(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オリゴマーが、前記メチルトリアルコキシシランの濃度が5〜80質量%で加水分解及び縮合されて得られたものである、請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
シルセスキオキサンは、基本構成単位(含ケイ素結合単位)がT単位(RSiO
3/2)であるポリシロキサンの総称である。T単位では、シルセスキオキサン中のケイ素原子は3個の酸素原子と結合し、該酸素原子は2個のケイ素原子と結合しているため、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比が1.5となる。
【0003】
シルセスキオキサンの1種であるメチルシルセスキオキサンは、下記T
1〜T
3で表されるT単位を有している。なお、T
0は、実際には、シルセスキオキサン中に含まれる未反応のモノマーに相当し、含ケイ素結合単位ではない。
【0004】
【化1】
【0005】
(上記式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0006】
ポリシルセスキオキサンは、3官能性シランを加水分解及び縮合することにより得ることができる。例えば、特許文献1には、3官能性シランとして、メチルトリクロロシラン等のメチルトリハロシランからポリメチルシルセスキオキサンを製造する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、加水分解によりハロゲン化水素が発生するために酸濃度の調整が難しく、また、原料のトリハロシランの加水分解速度がトリアルコキシシランに比べて速いため、特定範囲の分子量及びT
3を有するポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させずに再現性よく製造することは困難であった。また、電子材料用途等では、使用する塩基由来の金属成分を除去するという処理が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特定範囲の分子量及びT
3を有するポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させることなく、再現性よく工業的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2000〜20000の範囲にあり、且つ、含ケイ素結合単位T
31を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させることなく、再現性よく工業的に製造することができる方法を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、メチルトリアルコキシシランのオリゴマーの分子量及びT
32を特定の範囲に制御し、且つ、該オリゴマーを特定範囲のオリゴマー濃度で縮合させることにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0011】
本発明は、下記項1〜項5に示すポリメチルシルセスキオキサンの製造方法に係る。
項1. ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw
1)が2000〜20000の範囲にあり、且つ、含ケイ素結合単位T
31(ここで、T
31とは、ケイ素原子に結合した3つの酸素原子が全て他のケイ素原子と結合した含ケイ素結合単位である)を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンの製造方法であって、
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw
2)が600〜2000であり、且つ、Mw
2と
、ケイ素原子に結合した3つの酸素原子が全て他のケイ素原子と結合した含ケイ素結合単位の存在比であるT32モル%とが式(1):
T
32≧0.026×Mw
2+20
の関係を満たすオリゴマーを、酸性触媒存在下又は無触媒下、5〜40質量%の濃度で縮合させる方法。
項2. 前記オリゴマーが、メチルトリアルコキシシランを、酸性触媒存在下で、加水分解及び縮合させて得られるものである、上記項1に記載の製造方法。
項3. 前記オリゴマーが、水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒中で製造される、上記項2に記載の製造方法。
項4. 前記オリゴマーが、前記メチルトリアルコキシシランに対し、酸性触媒を0.1〜50モル%使用して製造されたものである、上記項2又は3に記載の製造方法。
項5. 前記オリゴマーが、前記メチルトリアルコキシシランの濃度が5〜80質量%で加水分解及び縮合されて得られたものである、上記項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、分子量及びT
32が特定の範囲に制御されたメチルトリアルコキシシランのオリゴマーを、特定範囲のオリゴマー濃度で使用して縮合させることにより、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2000〜20000の範囲にあり、且つ、含ケイ素結合単位T
