(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0014】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照して詳細に説明される。様々な図の同様の要素は、一貫性のために同様の参照番号で示され得る。さらに、本明細書に開示される実施形態は、特許請求される主題のより完全な理解を可能にするために提供された特定の詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。さらに、当業者であれば、添付の図面での要素の縮尺が本開示の範囲から逸脱することなく異なり得ることを、容易に認識するであろう。
【0015】
概して、本発明の実施形態は、人工筋肉アクチュエータの構造、製作、及び動作における改良に関する。本明細書に開示される実施形態では、アクチュエータは、熱的に駆動される1本以上の繊維を含む。1つ以上の実施形態では、アクチュエータは、作動が電気的に刺激され得るように導電性材料を含む。本明細書に開示される実施形態は、人工筋肉アクチュエータ用のヒューズ型構造、人工筋肉アクチュエータ用の熱電対、人工筋肉アクチュエータ用の電気接点及び機械的接点、ならびに人工筋肉アクチュエータ用のコーティングを対象とする。本明細書に開示される実施形態が、他の実施形態と組み合わせて使用され得るか、または上記の参照によって組み込まれたものなどの、他の既存のアクチュエータ技術に組み込まれ得ることを、当業者なら認識するであろう。
【0016】
用語「または(or)」は、他に明示的に述べられていない限り、「包含的なまたは(inclusive or)」であると理解される。「包含的なまたは(inclusive or)」の定義の下で、表現「AまたはB」は、「A単独、B単独、またはA及びBの両方」を意味すると理解される。同様に、「A、B、またはC」は、「A単独、B単独、C単独、A及びBの両方、A及びCの両方、B及びCの両方、またはA及びB及びC」を意味すると理解される。
【0017】
本明細書に開示される実施形態によれば、カーボンナノチューブ層は、互いの上に積み重ねられた複数のカーボンナノチューブ(CNT)シートから成る。1つ以上の実施形態では、複数のCNTシートは、それ自体の上に複数回巻き付けられた単一のシートを含んでよい。係るCNTシートは、本明細書に開示される実施形態によれば、等方性と見なされてよい。1つ以上の実施形態では、これらのCNTシートは、互いの上に積み重ねられると、本質的に分離不可能になり、巻き付けを解くことができない。場合によっては、CNT層は、50枚のCNTシート、100枚のCNTシート、またはそれ以上を含む場合がある。
【0018】
人工筋肉装置は、シート状の筋肉装置、ハイブリッドナノファイバー人工筋肉、ハイブリッド筋肉装置、ハイブリッドアクチュエータ、人工筋肉アクチュエータ等と呼ぶ場合もある。
【0019】
ハイブリッドという用語は、CNTシートにゲスト作動材料を浸透させて、1つ以上のCNT層を形成すること、さらに、CNT層が他の材料を含む場合もあることを示すために使用される。例えば、材料は、エラストマ(例えば、シリコーン系ゴム、ポリウレタン、スチレン-ブタジエンコポリマ、天然ゴム等)、フッ素化プラスチック(例えば、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)等)、アラミド(例えば、ケブラー、ノメックス等)、エポキシ、ポリイミド、パラフィンワックス等を含んでよい。
【0020】
本明細書に開示される実施形態では、糸は結合された繊維の1本の長い連続した長さである。CNT糸では、繊維はCNTであり、コア繊維はCNT層が周りに巻き付けられている繊維である。
【0021】
