特許第6891446号(P6891446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891446
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】排煙脱硫装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/78 20060101AFI20210607BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20210607BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20210607BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   B01D53/78ZAB
   B01D53/50 245
   B01D53/14 200
   B01D53/18 120
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-206137(P2016-206137)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-65105(P2018-65105A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 俊之
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−210341(JP,A)
【文献】 実開昭47−030079(JP,U)
【文献】 特開昭58−104632(JP,A)
【文献】 特開平11−207145(JP,A)
【文献】 特開2008−012401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0008630(US,A1)
【文献】 特開2016−087521(JP,A)
【文献】 実開平06−074829(JP,U)
【文献】 特開平05−007754(JP,A)
【文献】 特開2016−022408(JP,A)
【文献】 特開平09−253443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34−53/73,53/74−53/85,53/92,53/96
B01D53/14−53/18
F23J13/00−99/00
C01F1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰石−石膏法による湿式の排煙脱硫装置において、
軸線が横方向へ延びるよう配設され且つ内部を排煙が流通する固定ダクトと、
該固定ダクトの下部に形成され且つ吸収液スラリーが貯留されるスラリー貯留槽と、
前記固定ダクトの内部にその軸線を中心として回転自在に配設された通気性気液接触回転体と、
前記スラリー貯留槽に貯留された吸収液スラリーを排煙流通方向の上流側から前記通気性気液接触回転体に向けて噴射するスプレーノズルと
前記スラリー貯留槽へ酸化空気を供給する酸化空気ブロワ及び酸化空気管を有する酸化空気供給装置と、
前記スラリー貯留槽に貯留された吸収液スラリーをスプレーノズルへ導く循環流路と、
該循環流路に設けられ前記吸収液スラリーの石膏濃度を計測する石膏濃度計と、
該石膏濃度計より下流側の循環流路から分岐接続される石膏スラリー取出管と、
該石膏スラリー取出管に設けられ且つ前記石膏濃度計で計測された石膏濃度に応じて開度調節される流量調節弁と
を備え、
前記通気性気液接触回転体は、前記固定ダクトの軸線から径方向へ放射状に延びる羽根と、該羽根に穿設される通過孔とを有するプロペラ部材を、排煙流通方向へ複数枚並設することによって構成され、前記排煙流通方向へ互いに隣接するプロペラ部材の羽根の位置は、周方向へずれるよう配置される排煙脱硫装置。
【請求項2】
