特許第6891685号(P6891685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891685
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】コラムホールカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/20 20060101AFI20210607BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20210607BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20210607BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   B62D1/20
   F16J15/52 Z
   F16J15/3232 201
   F16J3/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-139303(P2017-139303)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-18730(P2019-18730A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 恒平
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 学
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−141183(JP,A)
【文献】 特開2001−324018(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0159762(US,A1)
【文献】 特開2004−322788(JP,A)
【文献】 特開2011−001030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
F16J 3/04
F16J 15/3232
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向への移動によって転舵輪を転舵する転舵軸及び前記転舵軸に噛み合ってステアリングホイールの操舵操作に応じて回転する回転軸を収容するハウジングと、車室内外を区画するダッシュパネルとの間に配置され、前記ダッシュパネルに設けられた前記回転軸の挿通口を封止するコラムホールカバーであって、
弾性体からなる本体と、前記回転軸が貫通する貫通孔が形成された金属板とを備え、
前記本体は、一端部が前記ダッシュパネルに弾接すると共に他端部が前記ハウジングに嵌合される筒部と、前記筒部の径方向内側に配置され、前記回転軸の外周面に弾接する環状のシール部と、前記筒部と前記シール部とを接続する接続部とを一体に有し、
前記金属板は、前記ダッシュパネル側の面ならびに前記ハウジング側の面が前記接続部に覆われて前記接続部の内部に埋設されている、
コラムホールカバー。
【請求項2】
前記筒部は、大径部及び小径部からなる蛇腹構造を有し、前記回転軸の軸方向に圧縮された状態で前記ハウジングと前記ダッシュパネルとの間に配置される、
請求項1に記載のコラムホールカバー。
【請求項3】
前記接続部において前記ダッシュパネル側の面を覆う被覆部の少なくとも一部が前記ダッシュパネルの前記挿通口に面している、
請求項1又は2に記載のコラムホールカバー。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記回転軸を挿通させる筒状部と、前記筒状部の開口端部に嵌合された樹脂からなるカバー部材とを有し、
前記本体の前記筒部は、前記カバー部材に嵌合される、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のコラムホールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの操舵操作に応じて回転する回転軸を収容するハウジングと車室内外を区画するダッシュパネルとの間に配置されるコラムホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンルームと車室との間は、車体を構成する鋼板からなるダッシュパネルによって区画されている。ダッシュパネルには複数の挿通口が設けられ、この挿通口にエアコンの配管や各種電装品のハーネスあるいは各種のロッド類が挿通されている。