特許第6891242号(P6891242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6891242デジタル・オーディオのワイヤレス送信の新規な方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891242
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】デジタル・オーディオのワイヤレス送信の新規な方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20210607BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20210607BHJP
   H04W 72/10 20090101ALI20210607BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   H04W28/04 110
   H04W84/10 110
   H04W72/10
   H04R25/00 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-182108(P2019-182108)
(22)【出願日】2019年10月2日
(62)【分割の表示】特願2015-103113(P2015-103113)の分割
【原出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2020-31429(P2020-31429A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2019年10月29日
(31)【優先権主張番号】PA201470294
(32)【優先日】2014年5月20日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペダルセン ブライアン ダム
(72)【発明者】
【氏名】ペダルセン ソルキルド フィンド
【審査官】 三枝 保裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−136072(JP,A)
【文献】 特表2013−528962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0070581(US,A1)
【文献】 渋谷 彰,Bluetoothマルチプロファイル動作時の特性評価とeSCOによる特性改善,電子情報通信学会2004年通信ソサイエティ大会講演論文集1,2004年 9月 8日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置を備える補聴器によるブルートゥース・ロー・エナジー標準規格に準拠したデータ・セットのワイヤレス送信方法であって、
第1の接続イベントにおいて、第1のデータ・カテゴリの第1のデータ・セットであって、第1の優先度を有する前記第1のデータ・セットを、前記送信装置から受信装置に受信させるために送信するステップと、
前記受信装置への送信待ちの第2のデータ・セットであって、前記第1のデータ・カテゴリとは異なる第2のデータ・カテゴリの前記第2のデータ・セットがあるか否かについて、前記送信装置から前記受信装置に信号送信するステップであって、前記第2のデータ・セットが前記第1の優先度よりも低い第2の優先度を有するステップと、
前記受信装置からの受信の肯定応答がない場合、前記第1の接続イベントにおいて、前記第1のデータ・セットを再送信するステップと、
前記受信装置からの前記受信の前記肯定応答がある場合、前記第1の接続イベントにおいて、前記第2のデータ・カテゴリの前記第2のデータ・セットを、前記送信装置から前記受信装置に送信するステップと、
前記受信装置への送信待ちの前記第2のデータ・セットがない場合、前記第2のデータ・カテゴリの前記第2のデータ・セットの送信のための前記送信装置と前記受信装置との間の第2の接続イベントを確立することを停止するステップと、を含む方法。
【請求項2】
受信装置を備える補聴器によるブルートゥース・ロー・エナジー標準規格に準拠したデータ・セットのワイヤレス受信方法であって、
第1の接続イベントにおいて、送信装置からの第1のデータ・カテゴリの第1のデータ・セットであって、第1の優先度を有する前記第1のデータ・セットを、前記受信装置によって受信するステップと、
前記受信装置への送信待ちの第2のデータ・セットであって、前記第1のデータ・カテゴリとは異なる第2のデータ・カテゴリの前記第2のデータ・セットがあるか否かについて、前記送信装置から前記受信装置に信号受信するステップであって、前記第2のデータ・セットが前記第1の優先度よりも低い第2の優先度を有するステップと、
受信される前記第1のデータ・セットがエラーである場合、前記補聴器から前記送信装置に否定応答信号を送信し、前記第1の接続イベントにおいて、前記第1のデータ・セットの再送信中に、前記第1のデータ・セットを受信するステップと、
前記第1のデータ・セットの受信が成功する場合に、前記第1の接続イベントにおいて、前記送信装置に受信の肯定応答を送信し、
前記第1の接続イベントにおいて、前記第2のデータ・カテゴリの前記第2のデータ・セットを、前記受信装置によって受信するステップと、
前記受信装置への送信待ちの前記第2のデータ・セットのデータ・セットがない場合、前記第2のデータ・カテゴリの前記第2のデータ・セットの送信のための前記送信装置と前記受信装置との間の第2の接続イベントを確立することを停止するステップと、を含む方法。
【請求項3】
前記受信装置への送信待ちの前記第2のデータ・カテゴリの第2のデータ・セットがあるか否かに関する情報が、単一データ・ビットに符号化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
L2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットの送信に割り当てるステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1つのL2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットに関連する制御データに割り当てるステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
1つのL2CAPチャネルを第1のオーディオ・データ・セットに割り当てるステップを含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
別のL2CAPチャネルを第2のオーディオ・データ・セットに割り当てるステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
オーディオ・データ・セットの前記受信装置から受信の肯定応答がない場合に、同じオーディオ・データ・セットの再送信の試行回数が所定の最大値未満であることを条件として、前記オーディオ・データ・セットを再送信するステップを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
最大値が2である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のデータ・カテゴリと前記第2のデータ・カテゴリとは、再送信の試行に関する所定の最大値が異なる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記送信装置から、ブルートゥース・ロー・エナジー標準規格に準拠したオーディオ・データ・セットを受信するように構成された少なくとも1つの受信装置に、異なるオーディオ・データ・セットを受信するように接続された少なくとも2つの異なる受信装置間の送信遅延差に関連するタイミング情報を含んだ、同期データを送信するステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記送信装置から前記少なくとも2つの異なる受信装置へのping送信に基づいて、同期データを決定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
L2CAP制御チャネルを利用したping送信を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法による動作に適するように構成された通信コントローラを備える聴覚装置。
【請求項15】
前記聴覚装置が補聴器である、請求項14に記載の聴覚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
異なる優先度を有するデータをワイヤレス通信する新規な方法が、例えばブルートゥース・ロー・エナジー(LE:Low Energy)標準規格に準拠した形で提供される。新規な方法によるワイヤレス通信に適するように構成された新規な聴覚装置も提供される。
