(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端の磁極がギャップを挟んでX軸方向に沿って離間し、Z軸方向に平行な中心軸を中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第1磁極端部を有し、前記ギャップと共に閉磁路を形成可能な第1ヨークと、
前記第1ヨークに巻き付けられる第1コイルと、
前記中心軸と同軸の棒状部位を有し、前記棒状部位の先端の磁極がZ軸方向の第1側を向いており、前記第1ヨークに磁気的に接続される第2ヨークと、
を備え、
各々の前記第1磁極端部の先端部の前記第1側の面は、Y軸方向の両側に配置される一対のテーパ面を有し、
前記一対のテーパ面はそれぞれ、Y軸方向における中心から外側端に向かってZ軸方向における前記第1側から前記第1側とは反対側である第2側へ向けて傾斜している、電磁石。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について、
図1〜4を用いて説明する。
【0012】
<磁場印加システム>
図1は、磁場印加システムを構成する電磁石1を示す模式的な平面図である。磁場印加システムは、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を印加対象物に印加可能に構成されている。前記任意方向には、Y軸方向は含まれない。磁場印加システムは、
図1に示すように、電磁石1と、電磁石1に電流を供給する電流供給部2と、を有する。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する方向であり、発明の説明を容易にするために用いる。電磁石1の向きは使用方法に応じて異なるため、本開示の図面で示す方向に限定されない。
【0013】
<電磁石>
図1及び
図2に示すように、電磁石1は、X軸方向成分の磁場を生成するためのX軸用電磁石3と、Z軸方向成分の磁場を生成するためのZ軸用電磁石4と、を有する。
【0014】
X軸用電磁石3は、第1ヨーク30と、第1ヨーク30に巻き付けられる第1コイル31及び第3コイル32と、を有する。
【0015】
第1ヨーク30は、軟質強磁性体で形成されており、先端の磁極33aがギャップGpを挟んでX軸方向に沿って離間する一対の第1磁極端部33を有し、ギャップGpと共に閉磁路mp_Xを形成可能である。
図1に示すように、一対の第1磁極端部33は、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている。これにより、中心軸CL上にXY平面に平行な磁束を発生させることができる。本実施形態では、第1ヨーク30は側面視でC字状であるが、これに限定されない。第1磁極端部33は、棒状部位34の先端に設けられている。棒状部位34は、直線状に延びる形状であるが、長尺状であれば、これに限定されない。例えば、屈曲しつつ延びる形状や、曲線状に延びている形状でもよい。本実施形態において、第1ヨーク30は、
図2に示すように、第1磁極端部33を含む棒状部位34と、棒状部位34の基端部からZ軸方向の第2側(−Z)に延びる第1延在部35と、第1延在部35のZ軸方向の第2側(−Z)の端部同士を接続する第2延在部36と、を有する。この構造により、第1コイル31及び第3コイル32の少なくとも1つに電流を流せば、第1ヨーク30は、ギャップGpと共に閉磁路mp_Xを形成する。また、この構造により、第1磁極端部33を含む棒状部位よりもZ軸方向の第1側(+Z)にヨーク及びコイルが配置されていない領域Ar2が形成されるので、この領域を磁場印加領域Ar2として利用可能となる。
【0016】
第1コイル31及び第3コイル32の少なくとも1つに電流を流すことで、中心軸CL上の所定領域PにX軸方向成分のみを有する磁束が生じる。
図2に示すように、第1コイル31及び第3コイル32に電流(Xi+)を流すことで、中心軸CL上に第1方向(+X)に向かう磁束mf1が発生する。逆に、第1コイル31及び第3コイル32に前記電流(Xi+)とは逆の電流を流せば、中心軸CL上に第1方向(+X)とは逆の第2方向(−X)に向かう磁束が発生する。
【0017】
図2に示すように、一対の第1磁極端部33は、基端側から先端に向けて第2側(−Z)から第1側(+Z)へ延びる棒状に形成されている。第1磁極端部33の磁極33a間に磁場が発生すれば、棒状の第1磁極端部33の先端が第2側(−Z)へ向かう方向に磁力が発現する場合があり、第1磁極端部33が撓み変形するおそれがある。
