(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属ナノフィラーが、前記修飾カーボンナノフィラーの質量に対して0.1〜100質量ppm含有されていることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノフィラー分散液。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水系溶媒に分散されたカーボンナノフィラー分散液は、複合材料の原材料となるため、高い濃度で且つ長期間貯蔵できるものであることが求められる。しかしながら、従来のカーボンナノフィラー分散液は、カーボンナノフィラーの表面が親水基によって修飾されることによって、水系溶媒に分散可能なものとしているため、分散性(高い濃度で且つ長期間貯蔵できること)には一定の限界がある。このため、分散性をより向上することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、分散性をより向上することができるカーボンナノフィラー分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカーボンナノフィラー分散液は、親水基により表面修飾された修飾カーボンナノフィラーと、金属ナノフィラーと、水系溶媒と、を含有することを特徴とする。
【0007】
本発明のカーボンナノフィラー分散液によれば、プラズマ処理により表面を親水基で修飾された修飾カーボンナノフィラーが水系溶媒に分散し、金属ナノフィラーが自由電子の移動により親水基を有する分散剤のように作用するため、分散性をより向上させることができる。
【0008】
ここで、上記カーボンナノフィラー分散液において、前記金属ナノフィラーが、前記修飾カーボンナノフィラーの質量に対して0.1〜100質量ppm含有されているものとすることができる。
【0009】
これによれば、カーボンナノフィラー分散液の分散性を好適に向上させることができる。
【0010】
また、本発明の複合材料は、合成樹脂に前記カーボンナノフィラー分散液が含有されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の複合材料によれば、合成樹脂がカーボンナノフィラー分散液(カーボンナノフィラー分散液の不揮発分)を含有し、カーボンナノフィラー分散液に含有される修飾カーボンナノフィラーは、分散剤のように作用する金属ナノフィラーによって、合成樹脂に対する分散性が優れ、合成樹脂の中で均一なネットワークを形成する。このため、複合材料は、高強度を有するものとすることができる。
【0012】
また、上記複合材料において、前記修飾カーボンナノフィラーが、前記合成樹脂の質量に対して0.001〜50質量%含有されているものとすることができる。
【0013】
これによれば、複合材料は、好適に高強度のものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカーボンナノフィラー分散液によれば、プラズマ処理により表面を親水基で修飾された修飾カーボンナノフィラーが水系溶媒に分散し、金属ナノフィラーが自由電子の移動により親水基を有する分散剤のように作用するため、分散性をより向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態をカーボンナノフィラー分散液と複合材料とに分けて説明する。
【0017】
(カーボンナノフィラー分散液)
カーボンナノフィラー分散液は、親水基により表面修飾された修飾カーボンナノフィラーと、金属ナノフィラーと、水系溶媒と、を含有する。修飾カーボンナノフィラーは、
図2又は
図3に示す、循環式キャビテーションプラズマ処理装置によって、水系溶媒に分散されたグラファイト(カーボンナノフィラー)をプラズマ処理により表面を分散媒への親和性を有するように修飾させることによって得られる。
【0018】
実施形態においてグラファイトとは、炭素の六角網目のグラフェン構造を有するものを指し、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノボール、フラーレン、カーボンファイバー、カーボンブラックなどを使用することができる。これらの中でも、後に述べる複合材料に含有させたときに合成樹脂の中で均一なネットワークを形成することができるカーボンナノチューブがより好ましい。
【0019】
カーボンナノチューブ(CNT)とは、炭素の六角網目のグラフェン構造がチューブの軸に平行に管を形成したものをいう。カーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ)と、多層カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ)とがあるが、これらはどちらであっても使用することができる。また、単層カーボンナノチューブの変形である、カーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有し、これがアモルファスカーボンなどからなる球状のビーズを貫通した形状のもの)、カップスタック型ナノチューブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外周を覆われたカーボンナノチューブなど、厳密にはチューブ形状をしていないものも、実施形態のカーボンナノチューブとして使用することができる。
【0020】
