含有する/有する、のではなく)。したがって、請求項のいずれかにおいても、用語「〜からなる」または「〜から本質的になる」は、所与の請求項の範囲を、上記非限定的連結動詞を使用した場合の範囲から変更するために、上記非限定的連結動詞のいずれかに代えて用いることができる。
【0022】
本開示または態様の性質によって明示的に禁じられない限り、1つの態様の特徴は、記載または例示されないとしても、他の態様に適用され得る。
【0023】
[本発明1001]
基端開口部を有する基端および末端開口部を有する末端を有する、充填可能な内側エンクロージャ;
基端および末端を有する、充填可能な外側エンクロージャであって、
該充填可能な内側および外側エンクロージャの該基端どうしが結合され、かつ該充填可能な内側および外側エンクロージャの該末端どうしが結合されて、該充填可能な内側エンクロージャを封入するようになっている、充填可能な外側エンクロージャ;
該充填可能な内側エンクロージャの該末端の該末端開口部を封止するための、末端プラグ;および
該充填可能な内側エンクロージャの該基端の該基端開口部を封止するための、基端プラグであって、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するためのアクセスルーメンと、該充填可能な外側エンクロージャへのアクセスを提供するため開口部を有するレセプタクルとを有し、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するための該アクセスルーメンが埋込み後でも開いたままであるように構成されている、基端プラグ
を含む、脊椎インプラント装置、ならびに
該基端プラグと嵌合するように適合されたインフレーションスタイラスであって、
該アクセスルーメンを通って移動可能に延びて該内側エンクロージャから流体を送りかつ取り出すための、調節可能な第一のルーメン;および
流体を該外側エンクロージャに送るための、第二のルーメン
を含む、インフレーションスタイラス
を含む、髄核代替装置を埋め込むためのキット。
[本発明1002]
充填可能な外側エンクロージャの周囲を包囲する補強バンドをさらに含む、本発明1001のキット。
[本発明1003]
補強バンドが織物を含む、本発明1002のキット。
[本発明1004]
環状補強バンドに結合された調節要素をさらに含む、本発明1002のキット。
[本発明1005]
環状補強バンドの縁に結合された少なくとも1つのプルストリングをさらに含む、本発明1004のキット。
[本発明1006]
少なくとも1つのプルストリングが補強バンド中の溝に縫い込まれている、本発明1005のキット。
[本発明1007]
インフレーションスタイラスを包囲する送出しシースをさらに含み、該送出しシースが送出し位置から展開位置まで移動可能である、本発明1005のキット。
[本発明1008]
調節要素および少なくとも1つのプルストリングが送出しシースとインフレーションスタイラスとの間に配置されている、本発明1007のキット。
[本発明1009]
充填可能な外側エンクロージャに注入するための硬化性シリコーン材料をさらに含む、本発明1001のキット。
[本発明1010]
硬化性シリコーン材料が5分以内に実質的に硬化する、本発明1009のキット。
[本発明1011]
基端開口部を有する基端および末端開口部を有する末端を有する、充填可能な内側エンクロージャ;
基端および末端を有する、充填可能な外側エンクロージャであって、
該充填可能な内側および外側エンクロージャの該基端どうしが結合され、かつ該充填可能な内側および外側エンクロージャの該末端どうしが結合されて、該充填可能な内側エンクロージャを実質的に封入するようになっている、充填可能な外側エンクロージャ;
該充填可能な内側エンクロージャの該末端の該末端開口部を封止するための、末端プラグ;および
該充填可能な内側エンクロージャの該基端中の該基端開口部を封止するための、基端プラグであって、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するためのアクセスルーメンと、該充填可能な外側エンクロージャへのアクセスを提供するため開口を有するレセプタクルとを有し、
該充填可能な内側エンクロージャへのアクセスを提供するための該アクセスルーメンが埋込み後でも開いたままであるように構成されている、基端プラグ
