特許第6892148号(P6892148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000002
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000003
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000004
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000005
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000006
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000007
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000008
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000009
  • 特許6892148-インクジェット記録装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6892148
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/025 20060101AFI20210614BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   B41J2/025
   B41J2/01 401
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-511111(P2019-511111)
(86)(22)【出願日】2018年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2018009477
(87)【国際公開番号】WO2018186112
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-75295(P2017-75295)
(32)【優先日】2017年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高岸 毎明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】邱 安
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−137528(JP,A)
【文献】 特開2015−128869(JP,A)
【文献】 特開平06−262766(JP,A)
【文献】 特開2016−198941(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0211098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/025
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧して噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成するノズルと、該インク粒子を帯電させる帯電電極と、帯電したインク粒子を偏向させる偏向電極と、印字に使用しないインク粒子を回収するガターからなるサブ印字ヘッドを2つ有し、2つのノズルは前記インク粒子の偏向方向に配列されており、被印字物を前記インク粒子の偏向方向とほぼ直交する方向に相対移動させることにより該被印字物に印字を行うインクジェット記録装置であって、
前記帯電電極に印する電圧と前記偏向電極に印する電圧を制御し、前記2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の間隔を縮小する機能を有し、
前記2つのノズルで1つの印字内容を印字し、
前記2つのノズルのうち、前記インク粒子の偏向方向の上流に配置された第1のノズルから生成されたインク粒子を帯電させる第1の帯電電極の帯電電圧を大きくするように変更し、該第1の帯電電極により帯電したインク粒子を偏向させる第1の偏向電極に印加する偏向電圧を大きくするように変更することで、前記第1のノズルによって印字される印字結果とその他の第2のノズルによって印字される印字結果との間のスペースが固定された状態で前記1つの印字内容の大きさを調整可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
加圧して噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成するノズルと、該インク粒子を帯電させる帯電電極と、帯電したインク粒子を偏向させる偏向電極と、印字に使用しないインク粒子を回収するガターからなるサブ印字ヘッドを2つ有し、2つのノズルは前記インク粒子の偏向方向に配列されており、被印字物を前記インク粒子の偏向方向とほぼ直交する方向に相対移動させることにより該被印字物に印字を行うインクジェット記録装置であって、
前記帯電電極に印加する電圧と前記偏向電極に印加する電圧を制御し、前記2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の間隔を縮小する機能を有し、
