特許第6892017号(P6892017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892017
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】流体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 23/14 20060101AFI20210607BHJP
   F04B 53/10 20060101ALI20210607BHJP
   F04B 13/00 20060101ALI20210607BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20210607BHJP
   F02C 9/32 20060101ALI20210607BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   F04B23/14
   F04B53/10 H
   F04B13/00 Z
   F02C9/28 A
   F02C9/32
   F23R3/28 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-539578(P2020-539578)
(86)(22)【出願日】2019年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2019033849
(87)【国際公開番号】WO2020045553
(87)【国際公開日】20200305
【審査請求日】2020年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-163558(P2018-163558)
(32)【優先日】2018年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】増田 精鋭
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−90579(JP,A)
【文献】 特表2008−530442(JP,A)
【文献】 米国特許第5118258(US,A)
【文献】 国際公開第2015/046177(WO,A1)
【文献】 特表2013−506794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/14
F04B 13/00
F04B 53/10
F02C 9/28
F02C 9/32
F23R 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ポンプと、
前記遠心ポンプと直列に接続され、前記遠心ポンプの下流側に設けられると共に、前記遠心ポンプよりも吐出流量の少ない始動ポンプと、
前記遠心ポンプ及び前記始動ポンプの下流側に設けられると共に、前記遠心ポンプまたは前記始動ポンプから吐出された流体を計量し、所定の流量ごとに下流へと放出する計量弁と、
前記遠心ポンプ及び前記始動ポンプの下流側に設けられると共に、前記計量弁の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧に基づいて駆動する差圧弁と、
前記遠心ポンプの下流側かつ前記差圧弁の上流側に設けられると共に前記差圧弁よりも開弁速度が遅く設定された流量制御弁と
を備える流体供給システム。
【請求項2】
前記流量制御弁は、前記遠心ポンプの吐出口と前記始動ポンプの吸入口との間に設けられる請求項1記載の流体供給システム。
【請求項3】
前記流量制御弁は、前記始動ポンプの上流側と下流側とを接続するバイパス流路に設けられる請求項1記載の流体供給システム。
【請求項4】
前記流量制御弁の開弁速度が前記差圧弁の開弁速度の1/5から1/10である請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体供給システム。
【請求項5】
前記流量制御弁は、前記遠心ポンプの駆動後に開弁されるように構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体供給システムに関する。
本願は、2018年8月31日に日本国に出願された特願2018−163558号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、主遠心ポンプと始動ポンプとを備え、ガスタービンエンジンに燃料を供給する燃料供給装置(燃料供給システム)が開示されている。この主遠心ポンプは、燃料を昇圧して供給することが可能であるが、低回転において小流量の燃料を供給することが難しい。したがって、特許文献1に記載されているように、燃料の供給量が少量となるガスタービンエンジンの始動時には、始動ポンプを用いて燃料を昇圧する。そして、始動ポンプと主遠心ポンプとを切り替えて駆動させることで、適切な圧力、流量の燃料をガスタービンエンジンへと供給する。
