【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27〜29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発/CO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸化物の酸素キャリア粒子を供給しながら固体燃料とガス化剤を供給して前記固体燃料を熱分解させ、生成した気体成分を外部に排出し、生成した固体成分を酸化物の前記酸素キャリア粒子と酸化反応させ、還元された前記酸素キャリア粒子を外部に排出する燃料反応塔であって、
前記酸素キャリア粒子が流動する第1流動層が形成され、供給される前記固体燃料を前記第1流動層にて混合接触させて熱分解する混合室と、
前記混合室と隔壁を介して隔てられ、前記酸素キャリア粒子が流動する第2流動層が形成されて前記固体成分と前記酸素キャリア粒子とを分離すると共に、還元された前記酸素キャリア粒子を排出する分離室と、を備え、
前記混合室に供給される前記ガス化剤の空塔速度を前記分離室に供給される前記ガス化剤の空塔速度より大きくし、
前記第2流動層の層高を前記第1流動層の層高より高くし、
前記第2流動層にて浮遊分離した前記固体成分の少なくとも一部を前記第1流動層に戻す固体成分戻し構造を有することを特徴とする燃料反応塔。
請求項1〜6の何れか1項に記載の燃料反応塔と、前記燃料反応塔にて還元された前記酸素キャリア粒子を導入して酸化物の前記酸素キャリア粒子を生成する空気反応塔とを備えたケミカルルーピング燃焼システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の幾つかの実施形態に係る燃料反応塔及びケミカルルーピング燃焼システムについて、図面を参照して説明する。
図1はケミカルルーピング燃焼システムの原理を示す図である。
図1に示すように、ケミカルルーピング燃焼システムは、空気反応塔1と、燃料反応塔2とから主に構成されており、これらの間を酸素キャリア粒子4,5が循環流動するシステムになっている。
【0012】
空気反応塔1には、酸素キャリア粒子5(Me)と空気6とが供給される。空気反応塔1では、酸素キャリア粒子5(Me)が空気6中の酸素と反応して酸化物の酸素キャリア粒子4(MeO)となり、生成した酸素キャリア粒子4(MeO)は、排気ガス8(N
2)と分離されて、燃料反応塔2へ送られる。
【0013】
燃料反応塔2には、酸素キャリア粒子4(MeO)と固体燃料7(例えば石炭)とが供給される。燃料反応塔2では、固体燃料7が固体成分のチャーと気体成分の揮発分とに熱分解され、チャーは燃料反応塔2の内部で酸素キャリア粒子4(MeO)と反応する。その結果、酸素キャリア粒子4(MeO)は酸素キャリア粒子5(Me)に還元される。一方、揮発分は高温の酸素キャリア粒子4(MeO)と接触して反応し、CO
2ガス9やH
2O(水蒸気)10を生成し、それらは燃料反応塔2から外部に送り出される。
【0014】
このように、空気反応塔1にて酸化された酸素キャリア粒子4(MeO)は、燃料反応塔2内での固体燃料7の酸化により還元されて酸素キャリア粒子5(Me)となり、再び空気反応塔1へ戻る循環ループを形成する。
【0015】
次に、幾つかの実施形態に係る燃料反応塔を適用したケミカルルーピング燃焼システムについて説明する。
図2は幾つかの実施形態に係るケミカルルーピング燃焼システムの全体構成図である。
図2に示すように、ケミカルルーピング燃焼システムは、空気反応塔1、燃料反応塔2、サイクロン12、排ガス浄化装置14、熱交換器15、空気予熱器16、熱交換器17などを備える。
【0016】
固体燃料7(石炭)とガス化剤19(例えばCO
2、H
2O)が燃料反応塔2に供給される。この燃料反応塔2には、詳細は後述するが、高温の酸素キャリア粒子4(MeO)と酸素キャリア粒子5(Me)が混在した流動層が形成されている。また、燃料反応塔2からは、還元された酸素キャリア粒子5(Me)が適量排出される。
【0017】
排出された酸素キャリア粒子5(Me)は、シールポット20を通過して、空気反応塔1へ移送される。空気反応塔1には、空気予熱器16を通過した高温の空気6が導入されており、空気反応塔1の内部では空気6と酸素キャリア粒子5(Me)が反応して、酸化した酸素キャリア粒子4(MeO)を生成する。この酸素キャリア粒子4(MeO)は排気ガス8(N
