(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、その表面に前記一般式(1)で表される官能基が共有結合を介して固定されたシリカ粒子である、請求項1または請求項2に記載の化学機械研磨用組成物。
前記(B)成分が、下記一般式(2)、(3)及び(4)で表される化合物から選択される1種以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
Si(OR1)4 ・・・・・(2)
SiR2m(OR3)n(R4−NR52)p ・・・・・(3)
SiR2m(OR3)nR5p ・・・・・(4)
(式(2)中、複数存在するR1は、それぞれ独立に1価の炭化水素基を表す。式(3)中、R4は2価の炭化水素基を表す。式(3)及び式(4)中、R2及びR3はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R5はそれぞれ独立にヘテロ原子を含む若しくは含まない炭素数1〜10の1価の有機基又は水素原子を表し、mは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数であり、pは1又は2であり、m+n+p=4である。)
前記(B)成分が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランから選択される1種以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0019】
本明細書において、「X〜Y」のように記載された数値範囲は、数値Xを下限値として含み、かつ、数値Yを上限値として含むものとして解釈される。
【0020】
1.化学機械研磨用組成物
本発明の一実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される官能基を有するシリカ粒子(本明細書において、単に「(A)成分」ともいう。)と、(B)シラン化合物(本明細書において、単に「(B)成分」ともいう。)と、を含有する。
−COO
−M
+ ・・・・・(1)
(M
+は1価の陽イオンを表す。)
以下、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0021】
1.1.(A)成分
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、砥粒成分として、(A)下記一般式(1)で表される官能基を有するシリカ粒子を含有する。
−COO
−M
+ ・・・・・(1)
(M
+は1価の陽イオンを表す。)
M
+で表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H
+、Li
+、Na
+、K
+、NH
4+が挙げられる。すなわち、(A)成分は、「(A)カルボキシ基及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するシリカ粒子」と言い換えることもできる。ここで、「カルボキシ基の塩」とは、カルボキシ基(−COOH)に含まれている水素イオンをLi
+、Na
+、K
+、NH
4+等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。(A)成分は、その表面に上記一般式(1)で表される官能基が共有結合を介して固定されたシリカ粒子であり、その表面に上記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したようなものは含まれない。
【0022】
本実施形態において使用される(A)成分は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、シリカ粒子を用意する。シリカ粒子としては、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、スクラッチ等の研磨欠陥を低減する観点から、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、例えば、特開2003−109921号公報等に記載された方法で製造されたものを使用することができる。このようなシリカ粒子の表面を修飾することにより、本実施形態で使用可能な(A)成分を製造することができる。以下にシリカ粒子の表面を修飾する方法を例示するが、本発明はこの具体例により何ら限定されるものではない。
【0023】
シリカ粒子の表面修飾としては、特開2005−162533号公報又は特開2010−269985号公報に記載された方法を適用することができる。例えば、シリカ粒子とカルボキシ基含有シランカップリング剤(例えば、(3−トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物)とを混合して、十分に攪拌することにより、前記シリカ粒子の表面に前記カルボキシ基含有シランカップリング剤を共有結合させることができる。更に加熱して加水分解することにより、カルボキシ基が共有結合を介して固定されたシリカ粒子を得ることができる。
【0024】
(A)成分の平均粒子径の下限値は、好ましくは15nmであり、より好ましくは30nmである。(A)成分の平均粒子径の上限値は、好ましくは100nmであり、より好ましくは70nmである。(A)成分の平均粒子径が前記範囲であると、タングステンやコバルト等の導電体金属を含む半導体基板を、研磨欠陥の発生を抑制しつつ実用的な研磨速度で研磨できる場合がある。(A)成分の平均粒子径は、製造された化学機械研磨用組成物を動的光散乱法による粒子径測定装置で測定することによって得られる。動的光散乱法による粒子径測定装置としては、ベックマン・コールター社製のナノ粒子アナライザー「DelsaNano S」、Malvern社製の「Zetasizer nano zs」等が挙げられる。なお、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径は、一次粒子が複数個凝集して形成された二次粒子の平均粒子径を表している。
【0025】