を含む、脊椎インプラント装置。
[本発明1012]
該充填可能な内側および外側エンクロージャが一体の材料片を含む、本発明1011の脊椎インプラント装置。
[本発明1013]
基端プラグが、それぞれ内側および外側エンクロージャに流体を送るための第一および第二のルーメンを含むインフレーションスタイラスを受けるように適合されている、本発明1011の脊椎インプラント装置。
[本発明1014]
充填可能な外側エンクロージャの周囲を包囲する補強バンドをさらに含む、本発明1011の脊椎インプラント装置。
[本発明1015]
補強バンドが織物を含む、本発明1014の脊椎インプラント装置。
[本発明1016]
補強バンドの中央ゾーンで該補強バンドに結合された取外し可能な調節要素をさらに含む、本発明1014の脊椎インプラント装置。
[本発明1017]
環状補強バンドの縁に結合された少なくとも1つの取外し可能なプルストリングをさらに含む、本発明1014の脊椎インプラント装置。
[本発明1018]
外側エンクロージャが硬化性シリコーン材料で充填される、本発明1011の脊椎インプラント装置。
[本発明1019]
装置をインフレーションスタイラス上に保持するための保持要素をさらに含む、本発明1011の脊椎インプラント装置。
[本発明1020]
線維輪によって包囲された髄核を有する椎間腔に補綴装置を埋め込む方法であって、
該線維輪を貫通してアニュロトミーを形成する工程;
該アニュロトミーを通して該髄核を除去して除核椎間板腔を形成する工程;
充填可能な内側エンクロージャと、該充填可能な内側エンクロージャに結合された充填可能な外側エンクロージャとを有し、該充填可能な外側エンクロージャが該充填可能な内側エンクロージャを実質的に完全に封入するような充填可能な椎間板インプラント装置を該除核椎間板腔に挿入する工程;
該充填可能な内側エンクロージャを流体媒体で膨らませる工程;
該充填可能な外側エンクロージャを硬化性媒体で膨らませる工程;
該硬化性媒体を硬化させる工程;
該充填可能な内側エンクロージャから該流体媒体を取り出す工程;および
流体が該充填可能な内側エンクロージャに出入りし得るように該充填可能な内側エンクロージャを通気状態にしておく工程
を含む、方法。
[本発明1021]
流体媒体が実質的に非圧縮性の流体を含む、本発明1020の方法。
[本発明1022]
実質的に非圧縮性の流体が造影剤を含む、本発明1021の方法。
[本発明1023]
充填可能な椎間板インプラントの周囲を補強するための補強バンドを提供する工程;
該補強バンドを除核椎間板腔に挿入する工程;および
該充填可能な椎間板インプラントを受けるためのポケットを形成するために、該補強バンドを操作する工程
をさらに含む、本発明1020の方法。
[本発明1024]
補強バンドを操作する工程が、
該補強バンドの下縁および該補強バンドの上縁を引っ張って該縁を除核椎間板腔の内部に向けて引っ張る段階;および
中央部分で環状補強バンドを該除核椎間板腔の線維輪に向けて外に押すために、該補強バンドの中央部分の調節要素を作動させる段階
を含む、本発明1023の方法。
[本発明1025]
補強バンドの下縁および上縁を引っ張る段階が、該補強バンドの該下縁および該上縁にそれぞれ配置された下および上のプルストリングを引っ張ることを含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
調節要素を作動させる段階が、可撓性のリボンを使用して環状補強バンドを線維輪に向けて外に押すことを含む、本発明1024の方法。
[本発明1027]
充填可能な外側エンクロージャが充填されたのちプルストリングおよび可撓性のリボンを取り外す工程
をさらに含む、本発明1020の方法。
[本発明1028]
上縁、下縁、および該上縁と該下縁との間の中央ゾーンを有する、織物バンド;
引っ張られたとき該織物バンドの該上縁を締め付けるための、該織物バンドの該上縁に配置された上ドローストリング;
引っ張られたとき該織物バンドの該上縁を締め付けるための、該織物バンドの該下縁に配置された下ドローストリング;および
該中央ゾーンを拡張するための、該中央ゾーンに配置された調節要素
を含む、脊椎板インプラントのための補強バンド。
[本発明1029]
調節要素が金属リボンを含む、本発明1028のバンド。
