特許第6891275号(P6891275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6891275セフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムからなる組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891275
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】セフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムからなる組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/546 20060101AFI20210607BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20210607BHJP
   C07D 501/36 20060101ALI20210607BHJP
   C07D 499/86 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20210607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   A61K31/546
   A61K31/43
   C07D501/36 114
   C07D499/86
   A61P31/04
   A61P43/00 121
【請求項の数】18
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-522306(P2019-522306)
(86)(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公表番号】特表2020-504705(P2020-504705A)
(43)【公表日】2020年2月13日
(86)【国際出願番号】CN2016104327
(87)【国際公開番号】WO2018081944
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年6月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519144484
【氏名又は名称】湘北威爾曼制薬股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】XIANGBEI WELMAN PHARMACEUTICAL CO.,LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】519144495
【氏名又は名称】広州威爾曼新薬研発有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU WELMAN NEW DRUG R&D CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】519144509
【氏名又は名称】南京康福順薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING KANGFUSHUN PHARMACEUTICAL CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】孫 明傑
【審査官】 二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102462684(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101648016(CN,A)
【文献】 特表2008−521884(JP,A)
【文献】 特表2015−531778(JP,A)
【文献】 山下 博之,医薬品原薬における共結晶形成と熱挙動,Netsu Sokutei,2015年,Vol.42, No. 1,pp. 17-24
【文献】 IZSUTSU, K. et al.,Characterization and Quality Control of Pharmaceutical Cocrystals,Chem. Pharm. Bull.,2016年10月 1日,Vol. 64,pp.1421-1430
【文献】 深水啓朗,Cocrystal(共結晶)に関する話題:概念と実際,ファルマシア,2011年,Vol. 47, No. 11,pp. 1044-1048
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/546
A61K 31/43
A61P 31/04
A61P 43/00
C07D 499/86
C07D 501/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折分析スペクトルは、2θ±0.2°で表示した回折角において下記のピーク:11.2、14.3、17.8、19.3、21.2、22.8、及び23.8を有することを特徴とする、セフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムとからなる組成物。
【請求項2】
さらに、粉末X線回折分析スペクトルは、2θ±0.2°で表示した回折角において下記のピーク:12.6、16.7、18.4、20.0、20.4、及び28.0を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
粉末X線回折分析スペクトルにおいて、7.9±0.2Å、6.2±0.2Å、5.0±0.2Å、4.6±0.2Å、4.2±0.2Å、3.9±0.2Å、及び3.7±0.2Åの内、いずれか一つの結晶の面間隔を有することを特徴とする、セフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムとからなる組成物。
