(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔防曇塗料用樹脂〕
本発明の防曇塗料用樹脂は、水酸基及びアルコキシ基を有さないアクリルアミド単量体(以下、単量体(a)ともいう。)を15〜45質量%、水酸基及びアルコキシ基のいずれか一方又は両方を有するアクリルアミド単量体(以下、単量体(b)ともいう。)を5〜85質量%含む重合性単量体混合物をリビングラジカル重合した共重合物である。
前記重合性単量体混合物は、単量体(a)及び単量体(b)以外の他の重合性単量体をさらに含んでもよい。
【0010】
単量体(a)は、防曇塗料用樹脂に親水性を付与する。防曇塗料用樹脂が親水性を有することで、形成される塗膜が防曇性を示す。
単量体(a)としては、例えば、下記式(a1)で表される単量体が挙げられる。
CH
2=CH−CO−NR
1R
2 ・・・(a1)
ここで、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であるか、又はR
1とR
2とが結合してNとともに環式基を形成している。
アルキル基の炭素数は、防曇性の点から、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。環式基としては、例えばモルホリノ基、ピロリジノ等が挙げられる。
【0011】
単量体(a)の例としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ドデシルアクリルアミド等が挙げられる。これらのアクリルアミド単量体はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
単量体(b)は、防曇塗料用樹脂に架橋点を導入するための架橋性単量体である。塗膜中で水酸基(アルコキシ基の加水分解によって生成した水酸基であってもよい。)同士の縮合反応によって防曇塗料用樹脂が架橋することで、塗膜に疎水性が付与され、耐湿性が高まる。また、架橋性官能基がアルコキシ基又は水酸基であることで、架橋構造によって付与される疎水性が過度なものにならず、防曇性が損なわれにくい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ等が挙げられる。
【0013】
単量体(b)としては、例えば、下記式(b1)で表される単量体が挙げられる。
CH
2=CH−CO−NR
3R
4 ・・・(b1)
ここで、R
3はアルコキシアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R
4は水素原子又はアルキル基である。
アルコキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基それぞれにおけるアルキル基の炭素数は、例えば1〜4であってよい。
R
4のアルキル基の炭素数は、例えば1〜12であってよい。
【0014】
単量体(b)の例としては、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。これらのアクリルアミド単量体はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
他の重合性単量体としては、単量体(a)及び単量体(b)と共重合可能であればよく、例えば非親水性単量体が挙げられる。非親水性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等の芳香族ビニル単量体等が挙げられる。「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを示す。(メタ)アクリル酸エステルが有する炭化水素基の炭素数は1〜6が好ましい。これらの重合性単量体はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
他の重合性単量体は、塗膜の耐湿性の点から、非親水性単量体を含むことが好ましい。
【0016】
重合性単量体混合物中の単量体(a)の含有量は、重合性単量体混合物の総質量に対し、15〜45質量%であり、20〜45質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。単量体(a)の含有量が15質量%以上であれば、塗膜の防曇性が優れる。単量体(a)の含有量が45質量%以下であれば、塗膜の耐湿性が優れ、耐湿性試験後の塗膜の外観が良好である。
【0017】
重合性単量体混合物中の単量体(b)の含有量は、重合性単量体混合物の総質量に対し、5〜85質量%であり、5〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。単量体(b)の含有量が5質量%以上であれば、耐湿性試験の際に塗膜が融解しない。単量体(b)の含有量が85質量%以下であれば、架橋構造による疎水性の付与が過度にならず、塗膜の防曇性が優れる。特に20質量%以下であれば、ポリカーボネート等の透明樹脂に対する密着性が優れる。
【0018】
重合性単量体混合物が非親水性単量体を含む場合、重合性単量体混合物中の非親水性単量体の含有量は、重合性単量体混合物の総質量に対し、15〜75質量%が好ましく、35〜70質量%がより好ましい。非親水性単量体の含有量が15質量%以上であれば、塗膜の耐湿性がより優れる。非親水性単量体の含有量が75質量%以下であれば、塗膜の防曇性がより優れる。
