(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する、前記第2の熱硬化性樹脂組成物中の前記導電フィラーの含有量が、35質量%以上65質量%以下である、請求項1または2に記載の半導体装置。
前記第1の封止材の25℃における線膨張係数をL1とし、前記第2の封止材の25℃における線膨張係数をL2とした時、L1−L2の絶対値が0ppm以上30ppm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
<半導体装置>
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す図である。なお、本実施形態に係る半導体装置100に関し、ボンディングワイヤにより電気的に接続されている例を挙げて説明するが、かかる半導体装置100は、ボンディングワイヤを用いたものに限定されるものではない。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子30と、半導体素子30の表面を覆うように半導体素子30を封止してなる第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第1の封止材10と、第1の封止材10の表面を覆うように第1の封止材10を封止してなる第1の熱硬化性樹脂組成物とは異なる第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第2の封止材20と、を備えるものである。つまり、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子30と、半導体素子30を封止する第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第1の封止材10と、第1の封止材10における半導体素子30が配されている側の面とは反対側の面よりも外側に配され、かつ第1の熱硬化性樹脂組成物とは異なる第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第2の封止材20と、を備えるものであるともいえる。そして、本実施形態において上記第2の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、硬化促進剤と、導電フィラーと、を含むエポキシ樹脂組成物である。これにより、電磁波遮蔽特性と電気的絶縁特性とのバランスに優れた半導体装置を実現することができる。
【0016】
このように、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子30を封止する第1の封止材10と、導電フィラーを含む第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成され、第1の封止材10を封止する第2の封止材20と、を備えることを特徴とした構成を採用している。言い換えれば、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子30の外側に、2種の封止材を所定の順番で配置してなる構成を採用したものである。さらに、具体的には、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子30を第1の封止材10により封止し、かかる第1の封止材10の外側に、導電フィラーを含むため電磁波遮蔽特性が付与された第2の封止材20を配置した構成を採用するものである。そのため、本実施形態に係る半導体装置100によれば、第1の封止材10により電気的絶縁特性を発現し、第2の封止材20により電磁波遮蔽特性を発現することができる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置100に備わる半導体素子30は、ダイボンド材硬化体80を介して基板50上に搭載して固定されている。この基板50としては、リードフレームや有機基板等が挙げられる。また、半導体素子30の電極パッド(図示せず)と、基板50上の電極パッド70は、ボンディングワイヤ60によって電気的に接続されている。つまり、
図1に示す半導体装置100において、半導体素子30と、第1の封止材10と、第2の封止材20と、を含む構造体は、基板50上に形成されている。
ここで、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子30と、第1の封止材10と、第2の封止材20とが上述した配置で形成されたものであれば、チップ搭載領域外にも再配線層を形成した、いわゆるFan−out型としてもよい。
【0018】
本実施形態に係る半導体装置100は、上述したように第1の封止材10と、第2の封止材20とを備えたものであるが、これらの封止材とは異なる他の封止材でさらに封止されてなる構成を採用してもよい。
【0019】
また、本実施形態に係る半導体装置100において、第1の封止材10の25℃における線膨張係数をL1とし、第2の封止材20の25℃における線膨張係数をL2とした時、L1−L2の絶対値の上限値は、好ましくは、30ppm以下であり、より好ましくは、28ppm以下であり、さらに好ましくは、26ppm以下であり、最も好ましくは、20ppm以下である。こうすることで、第2の封止材20と、第1の封止材10との界面や、第2の封止材20または第1の封止材10と基板50との界面領域に内部応力が発生することを抑制できる。これにより、2種類の封止材間の密着性や、各封止材10(20)と基板50との間の密着性に優れた半導体装置100を実現することができる。そして、L1−L2の絶対値が上記数値範囲内にあることで、結果として、耐リフロー性や長期信頼性に優れた半導体装置100とすることができる。特に、上述した効果は、L1−L2の絶対値の上限値が、20ppm以下である場合に顕在化する傾向にある。
また、L1−L2の絶対値の下限値は限定されず、例えば、0ppm以上とすることができる。なお、L1−L2の絶対値は、0ppmに近い値であればあるほど好ましい。
【0020】
また、本実施形態において、第1の封止材10(第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃における線膨張係数L1の上限値は、第1の封止材10と第2の封止材20との密着性と、第1の封止材10と基板50との密着性をバランスよく向上させる観点から、例えば、30ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましい。
また、第1の封止材10の25℃における線膨張係数L1の下限値は、上記上限値と同様の観点から、例えば、1ppm以上であることが好ましく、5ppm以上であることがより好ましい。
【0021】
また、本実施形態において、第2の封止材20(第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃における線膨張係数L2の上限値は、第2の封止材20と第1の封止材10との密着性と、第2の封止材20と基板50との密着性をバランスよく向上させる観点から、50ppm以下であることが好ましく、40ppm以下であることがより好ましい。
また、第2の封止材20の25℃における線膨張係数L2の下限値は、上記上限値と同様の観点から、例えば、10ppm以上であることが好ましく、20ppm以上であることがより好ましい。
【0022】
ここで、第1の封止材10(第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃における線膨張係数L1と、第2の封止材20(第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物)の25℃における線膨張係数L2は、たとえば次にように測定することができる。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で所望の熱硬化性樹脂組成物を注入成形し、長さ15mm×幅4mm×厚さ3mmの試験片を得る。次いで、得られた試験片を175℃、4時間の条件で熱処理して後硬化する。次いで、後硬化後の上記試験片に対し熱膨張計を用いた測定を行う。
【0023】
図1に示す半導体装置100において、半導体素子30が配されている位置を中心とした時に、第1の封止材10は、第2の封止材20と比べて、中心側の位置に配されている。本実施形態に係る半導体装置100において、半導体素子30、第1の封止材10および第2の封止材20の25℃における線膨張係数は、中心側に配されている部材であるほど、小さい値を示すことが好ましい。すなわち、
図1の半導体装置100について、第1の封止材10の25℃における線膨張係数L1は、例えば、第2の封止材20の25℃における線膨張係数L2より小さいことが好ましい。また、第1の封止材10および第2の封止材20の内、上記中心側に配されている第1の封止材10の25℃における線膨張係数L1と、第1の封止材10と比べて上記中心から離れた位置に配されている第2の封止材20の25℃における線膨張係数L2とから算出されるL2−L1の絶対値の上限値は、好ましくは、30ppm以下であり、より好ましくは、28ppm以下であり、さらに好ましくは、26ppm以下であり、最も好ましくは、20ppm以下である。これにより、半導体素子30および各封止材10(20)と、基板50との界面領域に発生する内部応力が半導体装置100に対して及ぼす影響を緩和することができる。したがって、2種類の封止材間の密着性や、各封止材10(20)と基板50との間の密着性に優れた半導体装置100を実現することができる。
