(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部は、前記凹部に挿入される部分として、前記貫通方向において突出先端から所定の部分であり、外周面が前記傾斜面とされた先端部(212b)と、前記先端部に連なり、前記貫通方向に平行な外周面を有しつつ前記貫通方向に直交する断面積が一定とされた一定部(212c)と、を有し、
前記凹部の開口端から前記貫通方向に所定の部分が、前記貫通方向に平行な壁面を有しつつ開口面積が一定とされている請求項1〜4いずれか1項に記載の自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構成の簡素化などのために、変速を制御する電子制御ユニット(TCU)をフロントカバーに固定し、上記したコネクタ(以下、第1コネクタと示す)を介して油圧制御モジュールと電気的に接続する構成が考えられる。この場合、電子制御ユニットのコネクタ(以下、第2コネクタと示す)が第1コネクタの突出部に嵌合することで、電子制御ユニットと油圧制御モジュールが電気的に接続される。また、貫通孔周りの全周で、内部空間を外部空間に対して液密にシールするために、フロントカバーの貫通孔の壁面と第2コネクタとの間に、ゴム状弾性体が配置される。
【0006】
しかしながら、第1コネクタが油圧制御モジュールに固定される場合、すなわち、油圧制御モジュールを介してトランスミッションケースに固定される場合、第1コネクタと第2コネクタとで固定対象が異なる。トランスミッションケースとフロントカバーとでは剛性が異なるため、第1コネクタ及び第2コネクタが異なる位相で振動する。これにより、第1コネクタと第2コネクタの端子の接点部が摺動摩耗し、接続信頼性が低下する虞がある。たとえば摺動により端子表面のめっきが摩耗し、接触抵抗が増加する虞がある。
【0007】
また、第1コネクタがフロントカバーに固定される場合、突出部がフロントカバーの貫通孔に対して偏心していても、その状態で固定されることとなる。これにより、ゴム状弾性体の圧縮率が部分的に規格外となる虞がある。すなわち、液密不良が生じる虞がある。
【0008】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、接続信頼性の低下を抑制しつつ、液密不良の発生を抑制できる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。なお、括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
本開示のひとつである自動変速機は、トランスミッションケース(20)と、
トランスミッションケースとともに収容空間(22)を形成し、収容空間と外部空間とを連通させる貫通孔(210)が設けられたフロントカバー(21)と、
収容空間に配置されてトランスミッションケースに固定され、変速を行うための油圧を生じさせる油圧制御モジュール(25)と、
収容空間においてフロントカバーに固定された基部(260a)、及び、基部から突出し、少なくとも一部が貫通孔に配置された突出部(260b)を有し、油圧制御モジュールと電気的に接続された第1コネクタ(26)と、
第1コネクタと嵌合する第2コネクタ(31)を有し、外部空間においてフロントカバーに固定された電子制御ユニット(14)と、
貫通孔周りの全周においてフロントカバーにおける貫通孔の壁面と第2コネクタとの間に介在し、収容空間を外部空間に対して液密にシールするゴム状弾性体(33)と、
第1コネクタ及びフロントカバーの一方に形成された凹部(263)、及び、他方に形成され、凹部に挿入される凸部(212)を有し、凹部及び凸部の少なくとも一方に、貫通孔の貫通方向に対して傾斜し、突出部を貫通孔の中心に向けて誘導する傾斜面(212a,263a)が設けられた位置決め部(35)と、
を備える。
【0011】
この自動変速機によれば、第1コネクタが、フロントカバーに固定されている。第1コネクタと第2コネクタの固定対象が同じであるため、第1コネクタと第2コネクタとが異なる位相で振動するのを抑制することができる。すなわち、接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、傾斜面を有する位置決め部により、第1コネクタの突出部が貫通孔に対して偏心するのを抑制することができる。したがって、液密不良の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する。
【0015】
(第1実施形態)
先ず、
図1〜
図4に基づき、本実施形態に係る自動変速機の概略構成について説明する。
図4では、フロントカバーに対する第1コネクタの位置決め及び固定を示すために、TCUを固定する前の状態を示している。
