(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各横断サイプは、前記第1端から波状にタイヤ軸方向にのびる第1部分と、前記第2端から波状にタイヤ軸方向にのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間を継ぎかつタイヤ軸方向に対して傾斜して直線状にのびる第3部分とを含み、
前記各ミドルブロックに設けられた前記クローズドサイプは、同じブロックに形成された前記横断サイプの前記第1部分又は前記第2部分に沿ってのび、
前記各クラウンブロックに設けられた前記クローズドサイプは、同じブロックに形成された前記横断サイプの前記第3部分に沿ってのびている請求項3乃至6のいずれかに記載のタイヤ。
前記ミドルブロックに設けられた前記クローズドサイプの少なくとも1つは、前記第1クラウンブロックの前記横断サイプの前記第1部分又は前記第2部分をタイヤ軸方向に投影した領域と交わる位置に形成されている請求項7記載のタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ブロックの耐偏摩耗性を向上させ得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝に区画されかつ互いに隣接するクラウン陸部及びミドル陸部が設けられたタイヤであって、前記クラウン陸部は、複数のクラウン横溝によって区画された複数のクラウンブロックを含み、前記ミドル陸部は、複数のミドル横溝によって区画された複数のミドルブロックを含み、前記トレッド部の平面視において、前記各クラウンブロック及び前記各ミドルブロックは、前記主溝に面する第1ブロック壁及び第2ブロック壁と、前記第1ブロック壁で開口する第1端と前記第2ブロック壁に開口する第2端との間をのびかつ少なくとも一部が波状である横断サイプとを有し、前記第1ブロック壁及び前記第2ブロック壁は、それぞれ、ブロック外方に突出する頂部を有してV字状に湾曲しており、前記クラウンブロックは、前記横断サイプの前記第1端が前記第1ブロック壁の前記頂部のタイヤ周方向の第1の側に位置し、かつ、前記横断サイプの前記第2端が前記第2ブロック壁の前記頂部のタイヤ周方向の第2の側に位置する第1クラウンブロックと、前記横断サイプの前記第1端が前記第1ブロック壁の前記頂部の前記第2の側に位置し、前記横断サイプの前記第2端が前記第2ブロック壁の前記頂部の前記第1の側に位置する第2クラウンブロックとを含み、前記各ミドルブロックは、前記横断サイプの前記第1端が前記第1ブロック壁の前記頂部の前記第2の側に位置し、かつ、前記横断サイプの前記第2端が前記第2ブロック壁の前記頂部の前記第1の側に位置している。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1クラウンブロックと前記第2クラウンブロックとは、タイヤ周方向に交互に設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記各クラウンブロック及び前記各ミドルブロックは、前記横断サイプのタイヤ周方向の両側に区画された第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域及び前記第2領域には、それぞれ、両端が各領域内で途切れるクローズドサイプが形成されているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記各ミドルブロックに設けられた前記クローズドサイプは、それぞれ、同じ向きに傾斜し、前記第1クラウンブロックに設けられた前記クローズドサイプと、前記第2クラウンブロックに設けられた前記クローズドサイプとは、互いに逆向きに傾斜しているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記各クローズドサイプは、波状にのび、前記クラウンブロックに設けられた前記クローズドサイプの波状の振幅の中心線は、タイヤ軸方向に対して前記角度θ1で配され、前記ミドルブロックに設けられた前記クローズドサイプの波状の振幅の中心線は、タイヤ軸方向に対して角度θ1よりも小さい角度θ2で配されているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記各ミドルブロックにおいて、前記第1領域に設けられた前記クローズドサイプと前記第2領域に設けられた前記クローズドサイプとは、タイヤ軸方向で互いにオーバーラップして形成され、前記各クラウンブロックにおいて、前記第1領域に設けられた前記クローズドサイプと前記第2領域に設けられた前記クローズドサイプとは、タイヤ軸方向で互いにオーバーラップすることなく形成されているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記各横断サイプは、前記第1端から波状にタイヤ軸方向にのびる第1部分と、前記第2端から波状にタイヤ軸方向にのびる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間を継ぎかつタイヤ軸方向に対して傾斜して直線状にのびる第3部分とを含み、前記各ミドルブロックに設けられた前記クローズドサイプは、同じブロックに形成された前記横断サイプの前記第1部分又は前記第2部分に沿ってのび、前記各クラウンブロックに設けられた前記クローズドサイプは、同じブロックに形成された前記横断サイプの前記第3部分に沿ってのびているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドルブロックに設けられた前記クローズドサイプの少なくとも1つは、前記第1クラウンブロックの前記横断サイプの前記第1部分又は前記第2部分をタイヤ軸方向に投影した領域と交わる位置に形成されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤのトレッド部の平面視において、各クラウンブロック及び各ミドルブロックは、主溝に面する第1ブロック壁及び第2ブロック壁と、第1ブロック壁で開口する第1端と第2ブロック壁に開口する第2端との間をのびかつ少なくとも一部が波状である横断サイプとを有している。第1ブロック壁及び第2ブロック壁は、それぞれ、ブロック外方に突出する頂部を有してV字状に湾曲している。このような横断サイプを有するブロックは、路面と接触するときにブロックの端縁に作用する応力を適度に緩和でき、例えば、ヒールアンドトゥ摩耗を抑制することができる。
【0017】
クラウンブロックは、横断サイプの第1端が第1ブロック壁の頂部のタイヤ周方向の第1の側に位置し、かつ、横断サイプの第2端が第2ブロック壁の頂部のタイヤ周方向の第2の側に位置する第1クラウンブロックと、横断サイプの第1端が第1ブロック壁の頂部の第2の側に位置し、横断サイプの第2端が第2ブロック壁の頂部の前記第1の側に位置する第2クラウンブロックとを含んでいる。第1クラウンブロック及び第2クラウンブロックは、横断サイプの配置が異なるため、摩耗が進行し易い部分が異なる。このため、これらのブロックを含むクラウン陸部全体でみれば、摩耗の進行し易い部分を分散させることができる。
【0018】
一般に、ミドルブロックは、クラウンブロックよりも小さい接地圧を受けるため、相対的に摩耗エネルギーが小さく、クラウンブロックよりも摩耗の進行が遅い傾向がある。このような傾向を踏まえ、発明者らは、種々の実験により、上述の様なクラウンブロックの配置において、これに隣接する各ミドルブロックに配された横断サイプの配置を揃えた方が、クラウンブロック及びミドルブロックの摩耗の進行を均一にできるという知見を得た。
【0019】
本発明のタイヤにおいて、各ミドルブロックは、横断サイプの第1端が第1ブロック壁の頂部の前記第2の側に位置し、かつ、横断サイプの第2端が第2ブロック壁の頂部の第1の側に位置している。このような横断サイプの配置を有する各ミドルブロックは、上述の各クラウンブロックとともに均一に摩耗し、各ブロックの耐偏摩耗性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。本実施形態のタイヤ1は、例えば、トラックやバス等の重荷重用の空気入りタイヤとして好適に使用される。
【0022】
図1に示されるように、タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝3で区画された陸部10が設けられている。
【0023】
主溝3は、例えば、クラウン主溝4及びショルダー主溝5を含んでいる。クラウン主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cの両側に1本ずつ設けられている。ショルダー主溝5は、例えば、最もトレッド端Te側に配されている。
【0024】
「トレッド端Te」は、空気入りタイヤの場合、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0025】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0026】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0027】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0028】