これらの挿通口は、車室外側に配置されたゴム等の弾性体からなるカバー部材によって封止され、エンジンルームから車室内への騒音や粉塵などの侵入が抑制されている。ステアリングホイールの操舵操作に応じて回転するステアリングシャフトに連結されたピニオンシャフトを挿通させるダッシュパネルの挿通口は、コラムホールカバーと呼ばれる筒状のカバー部材によって封止されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載のコラムホールカバーは、一端部にダッシュパネルに弾接するシール部を備え、他端部がピニオンシャフトを収容するハウジングの開口端部に嵌合されている。ピニオンシャフトは、その先端部に設けられたピニオン歯が、車幅方向への進退移動によって転舵輪(前輪)を転舵させるラックシャフトのラック歯にハウジング内で噛み合わされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−322788号公報
【特許文献2】特開2011−1030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなコラムホールカバーによれば、ラックシャフトを収容するハウジングの外部で発生するエンジンやトランスミッション等の騒音がダッシュパネルの挿通口から車室内に侵入することを抑制することができるが、例えばピニオン歯とラック歯との噛み合いによってハウジングの内部で発生する騒音については、その車室内への侵入を十分に抑制することができなかった。
【0006】
特に、近年の車両では、ハウジング内にウォーム及びウォームホイールからなるウォームギヤ機構を配置して、ウォームを電動モータで回転させることにより、ウォームホイールと一体回転するように連結されたピニオンシャフトに操舵補助トルクを付与する操舵補助装置が搭載されているものが多く、このような操舵補助装置が搭載された車両では、ハウジング内で発生する騒音が大きくなるため、何らかの対策が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、車室内への騒音の侵入防止機能が高められたコラムホールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するため、軸方向への移動によって転舵輪を転舵する転舵軸及び前記転舵軸に噛み合ってステアリングホイールの操舵操作に応じて回転する回転軸を収容するハウジングと、車室内外を区画するダッシュパネルとの間に配置され、前記ダッシュパネルに設けられた前記回転軸の挿通口を封止するコラムホールカバーであって、弾性体からなる本体と、前記回転軸が貫通する貫通孔が形成された金属板とを備え、前記本体は、一端部が前記ダッシュパネルに弾接すると共に他端部が前記ハウジングに嵌合される筒部と、前記筒部の径方向内側に配置され、前記回転軸の外周面に弾接する環状のシール部と、前記筒部と前記シール部とを接続する接続部とを一体に有し、前記金属板は、前記ダッシュパネル側の面ならびに前記ハウジング側の面が前記接続部に覆われて前記接続部の内部に埋設されている、コラムホールカバーを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコラムホールカバーによれば、車室内への騒音の侵入防止機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るコラムホールカバーが装着されたステアリング装置の構成例を模式的に示す構成図である。
図2】ハウジングの内部を示す断面図である。
図3A】ジョイントカバー及びコラムホールカバーならびにその周辺部を車幅方向から見た状態を示す断面図である。
図3B】ジョイントカバー及びコラムホールカバーならびにその周辺部を車幅方向及びピニオンシャフトの長手方向に直交する方向から見た状態を示す外観図である。
図4A】コラムホールカバーを示す斜視図である。
図4B】コラムホールカバーの金属板を示す斜視図である。
図5A】比較例に係るコラムホールカバーを示す上面図である。
図5B】コラムホールカバーをピニオンシャフトの長手方向に沿う断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るコラムホールカバーを備えたステアリング装置の構成例を模式的に示す構成図である。
【0013】
このステアリング装置1は、ラックアンドピニオン式のものであり、運転者が回転操作するステアリングホイール10と、ステアリングシャフト2と、軸方向への移動によって左右一対の前輪13,13を転舵する転舵軸としてのラックシャフト31と、ステアリングシャフト2に連結されてラックシャフト31と噛み合うピニオンシャフト32と、ラックシャフト31及びピニオンシャフト32のそれぞれの一部を収容するハウジング4と、運転者による操舵操作を補助する操舵補助装置5と、コラムホールカバー6とを備えている。ラックシャフト31、ピニオンシャフト32、及びハウジング4は、ステアリングギヤ3を構成する。
