特許第6891212号(P6891212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891212
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】射出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/46 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   B29C45/46
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-76804(P2019-76804)
(22)【出願日】2019年4月15日
(65)【公開番号】特開2020-172090(P2020-172090A)
(43)【公開日】2020年10月22日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】田中 和憲
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−209783(JP,A)
【文献】 特開平08−318551(JP,A)
【文献】 特開2014−113785(JP,A)
【文献】 実公昭35−007978(JP,Y1)
【文献】 特開2009−061656(JP,A)
【文献】 特開平10−329179(JP,A)
【文献】 特開平06−328532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 33/00 − 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤を含む型締装置に対応して設置される射出装置であって、
この射出装置は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒の基部に備えられ落下する樹脂材料を前記加熱筒内へ導く材料落下口を有する落下口ブロックと、この落下口ブロックを介して前記加熱筒を支えつつ前記加熱筒の長手軸に直交するように延びる射出台と、前記加熱筒の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズルと、このノズルが前記固定盤に取付けられている固定型にタッチするように前記加熱筒を移動する一対の射出装置移動手段とを備え、
前記落下口ブロックに、前記長手軸に直交する方向へ延びる支持台を付設し、
この支持台と前記固定盤とに前記射出装置移動手段掛け渡され、
前記スクリューは、スクリュー支持板で支持され、
このスクリュー支持板は、前記加熱筒から離れる方向へ延びる一対のねじ軸で支持され、
前記ねじ軸の一端は、軸受を介して前記射出台に回転自在に支持され、
前記支持台と前記射出台との間に隙間が設けられていることを特徴とする射出装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出装置であって、
前記支持台は、前記落下口ブロックに当てる座と、この座から前記長手軸に直交する方向へ延びる上壁、下壁、前壁及び後壁とからなる角筒形状物であることを特徴とする射出装置。
【請求項3】
請求項2記載の射出装置であって、
前記支持台は、前記上壁に平行であって前記前壁と前記後壁とを繋ぐ補強中壁を備えていることを特徴とする射出装置。
【請求項4】
請求項1記載の射出装置であって、
前記射出装置移動手段は、前記支持台に取付けられる油圧シリンダと、この油圧シリンダのピストンロッドに連結され前記固定盤側へ延びる中継軸と、この中継軸の先端に連結され前記中継軸の外径より大きな外径の鍔を有する鍔付き金具と、この鍔付き金具を前記固定盤に着脱可能に固定する固定金具とからなることを特徴とする射出装置。
【請求項5】
請求項4記載の射出装置であって、
前記油圧シリンダは、その前部が前記支持台に固定され、残部は非固定とされていることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載の射出装置であって、
前記固定金具は、前記中継軸の外径より大きく且つ前記鍔の外径より小径の貫通穴を備え、前記中継軸をガイドにして前記支持台近傍まで移動できるようにされていることを特徴とする射出装置。
【請求項7】
固定盤を含む型締装置に対応して設置される射出装置であって、
この射出装置は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支えつつ前記加熱筒の長手軸に直交するように延びる射出台と、前記加熱筒の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズルと、このノズルが前記固定盤に取付けられている固定型にタッチするように前記加熱筒を移動する一対の射出装置移動手段とを備え、
