【実施例】
【0092】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例における純水は、特に記載のないものについては導電率が0.86μS/cm(測定温度:25℃)の純水を用いた。
【0093】
(TEM観察用試料作製とSTEM観察用試料作製)
実施例で得られた酸化物粒子のウェットケーキサンプルの一部をプロピレングリコールに分散させ、更にイソプロピルアルコール(IPA)で100倍に希釈した。得られた希釈液をコロジオン膜又はマイクログリッドに滴下して乾燥させて、TEM観察用試料又はSTEM観察用試料とした。
【0094】
(透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析装置:TEM−EDS分析)
TEM−EDS分析による酸化物粒子の観察及び定量分析には、エネルギー分散型X線分析装置、JED−2300(日本電子株式会社製)を備えた透過型電子顕微鏡、JEM−2100(日本電子株式会社製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を2万5千倍以上とした。TEMによって観察された酸化物粒子の最大外周間の距離より粒子径を算出し、100個の粒子について粒子径を測定した結果の平均値(平均一次粒子径)を算出した。TEM−EDSによって、酸化物粒子における酸化物を構成する元素成分のモル比を算出し、10個以上の粒子についてモル比を算出した結果の平均値を算出した。
【0095】
(走査透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析装置:STEM−EDS分析)
STEM−EDS分析による、酸化物粒子中に含まれる元素のマッピング及び定量には、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(日本電子株式会社製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM−ARM200F(日本電子株式会社製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を5万倍以上とし、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
【0096】
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 EMPYREAN(スペクトリス株式会社PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は、測定範囲:10から100[°2Theta] Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度0.3°/minとした。各実施例で得られた酸化物粒子の乾燥粉体を用いてXRD測定を行った。
【0097】
(FT−IR測定)
FT−IR測定には、フーリエ変換赤外分光光度計、FT/IR−6600(日本分光株式会社製)を用いた。測定条件は、窒素雰囲気下におけるATR法を用いて、分解能4.0cm
−1、積算回数1024回である。赤外吸収スペクトルにおける波数100cm
−1から1250cm
−1のピークの波形分離は、上記FT/IR−6600の制御用ソフトに付属のスペクトル解析プログラムを用いて、残差二乗和が0.01以下となるようにカーブフィッティングした。実施例で得られ酸化物粒子の乾燥粉体を用いて測定した。
【0098】
(透過スペクトル、吸収スペクトル、反射スペクトル、色相及び彩度)
透過スペクトル、吸収スペクトル、反射スペクトル、色相、及び彩度は、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:V−770、日本分光株式会社製)を使用した。透過スペクトルの測定範囲は190nmから800nm、又は200nmから800nmとし、吸収スペクトルの測定範囲は190nmから800nm、又は200nmから800nmとし、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速として測定した。特定の波長領域について、複数の測定波長における透過率を単純平均し、平均透過率とした。
モル吸光係数は、吸収スペクトルを測定後、測定結果から得られた吸光度と分散液の酸化物濃度より、各測定波長におけるモル吸光係数を算出し、横軸に測定波長、縦軸にモル吸光係数を記載したグラフとした。測定には、厚み1cmの液体用セルを用いた。また、波長190nm(200nm)から380nmの複数の測定波長におけるモル吸光係数を単純平均し、平均モル吸光係数を算出した。
【0099】
反射スペクトルは、測定範囲を200nmから2500nmとし、サンプリングレートを2.0nm、測定速度を中速、測定方式はダブルビーム測光方式として測定し、正反射と拡散反射とを測定する全反射測定を行った。また粉末を測定する際のバックグラウンド測定(ベースライン設定)には、標準白板(製品名:Spectralon(商標)、Labsphere製)を使用した。各実施例で得られケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の乾燥粉体を用いて反射スペクトルを測定した。特定の波長領域について、複数の測定波長における反射率を単純平均し、平均反射率とした。色相及び彩度は反射スペクトル測定結果より、表色系をL
*a
*b
*表色系、視野を2(deg)、光源をD65−2、等色関数をJIS Z 8701:1999、データ間隔を5nmとして測定し、取得されたL
*、a
*、b
*それぞれの値より、色相H=b
*/a
*、彩度C=√((a
*)
2+(b
*)
2)の式を用いて算出した。
【0100】
(実施例1)
以下、実施例1においては、酸化物粒子として酸化鉄粒子の表面の少なくとも一部をケイ素化合物で被覆したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液(A液)、酸化物析出溶媒(B液)、及びケイ素化合物原料液(C液)を調製した。具体的には表1の実施例1に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表1の実施例1に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表1の実施例1に示すケイ素化合物原料液の処方に基づいて、ケイ素化合物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間攪拌することにより均質に混合し、ケイ素化合物原料液を調製した。
なお、表1に記載の化学式や略記号で示された物質については、97wt% H
2SO
4は濃硫酸(キシダ化学株式会社製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)、Fe(NO
3)
3・9H
2Oは硝酸鉄九水和物(関東化学株式会社製)を使用した。
【0101】
次に調製した酸化物原料液、酸化物析出溶媒、及びケイ素化合物原料液を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。ここで、特許文献6に記載の流体処理装置とは、同公報の
図1(B)に記載の装置であって、第2及び第3導入部の開口部d20、d30がリング状に形成されたディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であるものを用いた。具体的には、A液として酸化物原料液を第1導入部d1から処理用面1,2間に導入し、処理用部10を回転数1130rpmで運転しながら、B液として酸化物析出溶媒を第2導入部d2から処理用面1,2間に導入して、酸化物原料と酸化物析出溶媒とを薄膜流体中で混合し、処理用面1,2間において、コアとなる酸化鉄粒子を析出させた。次に、C液としてケイ素化合物原料液を第3導入部d3から処理用面1,2間に導入し、薄膜流体中においてコアとなる酸化鉄粒子を含む混合流体と混合した。コアとなる酸化鉄粒子の表面にケイ素化合物が析出され、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を含む吐出液(以下、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液)を流体処理装置の処理用面1、2間から吐出させた。吐出させたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液を、ベッセルvを介してビーカーbに回収した。
【0102】
表2に、流体処理装置の運転条件、並びに得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径及びTEM−EDS分析より算出したSi/Feのモル比をA液、B液、C液の処方及び導入流量より計算した計算値とともに示す。表2に示したA液、B液及びC液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1と第2導入部d2、及び第3導入部d3)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度であり、C液の導入温度は、第3導入部d3内の導入圧力下における実際のC液の温度である。
【0103】
pH測定には、株式会社堀場製作所製の型番D−51のpHメーターを用いた。A液、B液、及びC液を流体処理装置に導入する前に、そのpHを室温にて測定した。また、酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合直後の混合流体のpH、及びコアとなる酸化鉄粒子を含む流体とケイ素化合物原料液との混合直後のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーbに回収したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液のpHを室温にて測定した。
【0104】
流体処理装置から吐出させ、ビーカーbに回収したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。作製方法は、この種の処理の常法に従い行ったもので、吐出されたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液を回収し、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を沈降させて上澄み液を除去し、その後、純水100重量部での洗浄と沈降とを繰り返し3回行い、その後に純水での洗浄と沈降とを繰り返し3回行うことでケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を洗浄し、最終的に得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のウェットケーキの一部を−0.10MPaGにて25℃、20時間乾燥させて乾燥粉体とした。残りをウェットケーキサンプルとした。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
図3に実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のSTEMを用いたマッピング結果を、
図4に
図3のHAADF像における破線を施した位置での線分析の結果を示す。
図3、4に見られるように、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子には、粒子の全体をケイ素化合物によって覆われたものではない粒子も見られ、酸化鉄粒子の表面の一部をケイ素化合物よって被覆したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子が観察された。
【0108】
実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理による脱水反応を行った。熱処理条件は、実施例1:未処理、実施例1−2:200℃、実施例1−3:400℃、実施例1−4:600℃、実施例1−5:800℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。
図1に実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄のSTEMを用いたマッピング結果を、
図2に
図1のHAADF像における破線を施した位置での線分析の結果を示す。
図1、2に見られるように、実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、粒子の全体をケイ素化合物によって覆われた酸化鉄粒子として観察された。
【0109】
図5に実施例1及び実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のATR法にて測定したIR測定結果を示す。実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化物粒子のIR測定結果は、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化物のIR測定結果に比べて、1650cm
−1付近及び3400cm
−1付近のブロードなピークが小さくなり、800cm
−1付近から1250cm
−1付近のブロードなピークが高波数側にシフトしているように見られる。
【0110】
上記実施例1又は実施例1−5のIR測定結果における波数100cm
−1から1250cm
−1のピークを波形分離した結果を実施例1について
図6に、実施例1−5について
図7に示す。
図6、
図7に見られるように、実施例1−5は実施例1に比べて、波形分離されたピークの全ピーク成分に対するM−OH結合に波形分離された各ピークの総面積の比率が小さいことがわかる。すなわち、実施例1−5の酸化物粒子に含まれるM−OH結合の比率が、実施例1の酸化物粒子に含まれるM−OH結合の比率に比べて低いことが示されたものである。また、先述したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のIR測定結果(
図5)において、800cm
−1付近から1250cm
−1付近のブロードなピークが高波数側にシフトしているように見られた要因が、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率、特にM−OH結合1に波形分離されたピークの比率(実施例1:936cm
−1付近、実施例1−5:912cm
−1付近)が下がったことによるものであることが示されたものである。
【0111】
図8に実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のXRD測定結果を示す。
図8に見られるように、XRD測定においては、α―Fe
2O
3に由来するピークのみが検出された。すなわち上記STEM、及びIR測定において確認されたケイ素化合物が非晶質であることが確認された。
【0112】
図9に実施例1、及び実施例1−2から1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の波長200nmから2500nmの光線に対する反射スペクトルを示す。まず波長780nmから2500nmの近赤外領域の光線に対する反射率が、実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の方が実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子よりも高いことが見て取れる。上記IRスペクトルにおける、波数100cm
−1から1250cm
−1の範囲のピークを波形分離し、波形分離された各ピークの総面積に対するM−OHの結合のピークの面積比率(M−OH比率[%])は、実施例1−5<1−4<1−3<1−2<1の順に小さく、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率は、実施例1−5>1−4>1−3>1−2>1の順に大きい。
図10に、上記M−OH比率[%]に対する波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率のグラフを示す。なお、
