(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891593
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ライニングユニット
(51)【国際特許分類】
E03D 11/00 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
E03D11/00 Z
E03D11/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-65297(P2017-65297)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168557(P2018-168557A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅 義一
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】石渡 寛正
(72)【発明者】
【氏名】植田 凌平
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−138977(JP,U)
【文献】
特開2015−181585(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0065699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00− 7/00
E03D 11/00−13/00
A47K 1/00− 1/14
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ空間の壁面に面して収納空間を形成し、この収納空間に配管設備を収納するライニングユニットであって、
前記ライニングユニットは、トイレルームに固定されるフレームと、該フレームの前面へ着脱可能に取り付けられる前面パネルとを備え、
前記前面パネルの裏面上方には、前記フレームを下方から挟持するクリップが固定されており、前記前面パネルの裏面下方には、前記クリップが前記フレームを挟持した状態で、前記フレームに載置されて前記前面パネルの前後方向への移動を規制する係合部材が固定され、
前記クリップは、前記前面パネルの裏面上方に固定された台座部材と、該台座部材に上方が開放されて取り付けられた可動片とを有し、該可動片と前記台座部材との間で前記フレームを挟持し、
前記台座部材の少なくとも一部が前記前面パネルの裏面と前記フレームの前面に間に位置しているとともに、前記台座部材によって前記前面パネルの裏面と前記フレームの前面との間に隙間が形成されることを特徴とするライニングユニット。
【請求項2】
前記係合部材は、前記前面パネルの裏面下方に固定された台座部材と、該台座部材に下方が開放されて取り付けられた可動片とを有し、該可動片の上端が前記フレームに載置されると共に、前記可動片と前記台座部材との間で前記フレームを挟持することを特徴とする請求項1記載のライニングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ空間の壁面に面して収納空間を形成し、この収納空間に配管設備を収納するライニングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、公共施設の複数の便器が連接される現場においては、便器と接続される給水配管や排水配管等の配管設備を収納し、その前面に便器を取り付けたライニングユニットが知られている。
このライニングユニットにおいては、トイレルームの壁面若しくは床面に固定されたフレームと、このフレームの前面および上面に配置される前面パネルと上面パネルとを備えており、その内部に配管設備の収納空間が形成されている。そして、ライニングユニットに収納された配管設備のメンテナンスを行えるように、前面パネルは着脱可能となっている。
【0003】
この前面パネルの着脱構造として、例えば、特許文献1に記載されたような取り付け構造が知られている。この特許文献1に記載された前面パネルの取り付け構造においては、フレームの上端にクリップを設け、このクリップとフレーム前面との間で前面パネルの上端を挟み込むと共に、フレームの下端に載置部を設け、前面パネルの下端部を載置部に載置させた状態で係合させるけんどん式のパネル取り付け構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−218471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の記載された前面パネル取り付け構造は、けんどん式であるため着脱を容易に行うことができるものの、この特許文献1に記載された前面パネルの着脱構造においては、フレームの上端にクリップを設け、このクリップとフレーム前面との間で前面パネルの上端を挟み込む構造であり、クリップの前方を隠すために前垂れ部を設ける必要があるなど、構造が複雑であるといった課題があった。
本発明は、このような課題を解決するものであり、ライニングユニットにおける前面パネルの取り付け構造において、着脱作業性の良いけんどん式でありながら、より構造を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明においては、トイレ空間の壁面に面して収納空間を形成し、この収納空間に配管設備を収納するライニングユニットであって、前記ライニングユニットは、トイレルームに固定されるフレームと、該フレームの前面へ着脱可能に取り付けられる前面パネルとを備え、前記前面パネルの裏面上方には、前記フレームを下方から挟持するクリップが固定されており、前記前面パネルの裏面下方には、前記クリップが前記フレームを挟持した状態で、前記フレームに載置されて前記前面パネルの前後方向への移動を規制する係合部材が固定され
