(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば上記したジェット吐水口は、吐水の勢いを増加させるためにジェット吐水口の断面積を小さくする場合がある。かかる場合、ジェット吐水口に接続されるオーバーフロー流路にあっては、圧力損失が増加するため、排水能力が低下することがある。オーバーフロー流路の排水能力が低下すると、例えばタンク内の水位が規定水位以上にまで上昇した場合に、オーバーフロー流路からジェット吐水口へ洗浄水が排水されにくくなってタンクから溢れ出るおそれがある。
【0006】
このように、従来技術には、タンクから洗浄水が溢れ出ることを抑制するという点でさらなる改善の余地がある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、洗浄水を貯留するタンクから洗浄水が溢れ出ることを抑制することができる洗浄水供給装置および水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る洗浄水供給装置は、便器本体へ供給される洗浄水を貯留するタンクと、上流側に入水口、下流側に出水口を有する通水路と、前記通水路と外部とを連通する大気導入口と、前記通水路内に設けられ、前記洗浄水の水圧によって動作することにより通水時には前記入水口と前記出水口とを連通させ、非通水時には前記通水路と前記大気導入口とを連通させる弁体と、前記大気導入口から溢れ出た洗浄水を受ける水受け部とを有するバキュームブレーカと、前記タンク内において規定水位以上の洗浄水が供給された場合に前記便器本体へ洗浄水を流出させるオーバーフロー流路と、前記水受け部に接続され、前記水受け部で受けた洗浄水を排水する排水流路とを備え、前記タンクは、前記排水流路の排水を前記タンク内へ導入する排水導入部と、前記タンクに対する洗浄水の給排水時に前記タンク内で洗浄水と空気とが置換されるように、前記タンク内と前記タンク外とで空気を流通させる空気流通部とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、例えばタンク内の水位が規定水位以上にまで上昇し、洗浄水がオーバーフロー流路から便器本体のジェット吐水口へ排水される際、空気流通部からタンク内へ空気が導入され、洗浄水と空気の置換がスムーズに行われる。そのため、例えばオーバーフロー流路の排水能力が低下した場合であっても、オーバーフロー流路からジェット吐水口へ洗浄水が排水されやすくなり、結果として洗浄水がタンクから溢れ出ることを抑制することができる。
【0010】
さらに、排水流路からの排水は排水導入部を介してタンクへ排水され、かかる排水導入部とは別に空気流通部を備えることから、例えばタンクへの給水時にタンク内から導出される空気と排水流路からの排水とが混ざりにくくなる。これにより、タンク内から導出される空気に排水流路からの排水が混ざって、タンク外へと飛散して溢れ出ることを抑制することができる。
【0011】
また、前記排水導入部は、前記タンクに形成され、前記排水流路の排水を受ける排水受け部と、前記タンクの前記排水受け部の、前記排水流路の下流側端部と大気開放した空間を介して対向する位置に開口され、前記排水流路の排水を前記タンク内へ導入する排水孔とを備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、例えばタンク内の洗浄水が排水孔を通って排水受け部へ上がってきた場合であっても、排水流路と排水孔とは大気開放した空間を介して位置されることから、上がってきた洗浄水が排水流路を介してバキュームブレーカ等へ溢れ出ることを抑制することができる。
【0013】
また、前記空気流通部は、前記タンクの前記排水受け部に開口され、空気を流通させる空気流通孔と、前記空気流通孔の周囲から上方へ向けて突出するように形成される周壁部とを備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、例えばタンク内の洗浄水が空気流通孔へ上がってくる場合であっても、空気流通孔はタンクの排水受け部に開口されることから、上がってきた洗浄水は、排水受け部へと流れ、よってタンク外へ溢れることを確実に抑制することができる。
【0015】
また、前記排水流路は、前記下流側端部の排水の流れ方向に沿った中心線が、前記排水孔の排水の流れ方向に沿った中心線に対して交差するように形成されることを特徴とする。
【0016】
これにより、例えばタンク内の洗浄水が排水孔へ上がってくる場合であっても、洗浄水は、排水流路の下流側端部に当たって勢いが弱まるため、排水流路へ流れ込みにくく、よってバキュームブレーカ等へ溢れ出ることをより一層抑制することができる。
