(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどといった画像形成装置として、近年インクジェット記録装置が広く普及している。インクジェット記録装置は、記録ヘッドが用紙等の記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアル型と、装置本体に固定された記録ヘッドにより記録を行うラインヘッド型と、に分類することができる。
【0003】
インクジェット記録装置において高品質な記録を継続するためには、記録ヘッドに設けられたインク吐出ノズルから吐出されるインクの画素ずれを適宜監視する必要がある。そこで、インクジェット記録装置では所定のパターンで構成された検査チャートを用紙に記録し、検査チャートのパターンの位置ずれを判別することで、画素ずれを監視するものがある。そのようなインクジェット記録装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載された従来の印刷装置は連続紙の搬送方向に前後する千鳥配列の印刷ヘッドを有し、連続紙上に所定の測定パターン(検査チャート)を記録する。測定パターンには連続紙の搬送方向と交差する幅方向に沿って延びるラインが形成される。そして、この印刷装置は検査部によって測定パターンにおける連続紙の搬送方向の段差ずれ量を検出し、その段差ずれが大きくならないよう抑制する印刷位置補正処理を実施する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0012】
最初に、本発明の実施形態のインクジェット記録装置について、その概略構成を
図1及び
図2を用いて説明する。
図1はインクジェット記録装置の概略構成を示す垂直断面正面図の一例である。
図2はインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1及び
図2に示すインクジェット記録装置1はインクジェット記録式の所謂プリンターである。インクジェット記録装置1は記録媒体である用紙Pの給紙部として、給紙カセット3及び手差し給紙トレイ4を備える。
【0014】
給紙カセット3はインクジェット記録装置1の本体2の内部下方に配置される。手差し給紙トレイ4は本体2の右側面外部に配置される。給紙カセット3及び手差し給紙トレイ4は複数枚の用紙Pを収容し、印刷時に用紙Pを1枚ずつ分離して用紙搬送部20に送り出す。
【0015】
用紙搬送部20は給紙カセット3及び手差し給紙トレイ4の用紙搬送方向の下流側に配置される。用紙搬送部20はローラー搬送部21、第1ベルト搬送部22及び第2ベルト搬送部23を備える。ローラー搬送部21は互いを圧して接触するローラー対のニップ部に用紙Pを挟んで搬送する。第1ベルト搬送部22及び第2ベルト搬送部23は第1搬送ベルト22a、第2搬送ベルト23aの用紙搬送面である上面に用紙Pを吸着して保持し、搬送する。用紙搬送部20は給紙カセット3または手差し給紙トレイ4から送り出された用紙Pを記録部30及び乾燥部40へと搬送し、さらに記録、乾燥後の用紙Pを用紙排出トレイ5に排出する。
【0016】
用紙搬送部20は用紙排出トレイ5の用紙搬送方向の上流側に切替部6を備える。両面印刷を行う場合、用紙Pは切替部6から記録部30の上方及び乾燥部40の上方に配置された用紙反転部7に搬送される。用紙反転部7に搬送された用紙Pは表裏を反転させるために搬送方向が切り替えられ、本体2の上部を通過して、再度記録部30の上流側へと搬送される。
【0017】
用紙搬送部20は記録部30の用紙搬送方向の上流側にレジストローラー対8を備える。レジストローラー対8は用紙Pの斜め送りを矯正しつつ記録部30が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1ベルト搬送部22に向かって用紙Pを送り出す。
【0018】
記録部30は第1ベルト搬送部22によって搬送される用紙Pに対向して、第1ベルト搬送部22の上方に配置される。記録部30はブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色各々に対応したライン型インクジェットヘッドである記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cを備える(
図3参照)。記録部30は第1搬送ベルト22aに吸着保持されて搬送される用紙Pに向かって記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cから順次インクを吐出し、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のインクが重ね合わされたフルカラー画像を記録する。また、インクジェット記録装置1ではモノクロ画像を記録することも可能である。
【0019】
乾燥部40は記録部30の用紙搬送方向の下流側に配置され、第2ベルト搬送部23が設けられる。記録部30でインク画像が記録された用紙Pは、乾燥部40において第2搬送ベルト23aに吸着保持されて搬送される間にインクが乾燥される。