【背景技術】
【0002】
ブルートゥース・コア仕様4.1またはそれ以前のバージョンで定義されるブルートゥースLEは、オーディオ伝送を許可していない。定義されたままのプロトコルにはいくつかの制限があり、これは、オーディオ伝送が、いくつかのプロトコル層を変更しなければ実現不可能であることを意味している。
−送信時にタイムアウトまたはフラッシュを用いないベスト・エフォート型データ伝送手法が定義されている、LE用に定義されたL2CAPチャネルの性質も、定義されたままのLEを経由してリアル・タイムのオーディオ・サービスを行うことがほとんど不可能であるということを意味している。
−リアル・タイム伝送手段がないということは、対になった2つの(補聴器などの)オーディオ・シンク間のステレオ同期がほとんど不可能であるということも意味している。
−パケット・サイズは、オーディオに要求されるデータ・レート(典型的には32〜48kビット/s)を送信するためのオーバーヘッドが非常に大きいということを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の欠点を克服することが、新規な方法および聴覚装置の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
データ・セットをワイヤレス通信する新規な方法であって、以下を含む方法が提供される。
a) 第1のデータ・カテゴリの第1のデータ・セットを、送信装置から受信装置に受信させるために送信するステップ。
b) 受信装置からの受信の肯定応答がない場合、第1のデータ・セットを再送信するステップ。
c) 受信装置からの受信の肯定応答がある場合、肯定応答がなければ送信装置と受信装置が再送信のために接続される時に、例えば、第1のデータ・カテゴリの第1のデータ・セットが送信されたのと同じ接続イベント内で、第1のデータ・カテゴリとは異なる第2のデータ・カテゴリの第2のデータ・セットを、送信装置から受信装置に送信するステップ。
【0005】
さらに、異なる優先度を有するデータをワイヤレス通信する新規な方法であって、以下を含む方法が提供される。
a) 第1の優先度の第1のデータ・セットを、送信装置から受信装置に受信させるために送信するステップ。
b) 受信装置からの受信の肯定応答がない場合、第1の優先度の第1のデータ・セットを再送信するステップ。
c) 受信装置からの受信の肯定応答がある場合、肯定応答がなければ送信装置と受信装置が再送信のために接続される時に、第1の優先度よりも低い第2の優先度を有する第2のデータ・セットを、送信装置から受信装置に送信するステップ。
【0006】
第1のデータ・カテゴリは、オーディオ・データ・セットを含んでよい。
【0007】
第2のデータ・カテゴリは、ブルートゥース・コア仕様4.1またはそれ以前のバージョンで定義されるようなブルートゥースLE標準プロトコルに準拠した、開始、停止、コーデック・ネゴシエーションなどのさまざまな制御データ、および/または他の装置、例えば、温度センサのような環境センサなどのセンサを備えた装置からのデータを含んでよい。
【0008】
第1のデータ・セットは、オーディオ・データ・セットであってもよい。オーディオ・データ・セットは、一連の離散時間および離散振幅のデジタル・オーディオ信号値などのデジタル・オーディオ信号値を含み、一連の離散時間および離散振幅のデジタル・オーディオ信号値は、アナログ・オーディオ信号の連続時間および連続振幅値を表しており、そのアナログ・オーディオ信号を、音響に変換することができる。換言すれば、ストリーミング・オーディオの技術分野で周知のように、オーディオ・データ・セットは、ある時点で音に変換するためのものであるデジタル・データを含む。
【0009】
好ましくは、送信されるオーディオ・データ・セットに基づいて生成される音の高忠実度または少なくとも許容可能な質を確保するために、オーディオ・データ・セットは高優先度を有し、より低い優先度を有する他のタイプのデータ・セットを送信する前にそのオーディオ・データ・セットの送信を確実にする。
【0010】
オーディオ・データ・セットを含めて、データ・セットは、2種類のデータ、すなわち制御情報およびデータ、を有するデータ・パケットとすることができる。データは、ペイロードまたはペイロード・データとしても知られる。制御情報は、データすなわちペイロードを目当ての受信装置に送達するためにネットワークが必要とする情報データ、例えば、送信元装置アドレスおよび宛先装置アドレス、エラー検出コード、ならびに順序制御情報をもたらす。典型的には、制御情報は、パケットのヘッダおよびトレーラ内に見られ、ペイロード・データがその間にある。
【0011】
本方法はさらに、以下を含んでいてもよい。
d) 第2の優先度を有するデータ・セットが受信装置への送信を待っているか否かについて、送信装置から受信装置に信号送信するステップ。
e) 受信装置への送信を待っている第2の優先度を有するデータ・セットがない場合、第2の優先度を有する第2のデータ・セットの送信のための送信装置と受信装置の間の接続を確立するのを停止するステップ。
【0012】
第2の優先度を有するデータ・セットが受信装置への送信を待っているか否かに関する情報は、単一データ・ビットなどの単一データ・バイトに符号化してもよい。
【0013】
本方法は、ブルートゥース・コア仕様4.1またはそれ以前のバージョンなどのブルートゥース・ロー・エナジー標準規格に準拠してもよく、好ましくは、オーディオ・データ・セットの送信が、連続する接続イベント内で実施される。
【0014】
本方法は、ブルートゥース・コア仕様4.1またはそれ以前のバージョンなどのブルートゥース・ロー・エナジー標準規格に準拠した形で、例えば音声および音楽のオーディオ・ストリーミングに利用してもよい。
【0015】
本方法はさらに、L2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットの送信に割り当てることを含んでいてもよく、例えば、1つのL2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットに関連する制御データに割り当て、かつ/または、1つのL2CAPチャネルを第1のオーディオ・データ・セットに割り当て、可能であれば別のL2CAPチャネルを第2のオーディオ・データ・セットに割り当ててもよい。
【0016】
次の3つの固定L2CAPチャネルをオーディオ伝送に割り当ててもよい。
1) 制御データ(開始、停止、コーデック・ネゴシエーションなど)
2) 左オーディオ・データ
3) 右オーディオ・データ
【0017】
1つのオーディオ・ストリーム(左または右)を受信することのできる装置、例えば補聴器では、チャネル1)および2)、またはチャネル1)および3)だけがその装置に使用されていることになる。ステレオ機能が統合された装置、例えばステレオ・ヘッドセットでは、これら3つのチャネルが全て使用される。オーディオ・データ・セットは、適用分野に応じて単方向でも双方向でもよく、制御データ・チャネルが、その点に関するネゴシエーションを可能にするべきである。
【0018】
接続コンフィギュレーション(Connection Configuration)は、例えば、以下の手順によって実施してもよい。
1.受信装置が、優先度の付いたフラッシュ可能なL2CAP(PFL2CAP:prioritized and flushable L2CAP)データを受信できることを、一意のUUIDを通じて知らせる。
2.送信装置が受信装置を発見し、受信装置に接続し、PFL2CAPサービスにその機能について問い合わせる。
3.受信装置はPFL2CAPコンフィギュレーションで応答する。例えばオーディオ向けでは、これには、受信装置がどのコーデックを提供するか、また受信装置がどのL2CAPチャネル上でどのコンテンツをどの優先度で受信するつもりか、例えば(チャネル127、高優先度、左側オーディオ)、(チャネル128、高優先度、右側オーディオ)、および(チャネル129、低優先度、オーディオ制御情報)が含まれ得る。
4.送信装置が、データについての追加情報、例えばコンテンツ、コーデックおよびフレームのサイズ、フラッシュ・タイムアウトなどに関する情報を送信することによって、受信に対し肯定応答する。
5.送信装置と受信装置がどちらも、新たなL2CAPチャネルをセットアップし、オーディオ・ストリームの準備をし、接続率を、指定されたフレーム率に再送信回数を掛けた積に合致するように調整する。
【0019】
例えばオーディオをストリーミングしている間の送信装置の動作は、以下の内容を含んでいてもよい。
1.送信装置コントローラのホストが、オーディオ・ストリームの処理を開始し、第1のオーディオ・フレームを符号化し、指定されたL2CAPチャネル(複数可)上で即時に送信するためにキューに入れるように処理する。次いでホストは、次のオーディオ・フレームの処理に移る。
