(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891284
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】特定のホルダーの取扱を伴う生物学的分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
G01N35/02 G
G01N35/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-538490(P2019-538490)
(86)(22)【出願日】2018年1月17日
(65)【公表番号】特表2020-515819(P2020-515819A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】FR2018050112
(87)【国際公開番号】WO2018134519
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】1750431
(32)【優先日】2017年1月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515257759
【氏名又は名称】ホリバ・エービーエックス・エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】ボードュセル、フロロン
(72)【発明者】
【氏名】ベネゼス、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クレ、ティボー
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/148167(WO,A1)
【文献】
特開平09−243646(JP,A)
【文献】
特表2008−534924(JP,A)
【文献】
特開2009−150859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的分析システムであって、
当該生物学的分析システムは:
少なくとも2つの生物学的分析デバイス(4,6,8)を有し、各生物学的分析デバイスは、
各生物学的分析デバイスの一方の側に、各生物学的分析デバイスに識別子を有するチューブ保持ラック(20)を入れるための入口(14,16,18)を有し、該入口は、当該生物学的分析システムの入口でもあり、かつ、
各生物学的分析デバイスの前記の一方の側に、各生物学的分析デバイスからチューブ保持ラック(20)を取り出すための出口(24,26,28)を有し、該出口は、当該生物学的分析システムの出口でもあり;
当該生物学的分析システムは:
コンベア(10)を有し、該コンベアは各生物学的分析デバイスのもう一方の側にあり、かつ、前記コンベアは閉じた回路を定めて、該閉じた回路に沿って前記チューブ保持ラック(20)を搬送するようになっており;かつ、
コントローラー(12)を有し、該コントローラーは、前記識別子を用いて前記チューブ保持ラック(20)の流れを管理し;
各生物学的分析デバイスはさらに、
前記入口(14,16,18)に、前記識別子を読み取るための入口読取機を有し、該入口読取機は前記コントローラーへと前記識別子を送り、かつ、前記コントローラーは、メモリーに前記識別子を格納して、前記チューブ保持ラックの前記流れを管理し、かつ、
各生物学的分析デバイスの前記のもう一方の側に、交換領域を有し、該交換領域において、前記チューブ保持ラック(20)が前記コンベアから前記生物学的分析デバイスへと入れられるか、または、前記チューブ保持ラック(20)が前記生物学的分析デバイスから前記コンベアの上へと取り出され、かつ、
前記コンベア(10)はさらに、前記コンベア(10)上で前記チューブ保持ラック(20)の前記識別子を読み取るためのコンベア側読取機を有し、各コンベア側読取機は、各生物学的分析デバイスの前記交換領域にあり、
前記コンベア側読取機は、前記コントローラー(12)へと前記識別子を送るように構成されており、かつ、
前記コントローラー(12)は、
チューブ保持ラック(I)が前記コンベア上に導入され、かつ、
該チューブ保持ラック(I)の識別子(i)が、前記コンベア側読取機によって読み取られかつ前記コントローラー(12)へと送られ、かつ、
該コントローラー(12)によって受け取られた該識別子(i)が、該コントローラー(12)の前記メモリーに存在しない場合に、
該チューブ保持ラック(I)に対して特定の取扱を適用するように構成されている、
前記生物学的分析システム。
【請求項2】
前記コントローラー(12)が、適用されるべき特定の取扱に依存して、当該生物学的分析システムの前記入口によって受け入れられる前記チューブ保持ラック(20)と比べて、異なるレベルの優先順位で前記の特定の取扱を適用するように構成されている、請求項1に記載の生物学的分析システム。