また、L2−L1の絶対値の下限値は限定されず、例えば、0ppm以上とすることができる。なお、L1−L2の絶対値は、0ppmに近い値であればあるほど好ましい。
【0024】
ここで、本実施形態に係る半導体装置100は、
図2に示すように、第1の封止材10の一部が露出するように第1の封止材10が第2の封止材20により覆われたものであってもよい。具体的には、本実施形態に係る半導体装置100における第2の封止材20は、第1の封止材10の天面のみを覆うように形成してもよい。
ただし、本実施形態に係る半導体装置100は、第1の封止材10と第2の封止材20の密着性を向上させ、結果として電磁波遮蔽特性と電気的絶縁特性とをバランスよく発現させる観点から、
図1に示すように、第1の封止材10の表面全域が露出しないように、第1の封止材10の表面全域が第2の封止材20により覆われたものであることが好ましい。つまり、本実施形態に係る半導体装置100において、第2の封止材20は、第1の封止材10の表面について、その一部を覆っていてもよいし、全面を覆っていてもよいが、電磁波遮蔽特性と電気的絶縁特性とをバランスよく発現させる観点から、第1の封止材10の表面全域が露出しないように該第1の封止材10の表面全域を覆っていることが好ましい。
また、本実施形態に係る半導体装置100において、第1の封止材10は、半導体素子30の表面について、その一部を覆っていてもよいし、全面を覆っていてもよいが、良好な電気的絶縁特性を発現させる観点から、半導体素子30の表面全域が露出しないように該半導体素子30の表面全域を覆っていることが好ましい。
【0025】
次に、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。
まず、基板50上に、半導体素子30を搭載する。次いで、基板50と半導体素子30を、ボンディングワイヤ60により互いに接続させる。次いで、半導体素子30の表面を覆うように、半導体素子30と、ボンディングワイヤ60とを第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により構成された第1の封止材10により封止する。その後、第1の封止材10の表面を覆うように、第1の封止材10を第1の熱硬化性樹脂組成物とは異なる第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により第2の封止材20を形成する。これにより、本実施形態に係る半導体装置100が製造されることとなる。
また、第1の封止材10または第2の封止材20の封止成形の方法としては、たとえばトランスファー成形法、圧縮成形法、ラミネート成形法が挙げられる。また、第1の封止材10と第2の封止材20の封止成形の方法は、同じ手法を採用してもよいし、異なる手法であってもよい。
なお、本実施形態において、封止成形及び硬化体の作製は、例えば、次の条件で行うことができる。まず、封止成形の条件としては、例えば、温度120℃以上200℃以下、時間で10秒間以上10分間以下とすることができる。また、封止成形後、後硬化(ポストキュア)によって硬化体を作製する条件としては、例えば、温度150℃以上180℃以下、時間2時間以上24時間以下とすることができる。
【0026】
また、本実施形態に係る半導体装置100は、基板50上に、半導体ウエハを搭載した構造体を用いて作製してもよい。この場合、本実施形態に係る半導体装置100は、以下の方法で作製することができる。
まず、基板50上に、半導体ウエハを搭載した構造体を準備する。次に、かかる構造体の基板50が設けられている面とは反対側の面から、半導体ウエハのダイシング領域に沿って、当該半導体ウエハに対して所定幅の切れ込みを複数形成することにより、当該半導体ウエハを個片化した複数の半導体チップ30を作製する。すなわち、構造体の基板50が設けられている面とは反対側の面から、当該半導体ウエハをハーフカットする。次いで、上述した方法で第1の封止材10および第2の封止材20を形成する。これにより、本実施形態に係る半導体装置100を複数同時に製造することができる。つまり、上述した方法を採用すれば、本実施形態に係る半導体装置100を複数同時に一括して作製することができる。
【0027】
ここで、上述した切れこみの形成には、ダイシングブレード、レーザー等を使用することができる。また、切れこみの幅は、特に限定されないが、50μm以上300μm以下とすることが好ましい。そして、切れこみは、等間隔に形成することが好ましい。なお、切れ込みの幅は、当該切れ込みを形成した後の半導体ウエハの強度や回路配置等の条件を考慮して設定することが一般的である。そのため、切れ込みの幅は、半導体装置100の設計段階において上述した条件に鑑みて、上記数値範囲内となるよう適宜設定すればよい。
【0028】
次に、上述した本実施形態に係る半導体装置100に備わる第1の封止材10と第2の封止材20を形成するために用いる熱硬化性樹脂組成物について説明する。ここで、第1の封止材10と第2の封止材20を形成するために用いる各熱硬化性樹脂組成物、すなわち、第1の熱硬化性樹脂組成物と第2の熱硬化性樹脂組成物は、第1の封止材10と第2の封止材20との密着性を良好なものとする観点から、共通の樹脂成分を含むことが好ましい。すなわち、第1の熱硬化性樹脂組成物及び第2の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、共にエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
また、本実施形態に係る第1の封止材10を形成するために用いる第1の熱硬化性樹脂組成物と、第2の封止材20を形成するために用いる第2の熱硬化性樹脂組成物は、両者からなる樹脂セットの形態にて、市場に流通させることが可能であるものと考えられる。いわば、本実施形態に係る上記樹脂セットは、第1の封止材10を形成するために用いる第1の熱硬化性樹脂組成物により構成される成形材料群と、第2の封止材20を形成するために用いる第2の熱硬化性樹脂組成物により構成される成形材料群と、からなるものであるといえる。そして、本実施形態において、第1の熱硬化性樹脂組成物により構成される上記成形材料群と、第2の熱硬化性樹脂組成物により構成される上記成形材料群は、いずれも、固形状の樹脂組成物により構成されたものであることが好ましい。
【0029】
本実施形態において第2の熱硬化性樹脂組成物は、EMMI−1−66法により測定したスパイラルフローが、50cm以上であることが好ましく、80cm以上であるとさらに好ましく、85cm以上であるとより好ましい。こうすることで、半導体装置の作製時に、封止材の未充填やボイド発生といった不具合の発生を抑えることができる。また、上記スパイラルフローの上限値は、たとえば、350cm以下としてもよいし、300cm以下としてもよいし、280cm以下としてもよい。こうすることで、第2の熱硬化性樹脂組成物による封止材の成形性を良好なものとすることができる。
なお、上述したEMMI−1−66法により測定したスパイラルフローは、たとえば、以下の方法で測定することができる。低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−15」)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入し、流動長をスパイラルフローとして測定する。なお、単位は、cmである。
【0030】
本実施形態において第1の熱硬化性樹脂組成物は、EMMI−1−66法により測定したスパイラルフローが、80cm以上250cm以下であることが好ましく、100cm以上230cm以下であるとさらに好ましく、110cm以上200cm以下であると最も好ましい。こうすることで、半導体装置の作製時に、封止材の未充填や金線流れといった不具合の発生を抑えることができる。なお、上述したEMMI−1−66法により測定したスパイラルフローは、第2の熱硬化性樹脂組成物について上述した方法と同様の方法で測定することができる。
【0031】
また、本実施形態において、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の260℃における曲げ強度は、好ましくは、0.5MPa以上50MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上30MPa以下であり、さらに好ましくは、2MPa以上20MPa以下である。こうすることにより、半導体装置において反りが発生することを抑制することができる。なお、硬化物の260℃における曲げ強度は、260℃の雰囲気下、JIS K6911に準拠した方法で測定することができる。
【0032】
また、本実施形態において、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の260℃における曲げ強度は、好ましくは、5MPa以上100MPa以下であり、より好ましくは、10MPa以上50MPa以下である。こうすることにより、半導体装置において封止材と基板との間の密着性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態において、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の周波数1GHzにおける電磁波遮蔽性は、かかる樹脂組成物を用いて作製した封止材を備える半導体装置の電磁波遮蔽特性を向上させる観点から、好ましくは、5dB以上100dB以下であり、さらに好ましくは、10dB以上70dB以下である。また、かかる硬化物の周波数1GHzにおける電磁波遮蔽性は、たとえば、以下の方法で測定することができる。圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形し、長さ110mm×幅110mm×厚さ1mmの試験片を得る。得られた試験片を175℃、4時間の条件で熱処理して後硬化する。次いで、後硬化後の上記試験片をアドバンテスト社製のTR17301Aにおける送信用アンテナと受信用アンテナの間に設置し、測定周波数1GHzの条件で該試験片を測定する。