本発明の実施形態は、電気的に、光学的に、熱的に、化学的に、吸収により、または他の手段によって駆動されたとき、ねじり作動及び/または引張り作動を生じさせる、撚紡績ナノ繊維糸及び撚りポリマー繊維を含む、アクチュエータ材料、つまり人工筋肉を含む。本発明の実施形態は、コイル状の糸またはポリマー繊維を利用するアクチュエータを含み、ニートである場合もあれば、ゲストを含む場合もある。
【0022】
人工筋肉アクチュエータは、まっすぐなモノフィラメント、ブレードモノフィラメント、及びコイル状モノフィラメントの形であってよい。
【0023】
人工筋肉アクチュエータは、人工筋肉アクチュエータのアレイ内にあってよい。
【0024】
使用される人工筋肉は、直線運動または回転運動を生じさせるように設計されてよい。人工筋肉は撚り合わせられる場合があり、人工筋肉はコイル状である場合がある。
【0025】
本発明の実施形態は、電気的に、光学的に、熱的に、化学的に、吸収により、または他の手段によって駆動されたとき、ねじり作動及び/または引張り作動を生じさせる、撚紡績ナノ繊維糸及び撚りポリマー繊維を含む、アクチュエータ材料、つまり人工筋肉を含んでよい。ねじり作動を生じさせる人工筋肉は、回転人工筋肉として知られる場合がある。引張り作動を生じさせる人工筋肉は、直線人工筋肉として知られる場合がある。1つ以上の実施形態は、アクチュエータは、コイル状の糸またはポリマー繊維を利用してよく、ニートである場合もあれば、ゲストと呼ぶ場合があるゲスト材料を含む場合もある。1つ以上の実施形態では、ゲスト材料は、ゲスト作動材料であってよい。
【0026】
1つ以上の実施形態では、ヒューズ型構成要素が人工筋肉アクチュエータに組み込まれてよい。言い換えると、突発故障を回避するために人工筋肉アクチュエータの中に手段が組み込まれてよい。1つ以上の実施形態では、
図1に示すように、人工筋肉アクチュエータと呼ぶこともある、人工筋肉繊維106を含む人工筋肉繊維装置100は、導電性材料108を含んでよく、導電性材料108の一部分は、ヒューズ材料110で置換されてよい。ヒューズ材料110は、特定の温度で、または人工筋肉繊維106のガラス転移点に達する前に融解し、電流の流れを停止するように設計されてよい。係る実施形態では、人工筋肉繊維106はその形状を維持するが、それ以外の場合、機能しない場合がある。すなわち、人工筋肉繊維106は、破滅的にではなく制御された方法で故障してよい。人工筋肉繊維106は、次いで交換されてよい。交換により、人工筋肉を組み込んだ装置は再び使用可能になってよい。
図1に示すように、導電性材料は金属線であってよい。しかしながら、他の導電性材料も使用されてよく、導電性材料の形状及び人工筋肉繊維に対する配置も異なってよい。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、ヒューズ110は、一般的なはんだ合金、または人工筋肉繊維106の溶融温度以下の溶融温度を有するヒューズに適した任意の材料から成る場合がある。ヒューズで使用してよい一般的なはんだ合金は、スズと鉛の合金、及びスズ、銅、銀、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、ニッケル等のうちの1つ以上を含む無鉛合金を含む。例えば、ヒューズ材料は、特定の温度で非常に迅速に融解する、及び/または印加された電流で迅速に加熱する場合がある。ヒューズ材料は、人工筋肉作動繊維に使用される材料の耐熱性のために選択されてよい。例えば、より高いガラス転移点を有する人工筋肉材料は、より高い融点を有するヒューズで使用されてよい。より低いガラス転移点を有する人工筋肉材料は、より低い融点を有するヒューズを有してよい。
【0028】
ヒューズ材料は、本明細書に開示される実施形態によれば、色々な方法で人工筋肉に加えられてよい。例えば、人工筋肉繊維106に巻き付く導電性材料108の部分は、導電性ヒューズ材料110で置換されてよい。本明細書に開示される実施形態によれば、導電性材料108は、滴剤、完全なコーティング、またはワイヤとして組み込まれてよい。また、ヒューズ材料は、人工筋肉繊維106の製造に組み込まれてもよい。例えば、導線108は、導電性材料として使用され、1本の人工筋肉繊維を除き、人工筋肉繊維(複数可)に巻き付けられてよい。ヒューズ材料は、次いでこの1本の人工筋肉繊維に置かれてよい。本明細書に開示する実施形態によれば、複数のヒューズを人工筋肉作動装置に組み込んでよいことを、当業者なら認識するであろう。
