特許第6891444号(P6891444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891444
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】回路および楽器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20210607BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   H02J7/00 303C
   H04R3/00 310
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-204922(P2016-204922)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-68023(P2018-68023A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−094684(JP,A)
【文献】 特開2015−144524(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H1/00
H02J1/00−1/16
7/00−7/12
7/34−7/36
H03G1/00−3/34
H04R3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理を行う信号処理手段と、
前記信号処理手段から出力される信号を増幅する増幅手段と、
バッテリから前記信号処理手段への第1給電経路と、
前記バッテリから前記増幅手段への第2給電経路と、
前記第2給電経路に接続され、前記増幅手段へ給電する電力を補助する蓄電器と、
前記第2給電経路に介在し、前記蓄電器を充電する際に前記バッテリから引き出される入力電力を所定値に制限する電力制限手段と、を備え
前記電力制限手段は、演算部と、電圧フィードバック端子を有する電圧変換器とを有し、
前記演算部は、前記蓄電器の端子電圧に基づく電圧フィードバック信号と前記入力電力に基づく電力フィードバック信号とのうち高い電圧を示す方を前記電圧フィードバック端子に入力することを特徴とする回路。
【請求項2】
前記第2給電経路を流れる電流を検出する検出手段を有し、
前記入力電力は、前記バッテリから入力される入力電圧と前記検出手段により検出された電流とに基づいて算出されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記電圧変換器は、DC−DCコンバータであることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項4】
請求項に記載の回路と、
前記バッテリと、
前記増幅手段から出力される信号に基づいて駆動されるスピーカまたはトランスデューサの少なくとも何れか一方と、を備え、
前記信号処理手段はオーディオ信号に係わる信号処理を行うことを特徴とする楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅手段を備える回路および楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動作電力を補うためのコンデンサ(蓄電器)を備える装置が提案されている。特許文献1には、供給電力が制限されている、例えばUSB(Universal Serial Bus)供給線を介して給電される電力により蓄電されるコンデンサを備える装置が記載されている。
【0003】
装置に増幅手段(アンプ)を備える場合、増幅手段への入力信号の信号処理を行う信号処理手段を併設し、電池を、増幅手段の電源電圧を給電する電力源とするとともに信号処理部の電源電圧を給電する電力源とする場合がある。この場合、電池は、電力消費が大きく変動する可能性のある増幅手段と電力消費の変動が小さな信号処理手段との両者に電源電圧として電池電圧を供給する。増幅手段での増幅動作により電力消費が変動することで電池電圧が変動することが考えられる。その結果、電池電圧の変動は直接に信号処理部の電源電圧の変動となる。電源電圧の変動により信号処理部の動作が不安定となり、場合によっては動作停止を招来してしまうおそれもある。特許文献1には、例えば周辺機器への電力供給については記載されているものの、周辺機器ごとに動作に伴う電力消費の変動に差異があることについては記載がなく、電力消費の変動の大きな機器と電力消費の変動の小さな機器との間での電力の分配方法についての具体的な記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−503199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば、増幅手段を、楽器の音を増幅するのに用い、コンデンサで、増幅手段へ給電する電力を補助するとする。