前記2つのノズルで印字する1列あたりのドット数が異なる場合、1列あたりのドット数が少ない方のノズルは、1列あたりのドット数が多い方のノズルとの1列あたりのドット数の差分だけ、1列中の印字に使用するドット同士の飛行中の粒子間距離を拡大する制御機能によって、印字品質を向上させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置であって、
前記被印字物が移動することにより、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果が傾く方向が同一方向である印字ヘッド構造を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
加圧して噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成するノズルと、該インク粒子を帯電させる帯電電極と、帯電したインク粒子を偏向させる偏向電極と、印字に使用しないインク粒子を回収するガターからなるサブ印字ヘッドを2つ有し、2つのノズルは前記インク粒子の偏向方向に配列されており、被印字物を前記インク粒子の偏向方向とほぼ直交する方向に相対移動させることにより該被印字物に印字を行うインクジェット記録装置であって、
前記帯電電極に印加する電圧と前記偏向電極に印加する電圧を制御し、前記2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の間隔を拡大する機能を有し、
前記2つのノズルで印字する1列あたりのドット数が異なる場合、1列あたりのドット数が少ない方のノズルは、1列あたりのドット数が多い方のノズルとの1列あたりのドット数の差分だけ、1列中の印字に使用するドット同士の飛行中の粒子間距離を拡大する制御機能によって、印字品質を向上させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記帯電電極に印加する電圧と前記偏向電極に印加する電圧の制御は、前記2つのノズルのうち、前記インク粒子の偏向方向の下流に配置された第2のノズルから生成されたインク粒子を帯電させる第2の帯電電極の帯電電圧を大きくするように変更し、該第2の帯電電極により帯電したインク粒子を偏向させる第2の偏向電極に印加する偏向電圧を大きくするように変更することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項4に記載のインクジェット記録装置であって、
前記被印字物が移動することにより、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果が傾く方向が同一方向である印字ヘッド構造を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特に、ツインノズル方式のインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特表2005−515918号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、それぞれ軸線を持つ2つのインクジェット吐出ノズルを有するインク液滴発生器アセンブリと、帯電電極と、帯電液滴を偏向させる偏向電極と、両ノズルのための単一のインク液滴回収ガッタとを備え、前記ノズルの軸線が単一の回収ガッタの単一の入口の軸線上で、この口の付近またはこのガッタの上流に位置する点で収束することを特徴とする、連続インクジェット偏向プリンタのためのツインノズルプリントヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−515918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリントヘッド構造のインクジェット記録装置であれば、2つのインクジェット吐出ノズルの軸線が1点で収束するように配置されるので、2つのインクジェット吐出ノズルで印字されたそれぞれの印字結果の偏向方向の印字高さの大小に関わらず、2つのインクジェット吐出ノズルで印字されたそれぞれの印字間のスペースが広がらないように印字することができる。
【0005】
ここで、一般的に、インクジェット記録装置において、被印字物が搬送速度によって移動している点と、例えば縦一列の印字を行う場合でも被印字物に着弾する被印字粒子の飛行する距離がインクジェット吐出ノズルからの距離に応じて異なる点から、インクジェット吐出ノズルで印字された印字結果は原理的に傾くことになる。しかし、特許文献1のプリントヘッド構造のインクジェット記録装置で印字した場合、2つのインクジェット吐出ノズルで印字されたそれぞれの印字は逆方向に傾き、くの字や、逆くの字となり、文字の傾きが異なってしまう。そのため、片方のインクジェット吐出ノズルで印字された印字結果の傾きを修正する方向に印字ヘッドを回転させたとき、もう一方のインクジェット吐出ノズルで印字された印字結果は修正したい方向とは逆に印字ヘッドが回転され、文字の傾きがさらに大きくなってしまう。よって、印字ヘッドを回転させることによる印字結果の傾き修正ができないという問題がある。
【0006】