図10においては、実施例1及び実施例1−2から1−5以外に、熱処理温度を変更し、M−OH比率を変更したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率のデータについても示した。
図10に見られるようにM−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が高くなる傾向が見られた。すなわち、本発明の酸化物粒子の一つであるケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率を制御することによって、色特性の一つである波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率を制御されたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子であり、さらに上記M−OH結合の比率を下げることによって、上記波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率を高められたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子であることが好ましく、上記M−OH比率を8%以上14.5%以下とすることによって、上記波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率を50%以上に高められたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子であることがより好ましい。このようなケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を塗布用組成物に用いた場合にあっては、太陽光を照射された塗装体の温度上昇を抑制する効果が高い等、塗料として用いるに好適である。
【0113】
図11に、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の水分散液を100℃で0.5時間、1.0時間、2.0時間静置することによって加熱処理を行ったケイ素化合物被覆酸化鉄粒子について、M−OH比率に対する波長780nmから2500nmに対する平均反射率のグラフを示す。IR測定及び波形分離より求めた各処理時間のM−OH比率は、実施例1(処理無)が14.8%、0.5時間処理が13.3%、1.0時間処理が12.6%、2.0時間処理が11.1%であった。
図11に見られるように、M−OH比率が低い方が波長780nmから2500nmに対する平均反射率が高くなることがわかった。本発明においては、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率を熱処理によって制御する場合、乾式でもよいし、分散媒に分散させた状態として実施してもよい。
【0114】
図12に、実施例1及び実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子、並びに比較として後述する実施例4で得られたケイ素化合物で表面を被覆していない酸化鉄粒子をプロピレングリコールにFe
2O
3として0.05重量%の濃度で分散させた分散液の透過スペクトルを示す。
【0115】
実施例4で得られたケイ素化合物で表面を被覆していない酸化鉄粒子は、実施例1における第3流体を用いていないこと、また特許文献6に記載の流体処理装置の第3導入部及び第3導入部の開口部d30を敷設していないことを除いては、実施例1と同じ方法で作製し、実施例1と同様の粒子径の酸化鉄粒子を得た。
【0116】
図12に見られるように、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率を変化させることによって、透過スペクトルの形状に変化が見られることがわかる。また、実施例1並びに実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、表面にケイ素化合物を被覆されていない実施例4の酸化鉄に比して、波長600nmから780nmの光線に対する透過率が高いことがわかる。実施例1−2から実施例1−4についても実施例1並びに実施例1−5と同様の結果が得られており、本発明においては、上記ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率が9%以上15%以下であり、上記ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を分散媒に分散させた分散液の透過スペクトルにおいて、波長380nmの光線に対する透過率が5%以下、かつ波長600nmの光線に対する透過率が80%以上であることが好ましい。
【0117】
次に、実施例1においてケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を作製する際の、第二流体(B液)の流量を変更することで、吐出液のpHを変化させてケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を作製した。表3には、波数100cm
−1から1250cm
−1の範囲のピークを波形分離し、波形分離された各ピークの総面積に対するM−OHの結合のピークの面積比率であるM−OH比率[%]を記載した。ケイ素化合物被覆酸化物粒子を析出させる際のpHを制御することでM−OH結合の比率は変化した。
【0118】
【表3】
【0119】
図13に実施例1−6から1−8で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子におけるM−OH比率[%]に対する波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率のグラフを示す。
図13に見られるように実施例1から1−5と同様に、M−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が高くなる傾向が見られた。
【0120】
また
図14に、実施例1及び実施例1のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理によって得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子について、波長400nmから620nmの光線に対する反射率の最大値(最大反射率)のグラフを示す。
図14に見られるように、実施例1及び実施例1のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるケイ素化合物の官能基の変更処理によって得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、当該ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率が、10%以上15%以下の範囲においては、上記ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の波長400nmから620nmの光線に対する最大反射率が18%以下であるケイ素化合物被覆酸化鉄粒子であり、赤以外の光の反射を抑える効果が見られる。そのようなケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は赤以外の光を低減できているため、例えば赤色を呈する積層塗膜等の塗布用組成物に用いるに好適である。
【0121】
図15に、実施例1及び実施例1のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理によって得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子について、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH比率に対する波長620nmから750nmの光線に対する平均反射率を示す。
図15に見られるように、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH比率が9.5%以上13%以下の範囲において、波長620nmから750nmの光線に対する平均反射率が22%以下となっており、このようなケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、赤色の領域の反射率を低減できているため、積層塗膜用に用いた場合には、ハイライトとシェードの差を大きくする効果が大きいため好ましい。また
図15に示した実施例の内、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH比率が8%以上9.3%未満、又は13.3%よりも大きく15%以下で、波長620nmから750nmの光線に対する平均反射率が22%より高いケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、波長620nmから750nmの光線に対する平均反射率が22%以下のケイ素化合物被覆酸化鉄に比して赤色を強く発色するために、赤色の顔料として用いる場合や、一般塗料に用いる場合の、赤色の塗膜を形成する場合に別途用いる赤色の顔料の低減や、色の微調整等に好適に用いることができる。
【0122】
図16に、実施例1及び実施例1のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理によって得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子について、M−OH比率に対するL
*a
*b
*表色系における色相H(=b
*/a
*)のグラフを示す。また、表4に、実施例1及び実施例1−2から1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子、及び実施例4の酸化鉄粒子の色相Hを示した。表4に見られるように実施例4の表面をケイ素化合物で被覆していない酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率がケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に比して低いものであり、またその色相Hが、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の色相の範囲にはなく、本発明のM−OH結合の制御による色特性の制御を、粒子の表面の少なくとも一部を被覆することによっても行えるものであり、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の色相が、酸化鉄粒子の単なるナノ粒子化だけでは達成できないことがわかる。本発明のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率が8%以上15%以下であり、L
*a
*b
*表色系における、色相H(=b
*/a
*)が0.5から0.9の範囲であることが好ましい。
【0123】
【表4】
【0124】
図17に、実施例1及び実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子並びに実施例4で得られた酸化鉄粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトルと測定に用いた分散液中のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子(Fe
2O
3として)の濃度より算出したモル吸光係数を測定波長に対するグラフとした図を示す。また、
図18には、実施例1、及び実施例1−3から1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のM−OH比率に対する波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数のグラフを示す。さらに、表5に、実施例1、及び実施例1−3から1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のM−OH比率と波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数を実施例4で得られた酸化鉄粒子の波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数とともに示す。
【0125】
【表5】
【0126】
図18及び表5に見られるように、M−OH比率が低くなるとともに、波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高くなる傾向が見られた。また表5に見られるように、実施例1から実施例1−5で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、表面にケイ素化合物を被覆されていない酸化鉄粒子に比して、波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数が非常に高いことがわかる。本発明におけるケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、上記ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率が9%以上15%以下であり、上記ケイ素化合物被覆酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長190nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数が2200L/(mol・cm)以上であることが好ましい。このレベルにまでモル吸光係数が上がると、塗布用又はフィルム状組成物の設計が容易になる。すなわち非常に少量のケイ素化合物被覆酸化鉄を配合するだけで、紫外線の防御が可能となる。また上記酸化鉄の赤色発色を利用して淡い肌色から高発色の赤色まで意匠性の高い特性の塗布物及びフィルム、並びにガラスを作製可能とする。
【0127】
図19に、ケイ素化合物被覆酸化物粒子の官能基の変更処理として、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる水酸基とアセチル基とを反応させて、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子にアセトキシリル基を付与した実施例1−9のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の反射スペクトルを示す。また、表6に、IRスペクトルと波形分離より算出したM−OH比率と、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率を示す。実施例1−9のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に、エステル基であるアセトキシリル基を付与するために、以下の操作を行った。まず実施例1で得られた1重量部のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を99重量部のプロピレングリコール(キシダ化学株式会社製)に投入し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、65℃、ローター回転数20000rpmにて1時間分散処理し、分散液を調製した。上記ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のプロピレングリコール分散液に1重量部のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に対して2重量部のピリジン(関東化学株式会社製)と1重量部の無水酢酸(キシダ化学株式会社製)を投入し、上記高速回転式分散乳化装置を用いて、65℃、ローター回転数20000rpmにて1時間分散処理した。得られた処理液を26000G、15分の条件で遠心分離し、上澄み液を分離して沈降物を得た。その沈降物の一部を−0.10MPaG、25℃にて20時間乾燥させて乾燥粉体を得た。TEM観察の結果、実施例1−9で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子は、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子と略同様の粒子であることを確認した。
