特許第6891288号(P6891288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891288
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   C09J153/02
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-546582(P2019-546582)
(86)(22)【出願日】2018年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2018032673
(87)【国際公開番号】WO2019069610
(87)【国際公開日】20190411
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-193353(P2017-193353)
(32)【優先日】2017年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】佐見津 麻希
(72)【発明者】
【氏名】宮丸 智
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−297441(JP,A)
【文献】 特開2005−054072(JP,A)
【文献】 特開2007−039451(JP,A)
【文献】 特開2001−011414(JP,A)
【文献】 特開2016−153448(JP,A)
【文献】 特開2016−065121(JP,A)
【文献】 特開2014−227461(JP,A)
【文献】 特開平8−333563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも共役ジエン化合物からなる第1ブロックとビニル系芳香族炭化水素からなる第2ブロックとからなる共重合体を含む熱可塑性ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤組成物であって、
α−メチルスチレン系樹脂を含まず、且つ
温度:40℃、周波数0.1Hzでの貯蔵弾性率G’が20000Pa以上、及び温度:40℃、周波数:0.1Hzでの損失弾性率G’’が4300Pa以上、の少なくともいずれかを満足するととともに、
温度:40℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G’が32000Pa以下、及び温度40℃、周波数1Hzでの損失弾性率G’’が11000Pa以下、の少なくともいずれかを満足することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーが未水添の熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物は、加熱によって溶融された状態で、接着対象物である被着体に塗布し、溶融された粘着剤組成物を介して、被着体同士を接触させた状態で保持することにより、被着体同士を接着させるものである。このような粘着剤組成物は、例えば、段ボールや小箱等の包装分野、紙おむつや生理用品等の衛生材料分野、製本分野、合板分野、木工分野、自動車分野、家電分野、及び住宅分野等、様々な分野に用いられている。
【0003】
また、粘着剤組成物は、上述したように、加熱によって溶融された状態で用いられるので、溶剤を特に必要としない。このため、粘着剤組成物は、人体への安全性が高い接着剤として、例えば、衛生材料分野で好ましく用いられている。具体的には、生理用ナプキンや母乳パッド等の衛生材料は、下着類に粘着剤組成物で接着して使用される。また尿取りパッドは、基材となる使い捨ておむつに粘着剤組成物で接着して使用される。
【0004】
これらの衛生材料は、使用時に下着や基材からずれることなく、位置決めされた箇所に確実に接着されている必要がある。衛生材料の接着は、衛生材料の所定箇所に接着層を形成しておき、衛生材料の使用時に前記接着層を、下着等の対象物に押し付けて衛生材料を接着する。接着層の形成には接着剤が通常使用されるが、衛生材料の製造段階での生産性も考慮し、熱可塑性ポリマーを主成分(ベースポリマー)として含む粘着剤組成物が汎用される。
【0005】
上記の用途に適用される粘着剤組成物には、衛生材料の使用時に下着等の対象物からずれることなく確実に接着する必要があることから、下着等の対象物との剥離強度が高いという特性を備えている必要がある。その一方で、衛生材料を使用した後には、粘着剤組成物が下着等の対象物から剥がれやすく、下着等の対象物に残存しないような特性を発揮する必要がある。
【0006】
粘着剤組成物の剥離強度を高め過ぎると、衛生材料の使用時に下着等の対象物からずれることなく確実に接着されることが予想されるが、それでは粘着剤組成物が衛生材料から剥がれて下着等の対象物に残存する(以下、これを「糊残り」と呼ぶことがある)可能性が高くなる。
【0007】
また逆に、粘着剤組成物の剥離強度を低くし過ぎると、衛生材料の使用後に糊残りが低減されることが予想されるが、それでは衛生材料の使用時に衛生材料が下着等の対象物からずれたり簡単に剥がれる可能性がある。
【0008】
特に、下着等の対象物に糊残りが生じることは、使用者の不快感をまねき、衛生材料としての商品価値を損なうことにもなりかねず、より高精度に糊残りが生じないような粘着剤組成物の実現が望まれている。
【0009】