【0017】
また、前記排水流路は、前記下流側端部の下端が前記排水孔の上方に位置するように形成されることを特徴とする。
【0018】
これにより、排水流路からの排水は排水孔へ流れ込みやすくなる一方、例えばタンク内の洗浄水が排水孔へ上がってくる場合であっても、上がってきた洗浄水は、排水流路の下流側端部に当たりやすくなり、排水流路へ流れ込みにくくなる。すなわち、排水流路の排水性の向上と、バキュームブレーカ等へ溢れ出ることの抑制との両立を図ることができる。
【0019】
また、前記排水受け部は、底面が前記排水孔に向けて下り傾斜となるように形成されることを特徴とする。これにより、排水流路から排水受け部へ流れた排水を効率よく捕集して排水孔からタンク内へ導入させることが可能となる。そのため、洗浄水がタンクから溢れ出ることをより確実に抑制することができる。
【0020】
また、前記空気流通部の上方であって、平面視において前記空気流通部を覆うように配置される蓋部を備えることを特徴とする。これにより、タンクの周辺の機器に生じる結露を抑制したり、洗浄水がタンク外へ溢れ出ることを抑制したりすることができる。
【0021】
また、実施形態の一態様に係る水洗大便器は、上記洗浄水供給装置のいずれか一つを備えることを特徴とする。これにより、水洗大便器において、洗浄水を貯留するタンクから洗浄水が溢れ出ることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様によれば、洗浄水を貯留するタンクから洗浄水が溢れ出ることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する洗浄水供給装置および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
<1.洗浄水供給装置を備える水洗大便器の構成>
先ず、洗浄水供給装置を備える水洗大便器の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る洗浄水供給装置を備える水洗大便器を示す全体構成図である。なお、
図1および
図2以降に示す図は、いずれも模式図である。
【0026】
図1に示すように、水洗大便器100は、例えばトイレ室の床面に載置される便器本体200と、便器本体200の後方に配置され、便器本体200に対して洗浄水を供給する洗浄水供給装置1とを備える。
【0027】
便器本体200は、汚物を受けるボウル部210と、ボウル部210の底部から後方へ延びる排水トラップ管路220とを備える。ボウル部210には、リム吐水を行うリム吐水口212およびジェット吐水を行うジェット吐水口214が形成される。リム吐水口212は、ボウル部210の上部後方に形成され、ボウル部210の上縁に沿って洗浄水を吐出する。
【0028】
ジェット吐水口214は、ボウル部210の底部に形成され、排水トラップ管路220に向けて洗浄水を吐出する。かかるジェット吐水口214からの洗浄水の吐出によって、排水トラップ管路220内を洗浄水で急速に満たし、サイホン作用を早期に発生させることができる。排水トラップ管路220は、封水を形成するとともに、下水配管(図示せず)と連通している。
【0029】
洗浄水供給装置1は、図示しない制御部によって制御されるバルブユニット600と、バルブユニット600の下流に設けられ洗浄水を貯留するタンク800と、タンク800内の下流に設けられ洗浄水を加圧する加圧ポンプ900とを備える。
【0030】
バルブユニット600の上流側には、図示しない給水源からの洗浄水を供給する給水路310が接続される。また、バルブユニット600の下流側には、リム吐水口212に洗浄水を供給するためのリム側給水路320とタンク800に洗浄水を供給するためのタンク側給水路330とが接続される。
【0031】
バルブユニット600は、定流量弁620と、定流量弁620の下流に設けられるダイヤフラム式の給水弁640と、給水弁640の下流に設けられるバキュームブレーカ680と、バキュームブレーカ680の下流に設けられる切替弁660とを備える。
【0032】
定流量弁620は、給水路310から定流量弁620に流れ込んで下流側へ向かう洗浄水の流量を一定にする。給水弁640は、例えばダイヤフラムを含んで構成され、その開閉により、リム吐水口212およびジェット吐水口214における洗浄水の吐水と止水とを切替える。
【0033】
バキュームブレーカ680は、洗浄水の逆流を防止する。かかるバキュームブレーカ680の具体的な構成については、後述する。なお、バキュームブレーカ680から溢れ出た洗浄水は、水受け部684によって捕集された後、水受け部684の底面に接続された排水路360によってタンク800に排出される。