そこで、一対の第1磁極端部33を第2側(−Z)から支持する非磁性体の支持部5が設けられている。支持部5は、第2延在部36又は電磁石1を収容する筐体(非図示)を足場としてもよい。
【0018】
Z軸用電磁石4は、第2ヨーク40と、第2ヨーク40に巻き付けられる第2コイル41と、を有する。
【0019】
第2ヨーク40は、軟質強磁性体で形成され、第1ヨーク30に磁気的に接続されている。第2ヨーク40は、中心軸CLと同軸の棒状部位43を有する。棒状部位43は、先端の磁極43aがZ軸方向の第1側(Z+)を向いている。第2コイル41に電流を流せば、中心軸CL上の所定領域PにZ軸方向成分のみを有する磁束が生じる。第2コイル41に流す電流の向きを変えることで、中心軸CL上に発生する磁束の向きを変更可能である。
【0020】
第1コイル31及び第3コイル32の少なくとも1つと、第2コイル41とに同時に電流を流すと、X軸成分とZ軸成分が合成された方向の磁場を発生させることが可能である。すなわち、第1コイル31及び第3コイル32の少なくとも1つと、第2コイル41とに流す電流の向き及び大きさを変化させることで、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を中心軸CL上に印加可能である。
【0021】
<Y軸方向成分の低減構成>
図5に例示したように、中心軸CLから離れた領域Ar100にY軸方向成分を有する漏れ磁場が発生するが、Y軸方向成分を有する漏れ磁場(磁束)を低減させるために、本実施形態では次の構造を採用している。
【0022】
すなわち、
図1〜3に示すように、各々の第1磁極端部33の第1側(+X)の面37は、Y軸方向の両側に配置される一対のテーパ面37aを有する。本実施形態では、面37は、一対のテーパ面37aの間に配置されるXY平面に平行な平坦面37bを更に有する。
図3に示すように、一対のテーパ面37aはそれぞれ、Y軸方向における中心C1から外側端33bに向かってZ軸方向における第1側(+Z)から第2側(−Z)へ向けて傾斜している。すなわち、テーパ面37aは、中心C1且つ第1側(+Z)から外側端33b且つ第2側(−Z)へ向かう。本実施形態では、一対のテーパ面37aは、平坦面であるが、これに限定されない。例えば、テーパ面37aは、湾曲面でもよく、平坦面と湾曲面とを組み合わせた面であってもよい。
図3において二点鎖線で模式的に示すように、テーパ面37aが、Y軸方向成分の漏れ磁場(磁束)をZ軸方向成分に変換する効果を奏するので、Y軸方向成分の漏れ磁場(磁束)を低減することが可能となる。特に、
図1に模式的に示すように、X軸方向成分の磁場の均一範囲Ar3の外領域のY軸方向成分の漏れ磁場を効果的に低減可能となる。
図1では、磁極33a,33a間であって均一範囲Ar3よりもY軸方向外側の領域のY軸方向成分の漏れ磁場を効果的に低減可能となる。なお、
図1に示した均一範囲Ar3は発明の理解を容易にするために例示したに過ぎず、図示の範囲に限定されない。均一範囲Ar3は、X軸の磁極33aの間の距離や、磁極形状等の種々の要因により図示よりも広くも狭くもなり、
図1はあくまでも例示にすぎない。
【0023】
図1及び
図3に示す実施形態において、各々の第1磁極端部33は、基端側のY軸方向の幅W1よりも先端のY軸方向の幅W2が広いT字状に形成されている。この構成により、先端の幅W1が広いT字状にすることで、中心軸CL付近のX軸方向成分の磁場強度を確保できる。さらに、中心軸CL付近におけるX軸方向成分の磁場の均一性を向上させることが可能となる。
【0024】
<逆電流モード>
図4に示すように、電流供給部2が逆電流モードによる電流供給を実行すれば、X軸用電磁石3だけで中心軸CL上にZ軸方向に沿った磁束mf2を発生させることができる。逆電流モードは、第1方向(+X)に向かう磁束mf1を中心軸CL上に発生させる電流Xi+を第1コイル31に流し、第1方向(+X)とは逆の第2方向(−X)に向かう磁束を中心軸CL上に発生させる電流Xi−を第3コイル32に流すモードである。このように電流を流せば、Z軸方向に沿った磁束mf2が発生する。磁束mf2は、中心軸CL上の所定領域Pにおいて、Z軸方向成分のみを有する。
【0025】
<変形例>
(1−1)
図1に示す実施形態では、Y軸方向において第1磁極端部33の基端側の幅W1よりも先端の幅W2が広いT字状であるが、対象となる磁場印加領域が小さい場合には、これに限定されない。例えば、W1≧W2としてもよい。
【0026】
(1−2)