このような状況の下、衛生材料の使用時には下着等の対象物からずれることなく確実に接着できるとともに、衛生材料を使用した後には、粘着剤組成物が下着等の対象物から剥がれやすく、糊残りが生じないという特性を発揮させるための粘着剤組成物が様々提案されている。
【0010】
例えば特許文献1には、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である水素添加型熱可塑性ブロック共重合体、粘着付与樹脂、可塑剤を、所定の配合比率で含有するとともに、水素添加型熱可塑性ブロック共重合体のトルエン粘度(30℃、10重量%トルエン溶液)が100〜2600mPa・sであるホットメルト接着剤が提案されている。
【0011】
また特許文献2には、約35重量%を超えるスチレン含有量を有する、約5〜約40重量パーセントの実質的に線状のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体;約2〜約30重量パーセントのエンドブロック樹脂;約20〜約70重量パーセントの粘着付与剤;約0〜約25重量パーセントの相溶性非官能化ブロック共重合体;約0〜約30重量パーセントの油;及び約0〜約4重量パーセントの酸化防止剤:の混合物を含み、粘着塗布剤がブロック共重合体よりも多い量で存在し、接着剤が325°Fで10000cP未満の粘度を有するように、成分が合計で組成物の100重量%となる、ホットメルト接着剤組成物が提案されている。
【0012】
更に特許文献3には、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及びα−メチルスチレン系樹脂を有するホットメルト接着剤であって、50℃で、角速度10rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paであるホットメルト接着剤が提案されている。
【0013】
特許文献1の技術では、水素添加型熱可塑性ブロック共重合体を基本成分として含んでおり、この成分を含む粘着剤組成物では、下着等の対象物との剥離強度を十分に高めることができず、衛生材料の使用時に吸着性部材が下着等の対象物からずれやすいという問題がある。吸着性部材の下着等からのずれを防止するためには、衛生材料により多くの粘着剤組成物を塗工する必要がある。
【0014】
特許文献2の技術では、線状のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を基本成分として含ませることによって、水素添加型熱可塑性ブロック共重合体を用いる場合のように、吸着性部材が下着等の対象物からずれ易いという問題は回避できる。しかしながら、この技術では、他の成分の影響によって衛生材料の剥離強度が却って高くなり過ぎる傾向がある。その結果、使用後に衛生材料を剥離したときに、糊残りが発生しやすいという問題がある。
【0015】
これらの技術では、(a)衛生材料の使用時に下着等の対象物からずれることなく確実に接着されていること、及び(b)衛生材料を使用した後には、下着等の対象物から剥がれやすく、下着等の対象物に残存しない、という両特性を満足させることはできない。すなわち、成分組成を調整するだけでは、上記(a)、(b)の両特性を満足できる程度に剥離強度を適切な範囲に調整することは困難な状況である。
【0016】
一方、特許文献3の技術では、「50℃で、角速度10rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paである」という要件を満足させることによって、上記(a)、(b)の両特性を満足できることが示唆されている。
【0017】
しかしながら、ある一定の条件下での貯蔵弾性率G’を規定するだけでは、上記(a)、(b)の両特性を必ずしも満足できるとはいえず、上記(a)、(b)の両特性をより確実に満足できることが望まれる。またこの技術では、α−メチルスチレン系樹脂(以下、「αMeSt樹脂」と呼ぶ)を必須成分として含んでおり、強い臭気を発生する物質であるので、このような物質を含むホットメルト接着剤を用いた衛生材料は、衛生材料の使用者に不快感を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−297441号公報
【特許文献2】特表2010−506005号公報
【特許文献3】特開2012−12437号公報
【発明の概要】
【0019】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、衛生材料の使用者に不快感を与えることなく、衛生材料の使用時に下着等の対象物からずれることなく確実に接着され、及び衛生材料を使用した後には、下着等の対象物から剥がれやすく、粘着剤組成物が下着等の対象物に残存しない、という両特性を満足し得る粘着剤組成物を提供することにある。
【0020】
すなわち、本発明の一局面に係る粘着剤組成物は、熱可塑性ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤組成物であって、α−メチルスチレン系樹脂を含まず、且つ、温度:40℃、周波数:0.1Hzでの貯蔵弾性率G’が20000Pa以上、及び温度:40℃、周波数:0.1Hzでの損失弾性率G’’が4300Pa以上、の少なくともいずれかを満足するとともに、温度:40℃、周波数:1Hzでの貯蔵弾性率G’が32000Pa以下、及び温度:40℃、周波数:1Hzでの損失弾性率G’’が11000Pa以下、の少なくともいずれかを満足することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記(a)の特性を満足させるためには、衛生材料の使用時に下着等の対象物との剥離強度(以下、この強度を「初期粘着力」と呼ぶことがある)が高くする必要がある。この初期粘着力を高めるためには、対象物に対する濡れ性を上げること、すなわち粘着剤組成物に柔軟性があることが必要である。また糊残りが生じないようにするためには、衛生材料を剥離する際に、粘着剤組成物が「糊伸び」しないこと、すなわち接着剤の粘着力よりも高い凝集力があることが必要である。