2.それと同時に、コントロール層が、パケットを優先度順に送信しようと試みる。送信が成功するとすぐに、コントロール層は、成功を通知して、ホストからの次のパケットを要求する。パケットがタイムアウトのためフラッシュされた場合、コントロール層は、失敗を通知した上で、やはり次のパケットを要求する。
3.ホストからのオーディオ制御情報、例えば音量変更が、指定されたL2CAPチャネル内でキューに入れられる。コントローラはそのパケットを、より高い優先度を有する待ち状態にある送信パケットがないときに送信する。
【0020】
本方法はさらに、オーディオ・データ・セットの受信装置から受信の肯定応答がない場合に、同じオーディオ・データ・セットの再送信の試行回数が、例えば2に等しい所定の最大値未満であることを条件として、オーディオ・データ・セットの再送信を含んでいてもよい。
【0021】
1つまたは複数のタイプのデータの再送信の試行回数は、限定されていなくてもよく、すなわち、1つまたは複数のタイプのデータに最大値が割り当てられない、または、換言すれば、1つまたは複数のタイプのデータに割り当てられた最大値が無限、例えば0xFFFFである、ということである。
【0022】
データのタイプが異なれば、再送信の試行に関する所定の最大値も異なってよく、例えば、オーディオ・データ・セットは最大値2を有することができ、一方オーディオ・データ・セットの優先度よりも低い優先度を有するデータ・セットの最大値。
【0023】
例えば、新規な方法は、ブルートゥース・ベーシック・レート(BR)L2CAPチャネルにも定義されている、L2CAPフラッシュ・タイムアウトを実装することができる。好ましくは、このタイムアウトは、HCIを経由してデータがポストされた後の、オーディオ・データを運ぶチャネルに関する2つの接続イベントに対応し(すなわち、L2CAPオーディオに対し第1の再試行イベントが可能になる)、一方、他のチャネルについては0xFFFFに留まる。
【0024】
典型的なリンク上では、パケットは、オーディオに適していない割合で損失され得る。したがって、好ましくは再送信が可能であり、好ましくは異なるチャネルで行われる。よって、ブルートゥースLEのMD機能を、再送信に使用することはできない。したがって、フラッシュ・タイムアウトが設定されたオーディオ・データ・セットをただ単に、接続間隔内で1度試行すべきである。再送信を可能にするために、接続間隔は、オーディオ・フレーム・サイズの半分にしなければならず、したがって、オーディオ・フレームが10msである場合、接続間隔は5msとすべきである。これは、既存のリンク層制御パケットを用いて促進される。
【0025】
MD機能は、同じ接続イベント内で低優先度データを送信するのに使用してもよいが、受信装置はMDビットを受け入れないことがあり、例えば、補聴器はMDビットを受け入れないだろう。
【0026】
受信装置の電力消費を低下させるために、送信装置は、高優先度データの後に同じ接続イベント内でデータを送信するか否かに関係なく、待ち状態にある低優先度データがあることを示すために高優先度パケット内にMDビットをセットするように構成してもよい。待ち状態にある低優先度データがない場合、MDビットはリセットされる。これにより、受信装置が、受信したMDビットの値に応答して、高優先度オーディオ・データ・セットの成功した送信同士の間にある、データのない接続イベントをスキップすることが可能になる。同様に、送信装置も、電力を節減するためおよび/または他のワイヤレス・サービスとの相互運用性を高めるために、オーディオ・ストリーミング中に、待ち状態にあるデータのない接続イベントをスキップすることが可能である。
【0027】
非オーディオ・データ・セットを送信する際、L2CAPフラッシュ・タイムアウトがないと、データに対し肯定応答されるまでリンクが占有されることになることに留意されたい。これにより、まれにオーディオにドロップアウトが生じ、これは、例えばEP2605547A1に開示されるように、受信側のパケット損失隠蔽によって対処しなければならない。
【0028】
本方法はさらに、送信装置から、オーディオ・データ・セットを受信するように構成された少なくとも1つの受信装置に、異なるオーディオ・データ・セットを受信するように接続された少なくとも2つの異なる受信装置間の送信遅延差に関連するタイミング情報を含んだ、同期データを送信することを含んでいてもよい。
【0029】
同期データの決定は、送信装置から少なくとも2つの異なる受信装置へのping送信、例えばL2CAP制御チャネルを利用したping送信に基づいてよい。
【0030】
好ましくは、ステレオ・オーディオ・ストリーミングの間、送信装置は、リンク間の時間オフセットをリンク内の先行する受信装置に伝達し、それにより、受信したオーディオをそれに応じて遅延させて、2つのステレオ・チャネルを適切に同期させることができる。時間オフセットは、制御チャネル経由でpingを実施するネットワーク・レイテンシ測定を用いて決定することができる。このpingにより、送信ホストは時間オフセットを計算することができる。
【0031】
ステレオ・オーディオ・ストリーミングは、1つのリンクを用いて実施することもできる。例えば、ヘッドホンに対してステレオ・オーディオ・ストリーミングする間、左L2CAPチャネルと右L2CAPチャネルをどちらも、同じリンクを用いて送信してもよく、それにより、受信装置と送信装置が両方ともシンプルに維持される。ヘッドホンは、より高い無線デューティ・サイクルに耐えることができるので、ブルートゥースLEのMD機能をこの目的に利用してもよい。このようにして、同一の接続イベントが、左チャネルと右チャネルの両方に関する情報を伝えることができ、パケット構造をモノまたはデュアル・シンクの場合と同じままに維持することができる。これにより、両側に対する実装を簡素にする。というのも、デュアル・シンクの場合と比較して、送信ホストの側でオーディオ用のコネクション・ハンドルだけを変更する必要があるためである。
【0032】
以下の表は、ms単位のある特定のオーディオ・フレーム・サイズが与えられた場合に、オーディオ・データ・セットを保持するのに要求される要求バイト数を概略的に示す。これらの値は、48kビット/sで流れるオーディオ・ストリーム用である。32kビット/sのオーディオ・ストリームの場合は、この要求の2/3となる。
【0033】
【表1】
【0034】
オーバーヘッドを最小限に抑えるためには、L2CAPオーディオを実施する方法またはコントローラが好ましくは長いパケットに対応するように、LLのMTUサイズを、L2CAPのMTUにヘッダおよびMICを加えた和に合致させ、かつ要求されるペイロード・サイズに等しくすることが好ましい。
【0035】
有利なことには、新規な方法は、ブルートゥースLEを利用したオーディオ・データ・セットの送信を、ブルートゥースLEのコントロールおよびリンク層の拡張機能を限定された形で利用することによって容易にし、例えば、セキュリティおよびリンク・セットアップに関連する動作は、ブルートゥース・コア仕様に規定された通りに実施される。
【0036】
添付の特許請求の範囲のいずれかに記載の新規な方法による動作に適するように構成された通信コントローラを有する聴覚装置も提供される。
【0037】
聴覚装置は、BTE、RIE、ITE、ITC、CICなどの補聴器、バイノーラル補聴器、イヤ・フック型、イン・イヤ型、オン・イヤ型、オーバー・イヤ型、ビハインド・ネック型、ヘルメット型、ヘッドガード型などのヘッドセット、ヘッドホン、イヤホン、イヤ・ディフェンダ、イヤマフなどでよい。
【0038】
好ましくは、通信コントローラは、ブルートゥースLEのL2CAPを用いたオーディオ送信および/またはオーディオの受信に適するように構成され、好ましくは、通信コントローラは、
−L2CAPフラッシュ・タイムアウト=2に対応する
−優先度の付いたL2CAPトラフィックに対応する
−ビットレートおよびオーディオ・フレーム・サイズの選択に応じて、120バイトまでのLLパケット・サイズに対応する
ように構成される。
【0039】
したがって、ブルートゥースLE標準プロトコルに準拠してワイヤレス通信を実施することのできる、新規な補聴器が提供される。
【0040】
新規な補聴器は、
そこに与えられた、音を表す信号に基づいて、オーディオ信号を出力するように構成された入力トランスデューサ、および
補聴器の利用者の聴力損失を補償し、聴力損失補償されたオーディオ信号を出力するように構成された聴力損失プロセッサを備え、例えば、この補聴器は、健聴者であれば知覚するような与えられた信号の音の大きさが、利用者が知覚する聴力損失補償された信号の音の大きさにほぼ合致するように、音の大きさを取り戻すことを目的とすることができ、さらに
聴力損失補償されたオーディオ信号に基づく聴覚出力信号を出力するように構成された、受話器、埋込み型トランスデューサなどの出力トランスデューサであって、人間の聴覚系がその聴覚出力信号を受信することができ、それにより利用者に音が聞こえる、出力トランスデューサ、および
通信コントローラ
を備えていてもよい。
【0041】