【0034】
切替弁660は、給水源からの洗浄水の供給先を例えば便器本体200のリム吐水口212とタンク800とに切り替える。すなわち、切替弁660は、リム側給水路320またはタンク側給水路330へ向けて洗浄水を供給する。
【0035】
タンク800は、便器本体200のジェット吐水口214へ供給される洗浄水を貯留する。タンク800の下部には、ポンプ側給水路340が接続されており、ポンプ側給水路340の下流端には加圧ポンプ900が接続される。
【0036】
また、タンク800の上部には、オーバーフロー流路342が接続される。オーバーフロー流路342は、例えばタンク800内において規定水位WL以上の洗浄水が供給された場合に便器本体200へ洗浄水を流出させる。詳しくは、オーバーフロー流路342は、規定水位WL以上となった洗浄水を、加圧ポンプ900を経由させずに、ジェット側給水路350を介して便器本体200のジェット吐水口214へ流出させる。なお、タンク800の構成については、後に詳しく説明する。
【0037】
加圧ポンプ900は、ジェット側給水路350によりジェット吐水口214と接続されており、タンク800に貯水された洗浄水を加圧してジェット側給水路350を介してジェット吐水口214へ供給する。
【0038】
<2.バキュームブレーカの構成>
次に、実施形態に係るバキュームブレーカ680の具体的な構成について
図2を参照して説明する。
図2は、洗浄水供給装置1におけるバキュームブレーカ680および切替弁660周辺の断面図である。
【0039】
図2に示すように、実施形態に係る洗浄水供給装置1では、給水源から給水弁640を介してバキュームブレーカ680へ至る給水路310は、上方に延びており、洗浄水はかかる給水路310を上昇してバキュームブレーカ680へ流入する。
【0040】
バキュームブレーカ680は、通水路681と、大気導入口682と、弁体683と、水受け部684とを備える。
【0041】
通水路681は、上流側(給水弁640側)に入水口685、下流側(切替弁660側)に出水口686を有する。入水口685は鉛直方向に向けて開口し、出水口686は水平方向に向けて開口する。大気導入口682は、通水路681と外部とを連通する開口部であり、入水口685の上方に設けられ、鉛直方向に向けて開口する。
【0042】
弁体683は、通水路681内に設けられ、洗浄水の水圧によって通水路681内を上下動する。かかる弁体683は、通水時には水圧により上昇して入水口685と出水口686とを連通させるとともに、大気導入口682を閉鎖する。そして、出水口686から流出した洗浄水は、切替弁660へ流入し、切替弁660によって流出先がリム吐水口212とタンク800との間で切り替えられる。
【0043】
また、弁体683は、
図2において破線で示すように、非通水時には自重により降下して通水路681と大気導入口682とを連通させるとともに、入水口685を閉鎖する。このように、バキュームブレーカ680は、非通水時に大気導入口682から外部の空気を流路内に導入することにより、流路内が負圧になることで生じる洗浄水の逆流を防止する。
【0044】
水受け部684は、大気導入口682の上部に設けられる。水受け部684は、大気導入口682と連通しており、大気導入口682から溢れ出た洗浄水を受ける。詳しくは、水受け部684は、大気導入口682の出口部分を取り囲むように形成された箱状の水槽であり、例えば非通水から通水の状態に切り替わって弁体683が大気導入口682を閉鎖する際等に、大気導入口682から溢れ出た洗浄水を受ける。
【0045】
水受け部684の底面には、排水路360が接続されており、水受け部684により捕集された洗浄水は、排水路360経由でタンク800に排出される。なお、かかる排水路360については、後に詳説する。
【0046】
上記のように構成されたバキュームブレーカ680を含むバルブユニット600は、例えばタンク800の上方に配置される。
【0047】
<3.タンク等の構成>
次に、タンク800の構成、および、タンク800とバキュームブレーカ680との接続部分の構成について
図3以降を参照して詳しく説明する。
図3は、タンク800等を示す平面図である。なお、
図3においては、タンク800とバキュームブレーカ680との接続部分を図示するため、バキュームブレーカ680の水受け部684のみを想像線で示し、バキュームブレーカ680のその他の構成部品については図示を省略している。
【0048】
図3に示されるように、水受け部684は、タンク800の上方に配置される。また、水受け部684の底面には、受けた洗浄水を流出させる流出孔688が開口され、かかる流出孔688に排水路360が接続される。
【0049】