31を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させることなく、再現性よく工業的に製造することができる。本発明の方法により製造されたポリメチルシルセスキオキサンから形成された膜は、平滑であって、クラックが入りにくいという特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、メチルトリアルコキシシランオリゴマーを、酸性触媒下又は無触媒下、5〜40質量%の濃度で縮合させて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw
1)が2000〜20000の範囲にあり、且つ、含ケイ素結合単位T
31(ここで、T
31とは、ケイ素原子に結合した3つの酸素原子が全て他のケイ素原子と結合した含ケイ素結合単位である)を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンを製造する方法である。
【0014】
本発明で使用するメチルトリアルコキシシランオリゴマー(以下、単に「オリゴマー」という場合もある。)は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw
2)が600〜2000であり、且つ、Mw
2と含ケイ素結合単位T
32(ここで、T
32とは、ケイ素原子に結合した3つの酸素原子が全て他のケイ素原子と結合した含ケイ素結合単位である)とが式(1):
T
32≧0.026×Mw
2+20
の関係を満たすことが特徴である。本発明では、モノマー(メチルトリアルコキシシラン)から直接ポリメチルシルセスキオキサンを製造するのではなく、Mw
2とT
32単位とを所定の範囲に制御したオリゴマー(中間体)を用いて、該オリゴマーの濃度を所定の範囲に制御しながら縮合させることで、Mw
1が2000〜20000の範囲にあり、且つ、T
31単位を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させることなく、再現性よく製造することができる。
【0015】
前記オリゴマーのMw
2は、600〜2000である。オリゴマーのMw
2が上記範囲であることにより、目的物であるポリメチルシルセスキオキサンのMw
1及びT
31単位を前記範囲に精度よく制御することができる。また、Mw
2が600未満のオリゴマーが多いと、縮合工程で環状及び/又は籠状の化合物が生成するため、除去操作が必要になる。オリゴマーのMw
2として、好ましくは、700〜1800であり、より好ましくは、800〜1600である。
【0016】
なお、オリゴマーのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw
2)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質とした測定値である。
【0017】
また、前記オリゴマーが上記式(1)の関係を満たすことにより、ゲル化を抑制し、Mw
1が2000〜20000の範囲にあり、且つ、T
31単位を65モル%以上含む目的物を精度よく製造することが可能になる。
【0018】
オリゴマーは、下記式(1’):
T
32≧0.026×Mw
2+21
の関係を満たすことが好ましい。
【0019】
オリゴマーの含ケイ素結合単位(T
12〜T
32)は、核磁気共鳴分析(
29Si−NMR)により、オリゴマーのケイ素原子の結合状態を測定して解析することができる。T
12〜T
32の比は、
29Si−NMRのピーク面積比から求める。
【0020】
なお、これらの特性は、分子1個の特性をいうものではなく、各分子の平均の特性として求められるものである。
【0021】
前記オリゴマーの製造方法としては、上記要件を満たすオリゴマーを製造できる方法であれば、特に制限されない。前記オリゴマーの製造方法として、例えば、メチルトリアルコキシシランを、加水分解及び縮合させる方法が挙げられる。この反応は、メチルトリアルコキシシランと水とを溶媒中で加熱することにより行うことが好ましい。
【0022】
メチルトリアルコキシシランのアルコキシ基として、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基として、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、及びイソプロポキシが挙げられ、好ましくはメトキシ及びエトキシであり、より好ましくはエトキシである。メチルトリアルコキシシランの3個のアルコキシ基は、同一でも異なっていてもよい。
【0023】
炭素数1〜3のアルコキシ基を有するメチルトリアルコキシシランとして、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリn−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、メチルトリメトキシシラン、及びメチルトリエトキシシランが好ましく、メチルトリエトキシシランがより好ましい。
【0024】
反応系には、触媒を存在させることが好ましい。触媒としては酸性触媒が好ましい。酸性触媒として、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。酸性触媒の配合量は、メチルトリアルコキシシラン1モルに対し、0.1〜50モル%程度使用することが好ましく、0.1〜20モル%程度がより好ましく、0.2〜8モル%程度が特に好ましい。