、前記クリップは、前記前面パネルの裏面上方に固定された台座部材と、該台座部材に上方が開放されて取り付けられた可動片とを有し、該可動片と前記台座部材との間で前記フレームを挟持し、前記台座部材の少なくとも一部が前記前面パネルの裏面と前記フレームの前面に間に位置しているとともに、前記台座部材によって前記前面パネルの裏面と前記フレームの前面との間に隙間が形成されることを特徴とする。
【0007】
このように構成されたライニングユニットにおいては、前面パネルをけんどん式に着脱することができ作業性が良く、また、前面パネルを装着した状態では、クリップや係合部材が前面パネルによって隠れるため、これらを隠蔽するための部材を設ける必要がないため、構成を簡素化することができる。
また、台座部材と可動片とによってフレームを挟持した状態で、前面パネルの裏面とフレーム表面との間に台座部材によって隙間が形成される。そのため、簡単な構成でありながら前面パネルがフレーム表面に当接しない状態で前面パネルを斜めに傾けることができ、前面パネルの着脱作業性を良くすることができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記係合部材は、前記前面パネルの裏面下方に固定された台座部材と、該台座部材に下方が開放されて取り付けられた可動片とを有し、該可動片の上端が前記フレームに載置されると共に、前記可動片と前記台座部材との間で前記フレームを挟持することを特徴とする。
【0011】
このように構成されたライニングユニットにおいては、前面パネルの下方でフレームを挟持することができるため、前面パネルを装着した状態でのガタつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前面パネルをけんどん式に着脱することができ作業性が良く、また、前面パネルを装着した状態では、クリップや係合部材が前面パネルによって隠れるため、これらを隠蔽するための部材を設ける必要がないため、構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係わるライニングユニットの斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係わる前面パネルの裏面斜視図。
【
図4】
図1のA−A線における前面パネルの着脱構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係わるライニングユニットについて、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わるライニングユニットの斜視図であり、
図2は、
図1のライニングユニットの分解斜視図である。なお、これら
図1および
図2においては、ライニングユニットに小便器を設置した状態を示している。
【0015】
この
図1および
図2に示すように、本発明の実施形態に係わるライニングユニット1は、前面に衛生設備機器として2つの小便器3が設置されている。ライニングユニット1は、直方体形状のフレーム枠5と、このフレーム枠5の前方側の面である前面へ着脱可能に取り付けられる前面パネル7と、フレーム枠5の上方側の面である上面を覆う天板9とから構成されている。ライニングユニット1の後方側および左右の側方側は、トイレ空間を形成しているトイレルームの壁面に接しており、このトイレルームの壁面と、前面パネル7及び天板9とによって、フレーム枠5の内部は収納空間11となっており、この収納空間11には小便器3に接続された配管設備13が収納されている。
【0016】
なお、本明細書において、フレーム枠5に対して小便器3が設置されている側を前方と称し、この前方と反対のトイレルーム壁面側を後方と称し、鉛直方向上側と下側をそれぞれ上方、下方と称し、小便器3側から見て左側を左方、右側を右方と称して説明を行う。
また、前面パネル7や天板9において、露出した面を表面と称して説明を行う。
【0017】
ライニングユニット1について更に詳しく説明する。フレーム枠5は、断面L字形状の金属製長尺材が、上下、左右、前後方向に結合された直方体形状の枠体である。このフレーム枠5はトイレルームの床面及び後方壁面にビス(図示せず)によって固定される。また、フレーム枠5には、小便器3を固定するための金属製のブラケット(図示せず)が溶接されており、このブラケット(図示せず)に小便器3の後端が固定されている。
【0018】
フレーム枠5の内部の収納空間11には、小便器3と繋がる配管設備13として、給水配管13aと、排水配管13bとが収納されている。給水配管13aは、給水源と水小便器3の洗浄水タンク(図示せず)とを繋いだ配管であり、小便器3を洗浄するための洗浄水を洗浄水タンクへ供給する。排水配管13bは、小便器3と建物の排水本管(図示せず)とを繋いだ配管であり、小便器3の排水口(図示せず)と排水ソケット(図示せず)を介して接続され、小便器3から排出された汚物混じりの洗浄水を排水本管へと排出する。
【0019】
また、フレーム枠5の前面には、その上端および下端のそれぞれに、上板17と下板19とが夫々固定されている。この上板17と下板19とは金属製であり、ビス止めによってフレーム枠5に固定されている。このように、本実施形態においては、フレーム枠5と、これに固定されたブラケット15、上板17、下板19によってフレームが構成されている。前面パネル7は、フレームを構成する上板17と下板19に対して着脱自在となっており、前面パネル7を取り外して、配管設備13のメンテナンスを行うことができる。