【0016】
図1に示すように、自動変速機10は、トルクコンバータ11、ギアトレーン12、油圧制御機構13、及びTCU(Transmission Control Unit)14を備えている。ギアトレーン12は、変速機構とも称される。本実施形態では、自動変速機10として、FFレイアウト(横置き)の例を示している。
図1に示すX方向が車両前後方向、Y方向が左右方向である。
【0017】
自動変速機10は、
図2に示すように、トランスミッションケース20及びフロントカバー21を備えている。トランスミッションケース20は、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成されている。フロントカバー21は、アルミニウムなどの金属材料又は樹脂材料を用いて形成されている。フロントカバー21は、トランスミッションケース20の開口部200を塞ぐように、トランスミッションケース20に組み付けられている。組み付け状態で、トランスミッションケース20及びフロントカバー21は、収容空間22を形成する。フロントカバー21は、ねじ23により、トランスミッションケース20に固定されている。なお、トランスミッションケース20及びフロントカバー21において、ねじ23に対応する孔の図示を省略している。また、図示を省略するが、開口部200の全周をねじ23よりも内周側で、液密に封止している。
【0018】
図2及び
図3に示すように、フロントカバー21には、TCU14と後述する油圧制御モジュール25とを電気的に接続するための貫通孔210が設けられている。貫通孔210が、後述する突出部260bが配置される貫通孔及び第1貫通孔に相当する。貫通孔210は、X方向に延設されている。X方向が、貫通方向に相当する。
【0019】
ギアトレーン12は、トランスミッションケース20、フロントカバー21、及び収容空間22に配置された複数のギア24を備えて構成されている。
【0020】
油圧制御機構13は、トランスミッションケース20、フロントカバー21、油圧制御モジュール25、及び第1コネクタ26を備えて構成されている。油圧制御モジュール25は、バルブボディ、油圧装置とも称される。油圧制御モジュール25内には、ギアトレーン12に供給される作動油の圧力を調節する油圧回路が形成されている。すなわち、油圧制御モジュール25は、変速を行うための油圧を生じさせる。図示を省略するが、油圧制御モジュール25は、ソレノイドバルブ(電磁弁)及び各種センサを有している。
【0021】
油圧制御モジュール25は、収容空間22に配置されて、トランスミッションケース20に固定されている。油圧制御モジュール25は、ねじ27により、トランスミッションケース20に固定されている。
【0022】
第1コネクタ26は、油圧制御モジュール25と電気的に接続されている。第1コネクタ26は、ハーネスなどの配線28を介して、油圧制御モジュール25のソレノイドバルブなどと電気的に接続されている。第1コネクタ26は、油圧制御機構13のコネクタである。第1コネクタ26は、樹脂材料を用いて形成されたハウジング260及び複数のコンタクト261(端子)を有している。第1コネクタ26はメス型のコネクタとして構成されている。
【0023】
ハウジング260は、基部260a及び突出部260bを有している。基部260aは、収容空間22に配置されている。基部260aは、フロントカバー21に固定されている。これにより、第1コネクタ26は、油圧制御モジュール25、ひいてはトランスミッションケース20ではなく、フロントカバー21に固定されている。このように、第1コネクタ26の一部は、収容空間22に配置されている。このため、第1コネクタ26は、油中コネクタとも称される。
【0024】
突出部260bは、基部260aから、X方向において油圧制御モジュール25とは反対側に突出している。突出部260bは柱状をなしている。突出部260bの少なくとも一部は、貫通孔210に配置されている。
図4に示すように、X方向の平面視において、突出部260bは基部260aの中央部分から突出している。
【0025】
コンタクト261は、ハウジング260に保持されている。ハウジング260には、X方向に延設され、突出部260bの先端面に開口する複数の孔が設けられている。そして、それぞれの孔に、コンタクト261が配置されている。コンタクト261には、配線28が接続されている。
図4では、孔及びコンタクト261の図示を省略している。
【0026】
TCU14は、油圧制御モジュール25のソレノイドバルブを制御する。これにより、TCU14は、変速を制御する。TCU14が、電子制御ユニットに相当する。TCU14は、
図3に示すように、筐体29、回路基板30、及び第2コネクタ31を有している。
【0027】