トランスデューサは、あるエネルギーの形態でトランスデューサに与えられた信号を、それに対応する別のエネルギーの形態をとる出力信号に変換する装置である。
【0042】
入力トランスデューサは、マイクロホンを備えることができ、マイクロホンは、マイクロホンに与えられた音響信号を、それに対応する、音響信号の音圧に伴ってその瞬時電圧が連続的に変動するアナログ・オーディオ信号に変換する。
【0043】
入力トランスデューサは、テレコイルを備えていてもよい。テレコイルは、テレコイルにおいて変動する磁界を、対応するアナログ・オーディオ信号であって、テレコイルにおいて変動する磁界強度に伴って瞬時電圧が連続的に変動する、変動するアナログ・オーディオ信号に変換する。テレコイルは、例えば、教会、公会堂、劇場、映画館内などの公共の場において、または駅、空港、ショッピング・モール内などの拡声装置を通じて、複数の人々に向けて話している話者からの音声の信号対雑音比を上げるために使用することができる。話者からの音声は、誘導ループ・システム(「ヒアリング・ループ」とも呼ばれる)を用いて磁界に変換され、テレコイルを使用して、磁気的に送信された音声信号を磁気的に拾い上げる。
【0044】
入力トランスデューサはさらに、少なくとも2つの離隔されたマイクロホンと、少なくとも2つの離隔されたマイクロホンのマイクロホン出力信号を組み合わせて、指向性マイクロホン信号にするように構成されたビームフォーマとを備えていてもよい。
【0045】
入力トランスデューサは、1つまたは複数のマイクロホンと、テレコイルと、例えば無指向性マイクロホン信号、または指向性マイクロホン信号、またはテレコイル信号を、単独でまたは任意の組合せで、オーディオ信号として選択するためのスイッチとを備えていてもよい。
【0046】
典型的には、アナログ・オーディオ信号は、アナログ・デジタル変換器において対応するデジタル・オーディオ信号に変換し、それにより、アナログ・オーディオ信号の振幅が2進数で表されることによって、デジタル信号処理に適したものになる。このようにして、一連のデジタル値の形態をとる離散時間および離散振幅のデジタル・オーディオ信号が、連続時間および連続振幅のアナログ・オーディオ信号を表す。
【0047】
本開示全体を通じて、「オーディオ信号」は、入力トランスデューサの出力から聴力損失プロセッサの入力に至る信号経路の一部を成す任意のアナログまたはデジタル信号を特定するために使用してもよい。
【0048】
本開示全体を通じて、「聴力損失補償されたオーディオ信号」とは、聴力損失プロセッサの出力から、場合によってはデジタル・アナログ変換器を介して、出力トランスデューサの入力に至る信号経路の一部を成す任意のアナログまたはデジタル信号を特定するために使用され得る。
【0049】
補聴器は、ワイヤレス送信機とワイヤレス受信機を両方備えた送受信機を備えることができる。送信機および受信機は、共通回路および/または単一のハウジングを共有してもよい。あるいは、送信機および受信機は回路を共有しなくてもよく、ワイヤレス通信ユニットが、それぞれ送信機および受信機を備えた別々の装置を備えていてもよい。
【0050】
補聴器は、有利なことには、例えば2つの補聴器が、オーディオ信号などのデータ、信号処理パラメータ、信号処理プログラムの識別子などの制御データなどをデジタル交換するために、ブルートゥースLE標準プロトコルを利用して相互接続され、オプションとして、タブレット型コンピュータ、スマートフォン(例えばIPhone、Androidフォン、Windowsフォンなど)、リモート・コントロールなどの手持ち型装置など、他の装置と相互接続される、バイノーラル補聴器システムに組み込んでもよい。
【0051】
典型的には、補聴器の電源からは限られた量の電力しか利用できない。例えば、電力は、典型的には、補聴器内の従来型のZnO電池から供給される。
【0052】
補聴器の設計に際しては、サイズおよび電力消費が考慮すべき重要な事項である。
【0053】
新規な補聴器での信号処理は、専用のハードウェアによって実施してもよく、あるいは1つまたは複数の信号プロセッサにおいて実施してもよく、あるいは、専用のハードウェアと1つまたは複数の信号プロセッサとの組合せにおいて実施してもよい。
【0054】
同様に、通信コントローラの動作は、専用のハードウェアによって実施してもよく、あるいは1つまたは複数のプロセッサにおいて実施してもよく、あるいは専用のハードウェアと1つまたは複数のプロセッサとの組合せにおいて実施してもよい。
【0055】
本明細書では、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」などという用語は、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、ソフトウェア、または実行中のソフトウェアのいずれかの、CPU関連のエンティティを指すものとする。
【0056】
例えば、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」などは、そうであることに限定されないが、プロセッサ上で実行される処理、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行のスレッド、および/またはプログラムであってよい。
【0057】
例として、「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」などという用語は、プロセッサ上で実行するアプリケーションとハードウェア・プロセッサの両者を指す。1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」など、またはこれらの任意の組合せは、プロセスおよび/または実行のスレッド内に存在していてもよく、1つまたは複数の「プロセッサ」、「信号プロセッサ」、「コントローラ」、「システム」など、またはこれらのいずれかの組合せは、場合によっては他のハードウェア回路と組み合わせて、1つのハードウェア・プロセッサ上に集中させ、かつ/または、場合によっては他のハードウェア回路と組み合わせて、2つ以上のハードウェア・プロセッサの間で分散させていてもよい。
【0058】
また、プロセッサ(または類似の用語)は、信号処理を実施することができる任意の構成要素であってもよく、そのような構成要素の任意の組合せであってもよい。例えば、信号プロセッサは、ASICプロセッサ、FPGAプロセッサ、汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路構成要素、または集積回路であってよい。
【0059】
以下では、新規な方法および補聴器について、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】新規な方法に従ってスマートフォンからオーディオ・ストリーミングを受信するバイノーラル補聴器システムを概略的に示す図である。
図2】新規な方法に従ってオーディオ・データ・セットを送信する一例を概略的に示す図である。
図3】新規な方法に従ってオーディオ・データ・セットを送信する別の例を概略的に示す図である。
図4】新規な方法に従ってオーディオ・データ・セットを送信する別の例を概略的に示す図である。
図5】新規な方法に従ってオーディオ・データ・セットを送信する別の例を概略的に示す図である。
図6】新規な方法に従ってオーディオ・データ・セットを送信する別の例を概略的に示す図である。
図7】新規な方法に従ってオーディオ・データ・セットを送信する別の例を概略的に示す図である。
図8】新規な方法の一例の流れ図である。
図9】新規な方法の別の例の流れ図である。
図10】新規な方法の別の例の流れ図である。
図11】新規な方法の別の例の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下では、新規な方法および聴覚装置のさまざまな例を示す。しかし、添付の特許請求の範囲に記載の新規な方法および聴覚装置は、さまざまな形で実施することができ、本明細書に記載の例に限定されるものと解釈すべきではない。
【0062】
添付の図面は概略であり、見やすいように簡略化されており、新規な方法および補聴器を理解するのに不可欠な詳細を示すにすぎず、他の詳細は除外されていることに留意されたい。
【0063】
同様の参照番号は、全体を通じて同様の要素を指す。したがって、各図の説明に対して、同様の要素については詳細に説明しない。
【0064】
図1は、左耳補聴器10Lおよび右耳補聴器10Rを備えるバイノーラル補聴器システムを概略的に示し、左耳補聴器10Lおよび右耳補聴器10Rはそれぞれ、スマートフォンまたは携帯電話、オーディオ対応タブレット、コードレス電話、テレビ受像機など、別のオーディオ対応通信装置に接続できるようにワイヤレス通信ユニットを備えている。本実施形態では、左耳補聴器10Lおよび右耳補聴器10Rがそれぞれ、それぞれに対応するワイヤレス通信リンク12L、12Rを介してスマートフォン50に接続される。右補聴器10Rがオプションであるようなシステムの他の実施形態では、バイノーラル補聴器システムが10Lなどの単一の補聴器だけを備えてよいことを、当業者なら理解するであろう。
