(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フォークリフトの動力伝達には油圧が用いられ、原動機あるいはモータにより駆動する油圧ポンプから供給された作動油を、コントロールバルブを介して油圧シリンダ等のアクチュエータへ供給する構成を有する。このようなフォークリフトにおいて、荷役動作に加えステアリング動作を油圧で行うとともに、荷役動作とステアリング動作を単一の油圧源とコントロールバルブで制御する構成を有するものがある。このような構成のフォークリフトにおいては、油圧ポンプから吐出された作動油をコントロールバルブの最上流でプライオリティ流量制御バルブを介しステアリング用のバルブへ優先的に供給し、余剰流量を荷役用のバルブに流す方式が採用されている。
【0003】
このようなプライオリティ流量制御バルブにおける作動油の制御は、ハウジング内を摺動可能なスプールを利用し、作動油が投入されたときには、適切な流量の作動油をステアリング用のバルブへ優先的に供給するとともに、ステアリングや荷役の負荷圧力を検知することでスプールを作動油の流量制御のために必要な開度となる位置へ移動させるロードセンシング方式が採用されている。
【0004】
そして、このようなプライオリティ流量制御バルブにおいては、スプールの位置に応じてステアリング用のバルブと荷役用のバルブへの作動油の供給流量が変動するため、スプールが大きく振動したり、過剰に変位してしまうと、アクチュエータの意図しない速度変化が生じたり、配管や車体が振動するという問題がある。これを防止するために、スプールとハウジングの間にダンパ室を形成し、スロットルチェックバルブを利用してダンピング機能を持たせることで、スプールを安定して動作させる構成が採用されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10は、スロットルチェックバルブを内蔵したプライオリティ流量制御バルブの一例を示す縦断面図である。また、
図11は、プライオリティ流量制御バルブにおけるスプール12付近の拡大図である。なお、
図10は、スプール12が後述する第2の位置に配置された状態を示し、
図11は、スプール12が後述する第1の位置に配置された状態を示している。
【0007】
このプライオリティ流量制御バルブは、油圧ポンプから高圧の作動油が供給される高圧ポートPと、ステアリング用のバルブに接続されるステアリング用ポートPFと、荷役用のバルブに接続される荷役用ポートEFと、ロードセンシングポートLSと、タンクポートTとが形成されたハウジング11を備える。また、このプライオリティ流量制御バルブは、ハウジング11内を摺動可能に構成され、高圧ポートPから供給される作動油をステアリング用ポートPFおよび荷役用ポートEFに導くため溝部14が形成されたスプール12と、このスプール12を、高圧ポートPからステアリング用ポートPFと荷役用ポートEFとに作動液を導く第1の位置から、高圧ポートPからステアリング用ポートPFに作動油を導く第2の位置に向けて付勢するバネ13と、を備える。ハウジング11における高圧ポートPと連通する位置には、リリーフバルブ15が配設されている。また、スプール12の両端には、プラグ21とリテーナプラグ22とが配設されている。
【0008】
上述した第1の位置は、
図11に示すように、スプール12における溝部14が、ステアリング用ポートPFと荷役用ポートEFの両方に対向する位置である。この位置においては、高圧ポートPから供給された高圧の作動油は、ステアリング用ポートPFと荷役用ポートEFの両方に供給される。また、上述した第2の位置は、
図10に示すように、スプール12における溝部14が、ステアリング用ポートPFに対向する位置である。この位置においては、高圧ポートPから供給された高圧の作動油は、ステアリング用ポートPFに供給される。
【0009】
スプール12における中空部16の端部には、作動油の圧力に基づいてスプール12を適切な位置に移動させるために使用されるメータリングオリフィス17が配設されている。また、スプール12におけるプラグ21側の端部には、スロットルチェックバルブ19が配設されている。このスロットルチェックバルブ19は、後述するように、ハウジング11に形成されたダンパ室18とともに、スプール12の移動動作を安定化させる機能を有する。
【0010】
このような構成を有するプライオリティ流量制御バルブにおいては、作動油の供給がない状態ではスプール12はバネ13の作用により、スプール12の先端部を構成する後述するプラグ33がプラグ21に当接する第2の位置に配置されている。この状態においては、スプール12のステアリング用ポートPF側の作動油の流路は全開となっており、荷役用ポートEF側の作動油の流路は全閉となっている。この状態において、高圧ポートPを介してポンプから高圧の作動油が供給されると、スプール12のステアリング用ポートPFからメータリングオリフィス17を通過してロードセンシングポートLSに作動油が流れる。
