特許第6892052号(P6892052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6892052錠前装置のドアへの取付構造および錠前装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892052
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】錠前装置のドアへの取付構造および錠前装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 9/08 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   E05B9/08 B
   E05B9/08 E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-158063(P2017-158063)
(22)【出願日】2017年8月18日
(65)【公開番号】特開2019-35282(P2019-35282A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】511112272
【氏名又は名称】株式会社グラモ
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 功
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−169025(JP,A)
【文献】 特開平10−311170(JP,A)
【文献】 特開2017−106282(JP,A)
【文献】 実開平02−040866(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0026817(US,A1)
【文献】 西独国特許出願公開第10243327(DE,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0771921(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 9/00−9/10
E05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に雌ネジが形成されているシリンダ孔を有するシリンダ錠部と、
前記シリンダ孔の雌ネジに螺合する中空ネジと、
前記中空ネジが貫通するブラケット孔を有し、前記シリンダ錠部および前記中空ネジのネジ頭の間に挟まれて保持されるブラケットと、
ドア内部に配置され、前記ブラケットが嵌合する表ほぞ穴を有する錠取付部と、
前記シリンダ孔、前記中空ネジ、前記ブラケット孔、および前記表ほぞ穴の中に設けられた取付孔を貫通するカプラと、
を備える錠前装置のドアへの取付構造であって、
前記ブラケット孔に前記中空ネジが嵌入されて前記中空ネジのネジ頭は前記ブラケット孔の縁に係止され、
前記ブラケットが前記表ほぞ穴に嵌合され、
前記中空ネジは、前記取付孔を介して前記シリンダ孔から締結可能である、
錠前装置のドアへの取付構造。
【請求項2】
前記錠取付部の側面から挿通され、前記錠取付部に前記ブラケットを押圧するブラケット止めピンをさらに備え、前記ブラケット止めピンが前記錠取付部の側面から挿通されて前記ブラケットが前記錠取付部に固定される、請求項1記載の錠前装置のドアへの取付構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記ブラケット止めピンが貫通するピン受孔をさらに備える、請求項2記載の錠前装置のドアへの取付構造。
【請求項4】
前記中空ネジの頭部は前記取付孔側を向いている、請求項1乃至3のいずれかに記載の錠前装置のドアへの取付構造。
【請求項5】
前記カプラは、前記錠取付部に対して回動可能に保持されていて、前記カプラの回動に応じて前記錠前装置が施錠および解錠される、請求項1乃至4のいずれかに記載の錠前装置のドアへの取付構造。
【請求項6】
前記ドアの表面にシリンダ錠部が配置され、前記ドアの裏面にサムターン部が配置され、前記シリンダ錠部および前記サムターン部は前記カプラの両端にそれぞれ連結されていて、前記シリンダ錠部および前記サムターン部を前記ドアに固定する、請求項1乃至5のいずれかに記載の錠前装置のドアへの取付構造。
【請求項7】
サムターン部と、
内周面に雌ネジが形成されているシリンダ孔を有するシリンダ錠部と、