【0128】
図20には、実施例1及び実施例1−9で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のFT−IRスペクトル(赤外吸収スペクトル)測定結果を示す。実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子にアセトキシリル基を付与した実施例1−9で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のFT−IR測定結果から、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のFT−IR測定結果に見られた2900cm
−1から3600cm
−1付近の水酸基に由来するブロードなピークが小さくなり、1450cm
−1付近と1600cm
−1付近に新規なピークが検出された。実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる水酸基とアセチル基とが反応してエステル結合を生じ、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子にアセトキシリル基を付与されたと考えられる。さらに、800cm
−1付近から1250cm
−1付近のピークにも変化が見られた。実施例1及び実施例1−9のIRスペクトルにおける波数100cm
−1から1250cm
−1の範囲を波形分離し、M−OH比率を算出した。結果を波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率とともに表6に示す。また、実施例1−9にて、ピリジンと無水酢酸を投入し、上記高速回転式分散乳化装置を用いて、65℃、ローター回転数20000rpmにて1時間分散処理した工程における、温度を80℃、分散処理時間を2時間とした以外は全て同じ条件とした実施例1−10で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の結果についても表6及び
図19に示す。
【0129】
図19及び表6に見られるようにケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に含まれる水酸基にアセチル基を作用させることによって、M−OH比率が低減し、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が上がったことがわかる。表6に見られるように、実施例1に比べて、M−OH比率が低い、実施例1−9及び1−10の方が、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が高くなる傾向であった。本発明においては、ケイ素化合物被覆酸化物粒子のケイ素化合物がエステル結合を含むものであって、M−OH結合の比率が9%以上13%以下であり、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が50%以上であるケイ素化合物被覆酸化物粒子であることが好ましい。
【0130】
【表6】
【0131】
(実施例1−11から実施例1−13)
次に、実施例1において流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液を
図34に示した分散液改質装置100を用いて処理した以外は実施例1と同じ方法にてケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を作製した。上述の分散装置と濾過膜とを連続させた装置の一例が、分散液改質装置100である。
図34の分散液改質装置100は、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液より、不純物を除去し、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液のpH、及び導電率を調整するに際して本発明の実施の形態に係るM−OH結合の比率の制御を実施するために用いることができる装置の代表例である。具体的には、分散液改質装置100は、分散処理装置110と濾過膜を備えた除去部120と収容容器130とを備え、これらが配管システムで接続されている。分散処理装置110は、分散用容器101と、これに敷設された分散機102とを主たる構成要素として備える。
【0132】
実施例1において流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収したケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液をケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液L1として収容容器130に投入しポンプ104の運転を開始することで、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液L1を分散用容器101に供給する。ポンプ104によって送液されたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液L1は、分散用容器101内を満たしてオーバーフローし、除去部120に送液されて、一部はクロスフロー用洗浄液L2とともに濾液L3として排出され、一部は再び収容容器130に投入される。なお、収容容器130には分散液の濃度を均一にするための攪拌機200を備えた方が好適である。収容容器130に再び投入されたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液は、分散用容器101に供給され、上記の分散と不純物除去とが連続的かつ繰り返し行われる。
【0133】
図34に記載の原理の装置を用いてケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液を改質処理することによって、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液中に含まれるケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の凝集体中の不純物を上記分散液中に放出させた後に、時間が経過するに従って再凝集が進行する前に、すなわちより多くの不純物が上記分散液の液体中に存在している間に、不純物を除去することができ、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子が均一に分散した状態において個々のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子に対して厳密なM−OH結合の比率を制御できるために効果的である。
【0134】
表7に、
図34の分散液改質装置100を用いてM−OH結合の比率を制御した条件を示す。
【0135】
まず
図34に示す収容容器130に15kgの純水(表7:(1)、pH 5.89(測定温度:22.4℃)、導電率 0.80μS/cm(測定温度22.4℃))を投入し、ポンプ104の運転を開始することで純水を、分散機102(表7:(3)、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス、製品名:CLM−2.2S、ローター:R1、スクリーン:S0.8−48、エム・テクニック株式会社製)を敷設された分散用容器101に供給した。ポンプ104によって送液された純水は、分散用容器101内を満たしてオーバーフローし、クロスフロー用洗浄液として純水を1.5L/min、21℃(表7:(2)、pH 5.89(測定温度:22.4℃)、導電率 0.80μS/cm(測定温度22.4℃))にて通液された除去部120の濾過膜として中空糸型透析器(表7:(4)、膜面積:2.2m
2、材質:ポリスルフォン、日機装株式会社製)に送液されて、一部はクロスフロー用洗浄液とともに濾液L3として排出され、一部は再び収容容器130に戻された。
【0136】
次に、分散機102の運転を開始し、ローター回転数を20000rpm(表7:(5)、周速度:31.4m/s)に設定した。収容容器130内の純水が1L(≒1kg)になるまで純水が排出された段階で、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液(pH11.02(測定温度30.6℃))の14L(≒14kg)を収容容器130に投入した(表7:(6)、(7))。ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液は、装置内を循環している純水と混合されて上記純水と同様に容器から分散処理装置、及び濾過膜を経由して容器に循環された。この時、収容容器130内のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液のpHは10.88(測定温度:26.6℃)(表7:(8))、導電率は8120μS/cm(測定温度:26.6℃)(表7:(9))であった。
【0137】
ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液は分散用容器101内で分散処理されてから除去部120に送液されて濾過され、不純物を含む濾液L3がクロスフロー用洗浄液とともに排出された。ポンプ104によって8.8L/minの流量に送液されたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液は(表7:(10))、7.3L/minにて再び収容容器130に戻されていたため(表7:(11))、除去部120の濾過膜によって1.5L/minの流量にて不純物を含む濾液L3が排出されていることとなる(表7:(12))。
【0138】
収容容器130内のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液が1.5L(≒1.5kg)にまで濃縮された段階で、収容容器130に純水(pH 5.89(測定温度:22.4℃)、導電率 0.80μS/cm(測定温度22.4℃))を13.5L(≒13.5kg)投入した(表7:(13)、(14))。投入中及びその前後でも運転状態を変化させることなく継続し、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液中の不純物を除去した。濃縮時(分散液が1.5L)と希釈時(分散液が15L)との間に、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液中のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の濃度は、0.4から2.0wt%の間を変動した(表7:(15))。
図34における圧力計について、Paは2本共に0.10MPaG、Pbは0.15MPaG、Pcは0.02MPaGを指していた(表7:(16)、(17)、(18))。分散用容器101から、除去部120までの直前移送経路は、継路長(Lea)が、0.3m(表7:(19))、配管内径(Leb)が0.0105mであった(表7:(20))。直前移送経路におけるケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液の流速は1.2m/secであり(表7:(21))、また分散用容器101から除去部120によって不純物の除去が開始されるまでの時間T1は0.24sec(0.24秒)であり(表7:(22))、3秒以下と考えられた。また、分散用容器101内に敷設された温度計(図示無し)は23℃から26℃(表7:(23))、収容容器130内のケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液の温度は処理中23から26℃であった(表7:(24))。なお、導電率測定には、堀場製作所製の型番ES−51の電気導電率計を用いた(表7:(25))。
【0139】
上記ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液の分散処理と、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液中の不純物の除去する操作を、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液のpHが6.91(測定温度:24.6℃)、導電率が7.14μS/cmとなるまで繰り返し行い、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子の凝集体に含まれていた不純物も除去し、またケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液中におけるそれぞれのケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を改質した。
【0140】
【表7】
【0141】
表7における(23)(24)に示す、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液の改質処理における処理温度を変更することによって、実施例1−11から実施例1−13であるM−OH比率の異なるケイ素化合物被覆酸化鉄粒子を作製した。表8に、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液の改質処理における処理温度、得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子のM−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率、及び波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数を実施例1の結果とともに示す。
【0142】
【表8】
【0143】
表8に見られるように、M−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmにおける平均反射率並びに波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高くなる傾向が見られ、M−OH比率を制御することによって、色特性が制御できることがわかった。
【0144】
(実施例2)
実施例2においては、酸化物粒子として、酸化亜鉛粒子の表面の少なくとも一部をケイ素化合物で被覆したケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物析出溶媒(A液)、酸化物原料液(B液)、及びケイ素化合物原料液(C液)を調製した。具体的には表9の実施例2に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表9の実施例2に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表9の実施例2に示すケイ素化合物原料液の処方に基づいて、ケイ素化合物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間攪拌することにより均質に混合し、ケイ素化合物原料液を調製した。
なお、表9に記載の化学式や略記号で示された物質については、MeOHはメタノール(株式会社ゴードー製)、97wt%H
2SO
4は濃硫酸(キシダ化学株式会社製)、KOHは水酸化カリウム(日本曹達株式会社製)、35wt%HClは塩酸(関東化学株式会社製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)、ZnOは酸化亜鉛(関東化学株式会社製)を使用した。
【0145】
次に調製した酸化物原料液、酸化物析出溶媒、及びケイ素化合物原料液を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。
【0146】
