(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸引車では、水循環式真空ポンプが、例えば回転速度1750回/分、最大吸込量10m
3/分 、最大吸込圧力2.67kPa、補水槽容量200リットルのとき、一連の吸引作業で循環水が約100リットル蒸発する。更に、吸引作業を行うたびに循環水は汚れるため、比較的頻繁に(場合によっては毎日)交換する必要がある。このような状況では、循環水の中に消臭剤を混入させるとなると、その消費量は莫大で、混入作業は面倒であるし、コスト面でも問題がある。また、苛性ソーダ等を混入した循環水は、アルカリ性であり、廃棄処分も面倒で安全性にも問題がある。
【0005】
一方で、従来の活性炭や脱臭剤を付着させたパルプを利用した脱臭器を排気管に設けるだけでは、臭気を含む排気エアが脱臭剤に触れる機会が少なすぎるため(排気エアの排気量に対して脱臭剤の表面積が小さすぎるため)、脱臭効果が不十分であるという問題がある。
【0006】
また、燃焼装置を排気通路に設けて排気エアを燃焼させることで消臭するものもあるが、燃焼のためだけに余分な燃料を必要とするばかりでなく、燃焼装置の追加によりその分だけ架装物の重量アップやコストアップに繋がるという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安全かつ簡単な方法で確実に排気を消臭することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、吸引車の負圧ポンプに臭気変調用油剤を含む潤滑油を送り込むようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
負圧ポンプと、
上記負圧ポンプの負圧を利用して吸引された吸引物を収容する回収タンクと、
上記負圧ポンプから排出されるエアを外部に排気する排気通路と、
上記吸引物の臭気を消臭する臭気変調用油剤を含む潤滑油を上記負圧ポンプに送り込む潤滑油流通路とを備え、
上記排気通路に、上記潤滑油を含むエアが上記負圧ポンプから排出されるように構成されている。
【0010】
上記の構成によると、臭気変調用油剤を含む潤滑油は、負圧ポンプ内に吸い込まれた後に撹拌され、エアに含まれた状態で負圧ポンプから排出される。このとき、負圧ポンプ内において、回収タンク内から吸引されたエアと潤滑油とが撹拌されることで、潤滑油とエアとの接触が促進されてエアが消臭される。また潤滑油は、循環水よりも蒸発量が少なく、大部分がオイルセパレータ等により回収されるので、水循環式負圧ポンプのように毎回補充する必要はない。またその交換頻度は、潤滑油が汚れる通常のメンテナンス周期でよいので、水循環式負圧ポンプのように毎日交換する必要がなく、臭気変調用油剤を常に補給する必要がない上に、通常の潤滑油の廃棄手順で廃棄を行える。なお、負圧ポンプは、真空ポンプを含む。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記エアに含まれる上記潤滑油によって上記エアが消臭される。
【0012】
上記の構成によると、潤滑油は、負圧ポンプから排気通路に排出されるエア内に、粒状(ミスト状)に細分化された状態で混入している。このように細分化されて表面積が拡大された状態でエアと一緒に負圧ポンプから排出されるので、エア内の臭気に広範囲で確実に接触して、消臭が確実に行われる。
【0013】
第3の発明では、第1の発明において、
上記エアは、上記潤滑油の一部が上記排気通路に付着するように排出され、
上記排気通路に付着した上記潤滑油によって上記エアが消臭される。
【0014】
上記の構成によると、負圧ポンプから排出されたエアが、排気通路内に付着した潤滑油(消臭成分)に、継続的且つ長時間にわたって接触しながら排気通路を通過するようになるので、その点でも消臭が確実に行われる。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記潤滑油流通路は、上記排気通路を流通するエアに混在する上記潤滑油を回収するオイルセパレータを備え、
上記オイルセパレータにおいて回収された潤滑油が上記潤滑油流通路を流通して上記負圧ポンプに送り込まれる。
【0016】
上記の構成によると、潤滑油を循環させて何度も繰り返して利用することができるので、ランニングコストを抑えることが可能になる。また、臭気変調用油剤を含む潤滑油の大部分が確実に回収されるので、臭気変調用油剤を含む潤滑油の補給頻度が少なくて済む。
【0017】
第5の発明では、第1から第4の発明において、
上記臭気変調用油剤は、上記吸引物の臭気を香り構成要素の1つとして取り込むことで消臭するものである。
【0018】
すなわち、従来は、人が好む強い香りで不快な臭いを覆って不快な臭いをなくすことが行われてきたが、上記構成では、むしろ不快な臭いを取り込み、よい香りに変化させる機能を有する。例えば、予め不快な臭いの成分を除いた香料で構成されている。
【0019】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、
上記臭気変調用油剤は、上記臭気変調成分及び油剤成分を含有する。
【0020】
第7の発明では、第6の発明において、
上記臭気変調成分は、フラン化合物及びピラン化合物から選択される少なくとも一種の含酸素複素環式化合物を含む。
【0021】
第8の発明では、第7の発明において、
上記含酸素複素環式化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として1〜20質量%である。
【0022】
第9の発明では、第7又は第8の発明において、
