特許第6891880号(P6891880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6891880感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜を具備する素子、硬化膜を具備する有機EL表示装置、硬化膜の製造方法、および有機EL表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891880
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜を具備する素子、硬化膜を具備する有機EL表示装置、硬化膜の製造方法、および有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20210607BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20210607BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210607BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210607BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210607BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210607BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20210607BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20210607BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210607BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   G03F7/027 502
   G03F7/037
   G03F7/004 501
   G03F7/004 505
   H05B33/14 A
   H01L27/32
   H05B33/10
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   G03F7/20 501
   G09F9/00 338
【請求項の数】19
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2018-515696(P2018-515696)
(86)(22)【出願日】2018年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2018010458
(87)【国際公開番号】WO2018180592
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2021年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-62368(P2017-62368)
(32)【優先日】2017年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀本 聡
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 勇剛
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−086000(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/061586(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/035298(WO,A1)
【文献】 特開2015−093986(JP,A)
【文献】 特開2016−177190(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084714(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/098291(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/057281(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/143740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C)光重合開始剤および(D)着色剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体を含有し、前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物および(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物とを含有し、前記(D)着色剤が、ベンゾフラノン構造を有する黒色顔料および/またはペリレン系黒色顔料を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物が、脂環式構造を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂環式構造が、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ペンタシクロペンタデカニル基およびイソシアヌレート基からなる群のいずれかである、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
有機EL表示装置における画素分割層の段差形状を一括形成するために用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物が、一般式(3)で表される構造を含有する(メタ)アクリル化合物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(3)中、R29は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Zは酸素原子またはN−R30のいずれかを表す。R30は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。aは1〜10の整数を表し、bは1〜10の整数を表し、cは0又は1を表し、dは1〜4の整数を表し、eは0又は1を表す。cが0の場合、dは1である。)
【請求項6】
前記(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物が、ラクトン変性鎖および/またはラクタム変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物を含有する、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物がメタクリル基を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)ラジカル重合性化合物100質量部に占める前記(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物の含有量が20〜80質量部、かつ前記(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物の含有量が20〜80質量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに(E)熱架橋剤を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(E)熱架橋剤が、(E−1)メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計6以上20以下有する化合物を含有する、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜。
【請求項12】
前記硬化膜が段差形状を有する、請求項11に記載の硬化膜。
【請求項13】
前記硬化膜の押込み弾性率が7.0GPa以上12.0GPa以下の範囲である、請求項11または12に記載の硬化膜。
【請求項14】
前記段差形状を有する硬化膜において、厚膜部の膜厚を(TFT)、薄膜部の膜厚を(THT)μmおよび前記厚膜部の膜厚(TFT)と薄膜部の膜厚(THT)との膜厚差を(ΔTFT−HT)μmとするとき、前記厚膜部の膜厚(TFT)、前記薄膜部の膜厚(THT)および前記厚膜部の膜厚と薄膜部の膜厚との膜厚差(ΔTFT−HT)が、式(α)〜(γ)で表される関係を満たす、請求項12または13に記載の硬化膜。
1.0≦(TFT)≦5.0 (α)
0.2≦(THT)≦4.0 (β)
0.5≦(ΔTFT−HT)≦4.0 (γ)
【請求項15】
請求項1114のいずれかに記載の硬化膜を具備する素子。
【請求項16】
請求項1115のいずれかに記載の硬化膜を具備する有機EL表示装置。
【請求項17】
(1)請求項1〜10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板に塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程、
(2)該感光性樹脂膜を乾燥する工程、
(3)乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程、
(4)露光した感光性樹脂膜を現像する工程および
(5)現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程
とを含む硬化膜の製造方法。
【請求項18】
前記フォトマスクが、透光部及び遮光部を含むパターンを有するフォトマスクであって、前記透光部と遮光部の間に、透過率が透光部の値より低く、かつ透過率が遮光部の値より高い、半透光部を有するハーフトーンフォトマスクである、請求項17に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法により硬化膜を形成する工程を含む、有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜、硬化膜を具備する素子、硬化膜を具備する有機EL表示装置、硬化膜の製造方法、及び有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPC及びテレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)表示装置を用いた製品が多く開発されている。
【0003】
有機EL発光素子は、対向する第一電極と第二電極との間に電圧を印加することで、あるいは、電流を流すことで動作するものである。この際、曲率半径の小さい電極のエッジ部分には電界が集中しやすいため、エッジ部分では絶縁破壊やリーク電流の発生など、望ましくない現象が起きやすい。
【0004】
一般に、有機EL表示装置は、発光素子の画素間を分割するため、画素分割層という絶縁層が形成される。画素分割層を形成した後、画素領域に相当する、画素分割層が開口して下地である第一電極が露出した領域に発光層が形成される。発光層上には第二電極が成膜されるが、成膜された透明電極又は金属電極が断線するのを防ぐため、画素分割層には低テーパーのパターン形状が要求される。
【0005】
また、発光層を形成する際、蒸着マスクを画素分割層に接触させて蒸着するが、画素分割層と蒸着マスクとの接触面積が大きいと、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下の要因となる。また、蒸着マスクの付着物によって画素分割層が損傷し、水分が侵入することで、発光素子の劣化の要因となる。そこで、画素分割層の接触面積を小さくするため、画素分割層を二層に分けて成膜し、二層目の寸法幅を小さくする方法が挙げられるが、工程が煩雑になるため、プロセスタイムの増加又はパネルの歩留まり低下の要因となる課題がある。これらの課題を解決する手法として、フォトマスクとしてハーフトーンフォトマスクを用いてパターン形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。段差形状を有する画素分割層を一層成膜で形成することで、プロセスタイムを増加させることなく、蒸着マスクとの接触面積を小さくする方法である。段差形状を有する画素分割層の一層成膜としては、一般に、ナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物が用いられている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
一方、有機EL表示装置のコントラストを高める目的で、画素分割層に遮光性を持たせる試みがなされ、遮光性の着色剤を含有したポジ型着色感光性樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献3参照)。コントラストを高めるために必要な遮光性を付与するためには、組成物中に相当量の着色剤を使用する必要があり、露光された放射線は着色剤により吸収されるので、膜の底部ではパターン形成に必要な光反応がほとんど起きないため、感度が大幅に低下するという課題があった。
【0007】
これに対し、液晶表示装置のブラックマトリックスなどに使用されている、ネガ型感光性樹脂組成物は、放射線照射で発生したラジカルが連鎖反応して露光部が不溶化する方式のため、着色剤が使用される組成でも、ポジ型と比較すると相対的に高感度でパターン形成が可能である。着色剤含有ネガ型感光性樹脂組成物としては、アクリル樹脂やカルド樹脂を用いたものが提案されている(例えば特許文献4参照)。近年、液晶表示装置のカラムスペーサに遮光性を持たせた、いわゆるブラックカラムスペーサ形成用の着色剤含有ネガ型感光性樹脂組成物が提案されており、ハーフトーンフォトマスクを用いた加工により、高さの異なるスペーサ形成が可能となっている(例えば特許文献5参照)。
【0008】
しかしながら、これら従来公知の着色剤含有ネガ型感光性樹脂組成物においては、ハーフトーンフォトマスクを用いて現像後に段差形状を有するパターンを形成しても、加熱処理時に形状が変化してしまい、所望の段差形状を有する硬化膜が得られないといった課題があった。
【0009】
したがって、遮光性を有しながら高感度で、ハーフトーンフォトマスクを用いた一括プロセスで、段差形状を有するパターンを形成することが可能な特性(以下、「ハーフトーン特性」)に優れた感光性樹脂組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−322564号公報(請求項1〜9)
【特許文献2】特開2007−294118号公報(請求項5)
【特許文献3】特表2013−533508号公報(請求項1〜19)
【特許文献4】国際公開第2008/032675号(請求項1〜8)
【特許文献5】特開2016−177190号公報(請求項1〜9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、遮光性を有しながら高感度で、ハーフトーン特性に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、別の課題として、従来公知のネガ型感光性樹脂組成物では、段差形状を有する画素分割層を形成することが困難であるため、蒸着マスクと画素分割層との接触により、発光素子の信頼性が低下する場合があった。
【0013】
そこで本発明は、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有する画素分割層を有し、発光素子の信頼性に優れる有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、別の課題として、従来公知のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、段差形状を有する画素分割層を形成するには、煩雑な工程を要する場合があった。