【0022】
これまで提案されている粘着剤組成物は、熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂及び軟化剤(若しくは可塑剤)を基本成分として含み、これらの含有量を適切に調整することによって、上記(a)、(b)の両特性を満足させるという観点から検討されてきた。
【0023】
本発明者らは、物質の動的弾性率を評価する指標として知られている貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’に着目し、これらが上記特性に与える影響について検討した。
【0024】
貯蔵弾性率G’は、物質の変形を元に戻そうとする力の指標となるものであり、損失弾性率G’’は物質の変形を抑制しようとする力の指標となるものであり、これらの指標が、上記「凝集力」や「柔軟性」に対する影響について検討した。なお、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は、JIS K 7244−1:1998に規定されている。
【0025】
上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は、測定温度や測定周波数によっても、その数値が異なり、上記「凝集力」や「柔軟性」に対する影響が明らかになる測定条件(温度、周波数)について検索した。その結果、測定周波数が低周波となる領域では、貯蔵弾性率G’や損失弾性率G’’と、上記「凝集力」や「柔軟性」とに明らかな相関々係が認められることが判明した。
【0026】
そして、更に鋭意研究を重ねた結果、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’が、下記(i)、(ii)の少なくともいずれかを満足すれば、糊残りが生じなくなること、及び下記(iii)、(iv)の少なくともいずれかを満足すれば、初期粘着力が所定の基準を満足できることを見出し、当該知見に基づいて本発明を完成した。
(i)温度:40℃、周波数:0.1Hzでの貯蔵弾性率G’が20000Pa以上
(ii)温度:40℃、周波数:0.1Hzでの損失弾性率G’’が4300Pa以上
(iii)温度:40℃、周波数:1Hzでの貯蔵弾性率G’が32000Pa以下
(iv)温度:40℃、周波数:1Hzでの損失弾性率G’’が11000Pa以下
【0027】
なお、貯蔵弾性率G’や損失弾性率G’’の上限[(i)及び(ii)の場合]や下限[(iii)及び(iv)の場合]については、何ら限定するものではないが、概ね下記の通りである。
【0028】
周波数:0.1Hzでの貯蔵弾性率G’の好ましい上限:50000Pa以下
周波数:0.1Hzでの損失弾性率G’’の好ましい上限:7000Pa以下
周波数:1Hzでの貯蔵弾性率G’の好ましい下限:10000Pa以上
周波数:1Hzでの損失弾性率G’’の好ましい下限:5000Pa以上
【0029】
上記のような構成によれば、(a)衛生材料の使用時に下着等の対象物からずれることなく確実に接着されていること、及び、(b)衛生材料を使用した後には、下着等の対象物から剥がれやすく、下着等の対象物に残存しないこと、という両特性を満足させる粘着剤組成物を得ることができる。
【0030】
以下、本実施形態に係る接着剤組成物の各構成について、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
本実施形態の粘着剤組成物は、上記貯蔵弾性率G’や損失弾性率G’’の要件を満たすような組成物である限り、その成分組成については、αMeSt樹脂を含まないこと以外は、特に限定するものではないが、粘着剤組成物の原料として通常用いられている熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、及び軟化剤を基本成分として適切に組み合わせて配合することによって製造できる。原料成分を例示すると下記の通りである。
【0032】
熱可塑性ポリマーは、粘着剤組成物の物性を決定するベースポリマーである。
【0033】
本実施形態で使用可能な熱可塑性ポリマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−イソプレンブロックコポリマー等が挙げられる。これらの熱可塑性ポリマーは、共役ジエン化合物からなる第1ブロックとビニル系芳香族炭化水素からなる第2ブロックとからなる共重合体であるが、トリブロック体を含んでいてもよい。
【0034】
前記トリブロック体としては、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーの場合、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)等が挙げられる。また、スチレン−イソプレンブロックコポリマーの場合は、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)等が挙げられる。