実施形態において金属ナノフィラーとは、結晶構造の状態で自由電子を有する元素の単体、単体酸化物、複合物及び複合酸化物を指し、金属元素のみならず、半導体元素及び炭素元素も含まれるものである。カーボンナノフィラー分散液は、金属ナノフィラーを含有することによって、金属ナノフィラーが分散剤のように作用し、カーボンナノフィラー分散液の安定性が向上されるものである。実施形態における金属ナノフィラーの金属として、アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)、アルカリ土類金属(Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra)、卑金属(Al,Ga,In,Tl,Ge,Sn,Pb,Sb,Bi,Po)、炭素及び半導体(C,Si,Ge,As,Sb,Se,Te)、遷移元素(Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg)、ランタノイド(La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)、アクチノイド(Ac,Th,Pa,U,Np,Pu,Am,Cm,Bk,Cf,Es,Fm,Md,No,Lr)を使用することができる。これらの中でも、水系溶媒に安定して分散可能な、卑金属、炭素及び半導体、遷移元素、ランタノイド、アクチノイドがより好ましい。さらに、これらの中でも、原子核的に安定な、卑金属、炭素及び半導体、遷移元素がさらに好ましい。
【0021】
金属ナノフィラーは、修飾カーボンナノフィラーの質量に対して、0.1〜100質量ppm含有されていることが好ましい。カーボンナノフィラー分散液の分散性を好適に向上させることができるためである。金属ナノフィラーの含有量が0.1質量ppm未満の場合には、分散剤としての作用が弱く、カーボンナノフィラー分散液の分散性を好適に向上させることができないおそれがある。一方、100質量ppmを超えると、自由電子の移動により親水基を有する分散剤として作用する金属ナノフィラーであっても、電荷による反発が生じ、分散性が劣るおそれがある。より好ましくは、金属ナノフィラーの含有量は、0.5〜50質量ppmであり、さらに好ましくは、1〜10質量ppmである。なお、金属ナノフィラーの粒子径は、1〜100nm(メジアン径(d50))の範囲であることが好ましい。修飾カーボンナノフィラーの分散性を好適に向上させることができるからである。
【0022】
水系溶媒とは、水、又は、水に、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど)など水に可溶な有機溶媒が任意の比率で混合されているものを指す。なお、水系溶媒には、親水基を有する修飾剤を含有させても良い。修飾剤として、アンモニア水(NH
4OH)、ヒドロキシルアミン、メチルアミンなどの脂肪族アミン、アニリンなどの芳香族アミン、アミノカプロン酸などのアミノ酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、ホウ酸、クロム酸などのオキソ酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マンガン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化ランタン、水酸化アルミニウムなどの水酸化物並びにこれらの複合体及び誘導体などを使用することができる。水系溶媒に修飾剤を含有させることにより、後に述べるプラズマ化の工程において、カーボンナノフィラーの表面を修飾させる親水基を多く発生することができる。
【0023】
カーボンナノフィラー分散液におけるグラファイト(カーボンナノフィラー)の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。カーボンナノフィラー分散液の安定性に優れるためである。カーボンナノフィラー分散液におけるグラファイトの含有量が0.1質量%未満だと、安定性に優れるものの、水系溶媒が多いため、カーボンナノフィラー分散液を用いた加工品の製造の際に不都合の生じるおそれがある。一方、10質量%を超えると、カーボンナノフィラー分散液の安定性が劣るおそれがある。より好ましくは、カーボンナノフィラー分散液におけるグラファイトの含有量は、0.5〜5質量%であり、さらに好ましくは、1〜3質量%である。
【0024】
グラファイト(カーボンナノフィラー)は、
図2又は
図3に示す、循環式キャビテーションプラズマ処理装置によって、その表面を修飾させることができる。循環式キャビテーションプラズマ処理装置は、キャビテーションバブルを発生させる撹拌機10、プラズマを発生させるプラズマ発生装置20、カーボンナノフィラー分散液を循環させる循環機構30、を備える。
図2に示す循環式キャビテーションプラズマ処理装置がプラズマ発生装置20を1つ備えられているのに対して、
図3に示す循環式キャビテーションプラズマ処理装置は、プラズマ発生装置20を複数段備える、多段・循環式キャビテーションプラズマ処理装置となっており、効率よくカーボンナノフィラーの表面を修飾することができるものとなっている。
【0025】
循環機構30は、カーボンナノフィラー分散液をポンプ31によって
図2又は
図3の矢印の方向に循環させる。撹拌機10は、回転翼11がモーター12によって回転し、カーボンナノフィラー分散液を高速で撹拌することにより、キャビテーションバブルを発生させる。循環機構30の循環により、カーボンナノフィラー分散液と共にキャビテーションバブルが、プラズマ発生装置20へと循環される。プラズマ発生装置30は、