【0029】
1つ以上の実施形態では、ヒューズ110は、再硬化し得る材料から成る場合がある。係る実施形態では、材料は硬いときは電気的に導電性であってよく、これにより人工筋肉繊維は、ヒューズがとんだ後使用不可にされない。一実施形態では、ヒューズ材料をトラップするための手段が、ヒューズ材料が融解するとき、それが同じ位置を保持し、流れ去らないように使用されてよい。ヒューズ材料は、融解していないとき、導電してよい。例えば、ヒューズ材料を封入する、より高い融点を有する非導電材料を有するはんだから成るヒューズは、本明細書に開示される実施形態に従って使用されてよい。係る実施形態では、ヒューズは融解し、導電性を失う場合があるが、温度降下時に依然としてその位置を保持する場合があり、ヒューズは再硬化し、再び導電性になる場合がある。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、融解せず、破壊されないヒューズ材料の種類が使用されてよい。係る材料/装置は、特定の温度を超えると、電流が流れるのを実質的に妨げるように設計されてよいが、温度が閾値温度を下回ると、その導電性を取り戻してよい。
【0031】
図2に見られるように、1つ以上の実施形態では、人工筋肉アクチュエータ200は、人工筋肉アクチュエータがヒューズ210をとばしたかどうかを自動検知(self−sense)する一連の電子機器(不図示)を含んでよい。電子機器は、センサ220を含んでよい。電子機器は、次いでヒューズ210がとんだ人工筋肉アクチュエータ200に対してユーザーに警報を出してよい。ユーザーは、次いで所望されるように、人工筋肉アクチュエータまたは1本以上の人工筋肉繊維を交換してよい。1つ以上の実施形態では、電子機器は、人工筋肉アクチュエータ200の温度を監視してよい。電子機器は、人工筋肉繊維206に巻き付けられた導線208を通って流れる電流を監視してよい。
【0032】
撚りポリマー及び/またはコイル状のポリマーを含む人工筋肉は、低コスト、高生産量、及び設計の単純性という利点を有する。これまでは、人工筋肉は、電子システムが、突発故障を防ぐために人工筋肉繊維の温度を管理することを必要としていた。電子システムが故障する、または望ましくない場合、予想外の過熱に起因する筋肉繊維の故障を適切に防ぐ方法はなかった。例えば高い周囲温度等の予期せぬ環境条件のために過剰な熱を被る場合もあれば、過剰な熱が、人工筋肉に過剰な電流を流させる電子機器の故障に起因する場合もある。係る突発故障が発生しないことを必要とする用途の場合、突発故障を回避するために人工筋肉繊維自体の中に手段が作成される場合がある。
【0033】
1つ以上の実施形態では、人工筋肉材料は、ポリマー異方性繊維、CNT糸、または任意の他の適切な材料を含んでよい。1つ以上の実施形態では、人工筋肉アクチュエータは、導電性を提供するためにナイロンに巻かれた小さい金属線を用いてコイル形状に撚り合わせられたナイロン繊維を含んでよい。有利なことに、ナイロンは比較的豊富かつ安価である。他の材料は、他の特質の中でも、そのより大きな作動速度、より高い温度に耐える能力、より大きい耐久性及び精度のために所望される場合がある。これらの材料は、ポリマーまたは他の材料を含んでよい。
【0034】
小さい金属線は、銅、ステンレス鋼、タングステン等を含んでよい。1つ以上の実施形態では、人工筋肉アクチュエータは、人工筋肉材料全体で電圧を印加することによって供給される熱を加えて作動する。他の加熱技術は、誘導加熱を含んでよい。誘導加熱の場合、ヒューズ材料が特定の温度で融解し、電気を伝導するのを完全に止めるように、導電材料を完全にヒューズ材料から作ることが必要となるであろう。
