(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a.試料入口、および1つまたは複数の反応チャンバを含む試料受け入れカートリッジであって、該1つまたは複数の反応チャンバそれぞれが光学的性質改変試薬を含む、試料受け入れカートリッジ;
b. i.加熱要素と、
ii.該加熱要素に動作的に結合された電源と
を含む基板;および
c.該試料受け入れカートリッジと該基板とを接着的に取り付ける接着層であって、該接着層は、該1つまたは複数の反応チャンバそれぞれの壁を形成する、接着層
を含み、該試料受け入れカートリッジが、1つまたは複数の導管をさらに含み、該1つまたは複数の導管のそれぞれは、該1つまたは複数の反応チャンバそれぞれを該試料入口に流体的に接続する、生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置。
1つまたは複数の反応チャンバそれぞれが、試料受け入れカートリッジの第一の面にある第一の開口と、該試料受け入れカートリッジの第二の面にある第二の開口とを含み、該第一の面が該第二の面とは反対側であり、接着層が、各第二の開口を封止し、前記1つまたは複数の反応チャンバそれぞれが、各第一の開口を封止する選択的通気要素をさらに含む、請求項1または2記載の装置。
光学的性質改変試薬を1つまたは複数の反応チャンバそれぞれに挿入し、該光学的性質改変試薬の機能性を保持しながら該光学的性質改変試薬をその中に貯蔵する工程を含む、請求項23記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
生物学的試料またはその局面の光学的性質を改変するための装置および方法が提供される。本方法は、装置によって反応生成物を生成する工程および反応生成物を反応させて、光学的性質を、改変された光学的性質のたとえばヒトの裸眼による検出を可能にするのに十分なほど改変する工程を含む。
【0019】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明は、記載される特定の態様に限定されないことが理解されよう。理由は、そのような態様が当然、変化することができるからである。また、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書の中で使用される専門用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定的であることを意図したものではないことが理解されよう。
【0020】
数値の範囲が提供される場合、その範囲およびその述べられた範囲内の任意の他の述べられた、または間にある値の上限と下限との間にある各範囲が、文脈が明らかに別段指示しない限り下限の単位の10分の1まで、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、述べられた範囲における任意の具体的に除外された範囲を条件として、より小さい範囲に独立して含まれることができ、本発明に包含される。述べられた範囲が限界の一方または両方を含む場合、そのような含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0021】
特定の範囲は、本明細書中、用語「約」の後に続く数値によって提示されることができる。用語「約」は、本明細書中、その後に続く正確な数の文字的支持ならびにこの用語の後に続く数に近い数またはそれを近似する数を提供するために使用される。数が具体的に記載された数に近いまたはそれを近似するかどうかを決定するとき、近い、または近似するが記載されない数は、それが提示される文脈において、具体的に記載される数の実質的等価物を提供する数であることができる。
【0022】
別段定義されない限り、本明細書の中で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価である任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、以下、典型的な例示的方法および材料が記載される。
【0023】
本明細書の中で引用されるすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照により具体的かつ個別に本明細書に組み入れられることが示されるかのごとく、参照により全体として本明細書に組み入れられ、それらの刊行物が引用されるものと関連する方法および/または材料を開示し、記載するために、参照により本明細書に組み入れられる。任意の刊行物の引用は、出願日よりも前のその開示に関する引用であり、先行発明のせいで本発明がそのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されてはならない。さらに、提供される刊行物の日付は、個別に確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる可能性がある。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲の中で使用される単数形冠詞は、別段明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むということが留意されよう。さらに、特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように起草されることもできることが留意されよう。そのようなものとして、この記述は、請求項要素の記載と関連する「唯一〜」、「〜のみ」などのような排他的文言の使用または「否定的」限定の使用のための先行的基礎として働くことを意図したものである。
【0025】
加えて、開示される装置および/または対応する方法の特定の態様は、本出願に含まれることができる図面によって表されることができる。装置ならびにその特定の空間的特性および/または能力の態様は、図面に示される、または実質的に示されるもの、または図面から妥当に推測可能であるものを含む。そのような特性は、たとえば、面(たとえば断面)もしくは軸(たとえば対称軸)に関する対称性、縁、周囲、表面、特定の配向(たとえば基端;末端)および/または数(たとえば3面;4面)もしくはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数(たとえば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10など)を含む。そのような空間的特性はまた、面(たとえば断面)もしくは軸(たとえば対称軸)に関する対称性、縁、周囲、表面、特定の配向(たとえば基端)および/または数(たとえば3面)もしくはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数(たとえば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10など)の欠如(たとえば特定の非存在)を含む。
【0026】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載され、図示される個々の態様それぞれは、本発明の範囲または精神を逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に切り離される、またはそれと組み合わされることができる別々の部品および特徴を有する。任意の記載される方法は、記載される事象の順序で実施することもできるし、論理的に可能である任意の他の順序で実施することもできる。
【0027】
本発明をさらに説明するにあたり、本装置を実施する中で使用するための本装置をさらに詳細に説明し、次いで関連する方法を考察する。
【0028】
定義
特許請求の範囲および明細書において使用される用語は、別段の指定がない限り、下記に示すように定義される。
【0029】
「比色法」または「比色」という用語は、溶液中の有色化合物の濃度を定量する、または別の方法で観察する技術を指す。「比色検出」とは、溶液中のそのような有色化合物、および/または該化合物の色の変化を検出する任意の方法を指す。方法は、中でも、視覚的観察、吸光度測定、または蛍光測定を含んでもよい。
【0030】
「造塩発色剤」という用語は、いくつかの化学反応時に色を変化させる組成物を指す。特に、造塩発色剤は、pH変化とともに色を変化させる組成物を指すことができる。異なる造塩発色剤は、異なるpH移行範囲にわたって色を変化させることができる。
【0031】
「移行pH範囲」または「pH移行範囲」という用語は、その範囲にわたって特定の試料または化合物の色が変化する、pH範囲を指す。試料についての具体的な移行pH範囲は、試料中の造塩発色剤に依存し得る(上記を参照されたい)。
【0032】
「核酸増幅」または「増幅反応」という用語は、DNA、RNA、またはそれらの改変型を増幅する方法を指す。核酸増幅は、等温反応または熱サイクル反応などの、いくつかの技術を含む。より具体的には、核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ループ介在等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、多置換増幅(MDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、および核酸配列ベース増幅(NASBA)などの方法を含む。「等温増幅」という用語は、増幅反応の温度を変化させることなく行われる増幅法を指す。プロトンが、増幅反応の間、放出される:増幅反応の間、一本鎖DNA鋳型に付加されるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)1個につき、1個のプロトン(H
+)が放出される。
【0033】
「十分量」という用語は、望ましい効果を生じるのに十分な量、例えば、細胞におけるタンパク質凝集を調節するのに十分な量を意味する。
【0034】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における、パーセント「同一性」という用語は、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTPおよびBLASTNまたは当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを用いて、または目視検査によって測定されるような、比較して最大一致のためにアラインメントした際に同じである特定のパーセンテージのヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。用途に応じて、パーセント「同一性」は、比較される配列のある領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在することができるか、あるいは、比較される2つの配列の完全長にわたって存在することができる。
【0035】
配列比較のためには、典型的に1つの配列が、試験配列がそれに対して比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを用いる際には、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合は、部分配列座標を設計して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを設計する。次いで、配列比較アルゴリズムが、設計されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0036】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または目視検査によって実施することができる(一般的に、下記のAusubel et al.を参照されたい)。
【0037】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適しているアルゴリズムの1つの例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に利用可能である。
【0038】
装置
本開示の局面は生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置を含む。本明細書の中で使用される「生物学的試料」とは、対象から採取することができる、一定量の有機物質、たとえば1つまたは複数の有機分子、たとえば1つまたは複数の核酸、たとえばDNAおよび/またはRNAもしくはその部分を含有する試料である。そのようなものとして、「生物学的試料アッセイ」とは、試料の1つまたは複数の特性を評価するために実施される、生物学的試料に対する試験である。いくつかの局面において、生物学的試料は、本態様にしたがって増幅することができる1つまたは複数の核酸またはその部分を含む試料である、核酸増幅試料である。
【0039】
生物学的試料は、対象から採取することができ、かつ1つまたは複数の細胞、たとえば対象の組織細胞を含むことができる。本明細書の中で使用される用語「組織」とは、類似した機能および構造を有する対象(たとえば生物、たとえばヒトのような哺乳動物)中の細胞の1つまたは複数の集合体またはそのような集合体の複数の異なるタイプをいう。組織は、たとえば、器官組織、筋組織(たとえば心筋;平滑筋および/または骨格筋)、結合組織、神経組織および/または上皮組織を含むことができる。いくつかの変形態様において、組織は、対象の頬の内側からの細胞および/または対象の唾液中の細胞を含むことができる。
【0040】
上記のように、生物学的試料は対象から採取することができる。特定の態様において、対象は「哺乳動物」または「哺乳類」対象であり、これらの用語は、哺乳類に入る生物、たとえば肉食目(たとえばイヌおよびネコ)、げっ歯目(たとえばマウス、モルモットおよびラット)および霊長目(たとえばヒト、チンパンジーおよびサル)を指すために広義に使用される。いくつかの態様において、対象はヒトである。用語「ヒト」は、任意の発育段階(たとえば胎児、新生児、乳児、若年、青年および成人)にある両方の性のヒト対象を含むことができ、特定の態様において、ヒト対象は若年、青年または成人である。本明細書に記載される装置および方法は、ヒト対象に関して適用することができるが、本装置および方法はまた、他の対象、すなわち「非ヒト対象」に関して適用することもできるということが理解されよう。
【0041】
本明細書において参照されるように、生物学的試料は、いくつかの変形態様において、調製された生物学的試料であることができる。調製された生物学的アッセイ試料とは、たとえば試料を調製溶液、たとえば溶解物質、たとえば界面活性剤を含む溶液に暴露することによって処理された生物学的アッセイ試料である。したがって、いくつかの態様において、生物学的試料は溶解産物である。そのような調製は、調製された生物学的試料が、たとえば増幅組成物および/または光学的性質改変試薬に暴露されたとき、それと反応することを可能にする。暴露は、調製溶液の溶解物質によって試料の細胞を溶解させること、および/またはそれから核酸を抽出することを含むことができる。そのような抽出された核酸は、得られる調製された試料溶液中に放出されることができる。いくつかの態様においては、生物学的試料からゲノムデオキシリボ核酸(DNA)を抽出する工程が含まれる。望むならば、調製された溶液は核酸増幅調製溶液であり、溶液への暴露が、増幅、たとえば等温増幅のために試料の核酸を調製する。
【0042】
また、本明細書の中で使用される語句「光学的性質」とは、1つまたは複数の光学的に認識可能な特性、たとえば局面から放出される放射線、たとえば光の波長および/または周波数から生じる特性、たとえば色、蛍光、リン光などをいう。そのようなものとして、光学的性質を改変するとは、そのような特性を変化させることをいう。
【0043】
本方法を実施する際に使用するための生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置の態様が
図1に提供されている。様々な態様において、装置100は、生物学的試料を受け入れるための、光学的性質改変試薬をそれぞれが含む1つまたは複数の反応チャンバ102を含む試料受け入れカートリッジ101を含む。そのような装置100はまた、加熱要素104および/または加熱要素104に動作的に結合された電源105を含む基板103を含むことができる。
