【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点にかかる熱交換器の製造方法は、溶射膜を形成する工程と、塗膜を形成する工程と、フィンと扁平管とを接着する工程と、を有している。ここで、溶射膜を形成する工程は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平管の外表面に、亜鉛を含む溶射材を溶射して最大粗さが10〜25μmになるように溶射膜を形成する工程である。塗膜を形成する工程は、溶射膜が形成された扁平管の外表面に、アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンと扁平管とを接着する樹脂を含む接着剤を塗布して塗膜を形成する工程である。フィンと扁平管とを接着する工程は、フィンに形成された挿入部に、溶射膜及び塗膜が形成された扁平管を嵌め込み、塗膜を介してフィンと扁平管とを接着する工程である。ここで、最大粗さは、JIS B 6001:2001に準拠して測定される値である。
【0006】
ここでは、上記のように、扁平管の外表面に塗膜を形成するのに先だって、扁平管の外表面に溶射膜を最大粗さが10〜25μmになるように形成している。すなわち、最大粗さが10〜25μmになるように溶射膜が形成された扁平管の外表面に塗膜を形成している。このため、ここでは、溶射膜に含まれる亜鉛によって、扁平管を防食する効果を得ることができる。しかも、ここでは、溶射膜が形成された扁平管の外表面の最大粗さを10〜25μmの範囲内にすることによって、扁平管の外表面の表面粗さを塗膜の付着性が良好になる程度まで大きくすることができるため、扁平管の外表面に塗膜を形成する接着剤を均一に塗布できるようになり、扁平管の外表面に均一で付着性の良い塗膜を形成する効果を得ることができる。
【0007】
これにより、ここでは、扁平管とフィンとが接着によって接合されてなる熱交換器の製造方法において、扁平管とフィンとの間の接着強度や熱伝導性能のバラつきを抑えることができる。
【0008】
第2の観点にかかる熱交換器の製造方法は、第1の観点にかかる熱交換器の製造方法において、溶射膜を形成する工程時に、溶射膜が、中心線平均粗さが0.6〜2.5μmになるように扁平管の外表面に形成される。ここで、中心線平均粗さは、JIS B 6001:2001に準拠して測定される値である。
【0009】
ここでは、上記のように、溶射膜が形成された扁平管の外表面の表面粗さを、最大粗さを10〜25μmの範囲内にするだけでなく、中心線平均粗さを0.6〜2.5μmの範囲内にすることによって、扁平管とフィンとの間の接着強度や熱伝導性能のバラつきをさらに抑えることができる。
【0010】
第3の観点にかかる熱交換器の製造方法は、第1又は第2の観点にかかる熱交換器の製造方法において、溶射膜を形成する工程が、扁平管の外表面に溶射材を溶射する溶射工程と、溶射工程後に扁平管の温度を上げる拡散工程と、を有している。
【0011】
ここでは、上記のように、扁平管の外表面に溶射膜を形成するのにあたり、扁平管の外表面に溶射材を溶射するだけでなく、扁平管の温度を上げて溶射材を扁平管の外表面に拡散させることによって、溶射膜の扁平管の外表面への付着性を向上させるとともに、扁平管の外表面を所望の表面粗さの範囲内にするのに寄与できる。
【0012】
第4の観点にかかる熱交換器の製造方法は、第1〜第3の観点のいずれかにかかる熱交換器の製造方法において、接着剤が、樹脂よりも熱伝導性の高い熱伝導性フィラーを含んでいる。
【0013】
上記のように、扁平管の外表面に形成される塗膜が熱伝導性フィラーを含むようにすると、塗膜を介して接着されたフィンと扁平管との間の熱伝導性能を向上させることができるものの、扁平管の外表面に塗膜を形成する接着剤を均一に塗布しにくくなる傾向が現れるため、均一で付着性の良い塗膜を形成することが難しくなる傾向にある。
【0014】
しかし、ここでは、上記のように、扁平管の外表面に塗膜を形成するのに先だって、扁平管の外表面に最大粗さが10〜25μmになるように溶射膜を形成するようにしている。すなわち、最大粗さが10〜25μmになるように溶射膜が形成された扁平管の外表面に塗膜を形成しているため、接着剤に熱伝導性フィラーを含むものを使用するにもかかわらず、扁平管の外表面に接着剤を均一に塗布することができ、扁平管の外表面に均一で付着性の良い塗膜を形成する効果を得ることができる。
【0015】
第5の観点にかかる熱交換器の製造方法は、第1〜第4の観点のいずれかにかかる熱交換器の製造方法において、フィンと扁平管とを接着する工程後に、扁平管の管軸方向の端部をアルミニウム又はアルミニウム合金製のヘッダに扁平管の管軸方向の端部をロウ付け又は溶接によって接合する工程、をさらに有している。
【0016】