【0035】
1つ以上の実施形態では、ヒューズは、復元可能なヒューズ材料から成ってよい。すなわち、ヒューズは、ヒューズ作動後に人工筋肉繊維が使用不可にならないように再硬化し、導電性となることができる材料を含んでよい。
【0036】
1つ以上の実施形態では、
図3に示すように、人工筋肉繊維アクチュエータ300は、作動中を含め、アクチュエータ300または人工筋肉繊維306の温度を監視するために熱電対325を含んでよい。1つ以上の実施形態では、導電材料308は、電流が人工筋肉アクチュエータ300を通されるときに人工筋肉アクチュエータ300の作動を開始し、熱を生じさせる。1つ以上の実施形態では、導電材料308は、1本以上の人工筋肉繊維306に巻き付けられた小さい金属線であってよい。熱電対325は、人工筋肉アクチュエータ300が、本明細書に開示する1つ以上の実施形態によれば損傷を引き起こす場合がある温度に到達するのを妨げてよい。人工筋肉アクチュエータ300の実施形態は、機械的アキュムレータまたはカタパルト型のアクチュエータ装置を含んでよい。機械的アキュムレータアクチュエータでは、人工筋肉は作動してよいが、係止機構によって回転してまたは並進してのどちらかで移動するのを妨げられてよい。
【0037】
1つ以上の実施形態では、熱電対は、作動を開始する手段の中に組み込まれてよい。例えば、アクチュエータが電気的に駆動される場合、熱電対は、全体的な電気システムの中に組み込まれてよい。これらの実施形態では、熱電対は、例えばフィードバック機構または特定の温度をベースにした用途において等、アクチュエータの動作に統合されてよい。
【0038】
1つ以上の実施形態では、熱電対は、温度を測定するために人工筋肉繊維の束の中に挿入されてよい。有利なことに、熱電対は、筋肉が、上述したように損傷を引き起こす場合がある温度に到達するのを妨げるために電子システムと組み込まれてよい。
【0039】
本発明の1つ以上の実施形態は、機械的接点及び電気接点の人工筋肉繊維アクチュエータの中への組み込みを対象とする。
【0040】
1つ以上の実施形態では、アクチュエータは、作動が電気的に刺激され得るように導電性材料を含んでよい。この導電性材料は、人工筋肉繊維の束の中に組み込まれてよく、個々の繊維またはその組み合わせを被覆する。
【0041】
人工筋肉は、そのサイズ及び質量に比して大きな力を及ぼす。1つ以上の実施形態は、人工筋肉を機械的接点に固定するため、及び耐久性のある電気接点を提供するための手段を含んでよい。
【0042】
1つ以上の実施形態では、束の中に筋肉繊維をともに機械的に保持し、同時に電気接点を提供するためにクランプが使用されてよい。いくつかの実施形態では、機械的接点は、筋肉繊維を保持する装置に物理的に取り付けられるために設けられてよい。1つ以上の実施形態では、金皮膜が、金皮膜の追加により強化された電気接点及び機械的接点を提供するために施されてよい。
【0043】
人工筋肉アクチュエータとも呼ぶ人工筋肉は、そのサイズ及び質量のために大きな力を及ぼしてよい。人工筋肉を機械的接点に固定し、人工筋肉に耐久性のある電気接点を提供するための手段を考案することが必要である。
【0044】
人工筋肉を機械的接点に固定し、人工筋肉に電気的接点を提供する現在既存の手段は、電気接点及び/または機械的接点の経時的な劣化及び喪失に悩まされている。機械的な劣化及び故障の共通の実施例は、経時的に及び繰り返し応力によりネジがそれ自体緩むことであろう。さらに、人工筋肉は、人工筋肉繊維によりかけられる高い応力のため、人工筋肉を保持するために使用されるフレームが経時的に歪むにつれ緩みを生じる場合がある。
【0045】
人工筋肉との電気接点も、経時的に劣化する及び/または故障する場合がある。実施例として、はんだは、繰り返し応力及び歪みを受けると容易に壊れ、電気接点で故障を引き起こす。
【0046】