前記シリンダ孔の雌ネジに螺合する中空ネジと、
前記中空ネジが貫通するブラケット孔を有し、前記シリンダ錠部および前記中空ネジのネジ頭の間に挟まれて保持されるブラケットと、
ドア内部に配置され、前記ブラケットが嵌合する表ほぞ穴を有する錠取付部と、
前記シリンダ孔、前記中空ネジ、前記ブラケット孔、および前記表ほぞ穴の中に設けられた取付孔を貫通するカプラと、
を備え、
前記ブラケット孔に前記中空ネジが嵌入されて前記中空ネジのネジ頭は前記ブラケット孔の縁に係止され、
前記ブラケットが前記表ほぞ穴に嵌合され、
前記中空ネジは、前記取付孔を介して前記シリンダ孔から締結可能であり、
前記シリンダ錠部および前記サムターン部は前記カプラの両端にそれぞれ連結されている、錠前装置。
【請求項8】
前記中空ネジの頭部は前記取付孔側を向いている、請求項7記載の錠前装置。
【請求項9】
前記カプラは、前記錠取付部に対して回動可能に保持されていて、前記カプラの回動に応じて施錠および解錠される、請求項7又は8記載の錠前装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠前装置のドアへの取付構造、および錠前装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の玄関ドア等に取り付けられる錠前装置が知られている。
【0003】
錠前装置は、ドア側面から突出可能に設けられたデッドボルトを機械的に出没させることで、ドアの解錠および施錠を制御することができる装置である。錠前装置は、ドアの外側すなわち宅外からも、およびドアの内側すなわち宅内からも解錠および施錠することができる。
【0004】
錠前装置はドアの解錠および施錠を司っているので、不正解錠を防ぐためには宅外からの取り外しが困難な取付構造が必要である。
【0005】
例えば特許文献1には、ドアの錠箱のサムターン取付孔に嵌め込む取付金具と、取付金具に電動式サムターン錠本体を保持する取付プレートを備え、取付金具および取付プレートがネジ止めされている、電動式サムターンのドアへの取付構造が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ネジ止めや、粘着性の高い両面テープでサムターンの本体ケースがドアに取り付けられてなるサムターン装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、ネジ頭が宅外側に向いて配置されていると、ドアの外表面を破壊することでドアからサムターン装置を容易に取り外すことができ、防犯上望ましくない。また、粘着性の高いテープで取り付けた場合も、ドアから装置を容易に取り外すことができてしまう。また、いずれの構造においても、ドアの解錠および施錠を制御する構造とは別にドアへの取付構造を備える必要があり、構造が複雑である。
【0008】
そこで、簡素な構成で、錠前装置をドアに取付可能であり、宅外側からの取り外しが困難な錠前装置のドアへの取付構造が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−169025号公報
【特許文献2】特開2009−68311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、簡素な構成で錠前装置をドアに取付可能であり、宅外側からの取り外しが困難な錠前装置のドアへの取付構造および錠前装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる錠前装置の取付構造は、内周面に雌ネジが形成されているシリンダ孔を有するシリンダ錠部と、シリンダ孔の雌ネジに螺合する中空ネジと、中空ネジが貫通するブラケット孔を有し、シリンダ錠部および中空ネジのネジ頭の間に挟まれて保持されるブラケットと、ドア内部に配置され、ブラケットが嵌合する表ほぞ穴を有する錠取付部と、シリンダ孔、中空ネジ、ブラケット孔、および表ほぞ穴の中に設けられた取付孔を貫通するカプラと、を備える錠前装置のドアへの取付構造であって、ブラケット孔に中空ネジが嵌入されて中空ネジのネジ頭はブラケット孔の縁に係止され、ブラケットが表ほぞ穴に嵌合され、中空ネジは、取付孔を介してシリンダ孔から締結可能であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡素な構成で錠前装置をドアに取付可能であり、宅外側からの取り外しが困難である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる錠前装置の取付構造の実施の形態を示す分解斜視図である。
