【実施例】
【0035】
図1に示すように、射出成形装置10は、型締装置20と射出装置30とを主要素とする。
型締装置20は、固定型21と可動型22とからなる金型を型締めする装置であり、ベース23と、このベース23に固定されている固定盤24及び型締手段25と、固定盤24と型締手段25とに掛け渡されるタイバー26と、タイバー26で案内される可動盤27とを備える。
固定盤24に固定型21が取付けられ、可動盤27に可動型22が取付けられ、型締手段25で型締めが行われる。
なお、型締手段25は、油圧シリンダ、トグル機構、電動シリンダの何れであってもよい。
【0036】
射出装置30は、加熱筒31と、この加熱筒31に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー32と、加熱筒31の基部に備えられホッパ33から落下する樹脂材料を加熱筒31内へ導く材料落下口34を有する落下口ブロック35と、この落下口ブロック35を介して加熱筒31を支える射出台36と、加熱筒31の先端に設けられ樹脂材料を射出するノズル37とを備えている。
【0037】
図2に示すように、射出装置30は、テーブル41に載っており、射出装置移動手段42の縮動で型締装置20に接近し、射出装置移動手段42の伸動で型締装置20から離れる。
【0038】
図3に示すように、材料落下口34を有する落下口ブロック35の側面に、一対の支持台70が取付けられている。支持台70は、加熱筒31の長手方向の中心軸(以下、長手軸という)31aに直交する方向に延びている。
このような支持台70の先端部に、射出装置移動手段42の要部である油圧シリンダ43が取付けられいる。
【0039】
すなわち、一対の射出装置移動手段42は、長手軸31aに平行に且つ長手軸31aから所定距離離れた位置に配置されている。2つの所定距離を同一とすることで、一方の射出装置移動手段42と他方の射出装置移動手段42を、長手軸31aに対称に配置することが望ましい。なお、配置の都合などで必要があれば、一対の所定距離のうち、一方と他方に差を付けることは差し支えない。
【0040】
油圧シリンダ43のピストンロッド44に中継軸45がねじ結合され、この中継軸45の先端に鍔付き金具46がねじ結合され、この鍔付き金具46が固定金具47及びボルト48により固定盤24に接続(連結)される。
【0041】
すなわち、射出装置移動手段42は、支持台70に取付けられる油圧シリンダ43と、この油圧シリンダ43のピストンロッド44に連結され固定盤24側へ延びる中継軸45と、この中継軸45の先端に連結される鍔付き金具46と、この鍔付き金具46を固定盤24に着脱可能に固定する固定金具47とからなる。
【0042】
落下口ブロック35を介して加熱筒31を支える射出台36も、加熱筒31の長手軸31aに直交する方向に延びている。ただし、射出台36と支持台70とは、分離され、繋がっていない。
【0043】
このような射出台36は、加熱筒31から離れる方向へ延びる複数本(この例では上下左右の4本)のシャフト51と、これらのシャフト51の先端に且つ射出台36に平行に配置される射出駆動台52と、シャフト51で案内されスクリュー32を回転自在に支持するスクリュー支持板53と、このスクリュー支持板53を貫通するようにして射出駆動台52と射出台36に渡される一対のねじ軸54と、スクリュー支持板53に取付けられねじ軸54にねじ込まれるナット55とを備えている。
ねじ軸54は、摩擦損失が小さいボールねじが好適である。このときは、ナット55はボールナットとする。
【0044】
ねじ軸54の一端は、軸受56を介して射出台36で回転自在に支持され、他端は軸受57を介して射出駆動台52で回転自在に支持され、この他端にプーリ58が固定されている。
スクリュー前後進モータ(
図1、符号59)とベルト(
図1、符号61)で、プーリ58が回されると、ねじ軸54が回転し、非回転のナット55を介してスクリュー支持板53が前進又は後進することにより、加熱筒31に対してスクリュー32が前進又は後進する。
また、スクリュー32は、プーリ63を付属し、このプーリ63がスクリュー回転モータ(