【0025】
酸性触媒の配合量を上記範囲にすることにより、オリゴマーをゲル化させることなく、Mw
2及びT
32単位を上記範囲に制御することが可能になる。
【0026】
メチルアルコキシシランの加水分解及び縮合は、水を加えた溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、親水性の有機溶媒が好ましい。親水性の有機溶媒としては、アルコール溶媒がより好ましい。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。これらの中で、オリゴマーの溶媒への均一溶解性の点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等の炭素数1〜4のアルコール溶媒が好ましい。
【0027】
メチルアルコキシシランの加水分解は、例えば、酸性触媒、水及びアルコール溶媒を含む溶液を撹拌しながら、その中にメチルアルコキシシランを滴下等により導入することにより行うことができる。
【0028】
加水分解及び縮合時のメチルトリアルコキシシランの濃度は、5〜80質量%程度とすることが好ましく、10〜50質量%程度がより好ましい。メチルトリアルコキシシランの濃度を上記範囲にすることにより、籠状化合物等の不純物の生成が少なくなるとともに、分子量の制御がより容易になり、高い容積効率で反応を進行させることができる。
【0029】
反応温度は、触媒が存在する場合は室温で反応させることができる。通常は、20〜80℃の温度から目的に応じて適切な温度を採用することができる。反応時間は、通常0.05〜24時間であり、好ましくは0.1〜8時間である。
【0030】
前記オリゴマーの縮合は、酸性触媒下又は無触媒下で行われる。
【0031】
酸性触媒としては、オリゴマーを製造する際に使用した酸性触媒と同様のものを使用することができる。前記オリゴマーをモノマーから製造し、前記オリゴマーを単離することなく、目的物を製造する場合には、オリゴマーの製造時に使用した酸性触媒と同じ触媒を使用することが好ましい。オリゴマーの縮合時に、酸性触媒をさらに追加してもよい。
【0032】
また、触媒を使用しなくても、オリゴマーの縮合反応は進行する。前記オリゴマーをモノマーから製造し、前記オリゴマーを単離することなく、目的物を製造する場合には、オリゴマー溶液を、ケトン溶媒又はエステル溶媒と水との混合溶媒で中性になるまで洗浄してから縮合させるのが好ましい。
【0033】
ケトン溶媒として、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
【0034】
エステル溶媒として、例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0035】
縮合時のオリゴマーの濃度は、5〜40質量%程度であり、10〜35質量%程度が好ましい。
【0036】
縮合時のオリゴマーの濃度を上記範囲にすることにより、取り扱い易い適当な粘度となり、ゲル化が起こりにくく、また容積効率が高く、実用的である。
【0037】
オリゴマーの縮合温度は、通常40〜200℃であり、好ましくは70〜160℃である。縮合時間は、通常0.1〜72時間であり、好ましくは0.5〜24時間である。
【0038】
本発明の製造方法によれば、Mw
2とT
32単位を所定の範囲に制御したオリゴマー(中間体)から、該オリゴマー濃度を所定の範囲に制御しながら縮合させることで、Mw
1が2000〜20000の範囲にあり、且つ、T
31単位を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させることなく、再現性よく製造することができる。
【0039】
上記方法により製造されたポリメチルシルセスキオキサンは、Mw
1が2000〜20000の範囲にあり、且つ、T
31単位を65モル%以上含んでいる。
【0040】
ポリメチルシルセスキオキサンのMw
1は、好ましくは2200〜17000であり、より好ましくは2500〜14000である。
【0041】
ポリメチルシルセスキオキサンのT
31単位は、66モル%以上であることが好ましく、68モル%以上であることがより好ましい。
【0042】
なお、ポリメチルシルセスキオキサンのMw
1は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質とした測定値である。
【0043】
ポリメチルシルセスキオキサン中の含ケイ素結合単位(T
11〜T
31)は、核磁気共鳴分析(
29Si−NMR)により、オリゴマー又は目的物中のケイ素原子の結合状態を測定して解析することができる。T
11〜T
31の比は、
29Si−NMRのピーク面積比から求める。
【0044】
なお、これらの特性は、分子1個の特性をいうものではなく、各分子の平均の特性として求められるものである。
【0045】
反応終了後は、公知の方法で生成物を取り出せばよい。例えば、得られた生成物は、常法に従って、濾別して水で洗浄し、乾燥させればよい。
【0046】
上記方法で得られた、含ケイ素結合単位T
31を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンから形成された膜は、平滑であって、クラックが入りにくい。よって、本発明の方法によって得られたポリメチルシルセスキオキサンは、各種窓材、車両用窓材等に使用される透明樹脂版の表面にハードコート層を形成するためのハードコート剤等として利用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0048】