筐体29は、その内部空間に回路基板30を収容し、回路基板30を保護する。筐体29は、X方向に2分割可能に構成されている。筐体29のうち、フロントカバー21側がケース290とされ、フロントカバー21に対して遠い側がカバー291とされている。ケース290とカバー291を相互に組み付けることで、筐体29が構成される。筐体29は、収容空間22の外の空間である外部空間に配置され、フロントカバー21に固定されている。
【0028】
本実施形態では、ケース290が樹脂材料を用いて成形され、カバー291がアルミニウムなどの金属材料を用いて形成されている。筐体29のうち、X方向の平面視において内部空間を取り囲むフランジ部に、図示しない貫通孔が設けられている。そして、ねじ32がこの貫通孔を挿通し、フロントカバー21に固定されている。ねじ32に対応してフロントカバー21に設けられたねじ孔についても、図示を省略している。
【0029】
回路基板30には、変速を制御する回路が形成されている。回路基板30には、油圧制御モジュール25を構成するソレノイドバルブの駆動回路部、及び、ソレノイドバルブの励磁電流を制御する電流制御部が形成されている。回路基板30は、ケース290に固定されている。
【0030】
第2コネクタ31は、回路基板30と油圧制御モジュール25とを電気的に接続するコネクタである。第2コネクタ31は、第1コネクタ26と嵌合することで、回路基板30と油圧制御モジュール25とを電気的に接続する。図示を省略するが、TCU14は、外部空間に配置されたECUなどの機器との接続のために、第2コネクタ31とは別のコネクタを有している。
【0031】
第2コネクタ31は、ハウジング310及び複数の端子311を有している。第2コネクタ31は、オス型のコネクタとして構成されている。ハウジング310は、ケース290と同一材料を用いて一体的に成形されている。ケース290が、ハウジング310の一部を兼ねている。ハウジング310は、有底の円筒形状をなしている。ハウジング310は、X方向においてケース290から第1コネクタ26側に突出する筒部310aを有している。
【0032】
筒部310aの外周面の直径(外径)は、貫通孔210の直径(孔径)よりも短くされている。筒部310aの外径は、筒部310aの中心と貫通孔210の中心とを略一致させた状態で、後述するゴム状弾性体33が良好なシール機能を発揮できるように、設定されている。筒部310aの一部は、フロントカバー21の貫通孔210に配置されている。筒部310aの内部には、第1コネクタ26の突出部260bが配置されている。
【0033】
端子311は、ハウジング310(ケース290)に保持されている。端子311は、X方向に延びている。端子311の一端は、筐体29の内部空間に突出し、回路基板30に接続されている。本実施形態では、端子311が回路基板30に挿入実装されている。端子311の他端は、筒部310a内に突出し、第1コネクタ26の孔に挿入されて、コンタクト261と電気的に接続されている。このように、第2コネクタ31は、縦型のコネクタ構造をなしている。
【0034】
第2コネクタ31の筒部310aの外周面と、フロントカバー21の貫通孔210の壁面との対向領域には、ゴム状弾性体33が配置されている。ゴム状弾性体33は、貫通孔210周りの全周において、貫通孔210の壁面と筒部310aの外周面との間に介在している。ゴム状弾性体33はリング状をなしており、Oリングとも称される。ゴム状弾性体33は、弾性変形の反力により、貫通孔210の壁面と筒部310aの外周面との両方に密着し、これにより、収容空間22を外部空間に対して液密にシールする。ゴム状弾性体33が形成するシール部は、水やオイルなどの液体の通過を遮断する。ゴム状弾性体33は、筒部310aの外周面に装着されている。
【0035】
次に、
図3〜
図5に基づき、フロントカバー21に対する第1コネクタ26の位置決め構造及び固定構造について説明する。
【0036】
先ず、固定構造について説明する。
図3に示すように、フロントカバー21における貫通孔210の周辺には、第1コネクタ26を固定するための貫通孔211が設けられている。この貫通孔211が、第2貫通孔に相当する。フロントカバー21には、複数(2つ)の貫通孔211が設けられている。貫通孔211も、X方向に延設されている。2つの貫通孔211は、Z方向において貫通孔210(突出部260b)を間に挟むように設けられている。
【0037】
上記したように、第1コネクタ26の基部260aのうち、中央部分には突出部260bが連なっている。基部260aのうち、中央部分を取り囲む周辺部分は、フロントカバー21の内面に対向している。基部260aの周辺部分には、有底のねじ孔262が形成されている。ねじ孔262は、X方向に延設されている。
【0038】