【0011】
そして、この作動油の流量に応じてメータリングオリフィス17の前後に作動油の差圧が生じ、この差圧によりスプール12に付加される荷重がバネ13による付勢力より大きくなった時点で、スプール12が
図10示す位置から右方向に移動を開始する。作動油の流量がさらに増加すると、メータリングオリフィス17の前後の差圧が上昇し、スプール12に負荷する圧力差による荷重が増加する。これにより、スプール12がさらに右方向に移動し、高圧ポートPから供給される作動油が、余剰流量として荷役用ポートEFにも流れ出す。そして、スプール12により、ステアリング用ポートPF側の開度と荷役用ポートEF側の開度が制御され、そこに流れる作動油の流量が制御される。
【0012】
このような構成を有するプライオリティ流量制御バルブにおいては、スプール12によって制御されたステアリング用ポートPF側の開度と荷役用ポートEF側の開度により、ステアリング用のバルブと荷役用のバルブへの作動油の供給流量が変化することから、スプール12に大きな振動が生じ、あるいは、スプール12が過剰に変位すると、荷役動作の意図しない速度変化や、配管やフォークリフト本体に振動を生ずることがある。これを防止するため、スロットルチェックバルブ19が配設されている。
【0013】
図12は、スロットルチェックバルブ19付近の拡大図である。
【0014】
このスロットルチェックバルブ19は、一端にオリフィス32が形成され、側方に孔部35が形成されたポペット弁体31と、このポペット弁体31を囲む筒状の形状を有し、ポペット弁体31と当接する弁座としても機能する金属製のプラグ33と、ポペット弁体31を、ポペット弁体31と弁座として機能するプラグ33とが当接する方向に付勢するバネ34とを備える。プラグ33は、スプール12の先端にねじ込まれることにより、スプール12に固定される。スプール12が、上述した第2の位置に配置されたときには、スプール12の先端部を構成するプラグ33とハウジング11に配設されたプラグ21とが当接する。
【0015】
図12は、スプール12が上述した第2の位置に配置された状態を示している。この状態から、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を小さくし荷役用ポートEFを開く方向に移動するときには、ポペット弁体31と、弁座として機能するプラグ33とは、当接した状態のまま
図12に示す右方向に移動する。
【0016】
この状態から、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を小さくし荷役用ポートEFを開く方向に移動するときには、バネ34の作用により、ポペット弁体31が弁座として機能するプラグ33と当接することにより、作動油は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32を介してダンパ室18に移動する。一方、スプール12が第1の位置から第2の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を大きくし荷役用ポートEFを閉じる方向に移動するときには、作動油による圧力の作用により、ポペット弁体31が弁座として機能するプラグ33から離隔することにより、作動油は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32と、ポペット弁体31に形成された孔部35およびポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間との両方を介してダンパ室18に移動する。
【0017】
これにより、優先的に作動油を供給したいステアリング用ポートPFの開度を大きくするときには応答性が良好で、かつ、逆方向は応答性を抑えることでスプール12の動作を安定させることができる。これにより、ステアリングの操作に必要となる作動油の流量が不足しステアリング操作に対するアシストカが不足し、あるいは、急激に変化することを抑制することができる。
【0018】
このような構成を有するプライオリティ流量制御バルブにおいては、高圧ポートPを介してポンプから高圧の作動油が供給され、スプール12が
図10に示す位置から右方向に移動を開始して、高圧ポートPから供給される作動油が、ステアリング用ポートPFだけではなく荷役用ポートEFにも流れ出すときに、スロットルチェックバルブ19から異音が発生することが確認された。
【0019】