上記フラン化合物は、フラネオール、フルフラール、5−メチルフルフラール、フルフリルメルカプタン、フルフリールアルコール、2−プロピオニルフラン、2−エチルフラン、メントフラン、2−メチル−3−フランチオール、2−メチル−3−テトラヒドロフランチオール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−3−フランチオール、2−メチルフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−ヘキサノイルフラン、2−ペンチルフラン、2−プロピルフラン、2−(3−フェニルプロピル)テトラヒドロフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2,4−ジメチル−4−フェニルテトラヒドロフラン、2−フルフリル−5−メチルフラン、2−ヘプチルフラン、2−メチルベンゾフラン、2−メチル−5−プロピオニルフラン、2−(5−エテニル−5−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)−プロパナール、3−{[2−メチル−(2or4),5−ジヒドロ−3−フリル]チオ}−2−メチルテトラヒドロフラン−3−チオール、2−エテニル−5−イソプロペニル−2−メチルテトラヒドロフラン、5−メチル−2−フランメタンチオール、6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、3−アセチル−2,5−ジメチルフラン、2−アセチル−5−メチルフラン、2−アセチルフラン、2−ブチルフラン、2,5−ジエチルテトラヒドロフラン、ジフルフリルジスルフィド、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルスルフィド、及び2,5−ジメチル−3−フランチオールからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0023】
第10の発明では、第7から第9のいずれか1つの発明において、
上記フラン化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として0.1〜10質量%である。
【0024】
上記の構成によると、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ。
【0025】
第11の発明では、第7から第10のいずれか1つの発明において、
上記ピラン化合物は、マルトール、エチルマルトール、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、3,5−ジヒドロキシ−6−メチル−2,3−ジヒドロ−4(4H)−ピラノン、6−エテニル−2,2,6−トリメチルテトラヒドロピラン、5−メチル−3−ブチルテトラヒドロピラン−4−イルアセテート、オクタヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン、4−メチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)テトラヒドロピラン、テアスピラン、ビティスピラン、(2S,4aR,8aS)−2,5,5,8a−テトラメチル−3,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−2H−1−ベンゾピラン、6−エテニル−2,2,6−トリメチルテトラヒドロ−3(4H)−ピラノン、6−ヒドロキシジヒドロテアスピラン、6−アセトキシジヒドロテアスピラン、及び2,6−ジエチル−5−イソプロピル−2−メチルテトラヒドロ−2H−ピランからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0026】
第12の発明では、第7から第11のいずれか1つの発明において、
上記ピラン化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として1〜10質量%である。
【0027】
上記の構成によると、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができる。
【0028】
第13の発明では、第7から第12のいずれか1つの発明において、
上記臭気変調成分が、更に、バニリン系化合物を含有する。
【0029】
上記の構成によると、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができる。
【0030】
第14の発明では、第13の発明において、
上記バニリン系化合物は、バニリン、エチルバニリン、アセトアルデヒドエチルバニリンアセタール、バニリンアセテート、エチルバニリンイソブチレート、アセトバニロン、エチルバニレート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、メチルバニレート、バニリックアシド、バニリンイソブチレート、ブチルバニレート、バニリン2,3−ブタンジオールアセタール、及びバニリンラクテートからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0031】
第15の発明では、第13又は第14の発明において、
上記バニリン系化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として5〜25質量%である。
【0032】
上記の構成によると、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、る。
【0033】
第16の発明では、第6から第15のいずれか1つの発明において、
上記油剤成分は、非イオン性界面活性剤を含む。
【0034】
第17の発明では、第6から第16のいずれか1つの発明において、
上記油剤成分は、グリセリン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、及びポリオキシソルビトール脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種の脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤を含む。
【0035】
第18の発明では、第6から第17のいずれか1つの発明において、
