(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粒子は、前記フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部と、前記コア部の周囲を取り囲み、かつ前記コア部よりもフッ化ビニリデンの比率が高いフッ化ビニリデン重合体(b)からなるシェル部とを含むコアシェル型粒子であり、
前記コアシェル型粒子に含まれる全てのモノマー量を100質量%としたとき、前記フッ化ビニリデンの含有量は97質量%以下である、
請求項2に記載の接着性組成物。
正極と、負極と、それらの間に配置されたセパレータと、前記セパレータと前記正極との間および前記セパレータと前記負極との間の少なくとも一方に設けられた、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着性組成物を用いて得られる接着性組成物層とを有する、
非水電解質二次電池。
正極と、負極と、それらの間に配置されたセパレータと、前記セパレータと前記正極との間および前記セパレータと前記負極との間の少なくとも一方に設けられた、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着性組成物を用いて得られる接着性組成物層とを有する積層物を得る工程と、
前記積層物を、前記接着性組成物を介して前記セパレータと前記正極とを接着させ、および/または、前記セパレータと前記負極とを接着させる工程とを含む、
非水電解質二次電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
セパレータと電極との高い接着性は、「セパレータと電極との間に設けられる接着性組成物層の成分が、電解液に対して一定温度以上においても溶解せずに、セパレータと電極との間に残ること」、および「接着性組成物層の成分が、高い弾性率を有すること」によって得られると考えられる。また、広いプロセスウィンドウは、「(加熱または熱プレス工程などの)高温下に晒された際に、接着性組成物層の成分が一定温度以上においても電解液に溶解せずに、セパレータと電極との間に残ること」が有効であると考えられる。つまり、高温に晒されても、セパレータと電極との高い接着性を維持することができ、かつ広いプロセスウィンドウを有する接着性樹脂を得るためには、1)電解液に対する溶解性を低くし、かつ2)高い弾性率を有することが有効と考えられる。
【0018】
1)について
電解液に対する溶解性が低い重合体は、通常、NMPに対する溶解性は低く、アセトンに対する溶解性は高い傾向を示す。NMPに対する溶解性が低いと、NMPに溶解させたときの濁度は高くなりやすい。アセトンに対する溶解性が高いと、アセトンに溶解させたときの溶液粘度(A)は高くなりやすい。
本発明者らは、鋭意検討した結果、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む接着性樹脂を、NMPに溶解させたときの濁度が2以上95以下であると、電解液に対する溶解性が適度に低くなりやすく、かつアセトンに溶解させたときに溶液粘度(A)が350〜20000mPa・sであると、当該接着性樹脂の電解液に対する親和性を部分的に制御することができ、当該接着性樹脂の電解液に対する溶解性を低くしうることを見出した(i)の要件)。
【0019】
2)について
これとは逆に、高い弾性率を有する重合体は、通常、NMPに対する溶解性は高く、アセトンに対する溶解性は低い傾向を示す。NMPに対する溶解性が高いと、NMPに溶解させたときの溶液粘度(B)は高くなりやすい。アセトンに対する溶解性が低いと、アセトンに溶解させたときの溶液粘度(A)は低くなりやすい。
本発明者らは、鋭意検討した結果、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む接着性樹脂の、アセトン溶液の溶液粘度(A)とNMP溶液の溶液粘度(B)の比(A)/(B)を1以上15以下とすることで、高い弾性率と、電解液に対する低い溶解性とをバランス良く両立しうることを見出した(ii)の要件)。
【0020】
すなわち、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含み、かつi)およびii)の要件を満たす接着性樹脂は、電解液に対する溶解性を低くし、かつ高い弾性率を有しうる。
i)接着性樹脂をNMPに溶解させたときの濁度が2以上95以下であり、かつ接着性樹脂をアセトンに溶解させたときの溶液粘度(A)が350〜20000mPa・sであること
ii)接着性樹脂をNMPに溶解させたときの溶液粘度(B)に対する溶液粘度(A)の比(A)/(B)が1以上15以下であること
【0021】
なお、本明細書では溶媒に接着性樹脂を「混合させた」ことに対し、接着性樹脂が溶媒に一部しか溶解しなかった場合も、接着性樹脂の全てが溶解した場合と同様に、「溶解させた」と称し、その混合液を「溶液」と称する。
【0022】
フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む接着性樹脂を、NMPに溶解させたときの濁度や溶液粘度(B)、およびアセトンに溶解させたときの溶液粘度(A)は、フッ化ビニリデン共重合体(a)の分子量や分岐量、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体(HFPやCTFE)や架橋性モノマーの含有量やそれらの分布、接着性樹脂中のフッ化ビニリデン共重合体(a)の含有比率、接着性樹脂へのアルカリ処理などによって調整することができる。
【0023】
例えば、i)のNMP溶液の濁度やアセトン溶液の溶液粘度(A)を高くするためには、例えばフッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体(HFPやCTFE)や架橋性モノマーの含有量の増加、分布の制御、フッ化ビニリデン共重合体(a)の分子量や分岐量の増加、接着性樹脂へのアルカリ処理を行ったりすることが好ましい。一方、ii)の粘度比(A)/(B)を15以下とするためには、例えばフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体(HFPやCTFE)や架橋性モノマーの含有量を多くし過ぎないこと、フッ化ビニリデン共重合体(a)の分子量、分岐量を多くしすぎないこと、接着性樹脂へのアルカリ処理を行いすぎないことが好ましい。
【0024】
特に、正極は、結着剤としてフッ化ビニリデン重合体を含むことが多いが、負極は、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)などの、フッ化ビニリデン重合体とは異なる樹脂を含むことが多い。そのため、フッ化ビニリデン重合体を含む接着性樹脂を用いる場合、セパレータと正極との接着性と比べて、セパレータと負極との接着性は得られにくい。これに対し、上記i)とii)の要件を満たす本発明の接着性樹脂およびそれを含む接着性組成物は、高温下においてもセパレータと負極との高い接着性を維持でき、かつプロセスウィンドウを広くすることができる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0025】
1.接着性組成物
本発明の接着性組成物は、少なくとも接着性樹脂を含む。
【0026】
1−1.接着性樹脂
接着性樹脂は、少なくともフッ化ビニリデン共重合体(a)を含む。
【0027】
(フッ化ビニリデン共重合体(a))
フッ化ビニリデン共重合体(a)は、フッ化ビニリデンに由来する構成単位と、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位とを含む。
【0028】
フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体の例には、フッ化ビニリデンと共重合可能な、フッ素系モノマー、炭化水素系モノマー、水素結合性の極性官能基を有するモノマー(好ましくはカルボキシル基含有モノマー)が含まれる。
【0029】
フッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系モノマーの例には、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの含フッ素アルキルビニル化合物が含まれる。
【0030】
フッ化ビニリデンと共重合可能な炭化水素系モノマーの例には、エチレン、プロピレンなどが含まれる。
【0031】
フッ化ビニリデンと共重合可能なカルボキシル基含有モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレートなどの不飽和一塩基酸;マレイン酸、シトラコン酸などの不飽和二塩基酸;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステルなどの不飽和二塩基酸のモノエステル、アクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイロキシプロプルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシプロピルコハク酸が含まれる。
【0032】
これらの中でも、結晶性の制御をより容易にする観点からは、フッ素系モノマーが好ましく、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンが好ましく、ヘキサフルオロプロピレンがより好ましい。
【0033】
フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量、およびフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位の含有量は、接着性樹脂の形態によって異なるため、後で詳細に説明する。
【0034】
また、フッ化ビニリデン共重合体(a)は、NMPに対する溶解性をさらに低くし、電極の表面との接着強度をより高める観点などから、架橋されていてもよい。すなわち、フッ化ビニリデン共重合体(a)は、フッ化ビニリデンやフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体以外に、架橋性含フッ素アルキルビニル化合物(以下、単に「架橋性モノマー」ともいう。)に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0035】
架橋性モノマーとしては、多官能性モノマーを用いてもよく、未架橋の共重合体を得た後に、多官能性モノマーを用いて架橋反応をさらに行ってもよい。
【0036】
架橋性モノマーの例には、パーフルオロジビニルエーテルおよびパーフルオロアルキレンジビニルエーテルなどが含まれる。なお、パーフルオロアルキレンジビニルエーテルは、すべての水素原子がフッ素原子で置換された2つのビニルエーテル基が、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の2価のパーフルオロアルキレン基で結合された構造を有する化合物とすることができる。
【0037】
フッ化ビニリデン共重合体(a)中の架橋性モノマーに由来する構成単位の含有量は、フッ化ビニリデン共重合体(a)を構成する全構造単位の合計量に対して5質量%未満であることが好ましく、0.5〜4質量%であることがより好ましく、1.2〜3質量%あることがさらに好ましい。
【0038】
接着性樹脂の形態は、特に制限されないが、例えば水を分散媒とした際に、多孔質の接着性組成物層を形成する観点などから、粒子状であることが好ましい。接着性樹脂粒子の形態は、特に制限されないが、前述のi)とii)の要件(NMP溶液の濁度、アセトン溶液の溶液粘度(A)、および粘度比(A)/(B))を満たしやすくする観点から、(1)フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部(またはシェル部)と、それとは異なる(a)よりもフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が少ないフッ化ビニリデン重合体(b)からなるシェル部(またはコア部)とを含むコアシェル型粒子、または(2)フッ化ビニリデン共重合体(a)からなる傾斜型粒子であることが好ましい。
【0039】
例えば、(1)では、コアを重合後に、シェルを重合するために必要なモノマーなどを再度仕込み、再びコア粒子の外側にシェルを重合してコアシェル粒子を得るのに対し、(2)では、一度の重合でポリマー構造を制御して樹脂組成に偏りをつけて、コアシェル型粒子と同等の物性をもつ接着性樹脂を得ることが可能である。
【0040】
(1)コアシェル型粒子について
フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子は、フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部と、それとは異なるフッ化ビニリデン重合体(b)からなるシェル部とを有していてもよいし;フッ化ビニリデン重合体(b)からなるコア部と、フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるシェル部とを有していてもよい。中でも、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が多いと、粘性が増す傾向があることから、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が少ないフッ化ビニリデン重合体(b)がシェル部を構成することが、塗工時および捲回時の安定性を良好にする観点から好ましい。すなわち、フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部と、それとは異なるフッ化ビニリデン重合体(b)からなるシェル部とを有するコアシェル型粒子が好ましい。
【0041】
コア部を構成するフッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構成単位とフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位との合計量を100質量%としたとき、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構成単位の含有量は、20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることがさらに好ましい。フッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量が一定以上であると、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子のNMP溶液の溶液粘度(B)を高めやすく、アセトン溶液の溶液粘度(A)を低くしやすい。それにより、粘度比(A)/(B)を一定以下としやすく、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子の弾性率を高めやすい。一方、フッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量が一定以下であると、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子のNMP溶液の濁度やアセトン溶液の溶液粘度(A)が低くなりすぎない。それにより、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子の電解液に対する溶解性が高くなりすぎない。
【0042】
また、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構成単位とフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位との合計量を100質量%としたとき、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位の含有量は、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることがさらに好ましい。フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が一定以上であると、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む粒子のNMP溶液の濁度やアセトン溶液粘度(A)を高めやすい。それにより、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子の電解液に対する溶解性を低くしやすい。一方、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が一定以下であると、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子のNMP溶液の溶液粘度(B)が低くなりすぎず、アセトン溶液の溶液粘度(A)が高くなりすぎないため、粘度比(A)/(B)を一定以下としやすい。それにより、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子の弾性率が低くなりすぎない。
【0043】
特に、コアシェル型粒子の電解液に対する溶解性を一層低くする観点では、フッ化ビニリデン共重合体(a)は架橋されていてもよい。また、コアシェル型粒子の弾性率を損なわないようにする観点では、フッ化ビニリデン共重合体(a)は架橋されていなくてもよい。
【0044】
シェル部を構成するフッ化ビニリデン重合体(b)は、少なくともフッ化ビニリデンに由来する構造単位を含む。
【0045】
フッ化ビニリデン重合体(b)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量は、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量よりも多いことが好ましい。具体的には、フッ化ビニリデン重合体(b)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量は、フッ化ビニリデン重合体(b)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位と、後述する任意のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位の合計量を100質量%としたとき、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。フッ化ビニリデン重合体(b)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量が80質量%以上であると、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子のNMP溶液の溶液粘度(B)は高くなりやすく、アセトン溶液の溶液粘度(A)は低くなりやすいため、粘度比(A)/(B)を一定以下としやすい。それにより、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子の弾性率を高めやすい。
【0046】
フッ化ビニリデン重合体(b)は、必要に応じてフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位や架橋性モノマーに由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。フッ化ビニリデン重合体(b)におけるフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体や架橋性モノマーは、前述のフッ化ビニリデン共重合体(a)におけるフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体や架橋性モノマーとそれぞれ同様のものを用いることができる。
【0047】
特にフッ化ビニリデン重合体(b)の電解液に対する溶解性を一層低くする観点では、フッ化ビニリデン重合体(b)は、架橋されていてもよい、すなわち架橋性モノマーに由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。例えば、コア部を構成するフッ化ビニリデン共重合体(a)中の、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が少ない場合(例えば50質量%未満)や、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む粒子のアセトン溶液の溶液粘度(A)が低めである場合(例えば600mPa・s未満)、コア部のみでは、NMP溶液の濁度が高くなりにくく、電解液に対する溶解性が十分には低くならないことがある。そのような場合、シェル部を構成するフッ化ビニリデン重合体(b)は、架橋されていることが好ましい。
【0048】
これとは逆に、コア部を構成するフッ化ビニリデン共重合体(a)中の、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が多い場合(例えば50質量%以上)や、フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む粒子の溶液粘度(A)が高めである場合(例えば600mPa・s以上)、コア部のみでも、NMP溶液の濁度を高めやすく、電解液に対する溶解性が十分に低くなりやすい。そのような場合、シェル部を構成するフッ化ビニリデン重合体(b)は、架橋されていなくてもよい。
【0049】
また、無機微粒子を含む接着
性組成物層を形成する際に、無機微粒子と接着性樹脂との間の分散安定性を高めて、塗布性を向上させる観点では、フッ化ビニリデン重合体(b)は、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体として水素結合性の極性官能基を有するモノマー(好ましくはカルボキシル基含有モノマー)に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0050】
コアシェル型粒子に含まれる全てのモノマー量を100質量%としたとき、フッ化ビニリデンの含有量は97質量%以下であることが好ましく、50〜97質量%であることがより好ましく、60〜95質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部と、フッ化ビニリデン重合体(b)からなるシェル部とを有するコアシェル型粒子において、コア部とシェル部の質量比は、特に制限されないが、例えばコア部/シェル部=40/60〜99/1であることが好ましく、50/50〜90/10であることがより好ましく、50/50〜70/30であることがさらに好ましい。コア部の質量比が高いと、電解液に対する溶解性を十分に低くしやすく、シェル部の質量比が高いと、弾性率を十分に高めやすい。そのようなコアシェル型粒子から得られる接着
性組成物層は、高温下でも電極との高い接着性を良好に維持しやすく、かつ加熱または熱プレス工程でのプロセスウィンドウも一層広げやすい。
【0052】
(2)傾斜型粒子について
フッ化ビニリデン共重合体(a)からなる傾斜型粒子は、粒子の中心部から表層部にわたって、組成の偏りを有していることが好ましい。
【0053】
例えば、粒子の外側にフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が少ない傾斜型粒子(粒子の外側にフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量が多い傾斜型粒子)は、ポリマーの構造を制御することによって得ることができる。粒子内部はフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の量を多くし、粒子外側はフッ化ビニリデンの量を多くすることによって、(1)のコアシェル型粒子の場合と同様に塗工時や捲回時の安定性を向上させることが可能である。このような傾斜型粒子は、例えば重合時にフッ化ビニリデンの一部と、フッ化ビニリデンの一部よりも多いフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体を仕込み、重合を開始した後、圧力が低下した後にフッ化ビニリデンの残部を後添加して重合させることによって得ることができる。
【0054】
一方、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量がコアシェル型粒子と比べて比較的少ない場合、塗工時や捲回時の安定性に影響を与えるような粘性は発現しにくいため、粒子内部にフッ化ビニリデンに由来する構造単位が偏在し、表層部にフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造や分岐構造、架橋構造が偏在していてもよい。それにより、傾斜型粒子の表層部の電解液に対する溶解性を低くしつつ、中心部の弾性率を高くすることができる。そのような傾斜型粒子は、例えば表層部に架橋構造を偏在させる場合、重合時に、フッ化ビニリデンの一部、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体を重合させながら、圧力が低下した後に、架橋性モノマーとフッ化ビニリデンの残部とを圧力を一定に保ちながら後添加して重合させることによって得ることができる。