演奏形態に応じて音量感を充足させるためにコンプレッサを使用すると音質が低下する。コンプレッサを使用することなく音質を維持するには、瞬時に必要される大きな電力をコンデンサで賄うようにすればよいが、そのためにはコンデンサを大容量にする必要がある。しかしながら、大容量のコンデンサを充電する際に、仮に定電流回路にて電池から引き出す電力を制限したとすると、充電時間が長くなってしまう。また、損失の発生も抑える必要がある。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、バッテリによる、増幅手段給電用の蓄電器の充電時間を短縮することができる回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の回路は、信号処理を行う信号処理手段(203)と、前記信号処理手段から出力される信号を増幅する増幅手段(204)と、バッテリ(201)から前記信号処理手段への第1給電経路(R1)と、前記バッテリから前記増幅手段への第2給電経路(R2)と、前記第2給電経路に接続され、前記増幅手段へ給電する電力を補助する蓄電器(207)と、前記第2給電経路に介在し、前記蓄電器を充電する際に前記バッテリから引き出される入力電力(PIN)を所定値(PREF)に制限する電力制限手段(220)と、を備え、前記電力制限手段は、演算部と、電圧フィードバック端子を有する電圧変換器とを有し、前記演算部は、前記蓄電器の端子電圧に基づく電圧フィードバック信号と前記入力電力に基づく電力フィードバック信号とのうち高い電圧を示す方を前記電圧フィードバック端子に入力することを特徴とする。
【0008】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリによる、増幅手段給電用の蓄電器の充電時間を短縮することができる。また、蓄電器を、充電完了までは所定値以下で且つ蓄電器の端子電圧に応じた入力電力にて充電でき、充電完了すると蓄電器を定電圧状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る回路が適用される楽器のブロック図である。
図2】アルカリ乾電池の電気的特性を示す図である。
図3】電力制御部のハード構成のブロック図である。
図4】電力制御部の制御構成のブロック図である。
図5】コンデンサの充電開始からの入力電力、電力FB信号、出力電圧FB信号、FB電圧の変化を示すタイムチャートである。
図6】変形例の電力制御部、第2の実施の形態における電力制御部の各ハード構成のブロック図((a)、(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る回路が適用される楽器のブロック図である。本楽器1として、例えばギターが例示される。楽器1は、不図示のボディ、ネック、ナット、サドル、ブリッジ、および弦などの一般的なアコースティックギターが備える構成に加えて、図1に示す変換部10、処理部200、トランスデューサ30などを備えている。ボディは内部空間が形成されるように組み立てられた不図示の表板、裏板、側板を有し、表板にネックが連結されている。ボディにブリッジを介して配設されているサドルと、ネックに配設されているナットとの間に弦が張設されている。変換部10は例えば、ブリッジに対して表板を挟んで対向する、表板の内部空間側に配設されている。変換部10は例えば、ピエゾピックアップを有し、弦の振動を電気信号である信号S1に変換して処理部200に出力する。処理部200は入力された信号S1に対して所定の信号処理を行い、信号S3をトランスデューサ30へ出力する。トランスデューサ30は、例えば表板に配設されており、信号S3に基づいて表板に振動を加える。例えば演奏者により弦に振動が加えられると、弦の振動に基づいて共鳴するボディから生音が放射されるとともに、トランスデューサ30がボディに加える振動に基づいて共鳴するボディから効果音が放射される。
【0014】
処理部200は、バッテリとしての電源部201、DC−DCコンバータ202、DSP(Digital Signal Processor)203、アンプ204、電力制御部220、蓄電器の一例としてのコンデンサ(EDLC)207などを含む。電力制御部220は演算部221及びDC−DCコンバータ222(電圧変換器)を含む。電源部201は、処理部200の電源であり、直列接続された2個の電池201aにより構成されている。ここで、電池201aは例えば、単3サイズのアルカリ乾電池である。処理部200の電源を、商用電源に接続される直流電圧装置などの外部電源とする場合には、例えば外部電源に接続される電源ケーブルを楽器1に接続する必要が生じる。演奏者が観衆の前で演奏する場合には、楽器1に電源ケーブルが接続されていると、見た目が悪い。また、路上で演奏を行うストリートパフォーマンスにおいては、外部電源を用意するのが困難な場合がある。この点、電源部201を電池201aとすることにより、見た目を良くし、演奏場所の自由度を上げることができる。