なお、本実施形態に係る半導体装置は、1GHzといった高周波数の電磁波について電磁波遮蔽性が高いという観点で都合がよい。1GHzといった高周波数の電磁波は、1GHzよりも小さい周波数のものよりも電気的エネルギー及び磁気的エネルギーが大きい。携帯電話、PCなどの高密度で半導体装置を配する場合、1GHzといった高周波数の電磁波が半導体装置に干渉することで、半導体装置の誤作動を引き起こすという問題があった。本願発明の半導体装置は電磁波遮蔽性が高いため、1GHzといった高周波数の電磁波は生じたとしても、半導体装置の誤作動を引き起こしにくいという観点で都合が良い。
【0034】
第2の封止材20を形成するために用いる第2の熱硬化性樹脂組成物について説明する。第2の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、硬化促進剤と、導電フィラーと、を含むエポキシ樹脂組成物である。かかる第2の熱硬化性樹脂組成物の形態は、作業性の観点から、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。つまり、第2の熱硬化性樹脂組成物の形態は、固形状であることが好ましい。
【0035】
上述した通り第2の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む。かかるエポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。これにより、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することができる。
【0036】
エポキシ樹脂の含有量は、たとえば、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される第2の封止材20と、第1の封止材10または基板50との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、当該第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される第2の封止材20の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。
【0037】
上述した通り第2の熱硬化性樹脂組成物は、フェノール樹脂硬化剤を含む。かかるフェノール樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであればよい。具体的には、フェノール樹脂硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂硬化剤により、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスが良好となる。特に、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0038】
また、本実施形態に係る第2の熱硬化性樹脂組成物中には、上述したフェノール樹脂硬化剤とともに、他の硬化剤を併用することもできる。併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。
【0039】
重付加型の硬化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミン、およびジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどのポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0040】
触媒型の硬化剤の具体例としては、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0041】
縮合型の硬化剤の具体例としては、レゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0042】
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール樹脂硬化剤の配合割合の下限値としては、全硬化剤に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。
【0043】
硬化剤全体の配合割合の下限値は、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、良好な硬化性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値については、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0044】
上述した通り第2の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含む。硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と、フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基と、の架橋反応を促進させるものであればよく、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用するものを用いることができる。硬化促進剤としては、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、さらには前記アミジン、アミンの4級塩等の窒素原子含有化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0045】
硬化促進剤の含有量は、第2の熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは、0.05質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上1.5質量%以下である。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化性が低下することを抑制できる。また、硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、第2の熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下することを抑制できる。
【0046】
上述した通り第2の熱硬化性樹脂組成物は導電フィラーを含む。かかる導電フィラーとしては、導電性を帯びることが可能な材料により形成された繊維や粒子等が挙げられる。本実施形態において、繊維とは繊維状フィラーを示す。また、粒子とは粒子状フィラーを示す。
かかる繊維としては、金属繊維や炭素繊維等が挙げられる。そして、上述した金属繊維を構成する金属材料の具体例としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、クロム、炭素或いはこれらの合金等が挙げられる。中でも、優れた電磁波遮蔽性を第2の封止材20に付与する観点から、炭素を主成分として含むものが好ましい。なお、本実施形態において、上述した炭素を主成分として含む導電フィラーとは、たとえば、当該導電フィラー全量に対して炭素を50質量%以上含むフィラーのことを指す。このような、炭素を主成分として含む導電フィラーとしては、具体的には、黒鉛、カーボンブラック、炭、コークス、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素繊維などが挙げられる。
また、導電フィラーが粒子である場合、その形状としては、扁平状、粒状、板状および針状等が挙げられる。
【0047】
導電フィラーの含有量は、例えば、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して35質量%以上65質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。これにより、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形して得られる第2の封止材20について、機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性のバランスをより効果的に向上させることができる。
【0048】
第2の熱硬化性樹脂組成物中には、必要特性に応じて、アスペクト比の異なる少なくとも2種以上の導電フィラーを含有させることが好ましい。第2の熱硬化性樹脂組成物が、アスペクト比の異なる少なくとも2種以上の導電フィラーを含むものである場合、かかる導電フィラーの1種として炭素材料を含むことが好ましい。この場合、使用可能な導電フィラーの具体的な組み合わせとしては、以下の繊維状フィラーと、かかる繊維状フィラーよりもアスペクト比の低い他のフィラーを含むものが挙げられる。具体的には、2種以上の導電フィラーとしては、少なくとも黒鉛および炭素繊維を含むことが好ましい。これらの導電フィラーは、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤等のシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理されてもよいし、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させるために収束剤処理されていてもよい。