【請求項4】
粉末X線回折分析スペクトルにおいて、7.1±0.2Å、5.3±0.2Å、4.8±0.2Å、4.4±0.2Å、4.3±0.2Å、及び3.2±0.2Åの内、いずれか一つの結晶の面間隔を有することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
赤外吸収スペクトルにおいて、3255±5cm-1、1742±5cm-1、1604±5cm-1、1539±5cm-1、1398±5cm-1、1302±5cm-1、1198±5cm-1、1124±5cm-1、1032±5cm-1、897±5cm-1、804±5cm-1、600±5cm-1、及び479±5cm-1の内、いずれか一つの波数に吸収ピークを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
赤外吸収スペクトルにおいて、3441±5cm-1、3116±5cm-1、2938±5cm-1、1500±5cm-1、及び1099±5cm-1の内、いずれか一つの波数に吸収ピークをさらに有することを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
示差走査熱量分析スペクトルにおいて、269.6±0.5℃に発熱ピークを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
メジアン粒径D50が25μm〜88μmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムとからなる組成物。
【請求項9】
メジアン粒径D50が25μm〜47μm、38μm〜62μm、または58μm〜88μmであることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を含む医薬製剤。
【請求項11】
前記医薬製剤は注射用粉末または注射液であることを特徴とする請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記注射用粉末は注射用無菌粉末または注射用凍結乾燥粉末であることを特徴とする請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記医薬製剤の、セフトリアキソンによって計算されるセフトリアキソンナトリウム対スルバクタムによって計算されるスルバクタムナトリウムの質量比は、1: 1から8: 1であることを特徴とする請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記質量比が1: 1から4: 1であることを特徴とする請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
細菌感染症を治療するための薬物の調製における、請求項10〜14のいずれか一項に記載の医薬製剤の使用。
【請求項16】
前記細菌は薬剤耐性を有する淋菌であることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記薬剤耐性は、β-ラクタム系抗菌剤、テトラサイクリン系抗菌剤、マクロライド系抗菌剤、フルオロキノロン系抗菌剤、またはアミノグリコシド系抗菌剤に対する薬剤耐性を意味することを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記感染症は泌尿生殖器系感染症であることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成物に関し、特にセフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムからなる組成物に関する。本発明はまた、その組成物を含む医薬製剤及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セフトリアキソンは第三世代のセファロスポリン系抗生物質であり、臨床上は一般的にそのナトリウム塩が使用されている。セフトリアキソンナトリウムは、様々なグラム陰性菌及びいくつかのグラム陽性菌(例えば、大腸菌、肺炎桿菌、淋菌など)に対して優れた抗菌活性を有しており、敏感な細菌によって引き起こされた感染症の治療に使用されることができる。しかし、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びエンテロバクタークロアカに対する感受性が低いため、セフトリアキソンナトリウムの適用には一定の制限がある。スルバクタムはβ-ラクタマーゼ阻害剤である。従来技術において、スルバクタムナトリウム及びセフトリアキソンナトリウムは、抗菌スペクトル及びセフトリアキソンの薬剤耐性細菌に対する感受性を改善する組成物製剤に調製された。
【0003】
医薬品使用の安全性確保に対して、医薬品の安定した品質は重要である。生薬の結晶形(結晶形態)は、薬の品質の安定化に非常に重要な役割を果たしている。薬物の品質管理に関しては、薬物の異なる結晶形(結晶形態)は異なる安定性を持ち、それから薬物の品質に影響を与えている。薬物の結晶形態(結晶形態)が決定されれば、その薬物の品質はより安定し、そして制御されやすくなる。そうでなければ、薬物の品質はバッチごとに異なり、異なるバッチの異なる安定性がもたらされる。
【0004】
従来の研究は、セフトリアキソンナトリウムが多くの異なる結晶形態をとり得ることを示した。セフトリアキソンナトリウムの単結晶構造が、セフトリアキソンナトリウムの結晶の研究者に有用な参照情報を提供するソフトウェアによってシミュレートされることが、中国抗生素雑誌 (2007, 32(11): 672-678)に報告された。セフトリアキソンナトリウムの3つの亜結晶形がPharmaceutical Journal (2014, 49(7): 1034-1038)に報告された。これらの3つの亜結晶形は、塩形成速度、結晶化度、ブチルゴムクロージャーとの相溶性などに違いがあり、これら違いが薬効に影響を与える可能性がある。