前記固定ダクトの内部における少なくとも通気性気液接触回転体の上流側に配設される整流板を備えた請求項1記載の排煙脱硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙脱硫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所等で化石燃料を燃焼するボイラからは、硫黄酸化物を含んだ排煙が排出される。硫黄酸化物のうち特に二酸化硫黄や三酸化硫黄は、大気汚染・酸性雨等の環境問題の主原因の一つとなっている。このため、火力発電所等のボイラには、排煙中の硫黄酸化物を除去するための排煙脱硫装置が設置される。
【0003】
前記排煙脱硫装置は、石灰石−石膏法による湿式法が主流を占めており、中でもスプレー方式が多く採用されている。このスプレー方式の排煙脱硫装置は、縦型の吸収塔の内部に排煙を下方から上方へ向けて流通させつつ、上部から吸収液(吸収液スラリー)をスプレーして気液接触させることにより、排煙中の硫黄酸化物を吸収液により除去している。前記排煙脱硫装置は、硫黄酸化物が吸収液と気液接触している時間(以下、反応時間という)が長ければ長いほど、脱硫能力(脱硫率)は高くなる。このため、反応時間を長くするために吸収塔の高さを高くすることが行われているが、吸収塔の高さを高くすると、吸収塔の建設コストが増加するという問題が発生する。
【0004】
そこで、吸収塔の高さを抑えつつ反応時間を長くすることができる排煙脱硫装置が既に提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された排煙脱硫装置は、ボイラと煙突をつなぐ煙道の下方に、煙道中を流れる排煙の一部を煙道から導き出して再び煙道へ戻すV字形の反応器を有している。この反応器の上流側の内部には、排煙の流れと同じ向きに吸収液を噴射するスプレーノズルが設けられ、前記反応器の最下部には吸収液を捕集する液溜部が形成されている。
【0005】
又、高さを低くできる排煙脱硫装置としては、特許文献2に開示されたようなものが存在する。特許文献2に開示された排煙脱硫装置は、水平な煙道途中に設けられた固定ダクトの内部に、該固定ダクトの軸心を中心に回転する籠型回転円筒体が設けられ、該籠型回転円筒体の内部には、樹脂製円筒状体等からなる気液接触用充填物を充填することにより回転充填層が形成されている。回転充填層の下方にはスラリー貯留槽が設けられ、該スラリー貯留槽の吸収液スラリーを前記回転充填層の上部から散布するスラリー散布手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−118449号公報
【特許文献2】特開2013−237017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された排煙脱硫装置においては、V字形の反応器の内部に排煙と同じ向きに吸収液をスプレーすると、吸収液は重力の影響を受けて下方へ落下してしまう。従って、反応器内部を吸収液が均一な濃度を保持して進むことができないために、脱硫能力(脱硫率)を充分に高めることができないという課題を有していた。
【0008】
又、特許文献2に示す排煙脱硫装置においては、排煙が回転充填層の上部をパスして流れることがないように、籠型回転円筒体の内部には100%に近い充填率で気液接触用充填物を充填する必要がある。従って、特許文献2の回転充填層の重量は非常に大きなものとなってしまい、このために、回転充填層を回転駆動するモータの消費エネルギが増大するという問題がある。更に、高い充填率で気液接触用充填物を充填した回転充填層は、排煙の流通抵抗が非常に大きく圧力損失が増加するために、下流で排煙を誘引する誘引ファンの消費エネルギが増大するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、消費エネルギを抑えつつ脱硫率を高め得る排煙脱硫装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の排煙脱硫装置は、石灰石−石膏法による湿式の排煙脱硫装置において、
軸線が横方向へ延びるよう配設され且つ内部を排煙が流通する固定ダクトと、
該固定ダクトの下部に形成され且つ吸収液スラリーが貯留されるスラリー貯留槽と、