なお、本実施形態において、アスペクト比とは、導電フィラーの(長径)/(短径)である。
導電性フィラーが繊維状フィラーである場合、長径とは繊維状フィラーの長さ、短径とは繊維状フィラーの繊維直径を示す。
粒子状フィラーの長径、短径は、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡による直接観察によって評価できる。以下に、走査型電子顕微鏡を用いた評価方法について説明する。まず、走査型電子顕微鏡の試料台に粒子状フィラーを固着させ、粒子が1つだけ視野に入る最大限まで観察倍率を高くして、形状を観察し、粒子状フィラーの観察面積の最も大きな面の方向から観察する。例えば、グラファイトの観察面積の最も大きな面としては、劈開面が相当する。次に、試料台を回転させて、粒子状フィラーの観察面積の最も小さな面から観察する。例えば、粒子状フィラーがグラファイトであれば、グラファイトの板状構造の積層断面が相当する。上記観察において、粒子状フィラーの観察面積の最も大きな面に、内接する最小の円を設定してその直径を計測して前記粒子の「長径」と定義する。また、粒子状フィラーの観察面積の最も小さな面について、2本の平行線が最も近接して且つ粒子状フィラーを挟み込むようにして引いたその平行線の間隔を「短径」と定義する。この操作を、任意に抽出した100個の粒子状フィラーに対して行ない、平均値を算出することでアスペクト比を求める。
繊維状フィラーが粒子状フィラーを介した導電パスを形成し、電磁波の電気的損失を向上させる観点から、繊維状フィラーのアスペクト比の上限値は、例えば、60以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、40以下であることが更に好ましい。
また、上記上限値と同様の観点から、繊維状フィラーのアスペクト比の下限値は、例えば、5以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
【0049】
導電フィラーとしては、アスペクト比の異なる2種以上のフィラーを用いることが好ましい。ここで、2種以上の導電フィラーとしては、例えば、上述した繊維状フィラー及び粒子状フィラーを含むことが好ましい。2種以上の導電フィラーとしては、具体的には、黒鉛の粒子及び炭素繊維を含むことが好ましい。これにより、半導体装置の電磁波遮蔽性を向上できる。これは、詳細なメカニズムは定かではないが、アスペクト比の異なる2種以上の導電フィラーが導電パスを形成することにより、電磁波の電気的な損失をさらに大きくできるためと推測される。
なお、2種以上の導電フィラーとして粒子状フィラー及び繊維状フィラーを含む場合、粒子の形状は、例えば、鱗状であることが好ましい。これにより、適切に導電パスを形成することができる。具体的な粒子状フィラー及び繊維状フィラーの組み合わせとしては、粒子状フィラーとして黒鉛を含み、繊維状フィラーとして炭素繊維を含むことが好ましい。
【0050】
2種以上の導電性フィラーとして、繊維及び粒子を含む場合、繊維の含有量の下限値は、例えば、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。これにより、導電性フィラーである繊維が、第2の熱硬化性樹脂組成物で適切に分散し、電磁波遮蔽性を向上するのに好適な導電パスを形成することができる。
また、2種以上の導電性フィラーとして、上述した繊維及び上述した粒子を含む場合、上述した繊維の含有量の上限値は、例えば、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。これにより、第2の熱硬化性樹脂組成物のスパイラルフローを適切に維持できるという観点で都合が良い。
【0051】
2種以上の導電性フィラーとして、繊維及び粒子を含む場合、粒子の含有量の下限値は、例えば、第2の熱硬化性樹脂組成物中の繊維の含有量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。これにより、複数の繊維間に粒子を充填することにより、粒子を介して複数の繊維が導電パスをより適切に形成することができる。
また、2種以上の導電性フィラーとして、繊維及び粒子を含む場合、粒子の含有量の上限値は、例えば、第2の熱硬化性樹脂組成物中の繊維の含有量に対して、150質量%以下であることが好ましく、145質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。これにより、繊維が第2の熱硬化性樹脂組成物で適切に分散し、電磁波遮蔽性を向上するのに適切な導電パスを形成することができる。
【0052】
上記繊維状フィラーよりもアスペクト比の低い他のフィラーとしては、たとえば黒鉛、カーボンブラック、炭、コークス、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素材料から選択される一種または二種以上の粉粒体を含むことができる。これらの中でも、機械的特性と電磁波遮蔽性のバランスを向上させる観点からは、炭素材料を含むことが好ましく、黒鉛またはカーボンブラックのうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0053】
本実施形態に係る第2の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;カルナバワックス等の天然ワックス、トリレンジイソシアネート変性酸化ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類、もしくはパラフィン、ジエタノールアミン・ジモンタン酸エステル等のエステル類等の離型剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン等の難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0054】
上述した第1の熱硬化性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、無機充填材と、を含むものであることが好ましい。かかる第1の熱硬化性樹脂組成物の形態は、作業性の観点から、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。つまり、第1の熱硬化性樹脂組成物の形態は、固形状であることが好ましい。
【0055】
第1の熱硬化性樹脂組成物に含有させるエポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらのうち、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、およびテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ならびにスチルベン型エポキシ樹脂は結晶性を有するものであることが好ましい。これにより、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することができる。
【0056】
エポキシ樹脂の含有量は、第1の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、第1の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される封止材と半導体素子との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば第1の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、当該第1の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される封止材の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。そのため、エポキシ樹脂の含有量が上記数値範囲内にある第1の熱硬化性樹脂組成物によれば、半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0057】
本実施形態に係る第1の熱硬化性樹脂組成物中には、上述した通り、硬化剤が含まれていてもよい。これにより、当該樹脂組成物の流動性およびハンドリング性を向上させることができる。
ここで、本実施形態に係る硬化剤としては、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。
【0058】
硬化剤に用いられる重付加型の硬化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミン、およびジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどのポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0059】
触媒型の硬化剤の具体例としては、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0060】
縮合型の硬化剤の具体例としては、レゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0061】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂硬化剤が好ましい。フェノール樹脂硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は特に限定されない。