【請求項3】
前記コントローラー(12)が、特定の取扱を受けるべき前記チューブ保持ラック(I)を優先事項として取り扱うように構成されており、かつ、そのチューブ保持ラックの識別子は、前記チューブ保持ラックが試験を受けるべきチューブ(22)を含有していることを示している、請求項1または2に記載の生物学的分析システム。
【請求項4】
前記コントローラー(12)が、特定の取扱を受けるべき前記チューブ保持ラック(I)を取り扱うように構成されており、かつ、そのチューブ保持ラックの識別子は、前記チューブ保持ラックが、対照が保存される方式および/または前記生物学的分析デバイス(4,6,8)のチェックのスケジュールに依存するレベルの優先順位で対照チューブを含有することを示している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生物学的分析システム。
【請求項5】
前記コントローラー(12)が、特定の取扱を受けるべき前記チューブ保持ラック(I)を取り扱うように構成されており、かつ、そのチューブ保持ラックの識別子は、前記チューブ保持ラックが、試薬が保存される方式および/または前記生物学的分析デバイス(4,6,8)のうちの1つ以上に未だに存在する試薬の量に依存するレベルの優先順位で試薬のチューブ(22)を含有することを示している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の生物学的分析システム。
【請求項6】
前記入口読取機および前記コンベア側読取機が、光学式読取機または無線読取機である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の生物学的分析システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の生物学的分析システムを用いた生物学的分析方法であって、当該生物学的分析方法は、チューブ保持ラック(I)を前記生物学的分析システムの前記コンベアの上へと導入するステップを有し、
前記コンベア側読取機によって読み取られた前記チューブ保持ラック(I)の識別子(i)が、前記コントローラー(12)の前記メモリー上に存在しない場合に、該コントローラー(12)によって該チューブ保持ラック(I)に対して特定の取扱が適用される、
前記生物学的分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的分析およびその自動化の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的分析実験室では、試料の流れの最適な管理が重要な要因となってきている。これは、実験室が大きければ大きいほど、分析されている生体サンプルの流れの管理を最適化するのがいっそう複雑となり、かつ、いっそう必要とされるからである。考慮すべき特に重要な2つの基準が存在する:試料取扱時間と、各行為が実験室スタッフに課す仕事量である。
【0003】
これら基準にしたがい性能を改善するために、試料のチューブを保持するラックを輸送するための手段を介して互いに連通した多数の生物学的分析デバイスを配置することに基づく生物学的分析システムが開発されてきた。輸送手段を介していくつかのデバイスを組み合わせることは、故障および問題の多い状況のいっそう良好な管理を可能にし、かつ、特定の転換流れ管理計画が実施されることを可能にする。
【0004】
これらシステムは、概して、ラック用入口、入口におけるラックをそれに接続されたデバイスのうちの1つに分配する輸送手段および分析されたラック用の出口を有する。特定のシステムは、入口および/または出口にバッファーゾーンを有していてもよく、かつ、流れ管理アルゴリズムを採用してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらシステムは、それらの流れ管理およびそれらを特徴付けるバルクの両方に関して改善され得る。具体的には、特定のものとして言及されるラック(すなわち、従来の試験チューブとは異なるレベルの優先順位で取り扱われ/処理される必要があるもの)を取り扱う/処理する効果的な手段は未だに存在しない。ソリューションは存在し、かつ、優先ラック用の特定の入口を作成することにあり、かつ、このことは、バルクに関して問題を呈する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、状況を改善することを求める。その目的のために、それは生物学的分析システムを提案し、当該生物学的分析システムは、少なくとも1つの入口および1つの出口、閉じた回路を定めるコンベアによって互いに接続された少なくとも2つの生物学的分析デバイスを有し、各生物学的分析デバイスは、コンベアを用いてチューブ保持ラックを交換するための領域を有し、当該生物学的分析システムのコンベアおよび少なくとも1つの入口は、少なくとも1つのチューブ保持ラックの識別子の読取機を有し、該読取機は、それが読み取った識別子を当該生物学的分析システムのコントローラーへと伝えるように設計され、該コントローラーは、コンベアの読取機によって識別されたチューブ保持ラックに特定の取扱を適用するように設計され、その識別子は、当該生物学的分析システムの入口読取機によって先行して読み取られていなかったものである。
