特許第6891836号(P6891836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891836
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】コネクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20210607BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20210607BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20210607BHJP
   H01R 13/502 20060101ALI20210607BHJP
   H01R 43/24 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/27
   B29C33/14
   H01R13/502 A
   H01R43/24
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-41111(P2018-41111)
(22)【出願日】2018年3月7日
(65)【公開番号】特開2019-155613(P2019-155613A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
【審査官】 大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−245848(JP,A)
【文献】 特開平9−069603(JP,A)
【文献】 特開2017−105150(JP,A)
【文献】 特開2006−009853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 33/14
B29C 45/27
H01R 13/502
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコネクタ端子と、
複数の前記コネクタ端子の両端部を除く中間部を覆う中子樹脂部と、
貫通するネジ穴を有し、内側端面が前記中子樹脂部のナット対向面に対向して、前記内側端面に位置する前記ネジ穴の開口部が前記ナット対向面によって閉じられた1つ又は複数の貫通ナットと、
前記中子樹脂部の一部と前記貫通ナットの外側端面とを露出させる状態で、前記中子樹脂部及び前記貫通ナットを覆う外側樹脂部と、を備え、
前記外側樹脂部における、前記中子樹脂部の、前記ナット対向面とは反対側に位置する反対側面を覆う部位の表面には、前記外側樹脂部の成形時における注入跡が形成されている、コネクタ。
【請求項2】
前記注入跡は、前記外側樹脂部における、前記反対側面を覆う部位であって、前記中子樹脂部を介して前記貫通ナットと対向する部位の表面に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記貫通ナットの、前記内側端面及び前記内側端面に隣接する外周面の部分は、前記中子樹脂部によって覆われている、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記貫通ナットの全面には、メッキ層が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記貫通ナットの前記外側端面及び前記外側端面に隣接する外周面の部分は、前記外側樹脂部の表面から突出している、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部と、前記中子樹脂部に対向する、貫通するネジ穴を有する1つ又は複数の貫通ナットとを成形型内に配置し、前記成形型内に、前記中子樹脂部及び前記貫通ナットを覆うための外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入して、インサート成形を行うコネクタの製造方法であって、
前記成形型内において、前記中子樹脂部のナット対向面と前記貫通ナットの内側端面とを対向させるとともに、前記成形型と前記貫通ナットの外側端面とを対向させ、
前記成形型における、前記樹脂材料のゲートを、前記中子樹脂部における、前記貫通ナットの前記内側端面と対向するナット対向面の反対側に位置する反対側面に対向させ、前記ゲートから前記反対側面に向けて前記樹脂材料を注入するときに、前記樹脂材料の注入時の圧力を受ける前記中子樹脂部の前記ナット対向面によって、前記内側端面に位置する前記ネジ穴の開口部を閉じる、コネクタの製造方法。
【請求項7】
前記ゲートを、前記反対側面における、前記貫通ナットの投影位置に対向させ、前記ゲートから注入される前記樹脂材料を、前記反対側面における、前記貫通ナットの投影位置に衝突させる、請求項6に記載のコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコネクタ端子を有するコネクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の機械部品においては、電子制御部品と制御装置との配線を行う際に、複数のコネクタ端子が設けられたコネクタが使用される。コネクタにおいては、インサート成形を行って、複数のコネクタ端子を樹脂製のコネクタケースに配置することがある。また、コネクタにおいては、インサート成形を行って、コネクタを種々の取付部品に取り付けるためのナットを、コネクタケースに配置することもある。
【0003】
例えば、特許文献1のインサート成形品及びその製造方法においては、貫通ナットの一方の第1開口部を蓋部材によって閉じ、貫通ナットの他方の第2開口部が外部に露出される状態で、貫通ナット及び蓋部材を樹脂によって覆うことが行われている。インサート成形を行う際には、下型に設けられた位置決め突部に貫通ナットの第2開口部の内周側が嵌合され、下型に設けられた外周リブに貫通ナットの第2開口部の外周側が嵌合される。これにより、下型に対する貫通ナットの位置決めが行われる。
【0004】