【0015】
そこで本発明は、ハーフトーンフォトマスクを用いた一括プロセスで、段差形状を有する硬化膜を形成する方法及びそれを用いた有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C)光重合開始剤および(D)着色剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体を含有し、前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物および(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物とを含有する、感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、遮光性を有しながら高感度で、ハーフトーン特性に優れた感光性樹脂組成物を提供することが可能である。また、前記感光性樹脂組成物を使用することにより、厚膜部と薄膜部とで十分な膜厚差がある段差形状を有する硬化膜を形成できるため、発光素子の信頼性を向上させることが可能となる。さらに、前記樹脂組成物を使用することにより、ハーフトーンフォトマスクを用いた一括プロセスで、段差形状を有する硬化膜を形成することが可能であるため、プロセスタイムを短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】段差形状を有する硬化パターンの断面の一例を示す断面図である。
図2】平坦化層と画素分割層を形成したTFT基板の断面図である。
図3】ハーフトーンフォトマスクの一例を示す概略図である。
図4】絶縁層の断面の一例を示す断面図である。
図5】段差形状を有する硬化パターンの断面の一例を示すSEM写真である。
図6】段差形状が失われた硬化パターンの断面の一例を示すSEM写真である。
図7】発光特性評価に用いた有機EL表示装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C)光重合開始剤および(D)着色剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体を含有し、前記(B)ラジカル重合性化合物が、(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物および(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物とを含有する、感光性樹脂組成物である。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂を含有する。本発明におけるアルカリ可溶性とは、樹脂をγ−ブチロラクトンに溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
【0022】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミノアミド、ポリアミド、アクリル樹脂などのラジカル重合性モノマーの重合体、シロキサン樹脂、カルド樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂を2種以上含有してもよい。これらの樹脂の共重合体でもよい。
【0023】
これらのアルカリ可溶性樹脂の中でも、耐熱性に優れ、高温下におけるアウトガス量が少ないものが好ましい。具体的には、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体が好ましい。すなわち、本発明の(A)アルカリ可溶性樹脂は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体を含有する。
【0024】
本発明の(A)アルカリ可溶性樹脂として用いることができるポリイミド、ポリイミド前駆体、およびポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体は、上記アルカリ可溶性を付与するため、樹脂の構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などが挙げられる。
【0025】
また、前記アルカリ可溶性樹脂は、フッ素原子を有することが好ましく、アルカリ水溶液で現像する際に、膜と基材との界面に撥水性を付与し、界面へのアルカリ水溶液のしみこみを抑制することができる。前記アルカリ可溶性樹脂のフッ素原子含有量は、界面へのアルカリ水溶液のしみこみ防止効果の観点から5質量%以上が好ましく、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20質量%以下が好ましい。
【0026】
上述のポリイミドは下記一般式(1)で表される構造単位を有することが好ましく、上述のポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は下記一般式(2)で表される構造単位を有することが好ましい。上述のポリイミド、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体はこれらの構造単位を2種以上含有してもよい。一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位を共重合した樹脂を前記アルカリ可溶性樹脂として用いてもよい。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(1)中、Rは4〜10価の有機基、Rは2〜8価の有機基を表す。RおよびRはフェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基またはチオール基を表し、それぞれ単一のものであっても異なるものが混在していてもよい。pおよびqは0〜6の整数を表す。
【0029】
【化2】
【0030】
一般式(2)中、Rは2〜8価の有機基、Rは2〜8価の有機基を表す。RおよびRはフェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基、またはCOORを表し、それぞれ単一のものであっても異なるものが混在していてもよい。Rは水素原子または炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示す。rおよびsは0〜6の整数を表す。ただしr+s>0である。
【0031】
ポリイミド、ポリイミド前駆体、およびポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体は、一般式(1)で表される構造単位または一般式(2)で表される構造単位を5〜100,000有することが好ましい。また、ポリイミド、ポリイミド前駆体、およびポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体は、一般式(1)または(2)で表される構造単位に加えて、他の構造単位を有してもよい。この場合、一般式(1)で表される構造単位または一般式(2)で表される構造単位を、全構造単位数のうち50モル%以上有することが好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、R−(Rは酸二無水物の残基を表す。Rは4価〜10価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0033】
前記酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、および下記に示した構造の酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0034】
【化3】
【0035】
は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R10、R11、R12およびR13は水素原子、または水酸基を表す。
【0036】
上記一般式(2)中、R−(Rは酸成分の残基を表す。Rは2価〜8価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0037】
前記酸成分としては、ジカルボン酸の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸などがあげられる。トリカルボン酸の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などがあげられる。テトラカルボン酸の例としてピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、および下記に示した構造のテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0038】
【化4】
【0039】
は酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R10、R11、R12およびR13は水素原子、または水酸基を表す。
【0040】
これらのうち、トリカルボン酸、テトラカルボン酸では1つまたは2つのカルボキシル基が一般式(2)におけるR基に相当する。また、上に例示したジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の水素原子を、一般式(2)におけるR基、好ましくはフェノール性水酸基で1〜4個置換したものがより好ましい。これらの酸は、そのまま、あるいは酸無水物、活性エステルとして使用できる。
【0041】
上記一般式(1)のR−(Rおよび上記一般式(2)のR−(Rはジアミンの残基を表す。RおよびRは2〜8価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0042】
ジアミンの具体的な例としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンあるいはこれらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンおよび下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0043】
【化5】
【0044】
14およびR17は酸素原子、C(CFまたはC(CHを表す。R15、R16、およびR18〜R28はそれぞれ独立に水素原子、または水酸基を表す。
【0045】
これらのジアミンは、ジアミンとして、または対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。
【0046】
また、これらの樹脂の末端を、酸性基を有するモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸モノ酸クロリド、モノ活性エステルにより封止することで、主鎖末端に酸性基を有する樹脂を得ることができる。
【0047】
酸性基を有するモノアミンの好ましい例としては、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0048】
酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸の好ましい例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、などのモノカルボン酸およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の1つのカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド、モノ酸クロリドとN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られるモノ活性エステルが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0049】
上記したモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド、モノ活性エステルなどの末端封止剤の含有量は、樹脂を構成する酸成分およびアミン成分の総和100モル%に対して、2〜25モル%が好ましい。
【0050】
樹脂中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を、酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるアミン成分と酸成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトル及び13C−NMRスペクトル測定することで検出することが可能である。
【0051】
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性樹脂は、公知の方法により合成することができる。
【0052】
ポリイミド前駆体の場合、製造方法として例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後アミンと縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、アミンと反応させる方法などで合成することができる。
【0053】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、製造方法として例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで得ることが出来る。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下するなどがある。
【0054】
ポリイミドの場合、製造方法として例えば、上述の方法で得られたポリイミド前駆体を加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化膜の耐熱性を損なわない範囲で、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂を含有することができる。
【0056】
ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂の例としては、アクリル樹脂などのラジカル重合性モノマーの重合体、シロキサン樹脂、カルド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から選ばれる1種以上のアルカリ可溶性樹脂を、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体から選ばれる1種以上のアルカリ可溶性樹脂と併用することで、より低テーパーのパターン形状の硬化膜を得ることができる。ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体以外のアルカリ可溶性樹脂を含有する場合、その含有割合は、(A)アルカリ可溶性樹脂全体を100質量部として、5質量部以上が好ましく、50質量部以下が好ましい。5質量部以上とすることでさらなる低テーパー化効果が得られ、50質量部以下とすることで十分な耐熱性が得られる。
【0057】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)ラジカル重合性化合物を含有する。(B)ラジカル重合性化合物は、分子内に不飽和結合を有する。不飽和結合としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合、プロパルギル基等の不飽和三重結合などが挙げられる。これらの中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基が重合性の面で好ましい。(B)ラジカル重合性化合物はとして、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好適である。以下、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物を(メタ)アクリル化合物と称する。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)ラジカル重合性化合物を重合体としたときのガラス転移温度は100℃以上が好ましく、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上が特に好ましく、140℃以上が最も好ましい。重合体としたときのガラス転移温度を100℃以上とすることで、現像後に段差形状を有するパターンを形成した場合に、加熱処理時の形状変化、パターン流動を抑制でき、加熱処理後に所望の段差形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)ラジカル重合性化合物を重合体としたときのガラス転移温度は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましく、180℃以下が特に好ましく、160℃以下が最も好ましい。重合体としたときのガラス転移温度を250℃以下とすることで、加熱硬化後のパターン形状をより低テーパーにできる。