(A)成分のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物のpHが1以上6以下の場合、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は−10mV以下であることが好ましい。−10mV以下の負電位であると、粒子間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐとともに、化学機械研磨の際に正電荷を帯びる基板を選択的に研磨できる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置としては、大塚電子株式会社製の「ELSZ−1」、Malvern社製の「Zetasizer nano zs」等が挙げられる。(A)成分のゼータ電位は、前述したカルボキシ基含有シランカップリング剤の添加量を増減することにより適宜調整することができる。
【0026】
(A)成分の含有量の下限値は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、特に好ましくは1質量%である。(A)成分の含有量の上限値は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%であり、より好ましくは8質量%であり、特に好ましくは5質量%である。(A)成分の含有量が前記範囲であると、タングステンやコバルト等の導電体金属を含む半導体基板を、研磨欠陥の発生を抑制しつつ実用的な研磨速度で研磨できる場合がある。
【0027】
1.2.(B)成分
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(B)シラン化合物を含有する。(B)成分を含有することにより、研磨工程において(B)成分が被研磨面に吸着し、被研磨面に露出している配線金属等の金属を触媒として縮合することにより保護膜を形成すると考えられる。これにより、タングステンやコバルト等の導電体金属を含む半導体基板を、研磨欠陥の発生を抑制しつつ実用的な研磨速度で研磨することができる。
【0028】
(B)成分としては、例えば、下記一般式(2)、(3)及び(4)で表されるシラン化合物を好適に使用することができる。
【0029】
Si(OR
1)
4 ・・・・・(2)
式(2)中、複数存在するR
1は、それぞれ独立に1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としては、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0030】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0031】
SiR
2m(OR
3)
n(R
4−NR
52)
p ・・・・・(3)
SiR
2m(OR
3)
nR
5p ・・・・・(4)
式(3)及び式(4)中、R
2及びR
3はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、R
5はそれぞれ独立にヘテロ原子を含む若しくは含まない炭素数1〜10の1価の有機基又は水素原子を表し、mは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数であり、pは1又は2であり、m+n+p=4である。式(3)中、R
4は2価の炭化水素基を表す。
【0032】
R
2及びR
3を表す1価の炭化水素基としては、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0033】
R
4を表す2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルカンジイル基であることが好ましい。炭素数1〜4のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。
【0034】
R
5を表すヘテロ原子を含む又は含まない炭素数1〜10の1価の有機基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数5〜9のシクロアルキルアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。炭素数5〜9のシクロアルキルアルキル基としては、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロブチルプロピル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(3)で表されるシラン化合物の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(4)で表されるシラン化合物の具体例としては、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
これらの(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(B)成分の含有量の下限値は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0001質量%であり、より好ましくは0.0005質量%であり、特に好ましくは0.001質量%である。(B)成分の含有量の上限値は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.05質量%であり、より好ましくは0.03質量%であり、さらにより好ましくは0.02質量%であり、特に好ましくは0.015質量%である。(B)成分の含有量が前記範囲であると、タングステンやコバルト等の導電体金属の表面に適度な厚さの保護膜を形成することができ、研磨欠陥の発生を抑制しつつ実用的な研磨速度で研磨することができる。
【0039】
1.3.液状媒体
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、液状媒体を含有する。液状媒体としては、水、水及びアルコールの混合媒体、水及び水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水及びアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。水としては、特に制限されるものではないが、純水が好ましい。水は、化学機械研磨用組成物の構成材料の残部として配合されていればよく、水の含有量については特に制限はない。