【0005】
スルバクタムナトリウムもまた、異なる結晶形で存在し得る物質である。スルバクタムナトリウムは酢酸エチルとn-ブタノールの混合溶媒から結晶化されることができることがBiochemistry (1981, 20(13): 3680-3687)に報告されており、その単結晶構造も開示された。淮海医薬(2005, 23(5): 423)の報告によって、スルバクタムナトリウムはアセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノールなどのような異なる溶媒を使用することによって調製され、4つの異なる種類の結晶が得られた。これら4種類の結晶の形態、密度、流動性は大きい差異がある。スルバクタム結晶がCN103113390Aに開示されており、スルバクタムの含有量は24ヶ月以内に維持されることができる。
【0006】
単一調製よりも有効性の高いセフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの医薬組成物製剤を得るためには、医薬組成物製剤が安定した品質を有することが必然的に要求される。しかしながら、組成物製剤は、単一処方調製と比較して、調合、効力など方面でより複雑である。結晶形に関しては、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの両方が従来技術において多数の異なる結晶を有しており、それは組成物薬物の結晶形の複雑さをもたらす。さらに、組成物薬物の調製はまた、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの結晶に対して予測不可能な効果をもたらす可能性がある。
【0007】
研究によっては、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの既存の組成物調製物が不安定な結晶形を有することが分かった。
【0008】
さらに、CN102462684Aは下記の内容を報告した。低温で不活性ガスの条件下で、セフトリアキソンナトリウム、スルバクタムナトリウム及びリオプロテクタントを70%エタノールに溶解して溶液を形成し、この溶液にpH調整剤を加えて凍結乾燥し、共晶粉末を形成した場合、活性成分は36ヶ月以内に実質的に分解しなかった。しかしながら、当該共晶粉末は、セフトリアキソンナトリウム、スルバクタムナトリウム、リオプロテクタント、pH調整剤などの多くの成分を含み、これらは生薬自体に影響を及ぼし得る。研究は、当該共晶粉末は安定な含有量を有するが、安定な結晶は形成されず、結晶学の意味で依然として不安定であることを意味することを示した。
【0009】
結晶は、その粒子が微細構造で規則正しく配置されている物質である。今日の科学的及び技術的レベルの制限によって、結晶の存在及び存在モードは効果的に予測できない。詳細な研究により、本発明者らは、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの組成物製剤の製品品質を改善し、貯蔵寿命を延ばし、そして経済性及び安全性を改善することを希望している。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的の1つは、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムからなる安定な組成物を提供して、安定性の低さ、有効性の低さ、貯蔵寿命の短さなどの従来技術における既存の問題を解決することである。
【0011】
本発明のまた一つ目的は、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムからなる安定な組成物を含む医薬製剤を提供することである。
【0012】
本発明のまた一つ目的は、抗菌薬の調製における前記医薬製剤の使用を提供することである。
【0013】
安定性についての研究を行うとき、本発明者らは、30ヶ月の貯蔵後、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの組成物製剤を水に溶解した後にわずかに濁っていることを発見した。組成物製剤の調製方法をさらに繰り返すと、生成物の結晶形には以下のようないくつかの問題があることがわかった。使用した原料のセフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムはある種の結晶形を有していたが、調合された組成物製剤は非晶質であった。結晶形態の不安定性は、長期保存後に組成物製剤の濁りをもたらす原因の1つであり得る。
【0014】
組成物製剤の調製プロセスを改善するために、本発明者らは意外に特定の結晶形態を有するセフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの組成物を得た。
【0015】
本発明による1つの技術的解決策は以下の通りである。
セフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムからなる組成物は、その粉末X線回折分析スペクトルにおいて、2θ±0.2°で表示した回折角において下記のピークが含まれる:11.2、14.3、17.8、19.3、21.2、22.8と23.8。
好ましくは、本発明による組成物の粉末X線回折分析スペクトルにおいて、2θ±0.2°で表示した回折角において下記のピークがさらに含まれる:12.6、16.7、18.4、20.0、20.4と28.0。
【0016】
本発明による他の技術的解決策は以下の通りである。
セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムからなる組成物は、その粉末X線回折分析スペクトルにおいて、以下の結晶の面間隔±0.2Åが含まれる:7.9、6.2、5.0、4.6、4.2、3.9と3.7。