図2】上記錠前装置が設置されるドアの錠取付部と、上記錠前装置が備えるブラケットおよび中空ネジを宅外側から見た分解斜視図である。
図3】上記錠前装置が備えるブラケットおよび中空ネジの縦断面図である。
図4】上記錠前装置が備える連結軸板の斜視図である。
図5】上記連結軸板の部分拡大斜視図である。
図6】上記錠前装置が備えるカプラの斜視図である。
図7】上記錠前装置が備える施錠機構に前記連結軸板が係合される様子を示す図である。なお、上記ブラケットおよび上記中空ネジは省略されている。
図8】上記施錠機構および上記連結軸板に、上記カプラが係合される様子を示す図である。なお、上記錠前装置が備える固定部材は省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
●錠前装置●
以下、本発明にかかる錠前装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、錠前装置1は、錠取付部6と、アーマープレート7と、シリンダ錠部11と、ブラケット13と、中空ネジ14と、固定部材15と、パネル16と、サムターン部20と、連結軸板30と、カプラ40と、を備える。シリンダ錠部11は、ドア100の表面側、ここでは宅外側に配置されている。サムターン部20は、ドア100の裏面側、ここでは宅内側に配置されている。
【0016】
●ドア100
ドア100は2枚の化粧板が向かい合って構成されており、宅外側の化粧板にはシリンダ錠部11が固定されるシリンダ取付孔、宅内側の化粧板にはサムターン部20が固定されるサムターン取付孔がある。シリンダ取付孔およびサムターン取付孔は、後述する錠取付部6の表ほぞ穴61および裏ほぞ穴63(図2参照)に対応する位置にそれぞれ設けられていて、取付孔62を介して互いに連通している。
【0017】
●錠取付部6
錠取付部6は、ドア100の内部、すなわちドア100の両面を構成する化粧板の間に配置されている略直方体状の中空の筐体である。錠取付部6の厚さは、ドア100の厚さと同程度である。錠取付部6は、ドア100の表面と対向する面に表ほぞ穴61を有する。表ほぞ穴61は、円の向かい合う2箇所が突出した形状をしている。表ほぞ穴61の形状は、後述するブラケット13の段部131の形状に対応している。表ほぞ穴61の略中央には、錠取付部6をドア100の厚さ方向に貫通する取付孔62が設けられている。取付孔62は、直径の異なる同心の2円を四半円毎に互い違いに結び合わせたような形状である。
【0018】
錠取付部6は、ドア100の裏面と対向する面であって、取付孔62の外縁に、裏ほぞ穴63を有する。裏ほぞ穴63は表ほぞ穴61と略同形状で、固定部材15の宅外側の形状に対応している。
【0019】
錠取付部6は、側面に、表ほぞ穴61に連通するピン孔71、72および裏ほぞ穴63に連通するピン孔73、74を有する。ピン孔71〜74は、各中心点を結ぶ図形が、ドア100の各辺にそれぞれ平行な略四角形である。ピン孔71、72は、シリンダ錠部11側に設けられていて、ブラケット止めピン81、82が挿通される。ピン孔73、74は、サムターン部20側に設けられていて、固定部材止めピン83、84が挿通される。
【0020】
表ほぞ穴61の内壁には、ピン孔71、72に挿通されるブラケット止めピン81、82が至る位置に受穴91、92が形成されている。裏ほぞ穴63の内壁には、ピン孔73、74に挿通される固定部材止めピン83、84が至る位置に受穴93、94が形成されている。ピン孔71〜74を貫通したブラケット止めピン81、82および固定部材止めピン83、84は、それぞれ表ほぞ穴61および裏ほぞ穴63を通って受穴91〜94に挿通される。
【0021】
錠取付部6は、側面に、ドア100側面から突出してドア100を施錠するためのデッドボルト75、およびドア100のレバーの動きに連動して出没し、ドア100を仮締めするためのラッチボルト76を備える。
【0022】
アーマープレート7は、錠取付部6の側面に固定される平板である。本実施形態では、アーマープレート7および錠取付部6は縦に並んだ3個のネジでネジ留めされている。アーマープレート7は、ドア100の外表面に露出していて、ドア100の側面の一部を構成している。アーマープレート7は、デッドボルト75およびラッチボルト76の位置に対応した適宜の貫通孔を有する。
【0023】
●シリンダ錠部11