オリゴマー及びポリマー中の重量平均分子量(Mw)はGPCより求めた。T
1〜T
3の存在比は、
29Si−NMRのピーク面積比から求めた。各測定条件は以下の通りである。
【0049】
[GPC条件]
カラム:TSKgel G2000H
XL&TSKgel G4000H
XL(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動層:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.65mL/min
検出装置:RI
標準物質:ポリスチレン
【0050】
[
29Si−NMR条件]
共鳴周波数:79.5MHz
測定温度:室温
試薬:Cr(acac)
3を緩和剤として含有する重アセトン使用
また、各T構造に由来する
29Si−NMRの化学シフトは、以下のとおりである。
(T
1〜T
3)
T
3:−61〜−71ppm
T
2:−51〜−61ppm
T
1:−45〜−51ppm
【0051】
(実施例1)
300mLの四つ口フラスコにイオン交換水26.52g、2−プロパノール113g、及び5質量%塩酸3.68gを仕込み、そこへメチルトリエトキシシラン90.0gを25℃で1時間かけて滴下した。その後、混合物を60℃まで昇温し、60℃で4時間撹拌した。得られたオリゴマーのMw
2は1510、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=61/38/1であった。
【0052】
次いで、オリゴマー溶液を79℃で5.2時間撹拌した。反応液を冷却し、酢酸ブチル/イオン交換水(質量比:50/50)で中性になるまで洗浄し、119gの溶液を得た。得られた酢酸ブチル溶液の固形分は22質量%、収率は79%であった。生成物のMw
1は2710、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=72/27/1であった。
【0053】
(実施例2−1)
滴下時間を2時間にし、反応温度を40℃にした以外は実施例1と同様にしてオリゴマー溶液を得た。得られたオリゴマーのMw
2は1080、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=51/46/3であった。
【0054】
次いで、オリゴマー溶液を79℃で8時間撹拌した後、25℃まで冷却し、460gの溶液を得た。得られた溶液の固形分は15質量%、収率は99%であった。生成物のMw
1は3040、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=72/27/1であった。
【0055】
(実施例2−2)
実施例2−1で得たオリゴマー溶液に5質量%塩酸14.68gを追加し、79℃で7.8時間反応した。実施例1で用いた洗浄液の酢酸ブチルの代わりに酢酸プロピルを用いて洗浄し、475gの溶液を得た。得られた酢酸プロピル溶液の固形分は13質量%、収率は94%であった。生成物のMw
1は7630、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=82/17/1であった。
【0056】
(実施例3)
500mLの四つ口フラスコにイオン交換水30.69g、2−プロパノール130g、及び5質量%塩酸2.13gを仕込み、そこへメチルトリエトキシシラン104.2gを25℃で2時間かけて滴下した。その後、混合物を40℃まで昇温し、40℃で3時間撹拌してオリゴマー溶液を得た。得られたオリゴマーのMw
2は890、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=44/53/3であった。
【0057】
次いで、5質量%塩酸10.65gを追加し、79℃で16.5時間反応させ、溶媒の減圧留去を行い、40.8gの溶液を得た。溶液の固形分は86質量%、収率は90%であった。生成物のMw
1は13000、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=84/15/1であった。
【0058】
(実施例4)
実施例1と同様にして、メチルトリエトキシシランからオリゴマー溶液を得た。得られたオリゴマーのMw
2は1420、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=60/39/1であった。
【0059】
得られたオリゴマー溶液を酢酸プロピル/イオン交換水(質量比:50/50)で中性になるまで洗浄した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、減圧留去にて酢酸プロピルを除去し、オリゴマーを15質量%含む溶液を得た。
【0060】
次いで、オリゴマー溶液を150℃で20時間反応させ、溶媒の減圧留去を行い、114gの溶液を得た。得られた溶液の固形分は15質量%、収率は73%であった。生成物のMw
1は6310、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=68/32/0であった。
【0061】
(比較例1)