【0020】
ここで、前面パネルについて詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態に係わる前面パネルの裏面斜視図である。
この
図3に示すように、前面パネル7の裏面上方には、フレームを構成する上板17を下方から挟持する上方クリップ21が固定されており、前面パネル7の裏面下方には、上方クリップ21が上板17を挟持した状態で、下板19に載置されて前面パネル7の前後方向への移動を規制する係合部材として下方クリップ23が固定されている。
【0021】
次に、前面パネル7の着脱動作について
図4〜
図6に基づいて説明する。
図4は、
図1のA−A線における前面パネルの着脱構造を示す断面図であり、
図5は、
図4の上部拡大図であり、
図6は、
図4の下部拡大図である。なお、これら
図4〜
図6において、(a)〜(c)は夫々同じ状態を示しており、(a)は前面パネル7の装着開始状態を示し、(b)は前面パネル7の装着途中状態を示し、(c)は前面パネル7の装着完了状態を示している。
【0022】
前面パネル7をフレームに対して装着するためには、
図4および
図5の(a)に示すように、前面パネル7を後傾させて斜め上方に持ち上げるようにして、前面パネル7の裏面上方に固定されている上方クリップ21によって、上板17を下方から挟持する。
なお、上方クリップ21は、前面パネル7の裏面上方に固定された台座部材21aと、この台座部材21aに上方が開放されて取り付けられた可動片21bとから形成されており、この可動片21bと台座部材21aとの間で上板17を挟持するように構成さている。
【0023】
次に、上方クリップ21の台座部材21aと可動片21bとの間で上板17を挟持している状態で、上板17の下端に上方クリップ21の可動片の下端とが当接するように持ち上げる、そして、下方クリップ23と下板19上端とが対向するように、前面パネル7の下方を後方へ移動させて、前面パネル7を直立状態とする(
図4〜
図6の(b)参照)。
【0024】
その後、
図4〜
図6の(c)に示すように、前面パネル7を下降させ、下方クリップ23によって下板19を挟持すると共に下方クリップ23が下板19の上端に載置されるようにする。なお、このとき上方クリップ21は上板17を挟持している状態を維持している、
なお、下方クリップ23は、前面パネル7の裏面下方に固定された台座部材23aと、この台座部材23aに下方が開放されて取り付けられた可動片23bとから形成されており、この可動片23bの上端が下板19の上端に載置されると共に、可動片23bと台座部材23aとの間で下板19を挟持するように構成されている。
【0025】
従って、
図4〜
図6の(c)の状態においては、前面パネル7の上方および下方の両方において、上方クリップ21が上板17を、下方クリップ23が下板19をそれぞれ挟持されて前後方向への移動が規制され、また、下方クリップ23が下板19に載置されることで上下方向の位置も規制され、それによって前面パネル7がフレームの所定位置に装着された状態となる。なお、前面パネル7をフレームから離脱させる(取り外す)には、装着時は逆の動作を行えばよい。
【0026】
上板17の下端から下板19の上端までの距離をL1,前面パネル7の上方クリップ21の可動片21bの上端から下方クリップ23の可動片23bの下端までの距離をL2とすると、L1<L2である。
また、上方クリップ21の可動片21bの上端から下端までの長さ、即ち、上方クリップ21が上板17を挟持した状態での上下方向への移動可能長さをL3、下方クリップ23の可動片23bの上端から下端までの長さ、即ち、下方クリップ23が下板19を挟持した状態での上下方向への移動可能長さをL4とすると、L3>L4であり、しかも、(L2−L3)<L1および(L2−L4)>L1という条件が成立している。
【0027】
以上説明したライニングユニット1においては、前面パネル7をけんどん式に着脱することができるため、着脱の作業性が良く、また、前面パネル7を装着した状態では、上方クリップ21や下方クリップ23が前面パネル7によって隠れるため、これらを隠蔽するための部材を設ける必要がないため、構成が簡素である。
【0028】
また、ライニングユニット1は、上方クリップ21と下方クリップ23とが、台座部材21a,23aと可動片21b、23bとによって上板17または下板19を挟持する構成であるため、前面パネル7の裏面と上板17または下板19表面との間に台座部材21a,23aによって隙間が形成される。そのため、簡単な構成でありながら前面パネル7が上板17または下板19の表面に当接しない状態で前面パネルを斜めに傾けることができ、前面パネル7の着脱作業性を良くすることができる。
また、前面パネル7の上下を上方クリップ21および下方クリップ23の両方で挟持するため、前面パネル7を装着した状態でのガタつきを抑えることができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、上方クリップ21と下方クリップ23とは、夫々上板17および下板19を挟持するものであったが、フレーム枠5を挟持するものであってもよい。
また、前面パネル7の下方をフレームに取り付ける係合部材としては、台座部材23aと可動片23bとから成る下方フック23に代えて、下板19の上端に嵌るフック形状の係合部材であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ライニングユニット
3…小便器
5…フレーム枠
7…前面パネル
9…天板
11…収納空間
13…配管設備
17…上板
19…下板
21…上方クリップ
21a…台座部材
21b…可動片
23…下方クリップ(係合部材)
23a…台座部材
23b…可動片