【0040】
1.4.その他の添加剤
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、必要に応じて、酸化剤、有機酸、界面活性剤、水溶性高分子、防蝕剤、pH調整剤等の添加剤をさらに含有してもよい。以下、各添加剤について説明する。
【0041】
<酸化剤>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、酸化剤を含有してもよい。酸化剤を含有することにより、タングステンやコバルト等の金属を酸化して研磨液成分との錯化反応を促すことにより、被研磨面に脆弱な改質層を作り出すことができるため、研磨速度が向上する場合がある。
【0042】
酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、硝酸第二鉄、硝酸二アンモニウムセリウム、次亜塩素酸カリウム、オゾン、過ヨウ素酸カリウム、過酢酸等が挙げられる。これらの酸化剤のうち、酸化力及び取り扱いやすさを考慮すると、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素が好ましく、過酸化水素がより好ましい。これらの酸化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が酸化剤を含有する場合において、酸化剤の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.3〜4質量%であり、特に好ましくは0.5〜3質量%である。なお、酸化剤は、化学機械研磨用組成物中で分解されやすいため、CMPの研磨工程を行う直前に添加されることが望ましい。
【0044】
<有機酸>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、有機酸を含有してもよい。有機酸を含有することにより、有機酸が被研磨面に配位して研磨速度が向上するとともに、研磨中における金属塩の析出を抑制できる場合がある。また、有機酸が被研磨面に配位することで、被研磨面のエッチング及び腐食によるダメージを低減できる場合がある。
【0045】
このような有機酸としては、特に制限されないが、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、乳酸、イミノジ酢酸等の飽和カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ブテン酸、2−メチル−3−ブテン酸、2−ヘキセン酸、3−メチル−2−ヘキセン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、2−ペンテン二酸、イタコン酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸;トリメリット酸等の芳香族カルボン酸;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジン、芳香族アミノ酸、複素環型アミノ酸等のアミノ酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらの有機酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が有機酸を含有する場合において、有機酸の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.03〜1質量%であり、特に好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0047】
<界面活性剤>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、化学機械研磨用組成物に適度な粘性を付与できる場合がある。化学機械研磨用組成物の粘度は、25℃において0.5mPa・s以上10mPa・s未満となるように調整することが好ましい。
【0048】
界面活性剤としては、特に制限されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩;パーフルオロアルキル化合物等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等の三重結合を有する非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が界面活性剤を含有する場合において、界面活性剤の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001〜5質量%であり、より好ましくは0.001〜3質量%であり、特に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0051】
<水溶性高分子>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子には、被研磨面の表面に吸着して研磨摩擦を低減させる効果がある。この効果により、被研磨面における研磨欠陥の発生を低減できる場合がある。
【0052】
水溶性高分子としては、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、(メタ)アクリル酸とマレイン酸の共重合体等が挙げられる。
【0053】
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜1,000,000であり、より好ましくは3,000〜800,000である。水溶性高分子の重量平均分子量が前記範囲にあると、配線材料等の被研磨面に吸着しやすくなり、研磨摩擦をより低減できる場合がある。その結果、被研磨面における研磨欠陥の発生をより効果的に低減できる場合がある。なお、本明細書中における「重量平均分子量(Mw)」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