この異音は、ポペット弁体31がプラグ21から離隔するときに発生する、作動油がポペット弁体31に形成されたオリフィス32を通過するときの通過音である。この異音は、作動油がオリフィス32を通過するときの流速が大きいほど大きく、また、作動油がオリフィス32を通過する時間が長いほど大きく感じられる。このような異音は、作業者に耳障りなものとなる。特に、近年多用されている電動モータにより油圧ポンプを駆動するタイプのフォークリフトにおいては、フォークリフト自体の動作音が静かであることから、この様な異音が発生したときには、特に耳障りなものとなる。
【0020】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、スロットルチェックバルブを付設して動作の安定性を高めたロードセンシングタイプのプライオリティ流量制御バルブにおいて、スロットルチェックバルブからの異音の発生を防止することが可能なプライオリティ流量制御バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載の発明は、高圧ポートと、ステアリング用ポートと、荷役用ポートと、が形成されたハウジングと、前記ハウジング内を摺動可能に構成され、前記高圧ポートから供給される作動液を前記ステアリング用ポートおよび前記荷役用ポートに導くためのスプールと、前記スプールを、前記高圧ポートから前記ステアリング用ポートと前記荷役用ポートとに作動液を導く第1の位置から、前記高圧ポートから前記ステアリング用ポートに作動液を導く第2の位置に向けて付勢するバネと、を備え、前記高圧ポートから供給される作動液を優先的に前記ステアリング用ポートに供給するとともに、作動液の余剰分を荷役用ポートに供給するプライオリティ流量制御バルブであって、前記ハウジングに形成されたダンパ室と、前記ステアリング用ポートと前記ダンパ室との間に配設され、前記ステアリング用ポートから前記ダンパ室に向かう作動液の流路を絞り、前記ダンパ室から前記ステアリング用ポートに向かう作動液の流路を開放するスロットルチェックバルブと、前記スプールが前記第2の位置に配置されたときに、前記スロットルチェックバルブを開放状態とする開放部材と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スロットルチェックバルブは、オリフィスが形成されたポペット弁体と、弁座と、前記ポペット弁体を前記弁座に向けて付勢するバネと、を備えたオリフィス付ポペット弁から構成され、前記開放部材は、前記スプールが前記第2の位置に配置されたときに、前記ポペット弁体を前記弁座から離隔させるとともに、前記スプールが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するときに、前記スプールが前記第1の位置に到達する前に、前記ポペット弁体と前記弁座とを当接させる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記開放部材は、前記ポペット弁体に付設され、前記スプールが前記第2の位置に配置されたときに、前記ダンパ室における壁面と当接することにより、前記ポペット弁体を前記弁座から離隔させる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記開放部材は、前記ポペット弁体に形成されたオリフィスを囲む筒状の形状を有し、当該筒状の開放部材には、開口部が形成される。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記開放部材の前記スプールの軸方向の大きさは、前記スプールが前記第2の位置に配置されたときに、前記スプールの先端を前記ダンパ室における壁面から離隔した位置に配置させる大きさである。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の発明バルブにおいて、前記開放部材は、前記ダンパ室における壁面に付設され、前記スプールが前記第2の位置に配置されたときに、前記ポペット弁体と当接することにより、前記ポペット弁体を前記弁座から離隔させる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、開放部材の作用によりスプールが第2の位置に配置されたときにスロットルチェックバルブを開放状態とすることから、作動液によるオリフィスの通過音を抑制することが出来る。これにより、スロットルチェックバルブを付設して動作の安定性を高めたロードセンシングタイプのプライオリティ流量制御バルブにおいて、スロットルチェックバルブからの異音の発生を防止することが可能となる。
【0028】