前記固定ダクトの内部にその軸線を中心として回転自在に配設された通気性気液接触回転体と、
前記スラリー貯留槽に貯留された吸収液スラリーを排煙流通方向の上流側から前記通気性気液接触回転体に向けて噴射するスプレーノズルと
前記スラリー貯留槽へ酸化空気を供給する酸化空気ブロワ及び酸化空気管を有する酸化空気供給装置と、
前記スラリー貯留槽に貯留された吸収液スラリーをスプレーノズルへ導く循環流路と、
該循環流路に設けられ前記吸収液スラリーの石膏濃度を計測する石膏濃度計と、
該石膏濃度計より下流側の循環流路から分岐接続される石膏スラリー取出管と、
該石膏スラリー取出管に設けられ且つ前記石膏濃度計で計測された石膏濃度に応じて開度調節される流量調節弁と
を備え、
前記通気性気液接触回転体は、前記固定ダクトの軸線から径方向へ放射状に延びる羽根と、該羽根に穿設される通過孔とを有するプロペラ部材を、排煙流通方向へ複数枚並設することによって構成され、前記排煙流通方向へ互いに隣接するプロペラ部材の羽根の位置は、周方向へずれるよう配置されることができる。
【0014】
前記排煙脱硫装置においては、前記固定ダクトの内部における少なくとも通気性気液接触回転体の上流側に配設される整流板を備えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排煙脱硫装置によれば、消費エネルギを抑えつつ脱硫率を高め得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の排煙脱硫装置の実施例を示す全体概要構成図である。
図2】本発明の排煙脱硫装置の実施例における通気性気液接触回転体(網部材)を示す分解斜視図である。
図3】本発明の排煙脱硫装置の実施例における通気性気液接触回転体(放射部材)を示す正面図である。
図4】本発明の排煙脱硫装置の実施例における通気性気液接触回転体(プロペラ部材)を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2は本発明の排煙脱硫装置の実施例である。
【0020】
本実施例の排煙脱硫装置は、固定ダクト1と、スラリー貯留槽2と、通気性気液接触回転体3と、スプレーノズル4とを備えている。
【0021】
前記固定ダクト1は、軸線が横方向へ延びるよう配設されており、内部をボイラ(図示せず)から排出される排煙が流通するようになっている。尚、前記固定ダクト1に導入される排煙の流速は約15m/sとかなり速いため、前記固定ダクト1の下部を、排煙の入側では下り勾配の傾斜壁1aが形成され且つ排煙の出側では上り勾配の傾斜壁1bが形成されるよう、拡張することにより、前記排煙の流速を5m/s程度に落とすようになっている。
【0022】
前記スラリー貯留槽2は、前記固定ダクト1の下部に形成されており、石灰石(CaCO)を含む吸収液スラリーSが貯留されるようになっている。前記スラリー貯留槽2には、貯留されている吸収液スラリーSを均一な状態に撹拌するための撹拌機5が設けられている。前記スラリー貯留槽2の底部には、吸収液スラリーSの酸化を行うための酸化空気供給装置6が設けられている。該酸化空気供給装置6は、酸化空気が流通する酸化空気管7と、該酸化空気管7途中に設けられた酸化空気ブロワ8と、該酸化空気ブロワ8によって昇圧された酸化空気を吸収液スラリーS中へ吹き出す酸化空気ノズル9とを備えている。前記酸化空気管7は、前記スラリー貯留槽2の外部に該スラリー貯留槽2の液面高さより上方へ立上る逆流防止部7aが形成されている。又、前記酸化空気管7途中には、水バルブ10の開閉により閉塞防止用の水が供給される水管11が接続されている。
【0023】
前記通気性気液接触回転体3は、前記スラリー貯留槽2の上方に位置するよう、前記固定ダクト1の内部にその軸線を中心として回転自在に配設されている。通気性気液接触回転体3の回転駆動モータ12は、回転軸13に直結され、設備の信頼性を高めるために二重化されている。
【0024】