【0054】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が水溶性高分子を含有する場合において、水溶性高分子の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.03〜0.5質量%である。
【0055】
なお、水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)にも依存するが、化学機械研磨用組成物の25℃における粘度が0.5mPa・s以上10mPa・s未満となるように調整することが好ましい。化学機械研磨用組成物の25℃における粘度が0.5mPa・s以上10mPa・s未満であると、配線材料等を高速で研磨しやすく、粘度が適正であるため研磨布上に安定して化学機械研磨用組成物を供給することができる。
【0056】
<防蝕剤>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、防蝕剤を含有してもよい。防蝕剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール及びその誘導体が挙げられる。ここで、ベンゾトリアゾール誘導体とは、ベンゾトリアゾールの有する1個又は2個以上の水素原子を、例えば、カルボキシ基、メチル基、アミノ基、ヒドロキシ基等で置換したものをいう。ベンゾトリアゾール誘導体の具体例としては、4−カルボキシルベンゾトリアゾール、7−カルボキシベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールブチルエステル、1−ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0057】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が防蝕剤を含有する場合において、防蝕剤の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0058】
<pH調整剤>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、さらに必要に応じてpH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、水酸化カリウム、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、TEAH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)、アンモニア等の塩基;リン酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、及びこれらの塩が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
【0059】
1.5.pH
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、特に制限されないが、好ましくは2以上5以下であり、特に好ましくは2以上4以下である。pHが前記範囲にあると、化学機械研磨用組成物中の(A)成分の分散性が向上することで、化学機械研磨用組成物の貯蔵安定性が良好となるため好ましい。
【0060】
なお、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、例えば、有機酸やpH調整剤等の含有量を適宜増減することにより調整することができる。
【0061】
本発明において、pHとは、水素イオン指数のことを指し、その値は、25℃、1気圧の条件下で市販のpHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーター)を用いて、測定することができる。
【0062】
1.6.用途
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、半導体装置を構成する複数種の材料を有する半導体基板を化学機械研磨するための研磨材料として好適である。例えば、前記半導体基板は、タングステンやコバルト等の導電体金属の他、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスシリコン等の絶縁膜材料や、チタン、窒化チタン、窒化タンタル等のバリアメタル材料を有していてもよい。
【0063】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物の特に好適な研磨対象は、タングステンを含む配線層が設けられた半導体基板等の被処理体である。具体的には、ヴィアホールを有するシリコン酸化膜と、前記シリコン酸化膜上にバリアメタル膜を介して設けられたタングステン膜と、を含む被処理体が挙げられる。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物を用いることによって、タングステン膜を高速かつ平坦に研磨できるだけでなく、タングステン膜とシリコン酸化膜等の絶縁膜とが共存する被研磨面に対しても研磨欠陥の発生を抑制しながら高速かつ平坦に研磨することができる。
【0064】
1.7.化学機械研磨用組成物の調製方法
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水等の液状媒体に上述の各成分を溶解又は分散させることにより調製することができる。溶解又は分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解又は分散できればどのような方法を適用してもよい。また、上述の各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
【0065】
また、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、濃縮タイプの原液として調製し、使用時に水等の液状媒体で希釈して使用することもできる。
【0066】
2.化学機械研磨方法