【0065】
一意のIDが、バイノーラル補聴器システムのあらゆる装置を特定する。図示のバイノーラル補聴器システムは、例えばブルートゥース・コア仕様バージョン4.1に対応するブルートゥース・ロー・エナジー(ブルートゥースLE)に従って、一般に動作するように構成される。したがって、図示のバイノーラル補聴器システムは、ブルートゥースLEに従って、2.4GHz産業科学医療用(ISM)帯で動作するように構成され、1MHz帯域幅の80個の周波数チャネルを含む。しかしながら、以下にさらに詳細に説明するように、左耳補聴器10Lおよび右耳補聴器10Rそれぞれ及びスマートフォン50のワイヤレス通信ユニットのブルートゥースLEコントローラは、各ワイヤレス通信リンク12L、12Rを通じたリアル・タイムのオーディオ・データ・セットの送信を可能にするように修正されている。
【0066】
左補聴器10Lおよび任意選択の右補聴器10Rは、実質的に同一であってよく、上述の一意のIDについて期待することができ、したがって、左補聴器10Lの特徴に関する以下の説明は、右補聴器10Rにも当てはまる。左補聴器10Lは、補聴器回路14に電力を供給するために接続されるZnO電池(図示せず)を備えていてもよい。左補聴器10Lは、マイクロホン16の形態をとる入力トランスデューサを備える。左補聴器10Lが動作しているとき、マイクロホン16は、マイクロホン16に到達する音響信号に基づくアナログまたはデジタルのオーディオ信号を出力する。マイクロホン16がアナログ・オーディオ信号を出力する場合、補聴器回路14は、アナログ・オーディオ信号を、補聴器回路14内でデジタル信号処理することができるように対応するデジタル・オーディオ信号に変換する、アナログ・デジタル変換器(図示せず)を備えていてもよい。具体的には、左補聴器10Lの利用者の聴力損失を補償するように構成された聴力損失プロセッサ24L内に備えていてもよい。好ましくは、聴力損失プロセッサ24Lは、当技術分野でしばしば補充現象と呼ばれる、利用者のダイナミック・レンジの周波数依存の損失を補償することで、当技術分野で周知のダイナミック・レンジ圧縮器を備える。したがって、聴力損失プロセッサ24Lは、聴力損失補償されたオーディオ信号を、拡声器または受話器32に出力する。拡声器または受話器32は、聴力損失補償されたオーディオ信号を対応する音響信号に変換して、利用者の鼓膜に向かって送出する。したがって、利用者には、マイクロホンに到達する音であるが、利用者の個別の聴力損失に合わせて補償された音が聞こえる。補聴器は、補聴器10を装着した利用者が知覚する聴力損失補償された信号の音の大きさが、正常聴力を有する聴取者であれば知覚するようなマイクロホン16に到達する音響信号の音の大きさにほぼ合致するように、音の大きさを取り戻すように構成されていてもよい。
【0067】
補聴器回路14はさらに、スマートフォン50とワイヤレス通信するように構成された無線部または無線回路34Lを備える、ワイヤレス通信ユニットも含む。ワイヤレス通信ユニットは、さまざまな通信プロトコル関連タスクおよび場合によっては他のタスクを実施する、ブルートゥースLEコントローラ26Lを備える。左補聴器10Lの動作は、適切なオペレーティング・システムによって制御することができる。オペレーティング・システムは、例えば聴力損失プロセッサ24Lおよび可能な他のプロセッサとそれに関連する信号処理アルゴリズム、ワイヤレス通信ユニット、いくつかのメモリ資源などを含めて、補聴器のハードウェア資源およびソフトウェア資源を管理するように構成されていてもよい。オペレーティング・システムは、補聴器の資源を効率よく使用することができるように、タスクをスケジューリングしてもよく、また、電力消費、プロセッサ時間、記憶場所、ワイヤレス伝送、および他の資源を含めて、コストを割り当てるためのアカウンティング・ソフトウェアを含んでいてもよい。
【0068】
オペレーティング・システムは、修正されることによってオーディオ対応になったブルートゥースLEプロトコルに従って、スマートフォン50とのワイヤレス通信を実施するように無線回路34Lを制御する。修正されたブルートゥースLEプロトコルに基づく装置間の双方向データ通信に関連して、スマートフォン50はマスタ装置として動作することができ、左補聴器10Lはスレーブとして動作してもよい。
【0069】
スマートフォン50は、左補聴器10Lの対応する無線部または無線回路34Lとワイヤレス通信するように構成された、無線部または無線回路54を備える。スマートフォン50は、ワイヤレス通信ユニットも備え、ワイヤレス通信ユニットは、修正されたブルートゥースLEプロトコルに従ってさまざまな通信プロトコル関連タスクを実施し、場合によっては他のタスクを実施する、ブルートゥースLEコントローラ56を備える。ワイヤレス通信リンク12Lを経由して送信するデータ・パケットまたはデータ・セットは、ブルートゥースLEコントローラ56によって無線回路54に供給される。無線部または無線回路54がRFアンテナ53を介して受領したデータ・パケットは、さらなるデータ処理のためにブルートゥースLEコントローラ56に送られる。携帯電話の技術分野で周知のように、スマートフォン50は典型的に、概略的に示したものに加えて、さらなる多数のハードウェア資源およびソフトウェア資源を含むことを、当業者なら理解するであろう。
【0070】
図2は、例えば上記で述べた左耳補聴器10Lとスマートフォン50との間で、例えば、スマートフォン50がマスタとして構成され、補聴器10Lがスレーブとして構成された状態で、異なる優先度を有するデータ・セットをワイヤレス通信する新規な方法を示す、第1のタイミング図200である。
【0071】
図2は、関連するデータ・チャネル内に干渉性電磁雑音が少なく、したがって送信装置からの各データ・パケットまたはデータ・セットの送信が、第1の送信試行で成功し、それ故に再送信の必要がないワイヤレス通信リンク(図1の12L)の動作状態を示す。
【0072】
ワイヤレス通信リンク上で連続する接続イベントが、時間軸tに沿ってCi1、Ci2、Ci3などによって示されている。Ci1とCi2など、図示の隣接する接続イベント同士は、ブルートゥースLEプロトコルに従って、例えば4秒までのかなり長いスリープ期間によって分離され得ることを、当業者なら理解するであろう。このようなスリープ期間中、左補聴器10Lの無線回路34Lとスマートフォン50の無線回路54をどちらもパワー・ダウンして、電力消費を低減させることができる。接続イベントは、5msから10msの間の持続時間または接続間隔を有していてもよい。各接続イベントの接続間隔は、好ましくは、ワイヤレス通信リンクを介して送信されるオーディオ・データ・セットの選択されたオーディオ・フレーム・サイズの2分の1のものが選択される。
【0073】
以下の表2は、ミリ秒単位のある特定のオーディオ・フレーム・サイズが与えられた場合に、オーディオ・データを保持するのに要求されるバイト数を概略的に示す。列挙した値は、48kビット/sで流れるオーディオ・ストリーム用である。32kビット/sのオーディオ・ストリームの場合は、この要求の2/3となる。
【0074】
【表2】
【0075】
図2にデータ・パケット205、210、215またはデータ・セットの符号「A」および「D」で示すように、異なる優先度を有する2つのタイプのデータが、ワイヤレス通信リンクを通じて送信される。A1およびA2で示すデータ・パケットは、第1の優先度のデータを有し、データ・パケットDは、第1の優先度よりも低い第2の優先度を有する。図示の例では、第1の優先度すなわち高優先度のデータ・パケット205、215が、オーディオ・データ・セットを含み、より低い優先度のデータ・パケット210が、ブルートゥース・コア仕様4.1またはそれ以前のバージョンによるブルートゥースLEプロトコルに準拠した、開始、停止、コーデック・ネゴシエーションなどのさまざまな制御データを含む。高優先度データ・パケットA1、A2それぞれのデータ構造が、データ・パケット230によって示してある。高優先度データ・パケット230は、2バイトを有し得るヘッダ・セクション235を含む。高優先度データ・パケット230はさらに、オーディオ・フレーム・サイズに応じて60から120バイトの間のオーディオ・データを含見得る上述のペイロード・データ240を含む。60バイトのペイロード・データ・サイズは、各高優先度データ・パケットにおいて約1.5msの長さとなり、これは、それぞれに対応する接続イベントの時間ウィンドウに収まる。ヘッダ・セクション235は、好ましくは、符号「1」で示すいわゆるモア・データ(MD:more data)フィールドまたはビットを含む。このMDフィールドは、待ち状態にある低優先度データ・パケットDがあるかどうかを示す。送信装置のブルートゥースLEコントローラ56が、待ち状態にある低優先度データ・パケットDがある場合は、このMDビットをセットし、待ち状態にある低優先度データDがない場合は、MDビットを「0」にリセットする。ブルートゥースLEコントローラ56は、好ましくは、送信装置が、高優先度データ・パケットA1の後に同じ接続イベントCi1内で低優先度データ・パケットDを実際に送信するか否かに関係なく、MDビットをセットまたはリセットするように構成される。この機能により、受信装置が、MDビットを調べることによって、成功した高優先度データ・パケットの接続イベントの間の待ち状態にある低優先度データ・パケットDがない接続イベントを、スキップする、またはなくすことが可能になる。