【0035】
前記熱可塑性ポリマーとして、上述したような未水添の熱可塑性ポリマーを使用することが好ましい。それにより、よりコストを抑えられるという利点がある。
【0036】
なお、上記以外にも、本実施形態の熱可塑性ポリマーとして、水素添加されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)やスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)等についても、これらの熱可塑性ポリマーにおいて貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を適切な範囲に調整したものであれば、水素を添加した熱可塑性ポリマーも用いることができる。
【0037】
前記熱可塑性ポリマーは、前記共重合体以外の熱可塑性ポリマー(他の熱可塑性ポリマー)を含んでいてもよい。前記他の熱可塑性ポリマーとしては、粘着剤組成物を構成する成分として用いられる熱可塑性ポリマーであれば、特に限定されない。この熱可塑性ポリマーとしては、粘着剤組成物の主成分であるベースポリマーとして用いられる熱可塑性ポリマー等が挙げられる。前記熱可塑性ポリマーとしては、具体的には、エラストマー系、オレフィン系、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)系、ポリエステル系、ポリアミド系、及びポリアクリル系の熱可塑性ポリマーが挙げられる。
【0038】
前記オレフィン系の熱可塑性ポリマーは、粘着剤組成物における、オレフィン系の熱可塑性ポリマーとして用いられるものであれば、特に限定されない。また、前記オレフィン系の熱可塑性ポリマーとしては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒やシングルサイト触媒で重合した常温で固体のポリオレフィン系化合物等が挙げられる。前記オレフィン系の熱可塑性ポリマーとしては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン及び1−ブテンの少なくとも一方とのあらゆる比率でのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレンとプロピレンとジエン成分とのあらゆる比率でのエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン又はプロピレンとビニル化合物とのランダム共重合体又はブロック共重合体、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・α−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0039】
前記オレフィン系の熱可塑性ポリマーとしては、例えば、上記例示した化合物の中でも、α−オレフィン等のオレフィン(アルケン)をモノマーとして重合されたオレフィン系ポリマー等が好ましい。前記オレフィン系ポリマーとしては、具体的には、ポリα−オレフィンポリマー等が挙げられる。ポリα−オレフィンポリマーとしては、より具体的には、アモルファス−ポリα−オレフィンポリマー(APAO)、及びプロピレンの単独重合体(プロピレンホモポリマー)等が好ましい。プロピレンホモポリマーとしては、より具体的には、メタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いてプロピレンを重合して得られたプロピレンホモポリマー等が好ましい。
【0040】
本実施形態の粘着剤組成物では、上記した熱可塑性ポリマーの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
熱可塑性ポリマーの含有量については、限定されるものではないが、粘着剤組成物全体に対する割合で、40質量%以下であることが好ましい。熱可塑性ポリマーの含有量が40質量%よりも多くなると、粘着力が低下する傾向がある。熱可塑性ポリマーの含有量は、より好ましく35質量%以下である。下限について特に限定はないが、凝集力が不足するという観点から、熱可塑性ポリマーの含有量は少なくとも15質量%以上であることが好ましい。より好ましく20質量%以上である。
【0042】
本実施形態で用いられる粘着付与樹脂は、粘着剤組成物の原料として一般的に用いられる粘着付与樹脂であれば、特に限定されない。具体的な粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、及び石油系樹脂等が挙げられる。
【0043】
前記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、トールロジン及びウッドロジン等の天然ロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル及びペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。また、このロジン系樹脂は、水素添加したもの、すなわち、上記ロジン系樹脂の水素添加物(水素化物)が好ましい。
【0044】
前記テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂、炭化水素変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びフェノール系変性テルペン樹脂等が挙げられる。
【0045】