フェノール樹脂硬化剤の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型樹脂;ポリビニルフェノール;ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂やトリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。中でも、高温高湿環境条件下における半導体装置の信頼性を向上させる観点から、多官能型フェノール樹脂が好ましい。
【0062】
本実施形態に係る第1の熱硬化性樹脂組成物中における硬化剤の含有量は、好ましくは、第1の熱硬化性樹脂組成物全体に対して2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは、3質量%以上13質量%以下であり、最も好ましくは、4質量%以上11質量%以下である。硬化剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、十分な流動性を有する第1の熱硬化性樹脂組成物を実現し、成型性の向上を図ることができる。また、硬化剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態に係る第1の熱硬化性樹脂組成物は、充填材を含んでいてもよい。かかる充填材としては、一般に半導体封止材料に用いられている無機充填材または有機充填材であればよい。具体的には、上記無機充填材として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。また、かかる有機充填材としては、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられる。これらの充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、無機充填材が好ましく、溶融球状シリカを用いることがとくに好ましい。
また、充填材の形状としては、第1の熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えつつ、充填材の含有量を高める観点から、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。
また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができる。充填材の平均粒径d50は、半導体素子周辺への充填性の観点から、好ましくは、0.01μm以上150μm以下であり、より好ましくは、0.1μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは、0.5μm以上50μm以下である。こうすることで、樹脂組成物の流動性が良好な状態となるように制御することができる。また、本実施形態における充填材は、第1の熱硬化性樹脂組成物の流動性を向上させつつ、作製する半導体装置の機械的強度を向上させる観点から、平均粒径d50が5μm以下の充填材と、平均粒径d50が10μm以上の充填材とを併用することが好ましい。
なお、無機充填材の平均粒子径d50は、たとえばレーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)を用いて測定することが可能である。
【0064】
本実施形態に係る第1の熱硬化性樹脂組成物中における充填材の含有量は、たとえば第1の熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは、35質量%以上94質量%以下であり、さらに好ましくは、50質量%以上93質量%以下であり、最も好ましくは65質量%以上90質量%以下である。充填材の含有量を上記下限値以上とすることにより、低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。また、充填材の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用エポキシ樹脂組成物の流動性の低下にともなう成型性の低下や、高粘度化に起因したボンディングワイヤ流れ等を抑制することが可能となる。
【0065】
本実施形態に係る第1の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と、硬化剤(たとえば、フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基)と、の架橋反応を促進させるものであればよく、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用するものを用いることができる。硬化促進剤としては、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、さらには前記アミジン、アミンの4級塩等の窒素原子含有化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0066】
硬化促進剤の含有量は、第1の熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは、0.05質量%以上1質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上0.8質量%以下である。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化性が低下することを抑制できる。また、硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、第1の熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下することを抑制できる。
【0067】
第1の熱硬化性樹脂組成物には、上記各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、離型剤、低応力剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、およびイオン捕捉剤等から選択される一種または二種以上の添加物を添加してもよい。カップリング剤としては、たとえばエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等が挙げられる。イオン捕捉剤としては、ハイドロタルサイト等が挙げられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0068】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0069】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 半導体素子と、
上記半導体素子の表面を覆うように上記半導体素子を封止しており、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第1の封止材と、
上記第1の封止材の表面を覆うように上記第1の封止材を封止しており、上記第1の熱硬化性樹脂組成物とは異なる第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第2の封止材と、
を備え、
上記第2の熱硬化性樹脂組成物が、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
硬化促進剤と、
導電フィラーと、
を含むエポキシ樹脂組成物である、半導体装置。
2. 上記導電フィラーは、当該導電フィラー全量に対して炭素を50質量%以上含む、上記1.に記載の半導体装置。
3. 上記第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対する、上記第2の熱硬化性樹脂組成物中の上記導電フィラーの含有量が、35質量%以上65質量%以下である、上記1.または2.に記載の半導体装置。
4. 上記導電フィラーとして、粒子状フィラー及び繊維状フィラーを含む、上記1.から3.のいずれか1つに記載の半導体装置。
5. 上記粒子状フィラーが黒鉛であり、
上記繊維状フィラーが炭素繊維である、上記4.に記載の半導体装置。
6. 上記第2の熱硬化性樹脂組成物中の上記炭素繊維の含有量は、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、10質量%以上50質量%以下であり、
上記第2の熱硬化性樹脂組成物中の上記黒鉛の含有量は、第2の熱硬化性樹脂組成物中の繊維の含有量に対して、20質量%以上150質量%以下である、上記5.に記載の半導体装置。
7. 上記第1の封止材の25℃における線膨張係数をL1とし、上記第2の封止材の25℃における線膨張係数をL2とした時、L1−L2の絶対値が0ppm以上30ppm以下である、上記1.から6.のいずれか1つに記載の半導体装置。
8. 上記線膨張係数L1は、上記線膨張係数L2よりも小さい、上記7.に記載の半導体装置。
9. 上記第1の熱硬化性樹脂組成物が、
エポキシ樹脂と、
硬化剤と、
硬化促進剤と、
充填材と、
を含む、上記1.から8.のいずれか1つに記載の半導体装置。
10. 上記第1の封止材の上記表面全域が露出しないように、上記第1の封止材の上記表面全域が上記第2の封止材により覆われている、上記1.から9.のいずれか1つに記載の半導体装置。
11. 上記半導体素子と、上記第1の封止材と、上記第2の封止材と、を含む構造体が基板上に形成されている、上記1.から10.のいずれか1つに記載の半導体装置。