請求項2から請求項6に記載の発明によれば、スプールが第2の位置に配置されたときにポペット弁体を前記弁座から離隔させるとともに、スプールが第1の位置に到達する前にポペット弁体と前記弁座とを当接させることから、スロットルチェックバルブの機能を維持したまま、スロットルチェックバルブからの異音の発生を防止することが可能となる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、開口部の作用により、スロットルチェックバルブにおいて作動液の流路を常に維持し、スロットルチェックバルブを通過する作動液の流量がゼロとなる状態を防止することが可能となる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、スプールが第2の位置に配置されたときに、スプールの先端をダンパ室における壁面から離隔した位置に配置させることができ、スプールの先端とダンパ室における壁面とが密着して張り付くことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】この発明に係るスロットルチェックバルブ26を内蔵したプライオリティ流量制御バルブの縦断面図である。
【
図2】プライオリティ流量制御バルブにおけるスプール12付近の拡大図である。
【
図3】プライオリティ流量制御バルブの油圧回路図である。
【
図4】この発明の第1実施形態に係るスロットルチェック機構におけるスロットルチェックバルブ26付近の拡大図である。
【
図5】この発明の第2実施形態に係るスロットルチェック機構におけるスロットルチェックバルブ26付近の拡大図である。
【
図6】この発明の第3実施形態に係るスロットルチェック機構におけるスロットルチェックバルブ26付近の拡大図である。
【
図7】スプール12の変位と、その時のスロットルチェック機構における作動油の通過面積との関係を示すグラフである。
【
図8】スプール12の変位と、その時のスロットルチェック機構における作動油の通過面積との関係を示すグラフである。
【
図9】スプール12の変位と、その時のスロットルチェック機構における作動油の通過面積との関係を示すグラフである。
【
図10】スロットルチェックバルブを内蔵したプライオリティ流量制御バルブの一例を示す縦断面図である。
【
図11】プライオリティ流量制御バルブにおけるスプール12付近の拡大図である。
【
図12】スロットルチェックバルブ19付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るスロットルチェックバルブ26を内蔵したプライオリティ流量制御バルブの縦断面図である。また、
図2は、プライオリティ流量制御バルブにおけるスプール12付近の拡大図である。さらに、
図3は、このプライオリティ流量制御バルブの油圧回路図である。
図1は、スプール12が後述する第2の位置に配置された状態を示し、
図2は、スプール12が後述する第1の位置に配置された状態を示している。なお、上述した
図10および
図12と同様の部材については、同一の符号を付している。
【0033】
このプライオリティ流量制御バルブは、フォークリフトに搭載されるものであり、フォークリフトのステアリング操作と荷役操作を実行するためのものである。このプライオリティ流量制御バルブは、油圧ポンプから高圧の作動油が供給される高圧ポートPと、ステアリング用のバルブに接続されるステアリング用ポートPFと、フォークの上下等をおこなう荷役用のバルブに接続される荷役用ポートEFと、ロードセンシングポートLSと、タンクポートTとが形成されたハウジング11を備える。
【0034】
また、このプライオリティ流量制御バルブは、ハウジング11内を摺動可能に構成され、高圧ポートPから供給される作動油をステアリング用ポートPFおよび荷役用ポートEFに導くため溝部14が形成されたスプール12と、このスプール12を、高圧ポートPからステアリング用ポートPFと荷役用ポートEFとに作動液を導く第1の位置から、高圧ポートPからステアリング用ポートPFに作動油を導く第2の位置に向けて付勢するバネ13と、を備える。ハウジング11における高圧ポートPと連通する位置には、リリーフバルブ15が配設されている。また、スプール12の両端には、プラグ21とリテーナプラグ22とが配設されている。
【0035】
上述した第1の位置は、
図2に示すように、スプール12における溝部14が、ステアリング用ポートPFと荷役用ポートEFの両方に対向する位置である。この位置においては、高圧ポートPから供給された高圧の作動油は、ステアリング用ポートPFと荷役用ポートEFの両方に供給される。また、上述した第2の位置は、
図1に示すように、スプール12における溝部14が、ステアリング用ポートPFに対向する位置である。この位置においては、高圧ポートPから供給された高圧の作動油は、ステアリング用ポートPFに供給される。
【0036】