テルペン系樹脂は、水素添加したもの、すなわち、上記テルペン系樹脂の水素化物が好ましい。また、テルペン系樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂水素化物、芳香族変性テルペン樹脂水素化物、テルペン樹脂水素化物が好ましい例として挙げられ、このうち芳香族変性テルペン樹脂水素化物がより好ましい。
【0046】
前記石油系樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられる。また、この石油系樹脂は、水素添加したもの、すなわち、上記石油系樹脂の水素化物が好ましい。また、石油系樹脂水素化物としては、脂肪族系石油樹脂水素化物、脂環族系石油樹脂水素化物、及び芳香族系石油樹脂水素化物が好ましい。また、脂環族系石油樹脂水素化物としては、例えば、水添C9石油樹脂、及び水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂等が挙げられる。
【0047】
前記粘着付与樹脂としては、上記例示した粘着付与樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着付与樹脂の含有量については、特に限定されるものではないが、粘着剤組成物全体に対する割合で、65質量%以下であることが好ましく、これより多くなると糊残りが発生しやすくなる。粘着付与樹脂の含有量は、より好ましく60質量%以下である。一方、粘着力の維持という観点から、粘着付与樹脂の含有量は少なくとも40質量%以上であることが好ましい。より好ましく45質量%以上である。
【0048】
なお、前記αMeSt樹脂は、粘着付与樹脂に相当するものである。このαMeSt樹脂は、強い臭気を発生する物質であるので、このような物質を含む粘着剤組成物を用いた衛生材料は、衛生材料の使用者の不快感を与えることになる。したがって、本実施形態の粘着剤組成物は、使用者の不快感を与えるようなαMeSt樹脂を粘着付与樹脂として含まない。
【0049】
本実施形態の粘着剤組成物において用いられる軟化剤は、粘着剤組成物に一般的に用いられる軟化剤であれば、特に限定されない。軟化剤としては、例えば、鉱物油類、合成油類、及び植物油類等のオイル等が挙げられる。
【0050】
前記鉱物油類としては、具体的には、プロセスオイル、及び流動パラフィン等が挙げられる。プロセスオイルとは、ゴムや熱可塑性エラストマー等の可塑剤として一般的に用いられるオイルであり、いわゆる石油精製等において生産されるオイルである。プロセスオイルは、一般に、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖を含む混合物であって、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルとに大別される。プロセスオイルは、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30%以上を占めるものをナフテン系、芳香族炭素数が30%以上を占めるものを芳香族系と区別している。
【0051】
パラフィン系プロセスオイルとしては、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられる。前記パラフィン系プロセスオイルとしては、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタデコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、及びヘンプタコンタン等のn−パラフィン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、各種メチルヘキサン、3−エチルペンタン、各種ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、各種ジメチルヘキサン、各種トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、及び4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン、これらの飽和炭化水素の誘導体等が挙げられる。選択されるこれらのパラフィン系化合物は、混合物で用いることができ、室温で液状である。
【0052】
合成油類としては、具体的には、室温で液状である、リン酸エステル、塩素化パラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びその水素添加物等が挙げられる。
【0053】
植物油類としては、具体的には、オリーブ油、米胚芽油、コーン油、サザンカ油、ツバキ油、ヒマシ油、ホホバ種子油、及びユーカリ葉油等が挙げられる。
【0054】
脂肪酸エステル類としては、具体的には、ミスチル酸イソプロピル、スリスチン酸オクチルドデシル、トリイソオクタン酸グリセリン、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、サリチル酸エチレングリコール、及びジステアリン酸グリコール等が挙げられる。
【0055】
軟化剤の含有量については、限定されるものではないが、粘着剤組成物全体に対する割合で、25質量%以下であることが好ましく、これより多くなるとオイル成分が接着剤から滲みだして下着等の対象物を汚す可能性がある。軟化剤の含有量は、より好ましく23質量%以下である。一方、粘度が高くなって塗工性を低下させないという観点から、軟化剤の含有量は少なくとも10質量%以上であることが好ましい。より好ましく13質量%以上である。