前記射出台は、前記長手軸に平行に且つ前記加熱筒から離れる方向へ延びる複数本のシャフトと、これらのシャフトの先端に取付けられ前記射出台に平行に配置される射出駆動台とを備え、
前記射出台は、前記長手軸に平行に配置され前記射出台と前記射出駆動台とを繋ぐ一対の補強フレームをさらに備え、
この補強フレームと前記固定盤とに前記射出装置移動手段を掛け渡したことを特徴とする射出装置。
【請求項8】
請求項7記載の射出装置であって、
前記射出装置移動手段に油圧シリンダが含まれ、この油圧シリンダの前部及び後部が前記補強フレームに固定されていることを特徴とする射出装置。
【請求項9】
固定盤を含む型締装置に対応して設置される射出装置であって、
この射出装置は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支えつつ前記加熱筒の長手軸に直交するように延びる射出台と、前記加熱筒の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズルと、このノズルが前記固定盤に取付けられている固定型にタッチするように前記加熱筒を移動する一対の射出装置移動手段とを備え、
前記射出台は、前記長手軸に平行に且つ前記加熱筒から離れる方向へ延びる複数本のシャフトと、これらのシャフトの先端に取付けられ前記射出台に平行に配置される射出駆動台とを備え、
前記一対の射出装置移動手段を、前記射出台と前記射出駆動台とに接続したことを特徴とする射出装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項記載の射出装置であって、
前記シャフトは、シャフト本体部と、このシャフト本体部の両端に設けられ前記シャフト本体部より小径の小径部とを備え、前記小径部を前記射出台及び前記射出駆動台に挿入することにより、前記シャフト本体部で前記射出台を基準とする前記射出駆動台の位置決めがなせることを特徴とする射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置に対応して設置される射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置は、型締装置と射出装置とを要部とする。そして、射出装置は、加熱筒を要部とする。この加熱筒は、射出装置移動手段で移動され、ノズルが金型に当てられる。この後、加熱筒から樹脂材料が金型へ射出される。
【0003】
従来、加熱筒を要部とする射出装置として、各種の形態のものが知られている(例えば、特許文献1(図2図4)参照)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は従来の技術の基本構成を説明する図である。
図10(a)に示すように、射出成形装置100は、型締装置101と、射出装置111とを要部とする。
型締装置101は、ベース102に固定された固定盤103と、この固定盤103から延びるタイバー104と、このタイバー104で案内される可動盤105とを備えている。固定盤103に固定型106が取付けられ、可動盤105に可動型107が取付けられる。
【0005】
射出装置111は、加熱筒112を要部とし、テーブル113に移動可能に載せられている。加熱筒112などは、射出装置移動手段114で、移動され、加熱筒112先端のノズル115が、固定型106(又は固定盤103)にタッチする。
図10(a)の構造では、固定盤103は下端だけベース102に固定されている。固定盤103は、下端のみが固定され、上に延びる片持ち梁である。片持ち梁は先端(上端 )の撓みが最大となる。
そのため、固定盤103は、ノズル115で押されると、図面左へ倒れる。
【0006】
この倒れを解消することができる構造の射出装置120が、図10(b)に開示されている。
図10(b)に示すように、改良された射出装置120は、固定盤121から延びる上ロッド122及び下ロッド123と、これらのロッド122、123の先端に連結されテーブル124に固定されている射出駆動台125と、この射出駆動台125に取付けられている射出駆動部材126と、ロッド122、123を囲うようにしてロッド122、123に移動可能に取付けられている上筒127及び下筒128と、これらの筒127、128の一端に固定され加熱筒129を支える第1射出台131と、筒127、128の他端に固定され射出駆動部材126で駆動される第2射出台132とからなる。
【0007】
射出駆動部材126で駆動され、第2射出台132、筒127、128及び第1射出台131が一括して移動され、加熱筒129先端のノズル133が固定盤121(又は固定型)にノズルタッチされる。
固定盤121は、上ロッド122及び下ロッド123で水平移動が抑制されるため、倒れが抑制される。
【0008】
しかし、改良された射出装置120においても、次に述べる問題点がある。