【0019】
本発明の防曇塗料用樹脂は、上述の重合性単量体混合物をリビングラジカル重合することにより得られる。
リビングラジカル重合としては、可逆的付加開裂連鎖移動重合(以下、RAFT重合ともいう。)、原子移動ラジカル重合(ATRP重合)、ニトロキシドによるラジカル重合(NMP重合)等が挙げられる。これらの重合は公知の方法により実施できる。
【0020】
以下、重合性単量体混合物をRAFT重合する場合について、より詳細に説明する。
RAFT重合では、重合開始剤の存在下、連鎖移動剤(以下、RAFT重合に用いる連鎖移動剤を「RAFT剤」ともいう。)を用いて、重合性単量体混合物を重合させる。
【0021】
RAFT重合に用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、ラジカル重合を開始できるものであれば如何なるものを用いてもよい。このような重合開始剤としては、一般的には、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が用いられており、例えば2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらの重合開始剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
RAFT剤としては、特に限定されず、公知のRAFT剤を用いることができる。例えばジチオエステル、トリチオカルボナート、ジチオカルバメート、キサンタート等のチオカルボニルチオ化合物が挙げられる。中でもジチオエステル、トリチオカルボナートが好ましい。具体例としては、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸等が挙げられる。これらのRAFT剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
RAFT重合における重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用でき、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等が挙げられる。重合の際に用いる溶媒(重合溶媒)等についても特に限定されず、公知の溶媒等を用いることができる。重合条件も特に限定されず、例えば40〜100℃で2〜24時間の条件が挙げられる。その後、冷却等によって反応を停止し、本発明の防曇塗料用樹脂が得られる。
なお、RAFT重合において、得られる樹脂の分子量は、重合開始剤の濃度ではなく、RAFT剤の濃度に依存する。
【0024】
本発明の防曇塗料用樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜2.5が好ましく、1.1〜2.0がより好ましい。Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。分子量分布が前記上限値以下であれば、水垂れ跡が残りにくい。
本発明の防曇塗料用樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万〜20万が好ましく、2万〜15万がより好ましい。Mwが前記下限値以上であれば、耐湿性がより優れる傾向があり、前記上限値以下であれば、塗装性がより優れる傾向がある。
Mw及びMnはそれぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
【0025】
本発明の防曇塗料用樹脂にあっては、単量体(a)及び単量体(b)を特定の割合で含む重合性単量体混合物をリビングラジカル重合したものであるため、防曇塗料に用いたときに、防曇性に優れ、かつ水垂れ跡が残りにくい塗膜を形成できる。
特に、重合性単量体混合物中の単量体(b)の含有量が20質量%以下であれば、形成される塗膜は、ポリカーボネート等の透明樹脂基材に対する密着性にも優れる。
【0026】
単量体(a)は、塗膜の親水性を高めて防曇性を付与する。重合性単量体混合物中の単量体(a)の割合が、充分な防曇性を付与できる程度に高い場合、リビングラジカル重合ではない通常のラジカル重合では、分子量分布が広く、また高分子鎖中での単量体(a)由来の構成単位の配置に偏りが生じる。このような分子量の偏りや構成単位の配置の偏りから、樹脂中に局所的に過度に親水性の高い部分が存在し、形成された塗膜に水滴が接した際、この親水性の高い部分が溶解し、水垂れ跡になっていたと考えられる。
本発明の防曇塗料用樹脂は、重合性単量体混合物の重合手法としてリビングラジカル重合を用いているため、通常のラジカル重合を用いた場合に比べて、上記のような分子量の偏りと構成単位の配置の偏りが抑制されている。そのため、防曇性と水垂れ跡の残りにくさとを高いレベルで両立できると考えられる。
【0027】
なお、本発明の防曇塗料用樹脂において、単量体(a)、単量体(b)等がどのように重合しているのか、詳細に特定することは困難である。例えば高分子鎖中で単量体(a)由来の構成単位がどのように配置されているかを特定することは困難である。即ち、本発明の防曇塗料用樹脂には、その構造又は特性によって直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明の防曇塗料用樹脂は「重合性単量体混合物をリビングラジカル重合した」と規定することがより適切とされる。