したがって、水受け部684にあっては、大気導入口682(
図2参照)から溢れ出て受けた洗浄水が、矢印A1で示すように、流出孔688へ流れ、流出孔688から排水路360を介してタンク800に排出される。なお、以下では、水受け部684から排出される洗浄水を「排水」と記載する場合がある。
【0050】
図4は、
図3のIV−IV線断面図である。
図4に示すように、上記した排水路360は、連結管361と、排水流路362とを備える。
【0051】
連結管361は、例えばゴムなどの弾性部材によって製作された連結ホースであり、水受け部684と排水流路362とを連結する。具体的には、連結管361は、一端が水受け部684の流出孔688に接続される一方、他端が排水流路362に接続され、水受け部684の排水を排水流路362へ流通させる。
【0052】
排水流路362は、上記したように水受け部684に連結管361を介して接続され、水受け部684で受けた洗浄水を排水する。また、排水流路362は、バキュームブレーカ680の水受け部684とタンク800とを接続する継手400の一部として構成される。かかる継手400は、タンク800の上部に取り付けられる。
【0053】
図5は、タンク800から取り外した状態の継手400を示す斜視図である。
図5に示すように、継手400は、上記した排水流路362と、蓋部410と、挿通孔420と、圧入リブ430とを備える。
【0054】
図4および
図5に示すように、排水流路362は、上流側端部363が例えば鉛直方向に延びる略円筒状となるように形成される。なお、上記した連結管361は、排水流路362の上流側端部363に接続される。
【0055】
排水流路362は、水受け部684側である上流側からタンク800側である下流側に向かう途中で、流れ方向を屈曲させるように形成され、下流側端部364の排水の流れ方向に沿った中心線364aが鉛直方向に対して交差(傾斜)するように形成される。なお、この明細書において「交差」なる語句は、2つの直線(例えば中心線や鉛直方向)が同一平面上で交わることのみを意味するものではなく、2つの直線の関係がねじれの位置である場合も含めるものとする。
【0056】
また、排水流路362の下流側端部364は、例えば内部に流路を有する略直方体状に形成される。なお、排水流路362において、上流側端部363や下流側端部364の形状は、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0057】
蓋部410は、排水流路362から側方へ向けて延設される略平板状の板部411と、板部411の端部において下方へ向けて突出する突出部412とを備える。蓋部410は、後述する空気流通部380の上方に配置されることで、タンク800の周辺の機器に生じる結露を抑制したり、洗浄水がタンク800外へ溢れ出ることを抑制したりすることができるが、これについては後述する。
【0058】
挿通孔420は、継手400をタンク800に固定する固定ネジ421(
図4参照)が挿通される孔であり、適宜位置(例えば蓋部410)に形成される。なお、タンク800において挿通孔420と対応する位置には、雌ネジが螺刻された取付孔390(
図4参照)が形成される。
【0059】
圧入リブ430は、蓋部410の板部411から下方に向けて突出するように形成される。なお、
図5に示す例では、圧入リブ430は、複数本(例えば2本)形成されるが、これに限定されるものではなく、例えば1本あるいは3本以上であってもよい。なお、タンク800において圧入リブ430と対応する位置には、圧入リブ430が圧挿可能な支持部391(
図4参照)が形成される。
【0060】
したがって、圧入リブ430がタンク800の支持部391に圧挿されることで、継手400はタンク800に対して位置決めされつつ支持される。次いで、例えば固定ネジ421が挿通孔420および取付孔390に挿通されて締結されることで、継手400はタンク800に締結固定される。
【0061】
なお、継手400のタンク800に対する取付けは、必ずしも上記した圧入リブ430および固定ネジ421を用いることを要さず、圧入リブ430および固定ネジ421のいずれか一方であってもよく、また、例えばスナップフィットで係止するなどその他の構成で取り付けてもよい。
【0062】
図4に示すように、タンク800は、上面の一部または全部が開口される箱状の本体部801と、本体部801の開口を塞ぐように配置される上蓋部802とを備え、かかる本体部801と上蓋部802によって区画される内部の空間800aに洗浄水が貯留される。なお、上記した継手400は、タンク800の上蓋部802に取り付けられる。
【0063】