【0056】
本実施形態の粘着剤組成物には、本発明の目的とする所望の特性を阻害しない範囲で、前記熱可塑性ポリマー、前記粘着付与樹脂、及び前記軟化剤以外の添加剤等を含有してもよい。具体的には、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填材、界面活性剤、カップリング剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、ワックス、及び可塑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0057】
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤や有機硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。有機硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、上記例示した酸化防止剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
ワックスは、粘着剤組成物に含有されるワックスであれば、特に限定されない。ワックスとしては、例えば、合成ワックス及び石油ワックス等が挙げられる。また、合成ワックスとしては、例えば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等の、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトラタム等が挙げられる。これらのワックスは、上記例示したワックスを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本実施形態の粘着剤組成物を製造する方法としては、上記構成の粘着剤組成物を製造することができる製造方法であれば、特に限定されない。粘着剤組成物を製造する方法としては、例えば、粘着剤組成物を構成する成分を加熱溶融し、攪拌混練する方法等が挙げられる。そうすることによって、粘着剤組成物を構成する成分の分散性の高い粘着剤組成物が得られる。また、この方法を実現する装置としては、例えば、加熱装置を備えた、攪拌混練機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、及び押出機等が挙げられる。
【0060】
粘着剤組成物を用いた接着方法は、粘着剤組成物を用いた接着方法として用いることができる方法であれば、特に限定されない。粘着剤組成物を用いた接着方法としては、例えば、粘着剤組成物を、加熱によって溶融させる。そして、その溶融状態の粘着剤組成物を接着対象物である被着体に塗布する。この塗布された粘着剤組成物に、もう一方の被着体を接触させた状態で放置することで、この粘着剤組成物が冷却し、固化される。この固化された粘着剤組成物が、被着体同士を接着させる。
【0061】
粘着剤組成物を塗布する方法は、粘着剤組成物を被着体に好適に塗布できれば、特に限定されない。この塗布方法としては、例えば、接触塗布方法が挙げられる。接触塗布方法とは、粘着剤組成物を塗布する際、塗工機等の、塗布に用いる装置を被着体に接触させた状態で塗布する塗布方法をいう。接触塗布方法としては、例えば、スロット塗工(ノードソン株式会社製のスロットコートガン等)及びロールコーター塗工等が挙げられる。
【0062】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0063】
すなわち、本発明の一局面に係る粘着剤組成物は、熱可塑性ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤組成物であって、α−メチルスチレン系樹脂を含まず、且つ、温度:40℃、周波数:0.1Hzでの貯蔵弾性率G’が20000Pa以上、及び温度:40℃、周波数:0.1Hzでの損失弾性率G’’が4300Pa以上、の少なくともいずれかを満足するとともに、温度:40℃、周波数:1Hzでの貯蔵弾性率G’が32000Pa以下、及び温度:40℃、周波数:1Hzでの損失弾性率G’’が11000Pa以下、の少なくともいずれかを満足することを特徴とする。
【0064】
このような構成により、(a)衛生材料の使用時に下着等の対象物からずれることなく確実に接着されていること、及び、(b)衛生材料を使用した後には、下着等の対象物から剥がれやすく、下着等の対象物に残存しないこと、という両特性を満足させる粘着剤組成物を得ることができる。
【0065】
また、前記粘着剤組成物において、前記熱可塑性ポリマーが、未水添の熱可塑性ポリマーであることが好ましい。それにより、コストが抑えられるといった利点がある。
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明の作用効果を具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前記、後記の趣旨に応じて適宜設計変更することは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0067】
まず、本実施例において、粘着剤組成物を調製する際に用いる各成分について説明する。
【0068】
[熱可塑性ポリマー]