特許文献2〜4にも燃料供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2011−247259号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第WO2015/046177号
【特許文献3】日本国特開2016−184489号公報
【特許文献4】日本国特開2001−90579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠心ポンプと始動ポンプとが直列に接続された燃料供給システムにおいては、始動ポンプから遠心ポンプへと切り替えると、遠心ポンプから吐出された燃料が、始動ポンプから吐出された燃料が流れる流路と同一の流路へと流れ込む。始動ポンプの後段には、燃料の流量を計量する計量弁が設けられており、該計量弁と始動ポンプとの間の流路において、遠心ポンプから吐出された燃料が流入することで、該流路中の圧力が急激に変化する。計量弁の上流側において圧力が急激に変化すると、計量弁の上流側と下流側との間に差圧が生じ、計量流量に脈動が発生する可能性がある。
【0005】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされ、遠心ポンプと始動ポンプとが直列に接続された燃料供給システムにおいて、始動ポンプと遠心ポンプとの切替時における計量弁の上流側の急激な圧力変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一の態様に係る流体供給システムは、遠心ポンプと、前記遠心ポンプと直列に接続され、前記遠心ポンプの下流側に設けられると共に、前記遠心ポンプよりも吐出流量の少ない始動ポンプと、前記遠心ポンプ及び前記始動ポンプの下流側に設けられると共に、前記遠心ポンプまたは前記始動ポンプから吐出された流体を計量し、所定の流量ごとに下流へと放出する計量弁と、前記遠心ポンプ及び前記始動ポンプの下流側に設けられると共に、前記計量弁の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧に基づいて駆動する差圧弁と、前記遠心ポンプの下流側かつ前記差圧弁の上流側に設けられると共に前記差圧弁よりも開弁速度が遅く設定された流量制御弁とを備える。
【0007】
本開示の第2の態様に係る流体供給システムは、上記第1の態様に係る流体供給システムにおいて、前記流量制御弁は、前記遠心ポンプの吐出口と前記始動ポンプの吸入口との間に設けられている。
【0008】
本開示の第3の態様に係る流体供給システムは、上記第1の態様に係る流体供給システムにおいて、前記流量制御弁は、前記始動ポンプの上流側と下流側とを接続するバイパス流路に設けられている。
【0009】
本開示の第4の態様に係る流体供給システムは、上記第1〜3のいずれかの態様に係る流体供給システムにおいて、前記流量制御弁の開弁速度が前記差圧弁の開弁速度の1/5から1/10である。
【0010】
本開示の第5の態様に係る流体供給システムは、上記第1〜4のいずれかの態様に係る流体供給システムにおいて、前記流量制御弁は、前記遠心ポンプの駆動後に開弁されるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、遠心ポンプと始動ポンプとが直列に接続された流体供給システムにおいて、流量制御弁の開弁速度を差圧弁の開弁速度よりも遅く設定している。これにより、始動ポンプから遠心ポンプへと切り替える際に、遠心ポンプから供給される燃料は、徐々に始動ポンプへと流れ込む。したがって、計量弁の上流側において、燃料の流量変化が緩やかとなることで、燃料の急激な圧力変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る燃料供給システムの模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る燃料供給システムにおける各装置のタイムチャートである。
図3】本開示の一実施形態の変形例に係る燃料供給システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示に係る流体供給システムの一実施形態として、燃料供給システム1について説明する。本開示では、燃料供給システム1は、流体供給システム1であると見なして良い。
【0014】