【0044】
本明細書の中で使用される「動作的に結合」、「動作的に接続」および「動作的に取り付け」とは、本明細書に記載されるやり方で効率的に、開示された装置が作動する、および/または方法が実行されることを可能にする特定の方法で接続されていることをいう。たとえば、動作的に結合することは、2つ以上の局面を取り外し可能に結合または固定的に結合することを含むことができる。動作的に結合することはまた、2つ以上の部品を流体的および/または電気的および/または嵌合的および/または接着的に結合することを含むことができる。また、本明細書の中で使用される「取り外し可能に結合」とは、たとえば、2つ以上の部品を切り離したのち、繰り返し再結合することができるやり方で物理的および/または流体的および/または電気的に結合されていることをいう。
【0045】
図1に提供されるように、装置100はまた、接着層106を含む。そのような層106は、試料受け入れカートリッジ101と基板103とを動作的に接続し、それにより、1つまたは複数の反応チャンバ102それぞれの壁を形成することができる。装置100はまた、同じく1つまたは複数の反応チャンバ102それぞれの壁を形成する選択的通気要素107を含む。また、
図1に提供されるように、装置は、レセプタクル111を含む第一の部分108と、第一の部分と嵌合可能な第二の部分109とで構成されて、試料受け入れカートリッジ101、基板103および接着層106を封入するハウジングを含む。そのような構成において、試料受け入れカートリッジ101、基板103および接着層106はすべて、少なくとも2つの対向する部分、たとえば第一の部分108の壁と壁との間に配置されることができる。
【0046】
図1に提供される態様は、例示のためにアセンブルされていない形態で示されている一方、装置の典型的な態様が
図2に提供されている。
図2は、具体的に、アセンブルされた形態にある、
図1と同じ要素の多くの典型的な例示を提供する。
図2はまた具体的に、1つまたは複数の反応チャンバ102それぞれ内の光学的性質改変試薬201を示す。また、1つまたは複数の反応チャンバ102それぞれを互いおよび/または試料入口110と動作的に結合する導管202が示されている。
【0047】
様々な態様において、試料受け入れカートリッジは、1つまたは複数、たとえば複数、たとえば2つ以上、たとえば5つ以上、たとえば10以上、たとえば15以上、たとえば20以上、たとえば50以上の反応チャンバを含むことができる。試料受け入れカートリッジは、50以下、たとえば20以下、たとえば15以下、たとえば10以下、たとえば5以下の反応チャンバを含むことができる。試料受け入れカートリッジは、1〜25、たとえば1〜20、たとえば1〜15、たとえば1〜10、たとえば1〜5の反応チャンバ、または2〜20、たとえば2〜15、たとえば5〜15の反応チャンバを含むことができる(各範囲は記載の数字を含む)。本明細書の中で使用される「記載の数字を含む」は、挙げられた各数値そのものを含む提供された範囲をいう。本明細書の中で別段記されない限り、提供される全ての範囲は挙げられた各数値そのものを含む。試料受け入れカートリッジは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20またはそれ以上の反応チャンバを含むことができる。
【0048】
各反応チャンバは、円柱、長方形の箱、立方体またはそれらの任意の組み合わせとして成形されることができる。例えば、各反応チャンバは、試料受け入れカートリッジの第一の面の第一の開口からカートリッジを通って試料受け入れカートリッジの第一の面とは反対側の第二の面の第二の開口まで延びることができる。また、本明細書に記載されるように、各開口は、それぞれが反応チャンバの壁を形成する部品、たとえば接着層および/または選択的通気要素の一部分、たとえば表面によって封止されることができる。たとえば、接着層が第一端で反応チャンバの壁を形成することができる、および/または、選択的通気要素が、第一端とは反対側の第二端で反応チャンバの壁を形成することができる。その際、接着層が各第二の開口を封止することができる、および/または、選択的通気要素が各第一の開口を封止することができる。
【0049】
各反応チャンバはまた、マイクロ流体反応チャンバであることができる。本反応チャンバはそれぞれ、1μL〜1000μL、たとえば1μL〜100μL、たとえば1μL〜50μL、たとえば10μL〜30μL、たとえば15μL〜30μLまたは50μL以下または30μL以下の容積を有することができる。そのようなものとして、各反応チャンバは、提供される容積のいずれか以下の体積を有する、固体および/または液体媒質を含む内容物、たとえば生物学的試料および/または光学的性質改変試薬をその中に受け入れるように構成されている。
【0050】
様々な態様において、各反応チャンバは、1つまたは複数の光学的性質改変試薬を含む、たとえばチャンバ内に収容することができる。そのような光学的性質改変試薬は、例えば、pH感受性色素、蛍光色素、FRET色素、ミクロおよびナノ粒子、蛍光タンパク質、比色基質、酵素および試薬、プラズモン構造、沈降試薬および基質またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0051】
いくつかの変形態様において、光学的性質改変試薬は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)試薬である、またはそれを含む。いくつかの局面において、ELISA試薬は、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、BCIP/NBT(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム)、TMB(3,3',5,5'テトラメチルベンジジン)、DAB(3,3',4,4'ジアミノベンジジン)、4CN(4-クロロ-1-ナフトール)、TMB(二重機能基質)、ABTS(2,2'-アジノ-ジ[3-エチルベンズチアゾリン]スルホネート)、OPD(o-フェニレンジアミン)、MUG(4-メチルウンベリフェリルガラクトシド)、HPA(ヒドロキシフェニル酢酸)およびHPPA(3-p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸)からなる群から選択される。
【0052】
また、いくつかの変形態様において、光学的性質改変試薬は、乾燥、たとえば凍結乾燥形態で試料受け入れカートリッジに貯蔵されることができる。そのようなものとして、生物学的試料、たとえば流体生物学的試料を反応チャンバに入れることは、生物学的試料と光学的性質改変試薬とを混合すること、および/または光学的性質改変試薬を水和させることを含むことができる。いくつかの態様にしたがって、生物学的試料またはその1つまたは複数の局面、たとえば1つまたは複数の増幅された核酸および/またはプロトンが光学的性質改変試薬に暴露されると、光学的性質改変試薬の光学的性質は、生物学的試料中の特定のマーカの存在または非存在によって変化する。
【0053】
いくつかの変形態様において、光学的性質の改変を実施する工程は、反応を実施することによって反応チャンバ内容物のpHを変化させる工程を含む。光学的性質改変試薬は、そのようなpH変化の位置および程度に基づいて改変を生じさせることができる。
【0054】
いくつかの例において、各反応チャンバは、1つまたは複数の核酸増幅組成物を含む、たとえばチャンバ内に収容することができる。そのような核酸増幅組成物は、たとえば、1つまたは複数のプライマー、デオキシヌクレオチド(dNTP)および/またはポリメラーゼ、Trizmaプレセットクリスタル(Tris緩衝液、pH8.8;Sigma、カタログ番号T9443)、塩化カリウム(KCl;Wako Pure Chemicals、カタログ番号163-03545)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO
4;Wako Pure Chemicals、カタログ番号137-00402)、硫酸アンモニウム((NH
4)
2SO
4;Kanto Chemical、カタログ番号01322-00)、Tween 20(Tokyo Chemical Industry、カタログ番号T0543)、ベタイン溶液(Betaine、5M;Sigma、カタログ番号B0300)、カルセイン(DOJINDO、カタログ番号340-00433)および上述した他すべての光学改変試薬、塩化マンガン(II)四水和物(MnCl
2;Wako Pure Chemicals、カタログ番号133-00725)、アガロースS、EtBr溶液、鋳型核酸またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。加えて、いくつかの変形態様において、核酸増幅組成物は、乾燥、たとえば凍結乾燥形態で試料受け入れカートリッジに貯蔵されることができる。そのようなものとして、生物学的試料、たとえば流体生物学的試料を反応チャンバに入れることは、生物学的試料と核酸増幅組成物とを混合すること、および/または核酸増幅組成物を水和させることを含むことができる。
【0055】
本開示のいくつかの変形態様において、核酸増幅組成物は1つまたは複数の緩衝液および/または水を含むことができる。核酸増幅組成物とは、生物学的試料を、その1つまたは複数の核酸を増幅、たとえば等温増幅することができるように調製する溶液である。
【0056】
核酸増幅組成物は、転写介在増幅法、ストランド置換増幅法、核酸シーケンス増幅法、ローリングサークル増幅法、ループ介在等温増幅法、等温多置換増幅法、ヘリカーゼ依存増幅法、サーキュラーヘリカーゼ依存増幅法、シングルプライマー等温増幅法、ループ介在増幅法またはそれらの任意の組み合わせを含む等温増幅プロトコルによる増幅のために生物学的試料を調製する試薬であることができる。
【0057】
様々な態様において、本態様の増幅はリバーストランスクリプターゼループ介在増幅(RT-LAMP)である。様々な局面において、RT-LAMPは、反応を一定の温度、たとえば63℃で、1タイプの酵素、たとえばBstポリメラーゼにより、単一工程で処理することができる等温遺伝子増幅処置である。RT-LAMPは、様々な局面において、標的核酸上の8つの領域を認識する6つのプライマーを使用する。様々な態様において、RT-LAMP技術の感度および特異度は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の実施に関連する感度および特異度よりも高い。また、RT-LAMP法は高速であり、数コピーのRNAから60分以下、45分以下、30分以下または15分以下でシグナルを生成する。また、RT-LAMPは特殊な試薬を必要としない。また、本態様にしたがって、本態様の「検出」は、試料中の1つまたは複数の局面、たとえば特定の病原性遺伝子マーカの検出である。本態様の増幅はまた、PCRを適用することによって実施することもできる。
【0058】
また、上記の通り、いくつかの変形態様において、試料受け入れカートリッジはまた、1つまたは複数の反応チャンバのそれぞれまたは任意の組み合わせを互いおよび/または試料入口と動作的、たとえば流体的に接続する1つまたは複数の導管を含む。1つまたは複数の導管それぞれは、円柱または四角柱として成形されることができ、10m以下、たとえば1m以下、たとえば10cm以下、たとえば1mm以下の長さを含む寸法を有することができる、および/または、100mm以下、たとえば10mm以下、たとえば1mm以下、たとえば0.1mm以下、たとえば10マイクロメートル以下の直径、幅および/または高さを有することができる。1つまたは複数の導管それぞれはまた、1000μL以下、たとえば10μL以下、たとえば1μL以下、たとえば0.1μL以下、たとえば1nL以下の容積を有することができる。1つの反応チャンバから別の反応チャンバへの液体またはその成分の移動、たとえば拡散は、導管の長さのせいで導管によって実質的に阻止される。したがって、各反応チャンバは互いから切り離され、アッセイの持続期間中のそのような移動の量は、アッセイ結果への影響においては無視しうる程度である。
【0059】
加えて、望ましい場合、試料受け入れカートリッジはまた、1つまたは複数の試薬チャンバのそれぞれまたは任意の組み合わせを互いおよび/または装置に対して外部の環境と動作的に、たとえば流体的に接続する1つまたは複数の入口を含む。1つまたは複数の入口それぞれは、マイクロ流体カートリッジの表面からカートリッジを通過して延びる管として成形されることができる。入口の第一端がカートリッジの表面からハウジング中の開口まで延び、流体、たとえば生物学的試料をその中に受け入れるように構成されることができる。入口の第一端とは反対側の第二端または複数の第二端は、それぞれ、反応チャンバで終端し、流体、たとえば生物学的試料をチャンバに運ぶように構成されることができる。また、入口の第一端とは反対側の第二端または複数の第二端は、それぞれ、本明細書に記載されるように、導管で終端することができる。入口もまた、マイクロ流体的であることができ、流体が、第一端に導入されると、その中を通って自動的に流れるように構成されることができる。入口は、1μm〜10cmの範囲である直径を有することができ、また、1pL〜1mLの容積を有することができる。さらに、いくつかの変形態様において、入口は、1つまたは複数の往復コネクタ、たとえば流体コネクタ、たとえばルアーコネクタ、たとえば試料調製装置の1つまたは複数のコネクタに動作的に接続するための1つまたは複数のコネクタ、たとえば流体コネクタ、たとえばルアーコネクタをたとえば端部に含むことができる。
【0060】
また、様々な態様において、試料受け入れカートリッジまたはその一部分、たとえば基板は、たとえばポリマー材料(たとえば、プラスチックおよび/またはゴムを含む1つまたは複数のポリマーを有する材料)および/または金属材料を含む1つまたは複数の材料で構成される。本明細書に記載される試料受け入れカートリッジまたはその部分を含む装置部品のいずれかを構成することができる材料は、ポリマー材料、たとえばプラスチック、たとえばポリテトラフルオロエテンまたは発泡ポリテトラフルオロエチレン(e-PFTE)を含むポリテトラフルオロエチレン(PFTE)、ポリエチレン、ポリエステル(Dacron(商標))、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、1つまたは複数のアクリル接着剤、シリコーン接着剤、エポキシ接着剤、またはこれらの任意の組み合わせなど、金属および金属合金、たとえばチタン、クロム、アルミニウム、ステンレス鋼などを含むが、これらに限定されない。様々な態様において、材料は透明な材料であり、そのようなものとして、可視スペクトル内の光がそれを効率的に透過することを許す。
【0061】
さらに、様々な例において、試料受け入れカートリッジまたはその一部分は、光、たとえば可視光に対して透過性である。そのようなものとして、ユーザは、試料受け入れカートリッジを通して試料またはその局面の光学的性質の改変を観察することができる。また、いくつかの変形態様において、試料受け入れカートリッジまたはその一部分は不透明および/または白色である。
【0062】
いくつかの変形態様によると、本装置は基板を含む。基板は、いくつかの例において、たとえばその中またはその上のケイ素および/または銅および/または金および/またはアルミニウムコンタクトの層で構成された回路基板、たとえばプリント回路基板であることができる。基板は、たとえば、1つまたは複数の接着剤、たとえばエポキシによってそれに固着された金属コンタクトをその上に有する層、たとえばケイ素層で構成されたプリント回路基板であることができる。本発明の基板はまた、5μm以上、たとえば10μm以上、たとえば20μm以上、たとえば50μm以上の粗さ(Ra)を有する1つまたは複数の面、たとえば第一の面および第一の面とは反対側の第二の面を有することができる。基板はまた、50μm以下、たとえば20μm以下、たとえば10μm以下、たとえば5μm以下の粗さ(Ra)を有することができる。
【0063】