【0060】
なお、(B)ラジカル重合性化合物を重合体としたときのガラス転移温度Tgp(K)は、(B)ラジカル重合性化合物を構成する各単量体の重量分率Wnおよび各単量体の単独重合体としたときのガラス転移温度Tgn(K)から、次式のように求められる。
1/Tgp = Σ(Wn/Tgn)
ここで、各単量体の単独重合体としたときのガラス転移温度Tgn(K)は、文献またはメーカーのカタログ値が存在する場合にはその値を採用し、存在しない場合にはJIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定された値を採用する。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)ラジカル重合性化合物として、(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物および(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物とを含有する。
【0062】
(B)ラジカル重合性化合物として、(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物を含有することで、現像後に段差形状を有するパターンを形成した場合に、加熱処理時の形状変化、パターン流動を抑制でき、加熱処理後に所望の段差形状を有する硬化膜を得ることができる。上述の加熱処理時の形状変化、パターン流動を抑制できる点で、(B−1)成分のガラス転移温度は150℃以上であり、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましく、190℃以上が特に好ましい。
【0063】
一方、(B−1)成分のガラス転移温度は300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましく、270℃以下が特に好ましい。(B−1)成分のガラス転移温度を300℃以下とすることで、加熱硬化後のパターン形状をより低テーパーにできる。(B−1)成分の官能基数は2以上とすることで露光時の感度を向上でき、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。官能基数を6以下とすることで、加熱硬化後のパターン形状をより低テーパーにできる。
【0064】
(B)ラジカル重合性化合物として、(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物を含有することで、露光による光架橋密度を高めることで高感度化できるとともに、(B−1)成分と併用することで、加熱処理時の形状変化、パターン流動抑制の効果を維持しつつ、加熱硬化後のパターン形状を低テーパーにできる。(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物の官能基は4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましい。官能基数を4以上とすることでより高感度化できる。
【0065】
一方、(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物の官能基は12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。官能基数を12以下とすることで加熱硬化後のパターン形状をより低テーパーにできる。
【0066】
(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物としては、露光時の感度を向上できる点で脂環式構造を含有する化合物が好ましい。脂環式構造の好ましい例としては、トリシクロデカニル基、ペンタシクロペンタデカニル基、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基およびイソシアヌレート基を挙げることができる。脂環式構造の中でも、疎水性が高く、露光時の感度をさらに向上でき、硬化膜の吸水率を低減できる点で、炭素原子と水素原子のみで構成される脂環式構造がより好ましく、好ましい例としては、トリシクロデカニル基、ペンタシクロペンタデカニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0067】
(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物としては、疎水性が高く、露光時の感度をさらに向上でき、硬化膜の吸水率を低減できる点でメタクリル基を含むことがより好ましい。
【0068】
(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物の具体例としては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、1,3−アダマンタンジアクリレート、1,3−アダマンタンジメタクリレート、1,3,5−アダマンタントリアクリレート、1,3,5−アダマンタントリメタクリレート、5−ヒドロキシ−1,3−アダマンタンジアクリレート、5−ヒドロキシ−1,3−アダマンタンジメタクリレート、ぺンタシクロペンタデカンジメタノールジアクリレート、ぺンタシクロペンタデカンジメタノールジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジメタクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートもしくはイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリメタクリレートを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0069】
(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物としては、一般式(3)で表される構造を含有する(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましい。
【0070】
【化6】
【0071】
一般式(3)中、R29は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Zは酸素原子またはN−R30のいずれかを表す。R30は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。aは1〜10の整数を表し、bは1〜10の整数を表し、cは0又は1を表し、dは1〜4の整数を表し、eは0又は1を表す。cが0の場合、dは1である。
【0072】
(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物として一般式(3)で表される構造を含有することで、露光時のUV硬化が効率的に進行し、露光時の感度を向上させることができる。加えて、後述する(D)着色剤として顔料を含有する場合、顔料に由来する現像後の残渣発生を抑制することができる。これら高感度化あるいは残渣抑制といった効果は、一般式(3)で表される構造が脂肪族鎖で柔軟な構造なため、分子間でのエチレン性不飽和二重結合基同士の衝突確率が高くなることでUV硬化が促進され、架橋密度が向上したためと推測される。
【0073】
一般式(3)において、Zが酸素原子、b=1、c=1、e=1の場合はラクトン変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物、ZがN−R30、b=1、c=1、e=1の場合はラクタム変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物、Zが酸素原子、c=0、d=0、e=1の場合はアルキレンオキサイド変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物となる。これらの化合物の内、上述の高感度化、残渣抑制に加えて、加熱処理時の形状変化、パターン流動抑制の効果を付与できる点でラクトン変性鎖および/またはラクタム変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物が好ましい。ラクトン変性鎖および/またはラクタム変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物が加熱処理時の形状変化、パターン流動抑制の効果を奏する理由は明らかではないが、露光時のUV硬化が効率的に進行することに加え、一般式(3)式中のカルボニル基と酸素または窒素原子との間で水素結合が働くことが流動抑制に寄与しているものと推察される。
【0074】
(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物の具体例としては、一般式(3)で表される構造を含有する(メタ)アクリル化合物として、以下のものを挙げることができるがこれらに限定されない。ラクトン変性鎖を有する(メタ)アクリレート化合物として、ε‐カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε‐カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、δ‐バレロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、δ‐バレロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、γ‐ブチロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、γ‐ブチロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたは“KAYARAD”(登録商標) DPCA−20、同 DPCA−30、同 DPCA−60若しくは同 DPCA−120(以上、何れも日本化薬(株)製)があげられる。
【0075】
ラクタム変性鎖を有する(メタ)アクリレート化合物として、ε‐カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε‐カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性鎖を有する(メタ)アクリル化合物として、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートがあげられる。
【0076】
一般式(3)で表される構造を含有する(メタ)アクリル化合物以外の(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0077】
(B)ラジカル重合性化合物として、上述の(B−1)、(B−2)以外のラジカル重合性化合物を含有させてもよく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレートを挙げることができる。
【0078】
(B)ラジカル重合性化合物の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上が特に好ましい。また、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、150質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましい。10質量部以上とすることで、現像時の露光部の膜減りを低減することができ、300質量部以下とすることで、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0079】
また、(B)ラジカル重合性化合物100質量部に占める(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物の含有量は、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。また、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。20質量部以上とすることで、現像後に段差形状を有するパターンを形成した場合に、加熱処理時の形状変化、パターン流動の抑制効果をより高めることでき、加熱硬化後に所望の段差形状を有する硬化膜を得られやすくなる。また、80質量部以下とすることで、加熱硬化後のパターン形状をより低テーパーにできる。
【0080】
さらに、(B)ラジカル重合性化合物100質量部に占める(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物の含有量は、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。また、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。20質量部以上とすることで、露光による光架橋密度を高めることでより高感度化できるとともに、80質量部以下とすることで、現像後に段差形状を有するパターンを形成した場合に、加熱処理時の形状変化、パターン流動の抑制効果をより高めることできる。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。光重合開始剤を含有させることで、前述した(B)ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、樹脂組成物の膜の露光部がアルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0082】
(C)光重合開始剤としては、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤又は安息香酸エステル系光重合開始剤が好ましく、露光時の感度向上の観点から、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤又はベンゾフェノン系光重合開始剤がより好ましく、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤がさらに好ましい。
【0083】
ベンジルケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
【0084】
α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン又は2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。
【0085】
α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン又は3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−オクチル−9H−カルバゾールが挙げられる。