前記スプレーノズル4は、前記スラリー貯留槽2に貯留された吸収液スラリーSを循環ポンプ14により汲み上げて排煙流通方向の上流側から前記通気性気液接触回転体3に向けて噴射するようになっている。尚、図1の例では、前記通気性気液接触回転体3の上側半分に向けてスプレーノズル4から吸収液スラリーSを噴射するようになっているが、前記通気性気液接触回転体3の全面に向けてスプレーノズル4から吸収液スラリーSを噴射するようにしても良い。
【0025】
前記固定ダクト1内部における通気性気液接触回転体3の上流側には、前記固定ダクト1の下部を拡張したことに伴って生じる偏流をなくすための整流板15が配設されている。尚、図1の例では、前記固定ダクト1内部における通気性気液接触回転体3の下流側にも整流板15を配設しているが、上流側のみとしても良い。
【0026】
前記固定ダクト1の出側には、排煙からミストを分離するミストエリミネータ16が設けられ、該ミストエリミネータ16で分離されたミストは、ミスト回収管17を介して前記スラリー貯留槽2に戻されるようになっている。
【0027】
前記固定ダクト1の下流側には排煙を誘引して煙突(図示せず)に導くための誘引ファン18が設けられている。
【0028】
前記循環ポンプ14の出側のスプレーノズル4へ通じる循環流路19には、吸収液スラリーSの石膏濃度を計測する石膏濃度計20が設けられ、該石膏濃度計20より下流側の循環流路19には、石膏スラリー取出管21が分岐接続され、該石膏スラリー取出管21の途中には、前記石膏濃度計20で計測された石膏濃度に応じて開度調節される流量調節弁22が設けられている。
【0029】
前記固定ダクト1の内部には、該固定ダクト1の内面と通気性気液接触回転体3の外周部との間をシールするガスシールプレート23が設けられている。
【0030】
前記通気性気液接触回転体3は、図2に示す如く、排煙流通方向へ複数枚並設される円形の網部材3Aによって構成され、前記排煙流通方向へ互いに隣接する網部材3Aの網目3Aaの位置は、周方向へずれるよう配置されている。ここで、前記通気性気液接触回転体3は、図2に示す網部材3Aの代わりに、図3に示す如く、前記固定ダクト1の軸線から径方向へ放射状に延びる複数本(図3の例では八本)のアーム3Baと、該アーム3Baから突設される枝材3Bbとを有する放射部材3Bを、排煙流通方向へ複数並設することによって構成しても良く、この場合、前記排煙流通方向へ互いに隣接する放射部材3Bのアーム3Baの位置は、周方向へずれるよう配置される。又、前記通気性気液接触回転体3は、図2に示す網部材3A或いは図3に示す放射部材3Bの代わりに、図4に示す如く、前記固定ダクト1の軸線から径方向へ放射状に延びる複数枚(図4の例では八枚)の羽根3Caと、該羽根3Caに穿設される通過孔3Cbとを有するプロペラ部材3Cを、排煙流通方向へ複数枚並設することによって構成することもでき、この場合、前記排煙流通方向へ互いに隣接するプロペラ部材3Cの羽根3Caの位置は、周方向へずれるよう配置される。
【0031】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0032】
図示していないボイラから排出される排煙は、固定ダクト1の内部へ導入される。ここで、前記固定ダクト1の下部は、排煙の入側では下り勾配の傾斜壁1aが形成され且つ排煙の出側では上り勾配の傾斜壁1bが形成されるよう、拡張されているため、排煙の流速は約15m/sから5m/s程度に低下する。又、前記固定ダクト1内部における通気性気液接触回転体3の上流側と下流側には整流板15が配設されているため、排煙は偏流を生じることなく、通気性気液接触回転体3を均一に通過する。
【0033】
この時、固定ダクト1の内部では、スラリー貯留槽2に貯留された吸収液スラリーSが循環ポンプ14により循環流路19を介してスプレーノズル4から通気性気液接触回転体3の上側半分に向けて噴射されている。
【0034】