【0055】
フッ化ビニリデン共重合体(a)からなる傾斜型粒子において、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構成単位とフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位との合計量を100質量%としたとき、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構成単位の含有量は、50〜99質量%であることが好ましく、60〜95質量%であることがより好ましく、70〜95質量%であることがさらに好ましい。また、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構成単位とフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位との合計量を100質量%としたとき、フッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構成単位の含有量は、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
1−2.接着性樹脂の物性
(アセトン溶液物性)
(1)アセトン溶液の作製
粉体化した接着性樹脂を、アセトン溶液中の濃度が10質量%になるようにアセトンに溶解させる。具体的には、アセトンを量り取ったサンプル瓶の中で、接着性樹脂を常温にて分散させた後、45℃に設定したウォーターバスに入れて約2時間撹拌し、接着性樹脂の一部または全部が溶解した、アセトン溶液を調製する。アセトン溶液の濁度および溶液粘度は、調製したアセトン溶液を室温に放冷した後、直ちに測定されることが好ましい。
【0057】
(2)濁度
上記調製したアセトン溶液の濁度は、80以下であることが好ましく、1〜60であることがより好ましく、2〜55であることがさらに好ましい。濁度が80以下であると、接着性樹脂の電解液に対する溶解性が低くなりやすい。
【0058】
溶液の濁度は、濁度計(曇り度計)で測定することができる。具体的には、アセトンを線角型セル(サイズ10×36×55mm)に高さ4cm以上4.5cm未満になるように入れ、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)の測定部に入れた後、室温20±2℃、湿度50±5%、光源D65・C、測定方法3(JIS K7136に準じた測定方法)の条件で標準合わせを行う。その後、接着性樹脂を溶解させたアセトン溶液を、セルに入れ、同様の条件で溶液の濁度を測定する。
【0059】
(3)溶液粘度(A)
上記調製したアセトン溶液の溶液粘度(A)は、350〜20000mPa・sであることが好ましい。溶液粘度(A)が350mPa・s以上であると、接着性樹脂の分子量(分岐量)が多いため、接着性樹脂の電解液に対する溶解性が低くなりやすく、20000mPa・s以下であると、NMPに対する溶解性が低下し過ぎない。接着性樹脂の溶液粘度(A)は、これらの観点から、200〜10000mPa・sであることがより好ましく、500〜6200mPa・sであることがさらに好ましい。
【0060】
溶液の粘度は、E型粘度計で測定することができる。具体的には、溶液1.1mlを粘度計(東機産業株式会社製RE550型粘度計)の測定部に入れ、コーンロータ1°34’×R24、回転数10rpm、測定時間300秒、測定温度25℃で測定を行う。300秒経過時点での粘度を溶液粘度とする。
【0061】
(NMP溶液物性)
(1)NMP溶液の調製
粉体化した接着性樹脂を、NMP溶液中の濃度が5質量%になるように、NMP(N−メチルピロリドン)に加え、一部または全部を溶解させる。具体的には、NMPを計量したサンプル瓶に、接着性樹脂を入れ、室温で分散させた後、溶液温度が50℃になるように昇温し、約5時間撹拌して接着性樹脂の一部または全部を溶解させて、NMP溶液を調製する。
【0062】
(2)濁度
上記調製したNMP溶液の濁度は、2〜95であることが好ましい。濁度が2以上であると、接着性樹脂の電解液に対する溶解性が低くなりやすい。濁度が95以下であると、接着性樹脂の融点が下がりすぎない。接着性樹脂のNMP溶液の濁度は、上記観点から、2〜75であることがより好ましく、2.5〜60であることがさらに好ましい。NMP溶液の濁度は、前述と同様の方法で測定することができる。なお、標準合わせは、セルにNMPを入れて行う。
【0063】
(3)溶液粘度(B)
上記調製したNMP溶液の溶液粘度(B)は、溶液粘度(A)と(B)の比(A)/(B)が後述する範囲となるような範囲であればよい。溶液粘度(B)は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0064】
NMP溶液の濁度を適度に高くし、かつアセトン溶液粘度(A)を高くするためには、例えば接着性樹脂を構成するフッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体(HFPやCTFE)や架橋性モノマーの含有量を多くしたり、分布を制御したり、フッ化ビニリデン共重合体(a)の分子量や分岐量を多くしたりすることが好ましい。
【0065】
(粘度比(A)/(B))
接着性樹脂の、アセトン溶液の溶液粘度(A)とNMP溶液の溶液粘度(B)の比(A)/(B)は、1以上15以下であることが好ましい。比(A)/(B)が1以上であると、NMP溶液の溶液粘度(B)は低くなりやすく、アセトン溶液の溶液粘度(A)は高くなりやすい、すなわちNMPに対する溶解性を低くしやすい(アセトンに対する溶解性を高くしやすい)。そのため、接着性樹脂の電解液に対する溶解性を低くしやすい。比(A)/(B)が15以下であると、NMP溶液の溶液粘度(B)は低すぎず、アセトン溶液の溶液粘度(A)は高すぎない、すなわちNMPに対する溶解性が低すぎない(アセトンに対する溶解性が高すぎない)ため、高い弾性率が得られやすい。比(A)/(B)は、1以上10以下であることがさらに好ましい。
【0066】
粘度比(A)/(B)を一定以下とするためには、例えば接着性樹脂を構成するフッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体(HFPやCTFE)や架橋性モノマーの含有量や分布、フッ化ビニリデン共重合体(a)の分子量、分岐量を一定以下としたり、接着性樹脂中のフッ化ビニリデン共重合体(a)の含有量を一定以下としたりすることが好ましい。
【0067】
(平均粒子径)
接着性樹脂粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、10nm〜1μmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、70〜300nmであることがさらに好ましい。
【0068】
接着性樹脂粒子の平均粒子径は、乳化重合によって接着性樹脂粒子を得た場合は、重合後、接着性樹脂粒子が液性媒体(たとえば水)に分散した状態で動的光散乱法の正則化解析によって測定することができる。具体的には、BECKMAN COULTER社製「DelsaMaxCORE」を使用し、JIS Z 8828に準拠して重合体粒子の粒子径を測定し、正則化解析によって得られる大小2つのピークのうち、大きいピークを平均粒子径とする。一方、懸濁重合によって接着性樹脂を得た場合は、粉体化したフッ化ビニリデン共重合体粒子3000個を撮影し、撮影された各粒子が円形であったと仮定した場合の粒子の粒径の平均値を平均粒径とする。
【0069】
(融点)
接着性樹脂の融点は、特に制限されないが、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることがさらに好ましい。
【0070】
接着性樹脂の融点は、以下の方法で測定することができる。すなわち、剥離剤を噴霧した2枚のアルミ箔の間に、縦5cm×横5cm×厚み150μmの鋳型と接着性樹脂約1gを挟み、200℃でプレスし、フィルムを得る。得られたフィルムの融点を、DSC(METTLER社製「DSC−1」)を用いてASTM d 3418に準拠して測定する。
【0071】
接着性樹脂の融点は、それに含まれるフッ化ビニリデン共重合体(a)のモノマー組成によって調整することができる。接着性樹脂の融点を高くするためには、例えばフッ化ビニリデン共重合体(a)中のフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量を多くすることが好ましい。
【0072】
(インヘレント粘度)
懸濁重合法で得られる接着性樹脂のインヘレント粘度(ηi)は、塗工性の観点から、0.50〜5.0dl/gであることが好ましく、1.0〜4.0dl/gであることがより好ましく、1.0〜3.5dl/gであることがさらに好ましい。
【0073】
インヘレント粘度(ηi)は、接着性樹脂4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミド(以下、単に「DMF」という)に溶解させた溶液の30℃における対数粘度として求めることができる。
【0074】
1−3.接着性樹脂の製造方法
接着性樹脂(フッ化ビニリデン共重合体(a)を含む樹脂)は、フッ化ビニリデンとそれと共重合可能な単量体とを、乳化重合法および懸濁重合法を含む公知の重合方法で重合させる工程を経て得ることができる。
【0075】
(乳化重合法)
乳化重合法では、前述の各モノマーが難溶の液性媒体、各モノマー、乳化剤、および必要に応じて連鎖移動剤を混合して得られる混合液に、さらに液性媒体に溶解性の重合開始剤を加えて、モノマーを重合させる。
【0076】
液性媒体は、各モノマーが難溶であればよく、例えば水であることが好ましい。
【0077】
乳化剤は、各モノマーによるミセルを液性媒体中に形成し、かつ、乳化重合法により合成される重合体を液性媒体中に安定に分散させることができるものであればよく、公知の界面活性剤から適宜選択して用いることができる。乳化剤は、フッ化ビニリデン共重合体の合成に従来から用いられている界面活性剤であればよく、たとえば、過フッ素化界面活性剤、部分フッ素化界面活性剤および非フッ素化界面活性剤などとすることができる。これらの界面活性剤のうち、パーフルオロアルキルスルホン酸およびその塩、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩、ならびに、フルオロカーボン鎖またはフルオロポリエーテル鎖を有するフッ素系界面活性が好ましく、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩がより好ましい。
【0078】
連鎖移動剤の例には、酢酸エチル、酢酸メチル、炭酸ジエチル、アセトン、エタノール、n−プロパノール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、プロピオン酸エチル、および四塩化炭素などが含まれる。
【0079】
重合開始剤は、液性媒体に溶解性の重合開始剤であり、例えば水溶性過酸化物、水溶性アゾ系化合物およびレドックス系開始剤などでありうる。水溶性過酸化物の例には、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウムなどが含まれる。水溶性アゾ系化合物の例には、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)および2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)などが含まれる。レドックス系開始剤の例には、アスコルビン酸−過酸化水素などが含まれる。これらのうち、重合開始剤は、水溶性過酸化物であることが好ましい。
【0080】
なお、乳化重合法は、ソープフリー乳化重合法またはミニエマルション重合法であってもよい。
【0081】
ソープフリー乳化重合法では、乳化剤として、分子中に重合性の二重結合をもち、かつ乳化剤としても作用する物質である、反応性乳化剤を用いることが好ましい。反応性乳化剤は、重合の初期には系中にミセルを形成するが、重合が進行するにつれ、モノマーとして重合反応に使用されて消費されるため、最終的に得られる反応系中には、遊離した状態ではほとんど存在しない。そのため、反応性乳化剤は、得られる重合体の粒子表面にブリードアウトしにくい。
【0082】
反応性乳化剤の例には、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウムおよびアルコキシポリエチレングリコールメタクリレートなどが含まれる。
【0083】
なお、反応性乳化剤なしでも各モノマーが液性媒体に分散する場合には、反応性乳化剤を用いずにソープフリー重合を行うことができる。