本発明の一実施形態に係る研磨方法は、上述した化学機械研磨用組成物を用いて、半導体基板を研磨する工程を含む。以下、本実施形態に係る化学機械研磨方法の一具体例について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0067】
2.1.被処理体
図1は、本実施形態に係る化学機械研磨方法の使用に適した被処理体を模式的に示した断面図である。被処理体100は、以下の工程(1)〜工程(4)を経ることにより形成される。
【0068】
(1)まず、
図1に示すように、基体10を用意する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成されたシリコン酸化膜とから構成されていてもよい。さらに、基体10には、(図示しない)トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。次に、基体10の上に、熱酸化法を用いて絶縁膜であるシリコン酸化膜12を形成する。
【0069】
(2)次いで、シリコン酸化膜12をパターニングする。得られたパターンをマスクとして、フォトリソグラフィー法によりシリコン酸化膜12にヴィアホール14を形成する。
【0070】
(3)次いで、スパッタ等を適用してシリコン酸化膜12の表面及びヴィアホール14の内壁面にバリアメタル膜16を形成する。タングステンとシリコンとの電気的接触があまり良好でないため、バリアメタル膜を介在させることで良好な電気的接触を実現している。バリアメタル膜16としては、チタン及び/又は窒化チタンが挙げられる。
【0071】
(4)次いで、CVD法を適用してタングステン膜18を堆積させる。
【0072】
以上の工程により、被処理体100が形成される。
【0073】
2.2.化学機械研磨方法
2.2.1.第1研磨工程
図2は、第1研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。第1研磨工程では、
図2に示すように、上述の化学機械研磨用組成物を用いてバリアメタル膜16が露出するまでタングステン膜18を研磨する。
【0074】
2.2.2.第2研磨工程
図3は、第2研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。第2研磨工程では、
図3に示すように、上述の化学機械研磨用組成物を用いてシリコン酸化膜12、バリアメタル膜16及びタングステン膜18を研磨する。第2研磨工程を経ることにより、被研磨面の平坦性に優れた次世代型の半導体装置200を製造することができる。
【0075】
なお、上記の通り、上述の化学機械研磨用組成物は、半導体装置を構成する複数種の材料を有する半導体基板を化学機械研磨するための研磨材料として好適である。そのため、本実施形態に係る化学機械研磨方法の第1研磨工程及び第2研磨工程において、同一組成の化学機械研磨用組成物を用いることができるので、生産ラインのスループットが向上する。
【0076】
2.3.化学機械研磨装置
上述の第1研磨工程及び第2研磨工程には、例えば
図4に示すような研磨装置300を用いることができる。
図4は、研磨装置300を模式的に示した斜視図である。上述の第1研磨工程及び第2研磨工程は、スラリー供給ノズル42からスラリー(化学機械研磨用組成物)44を供給し、かつ研磨布46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、半導体基板50を保持したキャリアーヘッド52を当接させることにより行う。なお、
図4には、水供給ノズル54及びドレッサー56も併せて示してある。
【0077】
キャリアーヘッド52の研磨荷重は、10〜980hPaの範囲内で選択することができ、好ましくは30〜490hPaである。また、ターンテーブル48及びキャリアーヘッド52の回転数は10〜400rpmの範囲内で適宜選択することができ、好ましくは30〜150rpmである。スラリー供給ノズル42から供給されるスラリー(化学機械研磨用組成物)44の流量は、10〜1,000mL/分の範囲内で選択することができ、好ましくは50〜400mL/分である。
【0078】
市販の研磨装置としては、例えば、荏原製作所社製、型式「EPO−112」、「EPO−222」;ラップマスターSFT社製、型式「LGP−510」、「LGP−552」;アプライドマテリアル社製、型式「Mirra」、「Reflexion」;G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI−400L」;AMAT社製、型式「Reflexion LK」等が挙げられる。
【0079】
3.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0080】
3.1.シリカ粒子水分散体の調製
3.1.1.水分散体Aの調製
容量2000cm
3のフラスコに、PL−3(扶桑化学工業株式会社製、19.5%コロイダルシリカ)を2000g入れ、60℃になるまで加熱した。その後、(3−トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(東京化成工業株式会社製)6.0gを加え、60℃で加熱、4時間反応を続けた。冷却後、カルボン酸修飾シリカ粒子の水分散体Aを得た。
【0081】
3.1.2.水分散体Bの調製
純水787.9g、25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)786.0g、メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)12924gの混合液に、テトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)1522.2gとメタノール413.0gの混合液を、液温35℃に保ちつつ55分かけて滴下して、加水分解したシリカゾル分散液を得た。このゾルを常圧下にて、2900mlまで加熱濃縮を行った。この濃縮液をさらに、常圧下、加熱蒸留しつつ、容量を一定に保ちつつ純水を滴下し、塔頂温が100℃に達し、且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了して、シリカゾルを得た。作成したシリカゾル540gに、メタノール19.0gと3−アミノプロピルトリメトキシシラン1.0gの混合液を、液温を保ちつつ10分かけて滴下した後、常圧下、2時間還流を行った。その後、容量を一定に保ちつつ純水を滴下し、塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了して、アミノ修飾シリカ粒子の水分散体を得た。得られた水分散体を150℃、24時間の真空乾燥を行い、アミノ修飾シリカ粒子を得た。