【0076】
低優先度データ・パケットDは、37バイトの長さを有していてもよい。送信装置による高優先度データ・パケットおよび低優先度データ・パケットの送信シーケンスを示すと、第1の高優先度データ・パケットA1がまず送信される。その後、送信装置の無線回路54の動作モードが、例えば約150μsの長さの短い休止の間に送信モードから受信モードに反転される。したがって、送信装置の無線回路54は、ブルートゥース送受信機を備える。受信モードでは、送信装置の無線回路54は通信リンクを監視し、受信装置、すなわち現在の状況では左耳補聴器10Lから送信される、間違いなく高優先度データ・パケットA1が正しく受信されたことを示す肯定応答受信信号があるかどうかをリスンする。この肯定応答信号またはパケットの受信は、「Ack」と標示されたパケットまたは信号207によって示されている。高優先度データ・パケットA1のヘッダ235内で先に論じたMDビットが「1」にセットされているので、低優先度データ・パケットDが待ち状態にあり、送信を待っている。したがって、送信装置は、図示のように待ち状態にある低優先度データ・パケットD210を送信し、別の短い休止の後、第2の肯定応答信号またはパケット209が図示のように受信される。
【0077】
受信装置のブルートゥースLEコントローラ26Lはこの時点で、高優先度データ・パケットA1と低優先度データ・パケットDをどちらも確実に受領している。したがって、ブルートゥースLEコントローラ26Lは、そうでなければ以下により詳細に説明する高優先度データ・パケットA1の再送信に使用される、次に続く接続イベントCi2を、安全に放棄またはスキップすることができる。したがって、受信装置のワイヤレス送受信機は、第2の接続イベントCi2の間オンにされず、それにより、データ・パケットを受信および送信するのに比べてかなりの電力が節減される。
【0078】
第3の接続イベントCi3の間、新たな高優先度データ・パケットA2(215)が受信装置に送信され、受信装置はその後、「Ack」と標示された肯定応答パケット211を送信装置に返送することによって、確実な受信に対し肯定応答する。第2の高優先度データ・パケットA2のヘッダ235内で、MDビットを「0」にセットし、待ち状態にある低優先度データ・パケットDがないことを示すことができる。受信装置のブルートゥースLEコントローラ26Lはこの時点で、高優先度データ・パケットA2を確実に受領しており、パケットA2のヘッダのMDビットを調べることによって、待ち状態にある低優先度データ・パケットDがないと結論付けることができる。したがって、ブルートゥースLEコントローラ26Lはその結果、後続の接続イベントCi4(図示せず)を放棄またはスキップする。
【0079】
図3は、異なる優先度を有するデータ・セットをワイヤレス通信する新規な方法を示した、別の例示的タイミング図300を示す。図3は、関連するデータ・チャネル内にある程度の干渉性電磁雑音によって送信装置から受信装置への個々のデータ・パケットまたはデータ・セットの送信に時々失敗する、例えば図1のワイヤレス通信リンク12Lの動作状態を示す。
【0080】
図2に関連して上述したように、ワイヤレス通信リンクの連続する接続イベントが、時間軸tに沿ってCi1、Ci2、Ci3、Ci4などによって示されている。Ci1とCi2など、図示の隣接する接続イベント同士を、ブルートゥースLEプロトコルに従って、例えば4秒までのかなり長いスリープ期間または非活動期間によって分離できることを、当業者なら理解するであろう。
【0081】
図3では、送信装置による高優先度データ・パケットA1、A2、および低優先度データ・パケットDの送信シーケンスが、第1の高優先度オーディオ・データ・パケットA1の送信から開始する。その後、送信装置は、動作を上述の受信モードに切り換え、受信装置、すなわち左耳補聴器10Lによって送信される受信信号またはパッケージの肯定応答があるかどうか通信リンクを監視する。図示の通信シーケンスでは、接続イベントCi1内での高優先度データ・パケットA1の送信が成功し、受信装置が肯定応答信号またはパケットAckを送信する。待ち状態にあり送信を待っている低優先度データ・パケットDがなく、したがって、高優先度データ・パケットA1のヘッダ内で、上述のMDビットが、図3のデータ・パケットA1内に「MD=0」で示されるように、「0」にセットされている。
【0082】
高優先度データが受信され、待ち状態にある低優先度データ・パケットDがないため、受信装置は次の接続イベントCi2をスキップし、それにより、受信装置内で電力消費が低下する。
【0083】
第3の接続イベントCi3内で、高優先度データ・パケットA2が初めて送信されて、限定的な成功に終わっている。受信装置は、データ・パケットを受信するが、例えばCRCで送信エラーが検出され、受信装置は、肯定応答信号またはデータ・パケット「Nack」を送信し、場合によっては、同じ接続イベントCi3内でのデータ・パケットの再送信を要求するために、上述のMDビットが「1」にセットされる。したがって、データ・パケットA2は、同じ接続イベントCi3内で再送信されるが、この例では、受信装置内で送信エラーが検出されて、前回と同じ結果になる。選択的に、電力を節減するために、受信装置は第2の「Nack」信号またはパケットを送信しない。
【0084】
その後、後続の接続イベントCi4内での第1の再送信が実施され、今回は受信装置がデータ・パケットA2の受信に成功し、したがって、受信装置は、肯定応答信号またはパケットを送信装置に送信する。図3のデータ・パケットA2内に「MD=0」で示されるように、待ち状態にある低優先度データ・パケットDはない。
【0085】
送信されたデータ・パケットが損失した場合、受信装置は「Nack」信号などのいかなる信号も送信せず、受信装置からの信号がない場合、接続イベントは、好ましくは、電力を節減するために終了し、したがって好ましくは、そのデータ・パケットの最初の送信が実施されたのと同じ接続イベント内で、再送信は行われない。
【0086】
図4は、異なる優先度を有するデータ・セットをワイヤレス通信する新規な方法を示した、別の例示的タイミング図400を示す。この場合、新たな接続イベント内での高優先度データ・パケットの再送信の最大回数が1に設定される。図4は、関連するデータ・チャネル内にある程度の干渉性電磁雑音があるため、送信装置から受信装置への個々のデータ・パケットまたはデータ・セットの送信に時々失敗することがある、例えば図1のワイヤレス通信リンク12Lの動作状態を示す。
【0087】
図3と同様に、ワイヤレス通信リンクの連続する接続イベントが、時間軸tに沿ってCi1、Ci2、Ci3、Ci4などによって示されている。Ci1とCi2など、図示の隣接する接続イベント同士を、ブルートゥースLEプロトコルに従って、例えば4秒までのかなり長いスリープ期間または非活動期間によって分離できることを、当業者なら理解するであろう。
【0088】
第1の接続イベントCi1内では、高優先度データ・パケットA1が初めて送信されて、限定的な成功に終わる。受信装置は、データ・パケットを受信するが、例えばCRCで送信エラーが検出され、受信装置は、否定応答信号またはデータ・パケット「Nack」を送信し、場合によっては、同じ接続イベントCi1内でのデータ・パケットA1の再送信を要求するために、先に論じたMDビットが「1」にセットされる。したがって、データ・パケットA1は、同じ接続イベントCi1内で再送信されるが、この例では、受信装置内で送信エラーが検出されて、やはり前と同じ結果になる。選択的に、電力を節減するために、受信装置は第2の「Nack」信号またはパケットを送信しない。
【0089】
その後、後続の接続イベントCi2内での第1の再送信が実施されるが、引き続き受信装置内で送信エラーが検出され、否定応答信号またはデータ・パケット「Nack」が送信され、場合によっては、同じ接続イベントCi2内でのデータ・パケットA1の再送信を要求するために、先に論じたMDビットが「1」にセットされる。したがって、データ・パケットA1は、同じ接続イベントCi2内で再送信されるが、やはり受信装置内で送信エラーが検出される結果となる。
【0090】
その結果、データ・パケットA1は、タイムアウトのためフラッシュされ、送信装置は、次の高優先度データ・パケットA2を取得して、接続イベントCi3内で送信する。送信は成功し、受信装置がデータ・パケットA2の受信に対し肯定応答する。送信装置内で、送信を待っているより低い優先度を有するデータ・パケットがなく、それにより、第2の高優先度データ・パケットA2のヘッダ内で、MDビットが「0」にセットされ、したがって、受信装置が第4の接続イベントCi4をスキップし、それにより電力が節減される。