【0086】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド又はビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0087】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニルプロパン−1,2−ジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルブタン−1,2−ジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパン−1,2,3−トリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1−[4−[4−(カルボキシフェニル)チオ]フェニル]プロパン−1,2−ジオン−2−(O−アセチル)オキシム、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチル)オキシム、1−[9−エチル−6−[2−メチル−4−[1−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルオキシ]ベンゾイル]−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチル)オキシム又は1−(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)−1−[2−メチル−4−(1−メトキシプロパン−2−イルオキシ)フェニル]メタノン−1−(O−アセチル)オキシムが挙げられる。
【0088】
アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、1,7−ビス(アクリジン−9−イル)−n−ヘプタンが挙げられる。
【0089】
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ)−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタン(IV)又はビス(η−3−メチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタン(IV)が挙げられる。
【0090】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジベンジルケトン又はフルオレノンが挙げられる。
【0091】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンザルアセトフェノン又は4−アジドベンザルアセトフェノンが挙げられる。
【0092】
芳香族ケトエステル系光重合開始剤としては、例えば、2−フェニル−2−オキシ酢酸メチルが挙げられる。
【0093】
安息香酸エステル系光重合開始剤としては、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−エチル)ヘキシル、4−ジエチルアミノ安息香酸エチル又は2−ベンゾイル安息香酸メチルが挙げられる。
【0094】
(C)光重合開始剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上で、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。(C)光重合開始剤の含有量を0.5質量部以上とすることで、現像時の露光部の膜減りを低減することができ、50質量部以下とすることで、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。さらに本発明の感光性樹脂組成物は必要に応じて増感剤を含有してもよい。
【0095】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)着色剤を含有する。(D)着色剤とは、電子情報材料の分野で一般的に用いられる、有機顔料、無機顔料または染料をいう。(D)着色剤は、好ましくは有機顔料および/または無機顔料であるとよい。
【0096】
有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾもしくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニンもしくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロンもしくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、ベンゾフラノン系、又は金属錯体系顔料が挙げられる。
【0097】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット又はコバルトバイオレットが挙げられる。
【0098】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン又はポリメチン染料が挙げられる。
【0099】
赤色の顔料としては、例えば、ピグメントレッド9,48,97,122,123,144,149,166,168,177,179,180,192,209,215,216,217,220,223,224,226,227,228,240又は254が挙げられる(数値はいずれもカラーインデックス(以下、「CI」ナンバー))。
【0100】
橙色の顔料としては、例えば、ピグメントオレンジ13,36,38,43,51,55,59,61,64,65又は71が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0101】
黄色の顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12,13,17,20,24,83,86,93,95,109,110,117,125,129,137,138,139,147,148,150,153,154,166,168又は185が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0102】
紫色の顔料としては、例えば、ピグメントバイオレット19,23,29,30,32,37,40又は50が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0103】
青色の顔料としては、例えば、ピグメントブルー15,15:3,15:4,15:6,22,60又は64が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0104】
緑色の顔料としては、例えば、ピグメントグリーン7,10,36又は58が挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0105】
黒色の顔料としては、例えば、黒色有機顔料、および黒色無機顔料等が挙げられる。黒色有機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ベンゾフラノン系黒色顔料(国際公開第2010/081624号記載)、ペリレン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、またはアントラキノン系黒色顔料が挙げられる。これらの中でも特にベンゾフラノン系黒色顔料またはペリレン系黒色顔料が、より感度に優れたネガ型感光性樹脂組成物を得られる点で好ましい。ベンゾフラノン系黒色顔料やペリレン系黒色顔料は、可視領域は低い透過率で高い遮光性を実現しながら、紫外領域の透過率が相対的に高く、これにより露光時の化学反応が効率よく進むためである。ベンゾフラノン系黒色顔料およびペリレン系黒色顔料は、共に含有することもできる。黒色無機顔料としては、例えば、グラファイト、あるいは、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウムもしくは銀等の金属の微粒子、酸化物、複合酸化物、硫化物、窒化物又は酸窒化物が挙げられるが、高い遮光性を有する、カーボンブラック又はチタン窒化物が好ましい。
【0106】
白色の顔料としては、例えば、二酸化チタン、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト又は二酸化珪素が挙げられる。
【0107】
染料としては、例えば、ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243もしくは247、アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396もしくは397、リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49もしくは55、ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45もしくは46、ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100もしくは101、アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103もしくは126、リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33もしくは34、ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40もしくは48、ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161もしくは163、アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222もしくは227、リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41もしくは42、ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39もしくは40、アシッドグリーン16、アシッドブルー9,45,80,83,90もしくは185又はベーシックオレンジ21もしくは23(数値はいずれもCIナンバー)、Sumilan、Lanyl(登録商標)シリーズ(以上、いずれも住友化学工業(株)製)、Orasol(登録商標)、Oracet(登録商標)、Filamid(登録商標)、Irgasperse(登録商標)、Zapon、Neozapon、Neptune、Acidolシリーズ(以上、いずれもBASF(株)製)、Kayaset(登録商標)、Kayakalan(登録商標)シリーズ(以上、いずれも日本化薬(株)製)、Valifast(登録商標) Colorsシリーズ(オリエント化学工業(株)製)、Savinyl、Sandoplast、Polysynthren(登録商標)、Lanasyn(登録商標)シリーズ(以上、いずれもクラリアントジャパン(株)製)、Aizen(登録商標)、Spilon(登録商標)シリーズ(以上、いずれも保土谷化学工業(株)製)、機能性色素(山田化学工業(株)製)、Plast Color、Oil Colorシリーズ(有本化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0108】
有機EL表示装置のコントラストを向上させる目的においては、着色剤の色は可視光を全波長域に渡って遮光できる黒色が好ましく、有機顔料、無機顔料、および染料から選ばれる少なくとも1種以上を用い、硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いればよい。そのためには、上述の黒色有機顔料および黒色無機顔料を用いてもよいし、二種以上の有機顔料および染料を混合することで疑似黒色化してもよい。疑似黒色化する場合は、上述の赤色、橙色、黄色、紫色、青色、緑色などの有機顔料および染料から二種以上を混合することで得ることができる。なお、本発明の感光性樹脂組成物自体は必ずしも黒色である必要はなく、加熱硬化時に色が変化することで硬化膜が黒色を呈するような着色剤を用いてもよい。
【0109】
これらのうち、高い耐熱性を確保できる観点においては、有機顔料および/または無機顔料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。また、高い絶縁性を確保できる観点においては、有機顔料および/または染料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。すなわち、高い耐熱性と絶縁性を両立できる点で、有機顔料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。
【0110】
(D)着色剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20重質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上で、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。(D)着色剤の含有量を10質量部以上とすることで硬化膜に必要な着色性が得られ、300質量部以下とすることで保存安定性が良好となる。
【0111】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)熱架橋剤を含有することが好ましい。熱架橋剤とは、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物を指す。(E)熱架橋剤は(A)アルカリ可溶性樹脂またはその他添加成分を架橋し、硬化膜の耐薬品性および耐熱性を高めることができることから、含有することが好ましい。
【0112】
(E)熱架橋剤として、(E−1)メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計6以上20以下有する化合物を含有することが特に好ましい。メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計6以上とすることで、加熱処理工程において比較的低温で架橋反応が進行し、高架橋密度の硬化膜が得られる。これにより高弾性率で高硬度の硬化膜が得られ、蒸着マスクを画素分割層に接触させる際のパーティクル発生を抑制できる。一方、メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計20以下とすることで、感光性樹脂組成物の保存安定性を高めることができる。
【0113】
(E−1)メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計6以上20以下有する化合物の例としては、一般式(4)で表される化合物およびメラミンのメチロール基および/またはアルコキシメチル変性体を挙げることができる。
【0114】
【化7】
【0115】
一般式(4)中、R30は炭素数1〜6の炭化水素基、R31は、CHOR34(R34は水素原子または炭素数1〜6の有機基)を表す。保存安定性により優れることから、R34は炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、特にメチル基、エチル基であることが好ましい。R32は水素原子、メチル基またはエチル基、R33は以下に挙げられるいずれかの基を表す。
pは3または4の整数を表す。
【0116】
【化8】
【0117】
35〜R46は、水素原子、炭素数1〜20の有機基、Cl、Br 、I、Fまたは炭素数1〜20のフルオロ置換有機基を表す。
【0118】
一般式(4)で表される化合物としては、市販の化合物を用いることができ、例えば、HML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)が挙げられる。
【0119】
メラミンのメチロール基および/またはアルコキシメチル変性体としては、市販の化合物を用いることができ、例えば、NIKALAC(登録商標、以下同様) MW−100LM、NIKALAC MW−30HM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)、ユーバン(登録商標、以下同様)228、ユーバン2028(以上、商品名、三井化学(株)製)が挙げられる。
【0120】