シリンダ錠部11は、宅外から鍵を挿入してドアの施錠および開錠を切り替える機構部である。
【0024】
シリンダ錠部11は、宅外から鍵が挿入される鍵穴を備える部材で、直方体と円板を組み合わせた外形を有する。シリンダ錠部11は、ドア100表面に対向する面に、シリンダ錠部11の内部に連通する開口121を備える。開口121は例えば、ドア100への取付状態において下方部分が略円形で、略円の上部から長方形が上向きに伸び出たような形状である。
【0025】
開口121の円部分の略中央には、ブラケット固定部122が配置されている。ブラケット固定部122は、角を面取りされた略四角柱状である。ブラケット固定部122の先端は、開口121の縁より僅かに突出している。ブラケット固定部122は、シリンダ錠部11の厚さ方向に深さを有するシリンダ孔123を有する。シリンダ孔123の内周面の少なくとも一部には、中空ネジ14と螺合する雌ネジが形成されている。
【0026】
シリンダ錠部11のシリンダ孔123の奥には、宅外から挿入される鍵と連動して動作する施錠機構が内蔵されている。施錠機構は、十字型の凹部を有し、凹部は後述するカプラ40の十字突起41と係合する。
【0027】
●ブラケット13
図1乃至図3に示すように、ブラケット13は、シリンダ錠部11と中空ネジ14との間に保持される略円筒状の部材である。ブラケット13の軸線上には、貫通するブラケット孔130を備える。ブラケット13の一端側の内周形状は、シリンダ錠部11が有するブラケット固定部122の外周形状に対応している。ブラケット13は、ブラケット固定部122の外周を覆うように係合し、ブラケット13の一端側が開口121に嵌り込む。
【0028】
図3に示すように、ブラケット13の他端側には、一端側よりも外径の大きい段部131が全周に渡って形成されている。段部131の半径方向略中央には、ブラケット孔130が貫通している。段部131側のブラケット孔130の内径は、一端側のブラケット孔130の内径よりも小さい。ブラケット13の内周とブラケット固定部122の外周とが嵌り合うと、ブラケット固定部122の先端が段部131の一端側の面に当接する。
【0029】
段部131は、向かい合う2箇所に、ブラケット13の半径方向および長さ方向に突出する凸部132を備える。段部131および凸部132の形状は、錠取付部6の表ほぞ穴61の形状に対応している。それぞれの凸部132の側面には、ブラケット止めピン81、82が貫通するピン受孔133を備える。ブラケット止めピン81、82は、ピン受孔133を貫通し、表ほぞ穴61の内壁に形成された受穴91、92(図8参照)に挿通される。
【0030】
●中空ネジ14
中空ネジ14は、軸線上に貫通孔140を有するネジである。貫通孔140のネジ頭側は六角孔142になっていて、六角レンチにより中空ネジ14を回転させることができる。貫通孔140は、六角孔142を除いて略円である。中空ネジ14は、ドア100の厚さにより適宜の長さの物が配置される。
【0031】
ブラケット孔130の他端側から、中空ネジ14が挿通されている。中空ネジ14がブラケット孔130の他端に挿通されると、中空ネジ14のネジ頭は、段部131の他端側の面に当接する。このように、中空ネジ14は、ネジ頭が宅内側を向いて配置される。中空ネジ14は、取付孔62を介してのみシリンダ孔123から締結および取り外し可能である。したがって、宅外側からは中空ネジ14を取り外すのが困難であり、防犯上有効である。
【0032】
●固定部材15
固定部材15は、錠取付部6とパネル16との間に保持される略円筒状の部材である。固定部材15の軸線上には、貫通する固定部材孔150を備える。固定部材15の一端側は、錠取付部6の裏ほぞ穴63に嵌合する。固定部材15の他端側には、固定部材孔150の周囲に、パネル16とネジ留めして固定されるためのネジ孔151が等間隔に複数形成されている。本実施形態においては、ネジ孔151は4個であるが、3個以下であっても5個以上であってもよい。
【0033】
固定部材15には、向かい合う2箇所に、固定部材15の半径方向および長さ方向の一端側に突出する凸部152が、形成されている。凸部152の側面には、貫通するピン受孔153が形成されている。ピン受孔153には、錠取付部6のピン孔73、74から挿入される固定部材止めピン83、84がそれぞれ挿通される。固定部材止めピン83、84は、ピン受孔153を貫通し、裏ほぞ穴63の内壁に形成された受穴93、94(図8参照)に挿通される。
【0034】
●パネル16