好ましくは、本発明による組成物の粉末X線回折分析スペクトルにおいて、以下の結晶の面間隔±0.2Åがさらに含まれる:7.1、5.3、4.8、4.4、4.3と3.2。
【0017】
本発明の組成物は結晶質(クリスタル)である。粉末X線回折分析は、当該技術において結晶を同定するための権威ある手段である。粉末X線回折分析によって得られたスペクトルにおいて、結晶の特性は、一般に、低い2θ角にあり、高い結晶面間隔にあるか、明確で完全な形態を有するか、またはより高い強度を有するピークによりよく反映される。さらに、試料の選択配向などの問題により、ピーク高さ、特徴的ピークのピークエリアなどの1つのパラメータは特徴的ではないことがよくあり、結晶を特徴付けるために単独で使用することはできない。結晶学の一般的な原理に従って、本発明者らは、本発明による組成物を科学的に特徴付けるために一連の特徴的な2θ角及び結晶面間隔を選択した。
【0018】
赤外吸収スペクトル分析において、本発明による組成物は、以下の波数±5cm-1に吸収ピークがある:3255、1742、1604、1539、1398、1302、1198、1124、1032、897、804、600と479。
【0019】
好ましくは、赤外吸収スペクトル分析において、本発明による組成物は、以下の波数±5cm-1に吸収ピークをさらに有する:3441、3116、2938、1500及び1099。
【0020】
示差走査熱量分析において、本発明による組成物は269.6±0.5℃に発熱ピークがあると示されている。
【0021】
結晶の特徴付けに関して、赤外吸収分光法及び示差走査熱量分析の精度は、粉末X線回折分析の精度より劣るかもしれないが、物質を識別するための2つの一般的に使用される手段であるので、本発明による組成物の特徴付けに参考として提供される。
【0022】
本発明による組成物は、以下のプロセスによって調製することができる:原料のセフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムを取り、粒径が25μm〜88μmになるまで粉砕し均一に混合する。
好ましくは、粒径は25μm〜47μm、38μm〜62μmまたは58μm〜88μmである。
好ましくは、本発明において、粉砕は、まずセフトリアキソンナトリウム原料とスルバクタムナトリウム原料をそれぞれ粉砕した後、一緒に粉砕する工程であり得る。粉砕は、セフトリアキソンナトリウム原料とスルバクタムナトリウム原料を一緒に直接粉砕する工程であってもよい。
【0023】
本発明において、粒径は好ましくはメジアン粒径D50を指すことである。
本発明において、粉砕は好ましくはボールミルにより行われることである。
本発明において、混合は好ましくはシングルコーンリボンミキサーによって行われることである。
より好ましくは、シングルコーンリボンミキサーの回転速度は25〜40rpmであり、混合時間は10〜25分である。
【0024】
本発明による組成物を調製するために、本発明者らは粉砕方法を使用する。粉砕中、物理的な力はセフトリアキソンナトリウムとスルバクタムナトリウムとの間の十分な接触を促進し、そして直接的または間接的に物質の微細空間構造を影響する。本発明者らは、特定の程度の粉砕が生成物にとって非常に重要であることを発見した。ある場合には、得られた生成物の結晶化度は低いである。粉砕度の制御は、粉砕生成物の粒径を特定することによってある程度達成することができる。例えば、異なるメッシュ番号を有するスクリーンクロスを粉砕中に使用することができ、そして特定のメッシュ番号を有するスクリーンクロスを粉砕生成物を篩過するためにも使用することができる。生成物の粒径は、当該技術分野における従来の方法によって決定され得る。
【0025】
本発明による組成物の調製方法を例として説明するが、本発明による組成物を得ることができる他の方法もあり得る。
【0026】
さらに、薬物製造プロセスを単純化し、その後の医薬製剤の調製をより便利にするために、本発明による組成物の2つの成分をあらかじめ特定の比率に維持することもできる。
【0027】
好ましくは、本発明による組成物において、セフトリアキソンナトリウム(セフトリアキソンによって計算される)対スルバクタムナトリウム(スルバクタムによって計算される)の比(質量比)は、1: 1から8: 1であり得る。本発明によるある例では、この比は、好ましくは1: 1、2: 1、3: 1、4: 1、5: 1、6: 1、7: 1または8: 1である。
【0028】
より好ましくは、本発明による組成物において、セフトリアキソンナトリウム(セフトリアキソンによって計算される)対スルバクタムナトリウム(スルバクタムによって計算される)の比は、1: 1から4: 1である。
【0029】
いくつかの成分の比率が列挙されているが、本発明による組成物を得ることができる他の比率があり得る。
【0030】
組成物に関しては、前記の好ましい技術的解決策における技術的特徴は自由に組み合わせることができ、全ての組み合わせは本発明による組成の範囲内に属する。
本発明によるさらなる技術的解決策は以下の通りである。
本発明による組成物を含む医薬製剤。
本発明による医薬製剤において、本発明による組成物は好ましくは有効成分である。
本発明による医薬製剤は好ましくは薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
本発明による医薬製剤は好ましくは注射用粉末または注射液である。注射用粉末は、より好ましくは注射用無菌粉末または注射用凍結乾燥粉末である。
【0031】
好ましくは、本発明による医薬製剤において、セフトリアキソンナトリウム(セフトリアキソンによって計算される)対スルバクタムナトリウム(スルバクタムによって計算される)の比(質量比で)は、1: 1から8: 1であり得る。本発明のある例では、この比は、好ましくは1: 1、2: 1、3: 1、4: 1、5: 1、6: 1、7: 1または8: 1である。
【0032】
より好ましくは、本発明による医薬製剤において、セフトリアキソンナトリウム(セフトリアキソンによって計算される)対スルバクタムナトリウム(スルバクタムによって計算される)の質量比は、1: 1から4: 1である。