熱可塑性ポリマー1:スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(線状SBS)(旭化成株式会社製のアサプレンT−438、スチレン(第2ブロック)の含有量:35質量%、ジブロック体の含有量:65質量%)
熱可塑性ポリマー2:スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(線状SBS)(旭化成株式会社製のアサプレンT−436、スチレン(第2ブロック)の含有量:30質量%、ジブロック体の含有量:50質量%)
熱可塑性ポリマー3:スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(線状SBS)(旭化成株式会社製のアサプレンT−439、スチレン(第2ブロック)の含有量:45質量%、ジブロック体の含有量:75質量%)
熱可塑性ポリマー4:スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(線状SBS)(クレイトンポリマー株式会社製のDX−405、スチレン(第2ブロック)の含有量:24質量%、ジブロック体の含有量:0質量%)
熱可塑性ポリマー5:スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(線状SBS)(クレイトンポリマー株式会社製のD−1155、スチレン(第2ブロック)の含有量:40質量%、ジブロック体の含有量:0質量%)
熱可塑性ポリマー6:スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(線状SBS)(クレイトンポリマー株式会社製のD−1118、スチレン(第2ブロック)の含有量:30質量%、ジブロック体の含有量:75質量%)
熱可塑性ポリマー7:スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(線状SIS)(クレイトンポリマー株式会社製のD−1116、スチレン(第2ブロック)の含有量:23質量%、ジブロック体の含有量:16質量%)
熱可塑性ポリマー8:スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(線状SIS)(クレイトンポリマー株式会社製のD−1162、スチレン(第2ブロック)の含有量:43質量%、ジブロック体の含有量:0質量%)
【0069】
本実施形態において、スチレンの含有量は、上記熱可塑性ポリマーの場合、ビニル系芳香族炭化水素からなる第2ブロックの含有量に相当する。そして、ジブロック体の含有量は、共役ジエン系化合物からなる第1ブロックとビニル系芳香族炭化水素からなる第2ブロックとのジブロック体の含有量に相当する。
【0070】
[粘着付与樹脂]
粘着付与剤:脂環族系石油樹脂水素化物(水添C9石油樹脂)(荒川化学工業株式会社製のアルコンM−100)
[軟化剤]
オイル:オイル(出光興産株式会社製のダイアナフレシアS32)
[添加剤]
酸化防止剤:一次酸化防止剤(BASF社製のイルガノックス1010)
【0071】
[粘着剤組成物の製造方法]
上記各成分を、下記表1に示す配合量(組成:質量部)となるように、以下のような手順で混練して粘着剤組成物を作成した。攪拌混練機中に、粘着付与樹脂、軟化剤、及び添加剤を投入し、150〜190℃になるように加熱した状態で攪拌することによって、充分に溶融させた。その溶融物の中に、熱可塑性ポリマーを投入し、150〜190℃になるように加熱した状態で混練することにより、熱可塑性ポリマーも充分に溶融させ、溶融物の中に均一に分散させた。そうすることで、粘着剤組成物を製造した。
【0072】
【表1】
【0073】
得られた各粘着剤組成物(実施例1〜5及び比較例1〜5)について、「糊残り」、「初期粘着力」を下記の方法で評価した。また周波数が0.1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’、周波数が1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定し、これらに基づいて、「糊残り」、「初期粘着力」との相関を評価した。各粘着剤組成物の臭気についても評価した。
【0074】
[糊残り試験]
衛生材料の表面にポリエチレンフィルムを貼付し、ポリエチレンフィルム上に各種粘着剤組成物を、コータを用いて30g/mとなるように塗布して試験用基材を調製した。この試験用基材上に綿布(下着を想定)を覆い、その上から、40℃で3.5kgの荷重をかけて2時間保持した。その後、綿布を剥がし、25mmあたりの剥離強度を測定するとともに、綿布上に粘着剤組成物が残っている状態を目視観察及び手触り検査によって確認し、下記の評価基準で糊残りを評価した。
【0075】
(評価基準)
◎:目視観察及び手触り検査によっても「糊残りなし」。
○:部分的にかすかにタックを感じる。
×:タックを感じるか、又はポリエチレンフィルムから剥がされたときに接着剤が糸を引いた状態となる。
【0076】
[初期粘着力の評価]
衛生材料の表面にポリエチレンフィルムを貼付し、ポリエチレンフィルム上に各種粘着剤組成物を、コータを用いて30g/mとなるように塗布して試験用基材を調製した。この試験用基材上に綿布(下着を想定)を覆い、室温(23℃)で1kg荷重で30秒間保持した。その後、綿布を剥がし、25mmあたりの剥離強度を初期粘着力として求めた。初期粘着力を下記の評価基準で評価した。
【0077】
(評価基準)
◎:初期粘着力が1.0N/25mm以上
○:初期粘着力が0.8N/25mm以上、1.0N/25mm未満