また、特許文献2のインサート成形品の製造方法においては、ネジ穴が貫通されていない袋状のナットを用いて樹脂のインサート成形を行う際に、下型に、ナットのネジ穴に螺合される止め具を設けることが行われている。そして、インサート成形を行う際には、ナットは、止め具によって下型に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−105150号公報
【特許文献2】特開2005−288763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、インサート成形品の成形時に、上型と下型とによって形成されたキャビティ内に溶融樹脂が注入されるときに、次の課題が生じる。すなわち、貫通ナットは、下型によって支持されるだけである。そのため、上型のゲートからキャビティ内に注入される溶融樹脂が蓋部材に衝突するときには、蓋部材及び貫通ナットの姿勢が下型に対して傾くおそれがある。
【0007】
また、特許文献2においては、下型にナットを固定するために、下型に対して回転可能な可動部としての止め具を下型に設ける必要がある。そのため、インサート成形を行うための下型の構造が複雑になる。
【0008】
また、特許文献1においては、蓋部材は樹脂によって覆われる必要があるため、上型によって蓋部材を支持することはできない。また、特許文献2においても、ナットは樹脂によって覆われる必要があるため、ナットを上型によって支持することはできない。従って、簡単な構造の成形型によって、位置及び姿勢が精度良く維持されたナットを有するコネクタを成形するためには、更なる工夫が必要とされる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、簡単な構造の成形型によって成形することができ、貫通ナットのネジ穴への外側樹脂部の浸透が防止されて、貫通ナットの位置及び姿勢を精度良く維持して成形することができるコネクタ及びその製造方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、複数のコネクタ端子と、
複数の前記コネクタ端子の両端部を除く中間部を覆う中子樹脂部と、
貫通するネジ穴を有し、内側端面が前記中子樹脂部のナット対向面に対向して、前記内側端面に位置する前記ネジ穴の開口部が前記ナット対向面によって閉じられた1つ又は複数の貫通ナットと、
前記中子樹脂部の一部と前記貫通ナットの外側端面とを露出させる状態で、前記中子樹脂部及び前記貫通ナットを覆う外側樹脂部と、を備え、
前記外側樹脂部における、前記中子樹脂部の、前記ナット対向面とは反対側に位置する反対側面を覆う部位の表面には、前記外側樹脂部の成形時における注入跡が形成されている、コネクタにある。
【0011】
本発明の他の態様は、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部と、前記中子樹脂部に対向する、貫通するネジ穴を有する1つ又は複数の貫通ナットとを成形型内に配置し、前記成形型内に、前記中子樹脂部及び前記貫通ナットを覆うための外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入して、インサート成形を行うコネクタの製造方法であって、
前記成形型内において、前記中子樹脂部のナット対向面と前記貫通ナットの内側端面とを対向させるとともに、前記成形型と前記貫通ナットの外側端面とを対向させ、
前記成形型における、前記樹脂材料のゲートを、前記中子樹脂部における、前記貫通ナットの前記内側端面と対向するナット対向面の反対側に位置する反対側面に対向させ、前記ゲートから前記反対側面に向けて前記樹脂材料を注入するときに、前記樹脂材料の注入時の圧力を受ける前記中子樹脂部の前記ナット対向面によって、前記内側端面に位置する前記ネジ穴の開口部を閉じる、コネクタの製造方法にある。
【発明の効果】
【0012】
前記一態様のコネクタは、外側樹脂部のインサート成形を行う際に、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部をインサート部品として利用して、成形されたものである。
中子樹脂部は、複数のコネクタ端子を成形型に配置し、成形型内に中子樹脂部を構成する樹脂材料を注入して成形することができる。また、コネクタは、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部及び貫通ナットを成形型内に配置し、成形型内に外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入して成形することができる。このコネクタの成形を行う際には、中子樹脂部を、貫通ナットの姿勢を規定の姿勢に保つために利用することができる。
【0013】
コネクタにおいては、中子樹脂部のナット対向面には、1つ又は複数の貫通ナットが配置されており、中子樹脂部の一部と貫通ナットの外側端面とは外部に露出されている。また、中子樹脂部の反対側面を覆う、外側樹脂部の部位の表面には、外側樹脂部の成形時における注入跡が形成されている。
【0014】
外側樹脂部の表面に露出された中子樹脂部の一部は、成形型内に外側樹脂部を成形する際に、この成形型に中子樹脂部を保持するために利用された部位である。また、貫通ナットの外側端面は、成形型内に外側樹脂部を成形する際に、この成形型に貫通ナットを保持するために利用される。そして、貫通ナットは、成形型に保持された中子樹脂部によっても、その姿勢が変化しないように支えられる。
【0015】
また、貫通ナットの、内側端面に位置するネジ穴の開口部は、中子樹脂部のナット対向面によって塞がれている。そして、内側端面とナット対向面との隙間からネジ穴へは、外側樹脂部がほとんど浸透していない。
【0016】
また、外側樹脂部の注入跡は、成形型に設けられたゲートから、外側樹脂部を成形するための樹脂材料を成形型内へ注入するために利用された部位である。成形型内に外側樹脂部を成形する際には、中子樹脂部及び貫通ナットが成形型内に配置される。このとき、成形型内への中子樹脂部及び貫通ナットの配置が可能であるためには、中子樹脂部と貫通ナットとは、成形型によって完全には挟み込まれない。つまり、中子樹脂部と貫通ナットとの間には微小な隙間が形成される。そして、貫通ナットは、成形型内を流れる樹脂材料によって姿勢が変化するおそれがある。