【0033】
医薬製剤に関して、上述の好ましい技術的解決策における技術的特徴は自由に組み合わせることができ、全ての組み合わせは本発明による医薬製剤の範囲に属する。
【0034】
本発明による別のさらなる技術的解決策は以下の通りである。
抗菌薬の調製における、本発明による組成物または医薬製剤の使用。
好ましくは、本発明において、本発明による「抗菌性」は、抗淋菌を意味し得る。淋菌はより好ましくは薬剤耐性を持つことであり得る。
より好ましくは、本発明において、薬剤耐性は、β-ラクタム系抗菌剤、テトラサイクリン系抗菌剤、マクロライド系抗菌剤、アミノグリコシド系抗菌剤、及びフルオロキノロン系抗菌剤に対する耐性を意味し得る。
【0035】
本発明における定義
「組成物」という用語は、複数の物質によって形成された組合せを指す。
「医薬製剤」という用語は、関連する法規の規定に準拠し、関連する規格の要件を満たし、したがって使用のために使用者に直接提供され得る、特定の剤形要件に従って調製された製品を指す。関連する法律及び規制には、それに限定されないが、薬物管理法、薬物登録及び管理規制、医薬品の適正製造基準などが含まれる。関連規格には、中国薬局方が含まれるが、これに限定されない。
【0036】
「医薬製剤」という用語は、関連する法規の規定に準拠し、関連する規格の要件を満たし、従って使用のために使用者に直接提供され得る、特定の剤形要件に従って調製された製品を指す。関連する法律及び規制には、薬物管理法、薬物登録及び管理規制、医薬品の適正製造基準などが含まれるが、これに限定されない。関連規格には、中国薬局方が含まれるが、これに限定されない。
【0037】
「注射用無菌粉末」、「注射用凍結乾燥粉末」または「注射液」は、必要に応じて賦形剤を添加してもしなくてもよく、当技術分野で通常の方法を用いて調製されることができる。
【0038】
「粉末X線回折分析」、「赤外吸収スペクトル分析」及び「示差走査熱量分析」は、当技術分野における従来の分析方法である。試験条件(試料、試料の粒子アスペクト比、機器の種類、機器の精度、動作モード、オペレータなど)の違い及び避けられない実験誤差(機器誤差、偶然誤差など)のせいで、本発明におけるデータが完全に絶対的であることは不可能である。本発明による組成物を科学的に特徴付けるために、本発明者らは、当技術分野における常識に基づいてデータの誤差範囲(例えば、米国薬局方USP35-NF30は、粉末X線回折分析において、機器誤差が0.2°に達する可能性があることを記載している。)及び本発明による組成物の状況を特定する。しかしながら、承知しておいてもらいたいのはエラーマージンが全ての状況をカバーすることは不可能である。そして、当業者に承知しておいてもらいたいのは、数値が当技術分野における共通の範囲内で変動する可能性があり、全て本発明の技術的解決策の範囲に属することである。
【0039】
「特徴的ピーク」、「吸収ピーク」または「発熱ピーク」という用語における「ピーク」は、関連する分析方法によって得られるスペクトル中のノイズの強度よりも強い強度を示すピークを指す。
【0040】
「薬剤耐性」は、微生物が薬剤に対する耐性を進化し、その結果微生物に対する薬剤の活性が著しく低下することを意味する。
【0041】
本発明において、セフトリアキソンナトリウム及びスルバクタムナトリウムの新規組成物が研究により得られ、そしてそれから調製される組成物及び医薬製剤はより良好な抗菌活性及び優れた安定性(物理的安定性、化学的安定性及び生物活性安定性)を有する。
【0042】
特に、30ヶ月の貯蔵後、本発明による組成物及びその製剤の水溶液は、良好な透明度、本質的に変わらない結晶度、及び優れた物理的及び化学的安定性を有し、各種の不純物の含有量は0.5%未満である。驚くべきことに、本発明による組成物及び医薬製剤はさらに改善された抗菌活性を有し、特に種々の薬剤耐性淋菌に対してより良好な抗菌効果を示し、そして30ヶ月の貯蔵後も変化しない活性を有し、それにより優れた生物活性安定性を示す。
【0043】
優れた安定性及び生物活性を持つため、本発明による組成物及びその製剤は、細菌感染症の治療に非常に適しており、特に様々な難治性及び薬剤耐性淋菌によって引き起こされる泌尿生殖器系感染症の治療に適している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、比較例1の注射用凍結乾燥粉末Aの粉末X線回折分析スペクトルである。
図2図2は、比較例2の混合粉末の粉末X線回折分析スペクトルである。
図3図3は、実施例1の組成物Iの粉末X線回折分析スペクトルである。
図4図4は、実施例1の組成物Iの赤外吸収スペクトルである。
図5図5は、実施例2の組成物IIの粉末X線回折分析スペクトルである。
図6図6は、実施例2の組成物IIの赤外吸収スペクトルである。
図7図7は、実施例3の組成物IIIの粉末X線回折分析スペクトルである。
図8図8は、実施例3の組成物IIIの赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の内容をよりよく理解するために、以下に比較例、実施例及び試験例に基づいてさらに説明するが、具体的な実施の態様は本発明の技術的解決策及び技術的効果を限定するものではない。
注:以下の比較例、実施例及び試験例において、
(1)セフトリアキソンナトリウム/セフトリアキソンナトリウム結晶の量は、セフトリアキソンによって算出された。スルバクタムナトリウム/スルバクタムナトリウム結晶の量はスルバクタムによって計算された。例えば、「500gのセフトリアキソンナトリウムを服用/摂取する」という表現は、セフトリアキソンナトリウム中のセフトリアキソンの量が500gであることを意味する。
(2)結晶形態は、BRUKER D8 ADVANCE 粉末X線回折装置を用いて、CuKα線、管電圧40kV、走査範囲5°〜60°、走査速度17.7s/ステップ、ステップ長0.02°の測定条件で粉末X線回折法により測定された。