様々な例において、基板は1つまたは複数の光学的性質改変物質を含むことができ、そのようなものとして、その光学的性質の1つ、たとえば色を改変するように構成されることができる。そのようなものとして、方法は、基板の1つまたは複数の光学的性質を改変する工程を含む。いくつかの局面において、基板は、色変化を提供することができる1つまたは複数の酵素、たとえば比色酵素を含んでもよい。そのようなものとして、光学的性質を改変する工程は、基板の色および/または不透明度を変化させる工程を含むことができる。
【0064】
望ましいならば、基板は1つまたは複数の加熱要素を含むことができる。加熱要素とは、熱エネルギーを生成するように構成されている要素および/または1つまたは複数の反応体であり、かつ1つまたは複数の反応チャンバおよびその内容物、たとえば生物学的試料および/または光学的性質改変試薬および/または核酸増幅組成物を加熱するように構成されることができる。そのような加熱要素の例は、熱電加熱要素、たとえば抵抗性導体を含む熱電加熱要素、たとえばサーミスタ、ペルチェ素子または熱を発生させる他の要素を含む。
【0065】
いくつかの局面において、加熱要素は、互いにまたは本明細書に記載される組成物および/または試薬の1つまたは複数、たとえば水に暴露されると発熱反応を生じさせる1つまたは複数の発熱性反応体、たとえば液体反応体である、またはそれを含む。また、いくつかの態様において、方法は、本明細書に開示される装置の内容物、たとえば生物学的試料を含む内容物に、混合されると発熱反応を生じさせる1つまたは複数の加熱試薬を加える工程を含む。そのような反応は、たとえば、試料を加熱して溶解させる、または本明細書に記載されるような比色変化を生じさせることができる。発熱反応は熱および/または気体を発生させることができる。発熱反応は、封入および/または非封入酸化物、たとえば酸化カルシウムおよび/または酸化マグネシウムおよび脱水および/または水和ゼオライトまたはそれらの任意の組み合わせで構成された混合物の水和を含むことができる。そのようなプロセスは、クエン酸または複合発熱混合物、たとえばCaoおよびMg―Feのような化合物による混合物のpHの制御と結合させることができる。変調は、封入された反応体からの徐放を含むことができ、調整されたサイズ分布および様々な焼け特性を有する粒子を含むことができる。相変化材料(PCM)を使用して反応の熱安定性を制御することができる。PCMは、たとえば、有機物(パラフィン類、ノンパラフィン類、脂肪酸)および無機物(塩水和物)を含む。発熱反応に適用される試薬または他の気体生成試薬はまた、本明細書に開示される装置のチャンバ、たとえば封止されたチャンバの1つまたは複数の内側で気体を発生させ、それにより、1つまたは複数の容器中の圧力を高めるために適用され得る。
【0066】
加熱要素は、反応チャンバおよび/またはその内容物、たとえば生物学的試料の温度を1℃以上、5℃以上、10℃以上、15℃以上、25℃以上、50℃以上または100℃以上、上昇させるように構成されることができる。そのような要素は、反応チャンバおよび/またはその内容物の温度を、10分以内、たとえば5分以内、たとえば3分以内、たとえば2分以内に室温、たとえば21℃から、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃または67℃および/または50〜75℃、たとえば60〜70℃、たとえば60〜66℃の範囲まで上げるように構成されることができる。たとえば、加熱要素は、反応チャンバおよび/またはその内容物の温度を3分以内に63℃±1℃まで上げるように構成されることができる、および/または、そのような温度を30分以上維持するように構成されることができる。加熱要素はまた、反応チャンバおよび/またはその内容物の温度を一定期間、たとえば2時間以上または2時間以下、たとえば1時間以下、たとえば30分以下、たとえば15分以下、維持するように構成されることもできる。そのような温度は、たとえば59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃または67℃および/または50〜75℃、たとえば60〜70℃、たとえば60〜66℃の範囲で維持されることができる。そのような温度の維持は、加熱感知要素としてサーミスタを適用することによって実施することができる、および/または、制御ユニットへのセンサフィードバックに基づくことができる。加熱要素は、反応チャンバおよび/またはその内容物の温度を繰り返し上昇させる、たとえば内容物を一度加熱し、次いで再度加熱するように構成されることができる。本加熱要素はまた、光学的性質の改変および/または核酸増幅が起こるように反応チャンバの内容物を加熱することができる。さらに、本加熱要素はまた、増幅反応、たとえばPCRのための熱サイクリングを実施するために内容物を加熱することができる。
【0067】
いくつかの例では、本基板は1つまたは複数の電源を含むことができる。電源は、1つまたは複数の加熱要素に動作的に接続されることができる。本明細書の中で使用される「電源」とは、電気負荷に電力を供給する装置を意味する。そのようなものとして、いくつかの局面において、電源は、たとえば、1つまたは複数の電池、直流(DC)電源、交流(AC)電源、線形調整電源、スイッチモード電源、プログラマブル電源、無停電電源、高圧電源および/または電圧増倍器を含むことができる。電源によって提供されることができる電力、電流および/または電圧の量は、たとえば、本態様にしたがって加熱要素を駆動して熱を発生させる、および/または本明細書に記載される他の要素、たとえば1つまたは複数の制御装置を駆動して、それらの記載された機能を提供するため必要な量に等しい量であることができる。電源は、いくつかの局面において、1つまたは複数の電池、たとえばポータブルおよび/または内蔵および/または交換可能な電池、たとえば1つまたは2つのAA電池、アウトレットまたは別の電力供給源であることができる。いくつかの局面において、電源は、1つまたは複数の電気コード、たとえば装置をアウトレットに動作的に接続するように構成されたコードを含むことができる。電源のコードは、装置および/またはアウトレットに取り外し可能に接続するように構成されることができる。
【0068】
電源の態様は、オンに切り換えられると別の部品に電力を提供する、および/またはオフに切り換えられると別の部品への電力の提供を止めるように構成された電源を含む。そのような電源は、たとえば、電源に動作的に接続された、または電源に含まれるスイッチ、ボタン、タイマまたは他の部品、たとえば制御ユニットの操作によってオンおよび/またはオフに切り換えられるように構成されることができる。
【0069】
本明細書に記載のように、電源は、特定の局面において、開示されたシステムの1つまたは複数の部品、たとえば制御ユニットに動作的に接続されることができる。そのようなものとして、電源の態様は、電源から開示されたシステムの部品への電気接続を含む。そのような電気接続は、1本または複数本の導電性材料、たとえばコンタクト、トレースおよび/またはワイヤを含むことができる。
【0070】
望ましいならば、基板は、1つまたは複数の制御ユニット、たとえば中央処理ユニット(CPU)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むことができる。そのようなユニットは、1つまたは複数のセットの入力、たとえばユーザおよび/またはセンサおよび/またはタイマからの入力および/またはメモリに記憶された命令に基づいて1つまたは複数の出力、たとえば電気信号を生成するように構成されたメモリおよび/またはプロセッサ、たとえばマイクロプロセッサを含むことができる。装置はまた、入力を受けるための、制御ユニットに動作的に結合されたユーザインターフェースを含むことができる。
【0071】
いくつかの変形態様において、制御ユニットは、1つまたは複数の反応チャンバ中の生物学的試料の光学的性質改変および/または比色分析を実行するように構成されている。そのようなものとして、制御ユニットは、1つまたは複数のセンサからの入力に基づいて、反応チャンバの1つまたは複数の内容物の光学的性質、たとえば色の変化が起こったかどうかを決定するように構成されることができる。制御装置は、その決定に基づいて、変化が起こったかどうかをユーザに反映する出力、たとえばユーザへの出力をディスプレイを介して生成するように構成されることができる。
【0072】
また、いくつかの例において、基板は、反応チャンバの1つまたは複数中の液体、たとえば生物学的試料の存在および/または非存在を検出するように構成された1つまたは複数のセンサ、たとえば複数のセンサを含むことができる。いくつかの例において、センサは、制御ユニットに動作的に接続され、検出された試料の存在および/または非存在に基づいてそれに入力を送出する。たとえば、制御ユニットは、反応チャンバ中の生物学的試料の存在を示すセンサからの入力が受信されたとき、接着層を介して熱エネルギーを反応チャンバに送ることによって1つまたは複数の反応チャンバ中の内容物、たとえば生物学的試料を加熱するための装置の加熱要素をアクティブ化する出力を生成することができる。いくつかの変形態様において、1つまたは複数のセンサは、反応チャンバの内容物、たとえば生物学的試料から放出される光の光学的性質、たとえば光の波長、たとえば色および/または光学的性質、たとえば光の波長の変化を検出するように構成されることができる。
【0073】
様々な局面において、本態様の基板は、光を放出するように構成された1つまたは複数の光源を含む。そのような光源は、センサが1つまたは複数の反応チャンバ中の液体、たとえば生物学的試料を検出したときに光源が光を放出するように、1つまたは複数のセンサおよび/または制御ユニットに動作的に結合されることができる。そのような光源はまた、1つまたは複数の反応チャンバ中で光学的性質改変が起こる、または起こらないとき光源が光を放出するように、1つまたは複数のセンサおよび/または制御ユニットに動作的に結合されることもできる。本態様の光源はまた、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)を含むことができる。
【0074】
また、いくつかの変形態様において、本装置は、1つまたは複数の出力、たとえば反応結果および/または状態をユーザに表示するための1つまたは複数のディスプレイを含む。いくつかの変形態様において、装置はまた、入力を受けるための、制御ユニットに動作的に結合されたインターフェースを含む。
【0075】
開示される装置はまた、ワイヤレス信号送信器および/またはワイヤレス信号受信器を含むことができる。ワイヤレス信号送信器は、制御ユニットに動作的に結合されることができ、信号、たとえばオーディオ信号を、制御ユニットから、たとえば、1つまたは複数の他の装置、たとえば第二の中央処理ユニットおよび/または試料分析装置に結合されたワイヤレス受信器(それはモバイル装置、たとえば携帯電話であることができる)に送信するように構成されることができる。ワイヤレス信号受信器は、信号を受信し、制御ユニットによる処理のためにそれを送信するように構成されることができる。
【0076】
いくつかの変形態様において、本装置はハウジングを含む。そのようなハウジングは、第一の部分と、第一の部分と動作的に結合可能、たとえば嵌合可能、たとえばスナップ式に結合可能な第二の部分とを含み、受け入れカートリッジ、基板および接着層を封入することができる。いくつかの変形態様において、第二の部分は実質的に平坦であり、第一の部分は、縁によって分けられた5つの壁で構成され、装置の1つまたは複数の他の部品を、たとえば部品をその少なくとも2つの部分、たとえば対向する壁と壁との間に保持することにより、収容する、たとえば完全に収容するように構成されている。いくつかの変形態様において、第二の部分はハウジングの底面を構成し、ハウジングは、底面とは反対側のハウジングの上面に入口開口を含む。
【0077】
本装置のハウジングは、本明細書に記載されるような材料、たとえばポリマー材料の1つまたは複数の層で構成されることができ、実質的に長方形の箱として成形されることができる。ハウジングは、試料受け入れカートリッジの入口へのアクセス、たとえば流体アクセスを提供する1つまたは複数の入口開口を含むことができ、それを通じて生物学的試料をカートリッジに装填することができるようになっている。いくつかの変形態様において、そのような開口は装置の上面にある、および/または第一の部分にある。
【0078】
いくつかの態様にしたがって、本装置およびその部品、たとえばハウジングはハンドヘルド型装置および部品である。本明細書の中で使用される語「ハンドヘルド型」とは、手、たとえば哺乳動物の手、たとえばヒトの手、たとえば平均的体格および/または体力の成人男性または女性の手の中に保持される(たとえば保定される、または容易または快適に保持される)局面の特徴的な能力をいう。そのようなものとして、ハンドヘルド型局面は、ヒトの手の中に保定される(たとえば容易または快適に保定される)ようにサイズ設定および/または成形されている局面である。ハンドヘルド型局面はまた、ヒト(たとえばヒトの片手または両手)によって動かす(たとえば容易に動かす、たとえば垂直方向および/または水平方向に容易に動かす)ことができる局面であることができる。
【0079】
いくつかの態様において、ハウジングは、前記部品のいずれかをその中に収容するのに十分な外容積または内容積を有する、および/またはそれを画定する。ハウジングは、たとえば1cm
3〜500cm
3、たとえば10cm
3〜200cm
3、たとえば50cm
3〜150cm
3の容積を有することができる。いくつかの例において、ハウジングはまた、1cm
3以上、たとえば50cm
3以上、たとえば100cm
3以上、たとえば200cm
3以上、たとえば300cm
3以上、たとえば500cm
3以上の容積を有することができる。ハウジングはまた、500cm
3以下、たとえば300cm
3以下、たとえば200cm
3以下、たとえば100cm
3以下、たとえば50cm
3以下、たとえば10cm
3以下の容積を有することができる。
【0080】
いくつかの局面において、本装置は、試料受け入れカートリッジと基板とを動作的に接続する1つまたは複数の接着層を含む。たとえば
図2に示すように、そのような層はまた、1つまたは複数の反応チャンバそれぞれの壁を形成することができる。壁を形成する際、接着層は、反応チャンバの端部の開口を封止する、および/またはその上に延びることができる。このように、接着層および/またはその一部分、たとえばシートおよび/または接着剤が、反応チャンバの端部を画定する、および/または、1つまたは複数の固体および/または流体媒質、たとえば生物学的試料および/または光学的性質改変試薬および/または核酸増幅組成物を反応チャンバ内に封止可能に収容することができる。様々な態様において、接着層は、接着層がカートリッジの1つまたは複数の反応チャンバの1つまたは複数の開口、たとえば端部の開口を流体的に封止するように、試料受け入れカートリッジに動作的に結合されることができる。
【0081】
本態様による接着層は、薄い、および/または平面形状を有する1つまたは複数の材料、たとえば2つの材料のシート、たとえば固いシートであることができ、またはそれを含むことができる。本装置の接着層または他の部品は上面および底面を含むことができ、そのそれぞれが他方と平行な平面を画定し、厚さによって分けられている。様々な態様において、シートは、単一材料の均一な層である、またはそれを含む。接着層はまた、互いに貼り合わされた2つ以上、たとえば3つ、4つ、5つまたはそれ以上などのシートで構成されることができる。いくつかの変形態様において、接着層はアクリル系接着剤ラミネートである。
【0082】
様々な態様において、接着層は、完全に接着剤で構成されることができる、または、接着剤、たとえば接着剤のコーティングおよび/または層を第一の面および/または一方または他方の面、たとえば第一の面とは反対側の第二の面に有することができる。そのような接着剤はアクリル系接着剤であることができる。したがって、接着層は、1つまたは複数のシート、たとえば貼り合わせシートを含むことができ、その上面および/または下面に接着剤を有することができる。接着剤の1つの層が接着層を基板と動作的に接続することができる、および/または、接着剤のもう1つの層が接着層を試料受け入れカートリッジと動作的に接続することができる。
【0083】
