(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892070
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置の制御パラメータ調節方法、ワークの加工方法および工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4068 20060101AFI20210607BHJP
G05B 19/406 20060101ALI20210607BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
G05B19/4068
G05B19/406 S
B23Q17/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-23526(P2017-23526)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-126849(P2018-126849A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆太
(72)【発明者】
【氏名】中西 巧
(72)【発明者】
【氏名】尾田 光成
(72)【発明者】
【氏名】中山 野生
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−191186(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0246286(US,A1)
【文献】
特開2016−142720(JP,A)
【文献】
特表2004−525467(JP,A)
【文献】
佐藤 隆太 ほか,人の視覚特性に基づく仕上げ加工面評価方法 - 視覚解像度と法線方向変化率視認限界 -,2015年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集(2015年9月4-6日 東北大学川内北キャンパス),日本,公益社団法人精密工学会,2015年 9月 4日,P.253-254,検索日: 2018/4/17,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjepe/2015A/0/2015A_253/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4068
B23Q 17/00
G05B 19/406
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円運動試験により数値制御工作機械の運動特性を評価し制御装置のパラメータを調節するパラメータ調節方法において、
法線方向変化率演算部で、円運動軌跡から軌跡の法線方向変化率を計算し、
表示部に、前記軌跡の法線方向変化率を極座標表示し、
パラメータ変更部で、軌跡の法線方向変化率の最大値が予め定められた値以下になるように工作機械の制御装置の制御パラメータを調節することを特徴とするパラメータ調節方法。
【請求項2】
前記軌跡の法線方向変化率は、軌跡の幾何学的な法線方向変化率から、ヒトが視覚的に認識可能な空間周波数成分のみを抽出したものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記法線方向変化率は、ヒトが形状の変化を視覚的に認識できる限界の法線方向変化率と共に極座標表示される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ワークの加工方法において、
法線方向変化率演算部で、主軸を所定の平面内で所定の円周に沿って送り、該主軸の円運動軌跡から軌跡の法線方向変化率を計算し、
表示部に、前記軌跡の法線方向変化率を極座標表示し、
パラメータ変更部で、軌跡の法線方向変化率の最大値が予め定められた値以下になるように工作機械の制御パラメータを調節することを特徴とするワークの加工方法。
【請求項5】
前記軌跡の法線方向変化率は、軌跡の幾何学的な法線方向変化率から、ヒトが視覚的に認識可能な空間周波数成分のみを抽出したものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記法線方向変化率は、ヒトが形状の変化を視覚的に認識できる限界の法線方向変化率と共に極座標表示される請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも直交3軸の送り装置を有し、主軸に装着した工具とワークとを相対移動させて該ワークを加工する工作機械において、