【0028】
〔防曇塗料〕
本発明の防曇塗料は、上述の本発明の防曇塗料用樹脂を含む。防曇塗料に含まれる防曇塗料用樹脂は1種でもよく2種以上でもよい。
【0029】
本発明の防曇塗料は、典型的には、酸触媒をさらに含む。酸触媒は、防曇塗料用樹脂の架橋(硬化)反応を促進する。具体的には、水酸基同士の縮合反応、必要に応じてアルコキシ基の加水分解反応を促進する。
酸触媒としては、スルホン酸系触媒、リン酸系触媒等が挙げられる。スルホン酸系触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸が挙げられる。リン酸系触媒としては、例えばトリイソデシルホスフェイト、エチルアシッドホスフェイト、イソプロピルアシッドホスフェイト等が挙げられる。これらの酸触媒はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記の中でも、スルホン酸系触媒が好ましい。スルホン酸系触媒を用いることで、塗膜の硬化性 がより優れる。
【0030】
本発明の防曇塗料は、有機溶剤をさらに含んでもよい。有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール系溶剤、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。これらの有機溶剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の防曇塗料は、必要に応じて、本発明の防曇塗料用樹脂、酸触媒及び有機溶剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば、界面活性剤、シリコン系やフッ素系のレベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤(HALS)等の各種の添加剤が挙げられる。
【0032】
本発明の防曇塗料において、本発明の防曇塗料用樹脂の含有量は、有機溶剤以外の成分の合計質量に対し、80質量%以上が好ましく、85〜99質量%がより好ましい。防曇塗料用樹脂の含有量が前記下限値以上であれば、形成される塗膜の防曇性、基材に対する密着性がより優れる。
【0033】
酸触媒の含有量は、本発明の防曇塗料用樹脂100質量部に対して、3.0〜10.0質量部が好ましく、3.0〜5.5質量部がより好ましい。酸触媒の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜が充分に硬化しやすい。酸触媒の含有量が前記上限値以下であれば、ポリカーボネート等の基材に対する塗膜の付着性がより優れる。
【0034】
防曇塗料が有機溶剤を含む場合、防曇塗料中の固形分濃度(有機溶剤以外の成分の含有量)は、防曇塗料の塗装方法を勘案して適宜設定でき、例えば5〜30質量%であってよい。
【0035】
本発明の防曇塗料は、任意の基材に防曇性を付与するために用いられる。基材の表面に本発明の防曇塗料を塗装し、塗膜(防曇塗膜)を形成することで、防曇性が付与される。
基材の材質としては、特に制限はなく、例えばポリカードネート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂、ガラス等が挙げられる。疎水性が高いために結露により曇りやすく、防曇性を付与することの有効性が高い点で、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の透明樹脂が好適である。
防曇塗料の塗装方法としては、ディッピング法、スプレー法、ローラー法、フローコート法等の公知の塗装方法が採用できる。
塗装した防曇塗料を熱硬化させることにより、塗膜が形成される。熱硬化条件は、例えば、80〜125℃で5〜30分間であってよい。
形成される塗膜の厚さは、特に制限はない。例えば硬化後の厚さとして1〜8μmであってよい。
本発明の防曇塗料が塗装された基材は、例えば自動車のヘッドランプ等の車両灯具、オートバイ等のメーターカバーやヘルメット等のバイザーカバー等に用いることができる。
【0036】
以上説明した本発明の防曇塗料は、本発明の防曇塗料用樹脂を含むため、防曇性に優れ、かつ水垂れ跡が残りにくい塗膜を形成できる。
特に、本発明の防曇塗料用樹脂を形成する重合性単量体混合物中の単量体(b)の含有量が20質量%以下であれば、形成される塗膜は、ポリカーボネート等の透明樹脂基材に対する密着性にも優れる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、「部」は「質量部」である。
以下において用いる各記号は、以下の各化合物を表すものとする。
a−1:ジエチルアクリルアミド。
a−2:アクリロイルモルホリン。
a−3:ジメチルアクリルアミド。
a−4:イソプロピルアクリルアミド。
a−5:N−ドデシルアクリルアミド。
b−1:N−(メトキシメチル)アクリルアミド。
b−2:N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド。
b−3:N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド。
MMA:メチルメタクリレート。
EMA:エチルメタクリレート。
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート。