2、残留O
2、NOx、飛灰など)と共にサイクロン12に移動され、比重差により固体の酸素キャリア粒子4(MeO)と気体の排気ガス8に分離される。
【0018】
酸素キャリア粒子4(MeO)は、重力でサイクロン12の下部に落下し、シールポット20を通過して、燃料反応塔2へ移動する。この燃料反応塔2の内部では、揮発分が、酸素キャリア粒子4(MeO)を浮遊流動させながら酸素キャリア粒子4(MeO)と反応してCO
2ガス9とH
2O(水蒸気)10が生成される。
【0019】
このようにケミカルルーピング燃焼システムでは、酸素キャリア粒子4,5が燃料反応塔2→空気反応塔1→燃料反応塔2→・・・を循環流動しながら固体燃料7と反応している。また、酸素キャリア粒子4,5を搬送する配管に使用する搬送用流体として、系内で生成したCO
2ガス9及び/あるいはH
2O(水蒸気)10、または排気ガス8が利用される。
【0020】
燃料反応塔2内で生成したCO
2ガス9とH
2O(水蒸気)10は熱交換器17に送られて冷却され、熱交換器17で得られた蒸気は図示しない発電設備に送られる。
【0021】
サイクロン12で分離されたN2、残留O2、NOx、飛灰などの排気ガス8は熱交換器15で冷却され、さらに空気予熱器16で空気6と熱交換し、最後に排ガス浄化装置14で無害化されて大気へ放出される。熱交換器15で得られた蒸気は図示しない発電設備に送られる。
【0022】
酸素キャリア粒子4(MeO)としては、例えばニッケル(Ni),鉄(Fe),銅(Cu),カルシウム(Ca)などの酸化物が使用される。特に酸化鉄は無公害で安価なためケミカルルーピング燃焼システムに好適である。酸素キャリア粒子4(MeO)として酸化鉄を使用した場合の還元、酸化反応式を下記に示す。
【0023】
還元反応:C(石炭)+6Fe
2O
3⇒4Fe
3O
4+CO
2−吸熱・・・(1)
酸化反応:4Fe
3O
4+O
2(空気)⇒6Fe
2O
3+発熱 ・・・(2)
酸素キャリア粒子4(MeO)として酸化鉄を使用した場合、酸素キャリア粒子4(MeO)はFe
2O
3、酸素キャリア粒子5(Me)はFe
3O
4に相当する。そして空気反応塔1では式(2)に示すFe
3O
4と空気の酸化反応が生じ、燃料反応塔2では式(1)に示すFe
2O
3の還元反応が生じる。
【0024】
揮発分の主成分はCH
4とCOとH
2であり、燃料反応塔2では揮発分と酸素キャリア粒子4(MeO)であるFe
2O
3の間で下記の式(3)〜(5)の反応が生じる。
【0025】
CH
4+6Fe
2O
3⇒CO+H
2O+4Fe
3O
4 ・・・(3)
CO+3Fe
2O
3⇒CO
2+2Fe
3O
4 ・・・(4)
H
2+3Fe
2O
3⇒H
2O+2Fe
3O
4 ・・・(5)
【0026】
(燃料反応塔2:第1実施形態)
次に、幾つかの実施形態に係る燃料反応塔の詳細について説明する。
図3は第1実施形態に係る燃料反応塔2の構造を示す図である。
図3に示すように、燃料反応塔2は、周壁40で囲われた内部空間の略下半分を隔壁43で仕切ることにより、2つの空間が形成されている。2つの空間のうち、一方の空間が混合室41、他方の空間が分離室42である。混合室41の上部空間と分離室42の上部空間とは隔壁43の上方で連通しており、隔壁43の高さは内部空間を完全に仕切らない程度で好適な高さに設定すれば良い。
【0027】
混合室41は、酸素キャリア粒子4が流動する第1流動層61が形成されている。混合室41は、第1流動層61に酸素キャリア粒子4を供給する酸素キャリア粒子供給口45と、固体燃料7である石炭を供給する石炭供給口(固体燃料供給口)46と、燃料反応塔2の底部に設けられ、例えば炭酸ガス等のガス化剤19を供給する第1ガス化剤供給口47と、燃料反応塔2の上部に設けられ、気体成分である生成ガス9,10を外部に排出するガス排出口(気体成分排出口)49とを有する。
【0028】
一方、分離室42は、隔壁43によって混合室41と隔てられ、酸素キャリア粒子5が流動する第2流動層62が形成されている。分離室42は、燃料反応塔2の底部に設けられ、第2流動層62にガス化剤19を供給する第2ガス化剤供給口48と、燃料反応塔2の下部に設けられ、還元された酸素キャリア粒子5を排出する酸素キャリア粒子排出口50とを有する。