工作機械の主軸を円運動させたときの運動軌跡データから法線方向変化率を演算する法線方向変化率演算部と、
前記法線方向変化率は、ヒトが形状の変化を視覚的に認識できる限界の法線方向変化率に関連したデータを格納した視認可能限界データ格納部と、
前記法線方向変化率演算部が演算した法線方向変化率を極座標データに変換する極座標変換部と、
極座標データに変換された法線方向変化率を前記視認可能限界データ格納部の視認可能限界と共に極座標表示する表示部と、
軌跡の法線方向変化率の最大値が予め定められた値以下になるように工作機械の制御パラメータを変更するパラメータ変更部とを具備することを特徴とする工作機械。
【請求項8】
前記軌跡の法線方向変化率は、軌跡の幾何学的な法線方向変化率から、ヒトが視覚的に認識可能な空間周波数成分のみを抽出したものである請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
前記表示部には、ヒトが形状の変化を視覚的に認識できる限界の法線方向変化率と共に前記法線方向変化率が極座標表示される請求項7に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の運動特性をヒトの視覚特性に基づいて評価する運動評価方法、評価装置および該評価方法を用いたワークの加工方法および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御工作機械で加工を行うと、加工面に望まない筋状の加工痕が現れることがあり、送り軸の運動方向が反転するときに生じる象限突起や段差上の軌跡誤差がその原因の一つである。象限突起や段差上の軌跡誤差は制御装置がもつ制御装置のパラメータを適切に設定することで低減することがでる。特許文献1には、円運動軌跡の測定結果に基づいて数値制御装置のパラメータを調節する方法が示されている。また、非特許文献1には、円運動試験を行い、その軌跡誤差が小さくなるようにパラメータを調節することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−80616号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JIS B6190-4、工作機械試験方法通則−第4部:数値制御による円運動試験
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、数値制御工作機械の運動特性をヒトの視覚特性に基づいて評価する運動評価方法および評価装置を提供すること、並びに、そうした評価に基づいてパラメータを調節可能としたワークの加工法および工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、円運動試験により数値制御工作機械の運動特性を評価
し制御装置のパラメータを調節するパラメータ調節方法において、
法線方向変化率演算部で、円運動軌跡から軌跡の法線方向変化率を計算し、
表示部に、前記軌跡の法線方向変化率を極座標表示
し、パラメータ変更部で、軌跡の法線方向変化率の最大値が予め定められた値以下になるように工作機械の制御パラメータを調節するパラメータ調節方法が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、ワークの加工方法において、主軸を所定の平面内で所定の円周に沿って送り、
法線方向変化率演算部で、該主軸の円運動軌跡から軌跡の法線方向変化率を計算し、
表示部に、前記軌跡の法線方向変化率を極座標表示し、
パラメータ変更部で、軌跡の法線方向変化率の最大値が予め定められた値以下になるように工作機械の制御パラメータを
調節するワークの加工方法が提供される。
【0009】
更に、少なくとも直交3軸の送り装置を有し、主軸に装着した工具とワークとを相対移動させて該ワークを加工する工作機械において、工作機械の主軸を円運動させたときの運動軌跡データから法線方向変化率を演算する法線方向変化率演算部と、前記法線方向変化率は、ヒトが形状の変化を視覚的に認識できる限界の法線方向変化率に関連したデータを格納した視認可能限界データ格納部と、前記法線方向変化率演算部が演算した法線方向変化率を極座標データに変換する極座標変換部と、極座標データに変換された法線方向変化率を前記視認可能限界データ格納部の視認可能限界と共に極座標表示する表示部と、軌跡の法線方向変化率の最大値が予め定められた値以下になるように工作機械の制御パラメータを変更するパラメータ変更部とを具備する工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒトの視覚特性に基づく物体表面の評価方法、評価装置および該評価方法を用いたワークの加工方法および工作機械を提供することができる。また、本発明によれば、加工面の筋状の加工痕がヒトにより視認できるか否か容易に判断することができ、その効果は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による工作機械の運動評価装置のブロック図である。