クラウン主溝4及びショルダー主溝5は、任意の位置に設けることができる。例えば、クラウン主溝4は、その溝中心線がタイヤ赤道Cからトレッド幅TWの0.08〜0.15倍の距離を隔てて位置するのが望ましい。同様に、ショルダー主溝5は、その溝中心線がタイヤ赤道Cからトレッド幅TWの0.25〜0.35倍の距離を隔てて位置するのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態のタイヤ1のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。
【0029】
各主溝3は、例えば、互いに逆向きに傾斜した第1傾斜部6aと第2傾斜部6bとがタイヤ周方向に交互に設けられたジグザグ状である。各傾斜部6a、6bのタイヤ周方向に対する角度θ3は、例えば、5〜15°であるのが望ましい。
【0030】
クラウン主溝4の溝幅W1及びショルダー主溝5の溝幅W2は、例えば、トレッド幅TWの1.5%〜5.0%であるのが望ましい。ショルダー主溝5の溝幅W2は、例えば、クラウン主溝4の溝幅W1よりも大きいのが望ましい。各主溝3の溝深さは、重荷重用空気入りタイヤの場合、例えば、10〜25mmであるのが望ましい。このような各主溝3は、ウェット性能と耐偏摩耗性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0031】
陸部10は、例えば、クラウン陸部11、ミドル陸部12、及び、ショルダー陸部13を含んでいる。
【0032】
クラウン陸部11は、一対のクラウン主溝4、4の間に区画されている。ミドル陸部12は、クラウン主溝4とショルダー主溝5との間に区画されている。ショルダー陸部13は、ショルダー主溝5のタイヤ軸方向外側に区画されている。各陸部10は、主溝間を接続する横溝で区画されたブロック20がタイヤ周方向に並ぶブロック列として形成されている。
【0033】
図2及び
図3には、クラウン陸部11及びミドル陸部12の拡大図がそれぞれ示されている。
図2及び
図3に示されるように、クラウン陸部11は、複数のクラウン横溝16によって区画された複数のクラウンブロック21を含んでいる。ミドル陸部12は、複数のミドル横溝17によって区画された複数のミドルブロック22を含んでいる。
【0034】
図2に示されるように、クラウン横溝16は、例えば、一対のクラウン主溝4の間をタイヤ軸方向に沿って直線状にのびている。クラウン横溝16の溝幅W3は、例えば、クラウン主溝の溝幅W1よりも大きいのが望ましい。前記溝幅W3は、例えば、前記溝幅W1の1.5〜1.8倍である。
【0035】
本実施形態のクラウン横溝16は、例えば、タイヤ軸方向の中央部に溝底が隆起したタイバー16aが設けられている。さらに望ましい態様として、タイバー16aには、溝底サイプ16bが設けられている。但し、クラウン横溝16は、このような態様に限定されるものではない。本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm以下の切れ込みを意味し、溝とは区別される。
【0036】
図3に示されるように、ミドル横溝17は、例えば、タイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ4で傾斜してのびている。ミドル横溝17は、例えば、少なくとも一部が曲がっている。さらに望ましい態様として、本実施形態のミドル横溝17は、一対の第1横溝部41と第2横溝部42とを含んでいる。第1横溝部41は、例えば、クラウン主溝4又はショルダー主溝5に連なっている。第2横溝部42は、例えば、各第1横溝部41の間に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して第1横溝部41よりも大きい角度で傾斜している。これにより、ウェット走行時、第1横溝部41内の水が滑らかに主溝側に案内され、ひいてはウェット性能が高められる。
【0037】
図4には、本実施形態のクラウンブロック21及びミドルブロック22の構成を説明するための図として、
図2の第1クラウンブロック21Aの拡大図が示されている。
図4に示されるように、トレッド部2の平面視において、各クラウンブロック21及び各ミドルブロック22は、第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁25bと、これらの間をのびる横断サイプ30とを有している。
【0038】
第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁25bは、それぞれ、主溝3(
図1に示す)に沿ってのびている。