【0084】
ミニエマルション重合法では、超音波発振器などを用いて強いせん断力をかけてミセルをサブミクロンサイズまで微細化して、重合を行う。このとき、微細化されたミセルを安定化させるために、公知のハイドロホーブを混合液に添加する。ミニエマルション重合法では、典型的には、上記ミセルのそれぞれの内部でのみ重合反応が生じ、ミセルのそれぞれが重合体の微粒子となるため、得られる重合体の微粒子の粒径および粒径分布などを制御しやすい。
【0085】
(懸濁重合法)
懸濁重合法は、油溶性の重合開始剤を各モノマーに溶解させて得られるモノマー分散液を、懸濁剤、連鎖移動剤、安定剤および分散剤などを含む水中で機械的に攪拌しつつ加温することにより、モノマーを懸濁および分散させつつ、懸濁したモノマーによる液滴の中で重合反応を生じさせる。懸濁重合法では、典型的には、モノマーによる液滴のそれぞれの内部でのみ重合反応が生じ、モノマーによる液滴のそれぞれが重合体の微粒子となるため、得られる重合体の微粒子の粒径および粒径分布などを制御しやすい。
【0086】
重合開始剤の例には、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルヘプタフルオロプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(クロロフルオロアシル)パーオキサイド、ジ(ペルフルオロアシル)パーオキサイド、およびt−ブチルペルオキシピバレートなどが含まれる。
【0087】
懸濁剤の例には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、およびアクリル酸系重合体などが含まれる。
【0088】
連鎖移動剤は、前述と同様のものを用いることができる。
【0089】
次に、接着性樹脂粒子の製造方法を、各形態ごとに説明する。
【0090】
1−3−1.コアシェル型粒子の場合
フッ化ビニリデン共重合体(a)を含むコアシェル型粒子は、逐次重合法により得ることができる。例えば、フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部と、フッ化ビニリデン重合体(b)からなるシェル部とを有するコアシェル型粒子は、例えばフッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体とを共重合させて、フッ化ビニリデン共重合体(a)からなるコア部を形成する工程、および得られたコア部の周囲に、少なくともフッ化ビニリデンを重合させて、フッ化ビニリデン共重合体(b)からなるシェル部を形成する工程、を経て製造することができる。
【0091】
フッ化ビニリデン共重合体(a)やフッ化ビニリデン重合体(b)が、前述の架橋性モノマーに由来する構造単位をさらに含むときは、各工程の重合時にこれらのモノマーをさらに共重合させればよい。
【0092】
各工程の重合は、前述の乳化重合法または懸濁重合法などの公知の重合方法で行うことができる。
【0093】
1−3−2.傾斜型粒子の場合
フッ化ビニリデン共重合体(a)からなる傾斜型粒子は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体とを重合させる工程を経て得ることができる。重合は、前述と同様に、乳化重合法または懸濁重合法などの公知の重合方法で行うことができる。
【0094】
そして、前述のNMP溶液の濁度やアセトン溶液の溶液粘度(A)、粘度比(A)/(B)を満たすようにする観点から、粒子の中心部から表層部にわたって、組成や構造に偏りを付与することが好ましい。
【0095】
例えば、粒子内部ではフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量が多く、粒子表層部ではフッ化ビニリデンに由来する構造単位の含有量が多い粒子を得るためには、例えば重合時にフッ化ビニリデンの一部と、フッ化ビニリデンの一部よりも多いフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体を仕込み、重合を開始した後、圧力が低下した後にフッ化ビニリデンの残部を後添加して重合させることによって得ることができる。
【0096】
例えば、表層部に架橋構造が偏在した粒子を得るためには、重合時に、フッ化ビニリデンの一部、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体を重合缶に仕込み、重合を開始した後、圧力が低下した後に、圧力が一定になるように架橋性モノマーおよびフッ化ビニリデンの残部を複数回に分けて後添加(連続的に後添加する連続添加を含む)しながら、重合させることが好ましい(方法1)。
【0097】
フッ化ビニリデンの後添加は、重合を開始した後、圧力が低下した後に行うことが好ましい。具体的には、フッ化ビニリデンの後添加は、重合を開始した後、圧力が低下した後に行うことが好ましい。具体的には、フッ化ビニリデンの後添加は、反応器内の圧力が、初期の圧力に対して2%以上低下した時点で行うことが好ましく、15%以上低下した時点で行うことがより好ましい。
【0098】
なお、後添加するモノマーは、フッ化ビニリデンおよび架橋性モノマーのみであり、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体を実質的に含まない(例えば後添加する単量体の合計に対して1質量%以下、好ましくは0質量%)ことが好ましい。後添加するフッ化ビニリデンと前添加するフッ化ビニリデンの質量比は、後添加するフッ化ビニリデン:前添加するフッ化ビニリデン=1:1〜10:1(質量比)であることが好ましく、2.5:1〜7:1(質量比)であることがより好ましい。
【0099】
架橋性モノマーの配合量は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体の合計量に対して0.1〜4質量%であることが好ましく、1.2〜3.5質量%であることがより好ましい。フッ化ビリニデンの配合量は、フッ化ビリニデン共重合体(a)を構成する全モノマーの合計量に対して、15質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。
【0100】
なお、架橋性モノマーを用いない場合も、上記方法1と同様にすることができる。すなわち、粒子の組成や構造に偏りを付与する方法として、重合時に、フッ化ビニリデンの一部、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体を重合缶に仕込み、重合を開始した後、圧力が低下した後に、圧力が一定になるようにフッ化ビニリデンの残部を複数回に分けて後添加(連続的に後添加する連続添加を含む)しながら、重合させることが好ましい。後添加を行う具体的なタイミングや、後添加するフッ化ビニリデンと前添加するフッ化ビニリデンの質量比は、上記方法1と同様としうる。
【0101】
また、表層部に分岐構造が偏在した粒子を得るためには、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体とを重合させる工程において、連鎖移動剤の配合量を少なくする、具体的には、フッ化ビニリデンとフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体の合計量に対して少なくすることが好ましい(方法2)。連鎖移動剤の配合量を少なくすることで、得られるフッ化ビニリデン共重合体(a)の分子量(分岐量)を高くすることができる。それにより、得られる粒子は、NMP溶液の濁度を高めやすく、かつアセトン溶液粘度(A)を高めやすい。
【0102】
連鎖移動剤の配合量は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体の合計量に対して0.2質量%以下とすることが好ましく、0.15質量%以下とすることがより好ましく、0.08質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0103】
これらの方法1および2では、特にフッ化ビリニデンを多く含む環境下で重合を進行させることで、得られる粒子の表層部に架橋構造や分岐構造を形成することができる。
【0104】
また、接着性樹脂に組成や構造に偏りを付与する他の方法として、重合初期に、フッ化ビニリデンの一部と、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体とを、フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体がフッ化ビニリデンよりも多くなるように(過剰量となるように)仕込んだ後、重合が進行し、重合開始時よりも圧力が低下した段階で、フッ化ビニリデンの残部を添加して重合する方法(方法3)や;フッ化ビニリデン共重合体(a)’を含む接着性樹脂をアルカリ処理する方法(方法4)なども含まれる。
【0105】
例えば、方法3においても、後添加を行う具体的なタイミングや、後添加するフッ化ビニリデンと前添加するフッ化ビニリデンの質量比は、上記方法1と同様としうる。
【0106】
例えば、フッ化ビニリデン共重合体(a)’をアルカリ処理する方法(方法4)としては、具体的には、NMPにフッ化ビニリデン共重合体(a)’を、溶液中のポリマー濃度が5質量部になるように溶解させ(このときの濁度は2未満)、そこに水酸化リチウム(LiOH)の粉体を添加し、加熱下で撹拌する。それにより、フッ化ビニリデン共重合体(a)’を改質(例えば脱フッ酸)して、電解液に対する溶解性を低くすることができる。
【0107】
溶液中のLiOHの含有量は、フッ化ビニリデン共重合体(a)100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
【0108】
アルカリ処理時の加熱温度や撹拌時間は、得られるフッ化ビニリデン共重合体(a)’の、電解液に対する溶解性を低くしうる程度であればよい。加熱温度は、例えば45〜60℃としうる。撹拌時間は、例えば30分〜12時間としうる。
【0109】
1−4.その他の成分
接着
性組成物は、接着性樹脂以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、水溶性高分子や無機フィラー、有機フィラー、溶媒(分散媒および各種添加剤が含まれる。
【0110】
水溶性高分子は、接着
性組成物層とセパレータとの接着性、接着
性組成物層と電極との接着性を高めうる。水溶性高分子は、接着性樹脂や、電極、セパレータに対して接着性を有する高分子であることが好ましい。
【0111】
水溶性高分子の例には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース化合物;上記セルロース化合物のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)が含まれる。中でも、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)が長期にわたる電池使用時の観点から好ましい。
【0112】
水溶性高分子の含有量は、接着
性組成物の全固形分を100質量部としたとき、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜15質量部であることがより好ましい。
【0113】
無機フィラーは、得られる電池が、セパレータや、接着性樹脂が溶融するような高温に晒された場合であっても、短絡が発生するのを防止し、電池の安全性を高めうる。
【0114】
そのような無機フィラーの例には、二酸化ケイ素(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、二酸化チタン(TiO
2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)などの酸化物;水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)
2)水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)などの水酸化物;炭酸カルシウム(CaCO
3)などの炭酸塩;硫酸バリウムなどの硫酸塩;窒化物、粘土鉱物などが含まれる。無機フィラーは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。中でも、電池の安全性、塗液安定性の観点から、アルミナ、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛であることが好ましい。
【0115】
無機フィラーの含有量は、接着
性組成物の全固形分を100質量部としたとき、0.01〜99質量部であることが好ましく、50〜95質量部であることがより好ましい。