図1に示すように、電圧印加手段22からの電圧が電極21を通じてカーボンナノフィラー分散液に印加される。カーボンナノフィラー分散液が印加されることによって、カーボンナノフィラー分散液は、ジュール加熱される。このとき、カーボンナノフィラー分散液がキャビテーションバブルを伴っているため、キャビテーションバブルを伴っていない場合と比して、低い温度で気泡が成長し、低い温度でプラズマ化(電離)が発生する。
【0026】
プラズマ化により、カーボンナノフィラー分散液に、水素ラジカル、酸素ラジカル、水酸基ラジカルなどのラジカルが発生し、ラジカルがカーボンナノフィラーの表面に結合して、カーボンナノフィラーは、親水基によって表面が修飾(改質)される。表面が修飾されたカーボンナノフィラーは、循環機構30によって、再び撹拌機10に循環されてキャビテーションバブルが増加され、プラズマ発生装置20に循環されて表面が修飾される一連のサイクルを繰り返すことによって、表面の修飾が繰り返される。
【0027】
表面の修飾が繰り返されることによって、カーボンナノフィラーが水系溶媒に対して親和性を有し、金属ナノフィラーが分散剤として作用するため、カーボンナノフィラー分散液は、分散性をより向上させることができるものとなる。
【0028】
(複合材料)
合成樹脂は、成形性の良さから、乗用車、家電など様々な工業製品に使用されている成型材料である。合成樹脂は、成形品の厚みを厚くすることによって高い強度(曲げ強さ、引張強さなど)を得ることができるが、重量の増大やコストの増大を招くため、成形品の厚みが薄くても高い強度が得られるものが求められる。実施形態の複合材料は、合成樹脂に上記のカーボンナノフィラー分散液が含有されることによって、成形品の厚みが薄くても、高強度の複合材料とすることができるものである。
【0029】
修飾カーボンナノフィラーは、分散剤として作用する金属ナノフィラーによって、合成樹脂に対する分散性が優れ、合成樹脂の中で均一なネットワークを形成する。このため、複合材料は、高強度を有するものとすることができる。
【0030】
複合材料に使用する合成樹脂として、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PMMA(アクリル樹脂)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)などの汎用プラスチック、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)などのエンジニアリングプラスチック、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)などのスーパーエンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの中でも、ポリアミド(PA6、PA66、PA11、PA12、PA610など)が、高い強度を有し、カーボンナノフィラー分散液を含有することによって、さらに高強度の複合材料とすることができるため、好んで使用することができる。
【0031】
カーボンナノフィラー分散液は、合成樹脂の質量に対して修飾カーボンナノフィラーの質量で、0.001〜50質量%含有されているものが好ましい。複合材料を好適に高強度のものとすることができるからである。修飾カーボンナノフィラーの含有量が0.001質量%未満である場合には、合成樹脂の中でネットワークを形成することができず、高強度のものとすることができないおそれがある。一方、50質量%を超える場合には、相対的にバインダー(合成樹脂)の量が少なくなり、これまた、高強度のものとすることができないおそれがある。より好ましくは、修飾カーボンナノフィラーの含有量は、0.01〜10質量%であり、さらに好ましくは、0.05〜1質量%である。
【0032】
複合材料には、分散剤を添加しても良い。複合材料に分散剤を添加することによって、修飾カーボンナノフィラーが合成樹脂の中でより均一に分散されたネットワークを形成することができ、より強度を有するものとすることができるためである。分散剤として、CMC(カルボキシメチルセルロース)、SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)、SDBS(ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム)、SLS(ラウレス硫酸ナトリウム)、PEO(ポリエチレンオキサイド)などを使用することができる。これらの中でも、SDSが複合材料の強度をより高めることができるため好んで使用することができる。
【0033】
分散剤の添加量は、修飾カーボンナノフィラーの質量に対して、0.01〜1質量%が好ましい。好適に複合材料の強度を向上させることができるためである。分散剤の添加量が修飾カーボンナノフィラー質量に対して0.01質量%未満だと、強度向上の効果が見られないおそれがある。一方、1質量%を超えると、過剰な添加量となり、逆に強度向上の効果が見られないおそれがある。より好ましくは、分散剤の添加量は、修飾カーボンナノフィラーの質量に対して、0.03〜0.3質量%であり、さらに好ましくは、0.05〜0.15質量%である。
【0034】