[本発明1030]
金属リボンがニチノールを含む、本発明1029のバンド。
[本発明1031]
調節要素上に放射線不透過性の機構をさらに含む、本発明1030のバンド。
上記態様および他の態様に関連する詳細が以下に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の態様のインプラントの平面図である。
図2図1のインプラントの左側平面図である。
図3図1のインプラントの右側平面図である。
図4図1のインプラントの側面図である。
図5図4の5−5線から見た断面図である。
図6図1のインプラントの末端プラグの拡大図である。
図7図1のインプラントの基端プラグの拡大図である。
図8図1のインプラントを形成するためのインプラントブランクの斜視図である。
図9図8のインプラントブランクをいくらか転回させたのちのインプラントブランクの切欠き斜視図である。
図10図1のインプラントの末端プラグに挿入されたインフレーションスタイラスである。
図11図10のインフレーションスタイラスの末端の平面図である。
図12図10のインフレーションスタイラスの基端の平面図である。
図13】別のインフレーションスタイラスの末端の断面図である。
図14図1のインプラントとで使用するための環状補強バンドを、バンドの内部に位置するしぼんだインプラントとともに示す。
図15図14の環状補強バンドを、充填されたインプラントとともに示す。
図16】展開中の図14の環状補強バンドを示す。
図17図13の織物バンドの断面図である。
図18図1のインプラントアセンブリを埋め込むときの第一の工程を示す。
図19図1のインプラントアセンブリを埋め込むときの第二の工程を示す。
図20図1のインプラントアセンブリを埋め込むときの第三の工程を示す。
図21図1のインプラントアセンブリを埋め込むときの第四の工程を示す。
図22図1のインプラントアセンブリを埋め込むときの第五の工程を示す。
図23図1のインプラントアセンブリを埋め込むときの第六の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
以下の詳細な説明においては、本発明の例示的ただし非限定的かつ非網羅的な態様が示されている添付図面を参照する。これらの態様は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分な詳細さで説明されるが、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、他の態様を使用し、他の変更を加え得ることが理解されよう。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味に解釈されてはならず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。添付図面中、別段指定されない限り、様々な図面を通して類似の参照番号が類似のパーツを指す。
【0026】
髄核インプラント
図1〜8を参照すると、最小侵襲性のまたは経皮送達可能な脊椎インプラント100の態様は、充填可能な外側エンクロージャ102および充填可能な内側エンクロージャ104を含む。充填可能な外側エンクロージャ102は外側エンクロージャ106を形成し、充填可能な内側エンクロージャ104は内側チャンバ108を形成する。内側チャンバ108は外側チャンバ102内に封入されている。本明細書の中で使用される「封入されている」とは、内側チャンバ108が、その全側面を外側チャンバ106によって実質的に包囲されるように、内側チャンバ108が外側チャンバ106内に実質的に収容されていることをいう。充填可能な外側および内側エンクロージャ102および104は、シリコーンゴムのようなエラストマー材料のシームレス一体材料片として形成され得る。エラストマー材料の使用は、伸展性の外側および内側エンクロージャ102および104を生じる。すなわち、外側および内側エンクロージャ102および104は、硬化性材料が充填されるとき、内圧が増すとともに膨張する。伸展性のエンクロージャの使用はいくつかの利点を提供する。伸展性のエンクロージャは、髄核腔の不規則な、平らな、または円板状の形状を受け入れる。