(3)赤外吸収スペクトル分析において、試料がKBrで錠剤に圧縮された後に測定された。
(4)示差走査熱量測定は、ドイツのNETZSCH社から購入したSTA409一体型熱分析器によって行った。試験条件:加熱速度10K/min、保護ガス流量N2 30 mL/min、パージガス流量N220 mL / min、温度範囲35〜300℃。
(5)結晶化度は、米国薬局方USP35-NF30法を用いて測定された。
(6)不純物含有量は、欧州薬局方EP8.0法に準拠したHPLCを用いて測定された。
(7)溶液の透明度は、中国薬局方2015の方法に従って測定された。
【0046】
比較例1
CN102462684Aの実施例1に記載されている方法に従って、滅菌した暗状態で窒素気流下に、100gのセフトリアキソンナトリウム、50gのスルバクタムナトリウム及び25gのマンニトールが90 mlの前処理され10℃以下に冷却されかつ非金属製容器に入れた70%エタノール溶液に添加され、撹拌しながら完全に溶解させた。注射用凍結乾燥粉末Aと命名された凍結乾燥粉末を得るために、得られた溶液が0.1mol/Lの重炭酸ナトリウム水溶液でpH 6.5に調整され、次いで不活性ガスで充填した凍結乾燥機中で無菌濾過され、複数パッケージに分けられ、予め凍結され(-48〜-20℃)、そして次に減圧、昇華、乾燥が実施された。結晶形態を判定するために、この凍結乾燥粉末の試料が抽出され、選定された。粉末X線回折スペクトルを図1に示している通りである。
【0047】
比較例2
セフトリアキソンナトリウムは、CN102993215Aの実施例1に記載されている以下の方法に従って調製された:「7-ACT及びAE活性エステルを濃縮して、セフトリアキソンナトリウムの粗生成物を得る。5gの粗生成物を取り、40 mlの水に溶解する。13℃で4.1gのナトリウムイソオクトエートを添加しながら、溶液が透明になるまで攪拌する。10%の希塩酸で溶液をpH7.00に調整し、さらに30分間撹拌して母液を得る。濁りが現れるまで、攪拌しながら無水エタノールを徐々に母液に加える。25分間静置し、次いで大量の結晶が形成されるまで溶液に無水エタノールを徐々に添加し、合計150 mlの無水エタノールを使用する。得られた結晶を濾過し、無水エタノール:水=4:1の混合溶媒でケークを中性に洗浄し、再び無水エタノールで洗浄し、そして常圧下35℃で乾燥する。」
【0048】
スルバクタムナトリウムは、CN103113390Aの実施例1に記載されている以下の方法に従って調製された:「粗スルバクタムナトリウムを取り、5倍(ml/g)のN,N-ジメチルホルムアミドと水(3:1)の混合溶媒に添加し、70℃に加熱する。粗スルバクタムナトリウムが完全に溶解するまで撹拌し、温度を保持し、溶液をpH 5.5に調整し、そして溶液を5m/sの速度で0.5Tの直流磁場中に流す。磁場の方向は溶液の流れ方向に対して垂直である。次いで、脱色のために混合溶媒の0.3倍(ml/g)の活性炭を処理された溶液に添加する。30分間撹拌し、濾過して透明な溶液を得る。混合溶媒の5倍(ml/ ml)の量のエタノールを透明な溶液に添加し、濾過してケークを得る。蒸留水でケークを3回洗浄し、次いで減圧下で4時間乾燥させ、スルバクタムナトリウムを得る。」
【0049】
上記の方法に従って調製された1,000gのセフトリアキソンナトリウム及び500gのスルバクタムナトリウムがを取り、そして無菌条件下でトラフミキサーにより均一に混合して混合粉末を得た。得られた混合粉末の試料が抽出され、結晶形態が測定された。粉末X線回折スペクトルを図2に示している通りである。混合粉末を滅菌条件下で複数パッケージに分け、注射用滅菌粉末Aと命名された注射用滅菌粉末を得た。
【0050】
比較例3
商業的に入手可能な2,000gのセフトリアキソンナトリウム及び1,000gのスルバクタムナトリウムを取り、無菌条件下でトラフミキサーによって均一に混合して混合粉末を得た。混合粉末の試料が抽出され、その結晶形態が測定された。得られた粉末X線回折スペクトルは図2のスペクトルと類似していた。混合粉末を滅菌条件下で複数パッケージに分けて注射用滅菌粉末Bと命名された注射用滅菌粉末を得た。
【0051】
実施例1
比較例2の方法に従って製造した1200gのセフトリアキソンナトリウム及び600gのスルバクタムナトリウムを取り、粒径D50が25μm〜47μmになるまでボールミルで一緒に粉砕し、次にシングルコーンリボンミキサー(HF1600型)で、30rpmの回転数で25分間の混合を行い、均一に混合した。この操作の後、得られた材料を取り出して組成物Iと命名された結晶物質を得た。
組成物Iの試料が抽出され、その結晶形態が測定された。粉末X線回折スペクトルは図3に示している通りである。スペクトルの主なデータを表1に示した。
組成物Iの赤外吸収は、赤外吸収スペクトル分析により測定した。スペクトルを図4に示している通りである。赤外線吸収ピークの主なデータを表2に示した。
組成物Iを示差走査熱量測定により分析したところ、269.51℃に発熱ピークが発見された。
【0052】
実施例 2
商業的に入手可能な500gのセフトリアキソンナトリウム及び500gのスルバクタムナトリウムを取り、粒径D50が38μm〜62μmになるまでボールミルで一緒に粉砕し、次にシングルコーンリボンミキサー(HF1600型)で、40rpmの回転数で20分間の混合を行い、均一に混合した。この操作の後、得られた材料を取り出して組成物IIと命名された結晶物質を得た。
【0053】
組成物IIの試料が抽出され、その結晶形態が測定された。粉末X線回折スペクトルは図5に示している通りである。スペクトルの主なデータを表3に示した。
組成物IIの赤外吸収は、赤外吸収スペクトル分析により測定した。スペクトルを図6に示している通りである。赤外線吸収ピークの主なデータを表4に示した。
組成物IIを示差走査熱量測定により分析したところ、269. 67℃に発熱ピークが発見された。
【0054】
実施例 3