上記油剤成分は、グリセロールモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセキスオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタントリオレエートからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0036】
第19の発明では、第6から第18のいずれか1つの発明において、
上記油剤成分は、HLBが11.0以下である。
【0037】
第20の発明では、第6から第19のいずれか1つの発明において、
上記油剤成分の含有量は、臭気変調成分を100質量部として、10〜400質量部である。
【0038】
第21の発明では、第6から第20のいずれか1つの発明において、
上記潤滑油中の上記臭気変調用油剤の含有量は0.01〜99vol%である。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、吸引車において、負圧ポンプに臭気変調油剤を含む潤滑油を送り込む潤滑油流通路を設け、その潤滑油に含まれる臭気変調油剤が負圧ポンプ内や排気通路内などで臭気に触れるようにしたので、安全かつ簡単な方法で確実に排気を消臭することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0042】
−衛生車の構成−
図1及び
図2は、本発明の実施形態の吸引車としての衛生車1を示し、この衛生車1は、エンジン9等の動力により走行可能な車台2と、運転室3とを備え、車台2には、負圧ポンプとしての真空ポンプ10で吸引された吸引物を収容する回収タンク4が設けられている。回収タンク4の上部には、ホースリール5が設けられ、回収ホース6を巻取可能となっている。回収ホース6は、ホースリール5に巻き取られる先端側回収ホース6aと、一端が先端側回収ホース6aに接続されるとともに他端が回収タンク4の後部に接続された基端側回収ホース6bとからなる。なお、衛生車1の後部には、回収タンク4内の吸引物を排出する排出ホース25も接続されている(回収ホース6及び排出ホース25を2点鎖線で示す)。
【0043】
図3にも示すように、車台2には、PTO装置7(動力取出装置)が設けられ、このPTO装置7により、真空ポンプ10が駆動されるようになっている。なお、PTO装置7は、PTOスイッチ8をオンにすると、エンジン9の動力を取り出し可能となっている。真空ポンプ10は、例えばベーンポンプよりなる。
【0044】
真空ポンプ10から吐き出されたエアは、排気通路15から排出されるようになっている。排気通路15は、第1補助オイルセパレータ16を通過してからメインオイルセパレータ17に接続された後、吸排切換コック12に接続されている。具体的には、排気通路15は、吸排切換コック12が吸入側にあるとき(吸引物を吸引して回収タンク4内に回収するとき)には、この吸排切換コック12を通り、第2補助オイルセパレータ13を通過して脱臭器14を介して外気に放出されるようになっている。逆に回収タンク4内の吸引物を排出するときには、吸排切換コック12を排出側に切換、回収タンク4側へエアを排出する。
【0045】
一方、吸入通路11が真空ポンプ10の吸入側に接続されている。吸入通路11は、吸排切換コック12に接続されている。吸引作業を行うときには、吸排切換コック12が吸引側に切換られる。
【0046】
吸排切換コック12と回収タンク4との間には、エアクリーナ19が設けられている。吸引作業の際には、回収ホース6から吸い込まれた糞尿は、回収タンク4の底部に回収され、回収タンク4の上部のエアがエアクリーナ19によってエア内の混入物を回収された後、吸排切換コック12に到達するようになっている。
【0047】
そして、衛生車1は、真空ポンプ10を潤滑する潤滑油50を送り込む潤滑油流通路20を備えており、後述するように、この潤滑油50には吸引物(糞尿)の臭気を消臭する臭気変調用油剤50aが含まれている。
【0048】
潤滑油流通路20は、排気通路15を流通するエア内に混入した潤滑油を回収する第1補助オイルセパレータ16とメインオイルセパレータ17とを備えている。
図4に拡大して示すように、メインオイルセパレータ17は、オイルタンク18を有し、このオイルタンク18の内部の潤滑油50が潤滑油流通路20を流通するようになっている。
図3に示すように、潤滑油流通路20では、潤滑油用配管21によって真空ポンプ10へ潤滑油50がオイルタンク18から供給されるが、その途中にはオイルストレーナ22が設けられており、オイルストレーナ22において、潤滑油50の汚れ具合等が外部から確認できるようになっている。また、第1補助オイルセパレータ16で分離された潤滑油50はオイルタンク18へ回収できるようになっている。また、真空ポンプ10の圧力差により、オイルタンク18内の潤滑油50が潤滑油用配管21を通過して真空ポンプ10内に供給される。メインオイルセパレータ17は、例えば
図4に示すようにオイルタンク18と一体形となっているが、オイルタンク18は、メインオイルセパレータ17と別体で設けられていてもよい。メインオイルセパレータ17は、真空ポンプ10と空気導入管26で繋がっており、真空ポンプ10内の圧力が下がりすぎるのを防ぐ役割を果たす。
【0049】
エアクリーナ19と回収タンク4との間には、空気安全弁23が設けられている。詳しくは図示しないが、空気安全弁23では、回収タンク4内の圧力が閾値を超えると、高圧エアがスプリングに押されたポペットを押し上げてエアが大気に開放されるようになっている。また回収タンク4には、泡逆流防止装置24が設けられており、回収タンク4内の糞尿が真空ポンプ10側へ逆流しないようになっている。
【0050】
また、
図2及び
図3に示すように、回収タンク4の後方には、操作盤30が設けられており、この操作盤30には、吸排切換コック12の切換コックレバー12a、エンジン9のスロットルレバー9aなどが設けられている。
【0051】
(潤滑油)
潤滑油50は、臭気変調用油剤50aを含有する。潤滑油50中の臭気変調用油剤50a以外の成分としては特に限定されず、真空ポンプ10に用いられる従来公知の潤滑油の成分を用いることができる。