図1、符号64)及びベルト65で、回される。
【0045】
図4に示すように、鍔付き金具46は、鍔46aと、この鍔46aから延びるネック46bと、このネック46bから延びるねじ部46cとからなる。
中継軸45は、端部に雌ねじ部45aを有する中空軸が好ましい。中実軸よりも軽量である。
【0046】
固定金具47は、鍔46aを収納する凹部47aと、この凹部47aを囲う部位に設けられたボルト穴47bと、凹部47aに繋がる貫通穴47cとを有するカップである。このカップは厚肉であるため、重い。
【0047】
図1において、保守点検等の都合で、射出装置30を後退させた後に水平旋回させることがある。この旋回のときに、
図2に示す中継軸45が邪魔になる。
そこで、
図5に示すように、ボルト48を外し、固定金具47を固定盤24から外す(分離する)。これで、射出装置30は水平旋回が可能となる。しかし、固定金具47が重く、中継軸45の撓みが大きくなる。
【0048】
対策として、本発明では、矢印(1)、(2)、(3)のように、中継軸45に沿って固定金具47を移動し、重い固定金具47を適当なアタッチメント66を用いて支持台70に仮受け(臨時的に支持)させるようにした。
そのために、
図4において貫通穴47cは、鍔46aの外径よりは小径で、ネック46b及び中継軸45の外径より大径にした。これで、矢印(1)、(2)、(3)の移動が可能となった。
なお、アタッチメント66は、山形鋼や軽量山形鋼が好適であるが、形態は任意である。また、アタッチメント66を用いてないで、固定金具47を直接支持台70に仮止めしてもよい。
【0049】
図6に基づいて、支持台70の構造を詳しく説明する。
図6(a)に示すように、支持台70は、落下口ブロック(
図5、符号35)に当られる座71と、この座71から延びる上壁72及び下壁73と、この下壁73と上壁72との間に配置される補強中壁74と、前壁75とを備えている。
図6(b)に示すように、支持台70は、更に後壁76を備えている。
図6(c)に示すように、上壁72と下壁73は後壁76より突き出ており、この突き出ている部位において、上壁72と下壁73に、油圧シリンダ(
図5、符号43)を固定するボルトをねじ込む雌ねじ部77が形成されている。
【0050】
図6(d)に示すように、支持台70は、上壁72及び下壁73と、これらの壁72、73の前端を繋ぐ前壁75と、壁72、73の後端を繋ぐ後壁76と、上壁72及び下壁73に平行で前壁75と後壁76とを繋ぐ補強中壁74とを有する角筒形状物であり、鋳造品(鋳鋼品を含む。)である。
【0051】
補強中壁74で補強されているため、図中、外力F1及びF2に対して良好な剛性を有する。すなわち、補強中壁74により、外力の作用方向の剛性を高めることができる。
【0052】
また、角筒形状物であるために、中実物に比較して軽量化が図れる。
なお、支持台70は、鋳造品の他、鋼板同士を溶接した溶接構造物であってもよい。
また、上壁72及び下壁73で、必要な耐久性が得られる場合は、補強中壁74を省くことができる。ただし、補強中壁74を設けることで、上壁72及び下壁73を薄くすることができる。よって、補強中壁74を設けるか否かは、任意である。
【0053】
以上の構成からなる射出装置30の作用を、次に述べる。
図3において、油圧シリンダ43を縮動することで、所定のノズルタッチ力を発生する。このノズルタッチの反力により、支持台70が線Bのように撓む。なお、線Bは誇張して表示した。
本発明によれば、支持台70と射出台36との間に隙間78があり、この隙間78の大きさが変化することはあっても、射出台36が変形することはない。
【0054】
仮に、支持台70が無く、油圧シリンダ43が射出台36に取付けられている形態を想定する。すると、射出台36が変形する。射出台36が変形すると、軸受56及びボールねじ54に無理が掛かり、軸受56及びボールねじ54の寿命に悪影響が及ぶ。
この点、本発明では、支持台70を設けることにより、射出台36が変形しないようにしたので、軸受56及びボールねじ54の寿命が短くなることはない。
【0055】