【0007】
この生物学的分析システムは、コンパクトさに関して利益が得られることを可能にするので特に有利であり、当該システムの入口および出口は、それを構成するデバイスの入口および出口によって具現化される。さらに、当該システムのためにいくつかの入口およびいくつかの出口を有することは、実験室スタッフの仕事量が最適化されることを可能にする流れ管理計画を実行することを可能にする。
【0008】
種々の代替的な形態によれば、本発明によるアクセサリーは、次の特徴のうちの1つ以上を示してもよい:
− コンベアは、チューブ保持ラック交換領域の数だけ読取機を有し、
− コントローラーは、特定の取扱を受けるべきチューブ保持ラックの識別子に依存する特定の取扱を適用するように設計され、
− コントローラーは、適用されるべき特定の取扱に依存する当該生物学的分析システムの入口によって受け入れられるチューブ保持ラックと比べて、異なるレベルの優先順位で特定の取扱を適用するように設計され、
− コントローラーは、特定の取扱を受けるべきチューブ保持ラックを優先事項として取り扱うように設計され、かつ、そのラック識別子は、それが試験を受けるべきチューブを含有していることを示しており、
− コントローラーは、特定の取扱を受けるべきチューブ保持ラックを取り扱うように設計され、かつ、その識別子は、それが、対照が保存される方式および/または生物学的分析デバイスのチェックのスケジュールに依存するレベルの優先順位で対照チューブを含有することを示しており、
− コントローラーは、特定の取扱を受けるべきチューブ保持ラックを取り扱うように設計され、かつ、その識別子は、それが、試薬が保存される方式および/または生物学的分析デバイスのうちの1つ以上に未だに存在する試薬の量に依存するレベルの優先順位で試薬のチューブを含有することを示しており、
− 読取機は、光学式読取機または無線読取機であり、かつ、
− 各生物学的分析デバイスは、チューブ保持ラック用の少なくとも1つの入口および1つの出口を有し、少なくとも2つの生物学的分析デバイスの入口はそれぞれ、当該生物学的分析システムへのチューブ保持ラック用の入口を形成し、かつ、それぞれ、各々の読取機を有し、かつ、少なくとも2つの生物学的分析デバイスの出口はそれぞれ、当該生物学的分析システムからのチューブ保持ラック用の出口を形成し、かつ、各生物学的分析デバイスの交換領域は、この生物学的分析デバイスの入口および出口とは別個のものである。
【0009】
本発明はまた、生物学的分析方法に関し、当該生物学的分析方法は、少なくとも1つのチューブ保持ラックを先行する請求項の一項に記載の生物学的分析システムの中へと導入すること、このラックがコンベアの読取機を通過して移動するにつれて、かつ、この識別子が生物学的分析システムの入口における読取機によって事前に読み取られていないときに、ラック識別子を読み取ること、このチューブ保持ラックに特定の取扱を適用することを伴う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面からとられる説明的かつ非限定的な例からとられる次の説明を読めば、本発明のさらなる特徴および利点がいっそう良好に明らかになるであろう。
【0011】
【
図1】
図1は、本発明による生物学的分析システムの斜視図を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面および後に続く説明は、本質的には、特定の性質の要素を含有する。それらは、したがって、本発明をいっそうよく理解するのに役立つだけでなく、適切な場合はその定義に貢献するのに役立つ。
【0013】
図1は、本発明による生物学的分析システム2の斜視図を描いており、かつ、
図2は、
図1を上から見た図を描いている。この図において見られ得るように、生物学的分析システム2は、3つの生物学的分析デバイス4、6および8、スライド染色/塗り広げデバイス9、コンベア10ならびにコントローラー12を有する。
【0014】
ここで説明される例では、生物学的分析デバイス4、6および8は、血液分析器タイプのものである。生物学的分析デバイス4(または、それぞれ6、8)は、分析されるチューブ22を保持するラック20を受け入れるステージ14(または、それぞれ16、18)を有する。生物学的分析デバイス4(または、それぞれ6、8)はまた、分析されたチューブ22のラック20を受け入れるステージ24(または、それぞれ26、28)を有する。生物学的分析デバイス4(または、それぞれ6、8)はまた、ラック20がコンベア10の上に移送されることを可能にし、または、ラック20を前記コンベアから受け入れることが可能である交換領域30(または、それぞれ32、34)を有する。