【0052】
潤滑油50中の臭気変調用油剤50aの含有量は特に限定されず、0.01〜99vol%が好ましく、0.1〜50vol%がより好ましく、0.1〜10vol%が更に好ましく、0.5〜1.5vol%が特に好ましい。潤滑油50中の臭気変調用油剤の含有量を上記範囲とすることにより、潤滑油50としての機能を損なわず、真空ポンプの不具合の発生が抑制され、また、臭気変調用油剤の臭いが強くなりすぎず、潤滑油50が十分な臭気変調効果を発揮することができ、かつ、液安定性に優れる。
【0053】
臭気変調用油剤50aを含有する潤滑油50を真空ポンプ10に充填する際は、臭気変調用油剤50aと潤滑油50とを撹拌混合して、臭気変調用油剤50aを含有する潤滑油50を調製し、次いで、真空ポンプ10に充填して用いることができる。また、臭気変調用油剤50aと潤滑油50とを別々に真空ポンプ10内に充填し、次いで、真空ポンプ10を稼働させることにより、真空ポンプ10内で臭気変調用油剤50aと潤滑油50とを混合して、臭気変調用油剤を含有する潤滑油50として用いてもよい。
【0054】
この臭気変調用油剤50aは、従来のような不快な臭いを人が好む強い香りで覆ってなくす、というよりも、
図5に示すように、不快な臭いXを取り込み、よい香りを更によい香りに変化させる機能を有する。つまり、糞尿臭などの不快な臭いXが加わる前も後もよい香りとなるように、よい香りの香料A,B,Cが調合されている。少しの塩が甘みを増すように、不快な臭いがよい香りを引き立てる。これを利用して予め不快な臭いXの成分を除いた香料A,B,Cで臭気変調用油剤50aが構成されている。
【0055】
また、臭気変調用油剤50aと潤滑油(臭気変調用油剤50aが混入されていない潤滑油)との相性がよく、潤滑油としての機能を阻害することはない。また、臭気変調用油剤50aと潤滑油とが十分に混ざり合っているので、確実に消臭機能が発揮される上、潤滑油を交換するまでの間、消臭機能が長続きする。
【0056】
(臭気変調用油剤)
上記臭気変調用油剤50aとしては、臭気変調成分及び油剤成分を含有する臭気変調用油剤が挙げられる。以下、この臭気変調用油剤を例示的に説明する。
【0057】
(臭気変調成分)
臭気変調成分は、フラン化合物及びピラン化合物から選択される少なくとも一種の含酸素複素環式化合物を含むことが好ましい。
【0058】
(フラン化合物)
フラン化合物は、含酸素複素環式化合物であり、4個の炭素原子と1個の酸素原子により形成される5員環のフラン骨格を有していれば特に限定されない。フラン化合物としては、例えば、フラネオール、フルフラール、5−メチルフルフラール、フルフリルメルカプタン、フルフリールアルコール、2−プロピオニルフラン、2−エチルフラン、メントフラン、2−メチル−3−フランチオール、2−メチル−3−テトラヒドロフランチオール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−3−フランチオール、2−メチルフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−ヘキサノイルフラン、2−ペンチルフラン、2−プロピルフラン、2−(3−フェニルプロピル)テトラヒドロフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2,4−ジメチル−4−フェニルテトラヒドロフラン、2−フルフリル−5−メチルフラン、2−ヘプチルフラン、2−メチルベンゾフラン、2−メチル−5−プロピオニルフラン、2−(5−エテニル−5−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)−プロパナール、3−{[2−メチル−(2or4),5−ジヒドロ−3−フリル]チオ}−2−メチルテトラヒドロフラン−3−チオール、2−エテニル−5−イソプロペニル−2−メチルテトラヒドロフラン、5−メチル−2−フランメタンチオール、6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3−c]フラン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、3−アセチル−2,5−ジメチルフラン、2−アセチル−5−メチルフラン、2−アセチルフラン、2−ブチルフラン、2,5−ジエチルテトラヒドロフラン、ジフルフリルジスルフィド、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルスルフィド、及び2,5−ジメチル−3−フランチオール等が挙げられる。これらの中でも、フラネオール、5−メチルフルフラール、フルフリルメルカプタンが好ましい。
【0059】
フラン化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として0.1〜10質量%が好ましく、0.4〜10質量%がより好ましく、0.4〜3質量%が更に好ましく、0.4〜1.5質量%が特に好ましく、0.5〜1.2質量%が最も好ましい。フラン化合物の含有量を上記範囲とすることにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0060】
上記フラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
(ピラン化合物)