表10に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件、並びに得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径及びTEM−EDS分析より算出したSi/Znのモル比をA液、B液、C液の処方及び導入流量より計算した計算値とともにを示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例1と同様の方法で行った。
【0147】
【表9】
【0148】
【表10】
【0149】
図21に実施例2で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のSTEMを用いたマッピング結果を、
図22に
図21のHAADF像における破線を施した位置での線分析の結果を示す。
図21、
図22に見られるように、実施例2で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、粒子の全体をケイ素化合物によって覆われたものではなく、酸化亜鉛粒子の表面の一部をケイ素化合物によって被覆したケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子も観察された。
【0150】
実施例2で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いて熱処理した。熱処理条件は、実施例2:未処理、実施例2−2:200℃、実施例2−3:400℃、実施例2−4:600℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。
図23に実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛のSTEMを用いたマッピング結果を、
図24に
図23のHAADF像における破線を施した位置での線分析の結果を示す。
図23、
図24に見られるように、実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、粒子の全体をケイ素化合物によって覆われた酸化亜鉛粒子として観察された。
【0151】
図25に実施例2、実施例2−2から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子、及び比較として実施例5で得られたケイ素化合物で表面を被覆していない酸化亜鉛粒子の波長200nmから2500nmの光線に対する反射スペクトルを示す。
【0152】
実施例5で得られたケイ素化合物で表面を被覆していない酸化亜鉛粒子は、実施例2における第3流体を用いていないこと、また特許文献6に記載の流体処理装置の第3導入部及び第3導入部の開口部d30を敷設していないことを除いては、実施例2と同じ方法で作製し、実施例2と同様の粒子径の酸化亜鉛粒子を得た。
【0153】
図25に見られるように、波長780nmから2500nmの近赤外領域の光線に対する反射率が、実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子の方が実施例2で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子よりも高いことが見て取れる。上記IRスペクトルにおける、波数100cm
−1から1250cm
−1の範囲のピークを波形分離し、波形分離された各ピークの総面積に対するM−OHの結合のピークの面積比率(M−OH比率[%])は、実施例2−4<2−3<2−2<2の順に小さく、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率は、実施例2−4>2−3>2−2>2の順に大きい。
図26に、上記M−OH比率[%]に対する波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率のグラフを示す。
図26に見られるようにM−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が高くなる傾向が見られた。表11に、実施例2及び実施例2−2から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率を、実施例5で得られた酸化亜鉛粒子のM−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率とともに示す。
【0154】
【表11】
【0155】
表11に見られるように、実施例2から実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、表面にケイ素化合物を被覆されていない酸化亜鉛粒子に比して、波長780nmから2500nmにおける平均反射率が高いことがわかる。本発明におけるケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が30%以上39%以下であり、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が72%以上であることが好ましい。このようなケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を塗布用組成物に用いた場合にあっては、太陽光を照射された塗装体の温度上昇を抑制する効果が高い等、塗料として用いるに好適である。
【0156】
図27に、実施例2、実施例2−2から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子、及び実施例5で得られた酸化亜鉛粒子の波長200nmから780nmの光線に対する反射スペクトルを示す。ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率を変更することで、波長340nmから380nmの吸収領域に変化が見られた。また実施例2−3から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が30%以上36%以下であり、反射率が15%となる波長が375nm以上であるため、より広い紫外領域の光を吸収しているため紫外線遮蔽を目的とする塗布用組成物、又はガラス等に用いるフィルム状組成物として好適である。表12に、実施例2、実施例2−2から実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率と、波長380nmから780nmの光線に対する平均反射率を示す。
【0157】
【表12】
【0158】
実施例2、実施例2−2で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が38%以上42%以下であり、波長380nmから780nmの光線に対する平均反射率が86%以上であり、可視領域の全域について光を反射しており、白色の顔料として好適である。
【0159】
図28に上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH比率に対する、L
*a
*b
*表色系における彩度C(=√((a
*)
2+(b
*)
2))のグラフを示す。
図28に見られるように、M−OH結合の比率が高い方が、彩度が下がる傾向に見られた。本発明においては、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が31%以上39%以下であり、L
*a
*b
*表色系における、彩度C(=√((a
*)
2+(b
*)
2))が0.5から13の範囲であるケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子であることが好ましい。
【0160】
図29に上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH比率に対する、L
*a
*b
*表色系におけるL
*値のグラフを示す。
図29に見られるように、M−OH結合の比率が高い方が、L
*値が下がる傾向に見られた。本発明においては、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が31%以上39%以下であり、L
*a
*b
*表色系における、彩度C(=√((a
*)
2+(b
*)
2))が0.5から13の範囲であり、L
*a
*b
*表色系におけるL
*値が95から97の範囲であるケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子であることが好ましい。これによって、白色度の高いケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子となり、白色顔料としての使用が好適となる。
【0161】
図30に、実施例2、及び実施例2−2から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子並びに実施例5で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールにZnOとして0.011重量%の濃度で分散させた分散液の透過スペクトルを示す。また、表13に実施例2、及び実施例2−2から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH比率と、透過スペクトルにおける波長380nmから780nmの光線に対する平均透過率を示す。
【0162】
【表13】
【0163】
実施例2及び実施例2−2から2−4においてはM−OH結合の比率が下がるとともに、波長380nm以下の領域における吸収端が長波長側にシフトしていることがわかる。また、実施例2から実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、実施例5で得られた酸化亜鉛粒子に比して、波長380nmから780nmの透過率が高くなっており、紫外領域である波長200nmから380nmの光線を効率良く吸収し、さらに透明性も高いことがわかる。本発明においては、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が38%以上42%以下であり、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を分散媒に分散させた分散液の透過スペクトルにおいて、波長340nmの光線に対する透過率が10%以下、かつ波長380nmから780nmの光線に対する平均透過率が92%以上であるケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子であることが好ましい。これによって、口紅やファンデーション、サンスクリーン剤等の化粧料や皮膚に塗布することを目的とした塗布用組成物、並びに塗膜や塗装体及びガラス等に用いるフィルム状組成物に用いた場合に、波長380nm以下の紫外線を吸収する能力と透明性とをバランスされた塗布用組成物を実現できるために好適である。また、実施例2−3、2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化物の透過スペクトルより、実施例2に比べて波長200nmから380nmの紫外領域における吸収領域が長波長側にシフトしている。本発明においては、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が、30%以上36%以下であり、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を分散媒に分散させた分散液の透過スペクトルにおいて、透過率が15%となる波長が365nm以上であることが好ましい。これによって、波長200nmから380nmの紫外領域の光線を広範囲に吸収することが可能である。
【0164】
図31に実施例2、及び実施例2−2から2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子並びに実施例5で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトル測定結果と測定に用いた分散液中のケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子の濃度(ZnOとして)から算出したモル吸光係数のグラフを示す。また、表14に各実施例で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH比率と、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を実施例5で得られた酸化亜鉛粒子の波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数とともに示す。
【0165】
【表14】
【0166】
表14に見られるように、M−OH比率が下がるに伴って、平均モル吸光係数が上がる傾向が見られた。また、実施例2から実施例2−4で得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子は、実施例5で得られた酸化亜鉛粒子に比して、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高いことがわかる。本発明においては、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が、30%以上42%以下であり、上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの光線に対するモル吸光係数が、700L/(mol・cm)以上であるケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子であることが好ましい。それによって、UVA、UVB、UVCである紫外線の波長200nmから380nmの光線を効率よく吸収することが可能になるため、塗布用又はフィルム状組成物に用いる場合にあっては、使用量の低減、更なる透明性を実現できること等好適である。
【0167】
(実施例2−5から実施例2−7)
次に、実施例2において流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収したケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液を
図34に示した分散液改質装置100を用いて処理した以外は実施例1と同じ方法にてケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を作製した。表15に、
図34の分散液改質装置100を用いて上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH結合の比率を制御した条件を示す。表15に記載した内容以外は実施例1−11から実施例1−13と同じ方法でM−OH結合の比率を制御したケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を得た。
【0168】
上記ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液の分散処理と、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液中の不純物の除去する操作を、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液のpHが7.02(測定温度:23.1℃)、導電率が0.06μS/cmとなるまで繰り返し行い、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子の凝集体に含まれていた不純物も除去し、またケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液中におけるそれぞれのケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を改質した。
【0169】
【表15】
【0170】