×:初期粘着力が0.8N/25mm未満
【0078】
[周波数が0.1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の測定]
動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製のレオメーターARES−RDA(商品名))を用いて、動的粘弾性を測定した。約2mmの間隔に離された直径8mmの平行プレートに接着剤試料を入れ、40℃に加温した。測定はアルミニウム製のパラレルプレートを用いて行い、温度を40℃に固定して、周波数スイープモードを用いて、0.01Hz〜80Hzの範囲で速度を上昇して行った。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の数値として、周波数0.1Hzでの数値を読み取り、採用した。測定値に基づいて、下記の評価基準で評価した。
【0079】
(評価基準)
◎:貯蔵弾性率G’が20000Pa以上及び損失弾性率G’’が4300Pa以上
○:貯蔵弾性率G’が20000Pa以上、又は損失弾性率G’’が4300Pa以上
×:貯蔵弾性率G’が20000Pa未満及び損失弾性率G’’が4300Pa未満
【0080】
[周波数が1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の測定]
動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製のレオメーターARES−RDA(商品名))を用いて、動的粘弾性を測定した。約2mmの間隔に離された直径8mmの平行プレートに接着剤試料を入れ、約−40℃まで冷却した。測定はアルミニウム製のパラレルプレートを用いて行い、周波数を1Hzに固定して、温度ランプモードを用いて、10℃/分の速度で、−40℃〜150℃の範囲で昇温して行った。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の数値として、40℃±1℃での数値を読み取り、採用した。測定値に基づいて、下記の評価基準で評価した。
【0081】
(評価基準)
◎:貯蔵弾性率G’が32000Pa以下及び損失弾性率G’’が11000Pa以下
○:貯蔵弾性率G’が32000Pa以下又は損失弾性率G’’が11000Pa以下
×:貯蔵弾性率G’が32000Pa超及び損失弾性率G’’が11000Pa超
【0082】
[臭気の評価]
粘着剤組成物を160℃で2時間加温した後、室温で一晩冷却後、臭気を官能評価した。臭気を下記の評価基準で評価した。
【0083】
(評価基準)
○:臭気がほとんどないか、微かな臭いしかしない。
×:強い臭気を感じる。
【0084】
それらの結果を、一括して表2に示す。なお、表2には、参考のために、可塑剤含有量及びゴム成分(熱可塑性ポリマー)含有量についても示した。これらの値は、質量%に換算した値である。
【0085】
【表2】
【0086】
これらの結果から、次のように考察できる。即ち、実施例1〜5は、本発明で規定する要件を満足する例であり、「糊残り」及び「初期粘着力」のいずれにおいても良好な結果が得られていることが分かる。
【0087】
これに対し、比較例1〜5では、本発明で規定するいずれかの要件を欠く例であり、いずれかの要求特性を満足していない。
【0088】
すなわち比較例1では、温度:40℃、周波数:1Hzでの損失弾性率G’’が11000Pa以下となって初期粘着力は良好になっているが、温度が40℃、周波数が0.1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’が本発明で規定する範囲を外れており、糊残りが発生している。
【0089】
比較例2、5では、温度:40℃、周波数:1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’が本発明で規定する範囲を満足して初期粘着力は良好な値を示しているが、温度:40℃、周波数:0.1Hzでの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’が本発明で規定する範囲を外れており、「糊残り」が発生している。
【0090】
比較例3では、温度:40℃、周波数:0.1Hzでの損失弾性率G’’が4300Pa以上となって糊残りは発生していないが、温度:40℃、周波数:1Hzでの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’が本発明で規定する範囲を外れており、初期粘着力が極めて低下している。
【0091】
比較例4では、温度:40℃、周波数:0.1Hzでの貯蔵弾性率G’が20000Pa以下となって「糊残り」は発生しておらず、また温度:40℃、周波数:1Hzでの損失弾性率G’’が11000Pa以下となって初期粘着力は良好な値を示しているが、α−メチルスチレン系樹脂を含む例であり、強い臭気が発生している。
【0092】
この出願は、2017年10月3日に出願された日本国特許出願特願2017−193353を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0093】
本発明を表現するために、前述において具体例等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、接着剤や衛生用品に関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。