ピラン化合物は、含酸素複素環式化合物であり、5個の炭素原子と1個の酸素原子により形成される6員環のエーテル化合物を骨格とするピラン骨格を有していれば特に限定されない。ピラン化合物としては、例えば、マルトール、エチルマルトール、4−アセトキシ−3−ペンチルテトラヒドロピラン、3,5−ジヒドロキシ−6−メチル−2,3−ジヒドロ−4(4H)−ピラノン、6−エテニル−2,2,6−トリメチルテトラヒドロピラン、5−メチル−3−ブチルテトラヒドロピラン−4−イルアセテート、オクタヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン、4−メチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)テトラヒドロピラン、テアスピラン、ビティスピラン、(2S,4aR,8aS)−2,5,5,8a−テトラメチル−3,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−2H−1−ベンゾピラン、6−エテニル−2,2,6−トリメチルテトラヒドロ−3(4H)−ピラノン、6−ヒドロキシジヒドロテアスピラン、6−アセトキシジヒドロテアスピラン、及び2,6−ジエチル−5−イソプロピル−2−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン等が挙げられる。これらの中でも、マルトール、エチルマルトールが好ましい。
【0062】
ピラン化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として1〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましく、2〜5質量%が特に好ましい。ピラン化合物の含有量を上記範囲とすることにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0063】
上記ピラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
上記含酸素複素環式化合物の臭気変調剤成分中の含有量、すなわち、フラン化合物及びピラン化合物の含有量の合計は、臭気変調成分を100質量%として、1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましく、2〜5質量%が特に好ましい。含酸素複素環式化合物の含有量を上記範囲とすることにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0065】
臭気変調成分中のフラン化合物と、ピラン化合物との含有量の比は、質量比でフラン化合物:ピラン化合物=1:2〜1:5が好ましく、1:3〜1:4がより好ましい。フラン化合物と、ピラン化合物との含有量の比を上記範囲とすることにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0066】
(バニリン系化合物)
臭気変調成分は、更にバニリン系化合物を含有することが好ましい。臭気変調成分がバニリン系化合物を含有することにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0067】
バニリン系化合物は、バニリン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。バニリン系化合物としては、例えば、バニリン、エチルバニリン、アセトアルデヒドエチルバニリンアセタール、バニリンアセテート、エチルバニリンイソブチレート、アセトバニロン、エチルバニレート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、メチルバニレート、バニリックアシド、バニリンイソブチレート、ブチルバニレート、バニリン2,3−ブタンジオールアセタール、バニリンラクテート等が挙げられる。これらの中でも、バニリンが好ましい。
【0068】
バニリン系化合物の含有量は、臭気変調成分を100質量%として5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましく、10〜15質量%が特に好ましい。バニリン系化合物の含有量を上記範囲とすることにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0069】
上記バニリン系化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
(ピリジン類)
臭気変調成分は、更にピリジン類を含有することが好ましい。臭気変調成分がピリジン類を含有することにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0071】
ピリジン類は、含窒素複素環式芳香族化合物であり、5個の炭素原子と1個の窒素原子により形成される6員環構造を有するピリジンを骨格とするピリジン骨格を有していれば特に限定されない。ピリジン類としては、例えば、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、4−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、2−アセチル−4−イソプロペニルピリジン、4−アセチル−2−イソプロペニルピリジン、2−アセチル−4−イソプロピルピリジン、3,5−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン、2−アセチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン等が挙げられる。これらの中でも、2−アセチルピリジンが好ましい。
【0072】
ピリジン類の含有量は、臭気変調成分を100質量%として、0.01〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%がより好ましく、0.09〜0.11質量%が更に好ましい。ピリジン類の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調用油剤が日常生活での生活環境や、産業において発生する悪臭を異なる臭気により変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0073】
上記ピリジン類は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
(ピラジン類)
臭気変調成分は、更にピラジン類を含有することが好ましい。臭気変調成分がピラジン類を含有することにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0075】