表15における(23)(24)に示す、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液の改質処理における処理温度を変更することによって、実施例2−5から実施例2−7であるM−OH比率の異なるケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子を作製した。表16に、ケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子分散液の改質処理における処理温度、得られたケイ素化合物被覆酸化亜鉛粒子のM−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均透過率、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を実施例2の結果とともに示す。
【0171】
【表16】
【0172】
表16に見られるように、M−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均透過率、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高くなる傾向が見られ、M−OH比率を制御することによって、色特性が制御できることがわかった。
【0173】
(実施例3)
実施例3においては、酸化セリウム粒子の表面の少なくとも一部をケイ素化合物で被覆したケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物析出溶媒(A液)、酸化物原料液(B液)、及びケイ素化合物原料液(C液)を調製した。具体的には表17の実施例3に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表17の実施例3に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表17の実施例3に示すケイ素化合物原料液の処方に基づいて、ケイ素化合物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間攪拌することにより均質に混合し、ケイ素化合物原料液を調製した。
なお、表17に記載の化学式や略記号で示された物質については、DMAEはジメチルアミノエタノール(キシダ化学株式会社製)、60wt%HNO
3は濃硝酸(キシダ化学株式会社製)、Ce(NO
3)
3・6H
2Oは硝酸セリウム(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
【0174】
次に調製した酸化物原料液、酸化物析出溶媒、及びケイ素化合物原料液を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。
【0175】
表18に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件並びに得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径及びTEM−EDS分析より算出したSi/Ceのモル比をA液、B液、C液の処方及び導入流量より計算した計算値とともに示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例1と同様の方法で行った。
【0176】
【表17】
【0177】
【表18】
【0178】
図32に実施例3で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子のTEM写真を示す。実施例3で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子には、粒子の全体をケイ素化合物によって覆われたものではなく、酸化セリウム粒子の表面の一部をケイ素化合物によって被覆したケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子も観察された。
【0179】
実施例3で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子を、ケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いて熱処理した。熱処理条件は、実施例3:未処理、実施例3−2:200℃、実施例3−3:400℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。
【0180】
図33に実施例3で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子、及び実施例8で得られた表面をケイ素酸化物で被覆されていない酸化セリウム粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトル測定結果と分散液中の酸化セリウムの濃度から算出したモル吸光係数のグラフを示す。また、表19に各実施例で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子のM−OH比率と、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を比較として実施例8で得られた酸化セリウム粒子の波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数とともに示す。
【0181】
実施例8で得られたケイ素化合物で表面を被覆していない酸化セリウム粒子は、実施例3における第3流体を用いていないこと、また特許文献6に記載の流体処理装置の第3導入部及び第3導入部の開口部d30を敷設していないことを除いては、実施例3と同じ方法で作製し、実施例3と同様の粒子径の酸化セリウム粒子を得た。
【0182】
【表19】
【0183】
表19に見られるように、M−OH比率が下がるに伴って、平均モル吸光係数が上がる傾向が見られた。また、実施例で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子は、実施例8で得られた酸化セリウム粒子に比して、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高いことがわかる。本発明においては、上記ケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子に含まれるM−OH結合の比率が、25%以上35%以下であり、上記ケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの光線に対するモル吸光係数が、4000L/(mol・cm)以上であるケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子であることが好ましい。それによって、UVA、UVB、UVCである紫外線の波長200nmから380nmの光線を効率よく吸収することが可能になるため、塗布用組成物に用いる場合にあっては、使用量の低減、更なる透明性を実現できること等好適である。
【0184】
以上、本発明の酸化物粒子の製造方法によって、ケイ素化合物被覆酸化物粒子の繊細かつ厳密な色特性制御を可能とした。それによって、塗布用組成物に用いた場合には、紫外、可視、近赤外の各領域の光線に対する透過、吸収、色相、彩度、及びモル吸光係数を厳密に制御できるため、人体に塗布する場合においては質感や美観を損なわず、塗装体に用いる場合には意匠性を損なわずに紫外線や近赤外線から人体や塗装体を防御できたものである。
【0185】
(実施例4)
実施例4においては、酸化鉄粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液(A液)及び酸化物析出溶媒(B液)を調製した。具体的には表20の実施例4に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表20の実施例4に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。
なお、表20に記載の化学式や略記号で示された物質について、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)、Fe(NO
3)
3・9H
2Oは硝酸鉄九水和物(関東化学株式会社製)を使用した。
【0186】
次に調製した酸化物原料液及び酸化物析出溶媒を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。なお、実施例4においては第3導入部d3及びC液を用いなかった(図示無)。
【0187】
表21に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件並びに得られた酸化鉄粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径を示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例1と同様の方法で行った。TEM観察の結果、一次粒子径が5nmから15nm程度であり、表21に記載したように平均一次粒子径は9.53nmであった。
【0188】
【表20】
【0189】
【表21】
【0190】
実施例4において得られた酸化鉄粒子について、酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理として電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、実施例4:未処理、実施例4−2:100℃、実施例4−3:200℃、実施例4−4:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。実施例4−2から実施例4−4で得られた酸化鉄粒子についても、一次粒子径が5nmから15nm程度であった。
【0191】
図35に、実施例4で得られた酸化鉄粒子のXRD測定結果を示す。
図35に見られるように、XRD測定結果において、酸化鉄(α―Fe
2O
3)に由来するピークのみが検出された。また実施例4−2から4−4におけるXRD測定の結果についても、
図35のように酸化鉄に由来するピークしか検出されなかった。
【0192】
図36に、実施例4並びに実施例4−4で得られた酸化鉄粒子のATR法にて測定したFT−IR測定結果を示す。実施例4−4で得られた酸化鉄粒子のIR測定結果は、実施例4で得られた酸化鉄粒子のIR測定結果に比べて、M−OH結合に由来する800cm
−1付近から1250cm
−1付近のブロードなピーク並びにM−OH結合が二酸化炭素と反応することによって生じる1250cm
−1付近から1750cm
−1付近のピークが小さくなったように見られた。
【0193】
上記IR測定結果における波数100cm
−1から1250cm
−1のピークを波形分離した結果を、実施例4について
図37に、実施例4−4について
図38に示す。なお、実施例4−4においてはM−OH結合に波形分離されたピークが非常に小さいため、波長800cm
−1から1250cm
−1の領域を拡大した図とともに示した。実施例4に比べて、実施例4−4で得られた酸化鉄粒子の方がM−OH結合のピークの総面積が、波形分離された全てのピークの総面積に対して小さいこと、すなわちM−OH結合の比率が小さいことがわかる。
【0194】
図39に実施例4及び実施例4−2から実施例4−4で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の波長190nmから780nmのモル吸光係数のグラフを、表22に波長190nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を、
図40に実施例4並びに実施例4−2から実施例4−4で得られた酸化鉄粒子のM−OH比率に対する波長190nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数のグラフを示す。
図39、表22に見られるように実施例4、4−2、4−3、4−4の順にM−OH比率が小さくなるに伴って、波長190nmから380nmの領域における平均モル吸光係数が向上していることがわかる。
【0195】
【表22】
【0196】
また
図40より、実施例1で得られたケイ素化合物被覆酸化鉄粒子とは異なり、酸化鉄粒子については、M−OH比率を1.5%以上7.5%以下とすることで、波長190nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を1000L/(mol・cm)以上とできることがわかった。
【0197】
図41に実施例4及び実施例4−2から実施例4−4で得られた酸化鉄粒子の波長200nmから2500nmの光線に対する反射スペクトル測定結果を、
図42に各実施例の上記IRスペクトルによって算出したM−OH比率に対する、近赤外領域である波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率のグラフを示す。
【0198】
表23に、実施例4及び実施例4−2から実施例4−4で得られた酸化鉄粒子の、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率を示す。
【0199】
【表23】
【0200】
表23、
図42に見られるように、M−OH比率が低くなるに伴って、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が向上する傾向が見られた。酸化鉄粒子に含まれるM−OH結合の比率が、1.5%以上7.5%以下の範囲においては波長780nmから2500nmの近赤外領域の光線に対する平均反射率は55%以上の値を示した。
【0201】
(実施例4−5から実施例4−7)
次に、実施例4において流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化鉄粒子分散液を
図34に示した分散液改質装置100を用いて処理した以外は実施例4と同じ方法にて酸化鉄粒子を作製した。表24に、
図34の分散液改質装置100を用いて上記酸化鉄粒子のM−OH結合の比率を制御した条件を示す。表24に記載した内容以外は実施例1−11から実施例1−13と同じ方法でM−OH結合の比率を制御した酸化鉄粒子を得た。
【0202】
上記酸化鉄粒子分散液の分散処理と、酸化鉄粒子分散液中の不純物の除去する操作を、酸化鉄粒子分散液のpHが7.34(測定温度:23.6℃)、導電率が6.99μS/cmとなるまで繰り返し行い、酸化鉄粒子の凝集体に含まれていた不純物も除去し、また酸化鉄粒子分散液中におけるそれぞれの酸化鉄粒子を改質した。
【0203】
【表24】
【0204】
表24における(23)(24)に示す、酸化鉄粒子分散液の改質処理における処理温度を変更することによって、実施例4−5から実施例4−7であるM−OH比率の異なる酸化鉄粒子を作製した。表25に、酸化鉄粒子分散液の改質処理における処理温度、得られた酸化鉄粒子のM−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均反射率、波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数を実施例4の結果とともに示す。
【0205】
【表25】
【0206】
表25に見られるように、M−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmにおける平均反射率並びに波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高くなる傾向が見られ、M−OH比率を制御することによって、色特性が制御できることがわかった。
【0207】
(実施例4−8)
実施例4−8として、特開2009−112892号公報に記載の装置並びにA液(酸化物原料液)、B液(酸化物析出溶媒)の混合・反応方法を用いた以外は、実施例4と同じ条件とすることで酸化鉄粒子を作製した。ここで、特開2009−112892号公報の装置とは、同公報の
図1に記載の装置を用い、撹拌槽の内径が80mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周側面と間隙が0.5mm、攪拌羽根の回転数は7200rpmとした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周側面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させた。TEM観察の結果、一次粒子径が50nmから60nm程度の酸化鉄粒子が観察された。