前記スプレーノズル4から通気性気液接触回転体3に向けて吸収液スラリーSが噴射されると、前記通気性気液接触回転体3が回転していることから、通気性気液接触回転体3を構成する網部材3A全体に吸収液スラリーSが行き渡って流れるようになり、該吸収液スラリーSと網部材3Aの網目3Aaの位置を通過する排煙とが接触して排煙は効果的に脱硫される。ここで、前記排煙流通方向へ互いに隣接する網部材3Aの網目3Aaの位置は、周方向へずれるよう配置されるため、排煙が単純に直進する如く網目3Aaを通り抜けるのではなく、前記排煙流通方向へ互いに隣接する網部材3Aに対して排煙が繰り返し接触しつつ網目3Aaを流通する形となり、排煙と吸収液スラリーSとの接触が促進される。又、前記通気性気液接触回転体3の軸線方向の長さ寸法を増加させて、吸収液スラリーSと排煙とが接触する反応時間を長くすれば、脱硫能力(脱硫率)を高めることができる。更に又、前記通気性気液接触回転体3を複数段に設けるようにすれば、脱硫率をより高めることができる。
【0035】
しかも、前記通気性気液接触回転体3が回転することで該通気性気液接触回転体3を構成する網部材3A全体に吸収液スラリーSが行き渡って流れ、該網部材3Aが乾燥しないため、前記通気性気液接触回転体3に石膏が堆積する心配はない。本発明者の知見によれば、吸収液スラリーSが流動している部分には石膏が堆積しないことを確認している。又、前記スプレーノズル4から噴射された吸収液スラリーSは、回転している通気性気液接触回転体3に均一に供給されるため、従来の脱硫装置に備えられる噴霧装置のような微細な液滴を生成させる高価な装置を備える必要もない。
【0036】
前記通気性気液接触回転体3を通過して脱硫された排煙は、ミストエリミネータ16によってミストが分離された後、誘引ファン18に誘引されて煙突(図示せず)へ導かれ、清浄なガスとして大気放出される。前記ミストエリミネータ16で分離されたミストは、ミスト回収管17を介して前記スラリー貯留槽2に戻される。
【0037】
前記スラリー貯留槽2の吸収液スラリーSには、酸化空気供給装置6の酸化空気ブロワ8により酸化空気管7を介して酸化空気ノズル9から酸化空気が吹き込まれ、撹拌機5によって均一な状態となるよう撹拌が行われている。前記ボイラから排出される硫黄酸化物を含む排煙と、石灰石(CaCO)を含む吸収液スラリーSとが接触することによって生成された亜硫酸石膏(CaSO)は、前記酸化空気によって酸化され、石膏(CaSO)となる。前記循環流路19からスプレーノズル4へ導かれる吸収液スラリーSの石膏濃度は石膏濃度計20によって計測され、該石膏濃度計20によって計測された石膏濃度が予め設定された設定値を超えると、流量調節弁22の開度調節が行われて石膏スラリー取出管21から石膏スラリーが抜き出され、該石膏スラリーから石膏が回収される。尚、前記酸化空気管7にはスラリー貯留槽2の液面高さより上方へ立上る逆流防止部7aが形成されているため、前記スラリー貯留槽2の内部における吸収液スラリーSが酸化空気管7から酸化空気ブロワ8側に逆流することは防止される。又、必要に応じて水バルブ10を開いて水管11から前記酸化空気管7途中に水を供給することにより、該酸化空気管7の閉塞が防止される。
【0038】
本実施例の場合、特許文献1に開示された排煙脱硫装置とは異なり、固定ダクト1内部に配設された通気性気液接触回転体3を構成する網部材3A全体に吸収液スラリーSが行き渡って流れるため、脱硫能力(脱硫率)を充分に高めることが可能となる。
【0039】
又、特許文献2に示す排煙脱硫装置のように籠型回転円筒体の内部に高い充填率で気液接触用充填物を充填する必要がないため、網部材3Aで構成される通気性気液接触回転体3の重量は大幅な軽量化が可能となり、該通気性気液接触回転体3を回転駆動する回転駆動モータ12の消費エネルギは低減される。更に、前記網部材3Aで構成される通気性気液接触回転体3における排煙の流通抵抗は小さく圧力損失が増加しないため、下流で排煙を誘引する誘引ファン18の消費エネルギも低減可能となる。
【0040】
こうして、消費エネルギを抑えつつ脱硫率を高め得る。
【0041】