先ず、ノズルタッチの反力で、第1射出台131が、線Aのように湾曲化する。ノズルタッチの反力が大きい程、湾曲の度合いが大きくなる。湾曲が大きくなると、上ロッド122に対する上筒127の移動が不自由になり、下ロッド123に対する下筒128の移動が不自由になる。
第1射出台131の湾曲化を抑制する構造が求められる。
【0009】
また、第2射出台132の外側に、射出駆動台125及び射出駆動部材126が配置されるため、射出装置120の全長L1が、大きくなる。
射出成形装置120のコンパクト化が求められる中、全長が小さな射出装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−134808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、射出台の湾曲化が抑制でき且つ全長が小さな射出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、固定盤を含む型締装置に対応して設置される射出装置であって、
この射出装置は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒の基部に備えられ落下する樹脂材料を前記加熱筒内へ導く材料落下口を有する落下口ブロックと、この落下口ブロックを介して前記加熱筒を支えつつ前記加熱筒の長手軸に直交するように延びる射出台と、前記加熱筒の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズルと、このノズルが前記固定盤に取付けられている固定型にタッチするように前記加熱筒を移動する一対の射出装置移動手段とを備え、
前記落下口ブロックに、前記長手軸に直交する方向へ延びる支持台を付設し、
この支持台と前記固定盤とに前記射出装置移動手段掛け渡され、
前記スクリューは、スクリュー支持板で支持され、
このスクリュー支持板は、前記加熱筒から離れる方向へ延びる一対のねじ軸で支持され、
前記ねじ軸の一端は、軸受を介して前記射出台に回転自在に支持され、
前記支持台と前記射出台との間に隙間が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の射出装置であって、
前記支持台は、前記落下口ブロックに当てる座と、この座から前記長手軸に直交する方向へ延びる上壁、下壁、前壁及び後壁とからなる角筒形状物であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の射出装置であって、
前記支持台は、前記上壁に平行であって前記前壁と前記後壁とを繋ぐ補強中壁を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1記載の射出装置であって、
前記射出装置移動手段は、前記支持台に取付けられる油圧シリンダと、この油圧シリンダのピストンロッドに連結され前記固定盤側へ延びる中継軸と、この中継軸の先端に連結され前記中継軸の外径より大きな外径の鍔を有する鍔付き金具と、この鍔付き金具を前記固定盤に着脱可能に固定する固定金具とからなることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の射出装置であって、
前記油圧シリンダは、その前部が前記支持台に固定され、残部は非固定とされていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5記載の射出装置であって、
前記固定金具は、前記中継軸の外径より大きく且つ前記鍔の外径より小径の貫通穴を備え、前記中継軸をガイドにして前記支持台近傍まで移動できるようにされていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、固定盤を含む型締装置に対応して設置される射出装置であって、
この射出装置は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支えつつ前記加熱筒の長手軸に直交するように延びる射出台と、前記加熱筒の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズルと、このノズルが前記固定盤に取付けられている固定型にタッチするように前記加熱筒を移動する一対の射出装置移動手段とを備え、
前記射出台は、前記長手軸に平行に且つ前記加熱筒から離れる方向へ延びる複数本のシャフトと、これらのシャフトの先端に取付けられ前記射出台に平行に配置される射出駆動台とを備え、
前記射出台は、前記長手軸に平行に配置され前記射出台と前記射出駆動台とを繋ぐ一対の補強フレームをさらに備え、
この補強フレームと前記固定盤とに前記射出装置移動手段を掛け渡したことを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項7記載の射出装置であって、
前記射出装置移動手段に油圧シリンダが含まれ、この油圧シリンダの前部及び後部が前記補強フレームに固定されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明は、固定盤を含む型締装置に対応して設置される射出装置であって、