(E−1)メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計6以上20以下有する化合物以外の(E)熱架橋剤として、メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計2以上5以下有する化合物の例としては、例えば、DML−PC、DML−PEP、DML−OC、DML−OEP、DML−34X、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−OCHP、DML−PFP、DML−PSBP、DML−POP、DML−MBOC、DML−MBPC、DML−MTrisPC、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BPC、DML−BisOC−P、DMOM−PC、DMOM−PTBP、DMOM−MBPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−HQ、TML−BP、TML−pp−BPF、TML−BPE、TML−BPA、TML−BPAF、TML−BPAP、TMOM−BP、TMOM−BPE、TMOM−BPA、TMOM−BPAF、TMOM−BPAP、(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC(登録商標、以下同様) MX−290、NIKALAC MX−280、NIKALAC MX−270、NIKALAC MX−279(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0121】
エポキシ基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト4000、エポライト3002(以上、共栄社化学(株)製)、デナコール(登録商標、以下同様)EX−212L、デナコールEX−214L、デナコールEX−216L、デナコールEX−850L、デナコールEX−321L(以上、ナガセケムテックス(株)製)、GAN、GOT(以上、日本化薬(株)製)、エピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート1007、YX8100−BH30、E1256、E4250、E4275(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロンEXA−9583、HP4032、N695、HP7200(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、VG3101(三井化学(株)製)、テピック(登録商標、以下同様)S、テピックG、テピックP(以上、日産化学工業(株)製)、NC6000(日本化薬(株)製)、エポトートYH−434L(東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0122】
オキセタニル基を少なくとも2つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、エタナコール(登録商標、以下同様)EHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上、宇部興産(株)製)、オキセタン化フェノールノボラックなどが挙げられる。
【0123】
(E)熱架橋剤は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0124】
(E)熱架橋剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。熱架橋剤の含有量を1質量部以上とすることで、硬化膜の耐薬品性や硬度を高めることができ、50質量部以下とすることで、感光性樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
【0125】
本発明の感光性樹脂組成物は、着色剤として顔料を用いる場合は(F)分散剤を含有することが好ましい。(F)分散剤を含有することで、着色剤を樹脂組成物中に均一かつ安定に分散させることができる。(F)分散剤は、特に制限されるものではないが、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤又はカルボジイミド系分散剤が挙げられる。より具体的には、高分子分散剤とは、主鎖がポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等からなり、側鎖または主鎖末端にアミン、カルボン酸、リン酸、アミン塩、カルボン酸塩、リン酸塩等の極性基を有する高分子化合物のことをいう。極性基が顔料に吸着し、主鎖ポリマの立体障害により顔料の分散が安定化される役割を果たす。
【0126】
(F)分散剤は、アミン価のみを有する(高分子)分散剤、酸価のみを有する(高分子)分散剤、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、又は、アミン価も酸価も有さない(高分子)分散剤に分類されるが、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、アミン価のみを有する(高分子)分散剤が好ましく、アミン価のみを有する(高分子)分散剤がより好ましい。
【0127】
アミン価のみを有する高分子分散剤の具体例としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)102,160,161,162,2163,164,2164,166,167,168,2000,2050,2150,2155,9075,9077,BYK−LP N6919,BYK−LP N21116もしくはBYK−LP N21234(以上、いずれもビックケミー社製)、EFKA(登録商標)4015,4020,4046,4047,4050,4055,4060,4080,4300,4330,4340,4400,4401,4402,4403もしくは4800(以上、いずれもBASF社製)、アジスパー(登録商標)PB711(味の素ファインテクノ社製)又はSOLSPERSE(登録商標)13240,13940,20000,71000又は76500(以上、いずれもルーブリゾール社製)が挙げられる。
【0128】
アミン価のみを有する高分子分散剤の中でも、より微細な顔料分散が可能で、感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の表面粗度が小さくなる、すなわち膜表面の平滑性が良好となる点で、顔料吸着基として3級アミノ基またはピリジン、ピリミジン、ピラジン、イソシアヌレート等の含窒素ヘテロ環等の塩基性官能基を有する高分子分散剤が好ましい。3級アミノ基または含窒素ヘテロ環の塩基性官能基を有する高分子分散剤としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)164,167,BYK−LP N6919もしくはBYK−LP N21116又はSOLSPERSE(登録商標)20000が挙げられる。
【0129】
アミン価及び酸価を有する高分子分散剤としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)142,145,2001,2010,2020,2025もしくは9076、Anti−Terra(登録商標)−205(以上、いずれもビックケミー社製)、アジスパー(登録商標)PB821,PB880もしくはPB881(以上、いずれも味の素ファインテクノ社製)又はSOLSPERSE(登録商標)9000,11200,13650,24000,24000SC,24000GR,32000,32500,32550,326000,33000,34750,35100,35200,37500,39000もしくは56000(以上。いずれもルーブリゾール社製)が挙げられる。
【0130】
着色剤に対する分散剤の割合は、耐熱性を維持しながら分散安定性を向上させるため、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また100質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0131】
本発明の感光性樹脂組成物は有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、例えば、エーテル類、アセテート類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類又はアルコール類の化合物が挙げられる。
【0132】
より具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフラン等のエーテル類、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテートもしくは1,6−ヘキサンジオールジアセテート等のアセテート類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンもしくは3−ヘプタノン等のケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸メチルもしくは2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルもしくは2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドもしくはN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、又は、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールもしくはジアセトンアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0133】
着色剤として顔料を用いている場合、顔料を分散安定化させるため、有機溶剤としてアセテート類の化合物を用いることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物が含有する全ての有機溶剤に占めるアセテート類の化合物の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0134】
基板の大型化に伴い、ダイコーティング装置による塗布が主流になりつつあるが、該塗布における好適な揮発性及び乾燥性を実現するためには、二以上の化合物を混合した有機溶剤が好ましい。本発明の感光性樹脂組成物の感光性樹脂膜の膜厚を均一にし、表面の平滑性及び粘着性を良好なものとするため、全ての有機溶剤に占める沸点が120〜180℃の化合物の割合は、30質量%以上が好ましい。また95質量%以下が好ましい。
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対する有機溶剤の割合は、全固形分100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましい。また2000質量部以下が好ましく、1000質量部以下がより好ましい。
【0136】
本発明の感光性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有することができる。連鎖移動剤を含有することで、加熱硬化後の膜の断面形状をさらに低テーパーにできる。本発明の感光性樹脂組成物は、露光時、光重合開始剤から発生したラジカルにより(B)ラジカル重合性化合物が連鎖反応してポリマー化することで露光部が硬化する。連鎖移動剤は成長ポリマー鎖からラジカルを受け取り、ポリマーの伸長を止めるが、ラジカルを受け取った連鎖移動剤はモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる。このため、連鎖移動剤を含有することで、(B)ラジカル重合性化合物が連鎖反応して生成したポリマーの分子量を相対的に低く抑えることができ、これにより加熱硬化時の膜流動性を高めることができるため、加熱硬化後の膜の断面形状をさらに低テーパーにできる。
【0137】
連鎖移動剤としては、多官能チオールを挙げることができる。多官能チオールとしては、チオール(SH)基を2個以上有する化合物であればよい。
【0138】
多官能チオール化合物の例としては、エチレングリコールビスチオプロピオネート(EGTP)、ブタンジオールビスチオプロピオネート(BDTP)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、カレンズ(登録商標、以下同様)MT BD1、カレンズ MTPE1、カレンズMT NR1(以上、昭和電工(株)製)などが挙げられる。
【0139】
連鎖移動剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。連鎖移動剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、加熱硬化後の断面形状をさらに低テーパーにすることができ、20質量部以下とすることで、高い耐熱性を維持できる。
【0140】
本発明の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤とは、露光時に発生したラジカル、又は、露光時のラジカル重合により得られるポリマー鎖の、ポリマー生長末端のラジカルを捕捉し、安定ラジカルとして保持することで、ラジカル重合を停止することが可能な化合物をいう。
【0141】
重合禁止剤を適量含有させることで、現像後の残渣発生を抑制し、現像後の解像度を向上させることができる。これは、露光時に発生した過剰量のラジカル、又は、高分子量のポリマー鎖の生長末端のラジカルを重合禁止剤が捕捉することで、過剰なラジカル重合の進行を抑制するためと推測される。
【0142】
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤が好ましい。フェノール系重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、1,4−ヒドロキノン、1,4−ベンゾキノン、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ヒドロキノン若しくは2,5−ジ−t−アミル−1,4−ヒドロキノン、または、IRGANOX(登録商標)1010、1035、1076、1098、1135、1330、1726、1425、1520、245、259、3114、565、295(以上、いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0143】
重合禁止剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましい。また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。重合禁止剤の含有量を0.01質量部以上とすることで、現像後の解像度を向上させることができ、10質量部以下とすることで、露光時の感度を高く維持できる。
【0144】
本発明の感光性樹脂組成物は、密着改良剤を含有することができる。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハー、ITO、SiO、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0145】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は市販の化合物を用いることができ、具体的にはシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、大日本インキ工業社の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどが挙げられ、アクリル系および/またはメタクリル系の重合物からなる界面活性剤としては、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
