特許第6891618号(P6891618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891618
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】医療用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   A61M39/10 100
   A61M39/10 120
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-87853(P2017-87853)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-183469(P2018-183469A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三野 あすみ
(72)【発明者】
【氏名】森田 友恵
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−506115(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/185972(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/049296(WO,A1)
【文献】 特表2006−515196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となるオスコネクタが接続される円筒形状のコネクタ接続部と、
前記コネクタ接続部よりも基端側に設けられたチューブ接続部と、
前記コネクタ接続部の基端に設けられた鍔部と、
前記鍔部よりも基端側において前記チューブ接続部の両側方に突出した翼部とを備え、
前記鍔部は、平面形状が長円形状又は楕円形状であり、
前記鍔部の長径は、前記対となるオスコネクタのロックリングの外径よりも大きく、
前記鍔部の短径は、前記コネクタ接続部の基端の外径と一致し、
前記翼部は、前記鍔部の長径の方向に拡がり、前記翼部の翼間の最大幅は前記鍔部の長径以下である、医療用コネクタ。
【請求項2】
前記鍔部は、外周側面のうち少なくとも長径方向側面が、面取りされたR形状となっている、請求項1に記載の医療用コネクタ。
【請求項3】
前記翼部は、軸方向側面が、面取りされたR形状となっている、請求項1又は2に記載の医療用コネクタ。
【請求項4】
前記翼部は、翼間の幅が、前記チューブ接続部の基端に向かって次第に小さくなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
前記チューブ接続部は、前記鍔部の長径方向及び短径方向からずれた方向に突出し、軸に沿って延びる凸条部を有し、
前記凸条部は、前記鍔部よりも突出しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用コネクタ。
【請求項6】
前記チューブ接続部は、前記鍔部の短径方向の外側面に設けられた平坦面を有し、
前記平坦面は、前記鍔部よりも突出した部分を有さない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用コネクタ。
【請求項7】
前記翼部は、前記鍔部の基端側の面と接している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用コネクタに関し、特に経腸栄養法において用いることができる医療用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療行為を行う際には、薬剤の投与、栄養の補給、検体の採取、及び透析処理等を行うために、体外ラインを患者に接続する場合がある。体外ラインに規格化されたルアーコネクタを設けることにより、投与する薬剤の容器を接続したり、治療用の装置に接続したりすることが容易にできる。
【0003】
一方、病状によっては、一人の患者に複数の体外ラインが接続されることがある。複数のラインに同じ規格のルアーコネクタが設けられている場合には、容器や装置を誤ったラインに接続してしまうおそれがある。このような誤接続は大きな問題となる。
【0004】
ラインの誤接続を防止するために、各ラインに設けるコネクタの形状を変更し、異なるライン同士が接続できないようにすることが検討されている。例えば、栄養用途においては、ISO80369−3において規格が定められた。この規格によれば、経腸栄養カテーテルの基端に、テーパ部の周囲にロックリングを有する硬い材質のオスコネクタを設け、容器側チューブの先端に、メスコネクタを設ける。このような規格を満足するコネクタの開発も進められている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−119837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鼻に挿入された経腸栄養カテーテルのコネクタは顔近くに位置する。このため使用時には、例えば患者が寝返りをうつ等して、メスコネクタが顔の皮膚に触れて不快感を生じさせるおそれがある。患者の不快感を低減するためには、コネクタを規格の範囲内においてできるだけ小さくすると共に、皮膚に触れた際にできるだけ違和感が小さくなるようにすることが重要である。一方、コネクタの操作性が向上し、接続ミス等が生じないようにするためには、コネクタを把持しやすくすることが重要である。