【0091】
図示の例では、高優先度データ・パケットの新たな接続イベント内での再送信の所定の最大回数が1であるが、より大きな最大値、例えば2、3、または4を選択してもよい。また、送信装置を、受信装置から受信の肯定応答が受信されるまで、すなわち再送信回数を選択される最大回数に限定せずに、低優先度データ・パケットを再送信するように構成してもよい。
【0092】
特定の高優先度データ・パケットの再送信回数を選択される最大回数に限定すると、受信装置で受信されるデータ・パケットのリアル・タイム特性を維持することが容易になる。特定の高優先度データ・パケットの再送信回数が、成功せずに所定の最大回数に到達した場合、送信装置は、特定の高優先度データ・パケットをフラッシュするか、特定の高優先度データ・パケットに、例えば現在のオーディオ・コンテンツを表す新たな高優先度データ・パケットを上書きし、続いてその新たな高優先度データ・パケットを送信する。前者の高優先度データ・パケットの損失は、受信装置が、例えば左補聴器の聴力損失プロセッサ24Lにより実行される適切なパケット損失隠蔽アルゴリズムによって隠蔽することができる。
【0093】
送信されたデータ・パケットが損失した場合、受信装置は「Nack」信号などのどんな信号も送信せず、受信装置からの信号がない場合、接続イベントは、好ましくは、電力を節減するために終了し、したがって好ましくは、そのデータ・パケットが最初に送信されたのと同じ接続イベント内で、再送信は行われない。
【0094】
図5のタイミング図では、接続イベントCi1内で高優先度データ・パケットA1の送信が成功し、受信装置が、肯定応答信号またはパケット「Ack」を送信装置に送信することによって、確実な受信に対し肯定応答する。第1の高優先度データ・パケットA1のヘッダ内で、MDビットが「1」にセットされており、新たな低優先度データ・パケットD1が受信装置への送信を待機していることを示す。送信装置は続いて、低優先度データ・パケットD1を同じ接続イベントCi1の間に送信する。送信は成功し、受信装置が受信に対し肯定応答する。受信装置は、高優先度データ・パケットA1と低優先度データ・パケットD1のどちらの受信にも成功したため、第2の接続イベントCi2をスキップし、それにより受信装置の電力が節減される。
【0095】
接続イベントCi3では、第2の高優先度データ・パケットA2の受信装置への送信が成功し、受信装置が受信に対し肯定応答する。第2の高優先度データ・パケットA2のヘッダ内で、MDビットが「1」にセットされており、新たな低優先度データ・パケットD2が受信装置への送信を待機していることを示す。送信装置は続いて、低優先度データ・パケットD2を同じ接続イベントCi3の間に送信する。第2の低優先度データ・パケットD2の送信は不成功に終わり、受信装置は、点線のボックス「Nack」によって示されるように、受信に対し肯定応答しない。データ・パケットD2が損失した場合、受信装置は送信装置に何も送信せず、受信装置がデータ・パケットD2を受信したものの、送信エラーが検出された場合、受信装置は「Nack」信号を送信してもよい。
【0096】
受信装置への送信を待機している高優先度データ・セットまたはパケットがないので、送信装置は続いて、第4の接続イベントCi4の間に低優先度を有する第2のデータ・パケットD2の再送信を行い、今回は成功している。
【0097】
図6では、接続イベントCi1内で高優先度データ・パケットA1の送信が成功し、受信装置が、肯定応答信号またはパケット「Ack」を送信装置に送信することによって、確実な受信に対し肯定応答する。第1の高優先度データ・パケットA1のヘッダ内で、MDビットが「1」にセットされており、新たな低優先度データ・パケットD1が受信装置への送信を待機していることを示し、送信装置は続いて、低優先度データ・パケットD1を同じ接続イベントCi1の間に送信する。低優先度データ・パケットD1の送信は失敗し、受信装置は、点線のボックス「Nack」によって示されるように、受信に対し肯定応答しない。データ・パケットD1が損失した場合、受信装置は送信装置に何も送信せず、受信装置がデータ・パケットD1を受信したものの、送信エラーが検出された場合、受信装置は「Nack」信号を送信してもよい。
【0098】
受信装置への送信を待っている高優先度データ・セットまたはパケットがないので、送信装置は続いて、第2の接続イベントCi2の間に低優先度を有する第2のデータ・パケットD1の再送信を行うが、接続イベントCi2内で送信は失敗する。接続イベントCi3内で、新たな高優先度データ・パケットA2の送信が成功せず、上記ですでに説明したように再送信される。高優先度データ・パケットA2の再送信が成功した後で、接続イベントCi4内で低優先度データ・パケットD1の受信装置への送信が最終的に成功する。
【0099】
図7は、再送信を待っているデータ・パケットの優先度が、例えば再送信試行に失敗した回数の関数として増加し、再送信を待っているデータ・パケットの優先度が、高優先度を有するデータ・パケットよりも高い優先度を取得し得ることを示す。
【0100】
図7では、接続イベントCi1内で高優先度データ・パケットA1の送信が成功し、受信装置が、肯定応答信号またはパケット「Ack」を送信装置に送信することによって、確実な受信に対し肯定応答する。第1の高優先度データ・パケットA1のヘッダ内で、MDビットが「1」にセットされており、新たな低優先度データ・パケットD1が受信装置への送信を待機していることを示す。送信装置は続いて、低優先度データ・パケットD1を同じ接続イベントCi1の間に送信する。低優先度データ・パケットD1の送信は失敗し、受信装置は、点線のボックス「Nack」によって示されるように、受信に対し肯定応答しない。データ・パケットD1が損失した場合、受信装置は送信装置に何も送信せず、受信装置がデータ・パケットD1を受信したものの、送信エラーが検出された場合、受信装置は「Nack」信号を送信してもよい。
【0101】
再送信に失敗した後で、データ・パケットD1の優先度が最高値にセットされ、送信装置は続いて、第2の接続イベントCi2の間に、この時点で高優先度を有する第1のデータ・パケットD1の再送信を行うが、接続イベントCi2内で送信は失敗する。接続イベントCi3内で、データ・パケットD1の送信が再度失敗するが、接続イベントCi4内で、D1の受信装置への送信が最終的に成功する。さらに、同じ接続イベントCi4内で、新たな高優先度データ・パケットA2の受信装置への送信が成功する。
【0102】
図8は、新規な方法の一例の流れ図を示す。
【0103】
図示の方法500は、音声および/または音楽などのオーディオを、例えば、ブルートゥースLE標準プロトコルに準拠した動作に適するように構成されたスマートフォンに収容されている送信装置から、例えば補聴器またはヘッドホンまたは別の聴覚装置に収容されている受信装置にストリーミングするために利用することができる。
【0104】
図示の方法500によれば、ストリーミングが要求されると、ブルートゥースLE標準プロトコルに従って、ストリーミングされるオーディオ・データが、本開示全体を通じてオーディオ・データ・セットとも表されるオーディオ・データ・パケットにパックされ、オーディオ・データ・パケットの送信が、制御データ、例えば聴覚装置の音量を上げるためのコマンドなど、他のデータの送信に妨げられないように、オーディオ・データ・パケットには高優先度が与えられる。
【0105】
オーディオ・データ・パケットは順番に、以下のステップによって送信される。
510:ブルートゥースLE標準プロトコルに準拠して、一連の連続する接続イベントのうち1つの接続イベントを確立するステップ、
520:ストリーミングされる一連のオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットのうち、少なくとも1つのオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットに高優先度を与えて、送信装置から、受信装置が受信するように送信するステップ、
530:受信装置からの受信の肯定応答を待機するステップ。
540:受信装置からの受信の肯定応答がない場合、520:少なくとも1つのオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットを再送信するステップ。
550:受信装置からの受信の肯定応答がある場合、
560:肯定応答がなければ送信装置が少なくとも1つのオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットを再送信していたであろう時に、オーディオ・データ・パケットに与えられていた優先度よりも低い第2の優先度を有する第2のデータ・パケットまたはデータ・セットを、送信装置から受信装置に送信するステップ。