【0208】
実施例4−8で得られた酸化鉄粒子を、酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、実施例4−8:未処理、実施例4−9:100℃、実施例4−10:200℃、実施例4−11:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。表26に、実施例4−8から実施例4−11で得られた酸化鉄粒子の平均一次粒子径、M−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数を示す。なお、実施例4−8から実施例4−11で作製した酸化鉄粒子のモル吸光係数については、実施例4と同様にプロピレングリコールを分散媒に用いて測定した。
【0209】
【表26】
【0210】
表26に見られるように、実施例1から実施例4とは異なる装置を用いて作製した酸化亜鉛粒子を用いた場合であっても、当該一次粒子径が100nm以下の酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理をすることによって、M−OH比率を制御することが可能であり、M−OH比率を制御することによって、波長190nmから380nmにおける平均モル吸光係数、及び波長780nmから2500nmにおける平均反射率を制御できることがわかった。
【0211】
(比較例1)
一次粒子径が150nmから250nmである、酸化鉄粒子(和光純薬工業株式会社製 特級 酸化鉄(III)(α−Fe
2O
3))についてM−OH結合の比率を変化させるための酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、比較例1−1:未処理、比較例1−2:100℃、比較例1−3:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。表27に、比較例1−1から1−3の酸化鉄粒子について、M−OH比率と実施例4と同様にプロピレングリコールに分散させて得られた分散液における波長190nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を示す。表27に見られるように、一次粒子径が100nmを超えた酸化鉄粒子の場合においては、M−OH結合の比率を変化させても、上記平均モル吸光係数が低いものであり、また傾向が見られなかった。また、特に比較例1−1と実施例4−4との対比において、比較例1−1は、一次粒子径が50nm以下の実施例4−4で得られた酸化鉄粒子と同等のM−OH比率であるにも関わらず、上記波長190nmから380nmの波長領域における平均モル吸光係数が低いことがわかる。本発明においては、M−OH比率が、一次粒子径が50nm以下と小さい場合に色特性に影響を与えること、すなわち同量の酸化鉄粒子に対して表面積が増大された状態において、当該M−OH比率を制御することによって色特性を制御できるものと考えられた。
【0212】
【表27】
【0213】
(実施例5)
実施例5においては、酸化亜鉛粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液並びに酸化物析出溶媒を調製した。具体的には、表28の実施例5に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化亜鉛原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表28の実施例5に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間撹拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。なお、表28に記載の化学式や略記号で示された物質については、MeOHはメタノール(株式会社ゴードー製)、97wt%H
2SO
4は濃硫酸(キシダ化学株式会社製)、KOHは水酸化カリウム(日本曹達株式会社製)、ZnOは酸化亜鉛(関東化学株式会社製)を使用した。
【0214】
次に調製した酸化物原料液及び酸化物析出溶媒を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。なお、実施例5においては第3導入部d3及びC液を用いなかった(図示無)。
【0215】
表29に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件並びに得られた酸化亜鉛粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径を示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例2と同様の方法で行った。
【0216】
(ヘーズ値測定)
なお、実施例5の評価においては、酸化亜鉛粒子分散液のヘーズ値測定も行った。ヘーズ値測定には、ヘーズ値メーター(型式 HZ−V3、スガ試験機株式会社製)を用いた。光学条件としてJIS K 7136、JIS K 7361に対応した、ダブルビーム方式で、光源としてD65光を使用した。測定は厚み1mmの液体用セルに透過スペクトル測定に用いた分散液と同じ分散液について測定した。
【0217】
【表28】
【0218】
【表29】
【0219】
図43に実施例5で得られた酸化亜鉛粒子のTEM写真を示す。実施例5で得られた酸化亜鉛粒子は、一次粒子径が5nmから15nm程度であり、表29に記載したように平均一次粒子径が9.4nmであった。
【0220】
実施例5において得られた酸化亜鉛粒子について、酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として過酸化水素を作用させた。具体的には、実施例5で得られた酸化亜鉛粒子1重量部をプロピレングリコール99重量部(キシダ化学株式会社製)に投入し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、25℃、ローター回転数20000rpmにて1時間分散処理し、分散液を調製した。上記酸化亜鉛粒子のプロピレングリコール分散液に過酸化水素水(関東化学株式会社製 純度:30.9%)を加えて上記高速回転式分散乳化装置を用いて、25℃にて15分間分散処理した。得られた処理液を26,000G、15分の条件で遠心分離し、上澄み液を分離して沈降物を得た。その沈降物の一部を−0.10MPaG、25℃にて20時間乾燥させて乾燥粉体を得た。
【0221】
上記過酸化水素水の量を変更し、酸化亜鉛粒子に対する過酸化水素のモル比を変更して処理した。実施例5−2は酸化亜鉛粒子に対する過酸化水素のモル比(H
2O
2/ZnO[モル比])が0.01モル倍であり、実施例5−3は0.50モル倍、実施例5−4は1.00モル倍である。
図44に実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子のTEM写真を示す。実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子についても、一次粒子径が5nmから15nm程度であり、平均一次粒子径が9.5nmであった。
【0222】
図45に、実施例5で得られた酸化亜鉛粒子のXRD測定結果を示す。
図45に見られるように、XRD測定結果において、酸化亜鉛(ZnO)に由来するピークのみが検出された。また実施例5−2から5−4におけるXRD測定の結果についても、
図45のように酸化亜鉛に由来するピークしか検出されなかった。
【0223】
図46に、実施例5並びに実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子のATR法にて測定したFT−IR測定結果を示す。実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子のIR測定結果は、実施例5で得られた酸化亜鉛粒子のIR測定結果に比べて、M−OH結合に由来する750cm
−1付近から1250cm
−1付近のブロードなピーク並びにM−OH結合が二酸化炭素と反応することによって生じると考えられる1300cm
−1付近から1500cm
−1付近のピークが小さくなったように見られた。
【0224】
上記IR測定結果における波数100cm
−1から1250cm
−1のピークを波形分離した結果を、実施例5について
図47に、実施例5−2について
図48に、実施例5−4について
図49に示す。M−OH結合に波形分離されたピークにおいて、実施例5−2、実施例5−4においては、実施例5で確認された1100cm
−1付近に波形分離されたピーク(M−OH結合2)が確認されていないことから、主に1100cm
−1付近に波形分離されたピーク(M−OH結合2)が小さくなりM−OH結合の比率が小さくなったことがわかる。表30に酸化亜鉛粒子に対する過酸化水素のモル比(H
2O
2/ZnO[モル比])、並びに得られた酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径、並びにM−OH比率を示す。表30に見られるように、酸化亜鉛粒子を過酸化水素によって処理することで、M−OH比率を制御することが可能であることがわかった。
【0225】
図50に実施例5並びに実施例5−2から実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の波長200nmから780nmのモル吸光係数のグラフを、表30に波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を示す。
図50、表30に見られるように、M−OH比率を制御することによって、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を制御できることがわかった。
【0226】
図51に実施例5及び実施例5−2から実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子の波長200nmから2500nmの光線に対する反射スペクトル測定結果を、表30に、波長780nmから2500nmにおける平均反射率を示す。
図51、表30に見られるように、M−OH比率を制御することによって、波長780nmから2500nmにおける平均反射率を制御できることがわかった。
【0227】
図52に実施例5及び実施例5−2から実施例5−4で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールにZnOとして0.011重量%の濃度で分散させた分散液の透過スペクトルを示す。M−OH比率が低くなるに伴って、200nmから360nm付近の紫外線吸収領域が長波長側にシフトする傾向が見られた。M−OH比率を制御することによって、紫外線遮蔽を目的とする塗布用組成物に用いる場合に好適な酸化亜鉛粒子を製造することが可能であることがわかった。表30に波長330nmの光線に対する透過率、波長380nmから780nmにおける平均透過率、及びヘーズ値を示す。実施例5及び実施例5−2から実施例5−4の全てについて、波長330nmの光線に対する透過率は10%以下であり、波長380nmから780nmにおける平均透過率は90%以上であり、ヘーズ値が1%以下であった。
【0228】
【表30】
【0229】
実施例5で得られた酸化亜鉛粒子を、酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、実施例5:未処理、実施例5−5:100℃、実施例5−6:200℃、実施例5−7:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。
図53に実施例5−6で得られた酸化亜鉛粒子のTEM写真を示す。実施例5−6で得られた酸化亜鉛粒子は、一次粒子径が5nmから20nm程度であり、平均一次粒子径が10.4nmであった。また、実施例5−5で得られた酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は9.5nmであり、実施例5−7の平均一次粒子径は9.6nmであった。
【0230】
図54に、実施例5並びに実施例5−6で得られた酸化亜鉛粒子のATR法にて測定したFT−IR測定結果を示す。実施例5の酸化亜鉛粒子に比べて、実施例5−6で得られた酸化亜鉛粒子の方が、M−OH結合のピークからなる波長800cm
−1から1250cm
−1のピークが小さいこと、すなわちM−OH結合の比率が小さいことがわかる。
【0231】
図55に実施例5及び実施例5−5から実施例5−7で得られた酸化亜鉛粒子、並びに後述する比較例2−1で得られた一次粒子径が50nmを超えた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の波長200nmから380nmのモル吸光係数のグラフを、表31に、波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を示す。
図55、表31に見られるように実施例5、5−5、5−6、5−7の順にM−OH比率が小さくなるに伴って、波長200nmから380nmの領域における平均モル吸光係数が向上していることがわかる。
【0232】
【表31】
【0233】
表31、
図55に見られるように、酸化亜鉛粒子のM−OH結合の比率(M−OH比率)が12%以下の範囲において、M−OH比率が小さくなるに従って、波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数が大きくなることがわかった。本発明においては、酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が12%以下であり、波長200nmから380nmの領域における平均モル吸光係数を500L/(cm・mol)以上である酸化亜鉛粒子であることが好ましく、酸化亜鉛粒子に含まれるM−OH結合の比率が11.2%以下であり、波長200nmから380nmの領域における平均モル吸光係数を650L/(cm・mol)以上である酸化亜鉛粒子であることがより好ましい。
【0234】
図56に実施例5及び実施例5−5から実施例5−7で得られた酸化亜鉛粒子の波長200nmから2500nmの光線に対する反射スペクトル測定結果を、
図57に各実施例の上記IRスペクトルによって算出したM−OH比率に対する、近赤外領域である波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率のグラフを示す。
【0235】
図58に実施例5及び実施例5−5から実施例5−7で得られた酸化亜鉛粒子粉末の波長200nmから780nmの光線に対する反射スペクトル測定結果を示す。
図58に見られるようにM−OH比率が低くなるに伴って、200nmから360nm付近の紫外線吸収領域が長波長側にシフトする傾向が見られた。表32に、実施例5及び実施例5−5から実施例5−7で得られた酸化亜鉛粒子の、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率、同実施例にて得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールにZnOとして0.011重量%の濃度で分散させた分散液の透過スペクトルにおける波長330nmにおける透過率、波長380nmから780nmの光線に対する複数の測定波長における透過率を単純平均して算出した平均透過率、並びにヘーズ値を示す。
【0236】
【表32】
【0237】
図56、
図57並びに表32に見られるように、M−OH比率が低くなるに伴って、波長780nmから2500nmの光線に対する平均反射率が向上する傾向が見られた。実施例5及び実施例5−5から実施例5−7で得られた酸化亜鉛粒子については、波長780nmから2500nmの近赤外領域の光線に対する平均反射率は65%以上であり、また同酸化亜鉛粒子分散液の透過率が波長330nmの光線に対して10%以下であるにも関わらず、波長380nmから780nmの光線に対する平均透過率が90%以上であった。さらにヘーズ値が0.02%から0.04%と非常に低い値を示した。
【0238】
(比較例2)
一次粒子径が150nmから300nmである、酸化亜鉛粒子(関東化学株式会社製 特級 3N5)についてM−OH結合の比率を変化させた。