界面活性剤の含有量は(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.002質量部以上がより好ましい。また1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0147】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の製造方法について説明する。例えば、前記(A)〜(D)成分と、必要により(E)熱架橋剤、(F)分散剤、重合禁止剤、熱架橋剤、密着改良剤、界面活性剤などを有機溶剤に溶解させることにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温〜80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。また、界面活性剤や一部の密着改良剤など、撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することで、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0148】
また(D)着色剤として顔料を用いる場合には分散機を用いて、(A)成分の樹脂溶液に顔料を含む着色剤を分散させる方法が挙げられる。
【0149】
分散機としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー、3本ロールミル又は高速度衝撃ミルが挙げられるが、分散効率化及び微分散化のため、ビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、コボールミル、バスケットミル、ピンミル又はダイノーミルが挙げられる。ビーズミルのビーズとしては、例えば、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ又はジルコンビーズが挙げられる。ビーズミルのビーズ径としては、0.01mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましい。また5.0mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。着色剤の一次粒子径及び一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径が小さい場合には、0.03mm以上、0.10mm以下の微小なビーズが好ましい。この場合には、微小なビーズと分散液とを分離することが可能な、遠心分離方式によるセパレーターを備えるビーズミルが好ましい。
【0150】
一方で、サブミクロン程度の粗大な粒子を含む着色剤を分散させる場合には、十分な粉砕力が得られるため、0.10mm以上のビーズが好ましい。
【0151】
得られた樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.05μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、ポリエチレンやナイロンが好ましい。感光性樹脂組成物中に顔料を含有する場合は、顔料の粒子径より大きな孔径の濾過フィルターを用いることが好ましい。
【0152】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法について詳しく説明する。
硬化膜の製造方法は、
(1)上述した感光性樹脂組成物を基板に塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程、
(2)該感光性樹脂膜を乾燥する工程、
(3)乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程、
(4)露光した感光性樹脂膜を現像する工程および
(5)現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程
とを含む。
【0153】
感光性樹脂膜を形成する工程では、本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで塗布し、感光性樹脂組成物の感光性樹脂膜を得る。塗布に先立ち、感光性樹脂組成物を塗布する基材を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20質量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。
【0154】
感光性樹脂膜を乾燥する工程では、塗布した感光性樹脂膜を必要に応じて減圧乾燥処理を施し、その後、ホットプレート、オーブン、赤外線などを用いて、50℃〜180℃の範囲で1分間〜数時間の熱処理を施すことで感光性樹脂膜を得る。
【0155】
次に、乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程について説明する。感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するフォトマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。化学線を照射した後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50〜180℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒〜数時間が好ましい。露光後ベーク時間が上記範囲内であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
【0156】
露光した感光性樹脂膜を現像し、パターンを形成する工程では、露光した感光性樹脂膜を、現像液を用いて現像し露光部以外を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0157】
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0158】
次に現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程を行う。加熱処理により残留溶剤や耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体を含有する場合、加熱処理によりイミド環、オキサゾール環を形成できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。また、熱架橋剤を含有する場合は、加熱処理により熱架橋反応を進行させることができ、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間〜5時間実施する。一例としては、150℃、250℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より300℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明においての加熱処理条件としては180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、230℃以上がさらに好ましく、250℃以上が特に好ましい。また加熱処理条件は、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。
【0159】
本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法は、フォトマスクとして、ハーフトーンフォトマスクを用いることが好ましい。
【0160】
ハーフトーンフォトマスクとは、例えば図3のように、透光部16及び遮光部15を含むパターンを有するフォトマスクであり、透光部16と遮光部15の間に、透過率が透光部16の値より低く、かつ透過率が遮光部15の値より高い、半透光部14を有するフォトマスクをいう。ハーフトーンフォトマスクを用いて露光することで、現像後及び熱硬化後に段差形状を有するパターンを形成することが可能となる。なお、前記透光部を介して活性化学線を照射した硬化部は、前記厚膜部に相当し、前記半透光部を介して活性化学線を照射したハーフトーン露光部は、前記薄膜部に相当する。
【0161】
ハーフトーンフォトマスクとしては、前記透光部の透過率を(%TFT)とした場合、前記半透光部の透過率(%THT)は、(%TFT)の10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、25%以上が特に好ましい。半透光部の透過率(%THT)が上記範囲内であると、段差形状を有する硬化パターン形成時の露光量を低減できることで、タクトタイム短縮が可能となる。一方、半透光部の透過率(%THT)は、(%TFT)の60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、45%以下が特に好ましい。半透光部の透過率(%THT)が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光素子の劣化を抑制することができる。
【0162】
本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法は、フォトマスクとして、透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いても構わない。
【0163】
透光部の領域が異なる二つ以上のフォトマスクを用いて、二回以上に分けて露光することで、ハーフトーンフォトマスクを用いた場合の硬化部とハーフトーン露光部に相当する、二つ以上の露光部を形成することができる。そのため、段差形状を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0164】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる、段差の数が2の段差形状を有する硬化膜の断面の一例を、図1に示す。基板1上に段差形状を有する硬化膜2が形成されており、厚膜部3は、前記ハーフトーンフォトマスクを介して露光した際の透光部エリアに相当し、硬化パターンの最大の膜厚を有する。一方、薄膜部4、5は、前記ハーフトーンフォトマスクを介して露光した際の半透光部エリアに相当し、厚膜部3の厚さより小さい膜厚を有する。
【0165】
基板1と硬化膜の薄膜部4、5との傾斜角はそれぞれテーパー角θA、θD、硬化膜の薄膜部4、5と厚膜部3との傾斜角はそれぞれテーパー角θB、θCで表される。前記θA、θB、θC、θDは、電極のエッジ部分における電界集中を抑制する点で60°以下、さらに50°以下、さらに40°以下であることが好ましく、有機EL表示素子を高密度に配することができる点で5°以上、さらに10°以上であることが好ましい。
【0166】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる、段差形状を有する硬化膜の段差の数は、2以上であり、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。段差の数が上記範囲内であると、厚膜部と薄膜部の膜厚差、および任意の段差の両側で隣接する薄膜部間の膜厚差を十分に大きくできることで、発光層を形成する際の蒸着マスクとの接触面積を小さくでき、それにより、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できるとともに、発光素子の劣化を抑制することができる。ここで例えば、段差の数が3であれば、最大の膜厚を有する厚膜部と、それより小さい膜厚を有する薄膜部と、さらに小さい膜厚を有する薄膜部が存在することになる。
【0167】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる、段差形状を有する硬化膜2の、厚膜部3の膜厚を(TFT)μm、薄膜部4の膜厚を(THT)μmそして厚膜部3の膜厚(TFT)と薄膜部4(THT)との膜厚差を(ΔTFT−HT)μmとする場合、前記(TFT)、(THT)および(ΔTFT−HT)が、式(α)〜(γ)で表される関係を満たすことが好ましい。
【0168】
ここで、厚膜部3の膜厚(TFT)は厚膜部3の最も厚い部分の膜厚であり、薄膜部4の膜厚は薄膜部4の基板に対し水平な部分の平均の膜厚である。そして、基板に対し水平な部分とは、基板に対する傾斜角が3°以下の領域を指す。なお、段差の数が3以上有する場合は、全ての薄膜部が式(α)〜(γ)で表される関係を満たすことが好ましい。
1.0≦(TFT)≦5.0 (α)
0.2≦(THT)≦4.0 (β)
0.5≦(ΔTFT−HT)≦4.0 (γ)
厚膜部の膜厚(TFT)は、1.0μm以上が好ましく、1.2μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましく、1.7μm以上が特に好ましく、2.0μm以上が最も好ましい。厚膜部の膜厚(TFT)が上記範囲内であると、薄膜部との膜厚差を確保しやすい。一方、厚膜部の膜厚(TFT)は、5.0μm以下が好ましく、4.5μm以下がより好ましく、4.0μm以下がさらに好ましく、3.5μm以下が特に好ましく、3.0μm以下が最も好ましい。厚膜部の膜厚(TFT)が上記範囲内であると、感光性樹脂膜の膜厚を薄くできることから、露光量を低減でき、タクトタイム短縮が可能となる。
【0169】
厚膜部3に少なくとも1つの段差形状を介して配置された薄膜部4の膜厚(THT)は、0.2μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましく、0.7μm以上が特に好ましく、1.0μm以上が最も好ましい。薄膜部の膜厚(THT)が上記範囲内であると、画素分割層として十分な膜厚を確保できるため、絶縁不足による発光異常などの有機EL素子の不良を防ぐことができる。一方、薄膜部4の膜厚(THT)は、4.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましく、2.5μm以下が特に好ましく、2.0μm以下が最も好ましい。薄膜部の膜厚(THT)が上記範囲内であると、厚膜部との膜厚差を確保しやすい。
【0170】
厚膜部の膜厚(TFT)と薄膜部の膜厚(THT)との膜厚差(ΔTFT−HT)μmは、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、1.2μm以上が特に好ましく、1.5μm以上が最も好ましい。厚膜部の膜厚と薄膜部の膜厚との膜厚差が上記範囲内であると、発光層を形成する際の蒸着マスクと画素分割層の薄膜部との接触を防ぐことができ、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できる。一方、厚膜部の膜厚と薄膜部の膜厚との膜厚差(ΔTFT−HT)μmは、4.0μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましく、2.5μm以下が特に好ましく、2.0μm以下が最も好ましい。厚膜部の膜厚と薄膜部の膜厚との膜厚差が上記範囲内であると、感光性樹脂膜の膜厚を薄くできることから、露光量を低減でき、タクトタイム短縮が可能となる。
【0171】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の面積全体に占める厚膜部の割合は5%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、12%以上が特に好ましく、15%以上が最も好ましい。ここでいう厚膜部の面積とは、図1の厚膜部3で示す領域、すなわち基板に対し水平な領域と基板に対し傾斜を有する領域の合計の面積を指す。厚膜部の面積の割合が上記範囲内であると、有機EL表示装置においてカバーガラスなどの封止部と画素分割層の厚膜部との接触面積を十分確保でき、機械強度を高めることができる。一方、硬化膜の面積全体に占める厚膜部の面積の割合は50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、35%以下が特に好ましく、30%以下が最も好ましい。厚膜部の面積の割合が上記範囲内であると、発光層を形成する際の蒸着マスクと画素分割層の薄膜部との接触を防ぐことができ、パーティクル発生によるパネルの歩留まり低下を抑制できる。 本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、TFTが形成された基板、駆動回路上の平坦化層、第一電極上の画素分割層および表示素子をこの順に有する表示装置の平坦化層や画素分割層として、好適に用いられる。すなわち、平坦化層および/または画素分割層は、硬化膜を具備する素子となる。かかる構成の表示装置としては、液晶表示装置や有機EL表示装置などが挙げられる。なかでも、平坦化層や画素分割層に対して高耐熱性や低アウトガス性が要求される有機EL表示装置に特に好適に用いられる。本発明の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜は、平坦化層、画素分割層のいずれか一方のみに用いても良いし、両方に用いても良いが、特に段差形状が求められる画素分割層に特に好適に用いられる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は有機EL表示装置における画素分割層の段差形状を一括形成するために用いられることが好ましい。