【0015】
3つの血液分析器4,6,8は、チューブ22に含有される血液の試料を測定することが可能である。各装置は、ローディングステージまたはコンベアのいずれかの上に位置するラック20に含有されたチューブ22を測定装置の後ろに持ち上げる。血液試料測定が完了したとき、装置はチューブをラックに戻す。
【0016】
スライド染色/塗り広げデバイス9は、分析されることが意図される血液のスライドを調製する。まず、ラック20に保持されたチューブ22から、ある量の血液が採取される。次に、血液サンプルは、スライドの上に配置され、スライド全体に拡げられて薄い層を取得し、その後で乾燥される。試料は、その後で染色される。
【0017】
コンベア10は閉じた回路を定め、かつ、ここで説明される例では、2つの経路36および38を有するループ形のラインを有する。ライン36は、交換領域30、32および34のそれぞれに接続され、ラック20が経路36から、コンベア10の上に導入され、または、それから回収されるようになっている。コンベア10は、経路36を1つの方向に駆動させ、かつ、ライン38をライン経路36の駆動の方向とは逆方向に駆動させる。
【0018】
コンベア10はまた、2つの戻しデバイス40および42を有し、該2つの戻しデバイス40および42はそれぞれ、経路36の駆動の方向に関してデバイス4の下流およびデバイス8の上流に位置する。
【0019】
戻しデバイス40の目的は、ラック20を経路36から経路38へと移送することであり、かつ、戻しデバイス42の目的は、180°の回転によってラック20を経路36から経路38へと移送することである。したがって、交換領域30、32または34のいずれを介してラック20がコンベア10の上へと導入されても、このラック20は、輸送ルールにしたがって、デバイス4、6または8のいずれか1つへと送られ得る。この性能は、それを実施するためにどのような手段が採用されるにせよ、コンベア10が閉じた回路を定めるという事実を特徴付ける。
【0020】
代替案として、コンベア10は、独立して駆動され、かつ、戻しデバイス40および42によって接続される、2つのライン36ならびに38の形で生産されてもよい。
【0021】
したがって、ステージ14、16および18は、システム2の入口を形成し、ステージ24、26および28は、システム2の出口を形成し、かつ、デバイス4、6および8とコンベア10との間の交換のための交換領域30、32ならびに34は、システム2の入口および出口とは別個のものである。
【0022】
システム2の各入口は、ラック20上のラック識別子を読み取るように設計された読取機を有する。これら読取機は、ステージ14、16および18付近の各生物学的分析デバイス4,6,8のケースに配置される。識別子は、所定のラックのチューブについて実行されるべき作動および/または試験を決定すること、ならびに、必要であれば生物学的分析デバイスの間のラックの移送を管理することのために、コントローラー12によって用いられてもよい。
【0023】
ここで説明される例では、コンベア10は、各交換領域30(または、それぞれ32、34)に、入口14、16および18における読取機に類似する読取機50(または、それぞれ、52、54)を有し、コンベア10によって輸送されているラック20を識別し、かつ、コントローラー12と通信して、ラック20が交換領域30(または、それぞれ32、34)に面するたびに実行すべき行為を決定することを可能にする。代替案としては、コンベア10は、単一の読取機を有し得る。
【0024】
読取機は、ラックのアイデンティティーに関する情報を回収し得る任意の手段によって(例えば、光コード(バーコードもしくはQRコード)または無線タグ(RFIDなど)を読み取ることによって)具現化されてもよい。
【0025】
種々の代替的な形態では、1つ以上のデバイスの入口および出口は、相互に交換されてもよく、それらの間の適切な間隔を有して1つの同一のステージ上に生産されてもよい。同様に、構成によっては、交換領域は、これらが互いとは明確に区別されたままであるならば、1つ以上のデバイスの入口および出口にいっそう近く配置されてもよい。入口および/または出口のうちのいくつかは、省略されてもよい。
【0026】
ここで説明される例では、ラック20に保持されたチューブ22に含有される試料は、生物学的分析デバイス(その中に、かかるラックが、コンベア10へと移送される前またはコンベア10を介して通過することなくステージ24、26もしくは28を介して直接出る前に、システム2の中へと導入される)における分析に供されてもよく、入口(該入口を介してそれが導入された)から関連するデバイスの交換領域に向けて直接移送されてもよい。
【0027】
ここで説明される例におけるコントローラー12はコンピューターであり、該コンピューターは、従来の様に、ディスプレイ、ディスパッチャー、メモリー、および、それが生物学的分析デバイスと通信することを可能にするネットワークインターフェースを有する。