【0116】
無機フィラーの平均粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。平均粒子径は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0117】
無機フィラーの例には、高純度アルミナ粒子として市販されているAKP3000(住友化学製)が含まれる。
【0118】
溶媒の例には、水やNMPが含まれる。溶媒の含有量は、塗布性が良好となる程度であればよく、特に制限されないが、接着
性組成物の全質量を100質量部としたとき、30〜99質量部であることが好ましく、35〜98質量部であることがより好ましい。
【0119】
2.セパレータ構造体
本発明のセパレータ構造体は、セパレータと、その少なくとも一方の表面に設けられた接着
性組成物層とを有する。
【0120】
2−1.セパレータ
セパレータの材質は、特に限定されないが、その例には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;芳香族ポリアミド樹脂;ポリエーテルイミドなどのポリイミド系樹脂;ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、セラミックス等、およびこれらの混合物からなる単層または多層の多孔膜が含まれる。中でも、シャットダウン機能やメルトダウン機能に優れる観点などから、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜が好ましい。
【0121】
ポリオレフィン樹脂の多孔膜の例には、セルガード(登録商標、ポリポア株式会社製)として市販されている、単層ポリプロピレンセパレータ、単層ポリエチレンセパレータ、およびポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータが含まれる。
【0122】
2−2.接着
性組成物層
接着
性組成物層は、セパレータの少なくとも一方の表面に設けられている。接着
性組成物層は、少なくとも前述の接着
性組成物を用いて得られる層であり、必要に応じて他の成分をさらに含んでもよい。
【0123】
接着
性組成物層の厚みは、セパレータと電極との間の接着性を良好に維持できる程度であればよく、特に制限されないが、例えば0.5〜25μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0124】
接着
性組成物層は、セパレータ上に、前述の接着
性組成物を塗布した後、乾燥させる工程と、必要に応じて多孔化する工程とを経て形成することができる。塗布方法は、特に限定されず、バーコーター、ダイコーター、およびコンマコーターで塗布する方法などでありうる。
【0125】
乾燥は、塗膜中の溶媒を十分に除去できる程度に行うことが好ましい。例えば、乾燥温度は、40〜180℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましい。乾燥時間は、1分〜15時間でありうる。
【0126】
また、乾燥を行った後、必要に応じて熱処理をさらに行ってもよい。例えば、接着
性組成物層が、他の成分として水溶性高分子を含まない場合は、熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、40〜180℃であることが好ましく、50〜170℃であることがより好ましい。熱処理時間は、例えば、1分〜5時間でありうる。
【0127】
3.電極構造体
電極構造体は、電極と、その表面に設けられた接着
性組成物層とを有する。
【0128】
3−1.電極
電極は、集電体と、その表面に設けられた電極活物質層とを有する。電極は、正極であってもよいし、負極であってもよい。
【0129】
(集電体)
負極用の集電体の例には、銅が含まれる。銅は、金属銅でもよいが、他の媒体の表面に銅箔を施したものでもよい。
【0130】
正極用の集電体の例には、アルミニウムが含まれる。アルミニウムは、他の媒体の表面にアルミニウム箔を施したものでもよいし、網状のアルミニウムを付加したものでもよい。
【0131】
負極または正極用の集電体は、厚みが5〜100μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
【0132】
(電極活物質層)
電極活物質層は、電極活物質と、結着剤とを含み、必要に応じて導電助剤をさらに含みうる。
【0133】
正極用の電極活物質の例には、リチウム系正極活物質が含まれる。リチウム系正極活物質の例には、LiCoO
2、LiNi
xCo
1−xO
2(0<x≦1)などの一般式LiMY
2(Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、およびVなどの遷移金属のうち一種または二種以上、Yは、OおよびSなどのカルコゲン元素)で表される複合金属カルコゲン化合物、LiMn
2O
4などのスピネル構造をとる複合金属酸化物、およびLiFePO
4などのオリビン型リチウム化合物が含まれる。なお、正極活物質は、市販品であってもよい。
【0134】
電解液の分解を抑制して、初期の不可逆容量の増加を抑制する観点から、正極用の活物質の比表面積は、0.05〜50m
2/gであることが好ましく、0.1〜30m
2/gであることがより好ましい。
【0135】
負極用の活物質の例には、従来から負極用の活物質として用いられている炭素材料、金属材料、合金材料および金属酸化物などが含まれる。これらのうち、安定した電池特性が得られやすい観点からは、炭素材料が好ましく、人造黒鉛、天然黒鉛、難黒鉛化炭素および易黒鉛化炭素などがより好ましい。人造黒鉛の例には、有機材料を炭素化し、さらに高温で熱処理を行い、粉砕および分級することにより得られる人造黒鉛が含まれる。難黒鉛化炭素の例には、石油ピッチ由来の材料を1000〜1500℃で焼成することにより得られる難黒鉛化炭素が含まれる。なお、負極活物質は、市販品であってもよい。
【0136】
電解液の分解を抑制して、初期の不可逆容量の増加を抑制する観点から、負極用の活物質の比表面積は、0.3〜10m
2/gであることが好ましく、0.6〜6m
2/gであることがより好ましい。
【0137】
結着剤は、電極活物質同士、電極活物質と導電助剤、または電極活物質と集電体との間の結着性を高めることができる。結着剤は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池で広く用いられているものを用いることができる。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(フッ化ビニリデン‐マレイン酸モノメチルエステル共重合体などのフッ化ビニリデン(共)重合体を含む)、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂や、スチレンブタジエンゴムラテックス(SBR)、セルロース化合物(カルボキシメチルセルロースなど)、ならびにポリアクリロニトリル(PAN)などが含まれる。中でも、正極用の結着剤の好ましい例には、フッ化ビニリデン(共)重合体が含まれ、負極用の結着剤の例には、スチレンブタジエンゴムラテックス(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0138】
結着剤の含有量は、電極活物質および結着剤の合計量を100質量部としたとき、0.2〜15質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
【0139】
導電助剤は、電極活物質同士、または電極活物質と集電体との間の導電性をより高めることができる。導電助剤の例には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびカーボンファイバーなどが含まれる。
【0140】
導電助剤の含有量は、電極活物質と結着剤の合計量を100質量部としたとき、0.5〜15質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0141】
電極活物質層は、集電体上に、合剤を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0142】
合剤は、前述の電極活物質、結着剤、必要に応じて導電助剤および非水系溶媒を、均一なスラリーとなるように混合したものである。非水系溶媒の例には、アセトン、ジメチルスルホキシド、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、アセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートなどが含まれる。
【0143】
塗布方法は、特に限定されないが、バーコーター、ダイコーター、およびコンマコーターで塗布する方法などを採用することができる。塗布後の乾燥は、通常、50〜150℃で1〜300分行う。乾燥は、異なる温度で複数回行ってもよい。乾燥の際には、圧力を印加してもよいが、通常は、大気圧下または減圧下で乾燥を行う。乾燥後に熱処理を行ってもよい。熱処理は、通常、100〜300℃で10秒〜300分行う。
【0144】
塗布および乾燥後、さらにプレス処理を行ってもよい。プレス処理は、通常、1〜200MPaで行われる。プレス処理を行うことにより、電極密度を向上させることができる。
【0145】
正極用の電極活物質層の厚みは、40〜500μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。負極用の電極活物質層の厚みは、20〜400μmであることが好ましく、40〜300μmであることがより好ましい。
【0146】
電極活物質層の目付量は、20〜700g/m
2であることが好ましく、30〜500g/m
2であることがより好ましい。
【0147】
3−2.接着
性組成物層
接着
性組成物層は、前述の接着
性組成物を用いて得られる層であり、電極上に設けられている。接着
性組成物層の構成および形成方法は、前述の接着
性組成物層の構成および形成方法と同様である。
【0148】
4.非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、それらの間に配置されたセパレータと、セパレータと正極との間およびセパレータと負極との間の少なくとも一方に設けられた接着
性組成物層とを有する。
【0149】
接着
性組成物層は、前述の接着
性組成
物から得られる層であり、セパレータと正極との間およびセパレータと負極との間の少なくとも一方に設けられている。中でも、接着
性組成物層は、セパレータと負極との間に設けられていることが好ましい。
【0150】
そのような非水電解質二次電池は、正極と、負極と、それらの間に配置されたセパレータと、セパレータと負極との間およびセパレータと正極との間の少なくとも一方に設けられた、前述の接着
性組成物層とを有する積層物を得る工程と、得られた積層物を加熱または熱プレスする工程と、を経て製造することができる。
【0151】
前述の積層物は、任意の方法で製造することができる。例えば、正極、負極、および前述のセパレータ構造体を積層して、積層物を得てもよいし;接着
性組成物層を有する負極構造体(または接着
性組成物層を有する正極構造体)と、正極(または負極)と、セパレータとを積層して、積層物を得てもよい。
【0152】
得られた積層物の加熱または熱プレスは、積層物に電解液を含浸させる工程の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。接着
性組成物層への電解液の含浸を促進し、電池にしたときの接着
性組成物層による内部抵抗の増大を少なくする観点、加熱または熱プレス時の温度を低下させる観点では、加熱または熱プレスは、得られた積層物に電解液を含浸させた後に行うことが好ましい。
【0153】
すなわち、本発明の非水電解質二次電池は、ラミネートセルを一例として挙げると、1)前述の積層物を得る工程、2)得られた積層物を(袋状の)ラミネートセルに入れ、電解液を含浸させた後、ラミネートセルを封止する工程、3)封止したラミネートセルを加熱または熱プレスして、電極とセパレータとを、接着
性組成物層を介して接着させる工程、を経て得ることができる。
【0154】
加熱または熱プレス温度は、セパレータと電極とを接着させることができる程度であればよく、特に制限されないが、例えば40〜180℃であることが好ましく、60〜110℃であることがより好ましい。このように、本発明の接着
性組成物を用いて得られる接着
性組成物層は、広い温度域(例えば20〜50℃)でセパレータと電極との間の接着性が得られやすく、広いプロセスウィンドウを有する。加熱または熱プレス時間は、例えば20秒〜30分である。また、熱プレスの圧力は、例えば1〜30MPaである。