この射出装置は、加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒を支えつつ前記加熱筒の長手軸に直交するように延びる射出台と、前記加熱筒の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズルと、このノズルが前記固定盤に取付けられている固定型にタッチするように前記加熱筒を移動する一対の射出装置移動手段とを備え、
前記射出台は、前記長手軸に平行に且つ前記加熱筒から離れる方向へ延びる複数本のシャフトと、これらのシャフトの先端に取付けられ前記射出台に平行に配置される射出駆動台とを備え、
前記一対の射出装置移動手段を、前記射出台と前記射出駆動台とに接続したことを特徴とする。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項7〜9のいずれか1項記載の射出装置であって、
前記シャフトは、シャフト本体部と、このシャフト本体部の両端に設けられ前記シャフト本体部より小径の小径部とを備え、前記小径部を前記射出台及び前記射出駆動台に挿入することにより、前記シャフト本体部で前記射出台を基準とする前記射出駆動台の位置決めがなせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明では、落下口ブロックに支持台を取付け、この支持台に射出装置移動手段を取付けた。
仮に、射出台と固定盤とを射出装置移動手段で繋ぐと、ノズルタッチの反力で射出台が湾曲化する。
本発明では、射出台とは別部材である支持台に射出装置移動手段を取付け、支持台と固定盤とを射出装置移動手段で繋ぐようにした。
ノズルタッチの反力で支持台が湾曲化するが、別部材である射出台は湾曲化しない。
【0023】
また、射出装置移動手段は、射出装置の中央付近に位置する支持台に取付けるため、射出装置移動手段が、射出装置から大きく張り出すことはない。結果、射出装置の全長を短くすることができる。
よって、本発明によれば、射出台の湾曲化が抑制され且つ全長が小さな射出装置が提供される。
加えて、支持台と射出台との間に隙間があるため、この隙間の大きさが変化することがあっても、射出台が変形することはない。
射出台に軸受を介してねじ軸が支持されているが、射出台が変形しないので、軸受及びねじ軸の寿命が短くなることがない。
【0024】
請求項2に係る発明では、支持台は、落下口ブロックに当てる座と、この座から長手軸に直交する方向へ延びる上壁、下壁、前壁及び後壁とからなる角筒形状物である。
支持台は、中空体であるため、中実体に比較して、軽量化が図れる。
【0025】
請求項3に係る発明では、支持台は、上壁に平行な補強中壁を備えている。補強中壁により、外力の作用方向の剛性を高めることができる。
【0026】
請求項4に係る発明では、射出装置移動手段は、油圧シリンダと、中継軸と、鍔付き金具と、固定金具とからなる。固定盤から固定金具を分離することで、固定盤から射出装置移動手段を分離することができ、加熱筒の旋回が可能となる。
【0027】
請求項5に係る発明では、油圧シリンダは、その前部が支持台に固定され、残部はフリーである。ピストンロッドに曲げ力が加わったときに、油圧シリンダは傾いて、曲げの影響が緩和される。
【0028】
請求項6に係る発明では、固定金具は、中継軸の外径より大きく且つ鍔の外径より小径の貫通穴を備えている。
射出装置を旋回させる前に、重量物である固定金具を支持台近傍まで移動することができ、この移動のときに中継軸をガイド部材とすることができるため、固定金具の移動が容易になる。
【0029】
請求項7に係る発明では、射出装置は、加熱筒と、スクリューと、加熱筒を支える射出台と、一対の射出装置移動手段と、射出台から延びる複数本のシャフトと、これらのシャフトの先端に取付けられる射出駆動台と、射出台と射出駆動台とを繋ぐ一対の補強フレームと、補強フレームに取付けられる射出装置移動手段とを備えている。
射出台と射出駆動台は、複数本のシャフトに加え、一対の補強フレームで繋がれているため、射出台の曲げ剛性が高める。高剛性であるため、射出台の湾曲化が抑制される。
また、射出装置移動手段は補強フレームに沿って配置されるため、射出装置移動手段が射出装置から張り出す心配はない。
よって、本発明によれば、射出台の湾曲化が抑制され且つ全長が小さな射出装置が提供される。
【0030】
請求項8に係る発明では、油圧シリンダの前部及び後部が補強フレームに固定されている。油圧シリンダが補強フレームを補強する役割を果たすため、補強フレームの曲げ剛性が高まる。
【0031】
請求項9に係る発明では、請求項7の補強フレームを射出装置移動手段で兼ねるようにした。請求項7の効果を引き継ぎながら、補強フレームを省くことができる。
よって、本発明によれば、射出台の湾曲化が抑制され且つ全長が小さな射出装置が提供される。