そして、本実施例において、前記通気性気液接触回転体3は、図2に示す如く、排煙流通方向へ複数枚並設される網部材3Aによって構成され、前記排煙流通方向へ互いに隣接する網部材3Aの網目3Aaの位置は、周方向へずれるよう配置されている。このように構成すると、排煙が単純に直進する如く網目3Aaを通り抜けるのではなく、前記排煙流通方向へ互いに隣接する網部材3Aに対して排煙が繰り返し接触しつつ網目3Aaを流通する形となり、排煙と吸収液スラリーSとの接触を促進させることができる。又、前記網部材3Aで構成される通気性気液接触回転体3の重量は大幅な軽量化が可能となり、該通気性気液接触回転体3を回転駆動する回転駆動モータ12の消費エネルギを低減できる。更に、前記網部材3Aで構成される通気性気液接触回転体3における排煙の流通抵抗は小さく圧力損失が増加しないため、下流で排煙を誘引する誘引ファン18の消費エネルギも低減可能となる。
【0042】
一方、前記通気性気液接触回転体3は、図3に示す如く、前記固定ダクト1の軸線から径方向へ放射状に延びるアーム3Baと、該アーム3Baから突設される枝材3Bbとを有する放射部材3Bを、排煙流通方向へ複数並設することによって構成され、前記排煙流通方向へ互いに隣接する放射部材3Bのアーム3Baの位置は、周方向へずれるよう配置することができる。このように構成すると、排煙が単純に直進する如くアーム3Baと枝材3Bbとの間を通り抜けるのではなく、前記排煙流通方向へ互いに隣接する放射部材3Bに対して排煙が繰り返し接触しつつアーム3Baと枝材3Bbとの間を流通する形となり、排煙と吸収液スラリーSとの接触を促進させることができる。又、前記放射部材3Bで構成される通気性気液接触回転体3の重量は大幅な軽量化が可能となり、該通気性気液接触回転体3を回転駆動する回転駆動モータ12の消費エネルギを低減できる。更に、前記放射部材3Bで構成される通気性気液接触回転体3における排煙の流通抵抗は小さく圧力損失が増加しないため、下流で排煙を誘引する誘引ファン18の消費エネルギも低減可能となる。
【0043】
又、前記通気性気液接触回転体3は、図4に示す如く、前記固定ダクト1の軸線から径方向へ放射状に延びる羽根3Caと、該羽根3Caに穿設される通過孔3Cbとを有するプロペラ部材3Cを、排煙流通方向へ複数枚並設することによって構成され、前記排煙流通方向へ互いに隣接するプロペラ部材3Cの羽根3Caの位置は、周方向へずれるよう配置することができる。このように構成すると、排煙が単純に直進する如く羽根3Caの間や通過孔3Cbを通り抜けるのではなく、前記排煙流通方向へ互いに隣接するプロペラ部材3Cに対して排煙が繰り返し接触しつつ羽根3Caの間や通過孔3Cbを流通する形となり、排煙と吸収液スラリーSとの接触を促進させることができる。又、前記プロペラ部材3Cで構成される通気性気液接触回転体3の重量は大幅な軽量化が可能となり、該通気性気液接触回転体3を回転駆動する回転駆動モータ12の消費エネルギを低減できる。更に、前記プロペラ部材3Cで構成される通気性気液接触回転体3における排煙の流通抵抗は小さく圧力損失が増加しないため、下流で排煙を誘引する誘引ファン18の消費エネルギも低減可能となる。
【0044】
又、本実施例の場合、前記固定ダクト1内部における少なくとも通気性気液接触回転体3の上流側に配設される整流板15を備えている。このように構成すると、排煙は偏流を生じることなく、通気性気液接触回転体3を均一に通過する形となり、好ましい。
【0045】
更に又、本実施例の場合、前記スラリー貯留槽2へ酸化空気を供給する酸化空気ブロワ8及び酸化空気管7を有する酸化空気供給装置6を備え、前記酸化空気管7は、前記スラリー貯留槽2の外部に該スラリー貯留槽2の液面高さより上方へ立上る逆流防止部7aが形成されている。このように構成すると、前記スラリー貯留槽2の内部における吸収液スラリーSが酸化空気供給装置6の酸化空気管7から酸化空気ブロワ8側に逆流することを防止でき、酸化空気ブロワ8による酸化空気の供給を安定して行うことができる。
【0046】
尚、本発明の排煙脱硫装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 固定ダクト
2 スラリー貯留槽
3 通気性気液接触回転体
3A 網部材
3Aa 網目
3B 放射部材
3Ba アーム
3Bb 枝材
3C プロペラ部材
3Ca 羽根
3Cb 通過孔
4 スプレーノズル
6 酸化空気供給装置
7 酸化空気管
7a 逆流防止部
8 酸化空気ブロワ
15 整流板
20 石膏濃度計
S 吸収液スラリー
図1
図2
図3
図4