ここでは、上記のように、耐圧強度が要求される扁平管とヘッダとの接合については、フィンと扁平管との接着による接合とは異なり、ロウ付け又は溶接によって行うようにしている。このため、ここでは、フィンと扁平管とを接着によって接合しているにもかかわらず、フィンと扁平管との間の熱伝導性能が良好で、しかも、扁平管とヘッダとの接合部分における耐圧強度も良好な熱交換器を得ることができる。
【0017】
第6の観点にかかる熱交換器の製造方法は、第5の観点にかかる熱交換器の製造方法において、塗膜を形成する工程時に、扁平管の管軸方向の端部に接着剤を塗布しないようにする、又は、扁平管の管軸方向の端部に塗布された接着剤を除去する。
【0018】
扁平管の外表面に塗膜を形成する際に、扁平管の管軸方向の端部に接着剤を塗布したままにしておくと、扁平管とヘッダとをロウ付け又は溶接によって接合する際に、扁平管の管軸方向の端部に形成された塗膜を除去する作業等が必要となり、ロウ付け又は溶接作業を阻害するおそれがある。
【0019】
そこで、ここでは、上記のように、扁平管の外表面に塗膜を形成するにあたり、扁平管の管軸方向の端部に接着剤を塗布しない又は扁平管の管軸方向の端部に塗布された接着剤を除去するようにしている。これにより、ここでは、扁平管とヘッダとをロウ付け又は溶接によって接合する作業をスムーズに行うことができ、熱交換器の生産性を向上させることができる。
【0020】
第7の観点にかかる熱交換器は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平管と、扁平管が嵌め込まれる挿入部が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィンと、溶射膜と、塗膜と、を有している。溶射膜は、扁平管の外表面に最大粗さが10〜25μmになるように形成された亜鉛を含んでいる。塗膜は、溶射膜が形成された扁平管の外表面に形成されており、フィンと扁平管とを接着する樹脂を含んでいる。ここで、最大粗さは、JIS B 6001:2001に準拠して測定される値である。
【0021】
ここでは、上記のように、最大粗さが10〜25μmになるように溶射膜が形成された扁平管の外表面に塗膜を形成している。このため、ここでは、溶射膜に含まれる亜鉛によって、扁平管を防食する効果を得ることができる。しかも、ここでは、溶射膜が形成された扁平管の外表面の最大粗さを10〜25μmの範囲内にすることによって、扁平管の外表面の表面粗さを塗膜の付着性が良好になる程度まで大きくすることができるため、扁平管の外表面に均一で付着性の良い塗膜を形成する効果を得ることができる。
【0022】
これにより、ここでは、扁平管とフィンとが接着によって接合されてなる熱交換器において、扁平管とフィンとの間の接着強度や熱伝導性能のバラつきを抑えることができる。
【0023】
第8の観点にかかる熱交換器は、第7の観点にかかる熱交換器において、溶射膜が、中心線平均粗さが0.6〜2.5μmになるように扁平管の外表面に形成されている。ここで、中心線平均粗さは、JIS B 6001:2001に準拠して測定される値である。
【0024】
ここでは、上記のように、溶射膜が形成された扁平管の外表面の表面粗さを、最大粗さを10〜25μmの範囲内にするだけでなく、中心線平均粗さを0.6〜2.5μmの範囲内にすることによって、扁平管とフィンとの間の接着強度や熱伝導性能のバラつきをさらに抑えることができる。
【0025】
第9の観点にかかる熱交換器は、第7又は第8の観点にかかる熱交換器において、塗膜が、樹脂よりも熱伝導性の高い熱伝導性フィラーを含んでいる。
【0026】
上記のように、扁平管の外表面に形成される塗膜が熱伝導性フィラーを含むようにすると、塗膜を介して接着されたフィンと扁平管との間の熱伝導性能を向上させることができるものの、扁平管の外表面に塗膜を形成する接着剤を均一に塗布しにくくなる傾向が現れるため、均一で付着性の良い塗膜を形成することが難しくなる傾向にある。
【0027】
しかし、ここでは、上記のように、最大粗さが10〜25μmになるように溶射膜が形成された扁平管の外表面に塗膜を形成しているため、接着剤に熱伝導性フィラーを含むものを使用するにもかかわらず、扁平管の外表面に接着剤を均一に塗布することができ、扁平管の外表面に均一で付着性の良い塗膜を形成する効果を得ることができる。
【0028】
第10の観点にかかる熱交換器は、第7〜第9の観点のいずれかにかかる熱交換器において、扁平管の管軸方向の端部がロウ付け又は溶接によって接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金製のヘッダ、をさらに有している。
【0029】
ここでは、上記のように、耐圧強度が要求される扁平管とヘッダとの接合については、フィンと扁平管との接着による接合とは異なり、ロウ付け又は溶接によって行うようにしている。このため、ここでは、フィンと扁平管との間の熱伝導性能が良好で、しかも、扁平管とヘッダとの接合部分における耐圧強度も良好な熱交換器を得ることができる。