【0029】
図3から明らかなように、第1流動層61の層高H1より第2流動層62の層高H2の方が高くなるように、第1流動層61と第2流動層62の層高が予め設定されている。隔壁43は、第2流動層62の層高H2より若干高い位置まで立設されており、その上部に、分離室42から混合室41に向かって下り傾斜する戻し流路44が設けられている。なお、戻し流路44の混合室41側の端部(終端)の高さは、第1流動層61の層高H1と同一かそれより若干高い位置である。この戻し流路44は、例えば、管状部材や樋状部材から成るが、その形状は問わない。戻し流路44は、詳しくは後述する粗粒子チャーを第2流動層62から第1流動層61に戻す役割を果たす。よって、戻し流路44は、本発明の「固体成分戻し構造」に相当する。
【0030】
第1ガス化剤供給口47から混合室41に供給されるガス化剤19の空塔速度(空塔速度=体積流量/断面積)は、第2ガス化剤供給口48から分離室42に供給されるガス化剤19の空塔速度より大となるように設定されている。具体的には、第1ガス化剤供給口47に供給されるガス化剤19の空塔速度は、密度差が3〜5倍ある石炭と酸素キャリア粒子4とが第1流動層61にて混合接触できる程度の空塔速度に設定されている。
【0031】
一方、第2ガス化剤供給口48から分離室42に供給されるガス化剤19の空塔速度は、第2流動層62にてチャーが浮遊分離できる程度の空塔速度に設定されている。よって、分離室42では第2流動層62が気泡流動化状態となっている。このように、本実施形態では、第1流動層61の方が第2流動層62より空塔速度が高くなっている。なお、ガス化剤19の空塔速度は、第1ガス化剤供給口47及び第2ガス化剤供給口48に、例えば、ダンパ、ゲート弁、オリフィスなどの流量調整手段をそれぞれ設け、各流量調整手段により制御すれば良い。
【0032】
混合室41に酸化物(反応前)の酸素キャリア粒子4を供給しながら、石炭の粗粒子とガス化剤19とを供給すると、第1流動層61にて石炭が熱分解する。揮発分である生成ガス9,10は生成ガス排出口49から外部に排出され、固体成分であるチャーは、第1流動層61にて酸素キャリア粒子4と酸化反応する。第1流動層61は、ガス化剤19が高速で供給されるため、チャーと酸素キャリア粒子4との密度差が3〜5倍あっても第1流動層61で両者は混合接触する。
【0033】
ところが、反応が進むに連れて微小粒径となったチャーは、いったん第1流動層61から層外に飛出すと、第1流動層61に戻れない。そこで、本実施形態に係る燃料反応塔2は、固気分離器の一例である塔外サイクロン55を混合室41の外部に設けている。この塔外サイクロン55は、第1流動層61から飛出したチャーの微粒子を図中の矢印Xに示すように取り込んで、第1流動層61に戻す役割を果たしている。これにより、微小粒径のチャーと第1流動層61との混合接触が可能となり、チャーガス化反応率の低下が防止される。なお、本実施形態において、塔外サイクロン55以外にも、微小粒径のチャー(固体)と気体とを分離できる構成であれば適宜用いることができる。
【0034】
一方、第1流動層61から飛出した比較的粗い粒子のチャーは、塔外サイクロン55に取り込まれずに、図中の矢印Yに示すように分離室42に飛散する。また、混合室41から分離室42に酸素キャリア粒子5がキャリーオーバーして移動してくる場合もある。第2流動層62は気泡流動化状態となっているから、第2流動層62に含まれる粗粒子チャーは第2流動層62の上層に浮遊分離する。第2流動層62の層高H2は第1流動層61の層高H1より高いため、第2流動層62の上層に浮上した、あるいは堆積した粗粒子チャーは隔壁43の上部に設けられた戻し流路44から第1流動層61へと戻される。これにより、分離室42にて粗粒子チャーと還元された酸素キャリア粒子5とは分離され、還元された酸素キャリア粒子5のみを酸素キャリア粒子排出口50から外部に排出することができる。
【0035】
このように、第1実施形態によれば、混合室41にてチャーと酸素キャリア粒子4とを混合接触できるため、チャーのガス化反応を促進できる。しかも、分離室42から粗粒子チャーを混合室41に戻すことができるため、粗粒子チャーの反応率を高めることができる。加えて、分離室42にて粗粒子チャーを浮遊分離して、還元された酸素キャリア粒子5のみを空気反応塔1に戻すことができるから、ケミカルルーピング燃焼システムのCO