【0017】
そこで、ゲートから中子樹脂部の反対側面に向けて、外側樹脂部を構成する樹脂材料を注入することにより、中子樹脂部を介して貫通ナットを成形型へ押さえ付けることができる。そして、樹脂材料の注入時の圧力を利用して、中子樹脂部のナット対向面と貫通ナットの内側端面との間、及び成形型と貫通ナットの外側端面との間に、隙間が形成されないようにする。これにより、外側樹脂部の成形によって製造されたコネクタにおいては、ネジ穴への外側樹脂部の浸透が防止されるとともに、貫通ナットの姿勢が目標とする規定の姿勢に保たれることになる。
【0018】
また、外側樹脂部を成形する際に、貫通ナットは、成形型に形成された突起等の形状変化部によって位置決めされる。そして、この貫通ナットの位置決めを行う形状変化部は、成形型に対して回転、スライド等の動作が可能な可動部とする必要はなく、成形型の形状が変化して形成されたものである。これにより、成形型の構造が複雑になることが防止される。
【0019】
それ故、前記一態様のコネクタは、簡単な構造の成形型によって成形することができ、貫通ナットのネジ穴への外側樹脂部の浸透が防止されて、貫通ナットの位置及び姿勢を精度良く維持して成形することができる。
【0020】
前記他の態様のコネクタの製造方法は、前記一態様のコネクタの製造に適した方法である。そして、このコネクタの製造方法によれば、簡単な構造の成形型によって、貫通ナットのネジ穴への外側樹脂部の浸透を防止するとともに、貫通ナットの位置及び姿勢を精度良く維持して、コネクタを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1にかかる、コネクタにおける、外側樹脂部内に配置されるコネクタ端子、中子樹脂部、貫通ナット等を示す斜視図。
図2】実施形態1にかかる、コネクタを示す斜視図。
図3】実施形態1にかかる、コネクタの中子樹脂部にコネクタ端子が配置された状態を示す説明図。
図4】実施形態1にかかる、コネクタを示す、図3におけるIV−IV線断面図。
図5】実施形態1にかかる、コネクタを示す、図3におけるV−V線断面図。
図6】実施形態1にかかる、成形型に、コネクタ端子を有する中子樹脂部及び貫通ナットが配置された状態を示す、図3におけるIV−IV線断面相当図。
図7】実施形態1にかかる、成形型に、コネクタ端子を有する中子樹脂部及び貫通ナットが配置された状態を示す、図3におけるV−V線断面相当図。
図8】実施形態1にかかる、成形型のキャビティ内に、外側樹脂部を構成する樹脂材料が充填された状態を示す、図3におけるIV−IV線断面相当図。
図9】実施形態1にかかる、成形型のキャビティ内に、外側樹脂部を構成する樹脂材料が充填された状態を示す、図3におけるV−V線断面相当図。
図10】実施形態1にかかる、コネクタの取付方向の表側における、各中子樹脂部の、外側樹脂部の表面に露出される露出面を示す説明図。
図11】実施形態1にかかる、コネクタの取付方向の裏側における、各中子樹脂部の、外側樹脂部の表面に露出される露出面を示す説明図。
図12】実施形態1にかかる、成形後のコネクタが成形型から取り出された状態を示す、図3におけるIV−IV線断面相当図。
図13】実施形態2にかかる、コネクタを示す、図3におけるIV−IV線断面相当図。
図14】実施形態2にかかる、成形型に、コネクタ端子を有する各中子樹脂部及び貫通ナットが配置された状態を示す、図3におけるV−V線断面相当図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前述したコネクタ及びその製造方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のコネクタ1は、図1図5に示すように、複数のコネクタ端子3、中子樹脂部2A,2B、貫通ナット4及び外側樹脂部5を備える。コネクタ端子3は、導電性の導体から構成されている。中子樹脂部2A,2Bは、複数のコネクタ端子3の両端部31,32を突出させるとともに、複数のコネクタ端子3の両端部31,32を除く中間部33を覆うものである。
【0023】
図1図4及び図5に示すように、貫通ナット4は、貫通するネジ穴40を有しており、中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対向して複数(本形態では2つ)配置されている。貫通ナット4は、内側端面42が中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対向しており、内側端面42に位置するネジ穴40の開口部402がナット対向面21Aによって閉じられている。外側樹脂部5は、中子樹脂部2A,2Bの一部としての露出面25と貫通ナット4の外側端面41とを露出させる状態で、中子樹脂部2A,2B及び貫通ナット4を覆うものである。外側樹脂部5における、中子樹脂部2A,2Bの、ナット対向面21Aとは反対側に位置する反対側面22Bを覆う部位の表面には、外側樹脂部5の成形時における注入跡51が形成されている。
【0024】
以下に、本形態のコネクタ1及びその製造方法について詳説する。
本形態のコネクタ1は、自動車の電動パワーステアリングにおける電気配線に使用されるものである。コネクタ1は、電動パワーステアリングに用いられるモータ、各種センサ等の電子制御機器を制御装置に配線するための配線接続部として用いられる。図4及び図5に示すように、コネクタ1は、内蔵される複数の貫通ナット4を用いて、制御装置の制御基板71に取り付けられる。コネクタ1における貫通ナット4のネジ穴40には、制御基板71側に配置されたボルトのネジ部が螺合される。
【0025】
なお、コネクタ1は、複数の貫通ナット4に螺合されるボルトによって、制御装置を覆うカバー等に取り付けられてもよい。この場合には、外側樹脂部5における、貫通ナット4の周辺には、防水用のシール材を配置することができる。
【0026】