【0015】
経路R1は電源部201からDC−DCコンバータ202を介してDSP203へ電力を供給する給電経路である。DC−DCコンバータ202は電源部201が出力する電圧V1(Vin)を昇圧し、電圧V2を出力する。DSP203は、電圧V2を電源電圧として動作する。また、DSP203には変換部10から出力される信号S1が入力される。DSP203はアナログ信号である信号S1をデジタル信号に変換し、例えば、残響を付加するための処理、音量を調整するための処理などの信号処理を行い、生成した信号をアナログ信号である信号S2に変換して出力する。DC−DCコンバータ202の電力変換効率は85〜90%程度である。経路R1に含まれるDC−DCコンバータをDC−DCコンバータ202の直列方向に1つだけとすることにより、経路R1における電力損失を最小限にすることができる。
【0016】
経路R2は、電源部201から電力制御部220を介してアンプ204へ電力を供給する給電経路である。電力制御部220の演算部221は電源部201の出力端子に接続され、電源部201から引き出される電力を予め設定された所定値以下となるように調節する。電力制御部220のDC−DCコンバータ222から出力される電圧はコンデンサ207の端子電圧VOUTとなる。電力制御部220の構成の詳細は図3図5で説明する。コンデンサ207は接地電圧とDC−DCコンバータ222の出力端子との間に接続されており、経路R2を流れる電力により充電される。また、コンデンサ207はアンプ204の近傍に配設されている。コンデンサ207は、例えば0.47Fの電気二重層キャパシタであり、その内部抵抗は極めて低い(低ESRである)。アンプ204は経路R2により電源部201から給電される電力およびコンデンサ207から放電される電力を電源として、入力される信号S2の電力を増幅し、信号S3をトランスデューサ30へ出力する。
【0017】
ここで、電池の電気的特性について図2を用いて説明する。電池は種類により内部抵抗などが異なるため、電池から引き出される電流の電流値に応じて、電池が出力する電池電圧が種類により異なる。電圧特性PVaおよび電力特性PPaは終止電圧直前のアルカリ乾電池における特性である。電圧特性PVaの横軸は電池から引き出される電流値であり、縦軸は電池電圧(図2の左縦軸)である。電力特性PPaの横軸は電池から引き出される電流値であり、縦軸は出力される電力(図2の右縦軸)である。尚、電力特性PPaは電圧特性PVaに基づくもので、詳しくは電流値に電圧値を乗じて算出された電力値を示したものである。
【0018】
アンプ204の電源電圧が一時的に低下した場合には、アンプ204の出力信号の電力が一時的に低下するか、あるいはアンプ204からの出力が一時的に停止する。しかし、電源電圧が所定電圧に回復するのに応じて、アンプ204から所定電力の出力信号が再び出力される。つまり、電源電圧が一時的に低下した場合においても、アンプ204は動作を継続することができる。一方、DSP203の電源電圧が一時的に所定値より低下した場合には、DSP203は動作不可となるため、シャットダウンしてしまう場合がある。そして、電源電圧が所定電圧に回復すると、DSP203は再起動した後、動作を再開する。つまり、電源電圧が一時的に低下した場合には、DSP203は動作を一旦停止してしまい、停止してから再起動するまでの期間、DSP203からは信号が出力されなくなってしまう。従って、アンプ204の電源電圧が一時的に低下した場合には、トランスデューサ30の所望する動作が一時的に不可となるにとどまるが、DSP203の電源電力が一時的に低下した場合には、トランスデューサ30の動作が一定期間、行われなくなってしまう。このため、DSP203の電源電圧を優先的に確保することが重要となる。
【0019】
また、信号処理を行うDSP203の消費電力は変動が小さく、消費電流は例えば0.1A程度である。一方、電力増幅を行うアンプ204の消費電力は信号S3に応じて大きく変動し、DSP203よりも消費電力が大きい。DSP203の平均消費電力に対し瞬時電力は10倍程度になり得る。もし、アンプ204の消費電流を電源部201から引き出してしまった場合には、アンプ204の消費電力が一時的に大きくなった時に、図2に示すように、電池電圧が一時的に低下してしまう。電池電圧が一時的に低下し、連動してDSP203の電源電圧が低下した場合には、上記したようにDSP203はシャットダウンしてしまう。例えば、電源部201から一瞬でも1.0Wを超える電力を引き出そうとすると、電源電圧が低下してシャットダウンが発生するおそれがある。すると、トランスデューサ30からの放音が一定期間停止してしまう。この点、処理部200では、DSP203への給電経路である経路R1と、アンプ204への給電経路である経路R2とを分離し、経路R2に電力制御部220を備えることで、上記課題を解決している。