【0014】
ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール10が一端部に固定されたコラムシャフト21と、コラムシャフト21に第1の自在継手201を介して連結された中間シャフト22とを有している。中間シャフト22には、第2の自在継手202を介してピニオンシャフト32が連結されている。ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール10の回転操作に応じて回転し、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクをピニオンシャフト32に伝達する。
【0015】
ピニオンシャフト32は、ステアリングホイール10の操舵操作に応じて回転する本発明の回転軸に相当する部材であり、中間シャフト22とは反対側の先端部に複数のピニオン歯321が形成されたピニオン歯部320を有している。ラックシャフト31は、ピニオン歯321に噛合する複数のラック歯311からなるラック歯部310を有し、ピニオンシャフト32の回転によって車幅方向に沿った軸方向に移動する。ピニオンシャフト32のピニオン歯部320とラックシャフト31のラック歯部310とは、ハウジング4の内部で噛み合わされている。
【0016】
ラックシャフト31の両端部には、それぞれボールジョイントソケット11,11が固定され、これらのボールジョイントソケット11,11にそれぞれ連結されたタイロッド12,12が、図示しないナックルアームを介して左右一対の前輪13,13に連結されている。ボールジョイントソケット11,11の外周側には、蛇腹状の弾性体からなるベローズ14,14が配置されている。この構成により、ラックシャフト31は、ピニオンシャフト32の回転による軸方向移動によって、車両の転舵輪である左右の前輪13,13を転舵させる。
【0017】
ハウジング4は、ラック歯部310を含むラックシャフト31の一部を収容する第1筒部41と、ピニオン歯部320を含むピニオンシャフト32の一部を収容する第2筒部42と、第2筒部42に嵌着された樹脂からなるカバー部材としてのジョイントカバー43とを有している。第1筒部41は、長手方向が車幅方向となるように車体に固定され、その両端部にはベローズ14,14が固定されている。第2筒部42は、第1筒部41に対して斜め上方に向かって突出している。ジョイントカバー43は、第2筒部42の開口側の端部に取り付けられ、ピニオンシャフト32がその内部に挿通されている。
【0018】
操舵補助装置5は、コントローラ50と、運転者がステアリングホイール10に付与する操舵トルクを検出するトルクセンサ51と、コントローラ50からモータ電流の供給を受ける電動モータ52と、電動モータ52の出力軸521の回転力を減速してピニオンシャフト32に伝達する減速機構53とを有している。トルクセンサ51及び減速機構53は、ハウジング4の第2筒部42に収容されている。本実施の形態では、減速機構53がウォームギヤ機構からなり、電動モータ52の出力軸521と一体に回転するウォーム531と、ピニオンシャフト32と一体に回転するウォームホイール532とが噛み合わされている。コントローラ50は、トルクセンサ51によって検出された操舵トルクや車速等に基づいて電動モータ52を制御し、減速機構53で減速された電動モータ52の出力軸521の回転力が操舵補助力としてピニオンシャフト32に付与される。
【0019】
ピニオンシャフト32は、車体の一部を構成するダッシュパネル7に設けられた挿通口70に挿通されている。ダッシュパネル7は、車体を構成する鋼板からなり、車室内外を区画している。図1において、ダッシュパネル7よりも下側の部分は車室外のエンジンルームに配置され、ダッシュパネル7よりも上側の部分は車室内に配置されている。
【0020】
ハウジング4とダッシュパネル7との間には、挿通口70を封止するコラムホールカバー6が配置されている。このコラムホールカバー6により、エンジンルーム内のエンジンやトランスミッション等で発生する騒音が車室内に侵入することが抑制されている。また、コラムホールカバー6は、ピニオン歯部320とラック歯部310との噛み合い部や、減速機構53もしくは電動モータ52で発生する騒音が車室内に侵入することも抑制している。コラムホールカバー6の構造の詳細については後述する。
【0021】