図示は省略するが、本形態のコネクタ1には、電動パワーステアリングのケースに取り付けられる取付部が形成されている。この取付部は、外側樹脂部5によって形成されており、電動パワーステアリングのモータの端部の周囲に配置されるよう円環状に形成されている。取付部には、取付部を電動パワーステアリングのケースに取り付けるための別のナットが埋設されている。なお、コネクタ1は、電動パワーステアリング以外の種々の機械部品に用いることができる。
【0027】
本形態のコネクタ1のコネクタケースは、中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5とによって形成されている。コネクタケースは、中子樹脂部2A,2Bを用いて、外側樹脂部5のインサート成形を行うことによって形成されている。中子樹脂部2A,2Bを構成する樹脂材料と、外側樹脂部5を構成する樹脂材料とは、同種の熱可塑性樹脂からなる。なお、中子樹脂部2A,2Bを構成する樹脂材料の種類と、外側樹脂部5を構成する樹脂材料の種類とは、互いに異なっていてもよい。
【0028】
図1図5に示すように、コネクタ1においては、制御基板71に取り付けられる側を裏側D2といい、裏側D2とは反対側を表側D1という。表側D1と裏側D2とを形成する方向を取付方向Dという。コネクタ1の表側D1においては、複数のコネクタ端子3の一端部31が配置されるとともに、複数のコネクタ端子3の一端部31によって、雌コネクタ72が接続される接続部11が形成されている。本形態のコネクタ1においては、2つの接続部11が形成されている。接続部11におけるケース部52は、外側樹脂部5によって形成されている。
【0029】
(中子樹脂部2A,2B,コネクタ端子3)
図1及び図5に示すように、コネクタ1においては、貫通ナット4が対向して配置される中子樹脂部2A,2Bの他に、貫通ナット4が対向して配置されない別の中子樹脂部2Dも配置されている。各中子樹脂部2A,2B,2Dは、コネクタ1の外側樹脂部5を成形する前に、複数のコネクタ端子3を配置してインサート成形したものである。各中子樹脂部2A,2B,2Dは、複数のコネクタ端子3の配列状態を固定するために用いられる。中子樹脂部2A,2B,2Dを用いることにより、複数のコネクタ端子3が配列されたコネクタ1の製造を容易にすることができる。
【0030】
図1に示すように、複数のコネクタ端子3は、その両端部31,32が中子樹脂部2A,2Bから突出する雄端子として形成されている。図4及び図5に示すように、複数のコネクタ端子3の一端部31は、雌コネクタ72との接続のために使用され、複数のコネクタ端子3の他端部32は、制御基板71に取り付けられる。中子樹脂部2A,2Bには、適宜間隔を空けて互いに平行な状態で並ぶ複数のコネクタ端子3が配置されている。
【0031】
同図に示すように、本形態の各中子樹脂部2A,2Bには、所定本数のコネクタ端子3が2段に並ぶ状態で配置されている。中子樹脂部2A,2Bは、2段に並ぶコネクタ端子3が配置されたコネクタ1の成形を容易にするために、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとの2段に分かれて成形されている。第1中子樹脂部2Aは、貫通ナット4に対向するナット対向面21Aを有する。第2中子樹脂部2Bは、第1中子樹脂部2Aに対する取付方向Dの表側D1に対向して配置されている。なお、別の中子樹脂部2Dも、中子樹脂部2A,2Bと同様に2段に分かれて成形されている。
【0032】
複数のコネクタ端子3における、各中子樹脂部2A,2B,2Dから突出する両端部31,32は、取付方向Dに平行に配置されている。図3に示すように、複数のコネクタ端子3における、中子樹脂部2A,2B,2Dに埋設された中間部33は、取付方向Dに平行な状態から取付方向Dに直交する状態に屈曲している。
【0033】
図1に示すように、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bは、複数のコネクタ端子3の中間部33の多くの部位を覆っている。第2中子樹脂部2Bにおける複数のコネクタ端子3の中間部33の一部は、穴部26によって第2中子樹脂部2Bから露出し、外側樹脂部5内に埋設される。図4及び図5に示すように、第1中子樹脂部2Aにおける、複数のコネクタ端子3の中間部33を覆う部分には、貫通ナット4と対向する対向凸部23が形成されている。
【0034】
本形態の第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aは、対向凸部23の先端に形成されている。また、第1中子樹脂部2Aの反対側面22Aは、ナット対向面21Aに対して平行に形成されている。第1中子樹脂部2Aにおける、複数のコネクタ端子3の中間部33を覆う部分と、第2中子樹脂部2Bにおける、複数のコネクタ端子3の中間部33を覆う部分とは互いに平行に配置されている。第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bは、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対して平行に形成されている。
【0035】
ナット対向面21Aと反対側面22A,22Bとは、必ずしも平行になっている必要はない。ナット対向面21A及び反対側面22A,22Bは、貫通ナット4の内側端面42の外形を、コネクタ1の取付方向Dに沿って第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bに投影したときに、この外径の投影範囲内に存在する面であればよい。
【0036】
図1及び図4に示すように、複数のコネクタ端子3は、モータ、センサ等の電子制御機器の制御用の端子として使用される。コネクタ1においては、コネクタ端子3の断面積よりも大きな断面積を有する電源用の端子(バスバー)3Cも配置されている。電源用の端子3Cは、インサート成形によって電源用中子樹脂部2Cに配置されている。電源用の端子3Cの両端部は、電源用中子樹脂部2Cから突出しており、電源用の端子3Cの中間部は、電源用中子樹脂部2Cに埋設されている。電源用中子樹脂部2Cにおける、電源用の端子3Cの中間部を覆う部分は、第1中子樹脂部2Aの取付方向Dの裏側D2に対向して配置されている。