また、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字間のスペースが広がらないように印字するために、例えば下側配置の片方のノズルでの印字設定を2段設定として、上段に印字、下段にブランクを印字することで、2つのノズルでの印字間隔が広がらないようにすることも考えられるが、実質2段分の印字を行う必要があり、印字品質を確保するために被印字物の搬送速度を下げる必要が生じる。
【0007】
本発明は、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の文字の傾き修正が可能で、被印字物の搬送速度を下げることなく、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字間隔を調整可能な機能を有するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、加圧して噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成するノズルと、インク粒子を帯電させる帯電電極と、帯電したインク粒子を偏向させる偏向電極と、印字に使用しないインク粒子を回収するガターからなるサブ印字ヘッドを2つ有し、2つのノズルはインク粒子の偏向方向に配列されており、被印字物をインク粒子の偏向方向とほぼ直交する方向に相対移動させることにより被印字物に印字を行うインクジェット記録装置であって、帯電電極に印可する電圧と偏向電極に印可する電圧を制御し、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の間隔を縮小する機能を有する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字間隔を調整可能で、高速印字が可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1におけるインクジェット記録装置の構成図である。
図2】実施例1における2つのノズルの配置を説明する図である。
図3】実施例1におけるノズル間縮小機能を示す図である。
図4】実施例1におけるノズル間スペース縮小機能の設定フローである。
図5】実施例2における2ノズルで合成した印字の文字大きさの調整機能を説明する図である。
図6】実施例3における2つのノズルでの1列あたりの縦ドット数が異なる場合の説明図である。
図7】実施例4におけるノズル間拡大機能を示す図である。
図8】実施例4におけるノズル間スペース拡大機能の設定フローである。
図9】実施例5における2つのノズルでの1列あたりの縦ドット数が異なる場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例は、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の間隔を縮小する機能について説明する。
【0013】
図1は、本実施例におけるインクジェット記録装置の構成図である。図1において、101はインクジェット記録装置全体を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)、102はインクジェット記録装置内で一時的にデータを記憶しておくRAM(ランダムアクセスメモリ)、103は書き出し位置を計算するソフトウェアおよびデータを記憶するROM(リードオンリーメモリ)、104は入力されたデータおよび印字内容等を表示する表示装置、105は印字する文字情報等を入力するパネル、110はインクジェット記録装置の印字に関する全般的な制御を行う印字制御回路、111は被印字物検知回路、112は被印字物を検出するセンサ、108はノズルI(114)のインク粒子に文字データに対応した帯電電圧であるビデオデータを記憶しておくビデオRAM1,109はノズルII(115)のインク粒子に文字データに対応した帯電電圧であるビデオデータを記憶しておくビデオRAM2、106はビデオRAM1(108)に記憶してあるビデオデータを文字信号にする文字信号発生回路1、107はビデオRAM2(109)に記憶してあるビデオデータを文字信号にする文字信号発生回路2、113はデータ等を送るバスライン、114は加圧して噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成する1つ目のノズルI、115はインク粒子を生成する2つ目のノズルIIである。
【0014】
なお、本実施例は、図2に示すように、ノズルI(114)とノズルII(115)を印字面の帯電粒子偏向方向(被印字物の搬送方向に直交する方向)に並べて取り付けた印字ヘッドによって印字を行うインクジェット記録装置を対象とする。すなわち、ノズルI(114)が偏向方向の上流に配置され、ノズルII(115)が偏向方向の下流に配置された構成となっている。また、被印字物が移動することにより2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果が傾く方向が、同一方向であるプリントヘッド構造を有する。
【0015】