さらに、伸展性のエンクロージャは、エラストマー硬化ののち髄核インプラントの適切な弾性率を維持し、椎骨セグメントの生体力学的移動性を保つのに役立ち、中央の空隙中への硬化シリコーン成分の妨げられない変形を可能にするのに役立ち得る。充填可能な内側および外側エンクロージャ102および104の物理的特性は、所望の物理的結果を提供するように調整され得る。たとえば、いくつかの態様において、エンクロージャ102、104は横断面中で優先的に膨張する。いくつかの態様において、充填可能な内側および外側エンクロージャ102および104は、完全または部分的に半伸展性または非伸展性であってもよい(すなわち、内圧が増しても膨張しないか、または膨張が僅かである)。いくつかの態様においては、充填可能な内側および外側エンクロージャ102および104の異なる部分が異なる材料で形成されて、エンクロージャ102、104に異なる特性を提供することもできる。
【0027】
インプラント100は、好ましくは、しぼませた状態で経皮的に、または最小侵襲手術を使用して除核椎間板腔中に挿入されたのち、除核椎間板腔を充填するために充填されることができるようにサイズ設定される。1つの態様において、充填されたインプラント100の外形は、およそ長さ30mm、幅20mm、高さ10mmであり、充填可能な内側エンクロージャ104の外形は、およそ長さ9mm、幅6mm、厚さ6mmである。いくつかの態様において、エンクロージャは、充填されたときに有意に膨張しない(すなわち、非伸展性または半伸展性である)。他の態様において、インプラントは、埋め込まれたとき、約100%膨張する(すなわち、サイズが倍増する)ように充填される。他の態様において、インプラントは、埋め込まれたとき、100%よりも大きく膨張するように充填される。
【0028】
充填可能な外側エンクロージャ102は、第一(または基)端110および第二(または末)端112を有する。充填可能な内側エンクロージャ104は、基端ネック116に結合された第一(または基)端114を有する。充填可能な内側エンクロージャ104の第二(または末)端118は末端ネック120に結合されている。末端ネック部120の端部122は充填可能な外側エンクロージャ102の末端112に結合され、基端ネック116の端部124は充填可能な外側エンクロージャ102の基端110に結合されている。図示される態様において、基端ネック124の端部124は、以下さらに詳細に説明されるように、一体の材料片としていっしょに形成されることにより、充填可能な外側エンクロージャ102の基端110に結合される。充填可能な外側エンクロージャ102の末端112は内側に向けられ、末端ネック部の端部122に結合されて実質的に液密のシールを形成する。このようにエンクロージャどうしを結合すると、実質的に液密な外側チャンバ106が形成する。
【0029】
基端ネック116によって形成された開口の中に基端プラグ126が配置される。基端ネック116は、基端プラグ126上の対応する機構と嵌合して基端プラグ126の配置を支援するための、溝148のような機構を有し得る。基端プラグ126は、基端ネック116に挿入され、それと結合され得る。基端プラグ126は、インフレーションスタイラス130のインフレーションチップ192と嵌合するように適合されている。レセプタクル132が、インフレーションチップ192の第一のルーメン186を受けて、材料を開口134に通して外側チャンバ106の中に送る。開口134は、材料を外側チャンバ106に送るときにボトルネックとなり得、開口134のサイズを最大限にするように削られた穴として形成され得る。基端プラグ126は、エンクロージャ102、104と適合性であるシリコーンまたは別の材料で作製され得、射出成形のような従来の製造技術を使用して製造され得る。
【0030】
いくつかの態様においては、基端プラグ126からのインフレーションスタイラス130の偶発的な脱離を防ぐのに役立つためのロック機構が提供される。たとえば、凹み136が基端プラグ126中に提供されてもよく、嵌合する機構(たとえば図13のビーズ152)がインフレーションチップ192上に提供されてもよい。
【0031】