【
図4】法線方向変化率を求める方法の説明図である。
【
図5】座標情報から法線方向の角度を求める方法の説明図である。
【
図6】法線方向変化率による工作機械の運動評価方法を説明する説明図である。
【
図7】本発明の運動評価装置の応用例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の運動評価装置の他の応用例を示すブロック図である。
【
図9】本発明のパラメータ調節方法により工作機械の制御パラメータを調節した結果を示す図である。
【
図10】本発明により工作機械の制御パラメータを調節した場合の90°付近の円筒加工面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
少なくとも直交3軸の送り装置を有し、主軸に装着した工具とワークとを相対移動させて該ワークを加工する工作機械を用いて円筒面や円周溝のように送り軸の運動方向が反転するときに、象限突起や段差状の加工痕が生じる。非特許文献1は、そうした送り軸の反転を伴う数値制御による円運動試験を規定している。円運動試験結果は円運動軌跡の半径方向誤差を拡大表示することで評価される。
図2に円運動軌跡の測定結果の例をに示す。
【0013】
図2(a)では、各軸の送り軸が反転する象限切り替え時に約5マイクロメートルの段差状の軌跡誤差が生じているを示している。
図2(b)では、各送り軸が反転する象限切り替え時に、約50マイクロメートルの突起状の軌跡誤差(象限突起)が生じていることを示している。従来は、軌跡誤差ができる限り小さくなるようにパラメータを調節している。すなわち、
図2(a)の軌跡の方が
図2(b)の軌跡よりも望ましいとされている。
【0014】
これらの軌跡誤差は、加工面には筋状の加工痕となって現れる。
図2の運動軌跡を測定したのと同じ条件で、スクエアエンドミル外周刃による円筒加工を行い、軌跡誤差が生じる90°付近の加工面を撮影した結果を
図3に示す。
図3を参照すると、軌跡誤差が小さい
図3(a)では明瞭な筋状の加工痕が現れているのに対し、
図3(b)では加工痕は観察できない。よって、加工面の見た目という観点からは、
図2(b)の軌跡のほうが
図2(a)の軌跡よりも望ましいということになり、従来の評価方法および調整方法では、その評価結果に加工面の見た目は考慮されず、パラメータを調整しても必ずしも見た目上の不具合を低減することにはならないことになる。
【0015】
以下、添付図面を参照して、こうした問題を解決する本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1を参照すると、本発明の物体表面の評価装置としてのパラメータ調節装置10は、運動評価装置24と、パラメータ変更部26とを具備している。運動評価装置24は、円運動軌跡データ取得部12と、法線方向変化率演算部14、視認可能限界データ格納部16および極座標変換部18を含む軌跡分析部20と、表示部22とを主要な構成要素として具備している。軌跡分析部20は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、SSD、これらを接続する双方向バス、および、関連したプログラムによって形成することができる。表示部22は、液晶パネルやタッチパネルにより形成することができる。
【0016】
円運動軌跡データ取得部12は、後述するように、工作機械50の主軸を平面内で円運動させたときの、円運動軌跡データまたは送り軸の座標値を工作機械50のNC装置から受け取る。或いは、円運動データは、ワークに円筒加工を行ってその形状を真円度測定器などで測定した結果を用いてもよい。
【0017】
また、パラメータ変更部26は、オペレーターが入力装置28を通じて入力した指令に従い、工作機械50に対して制御パラメータを変更する。入力装置26は、例えばキーボードやマウス或いは表示部22を形成するタッチパネルとすることができる。
【0018】