ピラジン類は、含窒素複素環式芳香族化合物であり、4個の炭素原子と2個の窒素原子により形成される6員環構造を有する化合物であるピラジンを骨格とするピラジン骨格を有していれば特に限定されない。ピラジン類としては、例えば、2−メチルチオ−3−メチルピラジン、2−メトキシ−3−メチルピラジン、2−エチル−3(5/6)ジメチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−メトキシ−5−メチルピラジン、2−アセチル−3(5/6)−ジメチルピラジン、2−アセチル−3−エチルピラジン、2−アセチル−3−メチルピラジン、アセチルピラジン、2−(フルフリルチオ)−(3/5/6)−メチルピラジン、2−メチル−(5/6)−(メチルチオ)ピラジン、2−エチル−3−(メチルチオ)ピラジン、2−イソプロピル−3−(メチルチオ)ピラジン、2−sec−ブチル−3−メトキシピラジン、2−エトキシ−(3/5/6)−メチルピラジン、2−エトキシ−3−エチルピラジン、2−エトキシ−3−イソプロピルピラジン、2−エチル−3−メトキシピラジン、2−ヘキシル−3−メトキシピラジン、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、2−イソプロポキシ−3−メチルピラジン、2−イソプロピル−(3/5/6)−メトキシピラジン、2−メトキシ−(5/6)−メチルピラジン、2−メトキシ−3,5−ジメチルピラジン、2−イソプロピル−3−メトキシピラジン、メトキシピラジン、2−メチル−6−プロポキシピラジン、2−エトキシ−(5/6)−メチルピラジン及び2−(ヒドロキシメチル)−5−メチルピラジン等が挙げられる。これらの中でも、2−メチルチオ−3−メチルピラジン、2−メトキシ−3−メチルピラジン、2−エチル−3(5/6)ジメチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジンが好ましい。
【0076】
ピラジン類の含有量は、臭気変調成分を100質量%として0.01〜0.5質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.05〜0.3質量%が更に好ましく、0.1〜0.3質量%が特に好ましい。ピラジン類の含有量を上記範囲とすることにより、排泄物の不快な悪臭を、より十分に異なる臭気に変調することができ、本実施形態により排泄物の悪臭による不快感をより十分に低減することができる。
【0077】
上記ピラジン類は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
臭気変調成分は、本発明の効果を妨げない限り、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、上記フラン化合物、ピラン化合物、バニリン系化合物、ピリジン類及びピラジン類以外のテルペンアルコール系化合物、エステル系化合物、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物等が挙げられる。
【0079】
臭気変調成分中の上記他の添加剤の含有量の合計は、臭気変調成分を100質量%として30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。他の添加剤の含有量の合計を上記範囲とすることにより、臭気変調用油剤が日常生活での生活環境や、産業において発生する悪臭を異なる臭気により変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0080】
(溶媒)
臭気変調成分において、上記各成分は、溶媒中に分散していることが好ましい。各成分が溶媒中に分散していることにより、臭気変調用油剤中に各成分が均一に分散することができ、臭気変調用油剤が液安定性に優れ、臭気変調効果をより効果的に発揮することができる。
【0081】
溶媒としては水、溶剤を用いることができるが、油剤成分との相溶性に優れる点で、溶剤が好ましい。溶剤としては特に限定されず、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、エステル等が挙げられる。中でも、油剤成分との相溶性に特に優れる点で、アルコール、エステルが好ましい。
【0082】
上記アルコールとしては特に限定されず、モノアルコール、又は、ジオール、トリオール等のポリオールが挙げられる。また、上記アルコールとしては、炭素数2〜4のアルコールを好適に用いることができる。上記アルコールの炭素数は、2〜3がより好ましい。
【0083】
上記アルコールとしては、具体的には、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、2−2(エトキシエトキシ)エタノール等が挙げられ、臭気変調用油剤を使用した際に、有害性が低い点で、エタノール、2−2(エトキシエトキシ)エタノール、プロピレングリコールが好ましい。
【0084】
上記エステルとしては特に限定されず、食品衛生法第10条に基づき、厚生労働大臣が定めた指定添加物の中のエステルを好適に用いることができる。具体的には、食品衛生法施行規則別表1に収載されている「指定添加物」のうち、エステル類に分類される化合物を好適に用いることができる。これらの中でも、比較的臭いが弱く、他の成分の香りを妨げない点で、安息香酸ベンジル、トリエチルシトレート、イソプロピルミリステートをより好適に用いることができる。
【0085】
上記溶媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
溶媒の含有量は、臭気変調剤を100質量%として20〜90質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、40〜85質量%が更に好ましく、50〜85質量%が特に好ましい。溶媒の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調用油剤中に各成分が均一に分散することができ、臭気変調用油剤が液安定性に優れ、臭気変調効果をより効果的に発揮することができる。