図59に比較例1のTEM写真を示す。酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、比較例2−1:未処理、比較例2−2:100℃、比較例2−3:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。表33に、比較例2−1から2−3の酸化亜鉛粒子について、M−OH比率と実施例5及び実施例5−5と同様にプロピレングリコールに分散させて得られた分散液における波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数、同実施例にて得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールにZnOとして0.011重量%の濃度で分散させた分散液の透過スペクトルにおける波長330nmにおける透過率、波長380nmから780nmの光線に対する平均透過率、並びにヘーズ値を示す。表33に見られるように、一次粒子径が50nmを超えた酸化亜鉛粒子の場合においては、M−OH結合の比率を変化させても、上記平均モル吸光係数、透過率並びにヘーズ値に略違いが見られず、紫外線吸収能が低く、透明性が低いものであった。また、特に比較例2−1と実施例5−7との対比において、比較例2−1は、一次粒子径が50nm以下の実施例5−7で得られた酸化亜鉛粒子と同等のM−OH比率であるにも関わらず、上記波長200nmから380nmの波長領域における平均モル吸光係数が低いことがわかる。本発明においては、M−OH比率が、一次粒子径が50nm以下と小さい場合に色特性に影響を与えること、すなわち同量の酸化亜鉛粒子に対して表面積が増大された状態において、当該M−OH比率を制御することによって色特性を制御できるものと考えられた。また、比較例2−1の平均一次粒子径は228nmであり、比較例2−2の平均一次粒子径は228nmであり、比較例2−3の平均一次粒子径は225nmであった。
【0239】
【表33】
【0240】
(比較例3)
実施例5で得られた酸化亜鉛粒子について、酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、400℃(比較例3−1)、600℃(比較例3−2)であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。これらの熱処理条件にて処理した酸化亜鉛粒子のTEM写真を
図60(比較例3−1)、
図61(比較例3−2)に示す。
図60、
図61に示すように酸化亜鉛粒子同士の明らかな融着が見られ、一次粒子径が50nmを超えるものであった。表34に、比較例3−1、比較例3−2で得られた酸化亜鉛粒子のM−OH比率と同酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させて得られた分散液における波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数、同実施例にて得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールにZnOとして0.011重量%の濃度で分散させた分散体の透過スペクトルにおける波長330nmにおける透過率、波長380nmから780nmの光線に対する平均透過率、並びにヘーズ値を示す。
【0241】
【表34】
【0242】
表34に見られるように、比較例1と同様に、一次粒子径が50nmを超えた酸化亜鉛粒子の場合においては、M−OH結合の比率を変化させても、上記平均モル吸光係数、透過率並びにヘーズ値に略違いが見られず、紫外線吸収能が低く、透明性が低いものであった。
【0243】
(実施例6)
実施例6−1として、特開2009−112892号公報に記載の装置並びにA液(酸化物原料液)、B液(酸化物析出溶媒)の混合・反応方法を用いた以外は、実施例5と同じ条件とすることで酸化亜鉛粒子を作製した。ここで、特開2009−112892号公報の装置とは、同公報の
図1に記載の装置を用い、撹拌槽の内径が80mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周側面と間隙が0.5mm、攪拌羽根の回転数は7200rpmとした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周側面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させた。TEM観察の結果、一次粒子径が30nm程度の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0244】
実施例6−1で得られた酸化亜鉛粒子を、酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、実施例6−1:未処理、実施例6−2:100℃、実施例6−3:200℃、実施例6−4:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。表35に、実施例6−1から実施例6−4で得られた酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径、M−OH比率と波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数、波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長330nmの光線に対する透過率並びに波長380nmから780nmにおける平均透過率並びにヘーズ値を示す。なお、実施例6−1から実施例6−4で作製した酸化亜鉛粒子の透過率、モル吸光係数については、実施例5と同様にプロピレングリコールを分散媒に用いて測定した。
【0245】
【表35】
【0246】
表35に見られるように、実施例1から実施例5とは異なる装置を用いて作製した酸化亜鉛粒子を用いた場合であっても、当該一次粒子径が50nm以下の酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理をすることによって、M−OH比率を制御することが可能であり、M−OH比率を制御することによって、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数、及び波長780nmから2500nmにおける平均反射率を制御できることがわかった。また、実施例6−1から実施例6−4の全てについて、波長330nmの光線に対する透過率は10%以下であり、波長380nmから780nmにおける平均透過率は90%以上であり、ヘーズ値が1%以下であった。
【0247】
(比較例4)
比較例4−1として、攪拌具の外端と攪拌槽の内周面と間隙が1mm、攪拌羽根の回転数を実施例6の回転数の6分の1となるように(1200rpm)した以外は実施例6−1と同じ方法にて酸化亜鉛粒子を作製した。TEM観察の結果、一次粒子径が70nm程度の酸化亜鉛粒子が観察された。
【0248】
比較例4−1で得られた酸化亜鉛粒子を、酸化亜鉛粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、比較例4−1:未処理、比較例4−2:100℃、比較例4−3:200℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。表36に、比較例4−1から比較例4−3で得られた酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径、M−OH比率と波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数、波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長330nmの光線に対する透過率、及び波長380nmから780nmにおける平均透過率並びにヘーズ値を示す。なお、比較例4−1から比較例4−2で作製した酸化亜鉛粒子の透過率、モル吸光係数については、実施例1から実施例5と同様にプロピレングリコールを分散媒に用いて測定した。
【0249】
【表36】
【0250】
表36に見られるように、一次粒子径が100nmを超えた酸化亜鉛粒子については、M−OH比率を変化させても、波長200nmから780nmにおける平均モル吸光係数並びに波長780nmから2500nmにおける平均反射率は大きく変化しないことがわかった。また、比較例4−1〜比較例4−3の条件について、波長330nmの光線に対する透過率は10%以上となり、波長380nmから780nmにおける平均透過率は90%未満となり、さらにヘーズ値が1%を超えるものであった。
【0251】
(実施例7)
次に、実施例5において、流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化亜鉛粒子分散液を
図34に示した分散液改質装置100を用いて処理した以外は実施例5と同じ方法にて酸化亜鉛粒子を作製した。表37に、
図34の分散液改質装置100を用いて上記酸化亜鉛粒子のM−OH結合の比率を制御した条件を示す。表37に記載した内容以外は実施例1−11から実施例1−13と同じ方法でM−OH結合の比率を制御した酸化亜鉛粒子を得た。
【0252】
上記酸化亜鉛粒子分散液の分散処理と、酸化亜鉛粒子分散液中の不純物を除去する操作を、酸化亜鉛粒子分散液のpHが7.01(測定温度:23.2℃)、導電率が0.04μS/cmとなるまで繰り返し行い、酸化亜鉛粒子の凝集体に含まれていた不純物も除去し、また酸化亜鉛粒子分散液中におけるそれぞれの酸化亜鉛粒子を改質した。
【0253】
【表37】
【0254】
表37における(23)(24)に示す酸化亜鉛粒子分散液の改質処理における処理温度を変更することによって、M−OH比率の異なる酸化亜鉛粒子を作製した。表38に、酸化亜鉛粒子分散液の改質処理における処理温度、得られた酸化亜鉛粒子のM−OH比率と波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均透過率、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数並びにヘーズ値を示す。
【0255】
【表38】
【0256】
表38に見られるように、M−OH比率が低い方が、波長780nmから2500nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均反射率、波長380nmから780nmにおける平均透過率、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高くなる傾向が見られ、M−OH比率を制御することによって、色特性が制御できることがわかった。
【0257】
(実施例8)
実施例8においては、酸化セリウム粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液(A液)及び酸化物析出溶媒(B液)を調製した。具体的には表39の実施例8に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表39の実施例8に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。
なお、表39に記載の化学式や略記号で示された物質について、DMAEはジメチルアミノエタノール(キシダ化学株式会社製)、Ce(NO
3)
3・6H
2Oは硝酸セリウム(III)六水和物(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
【0258】
次に調製した酸化物原料液及び酸化物析出溶媒を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。なお、実施例8においては第3導入部d3及びC液を用いなかった(図示無)。
【0259】
表40に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件並びに得られた酸化セリウム粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径を示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例1と同様の方法で行った。TEM観察の結果、一次粒子径が5nmから15nm程度であり、表40に記載したように平均一次粒子径は5.19nmであった。
【0260】
【表39】
【0261】
【表40】
【0262】
実施例8において得られた酸化セリウム粒子について、酸化鉄粒子に含まれる官能基の変更処理として電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、実施例8:未処理、実施例8−2:100℃、実施例8−3:200℃、実施例8−4:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。実施例8−2から実施例8−4で得られた酸化セリウム粒子についても、一次粒子径が5nmから15nm程度であった。
【0263】
実施例8並びに実施例8−2から実施例8−4で得られた酸化セリウム粒子のXRD測定結果においては、酸化セリウム(CeO
2)に由来するピークのみが検出された。
【0264】
表41に波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を、実施例8並びに実施例8−2から実施例8−4で得られた酸化セリウム粒子のM−OH比率とともに示す。表41に見られるように実施例8、8−2、8−3、8−4の順にM−OH比率が小さくなるに伴って、波長200nmから380nmの領域における平均モル吸光係数が向上していることがわかる。
【0265】
【表41】
【0266】
また表41より、実施例3で得られたケイ素化合物被覆酸化セリウム粒子とは異なり、酸化セリウム粒子については、M−OH比率を11%以下とすることで、波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を4000L/(mol・cm)以上とできることがわかった。本発明においては、酸化セリウム粒子に含まれるM−OH比率が12.5%以下であり、波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を3500L/(mol・cm)以上である酸化セリウム粒子であることが好ましく、酸化セリウム粒子に含まれるM−OH比率が11%以下であり、波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を4000L/(mol・cm)以上である酸化セリウム粒子であることがより好ましい。
【0267】
(実施例8−5から実施例8−7)
次に、実施例8において流体処理装置から吐出させ、ビーカーに回収した酸化セリウム粒子分散液を
図34に示した分散液改質装置100を用いて処理した以外は実施例8と同じ方法にて酸化セリウム粒子を作製した。表42に、
図34の分散液改質装置100を用いて上記酸化セリウム粒子のM−OH結合の比率を制御した条件を示す。表42に記載した内容以外は実施例1−11から実施例1−13と同じ方法でM−OH結合の比率を制御した酸化セリウム粒子を得た。
【0268】
上記酸化セリウム粒子分散液の分散処理と、酸化セリウム粒子分散液中の不純物の除去する操作を、ケイ素化合物被覆酸化鉄粒子分散液のpHが7.22(測定温度:25.6℃)、導電率が7.77μS/cmとなるまで繰り返し行い、酸化セリウム粒子の凝集体に含まれていた不純物も除去し、また酸化セリウム粒子分散液中におけるそれぞれの酸化セリウム粒子を改質した。
【0269】
【表42】
【0270】
表42における(23)(24)に示す、酸化セリウム粒子分散液の改質処理における処理温度を変更することによって、実施例8−5から実施例8−7であるM−OH比率の異なる酸化セリウム粒子を作製した。表43に、酸化セリウム粒子分散液の改質処理における処理温度、得られた酸化セリウム粒子のM−OH比率と波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を実施例8の結果とともに示す。
【0271】
【表43】
【0272】