ABN−E:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、株式会社日本ファインケム製。
V65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製。
RAFT−1:下式(1)で表される化合物。
RAFT−2:下式(2)で表される化合物。
【0038】
【化1】
【0039】
<実施例1〜17、比較例1〜4>
表1〜3に示す配合に従って単量体、RAFT剤、重合開始剤及び重合溶媒を2口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換しながら昇温し、表1〜3に示す重合条件(温度及び時間)にて撹拌下で重合反応を行い、不揮発分約40質量%の樹脂溶液を得た。
各例における重合率(%)(得られた樹脂溶液の不揮発分/樹脂溶液の理論不揮発分×100)を表1〜3に示す。得られた樹脂溶液の不揮発分(%、実測値)は、樹脂溶液約1gを分取し135℃×60分で加熱したときの、加熱前の質量に対する加熱後の質量の比率として求めた。樹脂溶液の理論不揮発分(%)は、(単量体総量(部)+RAFT剤量(部)+重合開始剤量(部))/総仕込量(部)×100により算出した。また、樹脂溶液に含まれる樹脂について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。GPCの測定条件は、以下の通りとした。結果を表1〜3に示す。
GPC装置:GPC−101(昭光通商株式会社製)。
カラム:Shodex A−806M×2本直列つなぎ(昭和電工株式会社製)。
検出器:Shodex RI−71(昭和電工株式会社製)。
移動相:テトラヒドロフラン。
流速:1mL/分。
【0040】
得られた樹脂溶液に、表1〜3に示す配合に従って、有機溶剤及び酸触媒を加え、防曇塗料とした。
得られた防曇塗料をポリカーボネート板の表面に、乾燥後の厚さが2〜3μmとなるようにスプレー法にて塗装し、120℃で15分間加熱乾燥して塗膜を形成した。得られた塗膜付きポリカーボネート板を試験材として、以下の手順で、初期防曇性の評価、水垂れ跡試験、初期付着性の評価、耐湿試験後外観の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0041】
(初期防曇性)
試験材を、塗膜表面を水滴が流れ落ちるように立て掛け、塗膜に対し40℃のスチームを3分間当て、塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準で初期防曇性を評価した。なお、スチーム中に塗膜が白化または溶解した場合は、初期防曇性の評価は中止した。
○:スチーム中に塗膜が曇らない。
△:スチーム中は塗膜が曇るが、スチームを止めてから5秒以内に曇りが取れる。
×:スチーム中に塗膜が曇り、スチームを止めてから5秒経過しても曇りが取れない。
【0042】
(水垂れ跡試験)
初期防曇性の評価でスチームを当てた後の試験材を、温度25±2℃、湿度55±5%RHの環境下で12時間放置した。これにより塗膜を乾燥させた。放置後の塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準で水垂れ跡の残りにくさを評価した。
○:塗膜に水垂れ跡が無い。
×:塗膜に水垂れ跡が有る。
【0043】
(初期付着性)
試験材の塗膜に1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れ、碁盤目状の部分にセロハンテープ(ニチバン社製「CT−24」)を貼着し剥がす操作を実施した。
○:セロハンテープへの塗膜の付着が無い。
△:セロハンテープへ1個以上20個未満の碁盤目の付着が有る。
×:セロハンテープへ20個以上の碁盤目の付着が有る。
【0044】
(耐湿試験後外観)
試験材を65℃、95%RHの環境下に10日間放置した。その後、塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:塗膜の外観に変化が無い。
△:塗膜に僅かな白化等の変化が見られる。
×:塗膜が白化又は溶解した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
各実施例によれば、防曇性に優れ、かつ水垂れ跡が残りにくい塗膜を形成できた。
一方、単量体(a)の含有量が15質量%未満の比較例1では、塗膜の防曇性が劣っていた。単量体(a)の含有量が45質量%超の比較例2では、塗膜がスチームによって白化し、防曇塗膜として機能しなかった。単量体(b)の含有量が5質量%未満の比較例3では、塗膜がスチームによって溶解し、防曇塗膜として機能しなかった。重合性単量体混合物を通常のラジカル重合(ランダム重合)で重合した比較例4では、塗膜に水垂れ跡が残っていた。
【0049】
実施例3及び比較例4において、重合中の複数の時点で反応系の重合率及び重合物の重量平均分子量(Mw)を測定した。測定結果から、横軸に重合率、縦軸にMwをとったグラフを作成し、
図1に示した。
図1から、比較例4(通常のラジカル重合)では、最初に高分子量の重合体が生成し、次第に低分子量の重合体が増えてMwが低下していること、対して実施例3(リビングラジカル重合)では、最初に低分子量の重合体が生成し、その分子鎖が次第に伸長してMwが増大していること、がわかる。