また、タンク800は、排水導入部370と、空気流通部380とを備える。排水導入部370は、矢印A2で示すように、排水流路362の排水をタンク800内へ導入する。
【0064】
空気流通部380は、排水導入部370とは別に設けられる。空気流通部380は、矢印B,Cで示すように、タンク800に対する洗浄水の給排水時にタンク800内で洗浄水と空気とが置換されるように、タンク800内とタンク800外とで空気を流通させる。
【0065】
なお、上記した「タンク800に対する洗浄水の給排水時」は、例えばタンク800に対し、タンク側給水路330(
図1参照)からの給水、水受け部684の排水の導入、ポンプ側給水路340(
図1参照)からジェット吐水口214への吐水、および、オーバーフロー流路342からジェット吐水口214への排水などが含まれるが、これに限定されるものではない。また、
図4では、洗浄水の流れを破線の矢印で示し、空気の流れを一点鎖線の矢印で示している。
【0066】
以下、排水導入部370および空気流通部380についてさらに詳しく説明する。排水導入部370は、排水受け部371と、排水孔372とを備える。
【0067】
排水受け部371は、タンク800の上蓋部802に形成され、排水流路362の排水を受ける。具体的には、排水受け部371は、タンク800から上方に向けて突出するように形成された壁部371aを含み、かかる壁部371aは、
図3に示すように、排水流路362および空気流通部380を平面視において取り囲む筒状に形成される。なお、以下では、タンク800の上面において、排水受け部371の壁部371aによって囲まれた部位を、排水受け部371の底面371bと記載する場合がある。
【0068】
図4に示すように、排水孔372は、タンク800の排水受け部371が形成された部位、すなわち、排水受け部371の底面371bに開口される開口部である。また、排水孔372は、タンク800の排水受け部371の、排水流路362の下流側端部364と大気開放した空間を介して対向する位置に開口される。すなわち、排水流路362と排水孔372とは、大気開放した空間を介することで縁切りされる。そして、排水孔372は、排水流路362の排水をタンク800内へ導入する(矢印A2参照)。
【0069】
また、排水受け部371の底面371bは、排水孔372に向けて水平線に対して下り傾斜となるように形成される。これにより、排水流路362から排水受け部371へ流れた排水を効率よく捕集して排水孔372からタンク800内へ導入させることが可能となる(矢印A3参照)。そのため、洗浄水(排水)がタンク800から溢れ出ることをより確実に抑制することができる。
【0070】
空気流通部380は、空気流通孔381と、周壁部382とを備える。空気流通孔381は、タンク800の排水受け部371が形成された部位、すなわち、排水受け部371の底面371bに開口される開口部であり、空気を流通させる(矢印B,C参照)。
【0071】
周壁部382は、空気流通孔381の周囲から上方へ向けて突出するように形成される。なお、周壁部382の高さは、排水受け部371の壁部371aの高さより僅かに低くなるように設定されるが、これに限られず、例えば同じであってもよい。このように、周壁部382の高さを、排水受け部371の壁部371aと同程度に設定することで、排水受け部371で受けた洗浄水が空気流通部380へ流入しにくくなり、洗浄水が空気の流通を阻害することを抑制することができる。
【0072】
本実施形態に係る洗浄水供給装置1にあっては、上記した排水導入部370と、空気流通部380とを備えることから、洗浄水を貯留するタンクから洗浄水が溢れ出ることを抑制することができる。
【0073】
具体的に説明すると、例えば上記したジェット吐水口214の断面積が比較的小さく設定された場合、ジェット吐水口214の吐水の勢いは増加するが、ジェット吐水口214に接続されるオーバーフロー流路342にあっては、圧力損失が増加して排水能力が低下することがある。そのため、例えばタンク800内の水位が規定水位WL以上にまで上昇した場合に、オーバーフロー流路342からジェット吐水口214へ洗浄水が排水されにくくなってタンク800から溢れ出るおそれがある。
【0074】