商業的に入手可能な930gのセフトリアキソンナトリウムを取り、粉砕した。310 gのスルバクタムナトリウムを取り、粉砕した。次に、粒径D50が58μm〜88μmになるまで、この二つの原材料をボールミルで一緒に粉砕した。得た粉末をシングルコーンリボンミキサー(HF1600型)で、25rpmの回転数で10分間の混合を行い、均一に混合した。この操作の後、得られた材料を取り出して組成物IIIと命名された結晶物質を得た。
【0055】
組成物IIIの試料が抽出され、その結晶形態が測定された。粉末X線回折スペクトルは図7に示している通りである。スペクトルの主なデータを表5に示した。
組成物IIIの赤外吸収は、赤外吸収スペクトル分析により測定した。スペクトルを図8に示している通りである。赤外線吸収ピークの主なデータを表6に示した。
組成物IIIを示差走査熱量測定により分析したところ、269.69℃に発熱ピークが発見された。
【0056】
実施例4-8
すべて商業的に入手可能なものであり、800gのセフトリアキソンナトリウム及び200gのスルバクタムナトリウム、1,150gのセフトリアキソンナトリウム及び230gのスルバクタムナトリウム、2,700gのセフトリアキソンナトリウム及び450gのスルバクタムナトリウム、1,330gのセフトリアキソンナトリウム及び190gのスルバクタムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム2,200g及びスルバクタムナトリウム275gをそれぞれ取り、次いで実施例2の方法に従ってそれぞれ処理して、それぞれ組成物IV〜組成物VIIIを得た。X線回折分析により、これら5つの組成物のスペクトルは実施例1〜3で得られたものと実質的に同じであることが分かった。
【0057】
実施例9
商業的に入手可能な500gのセフトリアキソンナトリウム及び500gのスルバクタムナトリウムを取り、粒径D50が104μm〜175μmになるまでボールミルで一緒に粉砕した。材料を混合するための残りの操作は実施例2と同じであった。このような操作の後、材料を取り出しそして無菌条件下で複数パッケージに分けて、注射用無菌粉末Cを得た。
【0058】
商業的に入手可能な500gのセフトリアキソンナトリウム及び500gのスルバクタムナトリウムを再び取り、粒径D50が10μm以下になるまでボールミルで一緒に粉砕した。材料を混合するための残りの操作は実施例2と同じであった。このような操作の後、材料を取り出しそして無菌条件下で複数パッケージに分けて、注射用無菌粉末Dを得た。
【0059】
実施例10
実施例1〜8の組成物をそれぞれ取り、そして滅菌条件下で複数パッケージに分けて、注射用滅菌粉末I〜VIIIを得た。
実施例1〜8の組成物をそれぞれ取り、そして凍結乾燥製剤調整の慣用方法に従って処理し、注射用凍結乾燥粉末I〜VIIIを得た。
実施例1〜8の組成物をそれぞれ取り、50倍(ml/g)の0.9%塩化ナトリウム水溶液で溶解し、次いで複数パッケージに分けて、注射剤I〜VIIIを得た。
【0060】
試験例1:安定性試験
上記比較例または実施例で得られた組成物I〜VIII、注射用滅菌粉末I、注射用滅菌粉末II、注射用滅菌粉末IV、注射用凍結乾燥粉末I、注射用凍結乾燥粉末II、注射用滅菌粉末A、注射用滅菌粉末B、注射用滅菌粉末C、注射用滅菌粉末D、及び注射用凍結乾燥粉末Aに対して、安定性試験を行った。
試験環境:温度25℃±2℃、相対湿度60%±10%の環境に30ヶ月間放置。
試験結果:溶液の透明度、不純物1、2、3及び4(ここで、不純物1、2及び3はEP8.0に記載されているセフトリアキソンナトリウムの不純物A、B及びEに対応し、不純物4はEP8.0に記載されているスルバクタムナトリウムの不純物Aに対応する)の含有量、結晶化度等を測定する。主な試験結果は表7〜10に示した。
【0061】
安定性試験の結果から、12ヶ月後、本発明による組成物及び製剤は、比較例と比較して、結晶化度、不純物、溶液の透明性などの点で相違を有することが分かった。30ヵ月後、これらの相違がより顕著になった。
【0062】
比較例の製剤は結晶形を有さず、従って結晶化度のデータは得られなかった。しかしながら、本発明による組成物及び製剤は90%までの結晶化度を有し、それは30ヶ月以内に実質的に変化しないままであり、非常に良好な物理的安定性が示されている。
【0063】
24〜30ヶ月目に、比較例の製剤はわずかな濁りを示したが、本発明による組成物及び製剤は濁りを示さなかった。
【0064】
0ヶ月目に、比較例の製剤中の4つの不純物の含有量は、本発明による組成物及び製剤中のものと同等であったが、不純物の量は時間の経過と共に非常に著しく増加した。特に、不純物1(セフトリアキソンの異性体不純物)と不純物4(スルバクタムの開ループ分解不純物)の含有量は、24〜30月目にそれぞれ1%と0.5%を超え、EP 8.0の要件を満たさなかった。対照的に、本発明による組成物及び製剤中の4つの不純物の著しい増加がなく、定義された範囲に属し、非常に良好な化学的安定性を示している。この発見は、特定の不純物の生成と結晶形態との間に密接な関係が存在し得ることを明らかにした。
【0065】
試験例2:生体内抗菌試験
試験例1の0ヶ月目の安定性試験の試料を取り、生体内抗菌試験にかけた。そして30ヶ月目の安定性試験の試料を再度採取し、生体内抗菌試験にかけた。両方の生体内抗菌試験は以下のプロセスに従って実施された。
【0066】
2.1試験材料
試験試料:組成物I〜VIII、注射用滅菌粉末I、注射用滅菌粉末II、注射用滅菌粉末IV、注射用凍結乾燥粉末I、注射用凍結乾燥粉末II、注射用凍結乾燥粉末A、注射用滅菌粉末A、及び注射用滅菌粉末B、全ての材料は実施例1の0ヶ月目と30ヶ月目からの材料である。対照薬:セフトリアキソンナトリウム、レボフロキサシン塩酸塩、アジスロマイシン、ドキシサイクリン塩酸塩、スペクチノマイシン塩酸塩。ここで、0ヶ月目の試験試料と一致するように、安定性試験の0ヶ月目に対照薬のバッチを購入し、そして、30ヶ月目の試験試料と一致するように、安定性試験の30ヶ月目にまた一つバッチの対照薬を購入した。さらに、2つのバッチの購入日は両方ともその製造日から1ヶ月以内であった。