アクセスルーメン138が基端プラグ126を通って延び、内側チャンバ108へのアクセスを提供する。図3に見てとれるように、レセプタクル132およびアクセスルーメン138を配置して、インフレーションスタイラス130の不適切な設置を防止することができる。いくつかの態様(図10に示すような)においては、インフレーションスタイラス130の不適切な設置を物理的に防止するためのキー214が提供される。キー214は、インフレーションチップ130の挿入深さを制御するために使用され得る。または、他の態様においては、位置決めカラー190を使用してインフレーションチップ130の挿入深さを制御してもよい。アクセスルーメン138は、内側チャンバ108のための通気口として働くために、埋込み後でも開いたままであるように構成される。
【0032】
末端ネックを封止するために末端ネック120中に末端プラグ140が配置される。末端プラグ140は、インフレーションスタイラス130のコントラストルーメン188の末端200を受けるための円柱形の凹み142を内部側に有し得る。別の円柱形の凹み146が末端プラグ140に提供されてもよい。末端プラグ140は、エンクロージャ102、104とで適合性であるシリコーンまたは別の材料から作製され得、射出成形のような従来の製造技術を使用して製造され得る。
【0033】
織物バンド
図14〜17を参照すると、インプラント100を補強するために任意の環状補強バンド160が提供され得る。環状補強バンド160は、患者の線維輪が損傷している場合に有用である。1つの態様において、環状補強バンド160は管状の織物材料を含む。環状補強バンド160は、インプラント100の外側輪郭の周囲に配置されて、外側および内側のバルーン102および104の周方向への過度な膨らみを最小化または防止する。周方向膨張を抑制することはまた、バルーン102、104の垂直方向膨張を促進して隣接する椎骨を伸延させ、椎間板腔を広げる。椎骨の上下の終板がインプラント100の垂直方向膨張を制限する。いくつかの態様において、環状補強バンド160は織物で形成されている。1つの態様において、環状補強バンド160は、膨張するときのバンドの短縮を最小化または実質的に防止する軸方向ウィーブ(織り方)を使用する。Percutaneous Implantable Nuclear Implantと題する米国特許第8,636,803号は、環状補強バンド160の他の適当な構造を開示しており、すべての趣旨に関して参照により全体として本明細書に組み入れられる。環状補強バンド160に適した1つの材料が、超高分子量ポリエチレン繊維、たとえばKoninklijke DSM N.V.(Heerleen, the Netherlands)から市販されているDYNEEMA(登録商標)繊維である。
【0034】
環状補強バンド160は、上縁162、下縁164、および上縁162と下縁164との間の中央ゾーン166を有する。インプラント100の展開中に環状補強バンドを配置しやすくするために、1つまたは複数のプルストリングおよび調節要素が提供される。1つの態様においては、下プルストリング168、上プルストリング170、および調節要素172が提供される。上プルストリングはポケット176内に配置されるか、または他のやり方で環状補強バンド160の上縁162に結合される。同様に、下プルストリング168は、ポケット176内に配置されるか、または他のやり方で環状補強バンド160の下縁164に結合される。下および上のプルストリングは、環状補強バンド160の縁を内に引っ張り、それによってインプラント100を拘束し、配置することを支援するために、展開中にドローストリングとして使用する(すなわち引っ張る)ことができる。調節要素172は環状バンド160の中央ゾーン166に配置されている。環状バンド160が管状材料を含むならば、調節要素172は管状材料の内側に配置される。他の態様において、調節要素172は、環状補強バンド160上に形成されたポケット内に配置される。調節要素172は、環状補強バンド160の周囲に延びる、ニチノールのフラットリボンのようなワイヤであってもよい。調節要素172を使用して環状補強バンド160を線維輪へと外に押し得る。調節要素172およびプルストリング168、170の動作のさらなる詳細は後述する。
【0035】
インフレーションスタイラスおよび送出しシース