そして、ねじ34が、頭部を外部空間側にしてフロントカバー21の貫通孔211を挿通し、ねじ孔262に締結(螺合)されている。このように、ねじ34によって、第1コネクタ26がフロントカバー21に固定されている。
図4に示すように、2つのねじ34は、Z方向において貫通孔210(突出部260b)を間に挟むように設けられている。
【0039】
なお、ねじ孔262の直径は、ねじ34の柱部の外径とほぼ一致している。貫通孔211の直径は、ねじ孔262の直径よりも長く設定されている。位置決め状態で、貫通孔211とねじ孔262は同心円をなす。図示を省略するが、ねじ34周りも、液密に封止されている。
【0040】
次に、位置決め構造について説明する。
図5に示すように、フロントカバー21における貫通孔210の周辺には、収容空間22側に突出する凸部212が設けられている。凸部212は、貫通孔210の貫通方向であるX方向に対して傾いた面である傾斜面212aを有している。この傾斜面212aは、突出部260bを貫通孔210の中心CLに向けて誘導するように設けられている。
図5では、貫通孔210の中心CLを二点鎖線で示している。
【0041】
凸部212は、突出先端に近づくほどX方向に直交する断面積が小さくなっている。凸部212は、たとえば円錐形状、角錐形状とされている。本実施形態では円錐形状の凸部212を採用している。フロントカバー21には、このような凸部212が複数(2つ)設けられている。2つの凸部212は、Y方向において貫通孔210(突出部260b)を間に挟むように設けられている。
【0042】
一方、第1コネクタ26における基部260aの周辺部分には、有底の凹部263が形成されている。凹部263は、X方向に延設されている。凹部263は、開口端が略真円形状をなしており、開口面積が深さ方向で一定とされている。すなわち、凹部263の側壁がX方向に略平行とされている。
【0043】
凸部212の突出先端から、凸部212の断面積が凹部263の開口面積と略一致する部分までの長さは、凹部263の深さよりも短くされている。基部260aには、このような凹部263が凸部212と同数設けられている。2つの凹部263は、Y方向において貫通孔210(突出部260b)を間に挟むように設けられている。
【0044】
第1コネクタ26をフロントカバー21に対して位置決めする際、突出部260bの中心が貫通孔210の中心CLに対してずれていても、凸部212の傾斜面212aが凹部263の開口端に接触する。そして、凸部212の凹部263への挿入にともなって、突出部260bが中心CLに誘導される。したがって、位置決め状態で、突出部260bの中心が貫通孔210の中心CLに略一致する。本実施形態では、凸部212が凹部263の開口端(間口)に全周で接触した状態が、位置決め状態である。
【0045】
このように、本実施形態の自動変速機10は、凸部212及び凹部263を有し、フロントカバー21に対して第1コネクタ26を位置決めする位置決め部35を備えている。
図4に示すように、2つの位置決め部35は、Y方向において貫通孔210(突出部260b)を間に挟むように設けられている。
【0047】
先ず、
図6に示すように、ギア24が配置されたトランスミッションケース20を準備する。
【0048】
次いで、
図7に示すように、配線28を介して第1コネクタ26が接続された油圧制御モジュール25を準備する。このとき、第1コネクタ26は、図示しない支持突起などにより、油圧制御モジュール25上に支持されてもよい。そして、トランスミッションケース20の開口部200から油圧制御モジュール25を挿入し、ねじ27を用いて、トランスミッションケース20の区画壁に、油圧制御モジュール25を固定する。
【0049】
次いで、
図8に示すように、フロントカバー21をトランスミッションケース20に対して位置決めする。開口部200を塞ぐように、フロントカバー21を位置決めする。この位置決め状態で、ねじ23を用いてフロントカバー21をトランスミッションケース20に固定する。
【0050】
フロントカバー21を固定した後、フロントカバー21の貫通孔210内に突出部260bが配置されるように第1コネクタ26を引き上げ、第1コネクタ26をフロントカバー21に位置決めする。このとき、位置決め部35を構成する凸部212及び凹部263により、突出部260bが貫通孔210の中心CLに向けて誘導される。また、ねじ34を、外部空間側からフロントカバー21の貫通孔211を通じて基部260aのねじ孔262に挿入し、締結する。これにより、第1コネクタ26がフロントカバー21に固定される。
【0051】
次いで、第2コネクタ31と第1コネクタ26とを嵌合する。そして、ねじ32を用いて、
図2及び