図1において、116はノズルI(114)から噴出したインク粒子に電荷を加える帯電電極I、117はノズルII(115)から噴出したインク粒子に電荷を加える帯電電極II、118はノズルI(114)から噴出し帯電したインク粒子を偏向する偏向電極I、119はノズルII(115)から噴出し帯電したインク粒子を偏向する偏向電極II、120はノズルI(114)から噴出した印字に使用しないインクを回収するガターI、121はノズルII(115)から噴出した印字に使用しないインクを回収するガターII、122はガターI、IIから回収されたインクを再びノズルI、IIへ供給するポンプ、123は被印字物を搬送するコンベア、124は印字の対象となる被印字物、125はノズルI(114)によって被印字物に印字された印字結果、126はノズルII(115)によって被印字物に印字された印字結果である。なお、ノズルと帯電電極と偏向電極とガターからなる1組をサブ印字ヘッドと定義すると、本実施例では2つのサブ印字ヘッドを有した印字ヘッドが対象となる。
【0016】
次に、印字内容入力から印字を完了するまでの一連の動作概要について述べる。まず、印字内容データをパネル105によって入力すると、MPU101はROM103に記憶されているプログラムにより、インク粒子へ帯電させるビデオデータを印字情報に応じて作成し、バスライン113を介してビデオRAM1、2に保存することで印字内容を設定することが出来る。
【0017】
上記ROM103は、パネル105に印字内容データを入力する際に、ビデオRAM1(108)及びビデオRAM2(109)に記憶するためのビデオデータの相対的割合(帯電電圧値の相対的割合)を変更可能とし、そして偏向電極I(118)と偏向電極II(119)に印加する偏向電圧の相対的割合を変更可能とするプログラムを有する。このプログラムによって、ノズルI(114)による印字結果125とノズルII(115)による印字結果126のそれぞれの文字の大きさを大きくしたり小さくしたりすることを可能とする。
【0018】
本実施例では、パネル105において印字内容データを入力する際に設定する項目に、ノズルI(114)による印字結果125とノズルII(115)による印字結果126との間のスペースを縮小する機能である、ノズル間スペース縮小機能を選択する項目を設ける。例えば、パネル105に「ノズル間スペース縮小」ボタンを表示し、それを選択することでその機能を選択するようにする。ノズル間スペース縮小機能を選択すると、ROM103はビデオRAM1(108)に記憶するためのビデオデータの帯電電圧値を大きくするように変更し、また、偏向電極I(118)に印加する偏向電圧を大きくするように変更する。これにより、図3において、301に示す通常印字の場合には、印字結果125が小さくなると発生する、印字結果125と印字結果126間のスペースが空いてしまう課題を、302に示すノズル間スペース縮小機能を使用することで、印字結果125の印字位置を上方に移動させ印字結果126とのスペースを縮小して解決できる。
【0019】
本実施例におけるノズル間スペース縮小機能の設定フローを図4に示す。図4において、ステップS401において、ノズルIとノズルIIについて、それぞれの印字内容を設定する。そして、ステップS402において、パネルに表示された「ノズル間スペース縮小」ボタンを押すことで、ノズル間スペース縮小機能を選択し、ステップS403において、ノズルI用の偏向電圧と帯電電圧を大きくしてノズルIによる印字結果125をノズルIIによる印字結果126に近づける。
【0020】
以上のように、本実施例によれば、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果が同一方向に傾くプリントヘッド構造であり、印字結果の傾きを修正する方向にプリントヘッドを回転させることができ、ノズル間スペース縮小機能を設けることで、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字間隔を縮小した高速印字が可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【実施例2】
【0021】
本実施例は2つのノズルで1つの印字内容を印字する場合について説明する。
【0022】
図5は、本実施例における2ノズルで合成した印字の文字大きさの調整機能を説明する図である。図5に示すように、ノズルI(114)による印字結果125とノズルII(115)による印字結果126とで一つの文字を印字する場合、文字高さ変更前の状態が501であり、通常の制御で2つのノズルで1つの印字内容を印字する場合、文字の大きさを小さく調整しようとすると、502に示すように印字結果125と印字結果126との間が空いてしまう。そこで、実施例1で述べたノズル間スペース縮小機能の制御を行えば、印字結果125と印字結果126の間のスペースが固定された状態で、印字結果125と印字結果126のそれぞれの大きさを調整可能であり、503に示すように、印字結果501の帯電粒子の偏向方向の大きさを縮小した印字が実現できる。
【実施例3】
【0023】
本実施例は、実施例1において、2つのノズルでの印字内容として、1列あたりの縦ドット数が異なる場合について説明する。
【0024】