図10〜13を参照すると、インプラント100および環状補強バンド160を送るために、インフレーションスタイラス130を送出しシースとともに使用し得る。インフレーションスタイラス130は、基端182および末端184を有するシャフト180を含む。第一のルーメン186および第二のルーメン188がシャフト180を通って延びる。第一および第二のルーメン186および188を所望の部分に維持するために、位置決めカラー190が提供されている。第一および第二のルーメン186および188の末端が、基端プラグ126と嵌合するように構成されているインフレーションチップ192を形成する。
【0036】
第一の(またはシリコーン)ルーメン186は、インフレーションスタイラス130の基端182からインフレーションスタイラス130の末端184まで延びる。インフレーションスタイラス130が基端プラグ126と嵌合すると、第一のルーメン186の末端の開口194が基端プラグ126の開口134と一致して、外側チャンバ106と第一のルーメン186との間の流体連通を可能にする。ルーメン186の基端は、当業者には公知の一般的なインフレーションツール(たとえばシリンジ)への接続のためのコネクタ196を備えている。
【0037】
図13に示すような特定の態様においては、シリコーンまたは別の適当な材料が外側チャンバ106に送られるときに、空気がシリコーンルーメン186から出ることを可能にするための通気孔198が提供され得る。通気口198は、硬化性シリコーンのようなより粘性の流体には抵抗しながらも、空気がそれを通って自由に移動することを可能にするのに十分な大きさであり得る。本明細書の中で使用される「シリコーンルーメン」とは、任意の所望の流体を外側チャンバ106に送るためのルーメンを指し、シリコーン以外の材料を包含することができることが理解されるべきである。通気口198は、好ましくは、シャフト180を通って延びて、インフレーションスタイラス130の基端で大気に通じる。
【0038】
第二の(またはコントラスト)ルーメン188がインフレーションスタイラス130の基端182からインフレーションスタイラス130の末端184まで延びる。コントラストルーメン188は、インフレーションスタイラス130の基端の外に延びる。好ましくは、コントラストルーメン188は、コントラストルーメン188の末端200の位置をインフレーションスタイラス130の末端184に対して伸ばしたり、引き込んだりし得るよう、インフレーションスタイラス130に対して独立して移動可能である。埋込み前の送出しの場合、コントラストルーメン188はアクセスルーメン138を通って伸びることができ、コントラストルーメン188の末端チップが末端プラグ140の凹み142内に配置されてそれを定位置に保持することができる。コントラストルーメン188は、内側チャンバ108から流体を送り、取り出すために使用することができる。いくつかの態様において、コントラストルーメン188の末端200は、内側チャンバ108から流体をより容易に取り出すことを可能にする形状に予備成形されている。1つの特定の態様において、コントラストルーメン188は、内側チャンバ108の底部へのより容易なアクセスを可能にするカーブした形状に予備成形されている。カーブした形状が、コントラストルーメン188を伸ばし、引き込む能力と合わさって、内側チャンバ108から流体を抜き取るために使用されるときそれを調節することを可能にする。本明細書の中で使用される「コントラストルーメン」は、任意の所望の流体を内側チャンバ108に送るためのルーメンをいうものと理解されるべきであり、造影剤以外の材料をも包含することができる。造影剤は、X線透視検査法のような画像診断法の下で可視性を確保するために使用され得る。
【0039】
図16を参照すると、送出しシース174は、インフレーションスタイラス130のシャフト180に嵌まるようにサイズ設定されたルーメンを含む。インプラント100を送る場合には、インプラント100をインフレーションチップ192上に配置し、組み立てたボディを送出しシース174の末端中に引き込む。プルワイヤ168、170および調節要素172が使用されるならば、それらは、送出しシースのルーメンに通して配置され得る。
【0040】
インプラント製造法