スプール12における中空部16の端部には、作動油の圧力に基づいてスプール12を適切な位置に移動させるために使用されるメータリングオリフィス17が配設されている。また、スプール12におけるプラグ21側の端部には、スロットルチェックバルブ26が配設されている。このスロットルチェックバルブ26は、後述するように、ハウジング11に形成されたダンパ室18とともに、スプール12の移動動作を安定化させる機能を有する。
【0037】
このような構成を有するプライオリティ流量制御バルブにおいては、作動油の供給がない状態ではスプール12はバネ13の作用により、スプール12の先端部を構成する後述するプラグ33がプラグ21に当接する第2の位置に配置されている。この状態においては、スプール12のステアリング用ポートPF側の作動油の流路は全開となっており、荷役用ポートEF側の作動油の流路は全閉となっている。この状態において、高圧ポートPを介してポンプから高圧の作動油が供給されると、スプール12のステアリング用ポートPFからメータリングオリフィス17を通過してロードセンシングポートLSに作動油が流れる。
【0038】
そして、この作動油の流量に応じてメータリングオリフィス17の前後に作動油の差圧が生じ、この差圧によりスプール12に付加される荷重がバネ13による付勢力より大きくなった時点で、スプール12が
図1示す位置から右方向に移動を開始する。作動油の流量がさらに増加すると、メータリングオリフィス17の前後の差圧が上昇し、スプール12に負荷する圧力差による荷重が増加する。これにより、スプール12がさらに右方向に移動し、高圧ポートPから供給される作動油が、余剰流量として荷役用ポートEFにも流れ出す。そして、スプール12により、ステアリング用ポートPF側の開度と荷役用ポートEF側の開度が制御され、そこに流れる作動油の流量が制御される。
【0039】
このような構成を有するプライオリティ流量制御バルブにおいては、スプール12によって制御されたステアリング用ポートPF側の開度と荷役用ポートEF側の開度により、ステアリング用のバルブと荷役用のバルブへの作動油の供給流量が変化することから、スプール12に大きな振動が生じ、あるいは、スプール12が過剰に変位すると、荷役動作の意図しない速度変化や、配管やフォークリフト本体に振動を生ずることがある。これを防止するため、スロットルチェックバルブ26が配設されている。
【0040】
図4は、この発明の第1実施形態に係るスロットルチェック機構におけるスロットルチェックバルブ26付近の拡大図である。なお、
図4においては、スプール12が上述した第2の位置に配置された状態を示している。
【0041】
このスロットルチェックバルブ26は、一端にオリフィス32が形成され、側方に孔部35が形成されたポペット弁体31と、このポペット弁体31を囲む筒状の形状を有し、ポペット弁体31と当接する弁座としても機能する金属製のプラグ33と、ポペット弁体31を、ポペット弁体31と弁座として機能するプラグ33とが当接する方向に付勢するバネ34とを備える。プラグ33は、スプール12の先端にねじ込まれることにより、スプール12に固定される。スプール12が、上述した第2の位置に配置されたときには、スプール12の先端部を構成するプラグ33とハウジング11に配設されたプラグ21とが当接する。
【0042】
図4に示すように、プラグ21には、ポペット弁体31と当接する凸部27が配設されている。この凸部27の作用により、スプール12が第2の位置に配置されたときに、ポペット弁体31は、弁座として機能するプラグ33から離隔している。この凸部27は、スプール12が第2の位置に配置されたときに、スロットルチェックバルブ26を開放状態とする開放部材として機能する。
【0043】
図4に示す状態から、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を小さくし荷役用ポートEFを開く方向に移動を開始したときには、スプール12の移動に伴って、バネ34の作用により、ポペット弁体31が弁座として機能するプラグ33との距離が徐々に近接する。そして、スプール12が第1の位置に到達する前に、ポペット弁体31が弁座として機能するプラグ33とが当接する。
【0044】
ここで、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向に移動を開始するときには、凸部27の作用により、ポペット弁体31は、弁座として機能するプラグ33から離隔しており、ダンパ室18に向かう作動油の流路として、ポペット弁体31に形成された孔部35およびポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間が確保されている。このため、