高強度の合成樹脂(複合材料)は、溶融混練機を用いて、合成樹脂とカーボンナノフィラー分散液とを溶融混練することによって形成される。溶融混練機としては、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などが挙げられ、二軸押出機を好んで使用することができる。二軸押出機とは、2本の回転軸を有した溶融混練機であり、回転方向によって、同方向回転式、異方向回転式があるが、実施形態の溶融混練機としては共に使用可能である。
【0035】
図5に、実施形態で使用する二軸押出機(溶融混練機)の概念図を示す。二軸押出機は、バレル53内に2本のローター52を有し、合成樹脂を材料供給側(
図5においては左側)に設けられた主供給口55から供給してローター52の回転による剪断を加えられながら材料出口側(
図5においては右側)へ供給する。主供給口55の下流側(右側)には、副供給口56が設けられ、副供給口56からカーボンナノフィラー分散液、及び、必要に応じて分散剤などが添加されて合成樹脂に含有させられる。
【0036】
バレル53内は加熱され、合成樹脂とカーボンナノフィラー分散液などは、溶融混練される。加熱温度は、合成樹脂の種類によって異なり、ポリアミド6:230〜290℃、ポリアミド66:250〜300℃、ポリエチレン:120〜260℃、ポリプロピレン:180〜280℃、ABS:120〜270℃、ポリスチレン:120〜260℃、アクリル:170〜270℃、塩化ビニル:120〜200℃となる。加熱されることによってカーボンナノフィラー分散液の揮発分が揮発し、修飾カーボンナノフィラーと金属ナノフィラーなどの不揮発分が合成樹脂に溶融混練され、複合材料が形成される。複合材料は、材料出口57から排出され、冷却された後に一定の大きさに切断され、ペレット状のコンポジット樹脂となる。
【0037】
このとき、カーボンナノフィラー分散液には、分散剤として作用する金属ナノフィラーが含有されているため、合成樹脂に対する分散性に優れることから、修飾カーボンナノフィラーは、合成樹脂の中で均一なネットワークを形成することができる。これにより、複合材料は、高強度を有するものとすることができる。
【0038】
なお、複合材料には、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、珪砂、セルベン、フライアッシュ、クレー、ガラス繊維、炭素繊維などのフィラーを含有させることができる。フィラーを含有させることによって、複合材料は、より強度を有するものとすることができると考えられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0040】
(カーボンナノフィラー分散液)
カーボンナノフィラーとして使用するグラファイトは、表1に記載のグラファイトAを使用した。グラファイト分散液の配合は、表2に記載する。キャビテーションプラズマ処理装置には、表3に記載のキャビテーションプラズマ処理装置Aを使用した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
グラファイト分散液は、プレミックスを行い、キャビテーションプラズマ処理装置に供給された。なお、グラファイト分散液のグラファイトは、その表面が修飾されていないため、水系溶媒への分散性が悪く、静置すると、沈降・分離する状態であった。グラファイト分散液は、撹拌機10の回転翼11の高速回転によってキャビテーションバブルが発生され、循環機構30の循環により、グラファイトがキャビテーションバブルと共にプラズマ発生装置30へと循環された。プラズマ発生装置30では、電圧印加手段22からの電圧が電極21を通じてグラファイト分散液に印加された。グラファイト分散液がキャビテーションバブルを伴っているため、低い温度で気泡が成長し、低い温度でプラズマ化(電離)が発生した。プラズマ化により、グラファイト分散液にラジカルが発生し、ラジカルがグラファイトの表面に結合し、グラファイトは、親水基によって表面が修飾された修飾カーボンナノフィラーへと変化した。修飾カーボンナノフィラーが分散したグラファイト分散液は、循環機構30によって、再び撹拌機10に循環されキャビテーションバブルが増加され、プラズマ発生装置20に循環され、表面の修飾が繰り返される一連のサイクルを30分間繰り返された。グラファイトが、親水基によって表面が修飾された修飾カーボンナノフィラーに変化することによって、水系溶媒に分散可能なものとなる。なお、キャビテーションプラズマ処理されたグラファイト分散液を、カーボンナノフィラー分散液Aとする。カーボンナノフィラー分散液Aは、金属ナノフィラーが含有されているため、金属ナノフィラーが自由電子の移動により親水基を有する分散剤のように作用するため、分散性がより向上されたものとなった。カーボンナノフィラー分散液Aの粒度分布を
図4に記載する。
図4から、カーボンナノフィラーの粒子径(モード径)は、約200nmであることが分かる。
【0044】
(複合材料)
複合材料の混合には、東洋樹脂株式会社所有の二軸押出機(特注品)を使用し、表4に記載の条件で混合を行った。なお、合成樹脂には、ポリアミド6を使用し、カーボンナノフィラー分散液には、上記のカーボンナノフィラー分散液Aを使用した。
【0045】
【表4】
【0046】
カーボンナノフィラー含有ポリアミド6とブランク(ポリアミド6のみ)について、引張強さ(プラスチック―引張特性の求め方―第1部:通則(JIS K 7161−1:2014))、曲げ強さ(プラスチック―曲げ特性の求め方(JIS K 7171−1:2016))を測定した。結果を表5に記載する。
【0047】
【表5】
【0048】
結果から、ポリアミド6にカーボンナノフィラーを含有させることによって、引張強さが28%向上され、曲げ強さが28%向上されたことが確認できた。