図2は、ハウジング4の内部をピニオンシャフト32の回転軸を含む断面で示す断面図である。図2では、図面下側が車両への搭載状態における鉛直方向の下方にあたり、図面上側が車両への搭載状態における鉛直方向の上方にあたる。
【0022】
ピニオンシャフト32は、一端部が第2の自在継手202に連結されるインプットシャフト33と、ピニオン歯部320を有するアウトプットシャフト34と、インプットシャフト33とアウトプットシャフト34とを連結するトーションバー(捩れ軸)35とを有している。アウトプットシャフト34には、ウォームホイール532が相対回転不能に固定されている。トルクセンサ51は、トーションバー35の捩じれ量によって操舵トルクを検出する。
【0023】
ハウジング4の第2筒部42は、第1筒部41と一体に形成されたギヤハウジング421と、トルクセンサ51を収容する円筒状のセンサハウジング422とを有している。ギヤハウジング421及びセンサハウジング422は、例えばアルミニウム合金等の金属からなる。なお、センサハウジング422を樹脂によって成形してもよい。センサハウジング422は、ピニオンシャフト32を挿通させる円筒状であり、本発明の筒状部がこれに相当する。
【0024】
ギヤハウジング421とセンサハウジング422とは、インロー嵌合により結合され、図略のボルトによって締結されている。ギヤハウジング421には、ラックシャフト31のラック歯部310をピニオン歯部320に弾性的に押し付けるラックガイド機構44が収容されている。
【0025】
ジョイントカバー43が取り付けられるセンサハウジング422の先端部422aは、段付き円筒状に形成されている。すなわち、センサハウジング422の先端部422aには、小径円筒部423が形成されており、小径円筒部423の外周面423aと、小径円筒部423よりも下方のセンサハウジング422の外周面422bとの間に段差面423bが形成されている。
【0026】
図3Aは、ジョイントカバー43及びコラムホールカバー6ならびにその周辺部を車幅方向から見た状態を示し、図3Bはこれらを車幅方向及びピニオンシャフト32の長手方向に直交する方向から見た状態を示している。図3Aでは、ジョイントカバー43及びコラムホールカバー6をピニオンシャフト32の長手方向に沿う断面で示している。図4Aは、コラムホールカバー6を示す斜視図であり、図4Bはコラムホールカバー6の金属板60を示す斜視図である。
【0027】
ジョイントカバー43は、例えばポリプロピレン等の樹脂からなり、射出成型によって成形されている。ジョイントカバー43は、ピニオンシャフト32を挿通させる筒部431と、ピニオンシャフト32の径方向に沿って筒部431から外方に突出して形成された円環板状のフランジ部432と、筒部431とフランジ部432との間に形成された三角板状のビード部433とを一体に有している。
【0028】
筒部431の下端部は、センサハウジング422の先端部422aに圧入によって嵌合されている。筒部431には、この圧入の際の押圧力を受ける環状の受け部431aが設けられている。筒部431の下端面431bは、センサハウジング422の段差面423bに当接し、筒部431の内周面431cが小径円筒部423の外周面423aに密着している。筒部431は、その一部がテーパ状に形成されており、上端部における内径が下端部における内径よりも小さくなっている。筒部431の上端部における内径は、ピニオンシャフト32の直径よりも大きく形成されている。
【0029】
コラムホールカバー6は、ピニオンシャフト32が貫通する貫通孔600が形成された金属板60と、弾性体からなる本体61とを備えている。本体61は、ジョイントカバー43よりも軟質な材料からなり、本実施の形態では、本体61が例えばEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)等のゴム材料からなる。本体61は、一端部がダッシュパネル7に弾接すると共に他端部がジョイントカバー43に嵌合される筒部62と、金属板60の貫通孔600の内側に設けられてピニオンシャフト32の外周面に弾接する環状のシール部63と、筒部62とシール部63とを接続する接続部64とを一体に有している。
【0030】
筒部62は、大径部621及び小径部622からなる蛇腹構造を有しており、ピニオンシャフト32の軸方向に圧縮された状態でハウジング4とダッシュパネル7との間に配置されている。本実施の形態では、筒部62が1つの大径部621と2つの小径部622を有し、これら2つの小径部622の間に大径部621が設けられているが、大径部621及び小径部622の数は適宜増減させることができる。
【0031】