【0020】
乾燥部40の用紙搬送方向の下流側であって本体2の左側面近傍にはデカーラー部9が設けられる。乾燥部40でインクが乾燥された用紙Pはデカーラー部9へと送られ、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0021】
さらに、インクジェット記録装置1は制御部10を備える。制御部10はCPU11、画像処理部12、記憶部13、その他の不図示の電子部品や電子回路を含む。CPU11は記憶部13に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、インクジェット記録装置1に設けられた用紙搬送部20、記録部30等の各構成要素の動作を制御し、用紙Pに対する記録処理を行う。画像処理部12は外部コンピュータから受信した画像データに対して、好適な記録を実現するための画像処理を行う。記憶部13は例えば不図示のプログラムROM、データROMなどといった不揮発性の記憶装置と、RAMのような揮発性の記憶装置との組み合わせから成る。
【0022】
続いて、記録部30周辺の詳細な構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3及び
図4は記録部30周辺の正面図及び上面図である。なお、
図3及び
図4に記した矢印Xが指す方向が用紙Pの搬送方向であり、矢印Y方向が用紙搬送方向に対して直交する用紙Pの幅方向である。
【0023】
第1ベルト搬送部22は第1搬送ベルト22aに加えて、駆動ローラー22b、従動ローラー22c及びテンションローラー22dを備える。第1搬送ベルト22aは無端状のベルトであって、駆動ローラー22b、従動ローラー22c及びテンションローラー22dに巻き掛けられる。第1搬送ベルト22aは駆動ローラー22bにより
図3において反時計方向に回転する。レジストローラー対8から送り出された用紙Pは第1搬送ベルト22aの上面に吸着保持された状態で
図3において右方から左方へと搬送され、記録部30の下方を通過する。
【0024】
第1搬送ベルト22aの内側であって第1搬送ベルト22aの用紙搬送面の裏側に対応する箇所には用紙吸引部24が設けられる。用紙吸引部24はそのハウジング24aの上面に内外に貫通する多数の空気吸引用の孔24bを備え、さらにハウジング24aの内部に吸引ファン24cを備える。用紙吸引部24は吸引ファン24cを駆動することで、ハウジング24aの上面から下方に向かって空気を吸引することができる。また、第1搬送ベルト22aにも表裏に貫通する多数の空気吸引用の孔(図示せず)が設けられる。上記構成により、第1ベルト搬送部22は第1搬送ベルト22aの用紙搬送面である上面に用紙Pを吸着保持しながら搬送する。
【0025】
記録部30は記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cに加えて、ヘッドハウジング31を備える。記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cはヘッドハウジング31に保持される。記録ヘッド32K、32Y、32M、32Cは各々、用紙幅方向に沿って延びる形状を有し、4台が用紙搬送方向に沿って一列に並べて配置される。なお、各色の記録ヘッド32は基本的な構造が同じであるので、この説明において各色を表す識別記号を省略する場合がある。
【0026】
記録ヘッド32は第1搬送ベルト22aの用紙搬送面に対して所定の隙間(例えば1mm)を隔てて、第1搬送ベルト22aの上方で支持される。記録ヘッド32は用紙幅方向に関して、第1搬送ベルト22aによって搬送される用紙Pの幅以上の記録領域を有する。
【0027】
記録ヘッド32は、
図4に示すようにその底部であるインク吐出部に複数のインク吐出ノズル33を備える。複数のインク吐出ノズル33は用紙幅方向に沿って並び、記録領域の全域にわたってインクを吐出することができる。インク吐出ノズル33は、例えば
図4に示すように用紙搬送方向及び用紙幅方向に対して斜めに所定数を配列したインク吐出ノズル33の組みが用紙幅方向に複数並べられる。各色のインク吐出ノズル33には、不図示のインクタンクからインクが逐次補給される。
【0028】
記録ヘッド32の用紙搬送方向の下流側には検出部50が設けられる。検出部50は第1ベルト搬送部22によって搬送される用紙Pに対向して、第1ベルト搬送部22の上方に配置される。検出部50は第1搬送ベルト22aの用紙搬送面に対して所定の隙間を隔てて、第1搬送ベルト22aの上方で支持される。検出部50は、例えば用紙幅方向の中央部に配置される。
【0029】
検出部50は、例えば画像濃度センサーで構成され、不図示の光源及び受光素子を備える。光源は例えばLED(Light Emitting Diode)から成り、受光素子は例えばフォトダイオードから成る。検出部50は用紙Pに向けて光源から照射された光の反射光を、受光素子で受けることで記録部30が用紙Pに吐出したインクの濃度を検出する。
【0030】