図4において、第1ブロック壁25aは、ブロック20の右側に配され、第2ブロック壁25bは、ブロック20の左側に配されている。第1ブロック壁25a及び第2ブロック壁25bは、それぞれ、ブロック外方に突出する頂部27を有して凸となるV字状に湾曲している。頂部27におけるブロック壁の角度θ5(
図2に示す)は、例えば、140〜170°である。このようなブロック壁により、ブロック20は、略六角形状の踏面を有している。
【0039】
前記頂部27は、例えば、ブロックのタイヤ周方向の中央位置からずれて形成されている。これにより、各ブロック壁25a、25bは、長壁部46と、長壁部46よりもタイヤ周方向の長さが小さい短壁部47とを含んでいる。本実施形態において、第1ブロック壁25aは、例えば、頂部27のタイヤ周方向の第1の側(
図3では上側)に長壁部46が配され、頂部27のタイヤ周方向の第2の側(
図3では下側)に短壁部47が配されている。第2ブロック壁25bは、例えば、頂部27のタイヤ周方向の前記第2の側に長壁部46が配され、頂部27のタイヤ周方向の前記第1の側に短壁部47が配されている。短壁部47は、例えば、長壁部46の0.75〜0.90倍のタイヤ周方向の長さを有しているのが望ましい。本実施形態では、このような第1ブロック壁25aおよび第2ブロック壁25bを有するブロック20がタイヤ周方向に複数設けられている。
【0040】
1つのブロックにおいて、第1ブロック壁25aと第2ブロック壁25bとは、互い点対称となる形状を有してるのが望ましい。これにより、ブロック20の偏摩耗を抑制することができる。
【0041】
横断サイプ30は、第1ブロック壁25aで開口する第1端28aと第2ブロック壁25bに開口する第2端28bとの間をのび、少なくとも一部が波状である。このような横断サイプ30を有するブロックは、路面と接触するときにブロックの端縁に作用する応力を適度に緩和でき、例えば、ヒールアンドトゥ摩耗を抑制することができる。また、横断サイプ30は、少なくとも一部が波状であるため、向き合うサイプ壁同士が互いに噛み合い、ブロックの見かけの剛性を高めることができる。従って、このような横断サイプ30を有するブロックは、優れた耐偏摩耗性を発揮し、かつ、タイヤの転がり抵抗を低減するのにも役立つ。
【0042】
図2に示されるように、クラウンブロック21は、横断サイプ30の配置が異なる第1クラウンブロック21A及び第2クラウンブロック21Bを含んでいる。本実施形態では、第1クラウンブロック21Aと第2クラウンブロック21Bとは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0043】
第1クラウンブロック21Aは、横断サイプ30の第1端28aが第1ブロック壁25aの頂部27のタイヤ周方向の第1の側(
図2では上側)に位置し、かつ、横断サイプ30の第2端28bが第2ブロック壁25bの頂部27のタイヤ周方向の第2の側(
図2では下側)に位置する。
【0044】
第2クラウンブロック21Bは、横断サイプ30の第1端28aが第1ブロック壁25aの頂部27の第2の側に位置し、横断サイプ30の第2端28bが第2ブロック壁25bの頂部27の第1の側に位置する。
【0045】
第1クラウンブロック21A及び第2クラウンブロック21Bは、横断サイプ30の配置が異なるため、摩耗が進行し易い部分が異なる。このため、これらのブロックを含むクラウン陸部11全体でみれば、摩耗の進行し易い部分を分散させることができる。
【0046】
一般に、ミドルブロック22は、クラウンブロック21よりも小さい接地圧を受けるため、相対的に摩耗エネルギーが小さく、クラウンブロック21よりも摩耗の進行が遅い傾向がある。このような傾向を踏まえ、発明者らは、種々の実験により、上述の様なクラウンブロック21の配置において、これに隣接する各ミドルブロック22に配された横断サイプ30の配置を揃えた方が、クラウンブロック21及びミドルブロック22の摩耗の進行を均一にできるという知見を得た。
【0047】
図3に示されるように、本発明のタイヤ1において、各ミドルブロック22は、横断サイプ30の第1端28aが第1ブロック壁25aの頂部27の第2の側(下側)に位置し、かつ、横断サイプ30の第2端が第2ブロック壁25bの頂部27の第1の側(上側)に位置している。このような横断サイプ30の配置を有する各ミドルブロック22は、上述の各クラウンブロック21とともに均一に摩耗し、各ブロックの耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0048】
また、各クラウンブロック21及び各ミドルブロック22に設けられた横断サイプ30の第1端28a及び第2端28bは、大きな応力が作用するブロック壁の頂部27からずれた位置に設けられるため、頂部27付近の剛性が維持され、ひいてはブロックの耐偏摩耗性が高められる。