筒部62は、ピニオンシャフト32の軸方向から見た形状が、ジョイントカバー43の筒部431からのビード部433の突出方向に長い長円形状である。筒部62の一端部には、挿通口70を囲むダッシュパネル7のエンジンルーム側の面7aに密着して挿通口70を封止する封止部623が設けられている、封止部623には、図4Aに示すように、複数の環状リップ623aと、これら複数の環状リップ623aに交差する複数のリブ623bが形成されている。本実施の形態では、封止部623に2つの環状リップ623aが互いに平行に形成され、16個のリブ623bが環状リップ623aに直交するように形成されている。2つの環状リップ623aは、3つの環状溝623cの間に突出している。封止部623は、筒部62の蛇腹構造の復元力により、ダッシュパネル7に押し付けられている。
【0032】
筒部62の他端部には、ジョイントカバー43のフランジ部432が嵌入する嵌合溝624が形成されている。コラムホールカバー6をジョイントカバー43に取り付ける際には、筒部62の他端部を弾性変形させて嵌合溝624内にフランジ部432を収容することにより、筒部62がジョイントカバー43に嵌合される。
【0033】
シール部63は、その中心部にピニオンシャフト32が挿通されており、ピニオンシャフト32の外周面32aに摺接する一対の環状リップ部631,632と、これらの環状リップ部631,632を取り囲むように形成された環状の緩衝部633とを有している。環状リップ部631,632は、ピニオンシャフト32の軸方向に離れた位置でピニオンシャフト32の外周面32aに摺接する。
【0034】
緩衝部633は、筒部62に対するピニオンシャフト32の位置が径方向にずれた場合でも、その弾性変形によって一対の環状リップ部631,632の位置をピニオンシャフト32の位置に倣わせ、一対の環状リップ部631,632を全周にわたってピニオンシャフト32の外周面32aに摺接させる。シール部63は、ピニオンシャフト32の軸方向からコラムホールカバー6を見た場合に、金属板60の貫通孔600の内側にあたる位置に形成されている。
【0035】
接続部64は、金属板60のダッシュパネル7側の表(おもて)面60aならびにハウジング4側の裏面60bを覆っている。より具体的には、接続部64が、金属板60の表面60aを覆う第1被覆部641と、金属板60の裏面60bを覆う第2被覆部642と、貫通孔600の内周面600aを覆って第1被覆部641と第2被覆部642とを連結する連結部643とを有している。金属板60の外周面60cは、封止部623の近傍で筒部62に覆われている。このように、金属板60は、その全体が本体61に覆われて接続部64に埋設されており、本体61の外部に露出していない。
【0036】
第1被覆部641は、封止部623よりもジョイントカバー43側に配置され、ダッシュパネル7と第1被覆部641との間には空間が形成されている。金属板60は、ピニオンシャフト32の軸方向から見た形状が、筒部62と同様の長円形状である。第1被覆部641は、その少なくとも一部がダッシュパネル7の挿通口70に面している。換言すれば、コラムホールカバー6をピニオンシャフト32の軸方向に沿って車室内側から見た場合に、挿通口70から第1被覆部641の一部を視認可能である。これにより、挿通口70の一部が金属板60に遮蔽されている。
【0037】
(コラムホールカバー6の製造方法)
コラムホールカバー6の本体61は、例えば一次成形工程及び二次成形工程によって成形される。具体的には、筒部62及び接続部64の金属板60よりもダッシュパネル7側の部分及びシール部63を一次成形し、得られた中間成形体の第1被覆部641となる部分に金属板60を載せ、金属板60よりもハウジング4側の部分を二次成形する。なお、これらの各工程は、成形機において自動で行うことが可能である。
【0038】
[比較例]
図5Aは、比較例に係るコラムホールカバー8を示す上面図であり、図5Bは、コラムホールカバー8をピニオンシャフト32の長手方向に沿う断面で示す断面図である。
【0039】
この比較例に係るコラムホールカバー8は、ピニオンシャフト32が貫通する貫通孔800が形成された金属板80と、筒部81及び壁部82を一体に有する第1弾性部材83と、シール部84及び緩衝部85ならびに取付部86を一体に有する第2弾性部材87とが組み合わされている。金属板80は、実施の形態に係るコラムホールカバー6の金属板60と同じ部材である。第1弾性部材83及び第2弾性部材87は、EPDM等のゴム材料からなる。
【0040】