【0155】
このように、加熱または熱プレス工程では、接着
性組成物層は、電解液の存在下で高温環境に晒される。そのような高温下であっても、本発明の接着
性組成物を用いて得られる接着
性組成物層は、一定温度以上においても電解液に対して溶解しにくく、かつ高い弾性率を有する。それにより、セパレータと電極との高い接着性を維持できるだけでなく、加熱または熱プレス温度域(プロセスウィンドウ)を広くすることができため、電池の不良率を低減することができる。
【0156】
特に、結着剤として、フッ化ビニリデン重合体を含むことが多い正極と比べて、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂を含むことが多い負極は、フッ化ビニリデン重合体を含む接着
性組成物層を介して、セパレータと良好に接着させることは難しい。そのような場合でも、本発明の接着
性組成物を用いて得られる接着
性組成物層は、高温下におけるセパレータと負極との高い接着性を維持でき、かつプロセスウィンドウを広くすることができる。
【実施例】
【0157】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0158】
1.接着性樹脂粒子の調製および物性の測定
<重合体粒子1(コアシェル型粒子)の調製>
(1)コア部の重合
オートクレーブにイオン交換水333質量部、中性バッファとしてピロリン酸ナトリウム0.53質量部を入れ、30分間窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.3質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.125質量部、フッ化ビニリデン(VDF)20質量部、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)30質量部をモノマー用チャージポットに入れた。このモノマー混合物の一部27質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.07質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。反応開始後、圧力が2%以上降下したところで、残りのモノマー混合物23質量部を圧力が一定になるように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−1)からなるコア部を得た。得られたコア部の平均粒子径は、98nmであった。
【0159】
(2)シェル部の重合
予め、モノマーチャージ用ポットに、フッ化ビニリデン(VDF)50質量部、および酢酸エチル0.125質量部を計量し、モノマー混合物を準備した。上記のコア部乳化重合に続けて、80℃において、上記モノマー混合物を缶内圧力が維持されるように連続供給し、重合を行った。モノマー添加終了後、缶内圧力が2.5MPaに降圧したところで、シェル部の重合を完了し、フッ化ビニリデン重合体(b−1)からなるシェル部を形成した。得られたコアシェル型の重合体粒子1(接着性樹脂粒子)の平均粒子径は135nmであった。
【0160】
<重合体粒子2(コアシェル型粒子)の調製>
(1)コア部の重合
オートクレーブに、イオン交換水330質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、フッ化ビニリデン(VDF)10質量部、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)30質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.1質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は2.6MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、架橋性モノマーとしてパーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)を1質量部投入し、その後、フッ化ビニリデン(VDF)60質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−2)からなるコア部の粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は158nmであった。
【0161】
(2)シェル部の重合
オートクレーブにイオン交換水700質量部、リン酸水素二ナトリウム0.5質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、水分散したコア部の粒子100質量部、PFOA0.5質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、フッ化ビニリデン(VDF)100質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5wt%APS水溶液をAPS換算で0.1質量部に相当する量を入れて重合を開始した。この時の缶内圧力は4.1MPaであった。反応開始後、1.5MPaまで圧力が降下したところでシェル部の重合を完了とし、フッ化ビニリデン重合体(b−1)からなるシェル部を形成し、コアシェル型の重合体粒子2を得た。得られた粒子の平均粒子径は199nmであった。
【0162】
<重合体粒子3(コアシェル型粒子)の調製>
(1)コア部の重合
オートクレーブにイオン交換水333質量部、中性バッファとしてピロリン酸ナトリウム0.53質量部を入れ、30分間窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.33質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.25質量部、フッ化ビニリデン(VDF)29質量部、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)21質量部、架橋性モノマーとしてパーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)0.5質量部をモノマー用チャージポットに入れた。このモノマー混合物の一部27質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.07質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。反応開始後、圧力が2%以上降下したところで、残りのモノマー混合物23質量部を圧力が一定になるように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン重合体(a−3)からなるコア部の乳化重合を終了した。得られたコア部の粒子の平均粒子径は、97nmであった。
【0163】
(2)シェル部の重合
予め、モノマーチャージ用ポットに、フッ化ビニリデン(VDF)50質量部、および酢酸エチル0.25質量部を計量し、モノマー混合物を準備した。上記のコア部乳化重合に続けて、80℃において、上記モノマー混合物を缶内圧力が3.2MPaに維持されるように連続供給し、重合を行った。モノマー添加終了後、缶内圧力が2.5MPaに降圧したところで、シェル部の重合を完了とし、フッ化ビニリデン重合体(b−2)からなるシェル部を形成し、コアシェル型の重合体粒子3を得た。得られた粒子の平均粒子径は132nmであった。
【0164】
<重合体粒子4(コアシェル型粒子)の調製>
(1)コア部の重合
オートクレーブにイオン交換水333質量部、中性バッファとしてピロリン酸ナトリウム0.53質量部を入れ、30分間窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.33質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.25質量部、フッ化ビニリデン(VDF)15質量部、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)35質量部をモノマー用チャージポットに入れた。このモノマー混合物の一部27質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。反応開始後、圧力が2%以上降下したところで、残りのモノマー混合物23質量部を圧力が一定に維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−4)からなるコア部の粒子を得た。得られたコア部の粒子の平均粒子径は94nmであった。
【0165】
(2)シェル部の重合
予め、モノマーチャージ用ポットに、フッ化ビニリデン(VDF)50質量部、および酢酸エチル0.25質量部を計量し、モノマー混合物を準備した。上記のコア部乳化重合に続けて、80℃において、上記モノマー混合物を缶内圧力が3.2MPaに維持されるように連続供給し、重合を行った。モノマー添加終了後、缶内圧力が2.5MPaに降圧したところで、シェル部の重合を完了とし、フッ化ビニリデン重合体(b−1)からなるシェル部を形成し、コアシェル型の重合体粒子4を得た。得られた粒子の平均粒子径は153nmであった。
【0166】
<重合体粒子5(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブに、イオン交換水330質量部、リン酸水素二ナトリウム0.2質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。フッ化ビニリデン(VDF)18.0質量部とヘキサフルオロプロピレン(HFP)7.0質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は、2.6MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、フッ化ビニリデン(VDF)75.0質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−5)からなる重合体粒子5を得た。得られた粒子の平均粒子径は146nmであった。
【0167】
<重合体粒子6(傾斜型粒子)の調製>
(1)PVDF/HFP共重合体の調製
内容量14リットルのオートクレーブに、イオン交換水8271g、メチルセルロース(信越化学社製、SM−100)1.61g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)12.9g、フッ化ビニリデン(VDF)2936g、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)290gを仕込み、29℃で重合させた。重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分間熱処理した後、脱水、水洗し、さらに80℃で20時間乾燥して、フッ化ビニリデン共重合体(a−6)(フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)からなる重合体粒子6を得た。得られた粒子の平均粒子径は170μmであった。
【0168】
(2)水酸化リチウム処理−1
得られた共重合体(PVDF/HFP)を、NMPに5質量%入れ、室温で撹拌しながら50℃に昇温して、完全に溶解させた。これに、共重合体(PVDF/HFP)に対して1質量%の水酸化リチウムを加え、50℃で3時間撹拌した。この溶液を用いて、重合体粒子6のNMP溶液の濁度および粘度、剥離強度を測定した。
【0169】
(3)水酸化リチウム処理−2
得られた共重合体(PVDF/HFP)を、アセトンに10質量%入れ、室温で撹拌しながら分散させ、その後、ウォーターバス中で45℃に昇温して、溶解させた。これに、共重合体(PVDF/HFP)に対して1質量%の水酸化リチウムを加え、50℃で3時間撹拌した。この溶液を用いて、重合体粒子6のアセトン溶液の濁度および粘度を測定した。
【0170】
<重合体粒子7(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブにイオン交換水330質量部、中性バッファとしてリン酸水素二ナトリウム0.25質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.2質量部、フッ化ビニリデン(VDF)24.7質量部とヘキサフルオロプロピレン(HFP)10.0質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液をAPS換算で0.06質量部に相当する量を入れて重合を開始した。反応開始後、圧力が2%以上低下した後に、パーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)2質量部とフッ化ビニリデン(VDF)63.3質量部とを缶内圧力が一定になるように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−7)からなる重合体粒子7を得た。得られた粒子の平均粒子径は154nmであった。