図8〜9を参照すると、インプラント100は、充填可能な内側エンクロージャ104に結合された充填可能な外側エンクロージャ102を含むインプラントブランク150を形成することによって形成し得る。インプラントブランク150は、射出成形または浸漬成形のような従来の製造技術を使用して製造し得る。インプラントブランク150を形成したのち、インプラントブランク150をいくらか転回させて、充填可能な内側エンクロージャ104を充填可能な外側エンクロージャ102の内部に配置する。末端プラグ140を末端ネック120に挿入し、基端プラグ126を基端ネック116に挿入する。1つの適当な製造技術に関するさらなる詳細が、参照により全体として本明細書に組み入れられる、2014年11月4日に出願された「Percutaneous Implantable Nuclear Prosthesis」と題する同時係属出願62/074,295に開示されている。
【0041】
インプラント展開法
図18〜23を参照すると、充填可能なインプラント100は、最小侵襲または経皮的手術を使用して展開させるのに特に適している。
【0042】
充填可能なインプラント100を埋め込むには、椎間板切除術を実施することにより、線維輪202を実質的に無傷のまま残しながら既存の髄核を除去する。好ましくは、椎間板切除術は、カニューレ208を使用して線維輪202中の小さな開口部を通して椎間板腔206にアクセスする、経皮的技術のような最小侵襲手術を使用して実施される。1つの態様において、椎間板腔は、Kambinの三角形を通す後外側到達法を使用してアクセスされる。前方到達法を使用してもよい。線維輪の完全性を可能な限り保存するために、ガイドピン(たとえばKワイヤ)およびガイドピン上に配置された一連の直径が増大する拡張器を線維輪に貫通させることによって線維輪中にアニュロトミーを形成し得る。所望の直径が得られたならば、アクセスカニューレ208を最大直径の上に配置し、拡張器セットを取り外す。この手順が、線維輪の線維帯を広げて、任意の組織を切除(すなわち除去)することなく(それが治癒過程を支援する)アニュロトミーを形成する。または、線維輪をメスで穿刺して垂直方向のスリットを形成して、髄核腔へのアクセスを得てもよい。
【0043】
カニューレ208が所定の位置に配されたならば、医師は、任意の適当な器具(たとえば骨鉗子)を使用して既存の椎間板を除去し得る。医師は、線維輪の周囲を損傷したり、上下の椎体終板を貫通したりすることを避けるべきである。医師は、伸展性のイメージングバルーンを椎間板腔に挿入し、イメージングバルーンを造影剤で膨らませることによって椎間板切除術の進行をモニタし得る。いくつかの態様において、イメージングバルーンは、膨張可能な外側エンクロージャ102を含むが膨張可能な内側エンクロージャを含まない、変形インプラントを含む。イメージングバルーンはまた、最終的なインプラントの体積、形状および配置を予測するためのトライアルインプラントとしても働く。
【0044】
医師が満足するまで既存の髄核が除去されたならば、線維輪202および椎体終板204は実質的に空の除核椎間板腔206を形成する(図18)。
【0045】
送出しシース174中に装填されたインプラント100は、カニューレ208に通して、除核椎間板腔206内に配置される。一般に、インプラントは椎間板腔の遠端に送られる。そして、送出しシース174を抜き取って、除核椎間板腔内でインプラント100を露出させる。
【0046】
任意の環状補強バンドが提供されるならば、調節部材172を操作して、環状補強バンド160の中央ゾーン166を線維輪202の内面に押し当てて実質的に同一平面にする。プルストリング168、170を引っ張って環状補強バンド160の縁162、164を締め付け、インプラント100を受けるためのポケットを形成し得る。調節部材172およびプルストリング168、170は、X線透視検査法での可視化を支援するための放射線不透過性の機構(たとえば白金またはニチノールコーティング)を含んでもよい。
【0047】
いくつかの態様においては、まず、内側チャンバ108を流体で所望のサイズまで充填する。1つの特定の態様においては、実質的に非圧縮性の流体210、たとえば造影剤を使用する。内側チャンバを膨らませる前に、たとえば真空ロックシリンジを使用して、システムから空気をパージすべきである。流体210は、インフレーションスタイラス130のコントラストルーメン188を使用して送られる。内側チャンバ108の膨張圧は、充填可能な内側エンクロージャ104を所望のサイズまで充填するように選択される。
【0048】