1Lの四つ口フラスコにイオン交換水560g、2−プロパノール2228g、及び5質量%塩酸37gを仕込み、そこへメチルトリエトキシシラン1750gを25℃で2時間かけて滴下した。その後、混合物を50℃まで昇温し、50℃で2時間撹拌してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーのMw
2は1180、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=46/51/3であった。
【0062】
次いで、オリゴマー溶液をメチルイソブチルケトン/イオン交換水(質量比:50/50)で中性になるまで洗浄した後、減圧留去し、オリゴマーを40質量%含むメチルイソブチルケトン溶液を得た。
【0063】
得られたオリゴマー溶液を136℃で26時間反応させて、1581gの溶液を得た。得られた溶液の固形分は40質量%、収率は96%であった。生成物のMw
1は11100、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=58/41/1であった。
【0064】
(比較例2)
滴下温度20〜35℃で滴下時間を0.2時間にし、反応温度50℃で反応時間を1.5時間にした以外は実施例1と同様にして、オリゴマー溶液を得た。得られたオリゴマーのMw
2は1190、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=48/50/2であった。
【0065】
次いで、オリゴマー溶液をメチルイソブチルケトン/イオン交換水(質量比:50/50)で中性になるまで洗浄した後、減圧留去し、オリゴマーを96質量%含む固体を得た。
【0066】
これを130℃で7時間反応させ、溶媒を減圧留去することにより、152gの固体を得た。得られた固体のポリメチルシルセスキオキサン成分は96質量%、収率は84%であった。生成物のMw
1は9870、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=52/48/0であった。
【0067】
(比較例3)
滴下時間を2時間にした以外は実施例1と同様にして、オリゴマー溶液を得た。得られたオリゴマーのMw
2は1400、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=59/39/2であった。
【0068】
次いで、オリゴマー溶液を酢酸プロピル/イオン交換水(質量比:50/50)で中性になるまで洗浄した後、減圧留去し、オリゴマーを80質量%含む酢酸プロピル溶液を得た。
【0069】
オリゴマー溶液を79℃で6時間反応させた後、114℃に昇温し、同温度で1.4時間反応させると、ゲル化した。ゲル状物は、有機溶媒に不溶であった。
【0070】
以上の結果より、Mw
2が600〜2000で、Mw
2とT
32とが式(1)の関係を満たすメチルトリアルコキシシランのオリゴマーを、5〜40質量%のオリゴマー濃度で使用して縮合させることにより、Mw
1が2000〜20000の範囲にあり、且つ、T
31を65モル%以上含むポリメチルシルセスキオキサンを、ゲル化させることなく、再現性よく工業的に製造することができることがわかる。
【0071】
(実施例5)
500mLの四つ口フラスコにイオン交換水30.69g、2−プロパノール130g、及び5質量%塩酸2.13gを仕込み、そこへメチルトリエトキシシラン90.0gを25℃で1時間かけて滴下した。その後、混合物を40℃まで昇温し、40℃で3時間撹拌してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーのMw
2は890、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=44/53/3であった。
【0072】
次いで、5質量%塩酸10.65gを追加し、79℃で12.8時間反応させ、酢酸プロピル/イオン交換水(質量比:50/50)で中性になるまで洗浄した後、減圧留去し、固形分70質量%の溶液を得た。収率は90%であった。生成物のMw
1は9090、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=84/15/1であった。
【0073】
(実施例6)
実施例5と同条件で反応させることにより、オリゴマーを得た。得られたオリゴマーのMw
2は880、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=44/53/3であった。
【0074】
次いで、反応時間を13時間にした以外は実施例5と同条件で反応させ、固形分70質量%の溶液を得た。収率は90%であった。生成物のMw
1は9240、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=84/15/1であった。
【0075】
(実施例7)
実施例5と同条件で反応させることにより、オリゴマーを得た。得られたオリゴマーのMw
2は880、各T単位の存在比は、T
32/T
22/T
12=44/53/3であった。
【0076】
次いで、反応時間を13時間にした以外は実施例5と同条件で反応させ、固形分70質量%の溶液を得た。収率は90%であった。生成物のMw
1は8960、各T単位の存在比は、T
31/T
21/T
11=83/16/1であった。
【0077】
実施例5〜7の結果より、本発明の方法によれば、再現性よく目的物を製造することができることがわかる。