そして、上記構成のインクジェット記録装置1はインク吐出ノズル33から吐出されるインクの画素ずれを把握するための画素ずれチェック機能を有する。
【0031】
続いて、インクジェット記録装置1の画素ずれチェック機能について、
図5〜
図7を用いて説明する。
図5はインクジェット記録装置1の画素ずれチェック機能で用いる検査チャートの上面図である。
図6はインクジェット記録装置1の画素ずれチェック機能で用いるインク吐出条件の説明図である。
図7はインク吐出条件と検査チャートのセンサー出力(濃度)との関係を示すグラフである。
【0032】
インクジェット記録装置1では画像ずれチェック機能において、制御部10が、所定のパターン画像で構成された
図5に示す検査チャートTcを用紙Pに記録する。
【0033】
検査チャートTcは、例えば複数のパターン画像LPa、LPdを含む。パターン画像LPa、LPdは用紙幅方向に沿って並ぶ複数のインク吐出ノズル33が吐出したインクから成る用紙幅方向に延びるラインが、用紙搬送方向に沿って複数本(例えば3本)並べて描画される。
【0034】
パターン画像LPa、LPdの形成に際し、制御部10は複数のインク吐出ノズル33各々に対する吐出タイミングまたは用紙Pの搬送速度を段階的に変更し、インク吐出ノズル33からインクを吐出させる。
図6に示すように、例えば制御部10は吐出タイミングまたは用紙搬送速度を段階的に変更した吐出条件Aから吐出条件Fまでの7通りの条件で用紙幅方向に延びるラインを描画する。
【0035】
吐出タイミングまたは用紙搬送速度を段階的に変更すると、インクの吐出間隔が変更される。吐出条件Aはインクの吐出間隔が最も大きく、吐出条件B、吐出条件Cと進むに従って順に吐出間隔が小さくなり、吐出条件Fはインクの吐出間隔が最も小さい。なお、
図5では、吐出条件Aのパターン画像LPaと、吐出条件Dのパターン画像LPdと、を例として描画した。
【0036】
検出部50は第1搬送ベルト22aによって搬送される用紙Pの検査チャートTcに対して、所定のタイミングで、検査チャートTcに描画された複数のパターン画像毎にインクの濃度を検出する。その結果として、
図7にインク吐出条件と検査チャートTcのセンサー出力(濃度)との関係をグラフで示した。
図7は、横軸がインクの吐出間隔(インク吐出条件)を表し、縦軸が検査チャートTcのパターン画像の濃度を表す。
【0037】
ここで、
図5に示した吐出条件Dのパターン画像LPdのように、用紙幅方向に延びるラインが略直線状である場合、パターン画像LPd全体としての濃度は比較的低くなる。一方、吐出条件Aのパターン画像LPaのように、用紙幅方向に延びるラインが湾曲する場合、パターン画像LPa全体としての濃度は比較的高くなる。
【0038】
図7から、パターン画像の濃度が最小となるインク吐出間隔を適正条件として選択することが好ましい。これにより、吐出条件Dのパターン画像LPdのように、用紙幅方向に延びるラインが略直線状になる。このようにして、インクジェット記録装置1は検査チャートTcに基づいて用紙搬送方向の画素ずれを判別して補正する。
【0039】
なお、上記構成の検査チャートTcによれば、目視レベルで画素ずれを判別することができる。目視では、例えばパターン画像におけるライン間のインク不吐出領域が用紙幅方向に真っ直ぐ延びることを確認する。これにより、簡便な構成で、検査チャートTcにおける用紙搬送方向の画素ずれを判別することができ、高品質な記録を継続することが可能になる。
【0040】
そして、検出部50を用いて、検査チャートTcの濃度を検出することにより用紙搬送方向の画素ずれを判別すれば、より一層高精度な画素ずれの判別が可能になる。
【0041】
また、インクジェット記録装置1は、検出部50が光源と受光素子とを有する画像濃度センサーであって、高精度なセンサーを必要としない。これにより、インクジェット記録装置1のコストアップを抑制することができる。
【0042】
また、記録ヘッド32は、用紙幅方向に隣接するインク吐出ノズル33が用紙搬送方向にずらして配置される。これにより、インクジェット記録装置1の高解像度化を図ることができる。そして、このようにインク吐出ノズル33が用紙搬送方向にずらして配置される場合であっても、上記構成の検査チャートTcによれば、目視レベルで画素ずれを判別することが可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0044】
例えば、上記実施形態においてインク吐出ノズル33は、
図4に示すように用紙搬送方向及び用紙幅方向に対して斜めに所定数を配列したインク吐出ノズル33の組みを用紙幅方向に複数並べて配置したが、この配置に限定されるわけではない。インク吐出ノズル33を、例えば用紙幅方向に千鳥配列にしても良い。また例えば、用紙幅方向に直線状に一列に並べることにしても良い。また、記録ヘッド32は用紙幅方向に関して複数に分割しても良いし、分割した記録ヘッド32を用紙幅方向に千鳥配列にしても良い。
【0045】
また、検出部50は画像濃度センサーに代えて、例えばコンタクトイメージセンサーや、CCD(Charge Coupled Device)を利用したセンサーを用いても良い。