さらに、金属線は、繰り返される曲げ応力に確実に耐えることができない。業界での一般的な解決策は、金属線の長さを伸ばし、それによって各点が曲がらなければならない角度を削減することである。しかしながら、この手法は、人工筋肉のモータに優る主要な優位点のうちの1つはその小さい繊維状の大きさであるため、人工筋肉にとっては受け入れがたい。長い金属線は、それらの寸法を増やすであろう。
【0047】
1つ以上の実施形態では、CNT糸は、繰り返し応力から多大な損傷を受けない場合がある。このように、CNT糸は、筋肉繊維に電流を供給し、(機械的接点から圧力が提供される場合)おそらく電気接点を供給する際に金属線に代わるために所望されてよい。1つ以上の実施形態では、導電材料は、筋肉上に被覆される場合もあれば、完全にCNT糸から成る筋肉束に挿入される場合もある。
【0048】
1つ以上の実施形態では、金の皮膜が、機械的接点に施されてよい。金皮膜は、電気接点、及び機械的接点の導電性を改善し得る。
【0049】
1つ以上の実施形態では、束の中に筋肉繊維をともに保持し、同時に電気接点を提供するために1つ以上のクランプが使用されてよい。また、クランプが、筋肉繊維を保持する装置に物理的に取り付けられる場合、機械的接点も設けられてよい。
【0050】
ネジは、人工筋肉繊維を定位置に保持するために、当初、適切な機械的圧縮を提供してよい。しかしながら、経時的に及び人工筋肉からの繰り返される作動により、ネジは緩む。
【0051】
安全な機械的接点及び電気接点を提供するための業界の一般的な方法は、バネ及びベースプレートの組み合わせである。バネは、筋肉繊維のセグメントをベースプレートに対して圧縮するために使用されてよい。また、ベースプレートは、電気接点として機能してもよい。この組み合わせはネジのオプションよりもより耐久性がある場合があるが、この組み合わせは、かさ及び複雑さの増加に悩まされる。
【0052】
1つ以上の実施形態では、別の人工筋肉が、バネ及びベースプレートの手法のバネを置き換える場合がある。第1の人工筋肉を固定する機械的接点が緩む場合、圧力を高め、第1の筋肉を固定するために第2の筋肉が作動されてよい。
【0053】
図4に示すように、1つ以上の実施形態では、機械的接点及び電気接点を人工筋肉406に固定するための方法は、人工筋肉406の端部の周りに小さい金属チューブ430を取り付け、チューブ430を曲げて人工筋肉406を平らにし、圧縮し、筋肉をしっかりと固定することを含んでよい。有利なことに、方法は簡略かつ効果的である。1つ以上の実施形態では、金属チューブ430は、筋肉406の上に確実に取り付け得るが、他の何にも取り付け得ない。金属チューブは、人工筋肉を固定するためにクランプ440または上述した他の方法のいずれかによって基板(不図示)に固定されてよい。また、人工筋肉の向きは、クランプを緩め、人工筋肉の相対向きを調整することによって調整できる。
【0054】
保護層を欠いている人工ポリマー筋肉は、環境に曝露される。例えば、特に有用な人工筋肉材料であるナイロンは、水が存在する場合分解されやすい場合がある。経時的に、ナイロンの人工筋肉繊維は、係る環境では故障する場合がある。また、ナイロンは、電磁放射線への曝露に敏感である場合がある。人工筋肉繊維を保護するためには、繊維表面にコーティングを施すことが有利である場合がある。
【0055】
一般的に、1つ以上の実施形態は、人工筋肉を保護し、場合によっては、人工筋肉の特性を強化するための人工筋肉におけるめっきに関する。本明細書に開示される実施形態では、アクチュエータは、熱的に駆動される1本以上の繊維を含んでよい。1つ以上の実施形態では、アクチュエータは、作動が電気的に刺激され得るように導電性材料を含んでよい。言い換えると、印加される電圧または電流は、作動に必要な温度変化を提供してよい。コーティング層の実施形態は、人工筋肉繊維を保護してよく、作り出された人工筋肉またはアクチュエータの特性を改良してよい。
【0056】