【0171】
<重合体粒子8(傾斜型粒子)の調製>
内容量14リットルのオートクレーブに、イオン交換水8230g、メチルセルロース(信越化学社製、SM−100)0.96g、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート27.48g、フッ化ビニリデン(VDF)3146g、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)64gを仕込み、29℃で重合させた。重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分間熱処理した後、脱水、水洗し、さらに80℃で20時間乾燥させて、フッ化ビニリデン共重合体(c−1)(フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)からなる重合体粒子8を得た。得られた粒子の平均粒子径は173μmであった。
【0172】
<重合体粒子9(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブにイオン交換水330質量部、リン酸水素二ナトリウム0.2質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)0.7質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。フッ化ビニリデン(VDF)8.0質量部とヘキサフルオロプロピレン(HFP)47.0質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は、3.83MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、フッ化ビニリデン(VDF)45.0質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(c−2)からなる重合体粒子9を得た。得られた粒子の平均粒子径は187nmであった。
【0173】
<重合体粒子10(傾斜型粒子)の調製>
内容量14リットルのオートクレーブに、イオン交換水8271g、メチルセルロース(信越化学社製、SM−100)1.61g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート12.9g、フッ化ビニリデン2903g、ヘキサフルオロプロピレン323gを仕込み、29℃で重合した。重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分間熱処理した後、脱水、水洗し、さらに80℃で20時間乾燥して、フッ化ビニリデン共重合体(c−3)(フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)からなる重合体粒子10を得た。得られた粒子の平均粒子径は165μmであった。
【0174】
<重合体粒子11(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブに、イオン交換水330質量部、リン酸水素二ナトリウム0.2質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.25質量部、フッ化ビニリデン(VDF)23.7質量部とヘキサフルオロプロピレン(HFP)8質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は、3.3MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、パーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)を5質量部投入し、その後、フッ化ビニリデン(VDF)63.3質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(c−4)からなる重合体粒子11を得た。得られた粒子の平均粒子径は、152nmであった。
【0175】
<重合体粒子12(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブにイオン交換水330質量部、リン酸水素二ナトリウム0.2質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.25質量部、フッ化ビニリデン(VDF)28.7質量部とヘキサフルオロプロピレン(HFP)8.0質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液をAPS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は、3.83MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、フッ化ビニリデン(VDF)63.3質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(c−5)からなる重合体粒子12を得た。得られた粒子の平均粒子径は187nmであった。
【0176】
<重合体粒子13(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブにイオン交換水250質量部、中性バッファであるピロリン酸ナトリウム0.2質量部を入れ、30分間窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.5質量部、フッ化ビニリデン(VDF)80質量部、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)20質量部、パーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)1質量部をモノマー用チャージポットに入れた。このモノマー混合物の一部20質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.08質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。反応開始後、ただちに残りのモノマー混合物80質量部を圧力が一定に維持するように連続添加した。圧力が1.3MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(c−6)からなる重合体粒子13を得た。得られた粒子の平均粒子径は154nmであった。
【0177】
<重合体粒子14(コアシェル型粒子)の調製>
(1)コア部の重合
オートクレーブにイオン交換水333質量部、中性バッファであるピロリン酸ナトリウム0.53質量部を入れ、30分間窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.33質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.53質量部、フッ化ビニリデン(VDF)18質量部、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)12質量部、パーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)0.3質量部をモノマー用チャージポットに入れた。このモノマー混合物の一部27質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.07質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。反応開始後、ただちに残りのモノマー混合物3質量部を圧力が2.6MPaに維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−8)からなるコア部の乳化重合を終了した。得られた粒子の平均粒径は88nmであった。
【0178】
(2)シェル部の重合
予め、モノマーチャージ用ポットに、フッ化ビニリデン(VDF)70質量部、および酢酸エチル0.35質量部を計量し、モノマー混合物を準備した。上記のコア部乳化重合に続けて、80℃において、上記モノマー混合物を缶内圧力が3.2MPaに維持されるように連続供給し、重合を行った。モノマー添加終了後、缶内圧力が2.7MPaに降圧したところで、シェル部の重合を完了とした。そして、40℃まで冷却後、残存モノマーをパージし、フッ化ビニリデン重合体(b−2)からなるシェル部を形成し、コアシェル型の重合体粒子14を得た。得られた粒子の平均粒子径は133nmであった。
【0179】
<重合体粒子15(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブにイオン交換水330質量部、中性バッファとしてリン酸水素二ナトリウム0.2質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.25質量部、フッ化ビニリデン(VDF)27.7質量部とヘキサフルオロプロピレン(HFP)8.0質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5wt%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液をAPS換算で0.1質量部に相当する量を入れて重合を開始した。この時の缶内圧力は3.5MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、パーフルオロジビニルエーテル(PFDVE)を1質量部投入し、その後、フッ化ビニリデン63.3質量部を缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(c−7)からなる重合体粒子15を得た。得られた粒子の平均粒子径は98nmであった。
【0180】
<重合体粒子16(コアシェル型粒子)の調製>
(1)コア部の重合
オートクレーブに、イオン交換水330質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)1.0質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、フッ化ビニリデン(VDF)10質量部、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)30質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.1質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は2.5MPaであった。反応開始後、2.0MPaまで圧力が降下したところで、フッ化ビニリデン(VDF)60質量部を、缶内圧力が2.0MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−9)からなるコア部の粒子を得た。得られた粒子の平均粒子径は160nmであった。
【0181】
(2)シェル部の重合
オートクレーブにイオン交換水700質量部、リン酸水素二ナトリウム0.5質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、水分散したコア部の粒子100質量部、PFOA0.5質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.05質量部、フッ化ビニリデン(VDF)100質量部を上記オートクレーブ中に一括添加した。撹拌下で80℃に昇温後、5wt%APS水溶液をAPS換算で0.1質量部に相当する量を入れて重合を開始した。この時の缶内圧力は4.0MPaであった。反応開始後、1.5MPaまで圧力が降下したところでシェル部の重合を完了とし、フッ化ビニリデン共重合体(b−1)からなるシェル部を形成し、コアシェル型の重合体粒子16を得た。得られた粒子の平均粒子径は203nmであった。
【0182】