図3に示すように、TCU14をフロントカバー21に固定する。以上により、TCU14が直載された自動変速機10を得ることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る自動変速機10の効果について説明する。
【0053】
本実施形態では、TCU14がフロントカバー21に固定されており、TCU14の第2コネクタ31と油圧制御モジュール25側の第1コネクタ26が嵌合している。このように、TCU14が直載された自動変速機10としたので、自動変速機とは別にTCUを設ける構成に較べて、たとえば構成を簡素化することができる。
【0054】
このように直載構造を採用すると、以下に示す問題が生じる虞がある。先ず、トランスミッションケースとフロントカバーとでは、剛性が異なる。このため、第1コネクタを、油圧制御モジュールを介してトランスミッションケースに固定すると、フロントカバーに固定された第2コネクタとトランスミッションケースに固定された第1コネクタとで振動の位相差が生じてしまう。このような位相差が生じると、第1コネクタと第2コネクタの端子の接点部が摺動摩耗し、接続信頼性が低下する虞がある。たとえば摺動により端子表面のめっきが摩耗し、接触抵抗が増加する虞がある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、第1コネクタ26がフロントカバー21に固定されている。第1コネクタ26と第2コネクタ31の固定対象が同じ(ともにフロントカバー21)であるため、第1コネクタ26と第2コネクタ31が異なる位相で振動するのを抑制することができる。
図3に破線矢印で示すように、第1コネクタ26と第2コネクタ31の振動を同位相とすることができる。これにより、コンタクト261と端子311との相対変位を低減でき、摺動摩耗を抑制することができる。すなわち、第1コネクタ26及び第2コネクタ31の接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0056】
また、直載構造では、液密にシールするために、フロントカバーの貫通孔の壁面と第2コネクタとの間に、ゴム状弾性体を配置する。すなわち、第1コネクタの突出部に接触してゴム状弾性体を配置するのではない。
図9は、位置決め部35を備えない比較例について、フロントカバーに対する第1コネクタの固定状態を示している。比較例では、本実施形態の要素と共通乃至関連する要素に対し、本実施形態の要素の符号末尾にrを加算した符号を付与している。
【0057】
比較例の構成では、第1コネクタ26rをフロントカバー21rに固定する際に、突出部260brがフロントカバー21rの貫通孔210rの中心CLrに対して偏心していても、偏心状態のまま固定されることとなる。第1コネクタ26rをフロントカバー21rに固定することで、貫通孔210rの壁面と突出部260brとの隙間が決定される。突出部260brが偏心していると、ある一部分において隙間が所定値よりも狭くなり、別の一部分において隙間が所定値よりも広くなる。このため、
図9に示すように、第2コネクタ31rを嵌合させた状態で、ゴム状弾性体33rに圧縮率の高い部分と圧縮率が低い部分が生じることとなる。したがって、ゴム状弾性体33rの圧縮率が部分的に規格外となり、液密不良が生じる虞がある。
【0058】
これに対し、本実施形態では、フロントカバー21に設けられた凸部212と、第1コネクタ26の基部260aに設けられた凹部263によって、位置決め部35が構成される。凸部212には傾斜面212aが設けられており、凸部212の凹部263への挿入にともなって、突出部260bが貫通孔210の中心CLに向けて誘導される。したがって、第1コネクタ26の突出部260bが貫通孔210に対して偏心するのを抑制することができる。
【0059】
これにより、貫通孔210周りの全周で、貫通孔210の壁面と突出部260bとの間の隙間がほぼ狙い通りの値となる。したがって、第1コネクタ26と第2コネクタ31を嵌合させた状態で、ゴム状弾性体33rの圧縮率が規格外となるのを抑制することができる。すなわち、液密不良の発生を抑制することができる。
【0060】
以上により、本実施形態の自動変速機10によれば、TCU14の直載構造を採用しながらも、接続信頼性の低下を抑制しつつ、液密不良の発生を抑制することができる。
【0061】
特に本実施形態では、自動変速機10が、2つの位置決め部35を有している。そして、位置決め部35が、X方向の平面視において貫通孔210(突出部260b)を挟むように設けられている。したがって、貫通孔210周りの位置ずれ、すなわち回転方向の位置ずれについても効果的に抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した自動変速機10と共通する部分についての説明は省略する。