パネル16は、錠取付部6および固定部材15を宅内側から覆うように取り付けられる平板である。パネル16は、取付孔62および固定部材孔150と連通するパネル孔160を有する。パネル孔160の周囲には等間隔に複数の貫通孔161が形成されている。貫通孔161の位置は固定部材15のネジ孔151と対応しており、固定部材15およびパネル16はネジ孔151および貫通孔161に挿通されるネジによりネジ留めされる。
【0035】
●サムターン部20
サムターン部20は、ドア100の宅内側からドア100を施錠および開錠する機構である。サムターン部20は、サムターンツマミ21および駆動部22を備える。サムターンツマミ21は、手動又は電動で回動可能な突起である。サムターンツマミ21は、例えば細長い長方形がサムターン部20から突出した形状である。サムターンツマミ21は、突起の中央を中心に四半円の範囲を回動可能で、回動範囲の両端が、それぞれ錠前装置1の施錠された状態および開錠された状態に対応している。
【0036】
駆動部22は、サムターンツマミ21および鍵の回動をカプラ40を介してデッドボルト75に伝達する機構である。駆動部22は、例えばサムターンツマミ21およびデッドボルト75と連結するデッドカムを有する。また、電動式で施錠および開錠が可能な錠前装置1の場合、駆動部22は、電源や、電源と接続されるモータなどの動力機構を備えていても良い。また、無線により施錠および開錠が可能な錠前装置1の場合、無線受信機を備えていても良い。サムターン部20は、適宜の構造でパネルに固定されている。
【0037】
●連結軸板30
図4および図5に示すように、連結軸板30は、シリンダ錠部11およびサムターン部20を連結する細長い平板である。連結軸板30の一端側には間隔を置いて並設された複数の溝31、32が設けられている。溝31、32はV字溝である。溝31は、連結軸板30の1平面および隣接する1側面に、幅および厚さ方向に渡って複数形成されている。溝32は、上記溝31が形成されている面とは反対側の面に、幅および厚さ方向に渡って複数形成されている。溝31および溝32は、それぞれ互い違いに形成されている。複数の溝31および複数の溝32は、等間隔に形成されている。
【0038】
連結軸板30はドア100の両面を連結する部材であるから、連結軸板30の長さは、設置されるドア100の厚さに対応する必要がある。すなわち、ドア100の厚さに応じて簡便に長さを調整できることが望ましい。溝31および溝32を有する連結軸板30によれば、実際に配置する際に、溝31または溝32に沿って連結軸板30を切断することで、所望の長さの連結軸板30を容易に得ることができる。なお、ドア100の厚さに応じて予め異なる長さの連結軸板30を用意してもよい。
【0039】
連結軸板30は、シリンダ錠部11のシリンダ孔123、ブラケット孔130、中空ネジ14の貫通孔140、錠取付部6の取付孔62、固定部材15の固定部材孔150、パネル16のパネル孔160、および後述するカプラ40の十字開口42に挿通可能な形状である。連結軸板30の一端は、シリンダ錠部11内部の施錠機構と連結され、シリンダ錠部11に挿入される鍵の回動に対応してカプラ40と共に回動する。連結軸板30の他端は、サムターン部20のサムターンツマミ21に連結される。
【0040】
連結軸板30は、本実施の形態においては細長い平板であったが、シリンダ錠部11およびサムターン部20を連結するものであれば、連結軸板30の形状は任意である。例えば、断面が長方形、長円、十字型などであってもよい。
【0041】
●カプラ40
図6に示すように、カプラ40は、角を丸くした略四角筒状の部材である。カプラ40は、鍵またはサムターンツマミ21の回動を駆動部22に伝達する部材である。カプラ40の一端側には、取付孔62を介してシリンダ錠部11内部の施錠機構と係合する十字突起41が形成されている。十字突起41の半径方向内側には、カプラ40を長さ方向に貫通する十字型の十字開口42が設けられている。カプラ40の他端は、駆動部22に連結される。
【0042】
カプラ40の他端は、長さ方向に突出するコイルばね43を備える。コイルばね43は、サムターン部20の宅外側の面に付勢されている。この構成によれば、異なる厚さのドアにおいてもカプラ40およびサムターン部20が確実に付勢されるため、設置されるドアの厚さに応じてカプラ40の長さを変更する必要がない。
【0043】
なお、ドア100の厚さに応じて異なる長さのカプラ40が設置されていてもよい。
【0044】