【0020】
次に、処理部200の具体的な構成について説明する。電源部201は2個の電池201aが直列接続された構成である。例えば電池201aが新しいアルカリ乾電池である場合、電源部201は電池の公称電圧である3V(1.5V×2)程度の電圧V1を出力すると期待できる。しかし、例えば電池201aの使用時間が長くなると、電池電圧は低下する。ここで、処理部200の動作が安定した楽器1を提供するには、電池201aの電池電圧が終止電圧の2V(1V×2)付近となり、電圧V1が略2Vである場合においても処理部200が動作することが要求される。図2に示す電圧特性PVaおよび電力特性PPaは開放電圧が略2Vの電池201aにおける特性を示している。電力特性PPaに示す様に、最大電力は略1.0Wである。つまり、電源部201は略1.0Wを超える電力を必要とする負荷は駆動できない。尚、以降の説明で、電池電圧が終止電圧付近まで低下した電池201aのことをワーストケースの電池201aと称する。
【0021】
アンプ204の消費電力は入力される信号S2の振幅に依存する。信号S2は変換部10から出力される信号S1に基づく信号である。信号S1は演奏に基づくオーディオ信号であり、音量を示す振幅は変化する。発明者らは、オーディオ信号の平均振幅は楽曲によらず、最大振幅の1/8程度であり、最大振幅の継続時間は平均振幅の継続時間よりも短時間であることを見出した。また、アンプ204での平均消費電力は、0.5W程度である。従って、アンプ204が最大瞬時電力を要する期間以外の期間、ワーストケースの電池201aであっても、電源部201から給電される電力によりアンプ204は所望の電力を有する信号S3を出力することができるとともに、コンデンサ207は充電される。また、例えば楽器1が強いストロークで演奏された場合などの最大瞬時電力は、2W以上となる。ワーストケースの電池201aである場合、電源部201だけでは最大瞬時電力を給電することができないが、接続されるコンデンサ207から電力が給電される。また、コンデンサ207の容量値は、アンプ204が最大瞬時電力を要する期間、最大瞬時電力を補助することができるように設定されている。従って、アンプ204の消費電力が平均消費電力を超える期間では、電源部201からアンプ204へ給電される電力に加えて、コンデンサ207から給電される電力により、アンプ204からは所望の電力を有する信号S3が出力される。これにより、トランスデューサ30から効果音のアタック感が損なわれることが抑制される。ワーストケースの電池201aにおいても、処理部200は所望の動作をすることができる。
【0022】
演奏者は楽器1を支えて演奏するため軽量であることが望ましい。楽器1は電池201aを2個とすることにより軽量にすることができる。また、DC−DCコンバータ202はワーストケースの電池201aの電池電圧2Vからマージン1.0Vを減じた1.0Vでも動作するDC−DCコンバータである。これにより、電池201aが終止電圧となるまで、DSP203を確実に動作させることができる。DSP203は信号処理手段の一例であり、アンプ204は増幅手段の一例である。また、経路R1は第1給電経路の一例であり、経路R2は第2給電経路の一例である。また、電力制御部220は電力制限手段の一例である。
【0023】
図3は、電力制御部220のハード構成のブロック図である。電力制御部220の演算部221は、図示しないがA/Dコンバータ、D/Aコンバータを内蔵するCPUを有する。DC−DCコンバータ222は、降圧型で熱損失のほとんど無い電圧変換器であり、電圧フィードバック端子であるVFB端子のほか、電圧出力端子であるVOUT端子、電圧入力端子であるVIN端子を備える。電力制御部220は、経路R2を流れる入力電流を検出する検出部223を有する。検出部223は抵抗値Rの抵抗を有する。電源部201から入力される入力電圧をVin、抵抗のDC−DCコンバータ222側における端の検出電圧をVdetとすると、抵抗の両端の電位差(Vin−Vdet)から、入力電流は(Vin−Vdet)/Rにより算出される。
【0024】
図4は、電力制御部220の制御構成のブロック図である。電力制御部220は、DC−DCコンバータ222のVFB端子に入力される電圧が0.6Vとなるように制御することで、コンデンサ207を充電する際に電源部201から引き出される入力電力PINを制限電力PREF(所定値)に制限する。このような電力制限によると、コンデンサ207の端子電圧VOUTが低い状態では、電流を制限する構成に比し多くの電流を流せるため、より短時間での充電が可能となる。以下、電力制限の制御を説明する。
【0025】