【0063】
図10に示すように、本実施形態では、複数の位置決め部35が、X方向の平面視において貫通孔210(突出部260b)を取り囲むように設けられている。
図10では、3つの位置決め部35が、貫通孔210を取り囲むように、貫通孔210の周辺に分散して設けられている。
【0064】
これによれば、3か所の位置決め部35による面での位置決めとなり、ZY平面に対する第1コネクタ26の傾きを抑制することができる。すなわち、第1コネクタ26をフロントカバー21に対して、より精度良く位置決めすることができる。
【0065】
(第3実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した自動変速機10と共通する部分についての説明は省略する。
【0066】
図11に示すように、本実施形態では、位置決め部35を構成する凸部212と凹部263が、互いに相似形状とされている。凸部212は、先行実施形態同様、円錐形状とされている。凸部212の外周面は傾斜面212aとされている。一方、凹部263は、凹円錐形状をなしている。凹部263の壁面も傾斜面263aとされている。凸部212の突出高さと凹部263の深さは略一致しており、傾斜面211a,263aのX方向に対する傾斜角は互いに等しくされている。すなわち、凹部263内の空間が、凸部212とほぼ一致する。
図11では、位置決め前の状態を示している。
【0067】
これによっても、傾斜面211a,263aにより、突出部260bを貫通孔210の中心に向けて誘導し、第1コネクタ26をフロントカバー21に対して精度良く位置決めすることができる。
【0068】
また、凸部212と凹部263とが、互いに相似形状とされている。このため、より精度良く位置決めすることができる。さらには、凸部212と凹部263が面で接触するため、位置決め状態を安定して保持することができる。
【0069】
(第4実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した自動変速機10と共通する部分についての説明は省略する。
【0070】
図12に示すように、本実施形態では、凸部212が、凹部263に挿入される部分として、先端部212b及び一定部212cを有している。先端部212bは、突出先端から所定の部分である。先端部212bの外周面は、傾斜面212aとされている。先端部212bは、略円錐形状をなしている。先端部212bは、先行実施形態に示した凸部212に相当する。
図12では、位置決め途中の状態を示している。
【0071】
一定部212cは、先端部212bに連なっている。一定部212cは、X方向に平行な外周面を有しつつ、X方向に直交する断面積が一定とされた部分である。本実施形態では、一定部212cが略円柱状をなしている。一定部212cは、直径が一定とされた部分である。
【0072】
一方、凹部263は、開口端から所定の部分が、X方向に平行な壁面を有しつつ、開口面積が一定とされている。凹部263は、開口形状が平面略真円形状とされ、開口面積が一定部212cの断面積とほぼ一致するか僅かに大きい程度とされている。
【0073】
これによっても、傾斜面211a,263aにより、突出部260bを貫通孔210の中心に向けて誘導し、第1コネクタ26をフロントカバー21に対して精度良く位置決めすることができる。
【0074】
また、一定部212cの外周面と凹部263の側壁が互いに平行である。このため、より精度良く位置決めすることができる。また、凸部212の傾き等を抑制し、位置決め状態を安定して保持することができる。
【0075】
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0076】
凸部212が傾斜面212aを有する例を示したが、これに限定されない。凹部263に傾斜面を設け、凸部212が傾斜面212aを有さない構成としてもよい。凸部212及び凹部263の少なくとも一方が傾斜面を有せばよい。
【0077】
位置決め部35として、フロントカバー21に凸部212、第1コネクタ26に凹部263が設けられる例を示したが、これに限定されない。フロントカバー21に凹部、第1コネクタ26に凸部を設けてもよい。
【0078】
自動変速機10が複数の位置決め部35を備える例を示したが、これに限定されない。位置決め部35を1つのみ備えてもよい。
【0079】
第2コネクタ31を構成するハウジング310が、ケース290と一体的に設けられる例を示したが、これに限定されない。第2コネクタ31を、筐体29とは別体としてもよい。この場合、ケース290の貫通孔から、第2コネクタ31が突出する構造となる。
【0080】
フロントカバー21に対する第1コネクタ26の固定は、ねじ34に限定されない。