2回収率が向上する。
【0036】
(燃料反応塔102:第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る燃料反応塔102について説明する。上記の燃料反応塔2と重複する説明は省略する。
図4は第2実施形態に係る燃料反応塔102の構造を示す図である。
【0037】
図4では、ガス化剤19を混合室41の周壁40側に偏って供給している。具体的には、混合室41の底部に設けられたガス化剤導入孔の開口率あるいは個数を隔壁43側から周壁40側にかけて増加させることで、ガス化剤19が周壁40側に偏るようにしている。これにより、ガス化剤19の流れが周壁40に近い側では矢印Aに向かう上昇流、隔壁43に近い側では矢印Bの方向に向かう下降流が形成されている。この点が第2実施形態の主な特徴である。
【0038】
少なくとも本実施形態では、第1流動層61は、
図4の反時計回りの方向に流動するため、分離室42から混合室41に戻された酸素キャリア粒子4をより確実に第1流動層61内に取り込むことができる。これにより、第2実施形態に係る燃料反応塔102によれば、酸素キャリア粒子4と未反応チャーとの反応がより一層促進される。
【0039】
(燃料反応塔202:第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る燃料反応塔202について説明する。上記の燃料反応塔2,102と重複する説明は省略する。
図5は第3実施形態に係る燃料反応塔202の構造を示す図である。
【0040】
図5に示すように、第3実施形態では、分離室42の上方に固体成分戻し構造としての金網フィルタ51を設けた点に主な特徴がある。この金網フィルタ51は、一端が周壁40に固定され、他端が隔壁43の上部に固定され、全体として周壁40側から隔壁43側に下り傾斜して取り付けられる。この傾斜の角度は、少なくとも安息角よりも大きくするのが好ましい。粗粒子チャーが金網フィルタ51に堆積するのを防止できるからである。また、金網フィルタ51のメッシュサイズは、粗粒子チャーが通過しない程度のサイズとなっており、例えば100ミクロン程度である。この金網フィルタ51によって、粗粒子チャーとそれより粒子の細かい酸素キャリア粒子5とを物理的に分離する。
【0041】
なお、粗粒子チャーの粒径が金網フィルタ51のメッシュサイズより小さい場合には、粗粒子チャーと酸素キャリア粒子5とは金網フィルタ51を介して分離室42に落下する。この場合には、粗粒子チャーは、第1実施形態と同様に、分離室42にて酸素キャリア粒子5と分離され、戻し流路44を介して混合室41に戻される。
【0042】
第3実施形態に係る燃料反応塔202によれば、金網フィルタ51によって、第2流動層62内に粗粒子チャーが入り込む可能性が低くなるため、還元された酸素キャリア粒子5のみをより確実に空気反応塔1に戻すことができる。よって、ケミカルルーピング燃焼システムにおけるCO
2回収率が向上する。
【0043】
(燃料反応塔302:第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る燃料反応塔302について説明するが、上記の燃料反応塔2,102,202と重複する説明は省略する。
図6は第4実施形態に係る燃料反応塔302の構造を示す図である。
図6に示すように、第4実施形態では、分離室42の上部に固体成分戻し構造としてのエアーフィルタ52を設けた点に主な特徴がある。このエアーフィルタ52は、下方から空気を吹き込める構成となっており、周壁40側から隔壁43側に向かって下り傾斜する傾斜樋から成る。なお、この傾斜樋の傾斜角度も安息角より大きいのが好ましい。
【0044】
このエアーフィルタ52は、いわゆるエアースライドと言われるものであって、下方から空気を吹き込むことにより、エアーフィルタ52上に溜まった粗粒子チャーと酸素キャリア粒子5との層を、粗粒子チャーを上層に、酸素キャリア粒子5を下層にそれぞれ分離させ、粗粒子チャーを混合室41へ、酸素キャリア粒子5を分離室42へとスムーズに移動させる。
【0045】