一般的に、ヒトは物体表面の法線方向変化率が大きな部分では、形状の変化を視覚的に認識することができ、法線方向変化率が小さな部分では、形状の変化を視覚的に認識することができない。視認可能限界データ格納部16には、ヒトが形状の変化を視覚的に認識できる法線方向変化率の限界が格納されている。このヒトが形状の変化を視覚的に認識できる法線方向変化率の限界は、異なる複数の既知の法線方向変化率を有した複数の試験片を準備し、複数の観察者によって形状の変化を視覚的に認識できたか否かの判定を行い、そのときの法線方向変化率を平均することによって得ることができる。
【0019】
法線方向変化率演算部14は、円運動軌跡データ取得部12からの円運動軌跡データに基づいて工作機械50の円運動軌跡の法線方向変化率を演算する。
図4、5を参照して法線方向変化率を説明する。円運動軌跡データ取得部12からの円運動軌跡データには、2次元の座標値が含まれている。
図4に示す例では、Z軸に垂直な平面(XY平面)で円筒形状のワークWが切断した部分断面図である。ワークWの表面において予め定められた間隔ごとに法線ベクトルを設定することができる。XY平面にて、ワークWを所定の間隔にて切断する。それぞれの切断面において所定の間隔ごとに法線ベクトルを設定することにより、ワークWの表面全体の評価を行うことができる。
【0020】
ワークWの加工面には、予め定められた間隔ごとに設定点40を設定する。次いで、設定点40において、表面の傾きに垂直な法線ベクトルn
iを設定する。法線ベクトルn
iはi番目の設定点40の法線ベクトルである。法線ベクトルn
iについて法線方向の角度θ
iを設定することができる。ここでは、Y軸に対する角度を法線方向の角度θ
iに設定している。
【0021】
図5において、i番目の設定点42と、(i+1)番目の設定点44との座標値は既知である。これらの2つの設定点42、44の座標値に基づいて、ベクトルa
iを設定することができる。ベクトルa
iは、設定点42から設定点44に向かうベクトルである。そして、ベクトルa
iに垂直なベクトルを法線ベクトルn
iに設定することができる。この時の法線方向の角度θ
iは、次の式(1)にて算出することができる。こうして、加工面のi番目の設定点について、法線方向の角度θ
iを算出することができる。
【数1】
【0022】
法線方向変化率演算部14は、設定点40における法線方向変化率を算出する。法線方向変化率は、互いに隣り合う設定点の法線方向の角度の変化率である。例えば、法線方向の角度θ
iと法線方向の角度θ
i+1における変化率である。法線方向変化率は、次の式(2)にて算出することができる。次の式(2)は、設計形状のi番目の設定点40における法線方向変化率を示している。評価対象形状の法線方向変化率も同様の方法により算出することができる。なお、法線方向の変化率は加工面の接線方向の変化率として求めても同じ結果になることは幾何学的に明らかである。
【数2】
【0023】
極座標変換部18は、こうして得られた法線方向変化率を極座標に変換し、視認可能限界データ格納部16に格納されている法線方向変化率の視認可能な限界値と共に表示部22へ送出する。表示部22に表示される法線方向変化率演算部14における演算結果を
図6に示す。
【0024】
図6において、法線方向変化率の視認限界値は破線で示されている。また、
図6(a)、6(b)は、
図2(a)、2(b)、
図3(a)、3(b)に対応していている。なお、軌跡の法線方向変化率は、軌跡の幾何学的な法線方向変化率から、ヒトが視覚的に認識可能な空間周波数成分のみを抽出したものとしている。ヒトが視覚的に認識可能な空間周波数成分の範囲は、眼科診療におけるコントラスト感度曲線に基づいて決定してもよいし、別途用意された評価用形状を用いて決定してもよい。
【0025】
また、図中には別途評価されたヒトの法線方向変化率視認限界も破線で示している。
図6(a)と
図6(b)とを比べると、
図6(a)のほうがより大きな法線方向変化率が生じており、
図2(a)の円運動軌跡の方が
図2(b)の円運動軌跡よりも誤差が小さくても、つまり加工精度が高くても、
図3(a)に示すように明瞭な加工痕が生じていることと対応している。このように、運動評価装置24によれば、加工に先立って、工作機械50に円運動させ、その軌跡データを取得することによって、本発明の運動評価方法によれば、加工面の見た目と対応した運動評価が可能となる。
【0026】