【0007】
本開示の課題は、皮膚に触れた際の違和感を低減すると共に、操作性を向上した医療用コネクタを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のコネクタの一態様は、対となるコネクタが接続される円筒形状のコネクタ接続部と、コネクタ接続部よりも基端側に設けられたチューブ接続部と、コネクタ接続部の基端に設けられた鍔部と、鍔部よりも基端側においてチューブ接続部の両側方に突出した翼部とを備え、鍔部は、平面形状が長円形状又は楕円形状であり、鍔部の長径は、対となるコネクタのロックリングの外径よりも大きく、鍔部の短径は、コネクタ接続部の基端の外径と一致し、翼部は、鍔部の長径の方向に拡がり、翼部の翼間の最大幅は鍔部の長径以下である。
【0009】
コネクタの一態様において、鍔部の長径は、対となるコネクタのロックリングの外径よりも大きく、鍔部の短径は、コネクタ接続部の基端の外径と一致している。このため、鍔部が外側に突出していない短径側の部分が皮膚に接して安定するため、不快感を低減することができる。また、翼部は、鍔部の長径の方向に拡がるため、翼部を把持することにより操作が容易となる。さらに、翼部の翼間の最大幅は鍔部の長径以下であり、翼部が鍔部から突出しないため、患者に不快感を与えにくくすることができる。
【0010】
コネクタの一態様において、鍔部は、外周側面のうち少なくとも長径方向側面が、面取りされたR形状となっていてもよい。」このような構成とすることにより、鍔部が皮膚に触れた際の違和感を低減することができる。
【0011】
コネクタの一態様において、翼部は、軸方向側面が、面取りされたR形状となっていてもよい。このような構成とすることにより、翼部が皮膚に触れた際の違和感を低減することができる。
【0012】
コネクタの一態様において、翼部は、翼間の幅が、チューブ接続部の基端に向かって次第に小さくなるようにすることができる。このような構成とすることにより、翼部を把持する際に邪魔にならず、操作性が向上する。
【0013】
コネクタの一態様において、チューブ接続部は、鍔部の長径方向及び短径方向からずれた方向に突出し、軸に沿って延びる凸条部を有し、凸条部は、鍔部よりも突出しないようにすることができる。このような構成とすることにより、操作性をさらに向上させることができる。
【0014】
コネクタの一態様において、チューブ接続部は、鍔部の短径方向の外側面に設けられた平坦面を有し、平坦面は、鍔部よりも突出した部分を有さないようにすることができる。このような構成とした場合にも、操作性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の医療用コネクタによれば、皮膚に触れた際の違和感を低減できると共に、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係るコネクタを示す正面図である。
図3】一実施形態に係るコネクタを示す側面図である。
図4】一実施形態に係るコネクタを示す上面図である。
図5】一実施形態に係るコネクタを示す底面図である。
図6】一実施形態に係るコネクタがオスコネクタと接続された状態を示す正面図である。
図7】一実施形態に係るコネクタの変形例を示す斜視図である。
図8】一実施形態に係るコネクタの変形例を示す正面図である。
図9】一実施形態に係るコネクタの変形例を示す側面図である。
図10】一実施形態に係るコネクタの変形例を示す上面図である。
図11】一実施形態に係るコネクタの変形例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図6に示すように、本実施形態の医療用コネクタは、対となるオスコネクタ200が接続されるメスコネクタであり、円筒形状のコネクタ接続部101と、コネクタ接続部101よりも基端側に設けられたチューブ接続部102と、コネクタ接続部101の基端に設けられた鍔部103と、鍔部103よりも基端側においてチューブ接続部102の両側方に突出した翼部104とを備えている。
【0018】
鍔部103は、平面形状が長円形状又は楕円形状であり、鍔部103の長径は、対となるオスコネクタのロックリング202の外径よりも大きく、鍔部103の短径は、コネクタ接続部101の基端の外径と一致している。翼部104は、鍔部103の長径の方向に拡がり、翼部104の翼間の最大幅Wは鍔部103の長径以下である。
【0019】
本開示の医療用コネクタは、使用する際にその方向を問わないが、便宜上コネクタ接続部101側を上、チューブ接続部102側を下として説明する。また、コネクタの軸方向を高さ、鍔部103の長径方向を幅、短径方向を厚さとし、コネクタの軸方向を基準面に対して略垂直にした状態を立てた状態、略平行にした状態を横にした状態として説明する。
【0020】