【0049】
また、横断サイプ30で区画された第1領域26a及び第2領域26bは、それぞれ、ブロック壁の1つの頂部を含んでいるため、各領域の剛性がバランス良く高められる。
【0050】
図4に示されるように、さらに望ましい態様として、各クラウンブロック21及び各ミドルブロック22に設けられた横断サイプ30は、例えば、第1端28aからのびる第1部分31と、第2端28bからのびる第2部分32と、これらの間の第3部分33とを含んでいる。
【0051】
第1部分31及び第2部分32は、それぞれ、波状にタイヤ軸方向にのびているのが望ましい。第1部分31及び第2部分32は、例えば、正弦波状、矩形波状、又は、ジグザグ状等、種々の形状を採用し得る。このような第1部分31及び第2部分32は、互いに向き合うサイプ壁同士が強く噛み合うことにより、ブロックの剛性を高めることができ、ひいてはブロックの耐偏摩耗性を向上させる。
【0052】
上述の効果をさらに発揮させるために、第1部分31及び第2部分32のピークトゥピークの振幅量A1は、例えば、ブロック20のタイヤ周方向の最大長さL1(
図2に示す)の0.05〜0.15倍であるのが望ましい。
【0053】
第1部分31及び第2部分32の振幅の中心線は、例えば、タイヤ軸方向に対して5〜10°の角度θ6で傾斜しているのが望ましい。
【0054】
本実施形態の第1部分31と第2部分32とは、例えば、互いにタイヤ周方向に異なる位置に形成されているのが望ましい。このような第1部分31及び第2部分32は、横断サイプ30で区画された各領域のタイヤ周方向の剛性を緩和し、ブロック20に作用する応力をさらに小さくすることができる。
【0055】
さらに望ましい態様として、第1部分31のタイヤ軸方向の長さは、第2部分32のタイヤ軸方向の長さと同一である。これにより、ブロック20が均一に摩耗し易くなり、耐偏摩耗性がさらに向上する。
【0056】
第3部分33は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状にのびている。第3部分33のタイヤ軸方向に対する角度θ7は、例えば、40〜60°である。このような第3部分33は、第1部分31及び第2部分32とともに、ブロック20に作用する応力を小さくするのに役立つ。
【0057】
第3部分33のタイヤ軸方向の長さL3は、ブロック20のタイヤ軸方向の最大長さL2(
図2に示す)の0.15〜0.30倍であるのが望ましい。さらに望ましい態様として、第3部分33の前記長さL3は、クラウン横溝16に設けられたタイバー16a(
図2に示す)のタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。このような第3部分33は、ウェット性能と耐偏摩耗性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0058】
第1ブロック壁25aの頂部27から第1端28aまでのタイヤ周方向の距離L4、及び、第2ブロック壁25bの頂部27から第2端28bまでのタイヤ周方向の距離L5は、例えば、ブロックのタイヤ周方向の最大長さL1の0.01〜0.40倍である。
【0059】
前記距離L4及び前記距離L5は、例えば、ブロックによって相違するのが望ましい。
図4に示される第1クラウンブロック21Aでは、前記距離L4及び前記距離L5は、例えば、前記最大長さL1の0.15〜0.25倍とされている。これにより、横断サイプ30の端の位置が、頂部27や横溝から適度に離れるため、端を起点とした摩耗を効果的に抑制することができる。
【0060】
図2に示されるように、第2クラウンブロック21Bの前記距離L4及び前記距離L5は、第1クラウンブロック21Aよりも小さいのが望ましい。具体的には、第2クラウンブロック21Bにおいて、前記距離L4及び距離L5は、例えば、ブロックのタイヤ周方向の最大長さL1の1.5%〜5.0%であるのが望ましい。
【0061】
図3に示されるように、ミドルブロック22において、前記距離L4及び前記距離L5は、例えば、ブロックのタイヤ周方向の最大長さL1の3.0%〜6.0%であるのが望ましい。
【0062】
図4に示されるように、さらに望ましい態様として、横断サイプ30の第1端28a及び第2端28bは、ブロック壁25a、25bに含まれるスロット37に連なるのが望ましい。なお、スロット37は、ブロック壁25a、25bのうち、部分的にタイヤ半径方向に対する角度が大きくなり、踏面に連なる傾斜面である。これにより、横断サイプ30の端を起点とした偏摩耗がさらに抑制される。
【0063】