いくつかの局面において、シートは、長さ、幅および高さ(厚さとも呼ばれる)を有することができる。シートは、幅および長さが厚さよりも実質的に大きい長方形の箱として成形されることができる。接着層および/またはシートの厚さ、たとえば第一の面と、第一の面とは反対側の第二の面との間の厚さは、5mm以下、3mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.1mm以下または50ミクロン以下であることができる。接着層および/またはそのシートの厚さはまた、たとえば、5mm〜50ミクロン、たとえば3mm〜0.1mm、たとえば1mm〜0.1mmの範囲であることができる。また、接着層および/またはシートの長さおよび/または幅は、1mm〜2m、たとえば1cm〜1m、たとえば1cm〜10cm、たとえば1cm〜5cmの範囲であることができる。
【0084】
接着層は、円形、半円形、楕円形、長方形、正方形、三角形、多角形、四辺形またはそれらの組み合わせを含む任意の適当なサイズまたは形状を画定する区域であることができ、および/またはそれを有することができる。たとえば、接着層が長方形である態様において、接着層の長さは幅よりも大きい。接着層は、固く均一な一体化材料の1つまたは複数のシートを含むことができ、いくつかの変形態様において、それを通過する開口を含まない。
【0085】
接着層および/またはそのシートは、接着層の区域を画定する3つの縁、4つの縁または4つよりも多い縁を有することができる。様々な態様において、縁は角部、たとえば3つ、4つ、5つもしくは10またはそれ以上の角部で突き合う。いくつかの変形態様において、接着層の第一の縁は、接着層の第二の縁とは反対側であり、接着層の第三および/または第四の縁に隣接する。そのような態様において、第三の縁は第四の縁とは反対側であることができ、第四の縁は第一および/または第二の縁に隣接することができる。
【0086】
本態様によると、接着層は、それぞれ多様な材料で構成されることができ、同じまたは異なる材料で構成されることができる。試料受け入れモジュールおよび/またはそのキャップもしくは部分は、ポリマー材料、たとえば、たとえばプラスチックおよび/またはゴムを含む1つまたは複数のポリマーを有する材料で構成されることができる。そのような材料は、可撓性および/または高い強度(たとえば耐摩耗性)および/または高い耐疲労性(たとえば、使用量または環境にかかわらず、その物理的性質を長期間保持することができる)の特性を有することができる。本明細書に記載される接着層またはその部分を構成することができる関心対象の材料は、ポリマー材料、たとえばプラスチック、たとえばポリテトラフルオロエテンまたは発泡ポリテトラフルオロエチレン(e-PFTE)を含むポリテトラフルオロエチレン(PFTE)、ポリエステル(Dacron(商標))、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリウレタン、1つまたは複数のアクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。前記のように、そのような材料それぞれは、接着剤、たとえばアクリル系接着剤のコーティングまたは層をその1つまたは複数の面に含むことができる。
【0087】
さらに、様々な例において、接着層またはその部分、たとえば第一および/または第二の貼り合わせ層は酸を含まない。また、いくつかの変形態様において、接着層またはその一部分、たとえば第一および/または第二の貼り合わせ層は不透明および/または白色である。接着層またはその一部分が白色である場合、白い層は、1つまたは複数の反応チャンバの目視検査の均一な背景を提供する。いくつかの変形態様において、層、たとえば第一の層および/または第二の層および/または接着層は不透明である、および/または反応開始色に対する補色、たとえば赤、オレンジ、黄、緑、青、インディゴ、紫、黒、金、銀、茶またはそれらの任意の組み合わせである。反応開始色とは、反応が起こって光学的性質改変試薬の光学的性質を、改変された光学的性質の検出を可能にするのに十分なほど改変する前の、反応生成物および/または光学的性質改変試薬の色である。反応開始色に対する補色は、たとえば改変された光学的性質の検出をヒトの裸眼で実施し得るような、反応チャンバの十分な色対比、たとえば単一色に対する増大した色対比を提供し得る。
【0088】
様々な例において、接着層またはその一部分は、光、たとえば可視光に対して透過性である。他の変形態様において、接着層またはその一部分は、光、たとえば可視光に対して反射性、たとえば完全または実質的に反射性である。また、本明細書に記載されるように、接着層は、第二の層と貼り合わされた第一の層を含むことができる。そのような態様において、たとえば、第一の層は酸を含まない、および/または第二の層は不透明および/または白である。
【0089】
加えて、様々な例において、接着層またはその一部分、たとえばシートは、0.1W/m-K〜10W/m-K、たとえば0.1W/m-K〜5W/m-K、たとえば1W/m-K〜5W/m-Kの範囲である熱伝導率を有する。
【0090】
いくつかの変形態様によると、接着層は、パターニングされた接着層である。そのような態様において、接着層は、多孔質である、および/または接着層の第一の面から第一の面とは反対側である接着層の第二の面まで延びる1つまたは複数の開口を含み、反応チャンバの1つまたは複数の内容物、たとえば液体がそれを通過することができるような部分であることができ、またはそれを有することができる。そのようなものとして、いくつかの局面において、反応チャンバの1つまたは複数の内容物、たとえば液体は、アッセイが実施されている間、基板および/またはその1つまたは複数の部品、たとえばセンサおよび/または加熱要素と直接接触することができる。
【0091】
本明細書に記載されるように、本装置および方法は、1つまたは複数の反応チャンバ中の1つまたは複数の核酸の存在および/または非存在を検出するために使用されることができる。本装置および方法はまた、1つまたは複数の反応チャンバ中の1つまたは複数の他のバイオマーカ、たとえばタンパク質の存在および/または非存在を検出するために適用されることができる。
【0092】
様々な態様において、光学的性質改変装置は、1つまたは複数の、たとえば3つのアッセイ対照:試料妥当性対照、陽性対照、たとえば内部陽性対照および/または陰性対照を含む。試料妥当性対照は、たとえば、豊富なヒト核酸マーカ、たとえばハウスキーピング遺伝子、RNAおよび/またはヒトβ-アクチンデオキシリボ核酸(DNA)を検出して、十分なスワブ試料が採取されたことを保証する。陽性対照は、反応ウェル中に共パッケージングおよび/または共凍結乾燥される合成オリゴヌクレオチドを増幅する。そのような合成オリゴヌクレオチドは、たとえば、改変試薬、光学的性質改変試薬および/または増幅組成物に含まれることができる。そのような対照は、装置が、関心対象の遺伝子マーカの増幅を許す条件の下で作動することを保証する。また、陰性対照は、共凍結乾燥される合成オリゴヌクレオチドなしで、陽性対照を増幅する。そのような対照は、任意の汚染性自己増幅性アンプリコンの非存在を保証する。
【0093】
加えて、光学的性質改変装置またはその部分、たとえばハウジングは、たとえば試料分析装置の制御ユニットによって実行されるような画像データ分析アルゴリズムのためのキャリブレータを含むことができる。たとえば、QR(quick response)コードが解像度校正標的であることができる。また、ホワイトバランス校正および照明均一性校正のために、白色のハウジングおよび具体的には反応チャンバに近い領域が試料分析装置によって適用されることができる。加えて、ハウジングは、色変化計測を校正するためのプリントされたカラーターゲットを含むこともできる。
【0094】
光学的性質改変装置はまた、1つまたは複数のコード、たとえばQR(quick response)コードをそのハウジングの外面に含むことができる。そのようなコードは、アッセイタイプの識別情報、装置の有効期限、シリアル番号またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。試料分析装置は、装置の正しい識別を実施し、装置を相応に使用することができるよう、そのようなコードを読む、および/または認識するように構成されることができる。
【0095】
上記のように、様々な態様において、装置は選択的通気要素を含む。選択的通気要素は、多孔質であることができ、そのようなものとして、それを通過して延びる複数の気孔を有する。本態様の選択的通気要素はまた、受動的に調整可能な気孔率を有することができる。本明細書の中で使用される語句「受動的に調整可能な気孔率」とは、1つまたは複数の気体、たとえば空気がそれを通過する、たとえば気孔を通過することができる第一の形態と、1つまたは複数の気体および液体を含む流体、たとえば生物学的試料を含む液体がそれを通過する、たとえば気孔を通過することを妨げられる第二の形態とを有し、液体と接触したとき、第一の形態から第二の形態へと自動的に移行する能力をいう。第二の形態において、選択的通気要素は、それを通過する、たとえば気孔を通過する液体の蒸発を防ぐ。また、第二の形態において、選択的通気要素は、反応チャンバを、その開口を覆うことによってその端部で流体的に封止し、蒸気を含む流体がそれを通過することを防ぐことができる。選択的通気要素は、1つまたは複数の液体、たとえば生物学的試料を含む液体が選択的通気要素またはその一部分、たとえば面、たとえば反応チャンバの壁を形成する面と接触したとき、受動的に、たとえばユーザ相互作用なしで自動的に第一の形態から第二の形態へと移行するように構成されることができる。そのようなものとして、いくつかの変形態様において、選択的通気要素は、液体と接触したとき、液体および気体に対して自己封止性であることができる。加えて、いくつかの変形態様において、選択的通気要素は、装置の1つまたは複数の入口および/または試料受け入れ開口を覆い得、および/または封止し得、それにより、1つまたは複数の通気開口を通過する場合と同様に、それを通過する液体および/または気体流を調節し得る、たとえば許し得る、および/または防ぎ得る。
【0096】
また、各反応チャンバは、試料入口および/または導管から生物学的試料を受け入れるための試料受け入れ開口を含むことができる。試料受け入れ開口は、動作的に、たとえば流体的に試料入口に接続されることができる。いくつかの変形態様において、各反応チャンバは、1つまたは複数の、たとえば2つのさらなる開口、たとえば「通気される」および「補助的な」または「第一の」および「第二の」開口を含む。したがって、いくつかの変形態様において、試料受け入れ開口は第三の開口であり、第一および/または第二の開口に隣接している。反応チャンバはまた、1つまたは複数の導管を介してチャンバを1つまたは複数の他のチャンバおよび/または入口に動作的に結合する第四の開口を含むことができる。
【0097】
また、選択的通気要素の1つまたは複数の部分は受動的に調整可能な気孔率を有することができる。たとえば、いくつかの変形態様において、選択的通気要素は、受動的に調整可能な気孔率を有するヒドロゲルで構成されることができる。そのようなヒドロゲルは、液体、たとえば水性液と接触すると膨潤し、多孔質ポリマーマトリックスの気孔率を下げることができる。
【0098】
さらには、選択的通気要素は、1つまたは複数のポリマーマトリックス、たとえば多孔質ポリマーマトリックス、たとえばポリエチレンを含む多様な材料で構成されることができる。選択的通気要素はまた、ヒドロゲル、たとえばカルボキシメチルセルロースで構成されることもできる。また、選択的通気要素またはその部分、たとえばコーティングを構成することができる他の材料は、糖類、タンパク質、潮解性材料、ナイロン、ABS、ポリカーボネートおよびポリ(メチルメタクリレート)および他の吸湿性材料またはそれらの任意の組み合わせを含む。選択的通気要素はまた、1つまたは複数のコーティングであってもよく、またはそれを含んでもよい。選択的通気要素は櫛状物として成形されることができる。そのようなものとして、要素は、ボディと、ボディから延びて反応チャンバの1つまたは複数の開口それぞれ、たとえば第一または第二の開口を覆う1つまたは複数の突出部とを含むことができる。装置の選択的通気要素は、装置中の反応チャンバの数に等しい数の突出部を有することができる。さらに、選択的通気要素は、装置ハウジングおよび/またはマイクロ流体カートリッジに動作的に結合されることができ、かつ装置内でそのような要素と要素との間に配置されることができる。
【0099】
発明の方法
本開示は、生物学的試料アッセイにおいて光学的性質を改変する方法を含む。そのような改変は、生物学的試料またはそれと関連する局面、たとえば反応混合物または反応生成物に対して実施することができる。望むならば、光学的性質の改変は、本明細書に記載される装置のような、生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置によって実施することができる。
【0100】
光学的性質を改変するとは、局面、たとえば試料の1つまたは複数の光学的に認識可能な特性、たとえば、局面から放出される放射線、たとえば光の波長および/または周波数から生じる特性、たとえば色、蛍光、リン光などを変化させることをいう。たとえば、いくつかの変形態様において、光学的性質は色であり、光学的性質を改変する工程は、色を変化させる工程を含む。いくつかの局面において、そのような光学的性質の改変、たとえば色変化は、たとえば周囲光の下、ヒトの裸眼で検出可能であり、本方法は、ヒトの裸眼でそのような検出を実施する工程を含む。光学的性質を改変する工程はまた、物質の透過率および/または不透明度を変化させる工程を含むことができ、その物質をして、透明から不透明へと、または不透明から透明へと実質的に変化させる工程を含むことができる。そのようなものとして、方法は、そのような変化をヒトの裸眼で検出する工程を含むことができる。
【0101】
いくつかの局面において、本方法は、本明細書に開示されるような試薬もしくは物質および/または装置もしくはその部分、たとえば試料受け入れカートリッジを外部、たとえば周囲の光に暴露して、それにより、光学的性質の変化を計測する工程を含む。そのような外部光はカメラフラッシュまたは蛍光励起光を含むことができる。外部光への暴露は、光学的性質を計測することができるような条件の変化を提供することができる。
【0102】
本方法のいくつかの変形態様にしたがって、方法は、生物学的試料を光学的性質改変装置の試料受け入れカートリッジの1つまたは複数の反応チャンバの中に移す工程を含む。試料を移す工程は、試料を特定の位置、たとえば1つまたは複数の反応チャンバに移動させる、たとえば流す工程を含むことができる。移す工程は、試料入口および/または1つまたは複数の反応チャンバそれぞれを動作的に接続する1つまたは複数の導管を通じて試料を流す工程を含むことができる。そのような流す工程は、試料を付勢して、たとえばポンピングして入口および/または導管を通じて移動させる工程を含むことができる。流す工程はまた、装置のハウジング中のレセプタクル開口を通じて、試料を試料入口の開口に流し込む工程を含むことができる。
【0103】
様々な態様において、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバの中に移す工程は、生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置を試料調製装置と動作的に結合し、調製された生物学的試料を試料調製装置から生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置に流し込む工程を含む。そのような装置を動作的に結合する工程は、各装置の往復コネクタ、たとえば流体コネクタ、たとえばルアーコネクタを結合する工程を含むことができる。
【0104】
上記のように、装置の1つまたは複数の反応チャンバは、1つまたは複数の光学的性質改変試薬を含むことができる。そのようなものとして、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバの中に移す工程は、生物学的試料を1つまたは複数の光学的性質改変試薬と混合し、それにより、生物学的試料および光学的性質改変試薬を含む反応混合物を生成する工程を含むことができる。反応混合物は、本明細書に指定されるような1つまたは複数の反応に用いることができる混合物である。反応混合物はまた、たとえば、一定量の緩衝液、水および/または他の組成物、たとえば生物学的試料、たとえば調製された生物学的試料、増幅組成物、たとえば核酸増幅組成物および/または1つまたは複数の光学的性質改変試薬またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0105】