【0106】
好ましくは、ストリーミングされるオーディオに基づいて生成される音の高忠実度または少なくとも許容可能な質を確保するために、ストリーミングされるオーディオのオーディオ・データ・パケットは高優先度を有し、それにより、より低い優先度を有する他のタイプのデータ・セットを送信する前にオーディオ・データ・パケットを送信することが確実になる。
【0107】
本方法はさらに、L2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットの送信に割り当てることを含んでいてもよく、例えば、1つのL2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットに関連する制御データに割り当て、かつ/または1つのL2CAPチャネルを第1のオーディオ・データ・セットに割り当て、場合によっては別のL2CAPチャネルを第2のオーディオ・データ・セットに割り当てることによるものである。
【0108】
次の3つの固定L2CAPチャネルをオーディオ伝送に割り当てることができる。
1)制御データ(開始、停止、コーデック・ネゴシエーションなど)
2)左オーディオ・データ
3)右オーディオ・データ
【0109】
1つのオーディオ・ストリーム(左または右)を受信可能な装置、例えば補聴器では、チャネル1)および2)、またはチャネル1)および3)だけがその装置に使用される。例えばステレオ・ヘッドセットのようにステレオ機能が統合された装置では、これら3つのチャネルが全て使用される。オーディオ・データ・セットは、適用分野に応じて単方向でも双方向でもよく、制御データ・チャネルが、その点に関するネゴシエーションを可能にするべきである。
【0110】
図9は、図8に示す方法500のステップに加えて以下のステップを含む、新規な方法の別の例500’の流れ図を示す。
ステップ520では:少なくとも1つのデータ・パケット内に、第2の優先度を有するデータ・セットが受信装置への送信を待機しているか否かについて、例えばデータ・バイトまたはデータ・ビットに符号化された情報を含めるステップ。
570:第2の優先度を有するデータ・セットが受信装置への送信を待機しているか否かについて調べるステップ、
580:受信装置への送信を待っている第2の優先度を有するデータ・セットがない場合、第2の優先度を有する第2のデータ・セットを送信するために送信装置と受信装置の間の接続の確立を停止するステップ。
590:第2の優先度を有するデータ・セットが受信装置への送信を待機している場合、
560:肯定応答がなければ送信装置が少なくとも1つのオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットを再送信していたであろう時に、オーディオ・データ・パケットに与えられていた優先度よりも低い第2の優先度を有する第2のデータ・パケットまたはデータ・セットを、送信装置から受信装置に送信するステップ。
【0111】
図10は、図8に示す方法500のステップに加えて以下のステップを含む、新規な方法の別の例500’’の流れ図を示す。
ステップ510では:ステップ520において送信されるオーディオ・データ・パケットの再送信の試行回数のカウンタをゼロにセットするステップ。
ステップ520では:カウンタを1だけインクリメントするステップ。
540:受信装置からの受信の肯定応答がない場合、
600:オーディオ・データ・パケットの再送信の試行回数のカウンタの値を調べるステップ。
610:値が2未満である場合、520:カウンタを1だけインクリメントし、少なくとも1つのオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットを再送信するステップ。
620:値が2に等しい場合、560:肯定応答がなければ送信装置が少なくとも1つのオーディオ・データ・パケットまたはオーディオ・データ・セットを再送信していたであろう時に、オーディオ・データ・パケットに与えられていた優先度よりも低い第2の優先度を有する第2のデータ・パケットまたはデータ・セットを、送信装置から受信装置に送信するステップ。
【0112】
新規な方法の別の例500’’’の流れ図を示した図11に示すように、さらなる方法ステップ600、610、および620を方法500’に追加してもよい。
【0113】
他のタイプのデータの再送信の試行許容回数は、1とは異なることもあり、限定されないこともあり、すなわち2とは異なる最大値、最大値なし、または無限の最大値が、さまざまな他のタイプのデータに割り当てられることがある。
【0114】
データのタイプが異なれば、再送信の試行に関する所定の最大値も異なっていてもよく、例えば、オーディオ・データ・セットは最大値2を有していてもよく、一方オーディオ・データ・セットの優先度よりも低い優先度を有するデータ・セットの最大値は、より大きな最大値を有していてもよい。
【0115】
有利なことには、図示の新規な方法は、ブルートゥースLEを利用したオーディオ・データ・パケットまたはセットの送信を、ブルートゥースLEのコントロールおよびリンク層の拡張機能を限定された形で利用することによって容易にし、例えば、セキュリティおよびリンク・セットアップに関連する動作は、ブルートゥース・コア仕様に規定された通りに実施される。
明細書に記載される技術の特徴を列挙する。
(特徴1)
データ・セットをワイヤレス通信する方法であって、
第1のデータ・カテゴリの第1のデータ・セットを、送信装置から受信装置に受信させるために送信するステップと、
前記受信装置からの受信の肯定応答がない場合、前記第1のデータ・セットを再送信するステップと、
前記受信装置からの前記受信の前記肯定応答がある場合、前記肯定応答がなければ前記送信装置と前記受信装置が前記再送信のために接続されたであろう時に、前記第1のデータ・カテゴリとは異なる第2のデータ・カテゴリの第2のデータ・セットを、前記送信装置から前記受信装置に送信するステップと、を含む方法。
(特徴2)
前記第1のデータ・セットが第1の優先度を有し、前記第2のデータ・セットが前記第1の優先度よりも低い第2の優先度を有する、特徴1に記載の方法。
(特徴3)
前記第2のデータ・セットのデータ・セットが前記受信装置への送信を待っているか否かについて、前記送信装置から前記受信装置に信号送信するステップと、
前記受信装置への送信を待っている前記第2のデータ・セットのデータ・セットがない場合、前記第2のデータ・セットの前記データ・セットの送信のための前記送信装置と前記受信装置との間の前記接続を確立することを停止するステップと、を含む、特徴1または2に記載の方法。
(特徴4)
前記第2のデータ・セットのデータ・セットが前記受信装置への送信を待っているか否かに関する情報が、単一データ・ビットに符号化される、特徴2に記載の方法。
(特徴5)
ブルートゥース・ロー・エナジー標準規格に準拠したデータの送信および受信を含む、特徴1から4のいずれかに記載の方法。
(特徴6)
L2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットの送信に割り当てるステップを含む、特徴4に記載の方法。
(特徴7)
1つのL2CAPチャネルをオーディオ・データ・セットに関連する制御データに割り当てるステップを含む、特徴5に記載の方法。
(特徴8)
1つのL2CAPチャネルを第1のオーディオ・データ・セットに割り当てるステップを含む、特徴5または6に記載の方法。
(特徴9)
別のL2CAPチャネルを第2のオーディオ・データ・セットに割り当てるステップを含む、特徴7に記載の方法。
(特徴10)
オーディオ・データ・セットの前記受信装置から受信の肯定応答がない場合に、同じオーディオ・データ・セットの再送信の試行回数が所定の最大値未満であることを条件として、前記オーディオ・データ・セットを再送信するステップを含む、特徴4から8のいずれかに記載の方法。
(特徴11)
最大値が2である、特徴9に記載の方法。
(特徴12)
データのタイプが異なれば、再送信の試行に関する所定の最大値も異なる、特徴9または10に記載の方法。
(特徴13)
前記送信装置から、オーディオ・データ・セットを受信するように構成された少なくとも1つの受信装置に、異なるオーディオ・データ・セットを受信するように接続された少なくとも2つの異なる受信装置間の送信遅延差に関連するタイミング情報を含んだ、同期データを送信するステップを含む、特徴1から12のいずれかに記載の方法。
(特徴14)
前記送信装置から少なくとも2つの異なる受信装置へのping送信に基づいて、同期データを決定するステップを含む、特徴12に記載の方法。
(特徴15)
L2CAP制御チャネルを利用したping送信を含む、特徴13に記載の方法。
(特徴16)
特徴1から15のいずれかに記載の方法による動作に適するように構成された通信コントローラを備える聴覚装置。
(特徴17)
前記聴覚装置が補聴器である、特徴15に記載の聴覚装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11