図6は、本実施例における2つのノズルでの1列あたりの縦ドット数が異なる場合の説明図である。図6において、ノズルI(114)による印字結果125が1段の印字内容で、ノズルII(115)による印字結果126が2段の印字内容であった場合、ノズルI(114)が印字終了したときに、ノズルII(115)は2倍の印字内容があるため、半分しか印字できていない。つまり、逆に考えると、ノズルI(114)はノズルII(115)の印字が終了するまでに、2倍の余裕があると考えることができる。すると、ノズルI(114)では帯電粒子の使用率をノズルII(115)の1/2にすることができ、帯電粒子による印字を間引いて使用できるので飛行中の粒子間のクーロン反発力による影響を緩和でき、ノズルI(114)の印字結果125をより高品質にすることが実現できる。すなわち、2つのノズルで印字する1列あたりのドット数が異なる場合、1列あたりのドット数が少ない方のノズルは、1列あたりのドット数が多い方のノズルとの1列あたりのドット数の差分だけ、1列中の印字に使用するドット同士の飛行中の粒子間距離を拡大する制御機能によって、印字品質を向上させることができる。
【実施例4】
【0025】
本実施例は、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字結果の間隔を拡大する機能について説明する。
【0026】
図7は、本実施例におけるノズル間拡大機能を示す図である。ノズル間拡大機能は、2つのノズルで離して印字したい場合に適用され、例えば、被印字物に隙間がありその隙間を避けて2つのノズルで印字したい場合や、別体の被印字物2つに2つのノズルでそれぞれ印字する場合などに適用可能である。なお、本実施例におけるインクジェット記録装置の構成図および2つのノズルの配置は実施例1と同様であるのでその説明は省略する。
【0027】
本実施例では、パネル105において印字内容データを入力する際に設定する項目に、ノズルI(114)による印字結果125とノズルII(115)による印字結果126との間のスペースを拡大する機能である、ノズル間スペース拡大機能を選択する項目を設ける。例えば、パネル105に「ノズル間スペース拡大」ボタンを表示し、それを選択することでその機能を選択するようにする。ノズル間スペース拡大機能を選択すると、ROM103はビデオRAM2(109)に記憶するためのビデオデータの帯電電圧値を大きくするように変更し、また、偏向電極II(119)に印加する偏向電圧を大きくするように変更する。これにより、図7に示すように、701に示す通常印字の場合の、印字結果125、126がそれぞれ小さくなった場合の印字結果125と印字結果126との間のスペースを、702に示すノズル間スペース拡大機能を使用することで、印字結果126の印字位置を上方に移動させ印字結果125とのスペースを拡大できる。
【0028】
本実施例におけるノズル間スペース拡大機能の設定フローを図8に示す。図8において、ステップS801において、ノズルIとノズルIIについて、それぞれの印字内容を設定する。そして、ステップS802において、パネルに表示された「ノズル間スペース拡大」ボタンを押すことで、ノズル間スペース拡大機能を選択し、ステップS803において、ノズルII用の偏向電圧と帯電電圧を大きくしてノズルIIによる印字結果126をノズルIによる印字結果125から遠ざける。
【0029】
以上のように、本実施例によれば、ノズル間スペース拡大機能を設けることで、2つのノズルで印字されたそれぞれの印字間隔を拡大した高速印字が可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【実施例5】
【0030】
本実施例は、実施例4において、2つのノズルでの印字内容として、1列あたりの縦ドット数が異なる場合について説明する。
【0031】
図9は、本実施例における2つのノズルでの1列あたりの縦ドット数が異なる場合の説明図である。図9において、ノズルI(114)による印字結果125が2段の印字内容で、ノズルII(115)による印字結果126が1段の印字内容であった場合、ノズルII(115)が印字終了したときに、ノズルI(114)は2倍の印字内容があるため、半分しか印字できていない。つまり、逆に考えると、ノズルII(115)はノズルI(114)の印字が終了するまでに、2倍の余裕があると考えることができる。すると、ノズルII(115)では帯電粒子の使用率をノズルI(114)の1/2にすることができ、帯電粒子による印字を間引いて使用できるので粒子間のクーロン反発力による影響を緩和でき、ノズルII(115)の印字結果126をより高品質にすることが実現できる。
【0032】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。例えば、実施例1と実施例4の機能を有し、ノズル間スペース縮小機能とノズル間スペース拡大機能の両方を有したインクジェット記録装置としてもよい。その場合の処理フローとしては、図4図8をミックスし、「ノズル間スペース縮小」ボタンと「ノズル間スペース拡大」ボタンとをパネルに表示し、いずれのボタンが押されたかで、それぞれの機能を実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
105:パネル、106:文字信号発生回路1、107:文字信号発生回路2、108:ビデオRAM1、109:ビデオRAM2、114:ノズルI、115:ノズルII、116:帯電電極I、117:帯電電極II、118:偏向電極I、119:偏向電極II、120:ガターI、121:ガターII、124:被印字物、125:ノズルI(114)によって被印字物に印字された印字結果、126:ノズルII(115)によって被印字物に印字された印字結果
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9