本態様はまた、装置の加熱要素によって反応混合物を加熱する工程を含む。いくつかの変形態様において、そのような加熱する工程は、接着層を介して熱エネルギーを1つまたは複数の反応チャンバに伝達する工程を含む。反応混合物を加熱する工程は他方で、反応生成物、たとえば複数のプロトンを含む反応生成物を生成することができる。反応生成物は、たとえば、光学的性質改変試薬と反応すると1つまたは複数の光学的性質の改変を生じさせる1つまたは複数の組成物、たとえば生物学的試料の局面、たとえばプロトンを含むことができる。
【0106】
望ましいならば、加熱要素が装置の基板、たとえば回路基板、たとえばプリント回路基板に動作的に結合される。基板はまた、1つまたは複数のセンサおよび/または制御ユニットおよび/または電源および/または1つまたは複数の光源を含む、および/またはそれに動作的に結合していることができる。そのようなものとして、いくつかの変形態様において、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバの中に移す工程は、1つまたは複数の反応チャンバ中の試料、たとえば液体を1つまたは複数のセンサによって検出する工程を含む。センサは、たとえば、電気化学的センサであることができる。センサは、いくつかの変形態様においては接着層および/または1つまたは複数の電気コンタクトを介して電気エネルギーを1つまたは複数の反応チャンバとの間で送受信するように構成されることができる。そのようなセンサは、1つまたは複数の反応チャンバ中の液体の存在および/または非存在を検出するように構成されることができる。また、基板が光源に動作的に結合されているいくつかの変形において、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバの中に移す工程は、光源をアクティブ化して光を放出させる、および/または光源を非アクティブ化して光の放出を停止させる工程を含むことができる。本装置のいくつかの変形態様においては、液体が反応チャンバに入ったとき、センサが液体を感知し、加熱要素が反応チャンバを自動的に、たとえば特定のユーザ動作を要することなく、加熱し始めるよう、センサ、制御ユニットおよび/または加熱装置は動作的に接続されている。
【0107】
基板が制御ユニットを含む態様において、生物学的試料の光学的性質を改変する工程は、1つまたは複数の反応チャンバ中の試料の光学的性質、たとえば比色分析を制御ユニットによって実行する工程を含むことができる。そのような分析は、反応生成物を光学的性質改変試薬と反応させたのち、反応生成物に対して実行することができる。光学的性質、たとえば比色分析を実行する工程は、入力、たとえば1つまたは複数のセンサからの入力に基づいて、反応チャンバの1つまたは複数の内容物の光学的性質、たとえば色の変化が起こったかどうかを決定する工程を含むことができる。決定に基づいて、分析を実行する工程は、改変が起こったかどうかをユーザに反映する出力を生成する、たとえばディスプレイを介してユーザに生成する工程を含むことができる。光学的性質、たとえば比色分析を実行する工程はまた、ユーザにより、制御ユニットを用いることなく、たとえば分析装置を使用することにより、または目視検査に基づいて決定を下すことにより、実施されることもできる。さらに、光学的性質、たとえば比色分析を実行する工程はまた、光学的性質の改変またはその欠如の画像データ、たとえば写真および/またはビデオを、たとえばカメラ、たとえば携帯電話上のカメラによって取得し、そのデータを目視で、または分析装置、たとえば携帯電話で評価する工程を含むことができる。
【0108】
いくつかの変形態様において、本方法は、電気エネルギーを基板の1つまたは複数の要素、たとえば制御ユニットおよび/またはセンサから接着層を介して1つまたは複数の反応チャンバに伝達する工程を含む。方法はまた、電気エネルギーを1つまたは複数の反応チャンバから接着層を介して基板の1つまたは複数の要素、たとえば制御ユニットおよび/またはセンサに伝達する工程を含むことができる。いくつかの局面において、光学的性質改変分析を実行する工程は、そのような電気エネルギーが伝達されることを必要とする。
【0109】
いくつかの変形態様において、試料受け入れカートリッジは透明であり、光学的性質、たとえば比色分析を実行する工程は、試料受け入れカートリッジを透過する光の1つまたは複数の特性、たとえば色または不透明度を検出し、視覚化する工程を含む。方法のいくつかの局面において、光学的性質改変装置はまた、試料受け入れカートリッジに動作的に接続された接着層、不透明および/または白色の接着層を含む。そのような局面において、方法は、反応生成物を光学的性質改変試薬と反応させたのち、光学的性質分析を、たとえばチャンバを目視検査することによって実施して、反応生成物の改変された光学的性質を検出する工程を含むことができる。
【0110】
生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置の態様はまた、本方法にしたがって、試料受け入れカートリッジおよび/または基板を接着層と動作的に結合することによって製造することができる。そのような結合は、接着層を試料受け入れカートリッジおよび/または基板に当てて配置し、部品を、たとえば接着および/または融解することにより、互いに取り付けることによって実施することができる。具体的には、いくつかの態様において、方法は、接着層を基板、たとえばプリント回路基板と直接接触させ、2つをいっしょに結合する、たとえば接着する、または貼り合わせる工程を含む。いくつかの局面において、接着層は、第一の側面および第一の側面とは反対側の第二の側面を有する。そのようなものとして、試料受け入れカートリッジと基板とを動作的に結合することによって装置を製造する工程は、試料受け入れカートリッジを第一の側面に接着し、基板を第二の側面に接着する工程を含むことができる。そのような製造は、手作業で実施することもできるし、自動的に、たとえば電子製造装置、たとえば1つまたは複数の製造工程を実行するようにプログラムすることができる製造装置によって実施することもできる。
【0111】
いくつかの変形態様において、反応チャンバはそれぞれ、増幅組成物、たとえば核酸増幅組成物を含む。上記のように、装置の1つまたは複数の反応チャンバは、増幅組成物、たとえば核酸増幅組成物を含むことができる。そのようなものとして、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバの中に移す工程は、生物学的試料を1つまたは複数の増幅組成物と混合する工程を含むことができる。そのような混合工程は、2つの間で化学反応を生じさせる工程を含むことができる。
【0112】
いくつかの例において、反応混合物を加熱要素によって加熱する工程は、たとえば生物学的試料の核酸と増幅組成物、たとえば核酸増幅組成物の1つまたは複数の局面との間の核酸増幅反応を促進する工程を含む。そのようなものとして、様々な局面において、反応は、1つまたは複数の増幅された核酸を生成する。そのような反応はまた、反応生成物を生成することができる。そのような反応生成物は、複数のプロトンおよび/または1つまたは複数の増幅された核酸であることができ、および/またはそれを含むことができる。
【0113】
本方法はまた、反応生成物またはその局面、たとえば1つまたは複数のプロトンおよび/または1つまたは複数の増幅された核酸を光学的性質改変試薬と反応させる工程を含むことができる。そのような反応させる工程は、たとえば、反応生成物またはその局面、たとえば1つまたは複数のプロトンおよび/または1つまたは複数の増幅された核酸を光学的性質改変試薬と接触させることにより、たとえばそれらを1つまたは複数の容器、たとえば1つまたは複数の反応チャンバ中で混合することにより、実施することができる。反応生成物またはその局面を光学的性質改変試薬と反応させる工程は、一方または他方が1つまたは複数の異なる光学的性質、たとえば色および/または不透明度を示すように、たとえば1つまたは複数のプロトンを光学的性質改変試薬に結合させることによって反応生成物および/または光学的性質改変試薬を化学的に改変する工程を含むことができる。
【0114】
反応生成物またはその局面、たとえば1つまたは複数のプロトンおよび/または1つまたは複数の増幅された核酸を光学的性質改変試薬と反応させる工程は、様々な態様において、光学的性質改変試薬の光学的性質、たとえば色および/または不透明度を、改変された光学的性質のヒトの裸眼による検出を可能にするのに十分なほど、改変する。本明細書の中で使用される語「ヒト」は、任意の発育段階、たとえば胎児、新生児、乳児、若年、青年および成人にある両方の性のヒトユーザまたは対象を含むことができ、特定の態様において、ヒト対象またはユーザは若年、青年または成人である。また、ヒトの裸眼とは、視力を増強または改変させる1つまたは複数の装置によって強化されていないヒトの眼をいう。そのような装置は、カメラ、拡大鏡、顕微鏡または最適化、たとえばフィルタ処理、たとえば偏光処理された眼鏡またはコンタクトレンズなどを含み得る。
【0115】
本方法の1つの態様を、
図1および2に示すような装置100と関連して説明することができる。したがって、いくつかの局面において、方法は、生物学的試料を、生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置100の試料受け入れカートリッジ101の1つまたは複数の反応チャンバ102の中に移す工程、および、それにより反応混合物を生成する工程を含む。そのような移送は、試料入口110および/または導管202を介して実施することができる。
【0116】
方法はまた、装置100の加熱要素104によって反応混合物を加熱する工程、および、それにより反応生成物を生成する工程を含むことができる。様々な例において、方法はまた、反応生成物を光学的性質改変試薬201と反応させる工程を含み、反応させる工程は、反応生成物が試料受け入れカートリッジ101の1つまたは複数の反応チャンバ102内にある間に、光学的性質改変試薬の光学的性質を、改変された光学的性質のヒトの裸眼による検出を可能にするのに十分なほど改変する。改変された光学的性質のヒトの裸眼による検出は、たとえば、透明であることができる試料受け入れカートリッジ101を通して実施されることができる。
【0117】
また、いくつかの変形態様において、方法は、1つまたは複数の反応チャンバ102中の試料の実質的な動き、たとえば流れを選択的通気要素107および/または接着層106によって抑制する、たとえば止める工程を含む。そのような態様において、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバ102の中に移す工程は、液体、たとえば生物学的試料を選択的通気要素107と接触させる前に気体、たとえば空気を選択的通気要素107を通じて流す工程、および、それにより、選択的通気要素を液体および気体流に対して不浸透性にする工程を含む。
【0118】
様々な例において、装置100は、レセプタクル111を有する第一の部分108と、第一の部分と嵌合可能な第二の部分109とを含むハウジングを含む。そのようなものとして、生物学的試料を1つまたは複数の反応チャンバ102の中に移す工程は、試料をレセプタクル111を通じて流す工程を含むことができる。
【0119】
さらに、いくつかの態様において、本方法は、生物学的試料を採取する工程、たとえば試料コレクタによって試料を採取する工程を含む。そのような試料は、たとえば、ヒト唾液、尿、ヒト粘液、血液または固体組織、たとえば頬組織を含むことができる。そのような試料はまた、細菌または胞子を含むことができる。採取する工程は、試料コレクタを、対象の1つもしくは複数の面ならびに/または対象の生物学的試料、たとえば対象から抽出された液体、たとえば唾液および/もしくは血液の試料の表面に接触させる、たとえばこすりつける、および/または掻きつける工程を含むことができる。そのようなものとして、いくつかの変形態様において、採取する工程は、対象から1つまたは複数の生物学的試料を抽出する工程を含む。いくつかの変形態様において、生物学的試料を採取する工程は、対象に対し、たとえば試料コレクタの上および/または中につばを吐くことによって生物学的試料を提供するよう指示する工程を含む。生物学的試料を採取する工程はまた、たとえば試料コレクタをアッセイ装置に移す間、生物学的試料またはその一部分、たとえば1つまたは複数の細胞を試料コレクタ上に保持する工程を含むことができる。いくつかの例において、試料コレクタはスワブであり、生物学的試料を採取する工程は、対象の口および/または鼻の内側をスワブで拭いて生物学的試料をコレクタ上に得る工程を含む。いくつかの変形態様において、試料コレクタは、鼻咽頭、中鼻甲介および/または鼻腔スワブである。生物学的試料を採取したのち、方法は、いくつかの変形態様において、生物学的試料を、本明細書に記載されるような調製された生物学的試料になるように処理する工程を含む。
【0120】
加えて、方法のいくつかの変形態様においては、選択的通気要素、試料受け入れカートリッジ、接着層および/または基板またはそれらの任意の組み合わせを単一の連携工程でいっしょに接触させることによってハウジング内に封入することにより、装置が製造される。いくつかの変形において、方法は、たとえば基板層、たとえばガラス、ケイ素および/またはポリマー層をパターニングする第1の工程および/またはパターニングされた層を結合する、たとえばそれをパターニングされていない層、たとえば封止層に化学的および/または物理的に結合する工程、および結合および/または封止された層を、流体装置を用いるためのさらなる機能性を提供するハウジングまたはカセットの中に組み込む第二の後続工程を実施することによって装置を製造する工程を含まない。また、様々な態様において、本装置を製造する方法は、製造中に内容物が反応チャンバに収容されている間、反応チャンバ内容物、たとえば光学的性質改変試薬および/または増幅組成物の機能性、たとえば化学的機能性を実質的に保存する工程を含む。これは、製造プロセスが試薬を極端な温度または化学的環境に暴露しないために達成される。また、方法のいくつかの変形態様において、方法は、反応チャンバ内容物、たとえば光学的性質改変試薬および/または増幅組成物が反応チャンバ内に保持されている間に接着層と基板とを動作的に結合することによって装置を製造する工程を含む。いくつかの変形態様において、接着層と基板とを動作的に結合する工程は、接着層、基板またはいずれかを取り囲む環境を加熱する工程を含まない。
【0121】
本明細書において提供される増幅反応は、核酸鋳型からヌクレオチドを増幅する。いくつかの態様において、増幅反応は、鎖置換反応などの等温増幅反応である。さらなる態様において、鎖置換反応は、鎖置換が可能であるような反応条件下で、鎖置換活性を有するポリメラーゼによって提供される。鎖置換反応の例は、鎖置換増幅(SDA)、多置換増幅(MDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、またはループ介在等温増幅(LAMP)を含む。他の態様において、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの他の非等温増幅反応を含む。
【0122】