<重合体粒子17(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブに、イオン交換水330質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)0.7質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.1質量部、フッ化ビニリデン(VDF)14.7質量部、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)22質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は3.7MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、フッ化ビニリデン(VDF)63.3質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−10)からなる重合体粒子17を得た。得られた粒子の平均粒子径は175nmであった。
【0183】
<重合体粒子18(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブに、イオン交換水330質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)0.7質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.1質量部、フッ化ビニリデン(VDF)9.7質量部、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)27質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は3.7MPaであった。反応開始後、2.5MPaまで圧力が降下したところで、フッ化ビニリデン(VDF)63.3質量部を、缶内圧力が2.5MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(a−11)からなる重合体粒子18を得た。得られた粒子の平均粒子径は183nmであった。
【0184】
<重合体粒子19(傾斜型粒子)の調製>
オートクレーブに、イオン交換水330質量部を入れ、30分間の窒素バブリングによって脱気を行った。次に、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩(PFOA)0.7質量部を仕込み、4.5MPaまで加圧して窒素置換を3回行った。酢酸エチル0.1質量部、フッ化ビニリデン(VDF)9.5質量部、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)27.3質量部を、上記オートクレーブ中に一括添加した。これを撹拌しながら、80℃に昇温後、5質量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液を、APS換算で0.06質量部に相当する量を入れて、重合を開始した。この時の缶内圧力は2.6MPaであった。反応開始後ただちに、フッ化ビニリデン(VDF)63.4質量部を、缶内圧力が2.6MPaで維持するように連続添加した。圧力が1.5MPaまで低下したところで重合を終了し、フッ化ビニリデン共重合体(c−8)からなる重合体粒子19を得た。得られた粒子の平均粒子径は213nmであった。
【0185】
得られた重合体粒子1〜19の、融点、アセトンに溶解させたときの溶液粘度(A)、NMPに溶解させたときの濁度、NMPに溶解させたときの溶液粘度(B)、インヘレント粘度および平均粒子径を、以下の方法でそれぞれ測定した。
【0186】
〔融点〕
得られた重合体粒子の融点は、フィルムの形態で測定した。フィルムは、以下の方法で作製した。すなわち、剥離剤を噴霧した2枚のアルミ箔の間に、縦5cm×横5cm×厚み150μmの鋳型と重合体粒子約1gを挟み、200℃でプレスした。得られたフィルムを用いて、フッ化ビニリデン共重合体の融点を、DSC(METTLER社製「DSC−1」)を用いてASTM d 3418に準拠して測定した。
【0187】
〔アセトン溶液の溶液粘度(A)〕
(アセトン溶液の調製)
得られた重合体粒子を、アセトンに溶解させた。具体的には、重合体粒子を、溶液中のポリマー濃度が10質量%になるように添加し、常温でアセトン中に分散させた後、45℃のウォーターバス中で撹拌して、フッ化ビニリデン共重合体を溶解させた。
【0188】
(溶液粘度の測定)
得られたアセトン溶液の粘度を、E型粘度計で測定した。具体的には、アセトン溶液1.1mlを粘度計(東機産業株式会社製RE550型粘度計)の測定部に入れ、コーンロータ1°34’×R24、回転数10rpm、測定時間300秒、測定温度25℃で測定を行った。300秒経過時点での粘度をアセトン溶液粘度とした。
【0189】
〔NMP溶液の濁度〕
(NMP溶液の調製)
得られた重合体粒子を、NMPに溶解させた。具体的には、重合体粒子を、溶液中のポリマー濃度が5質量%になるように添加し、常温でNMP中に分散させた後、ホットスターラーを用いて50℃で撹拌して、当該重合体粒子を溶解させた。
【0190】
得られたNMP溶液の濁度を、濁度計(曇り度計)で測定した。具体的には、NMPを線角型セル(サイズ10×36×55mm)に高さ4cm以上4.5cm未満になるように入れ、濁度計(日本電色工業社製 NDH2000)の測定部に入れた後、室温20±2℃、湿度50±5%、光源D65・C、測定方法3(JIS K7136(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準じた測定方法)の条件で標準合わせを行った。その後、接着性樹脂を溶解させたNMP溶液をセルに入れ、同様の条件で溶液の濁度を測定した。
【0191】
〔NMP溶液の溶液粘度(B)〕
(NMP溶液の調製)
前述と同様の方法で、NMP溶液を得た。
【0192】
(溶液粘度の測定)
得られたNMP溶液の粘度を、前述のアセトン溶液の溶液粘度(A)の測定方法と同様の方法で測定した。
【0193】
〔インヘレント粘度〕
懸濁重合法で得られた重合体粒子(重合体粒子6、8および10)について、インヘレント粘度を測定した。具体的には、得られた重合体粒子80mgを、20mLのDMFに溶解させて、溶液を得た。得られた溶液とDMFのそれぞれについて、30℃の恒温槽内における粘度を、ウベローテ粘度計を用いて測定し、以下の式によりインヘレント粘度を算出した。
ηi=(1/C)・ln(η/η0)
ηは、測定された溶液の粘度、η0は、測定されたDMFの粘度、Cは、溶液におけるフッ化ビニリデン共重合体を含む粒子の濃度であり、ここでは0.4(g/dl)である。
【0194】
〔平均粒子径〕
乳化重合法で得られた重合体粒子(重合体粒子1〜5、7、9および11〜19)について、平均粒子径を動的光散乱法の正則化解析によって算出した。具体的には、BECKMAN COULTER社製「DelsaMaxCORE」を使用し、JIS Z 8828に準拠して重合体粒子の粒子径を測定し、正則化解析によって得られる大小2つのピークのうち、大きいピークを平均粒子径とした。
一方、懸濁重合によって重合体粒子を得た場合は、粉体化した重合体粒子3000個を撮影し、撮影された各粒子が円形であったと仮定した場合の粒子の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0195】
得られた重合体粒子1〜19の構成を表1に示し、物性の測定結果を表2に示す。なお、表2の「−」は、測定不可であることを示す。
【0196】
【表1】
【0197】
【表2】
【0198】
2.接着
性組成物の調製と評価
〔実施例1〜10、比較例1〜9〕
表1および2に示される重合体粒子(接着性樹脂粒子)を、溶液中のポリマー濃度が5質量%になるようにNMPに分散させて、接着
性組成物を得た。
【0199】
実施例1〜10および比較例1〜9で得られた接着
性組成物を用いて、接着
性組成物層を有するセパレータ構造体を作製し、セパレータと電極との間の剥離強度および接着可能温度域(プロセスウィンドウ)を、以下の方法で測定した。
【0200】
〔剥離強度の測定〕
(1)セパレータ構造体の作製
接着
性組成物を、セパレータ(ポリエチレン製単層セパレータ、厚み20μm、気孔度40%、透気度300sec、引張強度(MD)150MPa、(TD)130MPa、引張伸度(MD)50%、(TD)100%)の片面に、ウェット塗布量24μm(番手12)のワイヤーバーを用いて、塗布した後、23±2℃の凝固浴(水)に3分間浸漬した。その後、洗浄液(水)に1分間浸漬し、70℃で30分間、窒素下で乾燥させた。さらに、60℃で3時間、真空中で熱処理して、厚み2μmの接着
性組成物層を有するセパレータ構造体を得た。
【0201】
(2)負極の作製
負極活物質としてBTR918(改質天然黒鉛 BTR製)95質量部、導電助剤(SuperPTIMCAL製)2質量部、結着剤としてSBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックス(BM−400日本ゼオン製)2質量部、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)(セロゲン4H 第一工業製薬製)1質量部に水を加えてスラリーを作製し、銅箔(厚さ10μm)に塗布した。塗布したスラリーを乾燥させた後、プレスし、150℃で3時間熱処理した。これにより、電極嵩密度が1.6g/cm
3、目付け量が60g/m
2の負極活物質層を形成し、負極を得た。
【0202】
(3)Alラミネートセルの作製
得られた負極を、2.5×5.0cmに切り出した。また、上記作製したセパレータを3.0×6.0cmに切り出した。得られた負極とセパレータとを積層し、Alラミネートフィルムの袋に入れた。Alラミネートフィルムの袋に入れた当該積層物に、電解液(エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(質量比)、LiPF
6:1.2M、VC:1質量%)を180μL注入し、浸み込ませた後、真空脱気して封止し、一晩静置した。
【0203】
(4)熱プレス
得られたAlラミネートセルを熱プレスして、セパレータ上の接着
性組成物層と負極とを熱融着させて、剥離強度測定用サンプルを得た。具体的には、得られたAlラミネートセルを、1分間予熱した後、50℃で2分間、面圧約4MPaで熱プレスして、以下の方法で剥離強度を測定した。
【0204】
得られた剥離強度測定用サンプルから、電極とセパレータの積層物を取り出した。得られた積層物の負極を固定し、引張試験機(ORIENTEC社製「STA−1150 UNIVERSAL TESTING MACHINE」)を使用し、ヘッド速度200mm/分で、180°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
そして、熱プレス温度を50〜110℃の範囲で変えて、同様の測定を繰り返した。具体的には、各熱プレス温度ごとに3つのサンプルを準備して剥離強度を測定し、それらの平均値を「各熱プレス温度での剥離強度」とした。そして、熱プレス温度を50〜110℃の範囲で変えて同様の測定を繰り返したときの、「各熱プレス温度での剥離強度」の最大値を「剥離強度」とした。
【0205】
〔接着可能温度域の測定〕
剥離強度測定用サンプルの作製と同様にして、Alラミネートセルを作製した。得られたAlラミネートセルを、任意の温度で1分間の余熱した後、2分間、面圧約4MPaで熱プレスして、セパレータ上の接着
性組成物層と負極とを熱融着させて、剥離強度測定用サンプルを得た。得られた剥離強度測定用サンプルについて、前述と同様の方法で剥離強度を測定した。これらの一連の操作を、熱プレス温度を50〜110℃の範囲で段階的に高くしながら繰り返し行い、剥離強度が1.0gf/mm以上となる温度域(接着可能温度域、プロセスウィンドウ)を求めた。
【0206】
実施例1〜10および比較例1〜9の接着
性組成物の剥離強度および接着可能温度域の評価結果を表3に示す。
【0207】
【表3】
【0208】
NMP溶液の濁度、アセトン溶液の溶液濃度(A)および粘度比(A)/(B)が本願範囲を満たす重合体粒子(接着性樹脂粒子)を用いた実施例1〜10の接着
性組成物では、セパレータと負極との間の剥離強度が高く、接着可能温度域も20℃以上と広いことがわかる。
【0209】
これに対して、少なくともNMP溶液の濁度が低すぎる重合体微粒子を用いた比較例1、3、5〜7および9や、少なくともNMP溶液の濁度が高すぎる重合体微粒子を用いた比較例2の接着
性組成物、アセトン溶液の溶液粘度(A)が低い重合体粒子を用いた比較例4、アセトン溶液の溶液粘度(A)が低く、粘度比(A)/(B)が1未満である比較例8の接着
性組成物では、セパレータと負極との間の剥離強度が低く、接着可能温度域も10℃以下と狭いことがわかる。
【0210】
本出願は、2018年5月31日出願の特願2018−104685に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。