カプラ40は、鍵またはサムターンツマミ21の回動に応じて連結部材30と共に四半円の範囲を回動する。カプラ40の回動が駆動部22に伝達され、デッドボルト75が出没する。
【0045】
なお、カプラ40は、本実施の形態においては角を丸くした略四角筒状であったが、鍵またはサムターンツマミ21の回動を駆動部22に伝達するものであれば、カプラ40の形状は任意である。
【0046】
●錠前装置1の取付手順
まず、図3に示すように、ブラケット13のブラケット孔130に、中空ネジ14を挿入し、中空ネジ14のネジ頭をブラケット孔130の縁に係止させる。次に、図2に示すように、中空ネジ14が挿入されたブラケット13の段部131側を錠取付部6のほぞ穴62に挿入する。そして、ブラケット止めピン81、82を錠取付部6のピン孔71、72を介してブラケット13のピン受孔133に挿通させる。ブラケット止めピン81、82は、受穴91、92に至る。ブラケット止めピン81、82により、ブラケット13が錠取付部6内に固定される。
【0047】
次に、シリンダ錠部11をドア100の宅外側に接触させて、ブラケット固定部122をブラケット13の一端側に係合する。ブラケット固定部122の先端は、ブラケット13の内部で段部131に当接する。
【0048】
次に、六角レンチを宅内側から取付孔62の六角孔142に挿入し、取付孔62を介して中空ネジ14を回転させ、中空ネジ14をシリンダ錠部11のシリンダ孔123に螺合させる。中空ネジ14がシリンダ孔123に螺合されるに従って、シリンダ錠部11はドア100の表面に引き寄せられて、シリンダ錠部11およびドア100が隙間なく強固に固着される。この構成によれば、シリンダ錠部11とドア100の表面との間の隙間に工具を差し入れる等してシリンダ錠部11をドア100から引き剥がす行為を防止することができ、防犯上有効である。
【0049】
次に、図1に示すように、固定部材15を宅内側から鍵取付部6の裏ほぞ穴63に嵌合させる。固定部材止めピン83、84をそれぞれ錠取付部6のピン孔73、74を介してピン受孔153に挿通させる。固定部材止めピン83、84は、受穴93、94に至る。固定部材止めピン83、84により、固定部材15が錠取付部6内に固定される。そして、固定部材15のネジ孔151およびパネル16の貫通孔161を、ネジにより固定する。
【0050】
次に、図7に示すように、連結軸板30を宅内側からパネル孔160および固定部材孔150を介して取付孔62に挿入し、シリンダ錠部11内の施錠機構に当接させる。連結軸板30は、施錠機構の十字型の凹部のうち、縦又は横の長辺に沿うように挿入する。
【0051】
次に、図8に示すように、カプラ40を宅内側から取付孔62に挿入する。カプラ40の十字突起41は取付孔62を介してシリンダ錠部11内の施錠機構に係合される。連結軸板30は十字開口42からカプラ40の内部に挿入される。最後に、カプラ40のコイルバネ43およびサムターン部20を係合し、カプラ40が駆動部22に連結される。最後に、アーマープレート7を錠取付部6の側面にネジ留めする。
【0052】
なお、上述においては中空ネジ14とシリンダ錠部11とを螺合してから固定部材15を錠取付部6に取り付けると説明したが、固定部材15を取り付けてから中空ネジ14とシリンダ錠部11とを螺合してもよい。また、固定部材15およびパネル16を取り付けてから中空ネジ14とシリンダ錠部11とを螺合してもよい。
【0053】
また、ブラケット止めピン81、82および固定部材止めピン83、84をピン孔71〜74に挿通した後であれば、アーマープレート7を取り付ける順序は任意である。
【0054】
本発明によれば、中空ネジ14のネジ頭がサムターン側、すなわち宅内側を向いているため、宅外から錠前装置を取り外すのは困難である。また、ドア100の解錠および施錠を制御する構造およびドア100への取付構造が一体となっているため、構成が簡素である。
【0055】
なお、本実施の形態においては、シリンダおよびサムターンを有する錠前装置について説明したが、本発明の技術的思想は、その他の錠前装置にも適用可能である。また、手動で施錠および開錠を行う錠前装置、および電動式の錠前装置のいずれにも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 錠前装置
6 錠取付部
11 シリンダ錠部
13 ブラケット
14 中空ネジ
40 カプラ
61 表ほぞ穴
62 取付孔
123 シリンダ孔
130 ブラケット孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8