横断サイプ30のタイヤ周方向の両側に区画された第1領域26a及び第2領域26bは、それぞれ、ブロック中心線20cの一方側に配されかつ第1ブロック壁25又は第2ブロック壁26の頂部27を含む頂部側領域34と、ブロック中心線20cの他方側に配されかつ頂部側領域34よりも小さい踏面の面積を有する非頂部側領域35とを含んでいる。なお、ブロック中心線は、タイヤ軸方向のブロック最大幅を2等分してタイヤ周方向にのびる線である。
【0064】
第1領域26a及び第2領域26bには、それぞれ、両端が各領域内で途切れるクローズドサイプ38が形成されている。クローズドサイプ38は、各領域の過度な変形を抑制しつつ、ブロックに作用する応力をさらに緩和し、偏摩耗をさらに抑制し得る。
【0065】
本実施形態のクローズドサイプ38は、例えば、第1領域26a及び第2領域26bの頂部側領域34に設けられているのが望ましい。これにより、ブロックの剛性が維持され、ひいてはタイヤの転がり抵抗が低減される。
【0066】
クローズドサイプ38は、例えば、波状にのびているのが望ましい。クローズドサイプ38は、例えば、正弦波状、矩形波状、又は、ジグザグ状等、種々の形状を採用し得る。クローズドサイプ38のピークトゥピークの振幅量A2は、例えば、第1部分31又は第2部分32の前記振幅量A1よりも小さいのが望ましい。このようなクローズドサイプ38は、互いに向き合うサイプ壁同士が適度に噛み合い、各領域の変形を抑制することができる。
【0067】
クローズドサイプ38は、例えば、横断サイプ30よりも小さい深さを有しているのが望ましい。具体的には、クローズドサイプ38の深さは、主溝の深さの0.20〜0.50倍であるのが望ましい。
【0068】
図2及び
図3に示されるように、本実施形態では、各クラウンブロック21に設けられたクローズドサイプ38cと、各ミドルブロック22に設けられたクローズドサイプ38mとは、互いに異なる構成を有している。
【0069】
図2に示されるように、クラウンブロック21に設けられたクローズドサイプ38cは、例えば、ブロック中心線(図示省略)に跨ることなく、全体が頂部側領域34に形成されている。なお、ブロック中心線は、タイヤ軸方向のブロック最大幅を2等分してタイヤ周方向にのびる線である。これにより、非頂部側領域35の剛性低下が抑制され、ひいては各領域の偏摩耗が抑制される。
【0070】
クラウンブロック21に設けられたクローズドサイプ38cは、例えば、同じブロックに形成された横断サイプ30の第3部分33に沿ってのびているのが望ましい。なお、ジグザグ状のクローズドサイプ38が第3部分33に沿ってのびるとは、クローズドサイプ38の振幅の中心線が第3部分33と同程度に傾斜している態様を意味する。
【0071】
前記クローズドサイプ38cの波状の振幅の中心線は、例えば、タイヤ軸方向に対して30〜50°の角度θ1で配されているのが望ましい。
【0072】
各クラウンブロック21において、第1領域26aに設けられたクローズドサイプ38と第2領域26bに設けられたクローズドサイプ38とは、タイヤ軸方向で互いにオーバーラップすることなく形成されているのが望ましい。このようなクローズドサイプ38の配置は、クラウンブロック21の剛性を維持し、その耐摩耗性を高めることができる。
【0073】
第1クラウンブロック21Aに設けられたクローズドサイプ38cと、第2クラウンブロック21Bに設けられたクローズドサイプ38cとは、互いに逆向きに傾斜しているのが望ましい。これにより、各サイプのエッジにより多方向に摩擦力を発揮し、ひいてはウェット性能が高められる。
【0074】
図3に示されるように、各ミドルブロック22に設けられたクローズドサイプ38mは、それぞれ、同じ向きに傾斜している。望ましい態様として、前記クローズドサイプ38mは、例えば、同じブロックに形成された横断サイプ30の第1部分31又は第2部分32に沿ってのびているのが望ましい。なお、ジグザグ状のクローズドサイプ38mがジグザグ状の第1部分31又は第2部分32に沿ってのびるとは、クローズドサイプ38mの振幅の中心線と第1部分31又は第2部分32の振幅の中心線とが、同程度に傾斜している態様を意味する。
【0075】
前記クローズドサイプ38mの波状の振幅の中心線は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記角度θ1よりも小さい角度θ2で配されているのが望ましい。具体的には、前記角度θ2は、例えば、5〜15°であるのが望ましい。
【0076】
各ミドルブロック22において、第1領域26aに設けられたクローズドサイプ38と第2領域26bに設けられたクローズドサイプ38とは、タイヤ軸方向で互いにオーバーラップして形成されているのが望ましい。このようなミドルブロック22は、上述したクラウンブロック21のクローズドサイプ38の配置と組み合わされることにより、各ブロックの摩耗の進行を均一にすることができる。