【0087】
(油剤成分)
油剤成分は、上記臭気変調成分に用いられる成分と異なる成分を含む油剤であれば特に限定されない。上記油剤成分としては、臭気変調成分との相溶性に優れ、かつ、真空ポンプ10に用いられる潤滑油50中での相溶性に優れる油剤成分を用いることが好ましい。このような油剤成分としては、非イオン性界面活性剤を含む油剤成分が挙げられる。
【0088】
上記非イオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤等を用いることができる。脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤等が挙げられ、中でも、機械に用いられる潤滑油50との相溶性により優れる点で、グリセリン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0089】
上記非イオン性界面活性剤としては、より具体的には、グリセロールモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセキスオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等が、真空ポンプ10に用いられる潤滑油50中での相溶性により優れる点で好適に用いることができる。
【0090】
上記油剤成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
油剤成分のHLBは、11.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、9.0以下が更に好ましく、5.0以下が特に好ましい。また、油剤成分のHLBは、2.5以上が好ましい。油剤成分のHLBを上記範囲とすることにより、真空ポンプ10に用いられる潤滑油50中での相溶性が、より向上する。
【0092】
なお、上記HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は親水親油バランス値を示す。本明細書において、上記HLBは、グリフィン法により、下記式に基づいて算出される値である。なお、油剤成分を二種以上混合して用いる場合は、それぞれのHLB値の平均値である。
【0093】
[HLB]=20×(油剤成分内の親水基の割合(質量%))
グリフィン法では、HLB=20×(油剤成分内の親水基のwt%)となる。
【0094】
臭気変調用油剤中の油剤成分の含有量は、臭気変調成分を100質量部として、10〜400質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。油剤成分の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調用油剤がより優れた臭気変調性を示すことができ、かつ、真空ポンプ10に用いられる潤滑油50中での相溶性が、より向上する。
【0095】
上記油剤成分は、本発明の効果を妨げない限り、上記非イオン界面活性剤の他に、他の油剤を含有していてもよい。
【0096】
臭気変調用油剤は、本発明の効果を妨げない限り、上記臭気変調成分及び油剤成分の他に、他の添加剤を含有していてもよい。
【0097】
−衛生車の作動−
次に、本実施形態に係る衛生車1の作動について説明する。
【0098】
吸引作業では、まず、PTOスイッチ8により、PTO装置7を駆動し、エンジン9の動力を取り出して真空ポンプ10が駆動される。吸排切換コック12が吸入側にされることにより、回収タンク4内に負圧が発生し、回収ホース6からエアが吸い込まれる。
【0099】
次いで、先端側回収ホース6aの先端を浄化槽などに挿入し、糞尿が回収タンク4に回収される。そのときのエアは、臭気と共に回収タンク4内を漂いつつエアクリーナ19、吸排切換コック12及び吸入通路11を介して真空ポンプ10に吸引される。
【0100】
真空ポンプ10内には、回転により負圧が発生し、オイルタンク18から潤滑油50が潤滑油用配管21を通過して供給される。真空ポンプ10に取り込まれた潤滑油50が粒状(ミスト状)に細分化され、回収タンク4内のエア(糞尿臭)と一緒に排気通路15に排出される。このように粒状となって潤滑油50の表面積が拡大するので、排気通路15を通過する臭気を潤滑油50(臭気変調成分)に確実に接触させることができる。
【0101】
図5で示したように、臭気変調用油剤50aの香料成分A,B,Cに、不快な臭いXが加わることで、更によい香りとなる。これにより、真空ポンプ10から排出されたエアの消臭が確実に行われる。真空ポンプ10内を潤滑した潤滑油50の大部分は、排気通路15を通過しながら消臭を行った後、第1補助オイルセパレータ16とメインオイルセパレータ17によりエアから分離されオイルタンク18に回収される。
【0102】
より詳細に説明すると、真空ポンプ10内から排出されたエアは、まず、第1補助オイルセパレータ16においてエア内に含まれる粒状潤滑油51が障壁に当たるなどしてその底部に分離された後、オイルタンク18に回収されるが、エア内の粒状潤滑油51はまだ完全に回収されていない。このように、エア内に残っている粒状潤滑油51が広範囲においてエア内の臭気に触れる機会があるため、消臭が確実に行われる。
【0103】
次いで、粒状潤滑油51を含むエアが流れ込んだメインオイルセパレータ17内においても、
図4に示すように、粒状潤滑油51が臭気を含むエアに広範囲で触れる上に、オイルタンク18内に溜まった潤滑油50により確実に消臭が行われる。
【0104】
このように、上記実施形態では、臭気変調成分を含む潤滑油50は、真空ポンプ10内に吸い込まれることにより撹拌されて粒状に細分化され、エア内に粒状潤滑油51として混入している。このため、エア内の臭気に広範囲で確実に接触するので、消臭が確実に行われる。
【0105】