また、工作機械50のオペレーターは、表示部22に表示された法線方向変化率を参照し、視認限界以上の法線方向変化率がある場合には、入力装置28およびパラメータ変更部26を通じて、工作機械50の制御パラメータを修正し、法線方向変化率が視認限界以下になるまでこれを繰り返す。調節対象とする制御パラメータには、位置ループゲイン、速度ループゲイン、速度ループ積分ゲインまたは時定数、摩擦補償パラメータ、バックラッシ補正パラメータを含む。
【0027】
次に、
図7を参照して、本発明のパラメータ調節装置10の応用例を説明する。
図12に示す例では、円運動軌跡データ取得部12が工作機械50のNC装置によって形成されている。
図7の工作機械50において、パラメータ調節装置10は加工機60と組み合わされている。加工機60は、工場の床面上に固定される基台としてのベッド62、該ベッド62の上面に取り付けられ上面にワークWが固定されるテーブル64、ベッド62に固定されたワークWに対面させた工具Tを先端部に装着する主軸66を鉛直な回転軸線Oを中心として回転可能に支持する主軸頭68、主軸頭68を、ベッド62に対してX軸、Y軸、Z軸の直交三軸方向に往復駆動する駆動機構52、駆動機構52のサーボモーターを制御するNC装置54を主要な構成要素として具備している。
【0028】
駆動機構52は、一例として、X軸、Y軸、Z軸ボールねじ(図示せず)、該ボールねじに係合するナット(図示せず)およびX軸、Y軸、Z軸ボールねじの各々の一端部に連結されX軸、Y軸、Z軸ボールねじを回転駆動するサーボモーターより成るX軸、Y軸、Z軸駆動モーターMx、My、Mzを具備している。また、工作機械50は、X軸、Y軸、Z軸の直交三軸の直線送り軸に加えて、水平方向のX軸を中心とした回転送り軸であるA軸や、鉛直方向のZ軸を中心とした回転送り軸であるC軸のような1または複数の回転送り軸を含んでいてもよい。その場合は、駆動機構52は、X軸、Y軸、Z軸駆動モーターMx、My、Mzに加えて、A軸、C軸のような回転送り軸用のサーボモーターを含んでいる。
【0029】
加工機60には、X軸、Y軸、Z軸の各送り軸の位置を検出するデジタルスケール(図示せず)が設けられており、NC装置54に各送り軸の位置がフィードバックされる。運動評価装置24の円運動軌跡データ取得部12は、加工機60の主軸66をXY平面内で円運動させたときの軌跡データをNC装置54から受け取る。
【0030】
次に、
図8を参照して、本発明のパラメータ調節装置10の他の応用例を説明する。
図8に示す例では、工作機械50は、ボールバー法や交差格子スケールのような測定器80を有している。
図8の例でも、円運動軌跡データ取得部12は加工機60の主軸66をXY平面内で円運動させたときの軌跡データをNC装置54から受け取る。
【0031】
図7、8の構成では、パラメータ調節装置10は、加工機60の機械制御装置(図示せず)またはNC装置54内の制御プログラムの一部として組み込むことができる。この場合、表示部22および入力装置26は、加工機60の制御盤(図示せず)に設けられているタッチパネル(図示せず)により形成することができる。
【0032】
本発明による調節方法を適用した例を
図9に示す。
図9(a)は従来技術による円運動軌跡の表示結果であり、
図9(b)は本発明による表示結果である。
図9(b)に示すように、本発明によれば、軌跡の法線方向変化率が破線で示されたヒトの視認限界以下になっている。軌跡の法線方向変化率は、軌跡の幾何学的な法線方向変化率から、ヒトが視覚的に認識可能な空間周波数成分のみを抽出したものとしている。
【0033】
図9の運動軌跡を測定したのと同じ条件で、スクエアエンドミル外周刃による円筒加工を行い、軌跡誤差が生じる90°付近の加工面を撮影した結果を
図10に示す。
図10によると、加工面には視認可能な筋状の加工痕は生じておらず、本発明によるパラメータ調節方法を用いれば、見た目上の不具合のない加工面を得られるようになることがわかる。
【0034】
また、既述の実施形態では、円運動軌跡から法線方向変化率を演算した例を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、軌跡の接線方向の変化率や軌跡そのものの微分値など、法線方向変化率と等価のものを含んでいる。
【符号の説明】
【0035】
10 パラメータ調節装置
12 円運動軌跡データ取得部
14 法線方向変化率演算部
16 視認可能限界データ格納部
18 極座標変換部
20 軌跡分析部
22 表示部
24 運動評価装置
26 パラメータ変更部
28 入力装置
40 設定点
42 設定点
44 設定点
50 工作機械
52 駆動機構
54 NC装置
60 加工機
62 ベッド
64 テーブル
66 主軸
68 主軸頭
80 測定器