例えば、1つ以上の実施形態では、人工筋肉またはアクチュエータが容易に放射線を吸収するように、黒く着色されたコーティングを施すことができる。係る放射線は、アクチュエータの機能で使用されてよい。1つ以上の実施形態では、生物材料と密接に相互作用するために適切であるコーティングが選択されてよい。
【0057】
別の実施例として、1つ以上の実施形態では、コーティングは反射してよい。反射筋肉は、周囲環境の温度を超えて加熱しすぎることなく日光への曝露を維持できる場合がある。
【0058】
1つ以上の実施形態では、コーティングは熱伝導してよい。係る実施形態では、コーティングは、人工筋肉繊維から熱をより容易に除去できるようにしてよく、これがストローク効率を改善し、繊維内の欠陥があるあらゆる点が熱で過負荷をかけられるのを防ぐ可能性がある。係る「過熱点」は、人工筋肉繊維の長さに沿って不完全部を有する人工筋肉またはアクチュエータ内の導体材料により引き起こされる場合がある。係る過熱点が対処されない場合、その部分に沿ったポリマー繊維が過熱し、融解し、筋肉の故障を生じさせる危険がある。
【0059】
1つ以上の実施形態では、コーティング材は、人工筋肉繊維に新しい特性を与えるように設計されてよい。1つ以上の実施形態では、コーティング材は、人工筋肉を環境条件から保護するように設計されてよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、導体材料を保護する及び/またはポリマー繊維を保護するために役立つ場合がある。
【0060】
1つ以上の実施形態では、コーティングは多機能であってよい。例えば、コーティングは、熱的特性を強化し、粘着力を提供するまたは摩擦を削減し、周囲環境から保護するまたは周囲環境の中に組み込むように設計されてよい。本発明の実施形態は、人工筋肉アクチュエータの特定の用途に応じて、上記特性の任意の組み合わせのために設計されてよい多機能コーティングを含んでよい。
【0061】
1つ以上の実施形態では、コーティングは生物材料と密接に相互作用するために選択されてよく、人工筋肉を人体内での装置への組み込みに役立つようにする。これらの実施形態では、生物材料に対する熱傷の損傷を防ぐために適切な熱散逸を保証するために注意を払う必要がある。
【0062】
いくつかの実施形態では、コーティングは、導体材料を保護する及び/またはポリマー繊維を保護するために電気絶縁を提供してよい。係る実施形態は、人工筋肉(またはアクチュエータ)を形成する人工筋肉繊維の束を含む人工筋肉で役立ってよい。
【0063】
1つ以上の実施形態では、コーティングは、表面摩擦を削減するように設計されてよい。係る実施形態は、人工筋肉(またはアクチュエータ)を形成する繊維の束を含む人工筋肉で役立ってもよい。例えば、コーティング材としてのパリレンの低い表面張力は、束の中の筋肉繊維間の滑りを増してよい。係る実施形態はより小さい繊維のより緊密な束を作成する上で役立ってよい。
【0064】
1つ以上の実施形態では、コーティングは、環境からの保護のために設計されてよい。例えば、湿気防止、紫外線放射保護、酸化保護、生理食塩水保護、及び/または高温保護。1本以上の金属線を含む人工筋肉またはアクチュエータの実施形態は、特に塩分保護から恩恵を受ける場合がある。また、高温保護を含む実施形態は、導電性材料の高温から外部環境を保護する、及び/または外部温度の突然の変化から筋肉繊維を保護してもよい。本発明の実施形態は、熱放射の放出を増加させるために筋肉の色を黒に調整してよく、これが筋肉の効率を高め得る。
【0065】
本発明の1つ以上の実施形態では、被覆された人工筋肉繊維の構造は、人工筋肉を構成する各筋肉繊維を被覆する保護層があるという点で現実の筋肉繊維の構造に類似してよい。1つ以上の実施形態では、保護コーティングは、人工筋肉またはアクチュエータ全体を被覆する層であってもよい。1つ以上の実施形態では、コーティングは、外部環境が人工筋肉繊維に直接的に接触できるようにしてよい、穴または欠陥がない一様であってよい。
【0066】