燃料供給システム1は、ジェットエンジンに対して燃料(流体)を計量して供給するシステムであり、遠心ポンプ2と、ブーストポンプ3と、定容積型ポンプ4(始動ポンプ)と、流量制御弁5と、バイパス弁6と、計量弁7と、差圧検知部8とを備えている。
【0015】
遠心ポンプ2は、本実施形態に係る燃料供給システム1において最も上流に配置されたポンプである。遠心ポンプ2は、入口及び出口が形成された不図示のケーシングと、ケーシングに収容された不図示の羽根車とを備え、該羽根車を回転させることにより、ケーシング内に流入した燃料を加圧して送り出す装置である。また、遠心ポンプ2には、ケーシングの入口において、入口遮断弁2aが設けられ、入口遮断弁2aを介して外部の燃料貯留部(不図示)と接続されている。入口遮断弁2aは、ケーシングの入口を遮断するように設けられ、開弁されることによりケーシングへと燃料を供給させる。また、遠心ポンプ2は、ケーシングの出口(吐出口)において入口流路R1と接続されている。また、入口流路R1には、流量制御弁5の前段において、逆止弁(不図示)が設けられている。
【0016】
ブーストポンプ3は、遠心ポンプ2と同様に不図示の羽根車及びケーシングを備え、該羽根車を回転させることにより、ケーシング内に流入した燃料を加圧して送り出す装置である。このようなブーストポンプ3は、ケーシングの入口が遠心ポンプ2と別個に外部の燃料貯留部(不図示)と接続されており、燃料貯留部から供給された燃料を予備的に加圧する。また、ブーストポンプ3は、吐出口が入口流路R1へと案内する流路に接続されている。また、該流路には、逆止弁(不図示)が設けられている。
【0017】
定容積型ポンプ4は、流入口が入口流路R1と接続され、遠心ポンプ2及びブーストポンプ3の下流側に設けられたギヤポンプである。定容積型ポンプ4は、不図示のケーシングと、ケーシングに収容されると共に互いに歯合した不図示の複数のギヤとを備えている。定容積型ポンプ4には、ブーストポンプ3から吐出された燃料が供給される。このような定容積型ポンプ4は、遠心ポンプ2と比較して吐出流量及び吐出圧が小さく、低流量の燃料供給時、すなわちエンジン始動時において駆動するポンプである。なお、定容積型ポンプ4は、遠心ポンプ2駆動時において、内部を燃料が通過するものの、仕事を行わず、流路の一部として機能する。
【0018】
流量制御弁5は、遠心ポンプ2の出口とブーストポンプ3の出口との間に設けられた弁装置である。すなわち、流量制御弁5は、遠心ポンプ2から吐出される燃料を定容積型ポンプ4側へと案内する入口流路R1上に配置されている。また、流量制御弁5は、例えば油圧により制御され、後述する差圧弁8aの開弁開始から全開となるまでの速度を示す開弁速度の1/5程度の開弁速度で開閉弁される。
【0019】
バイパス弁6は、定容積型ポンプ4の入口側(すなわち入口流路R1)と出口側(すなわち計量流路R2)とを接続するバイパス流路R3に設けられた弁装置である。バイパス弁6は、計量弁7の下流側(すなわち燃料供給システム1の出口側)の圧力と定容積型ポンプ4の出口側の圧力との差圧により駆動する差圧感知式とされ、計量弁7の下流側の圧力よりも定容積型ポンプ4の出口側の圧力が高まった場合に開弁されるリリーフ弁として機能する。
【0020】
計量弁7は、定容積型ポンプ4の出口から計量弁7へと案内する計量流路R2中に設けられ、いずれも不図示の弁駆動部と、弁体と、弁変位計とを備える装置である。弁駆動部は、弁体を油圧等により駆動させる装置である。弁体は、計量流路R2を閉塞すると共に、弁駆動部により移動されることで所定期間だけ計量流路R2を開放し、一定量の燃料のみを外部へと供給する。弁変位計は、弁体の移動量(開度)を計測するセンサであり、計測データを弁駆動部へとフィードバックしている。このような計量弁7は、下流側において出口流路R4と接続され、計量流路R2を流れる燃料を計量し、所定の流量ごとに出口流路R4へと放出する。
【0021】
差圧検知部8は、第1差圧検知流路R5と、第2差圧検知流路R6と、第3差圧検知流路R7と、差圧弁8aと、圧力制御弁8bとを備えている。第1差圧検知流路R5は、計量流路R2と接続され、計量弁7の上流側における燃料(計量流路R2における、バイパス流路R3との接続箇所と計量弁7との間の燃料)が流入する流路である。第2差圧検知流路R6は、計量弁7の下流側と接続され、計量弁7通過後の燃料(出口流路R4における、計量弁7と圧力制御弁8bとの間の燃料)が流入する流路である。第3差圧検知流路R7は、計量弁7の上流側と計量弁7の下流側との双方と差圧弁8aを介して接続され、後述する差圧弁8aの弁体8a1の位置により、計量弁7の上流側における燃料または計量弁7の下流側における燃料のいずれかが流入する流路である。
【0022】