ある特定の態様において、行われる増幅反応はLAMPである。LAMP反応においては、高い温度で動的平衡にある二本鎖または一本鎖のDNA鋳型を、2つまたは3つのペアのプライマーを用いて増幅する。プライマーは、LAMP Designer(Premier Biosoft, Palo Alto, CA)などのプライマー設計ソフトウェアを用いて、DNA鋳型に基づいて設計する。LAMP反応の最初の工程において、FIP(フォワードインナープライマー)のF2領域が、それぞれの相補的な(F2c)位置で一本鎖DNAにアニールする。次に、鎖置換活性を有するポリメラーゼが、F2の3'端から鋳型に沿ってdNTPを取り込む。ヌクレオチドの取り込みによってプロトンが放出され、反応ミックスのpHを低下させる。次いで、F3フォワードプライマーが、F2領域の上流でかつ鋳型上のF3c領域にアニールする。F3フォワードプライマーは、鋳型鎖を増幅し始め、これが、プロトンをさらに放出して、以前に合成されたFIPが取り込まれた鎖を置換する。この一本鎖は、F1配列(標的配列内)をその相補的なF1c配列(FIP内)に沿って含有する。これにより、F1cが5'端でF1にアニールするようなステムループが形成される。同時に、BIP(バックワードインナープライマー)が鎖のもう一方の末端にアニールし、ヌクレオチドがB2から伸長して、より多くのプロトンを放出する。次いで、バックワードプライマーB3が、B2領域の下流のB3c領域に結合し、BIPにより増幅された鎖を置換し、伸長を促進して二本鎖を作製する。この時点で、この置換された鎖は、B1配列(標的配列内)をその相補的なB1c配列(BIP内)に沿って含有し、3'端に別のステムループを形成する。この時点で、構造体は、各末端に2つのステムループ構造を有し、そこから連続的な置換および伸長が起こって鋳型が増幅される。LAMP反応は、ステムループ構造を有するより多くのアンプリコンを産生するためにさらなるフォワードおよびバックワードのループプライマーを添加することによって、増幅することができる。
【0123】
LAMP手順は、固定された温度で起こることができ、いかなる高価な熱サイクリング装備の必要性も最小化する。典型的に、等温法は、選択される試薬によって決定される設定温度を必要とする。例えば、酵素は、LAMP法において60〜65℃で最も良好に機能する。
【0124】
核酸増幅反応産物の比色検出は、増幅反応中にわたってリアルタイムで、または増幅反応の実施後に行うことができる。反応ミックスの比色変化の検出は、増幅反応産物の有無のデジタル表示と関連し得る。換言すると、反応ミックスの色変化の視覚的観察は、増幅反応産物が存在しているかまたは存在していないかに関する情報を提供することができる。ある特定の態様において、反応ミックスの比色変化の検出により、増幅反応の指数関数期またはプラトー期が得られていることが示される。
【0125】
いくつかの態様において、増幅反応産物の検出は、造塩発色剤を含まない反応ミックスを用いた増幅反応と比べて加速されている。さらなる態様において、反応ミックスの比色変化は、増幅反応の開始時間から60分未満で検出される。反応ミックス中の造塩発色剤(弱酸または弱塩基)が、増幅反応の間に生成されたプロトンを吸収し、遊離プロトンの再結合が、増幅反応の検出を加速するように作用することから、増幅反応産物の加速された検出が得られる。造塩発色剤が色を変化させるのに十分なpH移行を生成するのに最小の増幅が必要とされるように、反応を設計することができる。蛍光インターカレート色素、分子ビーコン、ハイブリダイゼーションプローブ、色素ベースの検出、紫外-可視、または他の検出法を用いた従来の増幅技術は、増幅シグナルが検出可能となるのに、ある一定の閾値量の増幅が起こることを必要とする。しかし、本発明の方法は、造塩発色剤の色変化が検出可能となるのに相対的により少ない閾値量の増幅を必要とし、そのため、増幅反応産物の検出は、従来の増幅法と比べて加速されている。
【0126】
いくつかの態様において、増幅反応産物は、反応ミックスの色変化の観察によって視覚的に検出される。さらなる態様において、ヒトの眼を視覚的検出のために使用する。別の態様において、カメラ、コンピュータ、またはいくつかの他の光学装置を、視覚的検出のため、または反応ミックスを画像化するために使用する。画像化プログラムは、Photoshop(Adobe, San Jose CA)、ImageJ(National Institutes of Health, Bethesda MD)、およびMATLAB(Math Works, Natick MA)を含む。別の態様において、増幅反応産物を、蛍光分光法を用いて、反応ミックスの蛍光を測定することにより検出する。別の態様において、増幅反応産物を、吸光分光法を用いて、反応ミックスの吸光度を測定することにより検出する。さらなる態様において、反応ミックスの吸光度または蛍光における終点での変化または全体的変化を、所定の波長または波長のセットにおいて測定する。
【0127】
図17は、本開示の態様の光学的性質改変装置中の6つの異なる反応チャンバの間での核酸増幅反応時間を提供する。各縦列は反応チャンバ位置を表し、各横行は異なる装置を表す。組み込まれた加熱および流体カートリッジが均一な加熱を提供して、均一な多重化反応条件を可能にする。そのようなものとして、この態様において、光学的性質改変装置は、組み込まれた加熱要素を含む。
図17に提示されたデータと関連するアッセイは、本明細書に記載されるラムダDNAアッセイに類似するLAMP対照アッセイである。
【0128】
加えて、
図18は、本開示の態様の光学的性質改変装置中の6つの異なる反応チャンバの間で核酸増幅反応から生じた、CIE94 Delta-Eスケールを使用して計測された色変化を提供する。
図18に提供されるように、各縦列は反応チャンバ位置を表し、各横行は異なる装置を表す。組み込まれた加熱および流体カートリッジが均一な加熱を提供して、均一な多重化反応条件を可能にする。そのようなものとして、この態様において、光学的性質改変装置は、組み込まれた加熱要素を含む。適用された装置はまた、接着層を含む。流体チャネルとヒータ基板との間に挿入された接着層は、熱伝導および色を読むための均一な白い背景を提供する。
図18に提示されたデータと関連するアッセイは、本明細書に記載されるラムダDNAアッセイに類似するLAMP対照アッセイである。この装置アーキテクチャは、多重化核酸増幅アッセイを目視的に読むための低コストの解決手段を表す。
【0129】
さらに、
図19は、前記やり方で加熱要素、たとえば電子ヒータに動作的に結合された、および/またはそれに隣接する反応チャンバ、たとえば流体貯留部の温度プロファイルを提供する。加えて、
図20は、多重化核酸増幅アッセイと動作的に結合するための加熱要素、たとえば電子ヒータボード上の6つの加熱位置の間での温度均一性の図を提供する。そのような態様において、アッセイは、本開示の態様の反応チャンバを含む光学的性質改変装置を含む。
【0130】
発明の組成物
以下に提供される組成物を、核酸増幅反応産物の加速されたかつ効率的な比色検出のための本明細書に記載される装置および方法の任意の態様に適用することができる。ある態様において、比色アッセイを、増幅された核酸産物の存在を視覚的に検出するために使用し、これは、高価なかつ高性能の計器装備の必要性を排除する。
【0131】
いくつかの態様において、増幅産物の比色検出は、増幅反応産物を得るために標的核酸鋳型分子を増幅することによって達成される。増幅反応は、反応ミックスを含む。ある態様において、反応ミックスは、核酸鋳型分子、増幅反応を触媒するための1種または複数種の酵素、および比色検出のための1種または複数種の造塩発色剤を含む。さらなる態様において、反応ミックスはまた、8.0の開始pHを有する溶液中1 mM〜19 mMの濃度でのトリス緩衝液と同等の緩衝能力を有する緩衝液も含む。さらなる態様において、反応ミックスはまた、複数の核酸プライマー、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、酵素に適した塩、および核酸増幅を可能にする他の非緩衝化学物質も含む。
【0132】
増幅反応の間、核酸鋳型分子中に取り込まれるdNTP1個につき1個のプロトンが放出される。したがって、反応ミックスのpHは、増幅反応中にわたって低下する。ある態様において、標的核酸が存在する場合には、増幅反応は、反応ミックスの開始pHを変化させて造塩発色剤の検出可能な比色変化を引き起こし、それにより標的核酸の存在が示され、および、標的核酸が存在しない場合には、増幅反応は、造塩発色剤の検出可能な比色変化を引き起こすのに十分な、反応ミックスの開始pHを変化させるのに十分な数のプロトンを生成せず、それにより増幅反応産物が産生されていないことが示される。ある態様において、反応ミックス中の造塩発色剤(またはpH指示薬)は、(1)増幅反応が行われる前の反応ミックスの開始pHと(2)増幅反応が行われた後の反応ミックスの終了pHとの間の期待されるpH変化よりも狭い、造塩発色剤の比色変化のための移行pH範囲を有する。
【0133】
ある態様において、造塩発色剤は比色剤または蛍光剤である。適した造塩発色剤は、中でも、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、ニュートラルレッド、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、メチルレッド、およびチモールフタレインを含む。これらの造塩発色剤の広範囲の濃度を、反応ミックスにおいて使用することができる。異なる造塩発色剤は、異なる移行pH範囲を有する。いくつかの態様において、造塩発色剤は、pH 5〜10、pH 6〜9、またはpH 6.5〜8.8の移行pH範囲を有する。別の態様において、造塩発色剤は、反応ミックスにおいて25〜100μMの濃度である。別の態様において、造塩発色剤は、50〜260μMの濃度である。いくつかの態様において、2種以上の造塩発色剤の組み合わせを反応ミックスにおいて使用し、これは、増幅反応の開始時には補色であり、かつ終了時には類似色であることによって、反応ミックスの正規化された色対比変化を増大させる。さらなる態様において、造塩発色剤の組み合わせは、フェノールレッドおよびブロモチモールブルーを含む。さらなる態様において、造塩発色剤の組み合わせは、クレゾールレッドおよびブロモチモールブルーを含む。
【0134】
1つの例において、フェノールレッドは、約6.4〜8.0の移行pH範囲を有する造塩発色剤である。移行pH範囲の上限で、フェノールレッドは赤色であり、移行pH範囲の下限で、フェノールレッドは黄色である。反応ミックスの開始pHが、8.0あたりまたはそれより上であり、反応ミックスの終了pHが移行pH範囲内または6.4あたりもしくはそれより下である限り、フェノールレッドを含有する反応ミックスは、増幅反応中にわたって赤色から黄色に色を変化させる。
【0135】
いくつかの態様において、反応ミックスの開始pHは、所望の開始pHに達するまで酸または塩基を反応ミックスに添加することによって調整される。反応ミックスの終了pHは、試料増幅反応を行って、終了pHを測定する(例えば、微小pH電極で)ことによって決定される。ある態様において、増幅反応のための造塩発色剤を、移行pH範囲が開始pHと終了pHとの間にあるように選択する。さらなる態様において、造塩発色剤を、移行pH範囲が終了pHよりも開始pHに対してより近いように選択する。造塩発色剤はまた、増幅反応を触媒するために使用される特定の酵素に基づいて選択することもできる。pHが望ましくないH
+濃度まで低下するため、反応ミックス中の酵素は、終了pHの近くで、増幅反応の重合作用を終結する。ある態様において、追加のヒドロニウムイオンまたはヒドロニウムイオン等価物を、試料を介して反応ミックスに添加する。例えば、10μlの反応ミックスあたり、4.8×10
-9〜4.8×10
-18の追加のヒドロニウムイオン等価物が、増幅反応が進行するために許容され得る。さらなる態様において、4.8×10
-10〜4.8×10
-18、4.8×10
-12〜4.8×10
-18、または4.8×10
-15〜4.8×10
-18が、許容され得る。
【0136】
一般的に、酵素は、選択された造塩発色剤の移行pH範囲を包含するかまたはそれに近いpH範囲内で、増幅反応を触媒すると考えられる。種々の酵素を反応のために使用することができ、異なる酵素は、異なるpH範囲で増幅反応を触媒する。例えば、Bstポリメラーゼは、6.6〜9.0のpH範囲内で増幅反応を触媒すると考えられている。Bstポリメラーゼのための好ましい開始pHは、7よりも上、より好ましくは8.2よりも上、およびより好ましくは8.8である。Bstポリメラーゼのための好ましい開始pHの他の例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、1996年4月17日に出願された米国特許第5,830,714号において見出される。ある態様において、Bstポリメラーゼが活性を有するpH範囲(6.6〜9.0)は、フェノールレッドの移行pH範囲(6.4〜8.0)を包含するため、フェノールレッドは、反応ミックスにおいてBstポリメラーゼと組み合わされる。別の態様において、Uエキソクレノウ断片(ヘリカーゼ依存性増幅すなわちHDAのためのポリメラーゼ)が活性を有する開始pH(約7.5)は、メチルレッドの移行pH範囲(4.8〜6.2)よりも高いため、メチルレッドは、反応ミックスにおいてUエキソクレノウ断片と組み合わされる。
【0137】
BstまたはBst 2.0ポリメラーゼ以外に、増幅反応を触媒するために使用することができる他の酵素は、サーマス・アクアチカス(Thermus aquaticus)(TAQ)由来のポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI〜IV、Kapaポリメラーゼ、RNAポリメラーゼI〜V、T7 RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、任意のDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ、ヘリカーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、および一本鎖結合タンパク質を含む。いくつかの態様において、等温増幅反応は、phi29-DNAポリメラーゼ、クレノウDNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ、Deep Vent DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、9oNm(商標)DNAポリメラーゼ、U エキソクレノウ断片、またはそれらの変異体およびバリアンドなどの、鎖置換ポリメラーゼである酵素を使用する。いくつかの態様において、酵素に適した塩もまた、反応ミックスに添加する。ある特定の態様において、反応ミックスの開始pHは、増幅反応を触媒するために使用される具体的な酵素にとって最適なpHに基づいて設定される。ある態様において、DNA試料全体のpHは、pH 3〜pH 11である。
【0138】
他の態様において、蛍光造塩発色剤を、増幅の間に放出されたプロトンを検出するために使用する。反応ミックスのpHが増幅反応の間に変化するにつれて、造塩発色剤は、光学特性(振幅および放射される波長)を変化させることができる。蛍光造塩発色剤は、フルオレセイン、ピラニン、およびpHrodo色素(Life Technologies, Carlsbad CA)を含む。
【0139】
反応ミックスに添加される塩基および/または酸は、反応ミックスの開始pHを、造塩発色剤の移行pH範囲の上限あたりまたはそれより上に維持する。例えば、塩酸(HCl)もしくは硫酸(H
2SO
4)などの酸、または水酸化ナトリウム(NaOH)もしくは水酸化カリウム(KOH)などの塩基を、反応ミックスに添加することができる。いくつかの態様において、酸または塩基は、反応ミックスの開始pHを、pH 6〜10、pH 7〜8、またはpH 8〜8.6に調整する。ある態様において、反応ミックスは、0.1未満のpH単位で反応ミックスの開始pHを補うことができる。別の態様において、反応ミックスは、造塩発色剤の移行pH範囲の上限の2 pH単位上よりは低い開始pHを有する。さらなる態様において、反応ミックスは、造塩発色剤の移行pH範囲の上限の1 pH単位上、0.5 pH単位上、または0.1 pH単位上よりは低い開始pHを有する。さらなる態様において、いかなる色変化も特異的なかつ持続された増幅によってのみ達成されるように、反応ミックスの開始pHから十分に離れたpH移行範囲を設定することによって、非特異的増幅に由来するノイズは最小化される。
【0140】