【0032】
請求項10に係る発明では、シャフトは、シャフト本体部の両端に小径部を備える。小径部を射出台及び射出駆動台に挿入することにより、シャフト本体部で射出台を基準とする射出駆動台の位置決めがなせる。次に、射出台と射出駆動台に、補強フレーム(又は補強フレームを兼ねる射出装置移動手段)を掛け渡すよう場合、シャフトにより射出駆動台の位置決めが済んでいるため、補強フレーム(又は補強フレームを兼ねる射出装置移動手段)の取付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る射出装置を含む射出成形装置の断面図である。
図2】本発明に係る射出装置を含む射出成形装置の側面図である。
図3図2の3矢視図であって、射出装置の平面図である。
図4図3の4部拡大断面図である。
図5】固定金具の移動を説明する図である。
図6】支持台の構造を説明する図であり、(a)は(b)のa矢視図、(b)は支持台の平面図、(c)は(b)のc矢視図、(d)は(b)のd−d線断面図である。
図7】補強フレームの取付け手順を説明する図である。
図8】変更例に係る射出装置の平面図である。
図9】更なる変更例に係る射出装置の平面図である。
図10】従来の技術の基本構成を説明する図であり、(a)は従来の射出装置を説明する図、(b)は改良され従来の射出装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0035】
図1に示すように、射出成形装置10は、型締装置20と射出装置30とを主要素とする。
型締装置20は、固定型21と可動型22とからなる金型を型締めする装置であり、ベース23と、このベース23に固定されている固定盤24及び型締手段25と、固定盤24と型締手段25とに掛け渡されるタイバー26と、タイバー26で案内される可動盤27とを備える。
固定盤24に固定型21が取付けられ、可動盤27に可動型22が取付けられ、型締手段25で型締めが行われる。
なお、型締手段25は、油圧シリンダ、トグル機構、電動シリンダの何れであってもよい。
【0036】
射出装置30は、加熱筒31と、この加熱筒31に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー32と、加熱筒31の基部に備えられホッパ33から落下する樹脂材料を加熱筒31内へ導く材料落下口34を有する落下口ブロック35と、この落下口ブロック35を介して加熱筒31を支える射出台36と、加熱筒31の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズル37とを備えている。
【0037】
図2に示すように、射出装置30は、テーブル41に載っており、射出装置移動手段42の縮動で型締装置20に接近し、射出装置移動手段42の伸動で型締装置20から離れる。
【0038】
図3に示すように、材料落下口34を有する落下口ブロック35の側面に、一対の支持台70が取付けられている。支持台70は、加熱筒31の長手方向の中心軸(以下、長手軸という)31aに直交する方向に延びている。
このような支持台70の先端部に、射出装置移動手段42の要部である油圧シリンダ43が取付けられいる。
【0039】
すなわち、一対の射出装置移動手段42は、長手軸31aに平行に且つ長手軸31aから所定距離離れた位置に配置されている。2つの所定距離を同一とすることで、一方の射出装置移動手段42と他方の射出装置移動手段42を、長手軸31aに対称に配置することが望ましい。なお、配置の都合などで必要があれば、一対の所定距離のうち、一方と他方に差を付けることは差し支えない。
【0040】
油圧シリンダ43のピストンロッド44に中継軸45がねじ結合され、この中継軸45の先端に鍔付き金具46がねじ結合され、この鍔付き金具46が固定金具47及びボルト48により固定盤24に接続(連結)される。
【0041】
すなわち、射出装置移動手段42は、支持台70に取付けられる油圧シリンダ43と、この油圧シリンダ43のピストンロッド44に連結され固定盤24側へ延びる中継軸45と、この中継軸45の先端に連結される鍔付き金具46と、この鍔付き金具46を固定盤24に着脱可能に固定する固定金具47とからなる。
【0042】
落下口ブロック35を介して加熱筒31を支える射出台36も、加熱筒31の長手軸31aに直交する方向に延びている。ただし、射出台36と支持台70とは、分離され、繋がっていない。
【0043】
このような射出台36は、加熱筒31から離れる方向へ延びる複数本(この例では上下左右の4本)のシャフト51と、これらのシャフト51の先端に且つ射出台36に平行に配置される射出駆動台52と、シャフト51で案内されスクリュー32を回転自在に支持するスクリュー支持板53と、このスクリュー支持板53を貫通するようにして射出駆動台52と射出台36に渡される一対のねじ軸54と、スクリュー支持板53に取付けられねじ軸54にねじ込まれるナット55とを備えている。