本実施形態のコネクタは、鍔部103が長円形状又は楕円形状であるため、コネクタを横にして平面上に置いた場合、鍔部103の短径方向が平面と略直交する向きにおいて、安定した配置となり、コネクタが転がることがない。また、鍔部103が角がない平面形状であるため、患者の皮膚に角が当たり、不快感を与えることがない。さらに、鍔部103の短径の長さがコネクタ接続部101の基端の外径と一致しているため、この方向において鍔部103が出っ張っておらず、コネクタと平面との接触面積が大きくなる。従って、コネクタが患者の皮膚と接触しても、一点に力が加わることがなく、不快感を低減することができる。一方、鍔部103の長径は、ISOの規格を満たすことができる。
【0021】
鍔部103の外周側面は、面取りされたR形状とすることができる。これにより、鍔部103による違和感をさらに低減できる。鍔部103の外周側面全体を面取りされた形状とすることができるが、少なくとも長径方向の側面について面取りされていることが好ましい。
【0022】
本実施形態のコネクタ100は、鍔部103よりも基端側においてチューブ接続部102の両側方に突出した翼部104を有しているため、単純な円筒形のチューブ接続部102の場合よりも操作が容易となる。オスコネクタを接続又は分離する際に、翼部104に指をかけることにより力が加わりやすくなり、スムーズに操作することができる。
【0023】
翼部104は、鍔部103の長径方向に拡がっているため、コネクタが患者の皮膚と接触した際に、翼部104も面で患者の皮膚と接触することになり、不快感を低減することができる。また、翼部104の翼間の最大幅Wが鍔部103の長径以下であるため、翼部104は、鍔部103から突出せず、翼部104が邪魔になることがない。翼部104の上端部において翼間の幅が鍔部103の長径の長さと一致するようにすれば、鍔部103と翼部104とが段差なく滑らかに繋がるため、皮膚に当たった際に不快感をより与えにくくできる。
【0024】
翼部104は、翼間の幅が上端から下端まで次第に小さくなるように滑らかに変化していることが好ましい。このようにすることにより、翼部104が患者の皮膚に引っかかりにくくすることができる。しかし、翼部104の翼間の幅Wが単調に減少するのではなく、途中に指がかけられるくぼみが設けられた形状等とすることもできる。このようにすれば把持が容易となり、コネクタの操作性が向上する。
【0025】
翼部104の軸方向側面は、面取りされたR形状とすることができる。これにより、翼部104による違和感をさらに低減できる。
【0026】
本実施形態においては、チューブ接続部102の表面に軸方向に延びる4つの凸条部106が設けられている。凸条部106を設けることにより、把持がさらに容易となる。凸条部106は、鍔部103の短径方向及び長径方向からずれた方向に突出するように形成されている。また、コネクタを立てた状態で平面視した場合に、凸条部106は鍔部103から突出しないように設けられている。このようにすることにより、凸条部106が皮膚に当たりにくくすることができ、不快感を低減できる。
【0027】
図7〜11に示すように、鍔部103の短径方向においてチューブ接続部102の外側面の一部が切り落とされた平坦面107を形成してもよい。平坦面107を設けることにより、把持が容易となる。また、皮膚と接触する部分が平面となるため、圧力を分散することができ不快感をより低減できる。平坦面107は、チューブ接続部102の外側面の一部が切り落とされて形成されているため、鍔部104よりも突出した部分を有していない。このため、皮膚に触れた際の違和感を増大させることがない。平坦面107を設けると共に、凸条部106を設けることもできる。
【0028】
本実施形態のコネクタの対となるコネクタは、例えば、ISO80369−3に準拠したオスルアーコネクタとすることができる。コネクタ接続部101は、オスルアーコネクタを受け入れるテーパ状の内壁面を有する開口部を有し、コネクタ接続部101の外周面には、オスルアーコネクタのロックリングと螺合するオスねじ111が設けられている。このため、優れた液密性と接続強度とを実現することができる。
【0029】
本実施形態のコネクタをISO80369−3に準拠したコネクタとする場合、鍔部103は、例えば長径を13.3mm以上、30mm以下とすることができる。短径は、コネクタ接続部101の基端の外径によって決まり、コネクタ接続部101の基端の外径は、5.0mm以上、8.2mm以下とすることができる。
【0030】
チューブ接続部102には、例えば、経腸栄養用の栄養剤を収容した容器と接続されチューブを接続することができる。チューブ接続部102が、チューブに外嵌する構成である例を示したが、チューブに内嵌する構成とすることもできる。
【0031】
本開示のコネクタは、経腸栄養ラインの患者側の端部に設けるコネクタとして有用であるが、他の用途に使用するコネクタについても本開示の思想を反映させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示のコネクタは、皮膚に触れた際の違和感を低減できると共に、操作性を向上させることができ、医療用のコネクタ等として有用である。
【符号の説明】
【0033】
100 コネクタ
101 コネクタ接続部
102 チューブ接続部
103 鍔部
104 翼部
106 凸条部
107 平坦面
202 ロックリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11