そこで、本実施形態において、タンク800には、排水導入部370とは別に、空気流通部380が設けられるようにした。これにより、例えば洗浄水がオーバーフロー流路342からジェット吐水口214へ排水される際、空気流通部380の空気流通孔381からタンク800内へ空気が導入され(矢印C参照)、洗浄水と空気の置換がスムーズに行われる。そのため、例えばオーバーフロー流路342の排水能力が低下した場合であっても、オーバーフロー流路342からジェット吐水口214へ洗浄水が排水されやすくなり、結果として上記したような洗浄水がタンク800から溢れ出ることを抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施形態にあっては、排水流路362からの排水は排水導入部370を介してタンク800へ排水され、かかる排水導入部370とは別に空気流通部380を備えるように構成される。そのため、例えばタンク800への給水時にタンク800内から導出される空気(矢印B参照)と排水流路362からの排水(矢印A2参照)とが混ざりにくくなる。これにより、タンク800内から導出される空気に排水流路からの排水が混ざって、タンク800外へと飛散して溢れ出ることも抑制することができる。
【0076】
図4の説明を続ける。空気流通部380の上方であって、周壁部382から所定距離離間した位置には、上記した蓋部410が配置される。蓋部410は、
図3に示すように、平面視において空気流通部380を覆うように配置される。
【0077】
例えばタンク800への給水時にタンク800内から導出される空気(矢印B参照)は、水分を多く含むことがあるが、蓋部410が上記した位置に配置されるため、かかる空気が蓋部410に当たることとなる。これにより、例えば環境温度によっては導出される空気中の水分が結露することがあるが、その場合であっても、結露水Gを蓋部410の下面側に付着しやすくすることができる。このように、蓋部410部分で結露を生じさせやすくすることから、タンク800周辺の機器において結露が生じることを抑制することができる。
【0078】
なお、
図3に示す例では、蓋部410は、平面視において空気流通部380の全部を覆うように配置されるが、これに限られず、空気流通部380の一部を覆うように配置されてもよい。
【0079】
また、上記した排水孔372と空気流通孔381には、フロート弁500,510が設けられる。具体的にタンク800内において、フロート弁500は排水孔372の下方に、フロート弁510は空気流通孔381の下方に設けられ、タンク800内の洗浄水からの水圧によってタンク800内を上下動する。
【0080】
フロート弁500,510は、通常時にはタンク800内の水位が規定水位WLよりも低く水圧が作用しないため、自重により降下して排水孔372とタンク800内とを連通させるとともに、空気流通孔381とタンク800内とを連通させる。
【0081】
他方、例えば給水弁640や切替弁660等に不具合が生じ、タンク800内の水位が規定水位WLを超えてもなお、洗浄水が給水されて水位が上昇する場合がある。かかる場合には、タンク800において、フロート弁500,510のそれぞれの下方に形成された通水孔803,804から洗浄水がフロート弁500,510の内部に流入し(矢印D1,D2参照)、フロート弁500,510に水圧が作用する。これにより、フロート弁500は上昇して排水孔372を閉鎖するとともに、フロート弁510も上昇して空気流通孔381を閉鎖する。上記した排水孔372および空気流通孔381の閉鎖により、洗浄水が排水孔372や空気流通孔381を通ってタンク800外へ溢れることを抑制することができる。
【0082】
しかしながら、例えばフロート弁500と排水孔372との間にゴミなどの異物が挟まって、フロート弁500が排水孔372を完全に閉鎖できない場合がある。かかる場合、タンク800内の洗浄水は、排水孔372を通って排水受け部371へ上がってくるが(矢印E1参照)、上記したように、排水流路362と排水孔372とは大気開放した空間を介することで縁切りされることから、排水受け部371に上がってきた洗浄水が排水流路362を介してバキュームブレーカ680等へ溢れ出ることを抑制することができる。なお、以下では、矢印E1のように、タンク800内から排水孔372を通って排水受け部371へ上がってくる洗浄水を「タンク溢れ水」と記載する場合がある。
【0083】
同様に、例えばフロート弁510と空気流通孔381との間にゴミなどの異物が挟まって、フロート弁510が空気流通孔381を完全に閉鎖できない場合がある。かかる場合、タンク800内の洗浄水は、空気流通孔381へ上がってくるが(矢印E2参照)、上記したように、空気流通孔381はタンク800の排水受け部371に開口されることから、上がってきた洗浄水は、排水受け部371へと流れ、よってタンク800外へ溢れることを確実に抑制することができる。
【0084】
また、空気流通部380の空気流通孔381の上方には、蓋部410が配置されることから、空気流通孔381へ上がってくる洗浄水の勢いが比較的強い場合であっても、蓋部410に当たって、排水受け部371へ落下させることができる。これにより、洗浄水がタンク800外へ溢れることをより確実に抑制することができる。
【0085】