【0172】
加えて、本発明の感光性樹脂組成物は、(D)着色剤を含有するので、電極配線の可視化防止又は外光反射低減が可能となり、画像表示におけるコントラストを向上させることができる。したがって、本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜を、有機EL表示装置の画素分割層として用いることで、発光素子の光取り出し側に、偏光板及び1/4波長板を形成することなく、コントラストを向上させることができる。
【0173】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、厚さ1.0μmにおける光学濃度(OD値)が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下であるとよい。光学濃度を0.3以上とすることで表示装置のコントラスト向上に寄与し、3.0以下とすることでパターン開口部残渣を低減することができる。
【0174】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、押込み弾性率が好ましくは7.0GPa以上、より好ましくは7.5GPa以上、さらに好ましくは8.0GPa以上、好ましくは12.0GPa以下、より好ましくは11.0GPa以下、さらに好ましくは10.0GPa以下であるとよい。押込み弾性率を上述の範囲とすることで、硬化膜の耐傷性を向上させることができ、硬化膜を有機EL表示装置の画素分割層に用いる場合、蒸着マスクを画素分割層に接触させる際のパーティクル発生を抑制できる。押込み弾性率は、ナノインデンテーション法でISO14577に準拠した方法で算出される。測定は硬化膜の厚膜部で行う。測定条件の好ましい例として、以下の方法を挙げることができる。
【0175】
測定装置としてエリオニクス社製超微小押込み硬さ試験機ENT−2100、圧子としてバーコビッチ圧子(三角錐、対稜角115°)を用い、測定温度25℃にて試験数n=5で測定を行い、平均値を算出する。最大試験荷重は圧子の押込み深さが硬化膜の膜厚の10%以下となるような条件で行う。10%を超えると下地基材の影響を受け、硬化膜の押込み弾性率が不正確となるためである。
【0176】
アクティブマトリックス型の表示装置は、ガラスなどの基板上にTFTとTFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その上に凹凸を覆うようにして平坦化層を有し、さらに平坦化層上に表示素子が設けられている。表示素子と配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールを介して接続される。
【0177】
図2に平坦化層と画素分割層を形成したTFT基板の断面図を示す。基板6上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT7が行列状に設けられており、このTFT7を覆う状態でTFT絶縁膜8が形成されている。また、このTFT絶縁膜8の下にTFT7に接続された配線9が設けられている。さらにTFT絶縁膜8上には、配線9を開口するコンタクトホール10とこれらを埋め込む状態で平坦化層11が設けられている。平坦化層11には、配線9のコンタクトホール10に達するように開口部が設けられている。そして、このコンタクトホール10を介して、配線9に接続された状態で、平坦化層11上に電極12が形成されている。ここで、電極12は、表示素子(例えば有機EL素子)の電極となる。そして電極12の周縁を覆うように画素分割層13が形成される。この有機EL素子は、基板6の反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板6側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。
【実施例】
【0178】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例14〜16は、参考例1〜3と読み替えるものとする。実施例中の感光性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
【0179】
(1)平均分子量測定
実施例で用いた樹脂(P1)〜(P4)の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置Waters2690−996(日本ウォーターズ(株)製)を用い、展開溶媒をN−メチル−2−ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)として測定し、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)を算出した。
【0180】
(2)膜厚測定
表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;(株)東京精密)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sとして、プリベーク後、現像後およびキュア後の膜厚を測定した。
【0181】
(3)感度評価
各実施例の感光性樹脂組成物をOA−10ガラス板(日本電気硝子(株)製)上にスピンコート法により任意の回転数で塗布し感光性樹脂膜を得て、乾燥工程として100℃のホットプレート上で2分間プリベークし、膜厚3.5μmの感光性樹脂膜を得た。次に両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用い、感度測定用のグレースケールマスク(フォトマスク)を介し、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)でパターン露光した。その後、露光した感光性樹脂膜を自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで純水で30秒間リンスした。前記の方法で得た現像した感光性樹脂膜のパターンを、FDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)社製)を用いて倍率50倍で観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンを1対1の幅に形成する露光量(これを最適露光量という)を求め、これを感度とした。
【0182】
(4)硬化膜の断面形状評価
(3)感度評価で得られた現像した感光性樹脂膜付き基板を窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュア(加熱処理)して硬化膜を得た。得られた硬化膜の20μmパターンラインについて、断面形状を走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、「S−4800型」)を用いて観察し、図4における基板17と絶縁層18の斜面部分のなす角度のうち最大の角度をテーパー角θとして、θ値を計測した。
【0183】
(5)硬化膜の段差形状評価
各実施例の感光性樹脂組成物をOA−10ガラス板(日本電気硝子(株)製)上にスピンコート法により任意の回転数で塗布し、100℃のホットプレート上で2分間プリベークし、膜厚3.5μmの膜を得た。次に両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用い、図3に示す透光部16及び遮光部15を有し、半透光部14の透過率が30%のハーフトーンフォトマスクを介し、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で(3)感度評価で得られた最適露光量でパターン露光した。用いたハーフトーンフォトマスクの線幅は、半透光部14、遮光部15、透光部16がそれぞれ12μmである。その後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで純水で30秒間リンスした。次に、得られた現像した感光性樹脂膜付き基板を窒素雰囲気下のオーブンで以下の3条件でそれぞれキュアした。
条件1:250℃/60分間
条件2:270℃/60分間
条件3:300℃/60分間
得られた硬化膜の断面形状を走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、「S−4800型」)を用いて観察し、段差形状が得られ、薄膜部において基板に対する傾斜角が3°以下の領域が含まれているものを「良好」、キュア時のパターン流動により段差形状が失われ、薄膜部において基板に対する傾斜角が3°以下の領域が含まれていないものを「不良」と判断した。段差形状が得られた「良好」な例を図5に、段差形状が失われた「不良」な例を図6に示す。条件1〜3のすべてで「良好」なものをA、条件1,2のみ「良好」なものをB、条件1のみ「良好」なものをC、全条件で「不良」なものをDとして判定した。
【0184】
(6)段差形状を有する硬化膜の膜厚評価
(5)硬化膜の段差形状評価で条件1のキュアで得られた硬化膜において、厚膜部の膜厚(TFT)、薄膜部の膜厚(THT)および厚膜部と薄膜部との膜厚差(ΔTFT−HT)を(2)膜厚測定に記載の方法で測定した。ただし、(5)硬化膜の段差形状評価で「良好」な段差形状が得られた場合に限り、そうでない場合は測定不能とした。
【0185】
(7)キュア前後のパターン寸法変化
(5)硬化膜の段差形状評価の硬化膜作製工程において、現像後の開口部のパターン寸法を(CDDEV)、条件1のキュア後の同一部分のパターン寸法を(CDCURE)とした場合、現像後とキュア後のパターン寸法変化量(CDDEV−CDCURE)を、FDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)社製)を用いて倍率50倍で測定した。
【0186】
(8)硬化膜の押込み弾性率評価
(4)硬化膜の断面形状評価で得られた硬化膜の押込み弾性率を、超微小押し込み硬さ試験機ENT−2100((株)エリオニクス製)を用いて、以下の条件で測定数n=5で測定し、その平均値を算出した。
圧子形状:バーコビッチ
荷重速度:0.02mN/秒
最大試験荷重:0.1mN
最大試験荷重保持時間:10秒
除荷速度:0.02mN/秒
測定温度:25℃。
【0187】
(9)硬化膜の吸水率評価
重量Wをあらかじめ測定した6インチシリコンウェハー上に、各実施例の感光性樹脂組成物をスピンコート法により任意の回転数で塗布し感光性樹脂膜付き基板を得て、乾燥工程として100℃のホットプレート上で2分間プリベークし、膜厚3.5μmの感光性樹脂膜付き基板を得た。次に得られた感光性樹脂膜付き基板を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用い、感度測定用のグレースケールマスク(フォトマスク)を介し、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)で(3)感度評価で得られた最適露光量で全面露光した。その後、露光した感光性樹脂膜付き基板を自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で90秒間シャワー現像し、次いで純水で30秒間リンスした。次に、現像した感光性樹脂膜付き基板を窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュア(加熱処理)して硬化膜付き基板を得た。得られた硬化膜付き基板の重量Wを測定した後、超純水中に23℃条件下で24時間浸漬させた。超純水中から取り出した後、硬化膜付き基板に付着した水分を十分に拭き取った後、重量Wを測定した。そして、以下の式(X)により吸水率(%)を求めた。
吸水率 = (W−W)/(W−W)×100 ・・・ 式(X)。
【0188】
(10)硬化膜の光学濃度評価
光学濃度計(361TVisual;X−Rite社製)を用いて、(5)硬化膜の段差形状評価の条件1(250℃/60分間)で得られた硬化膜の入射光及び透過光の強度をそれぞれ測定し、以下の式(Y)より遮光性OD値を算出した。
OD値 = log10(I/I) ・・・ 式(Y)
:入射光強度
I:透過光強度。
【0189】
(11)有機EL表示特性
<有機EL表示装置の作製方法>
図7に使用した有機EL表示装置の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板19に、スパッタ法によりITO透明導電膜10nmを基板全面に形成し、エッチングして、第一電極20を形成すると同時に、第二電極を取り出すための補助電極21も形成した。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。次にこの基板全面に、各実施例に即した感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、100℃のホットプレート上で2分間プリベークして膜を形成した。この膜にフォトマスクを介してUV露光した後、2.38%TMAH水溶液で現像し、露光部分のみを溶解させた後、純水でリンスし、パターンを得た。得られたパターンを、窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュアした。このようにして、幅70μm、長さ260μmの開口部が幅方向にピッチ155μm、長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の画素分割層22を、基板有効エリアに限定して形成した。なお、この開口部が最終的に発光画素となる。また、基板有効エリアは16mm四方、画素分割層の厚さは約1.0μmであった。
【0190】
次に、第一電極20、補助電極21、画素分割層22を形成した無アルカリガラス基板19を用いて有機EL表示装置の作製を行った。前処理として窒素プラズマ処理をおこなった後、真空蒸着法により発光層を含む有機EL層23を形成した。なお、蒸着時の真空度は1×10−3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として化合物(HT−1)を10nm、正孔輸送層として化合物(HT−2)を50nm蒸着した。次に発光層に、ホスト材料としての化合物(GH−1)とドーパント材料としての化合物(GD−1)を、ドープ濃度が体積比10%になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として化合物(ET−1)とLiQを体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層23で用いた化合物の構造を以下に示す。
【0191】
【化9】
【0192】
次に、LiQを2nm蒸着した後、MgとAgを体積比10:1で10nm蒸着して第二電極24とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でエポキシ樹脂系接着剤を用いてキャップ状ガラス板を接着することで封止をし、1枚の基板上に5mm四方の発光装置を4つ作製した。なお、ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0193】
<初期発光評価>
上述の方法で作製した有機EL表示装置を、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、非発光、輝度ムラ、発光面積の縮小などの発光特性異常がないか確認した。
【0194】
<耐久性評価>
上述の方法で作製した有機EL表示装置を、80℃で500時間保持する耐久性試験を実施した後、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、非発光、輝度ムラ、発光面積の縮小などの発光特性異常がないか確認した。