【0082】
得られたアミノ修飾シリカ粒子を70℃、12時間の乾燥を行った。マロン酸(東京化成工業株式会社製)1.4gを、あらかじめ窒素フローした三つ口フラスコに量り取り、20.0mlのN−メチル−2−ピロリドン(NMP、富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えて、マロン酸が完全に溶解するまで攪拌した。この反応溶液にアミノ修飾シリカ粒子2.0gを加えて1時間の攪拌を行い、続いて、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニル(東京化成工業株式会社製)を6.2g、トリエチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1.4ml加えて、室温で24時間攪拌した。この反応溶液を一晩静置し、粒子を沈殿させ上澄み溶液を捨てた後、NMPで粒子を数回洗浄し、カルボン酸修飾シリカ粒子を得た。回収した粒子は100℃、12時間の真空乾燥を行い、溶媒を除去した。純水を適量加えて20%のカルボン酸修飾シリカ粒子の水分散体Bを得た。
【0083】
3.1.3.水分散体Cの調製
上記「3.1.2.水分散体Bの調製」と同様の方法にてアミノ修飾シリカ粒子を得た。得られたアミノ修飾シリカ粒子を70℃、12時間の真空乾燥を行った。クエン酸(東京化成工業株式会社製)1.4gを、あらかじめ窒素フローした三つ口フラスコに量り取り、20.0mlのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて、クエン酸が完全に溶解するまで攪拌した。この反応溶液にアミノ修飾シリカ粒子2.0gを加えて1時間の攪拌を行い、続いて、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルを5.7g、トリエチルアミン)を1.3ml加えて、室温で24時間攪拌した。この反応溶液を一晩静置し、粒子を沈殿させ上澄み溶液を捨てた後、NMPで粒子を数回洗浄し、カルボン酸修飾シリカ粒子を得た。回収した粒子は100℃、12時間の真空乾燥を行い、溶媒を除去した。純水を適量加え20%のカルボン酸修飾シリカ粒子の水分散体C得た。
【0084】
3.1.4.水分散体Dの調製
容量2000cm
3のフラスコに、PL−3(扶桑化学工業株式会社製、19.5%コロイダルシリカ)を2000g入れ、60℃になるまで加熱した。続けてシランカップリング剤として(3−トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物12.0gを加え、60℃で加熱、4時間反応を続けた。冷却後、カルボン酸修飾シリカ粒子の水分散体Dを得た。
【0085】
3.1.5.水分散体Eの調製
容量2000cm
3のフラスコに、PL−3(扶桑化学工業株式会社製、19.5%コロイダルシリカ)を2000g入れ、60℃になるまで加熱した。続けてシランカップリング剤として(3−トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物18.0gを加え、60℃で加熱、4時間反応を続けた。冷却後、カルボン酸修飾シリカ粒子の水分散体Eを得た。
【0086】
3.1.6.水分散体Fの調製
容量2000cm
3のフラスコに、25質量%濃度のアンモニア水70g、イオン交換水40g、エタノール175g及びテトラエトキシシラン21gを投入し、180rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。60℃のまま1時間撹拌した後冷却し、コロイダルシリカ/アルコール分散体を得た。次いで、エバポレータにより、80℃でこの分散体にイオン交換水を添加しながらアルコール分を除去する操作を数回繰り返すことにより分散体中のアルコールを除き、固形分濃度15%のシリカ分散液を調製した。
【0087】
イオン交換水50gに酢酸5gを投入し、撹拌しながらさらにメルカプト基含有シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KBE803」)5gを徐々に滴下した。30分後、調製しておいたシリカ分散液を1000g添加し、さらに1時間撹拌を継続した。その後、31%過酸化水素水を200g投入し、48時間室温にて放置することにより、スルホ基を有するシリカ粒子を含む水分散体Fを得た。
【0088】
3.1.7.水分散体Gの調製
純水787.9g、26%アンモニア水786.0g、メタノール12924gの混合液に、テトラメトキシシラン1522.2gとメタノール413.0gの混合液を、液温35℃に保ちつつ55分かけて滴下した。その後、常圧下にて、2900mlまで加熱濃縮を行った。この濃縮液をさらに、常圧下、加熱蒸留しつつ、容量を一定に保ちつつ純水を滴下し、塔頂温が100℃に達し、且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了し、シリカ分散液を調製した。
【0089】
調製したシリカ分散液540gに、メタノール19.0gと3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.0gの混合液を、液温を保ちつつ10分かけて滴下した後、常圧下、2時間還流を行った。その後、容量を一定に保ちつつ純水を滴下し、塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了して、アミノ基を有するシリカ粒子を含む水分散体Gを得た。
【0090】
3.2.化学機械研磨用組成物の調製