12. 半導体素子の表面を覆うように上記半導体素子を第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により封止して第1の封止材を形成する工程と、
上記第1の封止材の表面を覆うように上記第1の封止材を上記第1の熱硬化性樹脂組成物とは異なる第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化体により封止して第2の封止材を形成する工程と、
を有し、
上記第2の熱硬化性樹脂組成物が、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
硬化促進剤と、
導電フィラーと、
を含むエポキシ樹脂組成物である、半導体装置の製造方法。
13. 上記第2の封止材を形成する工程に次いで、上記第1の封止材及び上記第2の封止材を熱処理して後硬化する、上記12.に記載の半導体装置の製造方法。
14. 半導体素子の表面を覆うように熱硬化性樹脂組成物の硬化体により形成された第1の封止材の表面を覆うように、上記第1の封止材を封止してなる上記第2の封止材を形成するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
硬化促進剤と、
導電フィラーと、
を含む、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
15. 上記1.乃至11.のいずれか一つに記載の半導体装置における上記第1の封止材を形成するために用いる上記第1の熱硬化性樹脂組成物により構成される成形材料群と、
上記1.乃至11.のいずれか一つに記載の半導体装置における上記第2の封止材を形成するために用いる上記第2の熱硬化性樹脂組成物により構成される成形材料群と、
からなる樹脂セット。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
<第1の熱硬化性樹脂組成物の作製>
実施例1〜6および比較例1のそれぞれについて、次のように封止用樹脂組成物を調製した。まず、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70〜100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕することにより、粉粒状の樹脂組成物を第1の熱硬化性樹脂組成物として得た。表1中における各成分の詳細は後述のとおりである。また、表1中の単位は、質量%である。
【0072】
<第2の熱硬化性樹脂組成物の作製>
実施例1〜6および比較例2のそれぞれについて、次のように封止用樹脂組成物を調製した。まず、表1に記載された配合量でカップリング剤2を用いて、予め表面処理を施した導電フィラー1〜導電フィラー4をそれぞれ準備した。次いで、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70〜100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕することにより、粉粒状の樹脂組成物を第2の熱硬化性樹脂組成物として得た。表1中における各成分の詳細は後述のとおりである。また、表1中の単位は、質量%である。
【0073】
導電フィラー1〜導電フィラー4のカップリング剤2を用いた表面処理は、それぞれ、次のように行った。
まず、導電フィラーをミキサーに投入し、撹拌を開始した。次いで、ミキサー内に、カップリング剤2を投入して、3分間撹拌を続けた。こうすることで、導電フィラーとカップリング剤2との混合物を得た。次に、得られた混合物をミキサーから取り出し、所定時間放置した。このようにして、カップリング剤2により表面処理が施された導電フィラー1〜導電フィラー4を作製した。
【0074】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000K)
・エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)
・エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YL6810)
・エポキシ樹脂4:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂との混合物(日本化薬社製、CER−3000−L)
【0075】
(充填材)
・充填材1:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、FB−950FC、平均粒径d50:22μm)
・充填材2:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、FB−105FC、平均粒径d50:12μm)
・充填材3:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、FB−35、平均粒径d50:10μm)
・充填材4:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO−25R、平均粒径d50:0.5μm)
・充填材5:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径d50:1μm)
【0076】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH−7851SS)
・硬化剤2:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、PR−HF−3)
・硬化剤3:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(日本化薬社製、GPH−65)
【0077】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:下記式(1)で表わされる硬化促進剤
【0078】
【化1】
【0079】
硬化促進剤1の製造方法を以下に示す。
まず、冷却管及び攪拌装置付きのセパラブルフラスコに対して、2,3−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)と、テトラフェニルホスホニウムブロミド16.77g(0.040mol)と、メタノール100mlとを仕込み、均一に撹拌溶解させた。次に、水酸化ナトリウム1.60g(0.04ml)を10mLのメタノールに溶解させた水酸化ナトリウム溶液を、セパラブルフラスコ内に徐々に滴下した。これにより析出した結晶を、ろ過、水洗、真空乾燥することで、硬化促進剤1を得た。
【0080】
・硬化促進剤2:下記式(2)で表わされる硬化促進剤
【0081】
【化2】
【0082】
硬化促進剤2の製造方法を以下に示す。
まず、冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコに対して、4,4'−ビスフェノールS37.5g(0.15mol)と、メタノール100mlとを仕込み、室温で均一に撹拌溶解させた。次に、水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を予め50mLのメタノールに溶解させた溶液を、撹拌しながら添加した。次いで、テトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1mol)を予め150mLのメタノールに溶解させた溶液を、添加した。その後、しばらく撹拌を継続し、300mLのメタノールを添加した後、セパラブルフラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下することにより、白色沈殿を得た。この沈殿を、濾別してから、乾燥することで白色結晶の硬化促進剤2を得た。
【0083】
・硬化促進剤3:下記式(3)で表わされる硬化促進剤
【0084】
【化3】
【0085】
硬化促進剤3の製造方法を以下に示す。
まず、1800gのメタノールを入れたフラスコに、249.5gのフェニルトリメトキシシランと、384.0gの2,3−ジヒドロキシナフタレンとを加えて、各成分を溶解させた。次に、上記フラスコに対して、室温条件下、28質量%のナトリウムメトキシド−メタノール溶液231.5gを撹拌しながら滴下した。次いで、メタノール600gにテトラフェニルホスホニウムブロマイド503.0gを予め溶解させた溶液を、室温条件下、撹拌しながら滴下混合し、結晶を析出させた。このようにして得られた結晶を、ろ過、水洗、真空乾燥することで、桃白色結晶の硬化促進剤3を得た。
【0086】
(導電フィラー)
・導電フィラー1:鱗状黒鉛(西村黒鉛社製、PB−90、平均粒径15μm)
・導電フィラー2:炭素繊維(三菱レイヨン社製、ダイアリードK223HM、長径200μm、短径5μm)
・導電フィラー3:炭素繊維(サイテック エンジニアード マテリアルズ社製、DKD、長径200μm、短径10μm)
なお、導電フィラー1〜3は、それぞれアスペクト比が異なるものであることが確認されている。
【0087】
(離型剤)
・離型剤1:ステアリン酸(日油社製、SR−サクラ)
・離型剤2:トリレンジイソシアネート変性酸化ワックス(日本精蝋社製、HAD−6548G)
・離型剤3:ジエタノールアミン・ジモンタン酸エステル(伊藤製油社製、ITOHWAX TP NC−133)
・離型剤4:グリセリントリモンタン酸エステル(クラリアント・ジャパン社製、リコルブ WE−4)
・離型剤5:酸化ポリエチレンワックス(クラリアント・ジャパン社製、リコワックス PED191)
【0088】
(その他)