【0037】
(貫通ナット4)
図4及び図5に示すように、貫通ナット4は、ネジ穴40が軸線方向に貫通して形成されたものである。ネジ穴40は、貫通ナット4の軸線方向の外側端面41及び内側端面42の両側に開口部401,402を形成している。第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aには、貫通ナット4の内側端面42が対向し、ナット対向面21Aによって、内側端面42におけるネジ穴40の開口部402が閉じられている。
【0038】
貫通ナット4は、コネクタ1の取付方向Dの裏側D2に、外側端面41におけるネジ穴40の開口部401を露出する状態で、コネクタ1に配置されている。貫通ナット4は、その強度を高めるために、金属材料によって構成されている。本形態の第1中子樹脂部2Aにおけるナット対向面21Aは、第1中子樹脂部2Aにおける、コネクタ1の取付方向Dの裏側D2に配置された面となる。
【0039】
貫通ナット4の全面、すなわちネジ穴40、両端面41,42及び外周面43には、その防食、防錆等の性能を高めるための金属材料によるメッキ層が形成されている。貫通ナット4にメッキ層を形成する際には、ネジ穴40が貫通していることにより、貫通ナット4の全面にできるだけ均一にメッキ層を形成することができる。これにより、特にネジ穴40におけるメッキ層の厚みをできるだけ均一にして、ネジ穴40に対するボルトの締め付け力をできるだけ均一にすることができる。
【0040】
一方、ネジ穴が貫通しない袋ナットにメッキ層を形成する場合には、メッキ層を形成するための液状のメッキ材料が、ネジ穴内に溜まりやすくなり、メッキ層の厚みが不均一になるおそれがある。この場合には、貫通しないネジ穴へのボルトの締め付け力にばらつきが生じるおそれがある。
【0041】
また、貫通ナット4の外側端面41及び外側端面41に隣接する外周面43の部分は、外側樹脂部5の表面から突出している。これにより、貫通ナット4の外側端面41を、制御装置の制御基板71等の取付面に対面させることが容易になる。
【0042】
(外側樹脂部5)
図1及び図2に示すように、外側樹脂部5は、コネクタケースにおける、中子樹脂部2A,2B以外の部分を形成するものであり、コネクタケースの外形形状を形成する樹脂の部分である。コネクタ1においては、中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5とが一体化されており、コネクタ1の外部から中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5とを区別することは難しい。
【0043】
ただし、コネクタ1を切断したときには、中子樹脂部2A,2Bと外側樹脂部5との間の境界位置を確認することができる。この境界位置には、中子樹脂部2A,2Bが成形されたときの樹脂の表面層が配置される。この表面層は、硬度が高くなる等の、他の部位に比べて異なる性質を有することが多い。このことによっても、コネクタケース内に中子樹脂部2A,2Bが形成されていることを確認することができる。
【0044】
(成形型6)
次に、コネクタ1の製造方法において用いられる成形型6について説明する。
コネクタ1の外側樹脂部5は、射出成形を行うことによって成形される。射出成形を行う際には、溶融樹脂を射出する射出シリンダー等を備えた射出成形機と、図6及び図7に示すように、射出シリンダーから射出される溶融樹脂が供給される成形型6とが用いられる。溶融樹脂は、外側樹脂部5を構成する樹脂材料が溶融したものである。成形型6は、成形後の成形品を取り出し可能にするために一対の型部61,62と、スライド型部63とに分割されている。
【0045】
図6及び図7に示すように、外側樹脂部5の成形を行う際には、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、電源用中子樹脂部2C、別の中子樹脂部2D及び貫通ナット4は、成形型6内に配置される。そして、図8及び図9に示すように、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、電源用中子樹脂部2C、別の中子樹脂部2D及び貫通ナット4は、外側樹脂部5を構成する樹脂材料によるインサート成形を行った際に、外側樹脂部5に配置される。
【0046】
図6及び図7に示すように、一対の型部61,62は、射出成形機の射出シリンダーの端部に配置された射出ノズルが配置されるノズル側型部61と、ノズル側型部61との間に、溶融樹脂が充填されるキャビティ60を形成する対向側型部62とからなる。ノズル側型部61には、キャビティ60への溶融樹脂の注入口を形成するゲート611が形成されている。
【0047】
本形態のゲート611は、ノズル側型部61における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bとしての取付方向Dの表側D1の表面に対向する位置に形成されている。より具体的には、ゲート611は、ノズル側型部61における、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介して各貫通ナット4と対向する位置に、それぞれ形成されている。なお、スライド型部63は、一対の型部61,62のみの型開きによっては、成形後のコネクタ1の取り出しができないため、この取り出しを可能にするために使用される。
【0048】
また、ノズル側型部61及び対向側型部62には、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dを保持して、各型部61,62に対する各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの位置決めを行うための中子保持部612が形成されている。各型部61,62に中子保持部612が形成されていることにより、外側樹脂部5の成形を行う際に、成形型6における、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの位置が保持される。
【0049】