ねじ軸54は、摩擦損失が小さいボールねじが好適である。このときは、ナット55はボールナットとする。
【0044】
ねじ軸54の一端は、軸受56を介して射出台36で回転自在に支持され、他端は軸受57を介して射出駆動台52で回転自在に支持され、この他端にプーリ58が固定されている。
スクリュー前後進モータ(図1、符号59)とベルト(図1、符号61)で、プーリ58が回されると、ねじ軸54が回転し、非回転のナット55を介してスクリュー支持板53が前進又は後進することにより、加熱筒31に対してスクリュー32が前進又は後進する。
また、スクリュー32は、プーリ63を付属し、このプーリ63がスクリュー回転モータ(図1、符号64)及びベルト65で、回される。
【0045】
図4に示すように、鍔付き金具46は、鍔46aと、この鍔46aから延びるネック46bと、このネック46bから延びるねじ部46cとからなる。
中継軸45は、端部に雌ねじ部45aを有する中空軸が好ましい。中実軸よりも軽量である。
【0046】
固定金具47は、鍔46aを収納する凹部47aと、この凹部47aを囲う部位に設けられたボルト穴47bと、凹部47aに繋がる貫通穴47cとを有するカップである。このカップは厚肉であるため、重い。
【0047】
図1において、保守点検等の都合で、射出装置30を後退させた後に水平旋回させることがある。この旋回のときに、図2に示す中継軸45が邪魔になる。
そこで、図5に示すように、ボルト48を外し、固定金具47を固定盤24から外す(分離する)。これで、射出装置30は水平旋回が可能となる。しかし、固定金具47が重く、中継軸45の撓みが大きくなる。
【0048】
対策として、本発明では、矢印(1)、(2)、(3)のように、中継軸45に沿って固定金具47を移動し、重い固定金具47を適当なアタッチメント66を用いて支持台70に仮受け(臨時的に支持)させるようにした。
そのために、図4において貫通穴47cは、鍔46aの外径よりは小径で、ネック46b及び中継軸45の外径より大径にした。これで、矢印(1)、(2)、(3)の移動が可能となった。
なお、アタッチメント66は、山形鋼や軽量山形鋼が好適であるが、形態は任意である。また、アタッチメント66を用いてないで、固定金具47を直接支持台70に仮止めしてもよい。
【0049】
図6に基づいて、支持台70の構造を詳しく説明する。
図6(a)に示すように、支持台70は、落下口ブロック(図5、符号35)に当られる座71と、この座71から延びる上壁72及び下壁73と、この下壁73と上壁72との間に配置される補強中壁74と、前壁75とを備えている。
図6(b)に示すように、支持台70は、更に後壁76を備えている。
図6(c)に示すように、上壁72と下壁73は後壁76より突き出ており、この突き出ている部位において、上壁72と下壁73に、油圧シリンダ(図5、符号43)を固定するボルトをねじ込む雌ねじ部77が形成されている。
【0050】
図6(d)に示すように、支持台70は、上壁72及び下壁73と、これらの壁72、73の前端を繋ぐ前壁75と、壁72、73の後端を繋ぐ後壁76と、上壁72及び下壁73に平行で前壁75と後壁76とを繋ぐ補強中壁74とを有する角筒形状物であり、鋳造品(鋳鋼品を含む。)である。
【0051】
補強中壁74で補強されているため、図中、外力F1及びF2に対して良好な剛性を有する。すなわち、補強中壁74により、外力の作用方向の剛性を高めることができる。
【0052】
また、角筒形状物であるために、中実物に比較して軽量化が図れる。
なお、支持台70は、鋳造品の他、鋼板同士を溶接した溶接構造物であってもよい。
また、上壁72及び下壁73で、必要な耐久性が得られる場合は、補強中壁74を省くことができる。ただし、補強中壁74を設けることで、上壁72及び下壁73を薄くすることができる。よって、補強中壁74を設けるか否かは、任意である。
【0053】
以上の構成からなる射出装置30の作用を、次に述べる。
図3において、油圧シリンダ43を縮動することで、所定のノズルタッチ力を発生する。このノズルタッチの反力により、支持台70が線Bのように撓む。なお、線Bは誇張して表示した。
本発明によれば、支持台70と射出台36との間に隙間78があり、この隙間78の大きさが変化することはあっても、射出台36が変形することはない。
【0054】
仮に、支持台70が無く、油圧シリンダ43が射出台36に取付けられている形態を想定する。すると、射出台36が変形する。射出台36が変形すると、軸受56及びボールねじ54に無理が掛かり、軸受56及びボールねじ54の寿命に悪影響が及ぶ。
この点、本発明では、支持台70を設けることにより、射出台36が変形しないようにしたので、軸受56及びボールねじ54の寿命が短くなることはない。
【0055】
また、油圧シリンダ43は、その前部(前端)が支持台70に固定され、残部は非固定(フリー)とされている。ピストンロッド44に曲げ力が加わったときに、油圧シリンダ43は傾いて、曲げの影響が緩和される。この緩和により、油圧シリンダ43の寿命を延ばすことができる。