・難燃剤:水酸化アルミニウム(住友化学社製、CL−303)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、カーボン#5)
・低応力剤:アルキル変性シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、XZ−5600)
・カップリング剤1:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、S810)
・カップリング剤2:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−573)
【0089】
<実施例1〜6に係る半導体装置の作製>
発明を実施するための形態で述べた方法により、
図1に示す半導体装置を作製した。まず、第1の熱硬化性樹脂組成物を用いて、基板上に搭載した半導体素子(20mm×20mm)を封止成形することにより、1次パッケージを作製した。第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる第1の封止材の成形は、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で行った。次いで、得られた1次パッケージをインサートとし、第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて、かかるインサートを封止成形することにより、2次パッケージを作製した。第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる第2の封止材の成形は、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で行った。その後、得られた2次パッケージを175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより、
図1に示す半導体装置を得た。
【0090】
<比較例1に係る半導体装置の作製>
実施例1の半導体装置における第1の封止材10および第2の封止材20に相当する構成(封止材)を、第1の熱硬化性樹脂組成物を用いて一括成形した点以外は、実施例1の半導体装置と同様の構成を備えた比較例1の半導体装置を作製した。
比較例1の半導体装置を作製するにあたり、
図1に示す第1の封止材10および第2の封止材20に相当する構成(封止材)は、基板上に搭載した半導体素子(20mm×20mm)をインサートとし、第1の熱硬化性樹脂組成物を用いて一括成形することにより作製した。すなわち、比較例1の半導体装置において、
図1に示す第1の封止材10および第2の封止材20に相当する構成(封止材)は、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物により一体的に形成されたものである。また、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる封止材の成形は、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で行った後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより、比較例1の半導体装置を得た。
【0091】
<比較例2に係る半導体装置の作製>
実施例1の半導体装置における第1の封止材10および第2の封止材20に相当する構成(封止材)を、第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて一括成形した点以外は、実施例1の半導体装置と同様の構成を備えた比較例1の半導体装置を作製した。すなわち、第1の熱硬化性樹脂組成物に代えて第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて封止材を作製した点以外は、比較例1と同様の方法で、比較例2の半導体装置を作製した。
【0092】
得られた各熱硬化性樹脂組成物および各半導体装置について、下記に示す測定及び評価を行った。
【0093】
・各熱硬化性樹脂組成物のスパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、上述した方法で作製した第1の熱硬化性樹脂組成物と第2の熱硬化性樹脂組成物とをそれぞれ注入し、流動長を測定した。なお、単位は、cmである。また、スパイラルフローの測定値が大きな値を示す程、熱硬化性樹脂組成物の流動性が良好であることを示す。
【0094】
・各熱硬化性樹脂組成物の硬化物の150℃における体積抵抗率:各熱硬化性樹脂組成物の硬化物の体積抵抗率を以下の方法で測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、各熱硬化性樹脂組成物を注入成形することにより直径100mm、厚さ3mmの円盤状成形品を得た。次いで、得られた円盤状成形品を175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して、各熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体を得た。次いで、得られた成形体に、カーボンペーストを用いて直径300mmの主電極と、直径32mmのガード電極と、直径45mmの対抗電極とを形成することで、体積抵抗率を測定するための試験片を得た。次に、得られた試験片を用い、超絶縁計(川口電機製作所社製、R−503)を用い、JIS K6911に準拠した方法で各熱硬化性樹脂組成物の硬化物の体積抵抗率を測定した。なお、単位は、Ω・cmである。また、測定条件は、150℃の雰囲気下、印加電圧500Vの条件とした。
【0095】
・各熱硬化性樹脂組成物の硬化物の260℃における曲げ強度:まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、各熱硬化性樹脂組成物を注入成形し、長さ15mm×幅10mm×厚さ4mmの成形品を得た。次に、得られた成型品を、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して、各熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる試験片を得た。次に、260℃の雰囲気下、JIS K6911に準拠した方法で得られた試験片の曲げ強度を測定した。なお、単位は、MPaである。
【0096】
・各熱硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における線膨張係数:まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、各熱硬化性樹脂組成物を注入成形し、長さ15mm×幅4mm×厚さ3mmの成形品を得た。次に、得られた成型品を、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して、各熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる試験片を得た。次いで、熱膨張計(セイコーインスツルメント社製、TMA‐120)を用い、昇温速度5℃/分の条件で得られた試験片を昇温し、硬化物の25℃における線膨張係数を測定した。なお、単位は、ppmである。なお、以下の表1には、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における線膨張係数の値をL1として示し、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における線膨張係数の値をL2として示す。
【0097】
・第2の熱硬化性樹脂組成物の成形性:実施例1〜6については、以下の方法で第2の熱硬化性樹脂組成物の成形性を評価するための構造体を作製した。まず、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第1の熱硬化性樹脂組成物を成形し、1次パッケージ(モールドサイズ:55mm×50mm、樹脂厚み:0.7mm、半導体素子サイズ:20mm×20mm、半導体素子上の樹脂厚み:0.4mm)を得た。次いで、得られた1次パッケージをインサートとし、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形した後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して2次パッケージ(モールドサイズ:60mm×70mm、樹脂厚み:0.75mm)を得た。次に、得られた2次パッケージにおける第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる封止材について、超音波映像装置(日立パワーソリューションズ社製、FineSATIII)を用いて、未充填やボイドの有無を確認した。また、上記2次パッケージにおけるエアベント部のバリを目視にて確認した。
なお、比較例1および比較例2については、評価を実施しなかった。
そして、評価結果は下記の通りとした。
◎:作製した2次パッケージにおいて、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる封止材に、未充填領域やボイドが存在していなかった。
○:作製した2次パッケージにおいて、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる封止材に、未充填領域やボイドが存在しているものの、その平均径がいずれも30μm以上であった。