各型部61,62に中子保持部612を形成するときには、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dを各型部61,62に接触させ、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dのコネクタ端子3又は電源用の端子3Cが各型部61,62に接触しないようにすることができる。また、各型部61,62の中子保持部612によって保持される、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの部位は、外側樹脂部5の表面に露出される各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの一部としての露出面25を形成する。
【0050】
図10には、コネクタ1の取付方向Dの表側D1における、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの露出面25と、この露出面25に対応する、ノズル側型部61の中子保持部612とを示す。また、図11には、コネクタ1の取付方向Dの裏側D2における、各中子樹脂部2A,2B,2C,2Dの露出面25と、この露出面25に対応する、対向側型部62の中子保持部612とを示す。
【0051】
図6及び図7に示すように、本形態の対向側型部62には、貫通ナット4の外側端面41の近傍の外周を保持するナット保持部621が形成されている。ナット保持部621は、対向側型部62の成形面からキャビティ60に向けて突出して形成されている。貫通ナット4の外側端面41及び外側端面41に隣接する外周面43の部分は、ナット保持部621によって保持されることによって、成形後の外側樹脂部5の表面に露出される。なお、ナット保持部621は、貫通ナット4のネジ穴40を保持する形状、あるいは貫通ナット4の外側端面41及び外側端面41に隣接する外周面43の部分と、貫通ナット4のネジ穴40とを保持する形状に形成してもよい。
【0052】
(注入跡51)
図12に示すように、外側樹脂部5の表面に形成された注入跡51は、ノズル側型部61のゲート611に配置された樹脂材料(溶融樹脂)の跡として形成されている。ゲート611に配置されて固化した樹脂材料の部分は、各型部61,62,63によるキャビティ60から、外側樹脂部5が固化して製造されたコネクタ1が取り出されるときに切除される。この切除を行った後には、ゲート611の円形等の断面形状を有する注入跡51が、外側樹脂部5の表面に残る。なお、ゲート611における樹脂材料の部分は、製造後のコネクタ1がキャビティ60から取り出された後に切除してもよい。
【0053】
図4及び図5に示すように、本形態の注入跡51は、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位であって、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介して貫通ナット4と対向する部位の表面に形成されている。この注入跡51の形成位置により、図8及び図9に示すように、ゲート611から第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bに加わる樹脂材料の注入時の圧力Pは、貫通ナット4と対向する位置に加えられたと認知することができる。これにより、コネクタ1における貫通ナット4の姿勢が、より確実に目標とする規定の姿勢に保たれていると判断することができる。
【0054】
(製造方法)
次に、コネクタ1の製造方法について詳説する。
本形態のコネクタ1の製造方法においては、射出成形機及び成形型6を用い、各中子樹脂部2A,2B,2C,2D及び貫通ナット4をインサート部品として外側樹脂部5を成形し、コネクタ1を得る。
【0055】
コネクタ1の製造に当たっては、予備工程として、複数のコネクタ端子3が配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、第1中子樹脂部2Aが成形される。また、複数のコネクタ端子3が配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、第2中子樹脂部2Bが成形される。また、複数の電源用の端子3Cが配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、電源用中子樹脂部2Cが成形される。さらに、複数のコネクタ端子3が配置された成形型内に樹脂材料が注入されて、別の中子樹脂部2Dが成形される。
【0056】
次いで、成形工程として、図6及び図7に示すように、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B、電源用中子樹脂部2C、別の中子樹脂部2Dが、各型部61,62の成形面における各中子保持部612に保持される。また、各貫通ナット4が、対向側型部62の成形面における各ナット保持部621に保持される。このとき、対向側型部62に対して貫通ナット4の外側端面41が対向する。
【0057】
そして、ノズル側型部61が対向側型部62に対して相対的に接近して、ノズル側型部61と対向側型部62とが組み合わさり、成形型6のキャビティ60が形成される。このとき、キャビティ60においては、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aに対して各貫通ナット4の内側端面42が対向する。
【0058】
また、ノズル側型部61の各ゲート611が、第2中子樹脂部2Bにおける反対側面22Bに対向する。より具体的には、ノズル側型部61の各ゲート611が、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、貫通ナット4の投影位置に対向する。言い換えれば、各貫通ナット4の内側端面42が、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介してノズル側型部61の各ゲート611に対向する。
【0059】