図4において、演算部221は、減算器225、228、230、乗算器226、227、229、235、Max関数231を有する。DC−DCコンバータ222は、減算器232、乗算器234を有する。
【0026】
演算部221において、減算器225、乗算器226、227により、電源部201から引き出される入力電力PINは、入力電圧Vinと上記した入力電流(Vin−Vdet)/Rとから、PIN=Vin×(Vin−Vdet)/Rにより算出される。制限電力PREFは、電源部201から引き出される入力電力PINの目標とする上限値であり、例えば、1.0Wに設定される。減算器228により、制限電力PREFと入力電力PINとの差分である電力エラーPERRが、PERR=PREF−PINにより算出される。電力エラーPERRに乗算器229により定数Kが乗算された値が0.6(V)から減算されて、電力フィードバック信号(電力FB信号)PCTLが算出される(PCTL=0.6−K×PERR)。電力FB信号PCTLがMax関数231に入力される。
【0027】
一方、DC−DCコンバータ222において、コンデンサ207の端子電圧VOUTに乗算器235で帰還係数Hが乗算された値(VCTL=H×VOUT)が、電圧フィードバック信号(出力電圧FB信号)VCTLとしてMax関数231に入力される。帰還係数Hの値は、DC−DCコンバータ222のVOUT端子からの出力電圧である端子電圧VOUTの目標値に応じて設定されている。Max関数231は、入力された値のうち最大のものを出力する。この例では、電力FB信号PCTLと出力電圧FB信号VCTLのうち大きい方(高い電圧を示す方)をFB電圧VFBとしてDC−DCコンバータ222へ出力する。FB電圧VFBはDC−DCコンバータ222のVFB端子に入力される。減算器232により、0.6(V)からFB電圧VFBを減算した値が乗算器234に入力され、乗算器234で定数Gが乗算されて、端子電圧VOUTが出力される。
【0028】
次に、図4図5で、コンデンサ207の充電の開始からの各パラメータの遷移について説明する。図5(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、コンデンサ207の充電開始からの入力電力PIN、電力FB信号PCTL、出力電圧FB信号VCTL、FB電圧VFBの変化を示すタイムチャートである。充電開始から時刻t1までが充電期間であり、時刻t1でコンデンサ207が満充電に達し、安定した定常状態となる。
【0029】
まず、時刻t1以降の定常状態を説明する。定常状態では、コンデンサ207は十分に充電され、電源部201から引き込む入力電力PINは非常に小さくなっている(図5(a))。その結果、電力エラーPERRが制限電力PREFとほぼ等しくなり(PERR≒PREF)、電力FB信号PCTLは0.6(V)より十分に小さくなる。一方、出力電圧FB信号VCTLについては、端子電圧VOUTに帰還係数Hを乗じてほぼ0.6(V)となっているので(図5(c))、電力FB信号PCTLは出力電圧FB信号VCTLより小さい(PCTL<VCTL≒0.6)(図5(b))。結果として、Max関数231は、大きい方の出力電圧FB信号VCTLをFB電圧VFBとしてDC−DCコンバータ222へ出力する(図5(d))。従って、端子電圧VOUTに基づく出力電圧FB信号VCTLがフィードバックされることになって、端子電圧VOUTは0.6(V)の定電圧状態に保たれることになる。
【0030】
次に、時刻t1以前の充電期間を説明する。充電開始直後、端子電圧VOUTが非常に小さいと、電源部201から大きな入力電力PINが引き込まれる。ここで、制限電力PREF以上となるような入力電力PINが引き込まれようとすると、電力エラーPERR≦0となる。すると、電力FB信号PCTL≧0.6となり、VCTL<PCTLとなる(図5(b)、(c))。Max関数231は、大きい方の電力FB信号PCTLをFB電圧VFBとしてDC−DCコンバータ222へ出力する(図5(d))。出力電圧FB信号VCTLに優先して電力FB信号PCTLがフィードバックされるようになるので、結果として電源部201から引き出される入力電力PINが制限電力PREFに制限されることになる(図5(a))。つまり、制限電力PREF≦入力電力PINとなると、FB電圧VFBが0.6(V)以上となるので、端子電圧VOUTがそれ以上には上がらなくなり、結果的に電流供給が途絶える。これにより、入力電力PINは制限電力PREFを上限として制限される。電流を制限するのではなく電力を制限することから、端子電圧VOUTが低いほど多くの電流を流せるため、短時間で満充電となる。
【0031】
本実施の形態によれば、オーディオ信号である信号S1の音量を示す電圧振幅のピーク時においても、アンプ204への消費電力の不足分はコンデンサ207からアンプ204へ電力が補助されるため、所望の電力の信号S3を得ることができる。従って、信号S3を駆動信号とするトランスデューサ30から放音される音のアタック感が損なわれることが抑制される。