図5に示すように、人工筋肉またはアクチュエータ500は、導体材料として組み込まれた金属線508を含んでよい。係る実施形態では、保護コーティング570が金属線508を完全に覆うことが有利である場合がある。また、金属線が、人工筋肉またはアクチュエータ500を構成する人工筋肉繊維506の表面から分離しないことが必要な場合もある。被覆プロセスの間、人工筋肉繊維506の表面から金属線508を分離しないように注意を払う必要がある。係る分離は、人工筋肉繊維506の性能にマイナスの影響を及ぼす場合がある。
【0067】
本発明の1つ以上の実施形態では、選択的なポリウレタンコーティングは、人工筋肉またはアクチュエータに含まれる金属線上で使用されてよい。例えば、人工筋肉繊維の中に組み込まれる導電性の金属線は、筋肉繊維及びワイヤを被覆するために有用なポリマーで前処理を施されてよい。次いで、金属線のポリマーコーティングはさらに融解されて、人工筋肉繊維を被覆するまたは部分的に被覆してよい。係る実施形態では、コーティングは、おもに金属線に近い領域に付着され、ポリマー金属繊維のいくつかの領域を曝露されたままにしてよい。この選択的なコーティングは、筋肉繊維のいくつかを意図的に曝露させながら、ワイヤを保護する際に役立つ場合がある。1つ以上の実施形態では、選択的なコーティングは、導線により近い領域により大きい保護を提供するために、別のコーティング層と組み合わせて使用されてよい。
【0068】
本明細書に開示する1つ以上の実施形態によれば、例えばパリレン、ポリウレタン、ポリビニル系ポリマー、及びフッ素化ポリマー等の様々なポリマーがコーティングに使用されてよい。1つ以上の実施形態では、コーティングは金属であってよい。例えば、金、銀、チタン、銅、ニッケル、及びその混合物を使用してよい。1つ以上の実施形態では、上記金属の合金または例えばクロムを使用してよい。1つ以上の実施形態では、人工筋肉に組み込まれた金属線は、ポリウレタンで被覆してよい。1つ以上の実施形態では、ワイヤは、人工筋肉繊維に巻き付けられ、ポリウレタンを筋肉繊維表面に融解するために加熱されてよい。係る実施形態では、人工筋肉またはアクチュエータを完全に被覆するためにより多くのポリウレタンを加えてよい。1つ以上の実施形態では、例えばポリマー中のナノ構造粘土またはポリマー中に分散されるグラフェン等のナノコンポジットをコーティング材として使用してよい。係る実施形態は、熱を伝導し、適切な放熱を保証するために有利である場合がある。
【0069】
一般的に、コーティングを付着するためのプロセスは、スパッタリング、電気メッキ、化学蒸着(CVD)、溶液をベースにした析出、及び当技術分野で既知の膜またはコーティングを作り出すための他の技術を含んでよい。コーティングが撚り合わせプロセス及び/またはコイル巻きプロセスで損傷を受ける場合があるため、人工筋肉繊維が撚り合わせられた及び/またはコイル状にされた後に人工筋肉繊維を被覆することが必要な場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態は、撚り合わせプロセス/コイル巻きプロセスの前に被覆される場合がある。例えば、銀被覆されたナイロンは、撚り合わせプロセス/コイル巻きプロセスの前に組み込まれるコーティングを提供するために人工筋肉製作で使用されてよい。
【0070】
1つ以上の実施形態では、ポリウレタンで被覆された金属線は、人工筋肉またはアクチュエータで導体として使用されてよい。ワイヤ上のポリウレタンは、ポリウレタンが人工筋肉繊維の少なくとも一部分を覆うようにさらに融解されてよい。続いて、1つ以上の実施形態によれば、同じまたは異なる材料の別のコーティングが、人工筋肉繊維の表面に施されてよい。
【0071】
本開示を、限定された数の実施形態に関して記載したが、本開示の利益を得る当業者であれば、本明細書の範囲から逸脱することなく様々な他の実施形態を考案し得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。