ここで、貫通ナット4の投影位置とは、貫通ナット4の内側端面42の外形を、コネクタ1の取付方向Dに沿って第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bに投影したときに、この反対側面22Bに投影される内側端面42の外形の投影範囲とすることができる。各ゲート611と貫通ナット4の投影位置とが対向する状態においては、ノズル側型部61のゲート611の形成範囲の少なくとも一部と、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、内側端面42の外形の投影範囲の少なくとも一部とが、取付方向Dから見たときに互いに重なっていればよい。
【0060】
次いで、図8及び図9に示すように、射出成形機の射出シリンダー及び射出ノズルから、ノズル側型部61の各ゲート611へ、溶融した樹脂材料が供給される。このとき、樹脂材料は、ゲート611から、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bに向けて吐出され(注入され)、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、貫通ナット4の投影位置に衝突する。
【0061】
これにより、樹脂材料の注入時の圧力Pを、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介して貫通ナット4の内側端面42に作用させることができる。そして、樹脂材料の注入時の圧力Pによって、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介して貫通ナット4を対向側型部62へ押さえ付けることができる。また、ゲート611から第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bに向けて樹脂材料が注入されるときには、樹脂材料の注入時の圧力Pを受ける第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aによって、貫通ナット4の内側端面42に位置するネジ穴40の開口部402が閉じられる。
【0062】
そして、樹脂材料の注入時の圧力Pを利用して、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aと貫通ナット4の内側端面42との間、及び対向側型部62と貫通ナット4の外側端面41との間に、隙間が形成されないようにする。これにより、貫通ナット4のネジ穴40への樹脂材料の浸透が防止される。また、対向側型部62のナット保持部621から貫通ナット4が動かないようにすることができる。そのため、対向側型部62のナット保持部621における貫通ナット4の姿勢を、目標とする規定の姿勢に保つことができる。
【0063】
そして、成形型6のキャビティ60内に樹脂材料が充填され、キャビティ60内の樹脂材料が、所定の射出圧力に維持されて固化する。その結果、樹脂材料によって外側樹脂部5が成形され、キャビティ60内に、各コネクタ端子3、各電源用の端子3C、各中子樹脂部2A,2B,2C,2D、貫通ナット4等を内蔵するコネクタ1が成形される。その後、図12に示すように、ノズル側型部61が対向側型部62に対して相対的に離隔され、キャビティ60内からコネクタ1が取り出される。
【0064】
(作用効果)
本形態のコネクタ1は、外側樹脂部5のインサート成形を行う際に、複数のコネクタ端子3が配置された中子樹脂部2A,2Bをインサート部品として利用して、成形されたものである。成形されたコネクタ1においては、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aには、2つの貫通ナット4が配置されており、各中子樹脂部2A,2Bの露出面25と貫通ナット4の外側端面41とは外部に露出されている。また、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位であって、第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bを介して貫通ナット4と対向する部位の表面には、外側樹脂部5の成形時における注入跡51が形成されている。
【0065】
外側樹脂部5の表面に露出された各中子樹脂部2A,2Bの露出面25は、キャビティ60内に外側樹脂部5を成形する際に、各型部61,62の各中子保持部612に各中子樹脂部2A,2Bを保持するために利用された部位である。また、各貫通ナット4の外側端面41及び外側端面41に隣接する外周面43の部分は、キャビティ60内に外側樹脂部5を成形する際に、対向側型部62の各ナット保持部621に貫通ナット4を保持するために利用される。そして、各貫通ナット4は、各中子保持部612に保持された第1中子樹脂部2A及び第2中子樹脂部2Bによっても、その姿勢が変化しないように支えられる。
【0066】
また、貫通ナット4の、内側端面42に位置するネジ穴40の開口部402は、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aによって塞がれている。そして、内側端面42とナット対向面21Aとの隙間からネジ穴40へは、外側樹脂部5がほとんど浸透していない。
【0067】
また、外側樹脂部5の注入跡51は、ノズル側型部61に設けられたゲート611から、外側樹脂部5を成形するための樹脂材料をキャビティ60内へ注入するために利用された部位である。キャビティ60内に外側樹脂部5を成形する際には、各中子樹脂部2A,2B及び各貫通ナット4が各型部61,62の各保持部612,621に保持される。このとき、各型部61,62への第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B及び貫通ナット4の配置が可能であるためには、第1中子樹脂部2A、第2中子樹脂部2B及び貫通ナット4は、一対の型部61,62によって完全には挟み込まれない。
【0068】