【0032】
本実施の形態によればまた、経路R1から分岐してアンプ204へ繋がる経路R2に介在する電力制御部220が、コンデンサ207を充電する際に電源部201から引き出される入力電力PINを制限電力PREFに制限する。すなわち、演算部221のMax関数231は、コンデンサ207の端子電圧VOUTに基づく電力FB信号PCTLと入力電力PINに基づく電力FB信号PCTLとのうち大きい方をDC−DCコンバータ222のVFB端子に入力する。これにより、コンデンサ207を、充電完了までは制限電力PREF以下で且つ端子電圧VOUTに応じた入力電力PINにて充電でき、充電完了するとコンデンサ207を定電圧状態に保つことができる。よって、端子電圧VOUTが低いときほど多くの電流を流すことができ、コンデンサ207の充電時間を短縮することができる。
【0033】
なお、経路R2を流れる電流を、電源部201とDC−DCコンバータ222との間で検出したが、これに限らない。例えば、図6(a)に変形例を示すように、電流を検出する位置は、DC−DCコンバータ222とコンデンサ207との間であってもよい。すなわち、検出部223をDC−DCコンバータ222とコンデンサ207との間に設ける。入力電流は(Vin−Vdet)/Rにより算出される。なお、電力制御部220の制御構成は図4で説明したのと変わりはない。
【0034】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、電力制御部220の内部構成が異なる。従って、図3図4に代えて図6(b)を用いて本実施の形態を説明する。図6(b)は、電力制御部220のハード構成のブロック図である。電力制御部220は、DC−DCコンバータ222に代えてDC−DCコンバータ230を有する。図1において、DC−DCコンバータ222をDC−DCコンバータ230に置き換えるものとする。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0035】
DC−DCコンバータ230は、制限電流端子であるIREF端子のほか、電圧出力端子であるVOUT端子、電圧入力端子であるVIN端子を備える。DC−DCコンバータ230は、電流制限回路を持ち、IREF端子で制限電流を支持できるタイプの電圧変換器である。VFB端子の図示は省略している。演算部221は、コンデンサ207の端子電圧VOUTに応じて、コンデンサ207を充電する際に電源部201から引き出される入力電力PINを制限電力PREFに制限するよう、IREF端子に入力される電流IREFを制御する。電流IREFは、IREF=PREF/VOUTにより算出される。
【0036】
この構成によれば、端子電圧VOUTに応じて電流IREFを動的に制御することで、電源部201から引き出される入力電力PINを制限電力PREFに制限することができる。従って、コンデンサ207の充電時間を短縮することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0037】
また、外部に電流検出のための抵抗を設ける必要がなく、構成が簡単になる。さらに、制御系がDC−DCコンバータ230内で閉じているので、演算部221は系の安定性について考慮する必要性が低くなる。
【0038】
なお、上記各実施の形態において、アコースティックギターに変換部10、処理部200、210、トランスデューサ30、スピーカ40が加えられた楽器1を例示したが、変換部10などを付加する楽器はアコースティックギターに限定されず、他の楽器としてもよい。特に、演奏者が支えて演奏する楽器は電源ケーブルが出ていないことが望まれるため、演奏者が支えて演奏する楽器である、例えばバイオリンなどの弦楽器、例えばオーボエ、トランペットなどの管楽器にも本発明を適用することができる。
【0039】
また、信号処理手段としてDSP203を例示したが、これに限定されず、例えばCPU、PLD(Programmable Logic Device)などのデジタル信号処理を行う他のシステムを信号処理手段としてもよい。
【0040】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
R1 経路(第1給電経路)、 R2 経路(第2給電経路)、 201 電源部(バッテリ)、 203 DSP(信号処理手段)、 204 アンプ(増幅手段)、 207 コンデンサ、 220 電力制御部(電力制限手段)、 221 演算部、 222 DC−DCコンバータ(電圧変換器)、 PIN 入力電力、 PREF 制限電力(所定値)、 VOUT 端子電圧、 PCTL 電力FB信号、 Vin 入力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6