ある態様において、反応ミックスは、増幅反応のためにいかなる追加の緩衝剤も必要としない。なぜなら、緩衝剤は、増幅反応の間にpHの大きな変化が起こることを阻止し得るためである。別の態様において、反応ミックスは、反応混合物の緩衝能力が増幅の間の期待されるpHの変化未満であるように、最小量の緩衝剤を含有する。いくつかの態様において、緩衝液は、1 mM〜3 mMの濃度である。さらなる態様において、緩衝液は1 mMの濃度である。ある特定の態様において、使用される緩衝液は、トリス緩衝液(pH 8.8に配合)、HEPES(pH 7〜9)、またはTAPS(pH 7〜9)である。別の態様において、使用される緩衝液は、8.0の開始pHを有する溶液中1 mM〜19 mMの濃度でのトリス緩衝液と同等の緩衝能力を有する緩衝液である。この幅広い範囲の適した緩衝液濃度により、反応ミックスは、最小の(<1mM)トリス緩衝液等価物での反応セットアップとは異なり、反応セットアップの間の望ましくない開始pH変化に耐えることが可能になる(2013年3月13日に出願された、米国特許出願第13/799,995号を参照されたい)。これらの望ましくないpHの変化は、試料試薬を介して反応物に添加されるヒドロニウムまたは水酸化物イオン等価物のために起こる。比色検出および酵素動態は開始pHに依存するため、開始pHの変化を回避するほど十分高いが、増幅時の色変化を可能にするほど十分低い、反応ミックスにおける緩衝能力の存在が重要になる。さらなる態様において、反応ミックスのpHは、pH 7.5〜8.8である。表1は、8.0の開始pHを有する溶液中1 mM〜19 mMの濃度でのトリス緩衝液と同等の緩衝能力を有する種々の緩衝液を示す。緩衝能力(β)は、1リットルの緩衝液のpHを1pH単位変化させるのに必要とされる酸または塩基の等価物として定義される。これは、β=2.3
*C
*(K
a*[H
3O
+]/(K
a+[H
3O
+])
2)として算出することができ、式中、Cは緩衝液濃度であり、K
aは緩衝液についての解離定数であり、[H
3O
+]は緩衝液のヒドロニウムイオン濃度(反応開始pHから算出される)である。(8.0の開始pHを有する溶液における)1 mM〜19 mMトリスの緩衝能力は、0.000575〜0.010873の範囲にわたることが見出された。緩衝液の開始pHは、反応生化学(ポリメラーゼ機能、核酸融解など)と適合性である7.5〜8.8の範囲内であるように考慮された。他の態様において、緩衝液は、8.0の開始pHを有する溶液中1.5 mM〜19 mM、2 mM〜19 mM、3 mM〜19 mM、4 mM〜19 mM、5 mM〜19 mM、6 mM〜19 mM、7 mM〜19 mMまたはその他の濃度でのトリス緩衝液と同等の緩衝能力を有する。他の態様において、緩衝液は、8.8の開始pHを有する溶液中1.92 mM〜36.29 mM、3 mM〜36.29 mM、4 mM〜36.29 mM、5 mM〜36.29 mMまたはその他の濃度でのトリス緩衝液と同等の緩衝能力を有する。他の態様において、緩衝液は、7.5の開始pHを有する溶液中1.48 mM〜27.92 mM、2 mM〜27.92 mM、3 mM〜27.92 mM、4 mM〜27.92 mM、5 mM〜27.92 mMまたはその他の濃度でのトリス緩衝液と同等の緩衝能力を有する。
【0142】
ある態様において、マグネシウム化合物を反応ミックスに添加する。なぜなら、マグネシウムは、鋳型中へのヌクレオチドの取り込みを促進し、ポリメラーゼの活性に影響を及ぼすためである。さらなる態様において、反応ミックスにおけるマグネシウム化合物(硫酸マグネシウムなど)の濃度は、少なくとも0.5 mM、少なくとも1 mM、少なくとも2 mM、または少なくとも4 mMである。ある態様において、添加するマグネシウムイオンの濃度は、dNTPの濃度、核酸鋳型、およびプライマーに依存する。ある態様において、反応ミックスにおけるdNTP対硫酸マグネシウムの比は、1:2未満、1:3未満、1:4未満、または1:5未満である。
【0143】
いくつかの態様において、一価陽イオンを反応ミックスに添加する。一価陽イオンは、中でも、カリウム、アンモニウム、および第四級アンモニウムを含む。一価陽イオンは、核酸鋳型の融解特性に影響を与え、酵素の効率を改善することができる。ある態様において、カリウムは、反応ミックスにおいて50 mM未満、または15 mM未満の濃度である。別の態様において、第四級アンモニウム塩は、反応ミックスにおいて2 mMより高い、5 mMより高い、または8 mMより高い濃度である。別の態様において、アンモニウム化合物(塩化アンモニウムなど)は、反応ミックスにおいて15 mM未満、または10 mM未満の濃度である。アンモニウム(NH
4+)はいくらかの緩衝能を有し、したがって、反応ミックスにおけるアンモニウム化合物の最終濃度は、最適な増幅収率を維持しながら最小化されるべきである。
【0144】
ある態様において、反応ミックスの他の試薬の濃度は、増幅反応において一般的に使用されるような量に保たれる。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Notomi T et. al. Nucleic Acids Res. 2000 Jun 15; 28(12): E63;Nature Protocols 2008, Loop-mediated isothermal amplification (LAMP) of gene sequences and simple visual detection of products, 2008 3(5): pg 880を参照されたい。ある態様において、BstまたはBst 2.0酵素を使用し、酵素の量は、合わせた流体のマイクロリットルあたり少なくとも0.8単位である。この態様において、ベタインもまた、0〜1.5 Mまたは0.8 M〜1 Mの濃度で反応ミックス中に存在し、プライマーの総濃度は、3.6μM〜6.2μMである。いくつかの態様において、以下の試薬の任意のものが、反応ミックス中に存在する:20 mMのトリス緩衝液(pH 8.8)、10 mMのKCl、8 mMのMgSO
4、10 mM の(NH
4)
2SO
4、0.1%のTween 20、0.8 Mのベタイン、各々1.4 mMのdNTP、0.5 mMのMnCl
2、1.6μMのFIP、0.2μMのF3、0.2μMのB3、5.2μM(2
*(1.6+0.8+0.2))の総濃度のプライマー、および10μLあたり8 UのBst/Bst 2.0。
【0145】
上記の試薬濃度は、造塩発色pHセンサを使用して増幅反応の間に放出されるプロトンを検出することができるように、良好な増幅収率および低い緩衝能力を提供することが見出されている。いくつかの態様において、反応ミックス試薬の濃度は、酵素の選択に依存する。さらなる態様において、適切な試薬濃度に関する手引きは、酵素の製造業者から入手可能である。ある態様において、反応ミックス体積に対する試料体積の比は、反応ミックスを添加すると試料が5%〜40%に希釈されるようなものである。
【0146】
いくつかの態様において、増幅反応試薬は、反応ミックスに添加する前に別々に保存される。なぜなら、いくつかの試薬は、安定性のために必要とされる特定の条件を有するためである。例えば、酵素は、酵素の安定性を確実にするために他の試薬とは別々の適度な緩衝溶液中で長期に保存されることができる。緩衝剤は、反応ミックスにおいて残りの試薬と混合すると、pH変化を著しく遮断しないように十分に希釈される。加えて、関心対象の特定の遺伝子用のプライマーは、別々の溶液において、または凍結乾燥形態で提供されることができる。
【0147】
いくつかの態様において、増幅反応をマイクロチューブ内で行う。他の態様において、増幅反応を流体またはマイクロ流体構造内で行う。いくつかの態様において、流体またはマイクロ流体構造は、試薬および核酸試料を別々に受け入れ、次いで構成要素を一緒に混合するウェル、チャンバ、またはチャネルである。別の態様において、流体またはマイクロ流体構造は、あらかじめ混合された反応ミックスを受け入れるウェル、チャンバ、またはチャネルである。さらなる態様において、流体またはマイクロ流体構造は、比色観察のための長い光路、または蛍光/吸光励起源および検出器を有する。別の態様において、流体またはマイクロ流体構造は、凍結乾燥形態の試薬を受け入れ、その後、核酸試料および水和溶液を受け入れる。ある態様において、チャンバの流体またはマイクロ流体構造は、50μm〜400μmの範囲であるか、またはそれより長いチャネル深さを有する。さらなる態様において、比色観察は、50μm、50μm〜400μm、または50μm以上のチャネル深さ(光路長)について達成される。
【0148】
いくつかの態様は、増幅産物の比色検出のためのキットを含む。キットは、1種または複数種の造塩発色剤、増幅反応を触媒するための1種または複数種の酵素、ならびに、試料が標的核酸鋳型分子を含有する場合に増幅反応が起こって増幅反応産物を産生する条件下で、緩衝液および酵素および造塩発色剤を含む反応ミックスと試料を接触させることについての説明書であって、該反応ミックスが開始pHを有して、標的核酸鋳型分子が存在する場合には、増幅反応が、反応ミックスの開始pHを変化させて造塩発色剤の検出可能な比色変化を引き起こし、それにより標的核酸の存在が示され、および、標的核酸鋳型分子が存在しない場合には、増幅反応が、造塩発色剤の検出可能な比色変化を引き起こすのに十分な、反応ミックスの開始pHを変化させるのに十分な数のプロトンを生成せず、それにより増幅反応産物が産生されていないことが示される、説明書を含むことができる。別の態様において、説明書は、核酸鋳型分子を、反応ミックス中で造塩発色剤および酵素と、(1)増幅反応産物を産生するために核酸鋳型分子を増幅する増幅反応、および(2)反応ミックスの終了pHが、造塩発色剤の検出可能な比色変化を生じるほど十分に低く、それにより増幅反応産物が産生されていることが示されるような、十分な数のプロトンの生成、を結果としてもたらす条件下で接触させることについてのものである。さらなる態様において、キットはまた、酸または塩基、dNTP、プライマー、および一価陽イオンも含む。さらなる態様において、キットは、以下の試薬を以下の濃度で含む。
・マイクロリットルあたり少なくとも0.8単位のBstまたはBst 2.0ポリメラーゼ;
・0.8 Mのベタイン;
・合計で3.6μMのプライマー;
○1.6μMのFIPおよびBIPプライマー
○0.2μMのF3およびB3
・8 mMの硫酸マグネシウム;
・10 mMの硫酸アンモニウム;
・10 mMの塩化カリウム;
・反応ミックスの開始pHを調整するための水酸化ナトリウム;
・0.1%のTween20;
・各々1.4 mMのdNTP
・50μMのフェノールレッド
さらなる態様において、キットは、各々0.8μMのループFおよびループBプライマーを含む。
【0149】
キット
本明細書に開示される態様はまた、本方法にしたがって使用することができる、本装置を含むキットを含む。本キットは、本明細書に記載される態様またはその任意の組み合わせのいずれかにしたがって、2つ以上、たとえば複数、3つ以下、4つ以下、5つ以下、10以下または15以下または15以上の生物学的試料アッセイ用光学的性質改変装置もしくはその部品を含むことができる。
【0150】
キットは、キット中で装置とは別個の容器中に貯蔵されることができる1つまたは複数の組成物および/または試薬、たとえば本明細書に記載されるもののいずれか、たとえば光学的性質改変試薬、増幅組成物、調製溶液および/または緩衝液を含むことができる。加えて、キットは、キットの任意の局面の操作を容易にすることができる任意の装置または他の要素を含むことができる。たとえば、キットは、試料を調製する、および/または試料、たとえば調製された試料の1つまたは複数の特性を分析するための1つまたは複数の装置を含むことができる。キットはまた、パッケージ、たとえば装置を破損することなく発送するためのパッケージを含むことができる。
【0151】
特定の態様において、本明細書に開示されるキットは、指示、たとえば装置の取り扱い指示を含む。装置の取り扱い指示は、いくつかの局面において、適当な記録媒体に記録されている。たとえば、指示は、基材、たとえば紙またはプラスチックなどに印刷されたものであることができる。そのようなものとして、指示は、キット中に、パッケージ挿入物として、キットまたはその部品の容器のラベル中に(すなわち、パッケージまたはサブパッケージなどと関連して)存在することができる。他の態様において、指示は、適当なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、たとえばポータブルフラッシュドライブ、CD-ROM、ディスケット、クラウドなどの上に電子記憶データファイルとして存在する。指示は、1つまたは複数のプログラム、たとえばコンピュータアプリケーション内で記憶可能および/または再現可能であり得る。指示は、装置を使用する方法の完全な指示またはワールドワイドウェブ上に掲示された指示にアクセスすることができるウェブサイトアドレスを含む任意の形態をとることができる。
【0152】
有用性
上述のとおり、本装置および方法は、生物学的試料またはその局面の光学的性質を改変することによって生物学的アッセイを実行することに関する。本装置および方法は、改変された光学的性質のヒトの裸眼による検出を可能にするために十分なほど、光学的性質を改変する。そのようなものとして、本開示の内容は、生物学的アッセイによって発されたシグナルを読む、または解釈するための複雑な評価技術または装備の必要性を除く。ユーザは、改変された光学的性質を自らの眼で認識することができるため、本方法によってアッセイを実行すると、他の装備または方法を使用してそのようなアッセイを実行する場合に比べて時間および費用を減らすことができる。本装置はまた、流体ネットワークへの効率的なエネルギー伝導、たとえば熱または電気エネルギーおよび/または光学的性質、たとえば接着色の特定の変化を提供するように微調整されることができる。また、以前の生物学的アッセイは、分析において高度な複雑さを伴う、たとえば、1つまたは複数のコンピュータの使用を要求するものであり、それが他方で、限られた信頼性および利用可能性を提供するものであった。したがって、本方法および装置は、他のそのような装置または方法よりも廉価である、複雑ではない、および/または正確である。
【0153】
さらに、生物学的アッセイ装置をアセンブルする従来の方法は、基板層、たとえばガラス、ケイ素またはポリマーの層をパターニングする工程および次いで化学的または物理的接着を使用してそれをパターニングなしの封止装置に接着する工程を含むものであった。流体装置がアセンブルされた、たとえば結合および封止されることによってアセンブルされたならば、それは、流体システムを利用するために必要なさらなる機能性を提供するハウジングまたはカセットに組み込まれるものであった。しかし、多くのマイクロ流体装置結合技術は、任意の脆い事前装填試薬を損傷する危険性を有するものであった。本明細書に開示される装置形態を用いることにより、接着層を用いてマイクロ流体システムを封止すると同時に最終アセンブリに組み込みながらも、試薬機能性、たとえば反応チャンバに事前装填された試薬の機能性を保存することができるため、そのような難題は回避される。そのようなものとして、本方法および装置は、そのような装置の動作およびそのような装置の製造を簡単にしながらも、アッセイ結果を出す際に有効性を改善する。
【実施例】
【0154】
下記は、本発明を実施するための具体的態様の実施例である。実施例は、例証となる目的のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定するようには決して意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関しては精度を確実にする努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差が、当然許容されるべきである。
【0155】
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当技術分野の技能内の、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術、および薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993);A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989);Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3
rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0156】