また、排気通路15内壁には、エア内に含まれる粒状の潤滑油50の一部が付着して残留するが、これに、排気通路15内を通過するエアが連続的に接触する。このようにして、付着した潤滑油50が継続的に消臭作用を発揮するので、臭気を含むエアは、真空ポンプ10から排出された後、長時間臭気変調成分を含む潤滑油50に接することとなり、その点でも消臭が確実に行われる。
【0106】
なお、ごく僅かながら、メインオイルセパレータ17から排出されたエアに潤滑油50(臭気変調成分)が含まれることがあるが、これによって、メインオイルセパレータ17から外部に放出されるまでの間もエアが消臭される。
【0107】
更に潤滑油50は、循環水のように蒸発することはなく、大部分がメインオイルセパレータ17、第1補助オイルセパレータ16等により確実に回収されるので、水循環式真空ポンプのように頻繁に補充する必要はない。
【0108】
また、その交換頻度は、潤滑油50が汚れる通常のメンテナンス周期でよいので、水循環式真空ポンプのように頻繁に(毎日)交換する必要がなく、臭気変調用油剤50aを頻繁に補給する必要がない上に、通常の潤滑油50の廃棄手順で廃棄を行える。
【0109】
ところで、潤滑油を真空ポンプに供給するタイプの従来の衛生車では、真空ポンプに供給された潤滑油は通常、粒状となって臭気と一緒に排出され、一部は排出通路の内壁に付着する。
【0110】
排出された潤滑油を効率良く回収して再度真空ポンプに供給する循環を考えると、内壁への付着は好ましくない。
【0111】
これに対して本発明では、潤滑油50の内壁への付着に注目して、内壁に付着した臭気変調成分入り潤滑油50を通過エアに継続的(連続的)に接触させることにより、消臭効果を格段に高めている。
【0112】
潤滑油50を内壁に付着させ易くするための対策として、排気通路15の形状、潤滑油50の成分、及びこれら両方を検討することが考えられる。排気通路15の形状に関しては、例えば、エアの流れを妨げるように曲がった形状とすることが考えられる。一方、潤滑油50の成分に関しては、例えば、付着し易い成分のものを使用することが考えられる。
【0113】
排気通路15のどの部分に潤滑油50が付着するかに応じて、消臭効果が異なると考えられる。例えば、真空ポンプ10近傍の部分に重点的に付着させるよりも、排気通路15全体にわたって付着させる方が、排気通路15内を通過するエアが潤滑油50に接触する機会が多く、消臭効果を高めることができると考えられる。
【0114】
したがって、本実施形態に係る衛生車1によると、真空ポンプ10に臭気変調成分を含む潤滑油50を送り込む潤滑油流通路20を設け、その潤滑油50に含まれる臭気変調成分が真空ポンプ10内や排気通路15内などで臭気に触れるようにしたので、安全かつ簡単な方法で確実に排気を消臭することができる。
【実施例】
【0115】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0116】
実施例1
(臭気変調成分の調製)
表1に示す臭気変調成分の原料を、混合槽に投入して混合、撹拌し、臭気変調成分を調製した。具体的には、加熱装置を備えた混合槽に、表1に示す配合により溶媒を投入し、次いで他の原料を順次添加して、20℃の条件下で30分間撹拌して、臭気変調成分を調製した。
【0117】
(臭気変調用油剤の調製)
油剤成分として、ソルビタンモノオレエート(HLB4.3)を用意し、上記のようにして調製した臭気変調成分と、ソルビタンモノオレエートとを質量比で1:1の割合となるように混合槽中で常温で混合し、臭気変調用油剤を調製した。
【0118】
(潤滑油の調整)
上記のようにして調製した臭気変調用油剤50cc、及び、潤滑油4950ccを、衛生車(バキュームカー)の真空ポンプ10内にそれぞれ充填した。真空ポンプ10を稼働させることにより、臭気変調用油剤と潤滑油とが混合されて、臭気変調用油剤を1vol%含有する、5Lの潤滑油が調製された。これを用いて、以下の臭気変調試験を行い、評価した。
【0119】
(臭気変調試験)
上記のようにして得られた、臭気変調用油剤を含有する潤滑油が充填された真空ポンプ10を備える衛生車により、くみ取り現場でくみ取りを行い、作業者により、臭いを下記評価基準に従って評価した。なお、下記評価において、3以上であれば臭気変調効果が得られていると評価される。
5:糞尿の臭いを全く感じず、非常によい臭いだと感じた
4:糞尿の臭いを殆ど感じず、よい臭いだと感じた
3:糞尿の臭いを若干感じたが、不快でないと感じた
2:糞尿の臭いを感じ、よい臭いだと感じなかった
1:糞尿の臭いを強く感じ、不快な臭いだと感じた
上記評価を2回行った。1回目の結果を表2に示し、2回目の評価を表3に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0124】
すなわち、上記実施形態では、吸引車は衛生車1としたが、廃液汚泥吸引車など真空ポンプと、この真空ポンプで吸引された吸引物を収容する回収タンクと、この真空ポンプから排出されるエアを排気する排気通路と、真空ポンプに潤滑油50を送り込む潤滑油流通路とを備え、排気通路に、潤滑油50を含むエアが負圧ポンプから排出されるように構成される吸引車であれば、特に限定されない。
【0125】
また、メインオイルセパレータ17を通過したエアを、脱臭器14を通過させることなく排気させるように構成してもよい。このように構成しても、臭気変調用油剤を含む潤滑油50が確実かつ広範囲(真空ポンプ10内や排気通路15内)で臭気を含むエアに触れるので、消臭を確実に行うことができる。
【0126】
上記実施形態では、真空ポンプ10は、ベーンポンプで説明しているが、これに限定されず、吸引されたエア内に潤滑油50が含まれ、この潤滑油50が内部を潤滑する他のロータ式のポンプでもよい。
【0127】
更に上記実施形態では、真空ポンプ10を利用しているが、必ずしも真空を保つ必要はなく、負圧ポンプであればよい。
【0128】
なお、従来の衛生車1であっても、本願の潤滑油50を適切に循環させることにより、同様の効果を発揮させることができるようにしてもよい。
【0129】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。