【0077】
図1に示されるように、ミドルブロック22に設けられたクローズドサイプ38mの少なくとも1つは、第1クラウンブロック21Aの横断サイプ30の第1部分31又は第2部分32をタイヤ軸方向に投影した領域と交わる位置に形成されているのが望ましい。これにより、ミドルブロック22と第1クラウンブロック21Aとが連動して路面を追従し易くなり、ひいては転がり抵抗を低減することができる。
【0078】
上述の効果を発揮するために、前記クローズドサイプ38のタイヤ周方向の形成幅S1は、例えば、第1クラウンブロック21Aのタイヤ周方向の最大長さL1(
図2に示す)の5〜10%の範囲であるのが望ましい。また、前記クローズドサイプ38は、例えば、第1クラウンブロック21Aに形成された横断サイプ30の端からタイヤ周方向の両側に前記最大長さL1の10%の範囲内に形成されるのが望ましい。
【0079】
図5には、
図1のショルダー陸部13の拡大図が示されている。
図5に示されるように、ショルダー陸部13は、例えば、複数のショルダー横溝18によって区画された複数のショルダーブロック23を含んでいる。
【0080】
ショルダー横溝18は、例えば、タイヤ軸方向に沿ってのびる一対の第1横溝部43と、これらの間でタイヤ軸方向に対して傾斜してのびる第2横溝部44とを含んでいる。第2横溝部44のタイヤ軸方向に対する角度θ8は、例えば、25〜35°である。
【0081】
望ましい態様として、ショルダー横溝18の溝深さは、例えば、ショルダー主溝5の溝深さの0.05〜0.25倍である。これにより、高い剛性を有するショルダー陸部13がトレッド部の両側に配され、ひいてはクラウン陸部11及びミドル陸部12(
図1に示す)に作用する接地荷重が緩和される。従って、クラウン陸部11及びミドル陸部12の耐偏摩耗性がさらに高められる。
【0082】
本実施形態のショルダーブロック23は、例えば、縦長状の踏面を有している。望ましい態様として、ショルダーブロック23の踏面には、サイプが設けられていない。このようなショルダーブロック23は、優れた耐久性を発揮することができる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0084】
図1の基本パターンを有するサイズ11R22.5の重荷重用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、各横断サイプの端がブロック壁の頂部からのびているタイヤが試作された。比較例2として、クラウン陸部に、第1クラウンブロックのみがタイヤ周方向に複数設けられたタイヤが試作された。比較例2のタイヤは、換言すれば、クラウン陸部に設けられた横断サイプが、全て同じ向きで形成されている。なお、比較例1及び比較例2のタイヤは、上記の構成を除き、実質的に
図1に示されるタイヤと同じ構成を有している。テストタイヤのウェット性能、耐摩耗性、偏摩耗の有無、及び、転がり抵抗がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:22.5×8.25
タイヤ内圧:720kPa
テスト車両:10t積トラック、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載
タイヤ装着位置:全輪
【0085】
<ウェット性能>
下記の条件で、テスト車両が全長10mのテストコースを通過したときの通過タイムが測定された。結果は、比較例1の通過タイムを100とする指数で表示されている。数値が小さい程良好である。
路面:厚さ5mmの水膜を有するアスファルト
発進方法:2速‐1500rpm固定でクラッチを繋いで発進する。
【0086】
<耐摩耗性>
上記テスト車両で乾燥路面を一定距離走行した後のクラウンブロックの摩耗量が測定された。結果は、比較例1のクラウンブロックの摩耗量を100とする指数で表示されている。数値が小さい程、耐摩耗性が優れていることを示す。
【0087】
<偏摩耗の有無>
上記テスト車両で乾燥路面を一定距離走行した後、ブロック壁の頂部の偏摩耗や、ヒールアンドトゥ摩耗の有無が確認された。
【0088】
<転がり抵抗性能>
転がり抵抗試験機を用い、下記の条件で転がり抵抗が測定された。評価は、比較例1の値を100とする指数で表示されている。数値が小さい程、転がり抵抗が小さく良好である。
荷重:25.01kN
速度:80km/h
テスト結果が表1に示される。なお、表1の実施例の各パラメータは、第1クラウンブロックのものである。
【0089】
【表1】
【0090】
表1から明らかなように、実施例のタイヤは、偏摩耗が抑制されていることが確認できた。