【0028】
メモリーは、デジタルデータを受け入れるのに適した任意のタイプのデータ格納デバイスであってもよい:ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)または任意のその他の形態のフラッシュメモリー、ランダムアクセスメモリー、磁気ディスク、ローカルに分配された、または、クラウドにおけるストレージなど。デバイスによって計算されたデータは、メモリー2に類似の、任意のタイプのメモリー上に格納されてもよく、かかるメモリー中に格納されてもよい。これらデータは、デバイスがそのタスクを完了した後で消去されてもよく、保存されてもよい。
【0029】
ディスパッチャーは、コントローラー12の機能を実施するために、メモリーに直接的または間接的にアクセスする。それは、1つ以上のプロセッサー上で実行される適切なコンピューターコードの形態で生産されてもよい。プロセッサーが意味するものは、コンピューターデータを処理するように設計された任意のプロセッサーである。かかるプロセッサーは、パーソナルコンピューター用のマイクロプロセッサー、FPGAもしくはSoC(システムオンチップ)タイプの専用チップ、コンピューティンググリッドリソース、マイクロコントローラーの形態で、または、以下に記載の実施形態について必要とされる演算能力を提供することが可能な任意のその他の形態で、任意の既知の方法で生産されてもよい。これら要素のうちの1つ以上はまた、ASICのような専用電子回路の形態で生産されてもよい。1つ以上のプロセッサーおよび1つ以上の電子回路の組み合わせもまた、想定されてもよい。
【0030】
コントローラー12は、生物学的分析デバイス4、6および8に接続されて、実行された分析および進行中の分析ならびにこれらデバイスに受け入れられたラック20のステータスに関するすべてのデータにアクセスし、かつ、コンベア10にも接続されて、特にこのコンベアがどのラック20を運搬しているのかを知る。
【0031】
したがって、コントローラー12は、取り扱われている最中のラック20のステータス、進行中の分析および既に実行された分析のステータスならびにシステム2の入口において受け入れられるラック20について予定される分析を特徴付けるすべてのデータに対するアクセスを有することによって、生物学的分析システム2全体のラック20の流れを組織化し得る。
【0032】
コントローラー12は、したがって、デバイスの仕事量ステータス、生物学的分析システム2の仕事量を管理するための計画、生物学的分析システム2と関係するスタッフの仕事量の分配、必要とされる追加の分析、故障、ライン上にある分析デバイスの数などにしたがって、生物学的分析デバイス4、6および8のそれぞれの仕事量ステータスを判定し、かつ、1つのデバイスから別のものへのコンベア10上のラック20の移送を命令するような立場にある。
【0033】
仕事量ステータスが意味するものは、生物学的分析デバイスが受け入れるラックの総数であり、該総数は、かかるデバイスについて意図されたコンベア上のラックの数に追加される。所定の生物学的分析デバイスの仕事量ステータスは、この数が所定の量を越えるとき、「過負荷」であると考えられる。この所定の量は、多数のパラメーター(システムの予期される作業量、関連するデバイスの撹拌機(単数)または撹拌機(複数)上の自由空間の数、1つのデバイスから別のものへとラックを移動させるのにかかる平均時間など)に基づいていてもよい。
【0034】
コントローラー12は、どのラックが、それらがシステム2の中に導入されたもの以外の生物学的分析デバイスによって引き継がれるべきかを決定して、作業量を改善し、かつ/または、計測できないものを考慮し、かつ、分析されたラックについての出口を決定するタスクを有する。コントローラー12は、したがって、1つ以上の現行の仕事量管理計画および1つ以上の出口管理計画を実施してもよい。さらに、見られるように、コントローラー12によってラックの管理を集約することは、従来の分析チューブのものとは異なるレベルの優先順位で取り扱われる/処理されるべき特定のラックの革新的な管理を実施することを可能にする。
【0035】
具体的には、上記で見られたように、入口14、16または18を介してシステム2の中へと導入される各ラック20は、かかる入口における読取機によって識別される。そのことは、コンベア10上に配置され、かつ、これら入口のうちの1つを介して導入された任意のラック20が、コントローラー12のメモリーに存在する識別子を有することを意味する。逆に、そのことは、識別子がコントローラー12のメモリーに存在することなく読取機50、52または54のうちの1つによって読み取られたかも知れないラック20が、システム2の入口のうちの1つを介して導入されたのではなく、コンベア10の上に直接配置されたことを意味する。
【0036】