酸化剤として過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、30%水溶液)を用い、ポリエチレン製容器に、表1〜表3に示す組成となるように各成分を添加し、さらに水酸化カリウムを必要に応じて加えて表1〜表3に示すpHとなるように調整し、全成分の合計量が100質量部となるように純水で調整することにより、各実施例及び各比較例の化学機械研磨用組成物を調製した。
【0091】
3.3.評価方法
3.3.1.研磨速度試験
上記で得られた化学機械研磨用組成物を用いて、直径12インチのCVD−W膜300nm付きウエハ又は直径12インチのp−TEOS膜(シリコン酸化膜)300nm付きウエハを被研磨体として、下記の研磨条件で60秒間の化学機械研磨試験を行った。
【0092】
<研磨条件>
・研磨装置:AMAT社製、型式「Reflexion LK」
・研磨パッド:富士紡ホールディングス株式会社製、「多硬質ポリウレタン製パッド;H800−type1(3−1S)775」
・化学機械研磨用組成物供給速度:300mL/分
・定盤回転数:100rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:2.5psi
・研磨速度(Å/分)=(研磨前の膜の厚さ−研磨後の膜の厚さ)/研磨時間
【0093】
なお、タングステン膜の厚さは、抵抗率測定機(ケーエルエー・テンコール社製、型式「OmniMap RS100」)により直流4探針法で抵抗を測定し、このシート抵抗値とタングステンの体積抵抗率から下記式によって算出した。
・膜の厚さ(Å)=[タングステン膜の体積抵抗率(Ω・m)÷シート抵抗値(Ω)]×10
10
【0094】
研磨速度試験の評価基準は下記の通りである。タングステン膜の研磨速度結果、シリコン酸化膜の研磨速度結果、及びその評価結果を表1〜表3に併せて示す。
(評価基準)
・「A」…タングステン研磨速度が100Å/分以上かつp−TEOS研磨速度が200Å/分以上である場合、両者の研磨速度が十分に大きいため、実際の半導体基板の研磨において他材料膜の研磨との速度バランスが容易に確保でき、実用的であるから良好「A」と判断した。
・「B」…タングステン研磨速度が100Å/分未満またはp−TEOS研磨速度200Å/分未満である場合、両者もしくはいずれか一方の研磨速度が小さいため、実用困難であり不良「B」と判断した。
【0095】
3.3.2.欠陥評価
被研磨体である直径12インチのp−TEOS膜付きウエハを、下記条件で2分間研磨を行った。
<研磨条件>
・研磨装置:AMAT社製、型式「Reflexion LK」
・研磨パッド:富士紡ホールディングス株式会社製、「多硬質ポリウレタン製パッド;H800−type1(3−1S)775」
・化学機械研磨用組成物供給速度:300mL/分
・定盤回転数:100rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:2.5psi
【0096】
上記で研磨が行われたp−TEOS膜付きウエハについて、欠陥検査装置(ケーエルエー・テンコール社製、型式「Surfscan SP1」)を用いて、90nm以上の大きさの欠陥総数をカウントした。評価基準は以下の通りである。ウエハ当たりの欠陥総数及びその評価結果を表1〜表3に併せて示す。
(評価基準)
・「A」…ウエハ当たりの欠陥総数が500個未満である場合を良好「A」と判断した。
・「B」…ウエハ当たりの欠陥総数が500個以上である場合を不良「B」と判断した。
【0097】
3.4.評価結果
下表1〜下表3に、各実施例及び各比較例の化学機械研磨用組成物の組成並びに各評価結果を示す。
【0101】
上表1〜上表3中の各成分は、それぞれ下記の商品又は試薬を用いた。なお、上表1〜上表3中の砥粒の含有量は、各水分散体の固形分濃度を表す。
<砥粒>
・水分散体A〜G:上記で調製したシリカ粒子の水分散体A〜G
・PL−3:扶桑化学工業株式会社製、商品名「PL−3」、コロイダルシリカ、平均粒子径70nm
<シラン化合物>
・3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物:東京化成工業株式会社製、商品名「[(3−Triethoxysilyl)propyl]succinic Anhydride」
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン:東京化成工業株式会社製、商品名「(3−Mercaptopropyl)trimethoxysilane」
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン:東京化成工業株式会社製、商品名「3−Aminopropyltrimethoxysilane」
<有機酸>
・クエン酸:東京化成工業株式会社製、商品名「Citric Acid」
・マレイン酸:東京化成工業株式会社製、商品名「Maleic Acid」
・マロン酸:東京化成工業株式会社製、商品名「Malonic Acid」
・リンゴ酸:東京化成工業株式会社製、商品名「DL−Apple Acid」
・ヒスチジン:東京化成工業株式会社製、商品名「L−Histidine」
・アルギニン:東京化成工業株式会社製、商品名「L−(+)−Arginine」
<水溶性高分子>
・ポリアクリル酸:東亜合成株式会社製、商品名「ジュリマーAC−10L」、Mw=20,000〜30,000
<pH調整剤>
・モノエタノールアミン:東京化成工業株式会社製、商品名「2−Aminoethanol」
・TEAH:東京化成工業株式会社製、商品名Tetraethylammonium Hydroxide(10% in Water)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド
【0102】
実施例1〜25の化学機械研磨用組成物を用いた場合には、いずれもタングステン膜及びp−TEOS膜を実用的な研磨速度で研磨することができ、かつ、研磨後におけるp−TEOS膜の表面欠陥の発生を低減することができた。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
タングステンやコバルト等の導電体金属を含む半導体基板を高速かつ平坦に研磨することができるとともに、研磨後の表面欠陥を低減できる化学機械研磨組成物、及び化学機械研磨方法を提供する。