実施例1:核酸増幅反応産物の比色検出
核酸増幅反応産物の比色検出のためのアッセイにおいて、以下の試薬を一緒に混合して2×試薬ミックスを作製した。
・16 mMの硫酸マグネシウム(Sigma Aldrich)
・20 mMの硫酸アンモニウム(Sigma Aldrich)
・20 mMの塩化カリウム(Sigma Aldrich)
・試薬ミックスの開始pHを8.8のpHに調整する濃度の水酸化ナトリウム(Sigma Aldrich)
【0157】
効率的な最初の重合化を可能にするために、試薬ミックスを、8.8の初期pHに調節した。試薬ミックスを、滅菌のために1時間オートクレーブした。次いで、以下の成分を試薬ミックスに添加して(滅菌形態において)、反応ミックスを生成した。
・0.1%(v/v)のTween20(Sigma Aldrich)
・各々1.4 mMのdNTP(NEB)
・50μMのフェノールレッド(Sigma Aldrich)
・マイクロリットルあたり0.8単位のBstポリメラーゼ(NEB)(酵素保存緩衝液は、反応ミックスに対して1 mMトリス緩衝液、5 mM KCl、0.01 mM EDTA、0.1 mM DTT、0.01% Triton X-100(v/v)、および5%グリセロール(w/v)をもたらす)
・0.8 Mのベタイン(Sigma Aldrich)
【0158】
プライマーおよび核酸鋳型を、反応ミックスに添加した。プライマーは、LAMP用に設計し、上述のように3.6μMの総濃度の2つのペアのプライマー(1×トリスEDTA緩衝液中に溶解)を含んだ。プライマーF3は配列:
を有し;プライマーB3は配列:
を有し;プライマーFIPは配列:
を有し;およびプライマーBIPは配列:
を有する。核酸鋳型分子を、マンソン住血吸虫から精製した。
図3は、核酸鋳型分子のSM1-7標的領域を示す(Hamburger et al, Detection of Schistosoma mansoni and Schistosoma haematobium DNA by Loop-Mediated Isothermal Amplification: Identification of infected Snails from Early Prepatency, Am J Trop Med Hyg, 2010を参照されたい)。陽性試験反応物は鋳型DNAを含有し、陰性対照反応物は水を含有した。反応ミックスは、7.5〜8.5の範囲の開始pHを有した。反応ミックスを、マイクロチューブ中で63℃までサーマルサイクラー上で加熱して、鋳型増幅を可能にした。45分のあらかじめ決められた反応期間の間に十分な鋳型増幅が起こり、該反応期間後に、結果として生じた反応ミックスの色を視覚的に観察した。
【0159】
増幅過程の間に、反応ミックスのpHは、反復可能な様式で7.5〜8.5から約6.6に低下した。
図4は、反復された陽性(試験)および陰性(陰性対照)の増幅反応についてのpH測定値を示すグラフである。使用した造塩発色剤は、6.8〜8.2の移行pH範囲を有するフェノールレッドであった。フェノールレッドは、この移行pH範囲にわたって赤色から黄色に(pHが上限pHから下限pHに下がる際に)色を変化させる。アッセイにおいて、反応ミックスは、核酸増幅の間のpH変化に応答して、赤色(pH 8.0)から黄色(pH 6.6)に色を変化させた。
図5は、反応終点での陽性および陰性の増幅反応の反応ミックスの画像のHSV(色相、彩度、明度)を用いた対比値における差を示すグラフである。色変化は、色相変数において定量的に示される。色変化が標的DNA増幅によるものであったことを確認するために、終点での反応物をゲル電気泳動を用いて解析し、アンプリコンの存在を検証した(
図6)。
【0160】
この方法を用いて、DNA鋳型の増幅を、反応終点でまたは反応中にわたってリアルタイムで、反応ミックスにおける色変化を視覚的に観察することにより、または反応ミックスの吸光度もしくは蛍光を測定することにより、容易に観察することができる。この機構は、他の比色検出技術と比較してはるかに大きな対比差を生じ、高価な光学計器装備の必要なく画像化することができる。
【0161】
実施例2:視覚的造塩発色剤を用いたLAMP増幅の検出
LAMP反応を、以下を含む反応ミックスで行った:10 mM (NH4)
2SO4、15 mM KCl、0.1 mM EDTA、0.1 mM DTT、0.01% Triton X-100(v/v)、5%グリセロール、8 mM MgSO
4、各々1.4 mMのdNTP、0.1% v/v Tween-20、0.8 Mベタイン。異なる標的に特異的な3つのプライマーペアを、FIP/BIPについては各々1.6μM、F3/B3については各々0.2μM、ループB/Fについては各々0.4μMの最終濃度になるように添加した。最終反応物体積は10μLであり、63℃で様々なインキュベーション時間の間保持した。
【0162】
図7において、反応ミックスの最終トリス緩衝液濃度を、0.34 mMから19 mMまで変動させた(様々な量のpH 8.8に配合したトリス緩衝液によって)。反応を、ラムダファージDNA用のプライマー、5 ngのラムダDNA(New England Biolabs)、0.8 U/μl Bst 2.0 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)、および0.2 mMニュートラルレッド(Sigma Aldrich)で行った。次いで、反応チューブを画像化し、正規化された色相値を、反応ミックスの色について算出した。正規化された色相値は、陽性反応物と鋳型を含まない陰性反応物との間の色相値における差として定義した。視覚化閾値(点線)を上回る正規化された色相値における変化によって示される色変化が、19 mMトリスという高さの緩衝液濃度について観察された。これは、>1 mMおよび<19 mMトリスと同等の緩衝能力を有する反応ミックスが、視覚的色変化の検出に十分なpH変化を可能にすることを示す。
【0163】
図8において、反応ミックスに添加される過剰のヒドロニウムイオンに対するこの視覚的検出法の許容度を評価した。この許容度は、ある範囲のヒドロニウムまたは水酸化物イオン等価物を反応物に添加し得る多種多様のDNA試料の使用を可能にするために重要である。反応を、2 mMの最終トリス緩衝液濃度、5 ngラムダDNA標的、0.8 U/μL Bst DNAポリメラーゼ、および0.2 mMニュートラルレッド造塩発色剤で行った。正規化された色相値における変化により、この視覚的検出ケミストリーが、10 uLの反応物あたり、4.8×10
-9から4.8×10
-18までの追加のヒドロニウムイオン等価物によって機能することが示される。
【0164】
図9A〜
図9Dにおいて、様々なpH指示薬および増幅標的とLAMP増幅の視覚的検出との適合性を評価した。反応を、1.2〜1.3 mMの範囲の最終トリス緩衝液濃度および0.8 U/μL Bst DNAポリメラーゼで行った。3種の異なる指示薬:50μMフェノールレッド、260μMクレゾールレッド、および160μMブロモチモールブルーを、5 ngラムダDNA標的とともに試験した(
図9A)。正規化された色相値における高い対比変化が、試験したすべての指示薬について観察された。
【0165】
濃度の掃引もまた、ラムダ標的とともに、これらの指示薬ブロモチモールブルー(
図9B左上)、クレゾールレッド(
図9B右上)、ニュートラルレッド(
図9B左下)、およびフェノールレッド(
図9B右下)について行い、上記ケミストリーと適合性である広範囲の濃度が示された。130 ngのマンソン住血吸虫gDNAを50μMフェノールレッドとともに(
図9C)、およびヒトGAPDH mRNAを0.2 mMニュートラルレッドとともに(
図9D)用いたLAMPアッセイもまた試験し、これらの標的の視覚的検出を終点で示した。
【0166】
図10において、様々なポリメラーゼとLAMP増幅の視覚的検出との適合性を評価した。反応を、1.3 mMの最終トリス緩衝液濃度、5 ngラムダDNA標的、および0.2 mMニュートラルレッドで行った。0.8 U/μlの2種の異なるポリメラーゼ、Bst 2.0およびGspm 2.0(OptiGene)を使用した。高い色対比変化が、両方のポリメラーゼについて60分のインキュベーション後に観察された(
図10)。
【0167】
(表2)使用した配列
【0168】
実施例3:ミリメートルに満たない光路長におけるLAMP増幅の視覚的検出
LAMP反応を、実施例1のように、1.3 mMの最終トリス緩衝液濃度(pH 8.8に配合した緩衝液)、0.8 U/μlのBst 2.0 DNAポリメラーゼ、5 ngラムダDNA鋳型、および、0.2 mMニュートラルレッドまたは160μMブロモチモールブルーで行った。陽性反応物および鋳型を含まない陰性反応物の両方を、増幅後に、様々なチャネル深さを有するフローチャンバに添加した(ニュートラルレッドについては
図11A、およびブロモチモールブルーについては
図11B)。これらのフローチャンバは、50μm〜400μmの範囲にわたるチャネル深さを有し、アクリル樹脂に機械加工されていた。陽性反応物と陰性反応物との間の高い色対比差(視覚的検出閾値;点線を上回る)が、50μmおよびそれを上回るチャネル深さについて観察された。これにより、この視覚的検出ケミストリーが、ミリメートルに満たない光路長(深さ)およびそれを上回るものを有する反応チャンバにおける使用に適用可能であることが示される。そのような反応チャンバを、使用する試薬の量を低減させるため、および複数の反応がある一定の占有面積において(例えば、マイクロ流体カートリッジにおいて)起こるのを可能にするために使用することができる。
【0169】
実施例4:選択的通気要素を有する装置におけるLAMP増幅の検出
1.6mM最終Tris緩衝液濃度(緩衝液はpH8.8に調合)、0.8U/μLのBst 2.0 DNAポリメラーゼ、5ngラムダDNA鋳型ならびにそれぞれ50μMおよび160μM濃度のフェノールレッドおよびブロモチモールブルーを用いて、実施例1におけるようにLAMP反応を実施した。溶液を、試料受け入れ入力および通気出口からなる反応チャンバを有する流体装置に装填した。各反応チャンバの通気出口を選択的通気要素、たとえば自己封止性要素で封止した。交互のチャンバが乾燥ラムダプライマーをその中に有していた。試料受け入れ入力はすべて、装置入口に接続されたバスチャネルに接続されている。反応チャンバを63℃で1時間加熱した。チャンバ中の色変化をカメラによって計測した。データが
図16に示されている。
【0170】
実施例5:視覚的造塩発色剤を用いた鎖置換増幅(SDA)の検出
SDA反応を、以下を含む反応ミックスを用いて行った:1.3 mMの最終トリス緩衝液濃度(pH 8.8に配合した緩衝液)、10 mM (NH4)
2SO4、50 mM KCl(pH 8.5に調節)、8 mM MgSO
4、各々4.4 mMのdATP、dGTP、dTTP、0.8 mM dCTP-αS(TriLink Biotechnologies)、0.1% v/v Tween-20、0.8 Mベタイン、0.32 U/μl Bst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)、0.2U/uL BSoBI(New England Biolabs)、および0.2 mMニュートラルレッド造塩発色剤。ヒトBRCA1用に設計したプライマー(SDAf
、SDAr
、BF
、BR
)を、各々0.5μMの最終濃度で反応物に添加した。5 ngのHeLa gDNAを25μLの最終反応物体積に添加して、65℃で様々なインキュベーション時間の間保持した。経時的な正規化された色相値における変化(
図12)により、この視覚的検出ケミストリーがSDAで機能することが示される。
【0171】
実施例6:視覚的造塩発色剤を用いたPCR増幅の検出
PCR反応を、以下を含む反応ミックスを用いて行った:50 mM KClおよび2 mM MgCl
2(8.5に調節したpH)、各々0.5 mMのdNTP、5U Taq DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)、および0.2 mMニュートラルレッド造塩発色剤。酵素保存緩衝液およびプライマ
ーからの持ち越し総トリス-HCl濃度は、最終反応ミックスにおいて1.15 mMであった。プライマーを、大腸菌(Escherichia coli)16s rRNA遺伝子用に設計し、各々0.5μMの最終濃度で反応物に添加した。10 ngの大腸菌gDNAを25μLの最終反応物体積に添加して、最初に95℃ホールドで2分間保持し、その後、95℃で10秒間、55℃で30秒間、68℃で30秒間の50サイクルを行った。経時的な正規化された色相値における変化(
図13)により、この視覚的検出ケミストリーがPCRで機能することが示される。
【0172】
実施例7:造塩発色剤の組み合わせによる視覚的検出対比差の増大
LAMP反応を、実施例1のように、1.3 mMの最終トリス緩衝液濃度(pH 8.8に配合した緩衝液)、0.8 U/μlのBst 2.0 DNAポリメラーゼ、および5 ngラムダDNA鋳型で行った。色対比変化を、50μM濃度のフェノールレッド、ならびに、それぞれ50μMおよび160μM濃度のフェノールレッドおよびブロモチモールブルーの組み合わせについて評価した(
図14A)。色対比変化をまた、260μM濃度のクレゾールレッド、ならびに、それぞれ260μMおよび160μM濃度のクレゾールレッドおよびブロモチモールブルーの組み合わせについても評価した(
図14B)。対比値を、式:0.299R+0.587G+0.114Bを用いて、反応ミックスの画像のRGB値から算出した。正規化された対比変化を、バックラウンドに対して正規化した、陽性反応物対比値と陰性反応物対比値との間の差として定義した。造塩発色剤の組み合わせの使用による正規化された対比変化における増大により、そのような組み合わせの有用性が示される。
【0173】
実施例8:視覚的造塩発色剤を用いた定量のための増幅のリアルタイム色モニタリング
LAMP反応を、実施例1のように、1.3 mMの最終トリス緩衝液濃度(pH 8.8に配合した緩衝液)、0.8 U/μlのBst 2.0 DNAポリメラーゼ、それぞれ50μMおよび160μM濃度のフェノールレッドおよびブロモチモールブルー、ならびに様々なラムダDNA鋳型濃度で行った。色対比変化を、0.5 fg/μl、0.05 pg/μl、および0.5 pg/μlの最終濃度のラムダDNA標的について評価した。対比値を、実施例5に記載したように、反応ミックスの画像のRGB値から算出した。結果(
図15)によって、より高いDNA濃度は、より低いDNA濃度よりも早く、視覚的対比における検出可能な変化をもたらすことが示される。したがって、本発明者らは、このケミストリーのリアルタイム色モニタリングにより様々な標的濃度を識別できることを示す。
【0174】
本発明は、好ましい態様および様々な代替態様を参照しながら具体的に示され、説明されたが、当業者には、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更をその中で加えることができることが理解されよう。
【0175】
本明細書の本文内で引用されるすべての参考文献、特許および特許出願は、あらゆる趣旨に関して参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0176】
本明細書の中で引用されるすべての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が参照により具体的かつ個別に本明細書に組み入れられることが示されるかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。任意の刊行物の引用は、出願日よりも前のその開示に関する引用であり、先行発明のせいで本発明がそのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0177】
前記発明は、理解を明確にするために例示によっていくらか詳細に説明されたが、本発明の教示を考慮すると、当業者には、特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく、それに対して特定の変更および改変を加えることができることが容易に明らかであろう。