×:作製した2次パッケージにおいて、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる封止材に、平均径が30μmを超える未充填領域やボイドが存在していた。
【0098】
・第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の電磁波遮蔽性:まず、比較例1については、第2の熱硬化性樹脂組成物を作製していないため評価を実施しなかった。そして、実施例1〜6および比較例2については、以下の方法で、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の電磁波遮蔽性を評価した。まず、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形し、長さ110mm×幅110mm×厚さ1mmの板状成形品を得た。次いで、得られた板状成形品を175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる試験片を得た。次いで、得られた試験片をアドバンテスト社製のTR17301Aにおける送信用アンテナと受信用アンテナの間に設置し、測定周波数1GHzの条件で該試験片の電磁波遮蔽性を測定した。なお、単位は、dBである。
【0099】
・半導体装置が備える封止材の電磁波遮蔽性:実施例1〜6の半導体装置が備える封止材の電磁波遮蔽性を評価するために用いる試験片は、以下の方法で作製した。また、試験片は、該試験片における第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物との厚み比が、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の厚み:第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の厚みが約14:1となるように作製した。
まず、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第1の熱硬化性樹脂組成物を成形し、長さ100mm×幅100mm×厚さ0.933mmの板状成形品1を得た。次に、得られた板状成形品をインサートとし、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形し、長さ110mm×幅110mm×厚さ1mmの板状成形品2を得た。次いで、得られた板状成形品2を175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物との厚み比が、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の厚み:第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の厚みが約14:1である試験片を得た。
比較例1の半導体装置が備える封止材の電磁波遮蔽性を評価するために用いる試験片は、以下の方法で作製した。具体的には、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物とからなる実施例1〜6の試験片と同サイズの試験片を、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第1の熱硬化性樹脂組成物を成形した後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより、比較例1の試験片を得た。
比較例2の半導体装置が備える封止材の電磁波遮蔽性を評価するために用いる試験片は、以下の方法で作製した。具体的には、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物とからなる実施例1〜6の試験片と同サイズの試験片を、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形した後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより、比較例2の試験片を得た。
次いで、得られた試験片をアドバンテスト社製のTR17301Aにおける送信用アンテナと受信用アンテナの間に設置し、測定周波数1GHzの条件で該試験片の電磁波遮蔽性を測定した。
評価結果は下記の通りとした。
◎:15dB以上の値を示した。
○:5dB以上15dB未満の値を示した。
×:5dB未満の値を示した。
【0100】
・半導体装置が備える封止材の150℃における体積抵抗率:各実施例、各比較例の半導体装置の電気的絶縁特性を評価するために、体積抵抗率を測定した。実施例1〜6の半導体装置が備える封止材の150℃における体積抵抗率を測定するために用いる試験片は、以下の方法で作製した。また、試験片は、該試験片における第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物との厚み比が、実施例1〜6の半導体装置における第1の封止材と第2の封止材との厚み比と同じ約14:1となるように作製した。
まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第1の熱硬化性樹脂組成物を成形することにより、直径90mm、厚さ2.8mmの円盤状成形品1を得た。次に、得られた円盤状成形品1をインサートとし、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形することにより、直径100mm、厚さ3mmの円盤状成形品2を得た。次いで、得られた円盤状成形品2を175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して試験片を得た。
比較例1の半導体装置が備える封止材の150℃における体積抵抗率を測定するために用いる試験片は、以下の方法で作製した。具体的には、実施例1〜6の試験片と同サイズの試験片を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第1の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより得た。
比較例2の半導体装置が備える封止材の電磁波遮蔽性を評価するために用いる試験片は、以下の方法で作製した。具体的には、実施例1〜6の試験片と同サイズの試験片を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)することにより得た。
次いで、得られた試験片に、カーボンペーストを用いて、直径30mmの主電極、直径32mmのガード電極、直径45mmの対抗電極を形成した。その後、150℃雰囲気下、直流500Vの条件で体積抵抗率を測定した。単位はΩ・cmである。
【0101】
・封止材間の密着性:圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第1の熱硬化性樹脂組成物を成形し、1次パッケージ(モールドサイズ:55mm×50mm、樹脂厚み:0.7mm、半導体素子サイズ:20mm×20mm、半導体素子上の樹脂厚み:0.4mm)を得た。次いで、得られた1次パッケージをインサートとし、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.3MPa、硬化時間2分の条件で、第2の熱硬化性樹脂組成物を成形した後、175℃、4時間の条件で後硬化(ポストキュア)して2次パッケージ(モールドサイズ:60mm×70mm、樹脂厚み:0.75mm)を得た。
評価結果は下記の通りとした。
○:第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物との接合界面に剥離が生じなかった。
×:第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物との接合界面に剥離が生じた。
【0102】
・リフロー耐熱性試験後の半導体装置における封止材間の密着性:各実施例の半導体装置の耐リフロー性を評価するために、リフロー耐熱性試験後の封止材間の密着性を以下の方法で評価した。まず、実施例1〜6の半導体装置に対して、30℃、60%RH、192時間の条件で加湿処理を施した。次いで、かかる半導体装置を最大温度260℃の温度プロファイルのリフローに3回通過させた。その後、得られた半導体装置について、超音波顕微鏡を用いた非破壊の超音波探傷検査(SAT)を実施し、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる第1の封止材と、第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる第2の封止材との接合界面における剥離状態を調べた。
評価結果は下記の通りとした。
◎:接合界面に剥離はなかった(両封止材が完全に密着していた)
○:若干の剥離が確認されたが、実用上問題ない程度のレベルであった。
【0103】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に各成分の配合比率と共に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示した通り、第1の熱硬化性樹脂組成物の硬化物と第2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物とからなる各実施例の試験片は、いずれも、電磁波遮蔽特性と電気的絶縁特性とのバランスに優れたものであった。また、各実施例の半導体装置は、いずれも、比較例1および2の半導体装置と比べて、電磁波遮蔽特性と電気的絶縁特性とのバランスに優れたものであると考えられる。