差圧弁8aは、弁体8a1と、バネ8a2とを備えた弁装置である。弁体8a1は、第1差圧検知流路R5と第2差圧検知流路R6との間に設けられ、第1差圧検知流路R5を流れる燃料と、第2差圧検知流路R6を流れる燃料とにより駆動される。バネ8a2は、弁体8a1を閉弁方向に付勢している。
差圧弁8aは、第1差圧検知流路R5の圧力と、第2差圧検知流路R6の圧力とが釣り合っている場合、閉弁状態とされる。このような差圧弁8aは、第1差圧検知流路R5内の燃料と第2差圧検知流路R6内の燃料との差圧に基づいて弁体8a1が移動されることで、第3差圧検知流路R7に流入する燃料を切り替える切替弁である。なお、差圧弁8aは、計量弁7の上流側における燃料の圧力(計量前圧力)が計量弁7通過後の燃料の圧力(計量後圧力)よりも高い場合に、第3差圧検知流路R7を計量弁7の上流側と接続させる。また、差圧弁8aは、計量後圧力が計量前圧力よりも高い場合に、第3差圧検知流路R7を計量弁7の下流側と接続させる。すなわち、差圧弁8aは、計量前圧力と計量後圧力の差圧に基づいて駆動され、計量弁7の上流側の燃料と計量弁7の下流側の燃料とのいずれか一方を下流に放出する。
【0023】
圧力制御弁8bは、出口流路R4の出口を閉塞するように設けられ、弁体8b1と、バネ8b2とを備える差圧弁である。弁体8b1は、出口流路R4と第3差圧検知流路R7との間に設けられている。バネ8b2は、弁体8b1を閉弁方向(出口流路R4側)へと付勢している。このような圧力制御弁8bは、第3差圧検知流路R7を流れる燃料の圧力と、出口流路R4を流れる燃料の圧力(計量後圧力)との差圧に基づいて駆動し、計量後圧力が第3差圧検知流路R7を流れる燃料の圧力よりも高い場合のみ開弁される。圧力制御弁8bが開弁されている間に、計量弁7の下流側の燃料が不図示のジェットエンジンに流入する。
【0024】
このような本実施形態に係る燃料供給システム1の動作について説明する。
まず、エンジン始動時については、ブーストポンプ3側より燃料が供給され、定容積型ポンプ4により加圧された燃料が、計量流路R2へと流入する。なお、このとき、遠心ポンプ2に設けられた入口遮断弁2aは閉弁されており、遠心ポンプ2へと燃料が流入することはない。計量流路R2に流入した燃料は、計量弁7により計量され、一定量ごとに出口流路R4へと流れる。また、出口流路R4に流入した燃料の一部は、第1差圧検知流路R5へと流入する。
【0025】
また、大容量の燃料が必要となる通常運転時には、遠心ポンプ2の入口遮断弁2aが開弁され、遠心ポンプ2に燃料が流入する。そして、遠心ポンプ2により加圧された後に入口流路R1に流入した燃料は、流量制御弁5が開弁されることにより、定容積型ポンプ4内へと進入する。また、遠心ポンプ2により加圧された燃料の一部は、バイパス流路R3へと流入する。バイパス弁6は計量前圧力が計量後圧力よりも高い場合に開弁される。このため、バイパス弁6が開弁されることにより、バイパス流路R3を流れる燃料は計量流路R2へと合流する。
【0026】
そして、計量弁7へと案内された燃料は、計量弁7によって所定の流量ごとに出口側へと流れる。また、計量流路R2内における計量前の燃料の一部は、第1差圧検知流路R5に流入し、同様に第2差圧検知流路R6に流入した燃料(すなわち、計量後の燃料)との差圧に基づいて、差圧弁8aを駆動させる。なお、差圧弁8aは、計量前圧力が計量後圧力よりも高い場合には、第3差圧検知流路R7に計量前の燃料を流すように移動する。そして、第3差圧検知流路R7の圧力よりも計量後圧力が高まると、圧力制御弁8bが開弁され、燃料が不図示のエンジンへと供給される。
【0027】
また、燃料供給システム1における流量制御弁5の動作について、図2のタイムチャートを参照して説明する。
図2に示すように、遠心ポンプ2が駆動された後に、流量制御弁5及び差圧弁8aの開弁が同時に開始される。
流量制御弁5の開弁が開始されると、入口流路R1には、遠心ポンプ2を通過した燃料が徐々に流入を開始する。そして、差圧弁8aは、流量制御弁5が全開状態となるよりも早い段階で全開状態となる。このとき、遠心ポンプ2より入口流路R1へと流入する燃料の流量が計量弁7による燃料の計量流量に対して少なく、かつ、差圧弁8aが第3差圧検知流路R7を計量弁7の上流側と接続させた状態となる。本実施形態に係る燃料供給システム1は、計量弁7による燃料の計量流量よりも遠心ポンプ2から供給される燃料の供給流量が増加すると、計量前圧力が増加する。差圧弁8aが全開かつ流量制御弁5が開弁途中の場合には、上記供給流量が計量弁7による燃料の計量流量に対して少なく抑えられるため、計量前圧力の急激な上昇が抑えられる。そして、流量制御弁5が全開となると、入口流路R1へと流入する供給流量が増加しても、入口流路R1へと流入する供給流量が計量流量と釣り合うため、計量前圧力が一定となる。したがって、遠心ポンプ2から供給される燃料の供給流量の変化を緩やかとすることにより、計量前圧力の圧力変化は緩やかとなる。