図12に示すスロットルチェックバルブ19の場合のように、作動油がポペット弁体31に形成されたオリフィス32を通過するときの異音の発生を防止することが可能となる。
【0045】
この状態から、さらに、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を小さくし荷役用ポートEFを開く方向に移動するときには、ポペット弁体31とプラグ33とは既に当接していることから、作動油は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32を介してダンパ室18に移動する。一方、スプール12が第1の位置から第2の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を大きくし荷役用ポートEFを閉じる方向に移動するときには、作動油による圧力の作用により、ポペット弁体31が弁座として機能するプラグ33から離隔することにより、作動油は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32と、ポペット弁体31に形成された孔部35およびポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間との両方を介してダンパ室18に移動する。
【0046】
これにより、優先的に作動油を供給したいステアリング用ポートPFの開度を大きくするときには応答性が良好で、かつ、逆方向は応答性を抑えることでスプール12の動作を安定させることができる。これにより、ステアリングの操作に必要となる作動油の流量が不足しステアリング操作に対するアシストカが不足し、あるいは、急激に変化することを抑制することができる。
【0047】
次に、スロットルチェック機構の他の実施形態について説明する。
図5は、この発明の第2実施形態に係るスロットルチェック機構におけるスロットルチェックバルブ26付近の拡大図である。
図5においては、スプール12が上述した第2の位置に配置された状態を示している。なお、
図4に示すスロットルチェックバルブ26と同一の部材については、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
上述した第1実施形態に係るスロットルチェック機構においては、プラグ21に形成された凸部27の作用により、スプール12が第2の位置に配置されたときに、ポペット弁体31を弁座として機能するプラグ33から離隔させている。これに対して、この第2実施形態に係るスロットルチェック機構においては、ポペット弁体31に付設されたオリフィス32を囲む形状を有し、開口部28が形成された筒状体29により、スプール12が第2の位置に配置されたときに、ポペット弁体31を弁座として機能するプラグ33から離隔させている。この筒状体29は、スプール12が第2の位置に配置されたときに、ダンパ室18における壁面を構成するプラグ21と当接することによりポペット弁体31を弁座として機能するプラグ33から離隔させる開放部材として機能する。
【0049】
ここで、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向に移動を開始するときには、筒状体29の作用により、ポペット弁体31は、弁座として機能するプラグ33から離隔しており、ダンパ室18に向かう作動油の流路として、ポペット弁体31に形成された孔部35、開口部28およびポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間が確保されている。このため、
図12に示すスロットルチェックバルブ19の場合のように、作動油がポペット弁体31に形成されたオリフィス32を通過するときの異音の発生を防止することが可能となる。
【0050】
図4に示す実施形態の場合と同様、この状態から、さらに、スプール12が第2の位置から第1の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を小さくし荷役用ポートEFを開く方向に移動するときには、ポペット弁体31とプラグ33とは既に当接していることから、作動油は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32を介してダンパ室18に移動する。一方、スプール12が第1の位置から第2の位置へ向かう方向、すなわち、ステアリング用ポートPFの開度を大きくし荷役用ポートEFを閉じる方向に移動するときには、作動油による圧力の作用により、ポペット弁体31が弁座として機能するプラグ33から離隔することにより、作動油は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32と、ポペット弁体31に形成された孔部35およびポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間との両方を介してダンパ室18に移動する。