動物:ICRマウスの体重は18〜22gであり、雄の半分及び雌の半分である。
細菌株:ATCC700603(肺炎桿菌)、ATCC43069(淋菌)、Q-R(キノロン耐性淋菌)、T-R(テトラサイクリン耐性淋菌)、PP-R(βラクタム耐性淋菌)、MAC-R(マクロライド耐性淋菌)、SPE-R(スペクチノマイシン耐性淋菌)、とQS-R(セフトリアキソン耐性淋菌)。ここで、ATCC700603とATCC43069はATCCから購入したものであった。QS-Rが参考文献China Tropical Medicine, 2010, 10 (8), 946-948に引用されているプロセスに従って用意したものであった。その他の細菌株は臨床分離によって得たものであった。
保護剤:高活性乾燥酵母。
【0067】
2.2 試験方法
細菌の細胞毒性の増強:18時間培養した後、実験株を5%の高活性乾燥酵母で10-2及び10-3に希釈された。実験マウスの全身感染により引き起こされる敗血症のモデルを得るために、0.5 mlの細菌株をマウスに腹腔内注射してマウスを感染させた。防御手段が提供されていない場合、マウスは感染により死亡した。その後、無菌性開胸術を感染により死亡したマウスに適時に行った。心血または腔内滲出液を採取し、対応する寒天平板培地に均一にコーティングし、そして37℃で18時間培養した。次に、この細菌株は感染した細菌と一致すると同定された。得られた株を用いてマウスを再度感染した。細菌の細胞傷害性を高め、比較的安定にすることができるように、このプロセスを1〜2回繰り返した。
【0068】
最小致死量(MLD)の決定:実験株を5%の高活性乾燥酵母で希釈して、異なる濃度:10-1、10-2、10-3及び10-4を有する希釈細菌溶液を得た。敗血症のモデルを確立するために、希釈された細菌溶液を実験動物にそれぞれ腹腔内注射した(マウスあたり0.5 ml)。感染後、死亡したマウスの数を記録した。マウスを100%死亡させる最小用量は1 MLDであった。動物保護実験における細菌投与量として、1 MLDよりも1 log低い細菌濃度及び全ての感染動物が生存したので、0.1 MLDと命名した。実験では、1 MLDの細菌濃度を感染実験の陽性対照として用いた。感染実験の陰性対照として、0.1 MLDの細菌濃度を用いた。陽性対照群及び陰性対照群の両方において、抗生物質治療を行わずに細菌のみを投与した。陽性群の死亡率は70%以上であり、陰性群の死亡率は30%以下であるべきである。
【0069】
試験試料の用量範囲を決定するための予備試験:1 MLDの細菌を5%の高活性乾燥酵母と一緒に調製し、そしてマウスを感染させるために使用された。感染の直後及び6時間後に、3 つの異なる濃度(高、中及び低濃度)の試験試料を各投与群に4頭ずつ用いて予備試験を実施した。感染後のマウスの生存数を記録した。この結果に基づいて、投与量は動物保護試験のために設計された。投与量の最初の探査では、様々な群間の薬物用量濃度の倍率差がより大きくなり得る。範囲が決定されたとき、適切な薬物用量濃度(すなわち、最高用量濃度の群の感染動物の生存率は70%以上であり、そして最低用量濃度の群の感染動物の死亡率は70%以上である)が決定されるまで、倍率差が減少しながら、さらなる探査を行うのが可能である。
【0070】
動物保護試験:
予備試験では、マウスに試験した細菌を感染させ、マウスの100%が死亡した時、マウスが死亡しなかった時のそれぞれの薬物の用量濃度が判明された。実験前に、マウスを水以外の食物から18時間絶食させ、体重18〜22g、そして半分の雄及び半分の雌を無作為に以下の群に分けた:(1) ATCC700603群、(2) ATCC43069群、(3) Q-R群、(4) T-R群、(5) PP-R群、(6) MAC-R群、(7) SPE-R群、及び(8) QS-R群。各群は、10頭のマウスがある。各群において5つの濃度の試験試料を用い、10頭のマウスをブランク対照として使用された(注射量と等量の滅菌水を投与する)。感染モデルを確立するために、各マウスに0.5 mlの1 MLD細菌溶液を腹腔内注射した。注射の直後及び6時間後に、異なる濃度の試験試料溶液をそれぞれマウスあたり0.2 mlで皮下に注射した。マウスを7日間連続して観察し、そして各群の動物の死亡結果を記録した。死んだマウスを剖検及び肉眼で観察した。50%有効量(ED50)及び95%信頼限界はブリス法により計算した。群間の差の有意性を比較するためにt検定を行った。ED50が低ければ低いほど、細菌に感染された動物に対するより良好な防御試験試料が提供された。
【0071】
2.3 試験結果
動物保護試験の主な結果を表11及び表12に列挙した。表11は安定性試験の0ヶ月目の試料の生体内抗菌性ED50値を示した。表12は、安定性試験の30ヶ月目の試料の生体内抗菌性ED50値を示した。
【0072】
試験結果は、本発明による組成物及び製剤がより良好な抗菌活性を有し、特に種々の薬剤耐性淋菌細菌に対して著しくより高い阻害活性を示すことを示した。場合によっては、活性は、比較例の製剤と比較して3〜4倍増加し得る。
【0073】
さらに、本発明による組成物及び製剤は生物学的活性にかなり安定しており、特に様々な非耐性及び耐性淋菌に対する抑制は常に安定したままである。生物学的活性は30ヶ月後でも実質的に変化しなかった。一方、比較例の製剤は30ヶ月後に活性の有意な減少を示した。
【0074】
本発明を一般的な説明、具体的な実施態様及び試験により詳細に説明してきたが、当業者は本発明に基づいて適切な変更または改良を加えることができる。本発明の主旨から逸脱することなく、これらの修正または改良はすべて本発明の内容に属する。背景技術、発明の概要、及び発明を実施するための形態は、例示目的のためだけであり、本発明の先行技術を特定するための証拠として使用されていない。
図1
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