【0195】
実施例および比較例で用いた化合物について以下に示す。
【0196】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0197】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0198】
【化10】
【0199】
合成例2 アルカリ可溶性樹脂(P1)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF58.6g(0.16モル)、末端封止剤として3−アミノフェノール8.7g(0.08モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)300gに溶解した。ここにODPA62.0g(0.20モル)をNMP100gとともに加えて、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水5Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリイミド(P1)を得た。ポリイミド(P1)の数平均分子量は8200であった。
【0200】
合成例3 アルカリ可溶性樹脂(P2)の合成
乾燥窒素気流下、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以降ODPAと呼ぶ)62.0g(0.20モル)をN−メチル−2−ピロリドン(以降NMPと呼ぶ)500gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物96.7g(0.16モル)をNMP100gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として3−アミノフェノール8.7g(0.08モル)をNMP50gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール47.7g(0.40モル)をNMP100gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリイミド前駆体(P2)を得た。ポリイミド前駆体(P2)の数平均分子量は11000であった。
【0201】
合成例4 アルカリ可溶性樹脂(P3)の合成
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸41.3g(0.16モル)、と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール43.2g(0.32モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物0.16モルとBAHF73.3g(0.20モル)をNMP570gに溶解させ、その後75℃で12時間反応させた。次にNMP70gに溶解させた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物13.1g(0.08モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体(P3)を得た。PBO前駆体(P3)の数平均分子量は8500であった。
【0202】
合成例5 アルカリ可溶性樹脂(P4)の合成
公知の方法(特許第3120476号;実施例1)により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(質量比30/40/30)を合成した。該共重合体100質量部に対し、グリシジルメタクリレート40質量部を付加させ、精製水で再沈、濾過及び乾燥することにより、重量平均分子量(Mw)15000、酸価110(mgKOH/g)のラジカル重合性モノマーを含む重合体であるアクリル樹脂(P4)を得た。
【0203】
合成例6 光酸発生剤の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表される光酸発生剤を得た。
【0204】
【化11】
【0205】
その他のアルカリ可溶性樹脂
V259ME;カルド樹脂のPGMEA溶液(固形分濃度56.5質量%、新日鐵化学(株)製)。
【0206】
<(B)ラジカル重合性化合物>
ADDM;1,3−アダマンタンジメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)単独重合体のTgは245[℃]、官能基数は2
DCP−A;“ライトアクリレート”(登録商標)DCP−A(ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、共栄社化学(株)製)単独重合体のTgは190[℃] 、官能基数は2
DCP−M;ライトエステルDCP−M(ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、共栄社化学(株)製)、単独重合体のTgは214[℃] 、官能基数は2
DPCA−60;“KAYARAD”(登録商標)DPCA−60(ペンチレンカルボニル構造を分子内に6個有する、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製)、単独重合体のTgは60[℃] 、官能基数は6
DPHA;“KAYARAD”(登録商標)DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製)、単独重合体のTgは80[℃] 、官能基数は6
M−315;“アロニックス”(登録商標)M−315(イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、東亞合成(株)製)、単独重合体のTgは272[℃] 、官能基数は3
PE−4A;“ライトアクリレート”(登録商標)PE−4A(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、共栄社化学(株)製)、単独重合体のTgは103[℃] 、官能基数は4。
【0207】
<(C)光重合開始剤>
NCI−831:“アデカアークルズ”(登録商標)NCI−831(オキシムエステル系光重合開始剤、(株)ADEKA製)。
【0208】
<(D)着色剤>
BLACK S0084;“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0084(ペリレン系黒色顔料、BASF製)
BLACK S0100CF;“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(ベンゾフラノン系黒色顔料、BASF製)
D.Y.201;C.I.ディスパースイエロー201(黄色染料)
P.B.15:6;C.I.ピグメントブルー15:6(青色顔料)
P.R.254;C.I.ピグメントレッド254(赤色顔料)
P.Y.139;C.I.ピグメントイエロー139(黄色顔料)
S.B.63;C.I.ソルベントブルー63(青色染料)
S.R.18;C.I.ソルベントレッド18(赤色染料)
TPK−1227;スルホン酸基を導入する表面処理がされたカーボンブラック(CABOT製)。
【0209】
<(E)熱架橋剤>
HMOM−TPHAP;(メトキシメチル基を6個有する化合物、本州化学工業(株)製)
MW−100−LM;“ニカラック”(登録商標)MW−100−LM(メトキシメチル基を6個有する化合物、日本カーバイド工業(株)製)
MX−270;“ニカラック”(登録商標)MX−270(メトキシメチル基を4個有する化合物、日本カーバイド工業(株)製)
VG3101L;“テクモア”(登録商標)VG3101L(エポキシ基を3個有する化合物、(株)プリンテック製)。
【0210】
<(F)分散剤>
S−20000;“SOLSPERSE”(登録商標)20000(ポリエーテル系分散剤、Lubrizol製)。
【0211】
<溶剤>
GBL;γ−ブチロラクトン
MBA;3−メトキシブチルアセテート。
【0212】
<顔料分散液の調整>
調製例1
アルカリ可溶性樹樹脂として、合成例2で得られた(P1)を33.3gに溶剤としてMBAを117g秤量して混合し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に分散剤としてSOLSPERSE 20000を33.3g、溶剤としてMBAを828g、着色剤として、Irgaphor Black S0100CFを100g秤量して混合し、高速分散機(ホモディスパー 2.5型;プライミクス(株)製)を用いて20分攪拌し、予備分散液を得た。顔料分散用のセラミックビーズとして、直径0.30mmのジルコニア粉砕ボール(YTZ;東ソー(株)製)が75%充填された遠心分離セパレーターを具備する、ウルトラアペックスミル(UAM−015;寿工業(株)製)に、得られた予備分散液を供給し、ローター周速7.0m/sで3時間処理して、固形分濃度15質量%、着色剤/樹脂=60/40(質量比)の顔料分散液(Dsp−1)を得た。
【0213】
調製例2〜8
調製例1と同様の方法で、化合物の種類と量は表1記載の通りで分散液Dsp−2〜8を得た。
【0214】
【表1】
【0215】
実施例1
黄色灯下、(A)アルカリ可溶性樹脂として合成例2で得られた(P1)を8.0g、(B)ラジカル重合性化合物としてDCP−Mを3.0gとDPCA−60を3.0g、(C)光重合開始剤としてNCI−831を1.5g、(E)熱架橋剤としてMW−100−LMを2.0g秤量し、これにMBA99.1g添加し、攪拌、溶解させて予備調合液を得た。次に、調製例1で得られた顔料分散液(Dsp−1)を66.7g秤量し、ここに、上記で得られた予備調合液を添加して攪拌し、均一溶液とした。ここで、秤量した顔料分散液(Dsp−1)に含まれる(A)アルカリ可溶性樹脂の(P1)は2.0g、(D)着色剤のBLACK S0100CFは6.0g、(F)分散剤のS−20000は2.0g、MBAは56.7gである。その後、得られた溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物Aを得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、上述(3)〜(10)の評価を実施した。
【0216】
実施例2〜15、17〜20、比較例1〜4
実施例1と同様の方法で、化合物の種類と量は表2〜4に記載の通りで感光性樹脂組成物B〜P、R〜U、感光性樹脂組成物a〜dを得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、上述(3)〜(10)の評価を実施した。
【0217】
実施例16
黄色灯下、(A)アルカリ可溶性樹脂として合成例2で得られた(P1)を10.0g、(B)ラジカル重合性化合物としてDCP−Mを3.0gとDPCA−60を3.0g、(C)光重合開始剤としてNCI−831を1.5g、(D)着色剤として染料のS.B.63を3.0g、S.R.18を2.0g、D.Y.201を1.0g、(E)熱架橋剤としてMW−100−LMを2.0g秤量し、これにGBL144.5gを添加し、攪拌、溶解させた。その後、得られた溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物Qを得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、上述(3)〜(10)の評価を実施した。
【0218】
比較例5
黄色灯下、(A)アルカリ可溶性樹脂として合成例2で得られた(P1)を10.0g、(D)着色剤として染料のS.B.63を3.0g、S.R.18を2.0g、D.Y.201を1.0g、(E)熱架橋剤としてMW−100−LMを2.0g、さらに合成例6で得られた光酸発生剤を1.5g秤量し、これにGBL102.0gを添加し、攪拌、溶解させた。その後、得られた溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物eを得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、上述(3)〜(10)の評価を実施した。
【0219】
実施例および比較例の評価結果を表2〜4に示す。
【0220】
【表2-1】
【0221】
【表2-2】
【0222】
【表3-1】
【0223】
【表3-2】
【0224】
【表4-1】
【0225】
【表4-2】
【0226】
実施例1〜20は、250℃キュアにおいて、いずれも良好な段差形状の硬化膜が得られた。さらに(B)ラジカル重合性化合物を重合体としたときのガラス転移温度が110℃以上の実施例1〜16、18〜20においては、270℃キュアでも良好な段差形状の硬化膜が得られ、(B)ラジカル重合性化合物を重合体としたときのガラス転移温度が120℃以上の実施例1、3〜16、18〜20においては、300℃キュアでも良好な段差形状の硬化膜が得られた。これに対し、(A)アルカリ可溶性樹脂として、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体以外の樹脂を用いた比較例1、2、および(B)ラジカル重合性化合物として、(B−2)(B−1)以外の4官能以上の(メタ)アクリル化合物のみを含有する比較例3は、250℃キュアにおいて、キュア時のパターン流動により段差形状が失われていた。また、(B)ラジカル重合性化合物として、(B−1)単独重合体としたときのガラス転移温度が150℃以上となる2官能以上の(メタ)アクリル化合物のみを含有する比較例4は、良好な段差形状の硬化膜が得られたものの、有機EL表示特性の初期発光評価で非発光となった。テーパー角が72°と高く、第二電極の断線などの不具合が生じたものと考えられる。
【0227】
ポジ型感光性樹脂組成物を用いた比較例5は、250、270、300℃のいずれのキュア条件においても良好な段差形状の硬化膜が得られたが、実施例と比較して大幅に感度が悪化した。
【0228】
また、(E)熱架橋剤として、(E−1)メチロール基および/またはアルコキシメチル基を合計6以上20以下有する化合物を含有する実施例1〜8、12〜21の硬化膜は、(E−1)化合物を含有しない実施例9〜11の硬化膜と比較して、押込み弾性率が高くなった。これはより高硬度の硬化膜が得られたことを意味し、蒸着マスクを画素分割層に接触させる際のパーティクル発生を抑制できると考えられる。
【0229】
また、(B−1)成分として、炭素原子と水素原子のみで構成される脂環式構造を有する(メタ)アクリル化合物を含有する実施例1、2、3は、ヘテロ原子を含む脂環式構造を有する(メタ)アクリル化合物を含有する実施例4と比較して高感度であり、得られた硬化膜の吸水率は低くなった。
【0230】
また、(B−1)成分として、ラジカル重合性基としてメタクリル基を有するラジカル重合性化合物を用いた実施例1、3は、ラジカル重合性基としてアクリル基のみを有するラジカル重合性化合物を用いた実施例2、4と比較して高感度であり、得られた硬化膜の吸水率は低くなった。
【0231】
また、(B−2)成分として、ラクトン変性(メタ)アクリル化合物を含有する実施例1は、ラクトン変性されていない(メタ)アクリル化合物を含有する実施例5、6と比較して高感度であった。
【0232】
さらに、有機EL表示装置の耐久性評価結果をみると、実施例1〜20においては、耐久性評価後も良好な発光特性を示したのに対し、樹脂として(A)アルカリ可溶性樹脂として、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体および/またはそれらの共重合体以外の樹脂を用いた比較例1、2においては、耐久性評価後に発光面積の縮小が認められた。耐熱性の低い樹脂成分から発生したガス成分により有機発光材料が劣化したものと考えられる。
【符号の説明】
【0233】
1:基板
2:硬化膜
3:厚膜部
4:薄膜部
5:薄膜部
6:基板
7:TFT
8:TFT絶縁膜
9:配線
10:コンタクトホール
11:平坦化層
12:電極
13:画素分割層
14:半透光部
15:遮光部
16:透光部
17:基板
18:絶縁層
19:無アルカリガラス基板
20:第一電極
21:補助電極
22:画素分割層
23:有機EL層
24:第二電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7