【0051】
これにより、優先的に作動油を供給したいステアリング用ポートPFの開度を大きくするときには応答性が良好で、かつ、逆方向は応答性を抑えることでスプール12の動作を安定させることができる。これにより、ステアリングの操作に必要となる作動油の流量が不足しステアリング操作に対するアシストカが不足し、あるいは、急激に変化することを抑制することができる。
【0052】
次に、スロットルチェック機構のさらに他の実施形態について説明する。
図6は、この発明の第3実施形態に係るスロットルチェック機構におけるスロットルチェックバルブ26付近の拡大図である。
図6においては、スプール12が上述した第2の位置に配置された状態を示している。なお、この実施形態においては、
図5に示すスロットルチェックバルブ26に対して、開放部材として機能する筒状体29の大きさが異なる。このため、以下の説明においては、その点についてのみ説明する。
【0053】
この第3実施形態に係るスロットルチェック機構においては、ポペット弁体31に付設されたオリフィス32を囲む形状を有し、開口部28が形成された筒状体29により、スプール12が第2の位置に配置されたときに、ポペット弁体31を弁座として機能するプラグ33から離隔させている。そして、この第3実施形態においては、
図6に示すように、開放部材として機能する筒状体29のスプール12の軸方向の大きさは、スプール12が第2の位置に配置されたときに、スプール12の先端を構成するプラグ33がダンパ室18における壁面を構成するプラグ21から離隔した位置に配置させる大きさを有している。
【0054】
図5に示す第2実施形態に係るスロットルチェック機構においては、スプール12が第2の位置に配置されたときには、スプール12の先端を構成するプラグ33がダンパ室18における壁面を構成するプラグ21と当接している。このため、プラグ33とプラグ21との当接面が密着して油切れによる張り付き現象を起こすことがある。これを防止するためには、プラグ33とプラグ21との当接面に溝加工を行う等の対策が必要となる。
【0055】
これに対して、この第3実施形態に係るスロットルチェック機構においては、筒状体29の作用により、スプール12が第2の位置に配置されたときに、スプール12の先端を構成するプラグ33がダンパ室18における壁面を構成するプラグ21から離隔した位置に配置される。このため、溝加工等を施さない場合においても、プラグ33とプラグ21とが密着して張り付くことを防止することが可能となる。
【0056】
図7から
図9は、スプール12の変位Dと、その時のスロットルチェック機構における作動油の通過面積Sとの関係を示すグラフである。この図における横軸はスプール12の変位Dを示し、縦軸はスロットルチェック機構における作動油の通過面積Sを示している。また、
図7は、
図12に示すスロットルチェック機構の場合を、
図8は、
図4に示すスロットルチェック機構の場合を、
図9は、
図5および
図6に示すスロットルチェック機構の場合を示している。
【0057】
図12に示すスロットルチェック機構においては、作動油の通過面積Sは、
図7に示すように、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32により規定される一定の面積となる。これに対して、
図4に示すスロットルチェック機構の場合には、作動油の通過面積Sは、
図8に示すように、スプール12の変位Dに伴ってポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間が徐々に小さくなり、通過面積Sが一旦ゼロとなった後、ポペット弁体31と凸部27が離隔した後は、通過面積Sはポペット弁体31に形成されたオリフィス32により規定される一定の面積となる。
【0058】
これに対して、
図5および
図6に示すスロットルチェック機構の場合は、作動油の通過面積Sは、
図9に示すように、スプール12の変位Dに伴ってポペット弁体31とプラグ33の間に形成された隙間が徐々に小さくなった後、ポペット弁体31と凸部27が離隔した後は、ポペット弁体31に形成されたオリフィス32と開口部28とにより規定される一定の面積となる。このため、
図5および
図6に示す実施形態の場合においては、ポペット弁体31に形成された開口部28の作用により、スロットルチェックバルブ26において作動油の流路を常に維持し、スロットルチェックバルブ26を通過する作動油の流量がゼロとなる状態を防止することが可能となる。このため、作動油の圧力が一時的に上昇する現象等を防止することが可能となる。