つまり、第1中子樹脂部2Aのナット対向面21Aと貫通ナット4の内側端面42との間、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとの間には微小な隙間が形成される。そして、ナット保持部621に保持された貫通ナット4は、キャビティ60内を流れる樹脂材料によってナット保持部621から若干動いて、ナット保持部621に対する姿勢が変化し、ナット保持部621に対して傾くおそれがある。
【0069】
そこで、各ゲート611から、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、貫通ナット4の投影位置に樹脂材料を衝突させることにより、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介して各貫通ナット4を対向側型部62へ効果的に押さえ付けることができる。言い換えれば、樹脂材料の注入時の圧力Pを利用して、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを微小な隙間の範囲内で、各貫通ナット4の側へ位置ずれさせることができる。これにより、外側樹脂部5の成形によって製造されたコネクタ1においては、貫通ナット4のネジ穴40への外側樹脂部5の浸透が防止されるとともに、貫通ナット4の姿勢が目標とする規定の姿勢に保たれることになる。
【0070】
また、外側樹脂部5を成形する際に、貫通ナット4は、対向側型部62に形成された、形状変化部としてのナット保持部621によって位置決めされる。このナット保持部621は、対向側型部62に対して回転、スライド等の動作が可能な可動部とする必要はなく、対向側型部62の形状が変化して形成されたものである。これにより、成形型6の構造が複雑になることが防止される。
【0071】
それ故、本形態のコネクタ1は、簡単な構造の成形型6によって成形することができ、貫通ナット4のネジ穴40への外側樹脂部5の浸透が防止されて、貫通ナット4の位置及び姿勢を精度良く維持して成形することができる。また、本形態のコネクタ1の製造方法によれば、簡単な構造の成形型6によって、貫通ナット4のネジ穴40への外側樹脂部5の浸透を防止するとともに、貫通ナット4の位置及び姿勢を精度良く維持して、コネクタ1を成形することができる。
【0072】
(他の構成)
本形態のノズル側型部61の各ゲート611は、前述したように、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける、各貫通ナット4の投影位置に対向させた。これ以外にも、各ゲート611は、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bにおける適宜箇所に対向させることもできる。この場合にも、ゲート611からキャビティ60内に注入される樹脂材料によって、第2中子樹脂部2B及び第1中子樹脂部2Aを介して、各貫通ナット4を対向側型部62へ押さえ付けることができる。また、この場合には、注入跡51は、外側樹脂部5における、第2中子樹脂部2Bの反対側面22Bを覆う部位の適宜箇所に形成される。
【0073】
また、貫通ナット4と対向して配置される中子樹脂部2A,2Bは、複数のコネクタ端子3が2段の状態で配置されず、1段の状態で配置される場合には、第1中子樹脂部2Aと第2中子樹脂部2Bとに分かれていなくてもよい。また、例えば、複数のコネクタ端子3が3段の状態で設けられる場合には、中子樹脂部は、各段に対応して、互いに重なる3つの中子樹脂部によって形成することができる。
【0074】
<実施形態2>
本形態のコネクタ1においては、貫通ナット4の姿勢を、より確実に規定の姿勢に維持するために、図13及び図14に示すように、貫通ナット4の、内側端面42及び内側端面42に隣接する外周面43の部分を、第1中子樹脂部2Aの内部に埋設している。本形態のコネクタ1においては、貫通ナット4の、内側端面42及び内側端面42に隣接する外周面43の部分は、第1中子樹脂部2Aによって覆われている。
【0075】
本形態において用いる射出成形機及び成形型6は、実施形態1の場合と同様である。
【0076】
図14に示すように、本形態のコネクタ1の製造方法においては、第1中子樹脂部2Aを成形する際に、そのナット対向面21Aに貫通ナット4を配置するための凹部27を成形する。この凹部27は、貫通ナット4の、外周面43における内側端面42に隣接する部分の外形(外径)よりも若干小さな外形(外径)に形成する。そして、外側樹脂部5の成形を行う前には、貫通ナット4は、第1中子樹脂部2Aの凹部27内に圧入することができる。
【0077】
そして、ゲート611から成形型6のキャビティ60内に、外側樹脂部5を構成するための樹脂材料が充填されるときには、貫通ナット4が、凹部27に保持されていることにより、対向側型部62のナット保持部621から、より動きにくくすることができる。そのため、対向側型部62のナット保持部621における貫通ナット4の姿勢を、目標とする規定の姿勢に、より確実に保つことができる。
【0078】
また、貫通ナット4の、内側端面42及び内側端面42に隣接する外周面43の部分が凹部27に保持されていることにより、樹脂材料が、内側端面42におけるネジ穴40の開口部402からネジ穴40へより浸透しにくくすることができる。
【0079】
また、第1中子樹脂部2Aの凹部27の外形は、貫通ナット4の、外周面43における内側端面42に隣接する部分の外形よりも若干大きく形成することもできる。この場合には、凹部27への貫通ナット4の配置を容易にすることができる。
【0080】
本形態のコネクタ1及びその製造方法におけるその他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0081】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0082】
1 コネクタ
2A,2B 中子樹脂部
21A ナット対向面
22B 反対側面
25 露出面(一部)
3 コネクタ端子
31,32 両端部
33 中間部
4 貫通ナット
40 ネジ穴
41 外側端面
42 内側端面
5 外側樹脂部
51 注入跡
6 成形型
61,62,63 型部
611 ゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14