表43に見られるように、M−OH比率が低い方が、波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数が高くなる傾向が見られ、M−OH比率を制御することによって、色特性が制御できることがわかった。
【0273】
(比較例5)
一次粒子径が120nmから200nmである、酸化セリウム粒子(和光純薬工業株式会社製 特級 酸化セリウム(IV)(CeO
2))についてM−OH結合の比率を変化させるための酸化セリウム粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いた熱処理を行った。熱処理条件は、比較例1−1:未処理、比較例1−2:100℃、比較例1−3:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。表44に、比較例1−1から1−3の酸化セリウム粒子について、M−OH比率と実施例8と同様にプロピレングリコールに分散させて得られた分散液における波長200nmから380nmの光線に対する平均モル吸光係数を示す。表44に見られるように、一次粒子径が50nmを超えた酸化セリウム粒子の場合においては、M−OH結合の比率を変化させても、上記平均モル吸光係数が低いものであり、また傾向が見られなかった。また、特に比較例5−1と実施例8−4との対比において、比較例5−1は、一次粒子径が50nm以下の実施例8−4で得られた酸化セリウム粒子と同等のM−OH比率であるにも関わらず、上記波長200nmから380nmの波長領域における平均モル吸光係数が低いことがわかる。本発明においては、M−OH比率が、一次粒子径が50nm以下と小さい場合に色特性に影響を与えること、すなわち同量の酸化セリウム粒子に対して表面積が増大された状態において、当該M−OH比率を制御することによって色特性を制御できるものと考えられた。
【0274】
【表44】
【0275】
(実施例9から実施例11)
実施例9から11においては、酸化物粒子として、コバルト及び亜鉛を含む酸化物であるコバルト亜鉛複合酸化物粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液(A液)、酸化物析出溶媒(B液)を調製した。具体的には表45の実施例9から実施例11に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表45の実施例9に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。
なお、表45に記載の化学式や略記号で示された物質については、EGはエチレングリコール(キシダ化学株式会社製)、Zn(NO
3)
2・6H
2Oは硝酸亜鉛六水和物(和光純薬工業株式会社製)、Co(NO
3)
2・6H
2Oは硝酸コバルト六水和物(和光純薬工業株式会社製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)を使用した。
【0276】
次に調製した酸化物原料液及び酸化物析出溶媒を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。なお、実施例9から実施例11においては第3導入部d3及びC液を用いなかった(図示無)。
【0277】
表46に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件、並びに得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径及びTEM−EDS分析より算出したCo/Znのモル比をA液、B液の処方及び導入流量より計算した計算値とともに示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例1と同様の方法で行った。
【0278】
【表45】
【0279】
【表46】
【0280】
図62に実施例9で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子のSTEMを用いたマッピング結果を、
図63に
図62のBF像(明視野像)における破線を施した位置での線分析の結果を示す。また、
図64に実施例11で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子の
図65に
図64のBF像(明視野像)における破線を施した位置での線分析の結果を示す。
図62から
図65に見られるように、実施例9及び実施例11で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子は、粒子の全体にコバルトと亜鉛が検出され、コバルトと亜鉛が均一に固溶したコバルト亜鉛複合酸化物粒子として観察された。後述する実施例9−2、実施例9−3、実施例10、実施例10−2、実施例10−3、実施例11−2、及び実施例11−3についても同様の粒子が観察された、
【0281】
実施例9から実施例11で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子を、コバルト亜鉛複合酸化物粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いて熱処理した。熱処理条件は、実施例9、実施例10、実施例11:未処理、実施例9−2、実施例10−2、実施例11−2:100℃、実施例9−3、実施例10―3、実施例11−3:200℃、実施例9−4、実施例10―4、実施例11−4:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。
【0282】
図66に実施例9、実施例10、実施例11で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子を0.05wt%でプロピレングリコールに分散させた分散液の波長380nmから780nmの光線に対する透過スペクトルのグラフを、
図67に実施例9、実施例10、実施例11で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子粉末の波長200nmから780nmの光線に対する反射スペクトルのグラフを示す。これに見られるように、コバルト亜鉛複合酸化物粒子は、水色から緑色を呈する。
【0283】
表47に実施例9及び実施例9−2から実施例9−4、表48に実施例10及び実施例10−2から実施例10−4、並びに表49に実施例11及び実施例11−2から実施例11−4で得られたコバルト亜鉛複合酸化物について、粒子に含まれるM−OH比率及びコバルト亜鉛複合酸化物粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトルと、測定液中のコバルト亜鉛複合酸化物粒子の濃度(ZnO+Coとして)から算出した波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数を示す。また、比較として実施例5で得られた酸化亜鉛粒子についても示す。
【0284】
【表47】
【0285】
【表48】
【0286】
【表49】
【0287】
表47から表49に見られるように、コバルト亜鉛複合酸化物粒子についても、粒子に含まれるM−OH結合の比率が低くなるに伴って、波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数が向上した。コバルト亜鉛複合酸化物粒子においては、粒子に含まれるM−OH結合の比率が0.5%以上20%以下とすることによって、波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数が、700L/(mol・cm)以上であることが好ましい。また、酸化亜鉛粒子に比べてコバルト亜鉛複合酸化物粒子の方が、波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数が高くなることがわかった。また上記M−OH結合の比率を制御されたコバルト亜鉛複合酸化物粒子は、水色から緑色を呈しているため、塗布物やガラス等、フィルム状組成物に用いた場合には透明性、紫外線遮蔽能に対して効果的に利用することとともに、青色や水色を着色させる目的等に好適である。
【0288】
(実施例12から実施例14)
実施例12から実施例14においては、酸化物粒子として、ケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子について記載する。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM−2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液(A液)、酸化物析出溶媒(B液)、及びケイ素化合物原料液(C液)を調製した。具体的には表50の実施例12から実施例14に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表50の実施例12から実施例14に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。さらに、表50の実施例12から実施例14に示すケイ素化合物原料液の処方に基づいて、ケイ素化合物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間攪拌することにより均質に混合し、ケイ素化合物原料液を調製した。
なお、表50に記載の化学式や略記号で示された物質については、EGはエチレングリコール(キシダ化学株式会社製)、Zn(NO
3)
2・6H
2Oは硝酸亜鉛六水和物(和光純薬工業株式会社製)、Co(NO
3)
2・6H
2Oは硝酸コバルト六水和物(和光純薬工業株式会社製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)、60wt%HNO
3は濃硝酸(キシダ化学株式会社製)、TEOSはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
【0289】
次に調製した酸化物原料液、酸化物析出溶媒、及びケイ素化合物原料液を本願出願人による特許文献6に記載の流体処理装置を用いて混合した。各流体の処理方法及び処理液の回収方法については実施例1と同様の手順で行った。
【0290】
表51に、実施例1と同様に、流体処理装置の運転条件、並びに得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径及びTEM−EDS分析より算出したSi/Co/Znのモル比をA液、B液、C液の処方及び導入流量より計算した計算値とともにを示す。pH測定や分析及び粒子の洗浄方法についても実施例1と同様の方法で行った。
【0291】
【表50】
【0292】
【表51】
【0293】
図68に実施例13で得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子のSTEMを用いたマッピング結果を、
図69に
図68のBF像(明視野像)における破線を施した位置での線分析の結果を示す。
図68及び
図69に見られるように、実施例13で得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子は、粒子の全体にケイ素、コバルト、亜鉛及び酸素が検出され、ケイ素、コバルト及び亜鉛が均一に固溶したケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子として観察された。後述する実験例12、実施例12−2、実施例12−3、実施例13−2、実施例13−3、並びに実施例14及び実施例14−2、実施例14−3についても同様の粒子が観察された。
【0294】
実施例12から実施例14で得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子を、ケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子に含まれる官能基の変更処理として、電気炉を用いて熱処理した。熱処理条件は、実施例12、実施例13、実施例14:未処理、実施例12−2、実施例13−2、実施例14−2:100℃、実施例12−3、実施例13―3、実施例14−3:200℃、実施例12−4、実施例13―4、実施例14−4:300℃であり、熱処理時間は各熱処理温度において、30分間である。
【0295】
図70に実施例12、実施例13、実施例14で得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子粉末の波長200nmから780nmの光線に対する反射スペクトルのグラフを、比較として粒子に含まれるCo/Zn(モル比)を同じとした実施例9、実施例10、実施例11で得られたコバルト亜鉛複合酸化物粒子粉末の結果とともに示す。これに見られるように、水色から緑色を呈したコバルト亜鉛複合酸化物粒子(実施例9から実施例11)に対して、ケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子(実施例12から実施例14)は、400nmから450nmの光線に対する反射率が高くなっているため、より強く青色を発するものである。
【0296】
表52に実施例12及び実施例12−2から実施例12−4及び得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子及び粒子に含まれるCo/Zn(モル比)が同じでケイ素が含まれない実施例9のコバルト亜鉛複合酸化物粒子、表53に実施例13及び実施例13−2から実施例13−4及び得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子及び粒子に含まれるCo/Zn(モル比)が同じでケイ素が含まれない実施例10のコバルト亜鉛複合酸化物粒子、並びに表54に実施例14及び実施例14−2から実施例14−4で得られたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子及び粒子に含まれるCo/Zn(モル比)が同じでケイ素が含まれない実施例11のコバルト亜鉛複合酸化物粒子について、粒子に含まれるM−OH比率及びケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトルと、測定液中のコバルト亜鉛複合酸化物粒子の濃度(ZnO+Coとして)から算出した波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数を示す。また、比較として実施例5で得られた酸化亜鉛粒子についても示す。
【0297】
【表52】
【0298】
【表53】
【0299】
【表54】
【0300】
表52から表54に見られるように、ケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子についても、粒子に含まれるM−OH結合の比率が低くなるに伴って、波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数が向上した。ケイ素コバルト酸化亜鉛粒子においては、粒子に含まれるM−OH結合の比率が13%以上33%以下とすることによって、波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数が、800L/(mol・cm)以上であることが好ましい。また、コバルト亜鉛複合酸化物粒子に比べてケイ素化合物被覆コバルト亜鉛複合酸化物粒子の方が、波長200nmから波長380nmの光線に対する平均モル吸光係数が高くなることがわかった。また上記M−OH結合の比率を制御されたケイ素コバルト亜鉛複合酸化物粒子は、水色から青(青緑)色を呈しているため、塗布物やガラス等、フィルム状組成物に用いた場合には透明性、紫外線遮蔽能を効果的に利用することとともに、青色や水色を着色させる目的等に好適である。
【0301】
以上、本発明の酸化物粒子の製造方法によって、酸化物粒子の繊細かつ厳密な色特性制御を可能とした。それによって、塗布用若しくはフィルム状組成物に用いた場合には、紫外、可視、近赤外の各領域の光線に対する透過、吸収、色相、彩度、及びモル吸光係数を厳密に制御できるため、人体に塗布する場合においては質感や美観を損なわず、塗装体に用いる場合、又はガラス等に用いる場合のようにフィルム状として用いる場合には意匠性を損なわずに紫外線や近赤外線から人体や塗装体を防御できたものである。