【0056】
次に、本発明の変更例を、図7及び図8に基づいて説明する。
図7に示すように、シャフト51は、シャフト本体部51aと、このシャフト本体部51aの両端に設けた小径部51bとからなる。小径部51bはシャフト本体部51aより小径である。そして、シャフト本体部51aの長さは、精密に仕上げられている。
2つの小径部51bのうち、一方の小径部51bを射出台36に挿入し、他方の小径部51bを射出駆動台52に挿入し、小径部51bの先端にナット79を各々ねじ込む。
シャフト本体部51aと小径部51bの境界における段部で射出台36と射出駆動台52の位置決めがなされる。
すなわち、段付きのシャフト51により、射出台36を基準とする射出駆動台52の位置が正確に定められる。
【0057】
次に、位置が定められている射出台36と射出駆動台52とに、補強フレーム81をボルト82で固定する。
シャフト51で、射出台36に対する射出駆動台52の位置決めがなされているため、補強フレーム81は単に取付けるだけでよく、この取付け作業は容易である。
その他の構成要素は、図3の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0058】
なお、補強フレーム81は、I断面の他、コ字(チャンネル)断面やT字断面にしてもよいため、形状は任意である。
コ字断面は、1個のウェブの両端から2個のフランジが延びるため、I断面より、断面係数が大きくなり、剛性が高まる。また、T字断面は、1個のウェブの中央から1個のフランジが延びるため、I断面より、断面係数が大きくなり、剛性が高まる。
コ字断面やT字断面の場合は、ウェブをスクリュー支持板53側にし、フランジを外に延ばすことで、スクリュー支持板53との干渉を避けるようにすればよい。
【0059】
図8に示すように、補強フレーム81に、射出装置移動手段42としての油圧シリンダ43を取付ける。
射出台36と射出駆動台52とは、シャフト51に加えて補強フレーム81で繋がれ、全体として口字状の丈夫なフレーム構造体となる。
ノズルタッチの反力が、射出台36に作用した場合、射出台36の端部が、シャフト51、補強フレーム81及び射出駆動台52で支持されているため、射出台36の端部が変位することはない。変位したとして僅かである。
結果、軸受56に影響するような変形は、射出台36に発生しなくなる。
【0060】
この例では、油圧シリンダ43の前部及び後部を補強フレーム81に固定したが、油圧シリンダ43は、前部のみを補強フレーム81に固定することや、中央のみを補強フレーム81に固定することは差し支えない。
ただし、油圧シリンダ43の前部及び後部を補強フレーム81に固定すると、油圧シリンダ43が補強フレーム81を補強する役割を果たし、補強フレーム81の曲げ剛性がさらに高まる。よって、油圧シリンダ43の前部及び後部を補強フレーム81に固定することが推奨される。
【0061】
次に、更なる変更例を、図9に基づいて説明する。
図9に示すように、シャフト51で位置決めされている射出台36と射出駆動台52に、射出装置移動手段42としての油圧シリンダ43をボルト82で固定する。
油圧シリンダ43は、高圧に与えるように厚肉の鋼管を主たる構成要素とする。
【0062】
射出台36と射出駆動台52とは、シャフト51に加えて丈夫な射出装置移動手段42(油圧シリンダ43)で繋がれ、全体として口字状の丈夫なフレーム構造体となる。結果、射出台36の変形が抑制され、軸受56に影響するような変形は発生しなくなる。
【0063】
尚、図3において、落下口ブロック35に加熱筒31をボルト止めする他、落下口ブロック35を加熱筒31に一体化する、又は落下口ブロック35を射出台36に一体化することは差し支えない。
【0064】
また、射出装置移動手段42の主要素である油圧シリンダ43は、電動シリンダや、空圧シリンダや、電動モータを駆動源とするピニオンラック機構であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、型締装置に対応して設置される射出装置に好適である。
【符号の説明】
【0066】
20…型締装置、21…固定型、24…固定盤、30…射出装置、31…加熱筒、31a…長手軸、32…スクリュー、34…材料落下口、35…落下口ブロック、36…射出台、37…ノズル、42…射出装置移動手段、43…油圧シリンダ、44…ピストンロッド、45…中継軸、46…鍔付き金具、46a…鍔、47…固定金具、47c…貫通穴、51…シャフト、51a…シャフト本体部、51b…小径部、52…射出駆動台、53…スクリュー支持板、54…ねじ軸、56…軸受、70…支持台、71…座、72…上壁、73…下壁、74…補強中壁、75…前壁、76…後壁、78…隙間、81…補強フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10