したがって、コンベア10は、特定のラック用の入口として用いられ得、これらラックが優先事項として識別され、かつ、取り扱われる/処理されるのを可能にするのは、コントローラー12にこれらの識別子が存在しないことである。
【0037】
一旦特定のラックが優先的な特定のラックとして識別されると、コントローラー12は、それを、かかるラックのチューブについて最も多い数の試験を実行し得るシステム2の生物学的分析デバイスに割り当てる。かかる場合における優先的な特定のラックは、定義によれば、システム2の中に受け入れられるその他のラックに優先する。それを、それが輸送しているチューブについて意図された試験を最も多い数実行し得る生物学的分析デバイスへと送ることによって、それはいっそう効率的に取り扱われる/処理される。なぜなら、最も多い数の試験が1つの同一の生物学的分析デバイス上で実行され、したがって、コンベア10によって搬送されるのに消費される時間の量を減少させるからである。このルーティング基準はもちろん、例えば、特定のラックを最も仕事量の少ない生物学的分析デバイスに向けて方向付けるために、または、仕事量を実行され得る予定される試験の数と組み合わせる基準を用いるためにカスタマイズされてもよい。特定のラックを、それを取り扱う/処理する生物学的分析デバイスの中へと導入することは、コンベア10またはステージ14、16もしくは18上に存在する任意のその他のラックに優先する。したがって、特定のラックは、それを受け入れる生物学的分析デバイス内で優先事項として取り扱われる/処理されるであろう。
【0038】
優先的な分析用に用いられることに加えて、特定のラックはまた、チェックおよび試薬の補充のようなその他のタイプの特定の作動を実行するために用いられてもよい。
【0039】
具体的には、特定の生物学的分析デバイスは、規則的な間隔で有効とされるそれらの作動を有する必要があり、これは、対照試験値が予測されるチューブを含有するいわゆる対照ラックの使用によって実行される。対照ラック上の試験は、生物学的分析デバイスが正確に作動していることを確実にすることを可能にする。従来、これら試験は、「オンザフライ」で実行され得ず、かつ、システム2のすべてまたは一部をシャットダウンする必要があり、貴重なシステム作動時間を失う。なぜなら、すべての生物学的分析システムが、それらのうちの1つまたは2つが試験されているので、利用不能になるからである。
【0040】
対照ラックの優先順位は、スタッフによってカスタマイズされ得、かつ、チェックのタイプに依存し得る。デフォルト設定は、対照ラックに、優先的な試験ラックよりは低いが、その他の試験ラックおよび試薬ラックよりは高い優先順位を割り当てる。
【0041】
対照ラックを優先的なラックとして取り扱うこと/処理することは、システム2のダウン時間を制限し、かつ、作業量をさらに最適化することを可能にする。
【0042】
さらに、ラックは、特定の試験用の試薬で生物学的分析デバイスを補充するのに用いられてもよい。従来、これら試薬は、各生物学的デバイス内のリザーバーに貯蔵され、かつ、その中で直接交換されるか、または、システム2とは別個のリザーバーに貯蔵され、かつ、オンデマンドで直接生物学的分析システムに分配される。
【0043】
ここに記載される例では、この管理は、完全に時代遅れのものとされる。なぜなら、試薬がラック上を輸送され得るからである。したがって、専用貯蔵ユニットなしで、かつ、補充を進めるために生物学的分析デバイスをシャットダウンすることを伴わずに、試薬が必要なだけ置換され、かつ、あちこち動かされ得るので、有意な空間節約がなされる。
【0044】
さらに、必要に応じて、高価な試薬を種々の生物学的分析デバイスの間で共有することが可能になる。最終的には、これら作動はコントローラー12によって管理され、このことは、進行中の試験のステータスにしたがって試薬を有する特定のラックを優先させることが可能であることを意味する。
【0045】
例えば、それらの優先順位は:
− 試薬が保存される方式にしたがって変化してもよい。それが高感度試薬であれば、それは試験ラックに優先し;それが特定の保存手段を必要としない試薬であれば、それは試験ラックより低い優先順位を有し、
− 必要に応じて変化してもよい。試薬の補充前に未だに実行され得る試験の数を表す値が定められる。試薬の補充なしで未だに実行され得る試験の数が予め定められた値より上であれば、試薬を含有する特定のラックは試験ラックに優先しない。対照的に、試薬の補充なしで未だに実行され得る試験の数が予め定められた値より下であれば、試薬を含有する特定のラックは試験ラックに優先する。
【0046】
さらに、コントローラー12はまた、出口における特定のラックの優先順位を管理してもよい。例えば、それは、追加の分析が実行されることが必要な場合に、保存に伴う問題(対照試料、試薬など)を制御すること、および、特定の試験ラックの取扱/処理時間を最適化することに鑑みて、特定のラックができるだけ素早く外に出されることを命令してもよい。