また、油圧シリンダ43は、その前部(前端)が支持台70に固定され、残部は非固定(フリー)とされている。ピストンロッド44に曲げ力が加わったときに、油圧シリンダ43は傾いて、曲げの影響が緩和される。この緩和により、油圧シリンダ43の寿命を延ばすことができる。
【0056】
次に、本発明の変更例を、
図7及び
図8に基づいて説明する。
図7に示すように、シャフト51は、シャフト本体部51aと、このシャフト本体部51aの両端に設けた小径部51bとからなる。小径部51bはシャフト本体部51aより小径である。そして、シャフト本体部51aの長さは、精密に仕上げられている。
2つの小径部51bのうち、一方の小径部51bを射出台36に挿入し、他方の小径部51bを射出駆動台52に挿入し、小径部51bの先端にナット79を各々ねじ込む。
シャフト本体部51aと小径部51bの境界における段部で射出台36と射出駆動台52の位置決めがなされる。
すなわち、段付きのシャフト51により、射出台36を基準とする射出駆動台52の位置が正確に定められる。
【0057】
次に、位置が定められている射出台36と射出駆動台52とに、補強フレーム81をボルト82で固定する。
シャフト51で、射出台36に対する射出駆動台52の位置決めがなされているため、補強フレーム81は単に取付けるだけでよく、この取付け作業は容易である。
その他の構成要素は、
図3の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0058】
なお、補強フレーム81は、I断面の他、コ字(チャンネル)断面やT字断面にしてもよいため、形状は任意である。
コ字断面は、1個のウェブの両端から2個のフランジが延びるため、I断面より、断面係数が大きくなり、剛性が高まる。また、T字断面は、1個のウェブの中央から1個のフランジが延びるため、I断面より、断面係数が大きくなり、剛性が高まる。
コ字断面やT字断面の場合は、ウェブをスクリュー支持板53側にし、フランジを外に延ばすことで、スクリュー支持板53との干渉を避けるようにすればよい。
【0059】
図8に示すように、補強フレーム81に、射出装置移動手段42としての油圧シリンダ43を取付ける。
射出台36と射出駆動台52とは、シャフト51に加えて補強フレーム81で繋がれ、全体として口字状の丈夫なフレーム構造体となる。
ノズルタッチの反力が、射出台36に作用した場合、射出台36の端部が、シャフト51、補強フレーム81及び射出駆動台52で支持されているため、射出台36の端部が変位することはない。変位したとして僅かである。
結果、軸受56に影響するような変形は、射出台36に発生しなくなる。
【0060】
この例では、油圧シリンダ43の前部及び後部を補強フレーム81に固定したが、油圧シリンダ43は、前部のみを補強フレーム81に固定することや、中央のみを補強フレーム81に固定することは差し支えない。
ただし、油圧シリンダ43の前部及び後部を補強フレーム81に固定すると、油圧シリンダ43が補強フレーム81を補強する役割を果たし、補強フレーム81の曲げ剛性がさらに高まる。よって、油圧シリンダ43の前部及び後部を補強フレーム81に固定することが推奨される。
【0061】
次に、更なる変更例を、
図9に基づいて説明する。
図9に示すように、シャフト51で位置決めされている射出台36と射出駆動台52に、射出装置移動手段42としての油圧シリンダ43をボルト82で固定する。
油圧シリンダ43は、高圧に与えるように厚肉の鋼管を主たる構成要素とする。
【0062】
射出台36と射出駆動台52とは、シャフト51に加えて丈夫な射出装置移動手段42(油圧シリンダ43)で繋がれ、全体として口字状の丈夫なフレーム構造体となる。結果、射出台36の変形が抑制され、軸受56に影響するような変形は発生しなくなる。
【0063】
尚、
図3において、落下口ブロック35に加熱筒31をボルト止めする他、落下口ブロック35を加熱筒31に一体化する、又は落下口ブロック35を射出台36に一体化することは差し支えない。
【0064】
また、射出装置移動手段42の主要素である油圧シリンダ43は、電動シリンダや、空圧シリンダや、電動モータを駆動源とするピニオンラック機構であってもよい。