従って、本実施形態によれば、定容積型ポンプ4から遠心ポンプ2に運転を切り替える過程において、計量前圧力の急激な上昇を防止することができる。
ここで、差圧弁8aの開閉と、圧力制御弁8bの開閉により、圧力制御弁8bからエンジンに供給される燃料の圧力は、燃料の供給流量の変化に依らず略一定に保たれる。
【0028】
本実施形態によれば、流量制御弁5を差圧弁8aよりも緩やかな開弁速度で開弁させることにより、遠心ポンプ2から供給される燃料の供給流量を制御することができる。そのため、遠心ポンプ2始動後に、計量前圧力の急激な上昇を防止することで計量前圧力の変化を緩やかにし、計量前圧力と計量後圧力との間に差圧が発生することを防止することができる。これにより、計量弁7における計量流量に脈動が発生することを防止することができる。そのため、計量弁7における正確な計量を実施することが可能である。
【0029】
また、本実施形態によれば、流量制御弁5は、遠心ポンプ2の吐出口と定容積型ポンプ4の吸入口との間に設けられている。これにより、遠心ポンプ2から供給される燃料の全量について流量を制御することが可能であり、計量前圧力を確実に制御することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、流量制御弁5は、差圧弁8aの開弁速度の1/5程度の速度で開弁される。即ち、図2において、差圧弁8aが閉から開へと変化する開弁時間をaとし、流量制御弁5が閉から開へと変化する開弁時間をbとすれば、bは、略5aに等しい。これにより、流量制御弁5は、差圧弁8aに対して十分に開弁速度が遅くなり、計量前圧力の変化を十分に緩やかとすることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、流量制御弁5は、遠心ポンプ2が駆動された後に開弁が開始される。これにより、流量制御弁5は、遠心ポンプ2から流量制御弁5までの流路が燃料により満たされた状態で開弁され、入口流路R1に気泡が混入することを防止できる。
【0032】
以上、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0033】
上記実施形態においては、流量制御弁5を遠心ポンプ2の吐出口と定容積型ポンプ4の吸入口との間に設けたが、本開示はこれに限定されない。
図3は、本開示の一実施形態の変形例に係る燃料供給システム10の模式図である。図3に示すように、流量制御弁5は、バイパス流路R3に設けてもよい。この場合についても、バイパス流路R3における燃料の流量変化を緩やかとすることにより、計量前圧力の急激な変化を防止することが可能である。
【0034】
また、流量制御弁5の開弁速度は、差圧弁8aの開弁速度の1/5程度から1/10程度の範囲とすることが好ましい。即ち、図2において、差圧弁8aが閉から開へと変化する開弁時間をaとし、流量制御弁5が閉から開へと変化する開弁時間をbとすれば、bは、略5aから略10aの範囲にあることが好ましい。流量制御弁5の開弁速度を1/10以上に遅くすると、燃料供給システム1における定容積型ポンプ4から遠心ポンプ2への切り替えにかかる時間が長くなるため、系全体の応答性を損なう可能性がある。ただし、燃料供給システム1において、ポンプ切替時に素早い応答が必要とされない場合には、開弁速度を1/10よりも遅くすることも可能である。
【0035】
また、本開示に係る流体供給システムの一実施形態として、上記実施形態においては、ジェットエンジンにおいて、液体または非圧縮性流体の燃料を供給する燃料供給システムとしたが、本開示はこれに限定されない。遠心ポンプ2及び定容積型ポンプ4を備え、各ポンプを切り替えて駆動させる流体供給システムであれば、流体の種類や用途は限定されない。
【0036】
また、流量制御弁5の駆動方法は特に限定されず、電動式、油圧式等様々な方法により駆動させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示の流体供給システムによれば、計量弁の上流側において、始動ポンプと遠心ポンプとの切替時における燃料の流量変化が緩やかとなることで、燃料の急激な圧力変化を抑制させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 燃料供給システム(流体供給システム)
2 遠心ポンプ
2a 入口遮断弁
3 ブーストポンプ
4 定容積型ポンプ(始動ポンプ)
5 流量制御弁
6 バイパス弁
7 計量弁
8 差圧検知部
8a 差圧弁
8b 圧力制御弁
R1 入口流路
R2 計量流路
R3 バイパス流路
R4 出口流路
R5 第1差圧検知流路
R6 第2差圧検知流路
R7 第3差圧検知流路
図1
図2
図3