排水流路362の説明を続ける。
図4に示すように、排水流路362は、下流側端部364の排水の流れ方向に沿った中心線364aが、排水孔372の排水の流れ方向に沿った中心線372aに対して交差するように形成される。なお、排水孔372の中心線372aは、鉛直方向と平行または略平行とされる。
【0086】
これにより、タンク溢れ水が排水流路362を介してバキュームブレーカ680等へ溢れ出ることをより一層抑制することができる。すなわち、例えば仮に、排水流路362の中心線364aと排水孔372の中心線372aとが鉛直方向に対して平行で、同軸または略同軸であった場合、タンク溢れ水は、勢いが比較的強い場合に排水流路362へ直接流れ込みやすく、バキュームブレーカ680等へ溢れ出るおそれがある。
【0087】
そこで、本実施形態にあっては、排水流路362の中心線364aと排水孔372の中心線372aとが交差するようにしたことから、タンク溢れ水は、排水流路362の下流側端部364に当たって勢いが弱まるため、排水流路362へ流れ込みにくく、よってバキュームブレーカ680等へ溢れ出ることをより一層抑制することができる(矢印E1参照)。
【0088】
排水流路362は、下流側端部364に切欠き部365が形成され、かかる切欠き部365により下流側端部364の下端366が排水孔372の上方に位置するように形成される。
【0089】
これにより、排水流路362からの排水は、排水孔372へ流れ込みやすくなる一方(矢印A2参照)、タンク溢れ水は、排水流路362の下流側端部364に当たりやすくなり、排水流路362へ溢れ出にくくなる(矢印E1参照)。すなわち、排水流路362の排水性の向上と、バキュームブレーカ680等へ溢れ出ることの抑制との両立を図ることができる。なお、下流側端部364の下端366の排水孔372に対する位置は、
図4に示す例に限定されるものではない。
【0090】
タンク800はさらに、仕切り壁部392を備える。
図6は、タンク800の上蓋部802の下面側を示す図である。
図4および
図6に示すように、仕切り壁部392は、排水孔372と空気流通孔381との間に形成され、下方に向けて突出するように形成される。かかる仕切り壁部392により、排水孔372側から空気流通孔381側に対して洗浄水が流入しにくくなり、よって洗浄水が空気流通孔381において空気の流通を阻害することを効果的に抑制することができる。
【0091】
上述してきたように、実施形態に係る洗浄水供給装置1にあっては、タンク800と、バキュームブレーカ680と、オーバーフロー流路342と、排水流路362とを備える。タンク800は、便器本体200へ供給される洗浄水を貯留する。バキュームブレーカ680は、上流側に入水口685、下流側に出水口686を有する通水路681と、通水路681と外部とを連通する大気導入口682と、通水路681内に設けられ、洗浄水の水圧によって動作することにより通水時には入水口685と出水口686とを連通させ、非通水時には通水路681と大気導入口682とを連通させる弁体683と、大気導入口682から溢れ出た洗浄水を受ける水受け部684とを有する。
【0092】
オーバーフロー流路342は、タンク800内において規定水位WL以上の洗浄水が供給された場合に便器本体200へ洗浄水を流出させる。排水流路362は、水受け部684に接続され、水受け部684で受けた洗浄水を排水する。また、タンク800は、排水流路362の排水をタンク800内へ導入する排水導入部370と、タンク800に対する洗浄水の給排水時にタンク800内で洗浄水と空気とが置換されるように、タンク800内とタンク800外とで空気を流通させる空気流通部380とを備える。
【0093】
これにより、洗浄水を貯留するタンク800から洗浄水が溢れ出ることを抑制することができる。
【0094】
なお、上記した実施形態においては、排水流路362と蓋部410とは、継手400に一体的に形成されるようにしたが、これに限られず、例えば排水流路362と蓋部410とは別部材であってもよい。
【0095】
また、上記では、タンク800内の洗浄水を加圧ポンプ900で加圧してジェット吐水口214から吐出させるように構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、加圧ポンプ900で加圧した洗浄水をリム吐水口212からも吐水させるようにしてもよい。
【0096】
また、上記では、バキュームブレーカ680が切替弁660の上流側に設けられるようにしたが、これに限られず、例えば切替弁660の下流側に設けられるようにしてもよい。
【0097】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。