インフレーションスタイラス130を使用して硬化性材料212を外側チャンバ106に送る。硬化性材料212は、好ましくは、エラストマー材料、たとえば放射線不透過性材料(たとえば硫酸バリウム)を含有するシリコーンゴムである。通気口が含まれているため、膨らませる前に外側チャンバから空気を抜く必要はない。硬化性材料212は、充填可能な内側および外側エンクロージャ102および104の材料と重合して一体部材を形成するように選択し得る。硬化性材料212の弾性率および他の特性は、患者固有のパラメータに基づいて選択することができる。たとえば、より若く、より活動的な患者は、より動きが少ない高齢患者よりも堅い材料を要することがある。外側チャンバ106が所望の圧力まで充填されたならば、硬化性材料212を硬化させる。いくつかの態様において、硬化性材料は、短時間、たとえば10分未満または5分未満で硬化する硬化性シリコーンを含む。より短い硬化時間の使用は、より長い硬化の媒体で起こり得る、硬化性媒体から充填可能なエンクロージャへの溶媒の溶出を防止するのに役立ち得る。そのような溶媒の浸出は、充填可能なエンクロージャの構造完全性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0049】
硬化性材料212を硬化させたのち、コントラストルーメン188を使用して実質的に非圧縮性の流体210を除去する。先に述べたように、コントラストルーメン188を動かし、操作して、望む量の非圧縮性流体210を除去し得る。実質的にすべての流体210を除去することが好ましいが;いくらの流体が残る可能性が高く、すべての流体を除去する必要はない。
【0050】
流体210が除去され、硬化性材料212が十分に硬化したならば、インフレーションスタイラス130をカニューレ208に通して完全に抜き取り、カニューレ208を取り外すことができる。任意の環状補強バンドが使用されているならば、プルストリング168、170、調節部材172もまた、カニューレ208に通して抜き取る。
【0051】
したがって、インプラント100は、中空の内側チャンバ108を包囲する硬化材料212の環状リングを含む。内側チャンバ108は、流体が出入りすることを可能にするために開いたままであり、それによってショックアブソーバとして機能する。この構造は、椎間板腔に加えられる垂直および水平の負荷応力を、外向きではなく内向きに(図23の方向矢印を参照)、内側チャンバ108の中心へと向け直すことを可能にする。そのうえ、環状補強バンド160が生来の線維輪202の組織内部成長を促進し、それによって生来の線維輪202に補強を提供する。
【0052】
上記詳細な説明および例が例示的な態様の構造および使用の完全な説明を提供する。ある程度の具体性をもって、または1つまたは複数の個々の態様を参照しながら特定の態様を先に説明したが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、開示された態様に対して数多くの変更を加えることができる。そのようなものとして、本装置の様々な例示的態様は、開示された特定の形態に限定されるものとは解釈されない。むしろ、特許請求の範囲に入るすべての改変および代替を含み、示されたもの以外の態様が、示された態様の特徴のいくつかまたはすべてを含んでもよい。たとえば、構成部品が一体構造として組み合わされてもよいし、接続が置き換えられてもよい(たとえば、ねじがプレス嵌めまたは溶接に置き換えられてもよい)。さらに、適切ならば、上記例のいずれかの局面を、記載された他の例のいずれかの局面と組み合わせて、匹敵しうる、または異なる性質を有し、かつ同じまたは異なる問題に対応するさらなる例を形成してもよい。同様に、上記恩典および利点は、1つの態様に関してもよいし、いくつかの態様に関してもよいことが理解されよう。
【0053】
特許請求の範囲は、所与の請求項の中でそれぞれ「〜のための手段」または「〜する工程」を使用して明示的に述べられない限り、ミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの限定を含むことを意図せず、そのように解釈されるべきではない。
図1
図2
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図5
図6
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