筒部81は、実施の形態に係るコラムホールカバー6の筒部62と同様、大径部811及び小径部812からなる蛇腹構造を有し、その一端部には封止部813が設けられている、封止部813には、複数の環状リップ813a及び複数のリブ813bが形成されている。筒部81の他端部には、ジョイントカバー43のフランジ部432が嵌入する嵌合溝814が形成されている。筒部81の内周面には、金属板80の外周端部が嵌合する環状溝815が形成されている。第1弾性部材83は、環状溝815に金属板80の外周端部が嵌合することにより、金属板80に組み付けられている。壁部82は、ピニオンシャフト32を挿通させる挿通口820を有する平板状であり、その下面82aが筒部81の内側でジョイントカバー43の上端部に当接している。
【0041】
シール部84は、ピニオンシャフト32の外周面32aに摺接する一対の環状リップ部841,842を有している。緩衝部85は、これらの環状リップ部841,842を取り囲むように形成され、実施の形態に係るコラムホールカバー6の緩衝部633と同様に機能する。取付部86は、緩衝部85の外周囲に環状に設けられ、その内周面には金属板80における貫通孔800の周辺部が嵌合する環状溝860が形成されている。第2弾性部材87は、環状溝860に金属板80における貫通孔800の周辺部が嵌合することにより、金属板80に組み付けられている。
【0042】
この比較例に係るコラムホールカバー8は、第1弾性部材83及び第2弾性部材87を手作業により金属板80に組み付ける必要があり、組み付け工数が増大してしまう。また、ハウジング4内で発生する騒音の車室内への侵入を金属板80により抑制する効果はあるものの、金属板80の表面80a及び裏面80bが被覆されていないので、その効果の程度は実施の形態に係るコラムホールカバー6よりも小さい。
【0043】
(実施の形態の作用及び効果)
上記説明した実施の形態によれば、コラムホールカバー6の筒部62とシール部63とが接続部64によって一体に接続されており、この接続部64に金属板60の表面60a及び裏面60bが覆われているので、比較例に係るコラムホールカバー8あるいは金属板を有していないコラムホールカバーに比較して、ハウジング4内で発生する騒音の車室内への侵入防止機能が高まる。また、これにより車室の静粛性を高めることが可能となる。
【0044】
また、コラムホールカバー6では、金属板60が本体61に埋め込まれるようにして成形されるので全体が一体成形され、例えば比較例に係るコラムホールカバー8のように、手作業による組み立てを行う必要がない。このため、組み付け工数の削減による低コスト化を図ることが可能となる。
【0045】
また、コラムホールカバー6では、筒部62が蛇腹構造を有しているので、各部の寸法誤差や組み付け誤差によりジョイントカバー43のフランジ部432とダッシュパネル7との間隔が変動しても、蛇腹構造の弾性によってこの間隔の変動を柔軟に吸収することができ、コラムホールカバー6の封止部623を適切な押し付け力でダッシュパネル7に押し付けることができる。
【0046】
また、コラムホールカバー6では、第1被覆部641の一部がダッシュパネル7の挿通口70に面しており、挿通口70の一部が金属板60に遮蔽されているので、ハウジング4内で発生する騒音がゴムよりも剛性の高い金属板60で遮音され、挿通口70から車室内に侵入する騒音が低減される。
【0047】
また、ハウジング4が第2筒部42に嵌着された樹脂からなるジョイントカバー43を有し、このジョイントカバー43のフランジ部432が筒部62の嵌合溝624に嵌合されるので、フランジ部432の成形を容易に行うことができると共に、ハウジング4にコラムホールカバー6を強固に取り付けることが可能となる。
【0048】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0049】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ハウジング4に操舵補助装置5のウォーム531及びウォームホイール532が配置された場合について説明したが、これに限らず、例えばコラムシャフト21に操舵補助力が付与されるコラムアシスト方式や、ラックシャフト31に操舵補助力が付与されるラックアシスト方式のステアリング装置を適用対象として本発明に係るコラムホールカバーを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…ステアリング装置 10…ステアリングホイール
31…ラックシャフト(転舵軸) 32…ピニオンシャフト(回転軸)
4…ハウジング 43…ジョイントカバー(カバー部材)
6…コラムホールカバー 60…金属板
600…貫通孔 61…本体
62…筒部 63…シール部
64…接続部 7…ダッシュパネル
70…挿通口
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B