第4実施形態に係る燃料反応塔302によれば、エアーフィルタ52によって、第2流動層62内に粗粒子チャーが入り込む可能性が低くなるため、還元された酸素キャリア粒子5のみをより確実に空気反応塔1に戻すことができる。よって、ケミカルルーピング燃焼システムにおけるCO
2回収率が向上する。
【0046】
(燃料反応塔402:第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る燃料反応塔402について説明する。
図7は第5実施形態に係る燃料反応塔402の構造を示す図である。
図7に示すように、第5実施形態に係る燃料反応塔402は、第1実施形態に係る燃料反応塔2を上流部と下流部とに2つ直列にして一体化した構造から成る。すなわち、混合室41と分離室42とが交互に同数並べられている。なお、符号のアルファベットは、“a”が上流部、“b”が下流部であることを意味しており、上記した燃料反応塔2,102,202,302とアルファベットを除いて同一の数字は同一の構成である。
【0047】
第5実施形態に係る燃料反応塔402は、隔壁43a,43bの下部、及び上流部と下流部とを仕切る仕切壁56の下部に連通孔57a,57b,57cが設けられている。これら連通孔57a,57b,57cを介して流動層が図中の矢印C方向に向かって移動可能に形成される。
【0048】
また、ガス化剤19の空塔速度は、第1ガス化剤供給口47a>第1ガス化剤供給口47b>第2ガス化剤供給口48a>第2ガス化剤供給口48bの順となるよう予め設定されている。このような空塔速度の関係にすることで、流動層の矢印C方向への移動がスムーズに行われる。
【0049】
第5実施形態によれば、上流部から下流部に2段階で酸素キャリア粒子5と粗粒子チャーとを分離できるため、酸素キャリア粒子排出口50から排出される還元された酸素キャリア粒子5と一緒に粗粒子チャーが排出される可能性はより一層低くなる。そのため、ケミカルルーピング燃焼システムにおけるCO
2回収率はさらに向上する。
【0050】
(燃料反応塔502:第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る燃料反応塔502について説明するが、上記の燃料反応塔2と重複する説明は省略する。
図8は第6実施形態に係る燃料反応塔502の構造を示す図である。
【0051】
図8に示すように、第6実施形態に係る燃料反応塔502は、隔壁43の上端部43−1が、幾つかの実施形態に係る「固体成分戻し構造」として機能する構成である点に特徴がある。すなわち、第6実施形態では、隔壁43に戻し流路44を設けることなく、分離室42の第2流動層62から溢れたチャーを、隔壁43の上端部43−1から混合室41に戻す構成としている。第6実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができることに加えて、戻し流路44を設けていないため、製造コストを抑えることができる。
【0052】
(その他の実施形態についての言及)
上記した幾つかの実施形態に係る燃料反応塔は、次に述べる実施形態に変形することができる。例えば、塔外サイクロン55の代わりに、
図9に示すように、燃料反応塔602の混合室41の内部に塔内サイクロン155を設ける構成としても良い。この構成によれば、燃料反応塔602を小型化できる。また、第5実施形態における連通孔57aを第1〜第4実施形態に係る隔壁43に設ける構成としても良い。また、空気反応塔1と燃料反応塔2からなる2塔式ケミカルルーピング燃焼システムの実施形態を開示したが、例えば、空気反応塔、揮発分反応塔、及び燃料反応塔から成る3塔式ケミカルルーピング燃焼システムに本発明を適用しても良い。
【0053】
また、
図7に示す混合室41と分離室42の数は任意に設定することができる。例えば、混合室41a、分離室42a、混合室41bを直列に接続した3分割の構成とすることや、分離室42a、混合室41b、分離室42bを直列に接続した3分割の構成とすることもできる。また、混合室と分離室の組を3つ以上(すなわち、6分割以上)、かつ混合室と分離室とが交互になるように直列に接続した構成にすることもできる。また、分離室42から排出される酸素キャリア粒子5の流量は、酸素キャリア粒子排出口50の前後の差圧で制御することができる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。