図1〜3に示す実施形態では、第2コイル41を設けているが、逆電流モードによってZ軸成分の磁場を発生させるのであれば、第2コイル41を省略することが可能である。
【0027】
(1−3)
図1〜4に示す実施形態では、第1コイル31及び第3コイル32の両方を設けている。しかし、第1コイル31及び第3コイル32のいずれか一方は、逆電流モードを実行しない場合には省略可能である。
【0028】
(1−4)
図2に示す実施形態では、第1磁極端部33を支持する支持部5が設けられているが、支持部5は省略可能である。例えば、第1磁極端部33がX軸方向に平行に延びている場合が挙げられる。
【0029】
(1−5)
図1〜4に示す実施形態では、第2ヨーク40の先端は、第1磁極端部33の第1側(+Z)の面37bよりも、第2側(−Z)に位置している。Z軸方向の高さで表現すれば、第1ヨーク>第2ヨークである。このようにすれば、第1ヨーク≦第2ヨークの場合に比べて、X軸方向磁束成分のZ軸方向磁束成分に対する割合又は比率を高くすることが可能になる。このことは、第1実施形態だけでなく、第2実施形態および第3実施形態でも同様のことがいえる。なお、第1磁極端部33の第1側(+Z)の面37bと、第2ヨーク40の先端とを面一にしてもよい。Z軸方向の高さで表現すれば、第1ヨーク=第2ヨークである。このようにすれば、第1ヨーク>第2ヨークの場合に比べて、Z軸方向磁束成分のX軸方向磁束成分に対する割合又は比率を高くすることが可能になる。このことは、第1実施形態だけでなく、第2実施形態および第3実施形態でも同様のことがいえる。
【0030】
(1−6)
図1〜4に示す実施形態では、各々の第1磁極端部33の第1側(+X)の面37は、XY平面に平行な平坦面37bを有するが、これを省略可能である。すなわち、一対のテーパ面37aが交差してXY平面に平行な平坦面37bが無くてもよい。例えば、一対のテーパ面37aが平坦面である場合には、側面視で三角形状となる。なお、
図1〜4に示すようにXY平面に平行な平坦面37bを設ければ、平坦面37bがない場合に比べて、X軸方向成分の磁場の均一範囲が広くなり、また、他の機器との干渉を避けることが可能となる。
【0031】
以上のように、第1実施形態の電磁石1は、先端の磁極33aがギャップGpを挟んでX軸方向に沿って離間し、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第1磁極端部33を有し、ギャップGpと共に閉磁路mp_Xを形成可能な第1ヨーク30と、第1ヨーク30に巻き付けられる第1コイル31と、中心軸CLと同軸の棒状部位43を有し、棒状部位43の先端の磁極43aがZ軸方向の第1側(+Z)を向いており、第1ヨーク30に磁気的に接続される第2ヨーク40と、を備え、各々の第1磁極端部33の先端部の第1側(+Z)の面37は、Y軸方向の両側に配置される一対のテーパ面37aを有し、一対のテーパ面37aはそれぞれ、Y軸方向における中心C1から外側端33bに向かってZ軸方向における第1側(+Z)から第1側(+Z)とは反対側である第2側(−Z)へ向けて傾斜している。
この構成によれば、一対のテーパ面が、第1コイル31への通電によって第1磁極端部33対の磁極間に発生するY軸方向成分の漏れ磁場をZ軸方向成分の磁場に変換するので、第1磁極端部33の磁極対から発生するY軸方向成分を有する漏れ磁場を低減可能となる。
【0032】
図1〜4に示す第1実施形態のように、各々の第1磁極端部33は、基端側のY軸方向の幅W1よりも先端のY軸方向の幅W2が広いT字状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、先端の幅W1が広いT字状にすることで、中心軸CL付近のX軸方向成分の磁場強度を確保できる。さらに、中心軸CL付近におけるX軸方向成分の磁場の均一性を向上させることが可能となる。
【0033】
図1〜4に示す第1実施形態のように、第2ヨーク40に巻き付けられる第2コイル41を更に備え、第1コイル31及び第2コイル41に流す電流を変化させることで、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を中心軸CL上に印加可能に構成されていることが好ましい。
この構成によれば、第2コイル41に通電することによってZ軸方向成分の磁場の向き及び強度を制御可能となる。また、X軸方向成分とZ軸方向成分とを組み合わせた任意方向の磁場を印加可能になる。
【0034】
図1〜4に示す第1実施形態のように、第1ヨーク30に巻き付けられる、第1コイル31とは異なる第3コイル32を更に備え、第1方向(+X)に向かう磁束mf1を中心軸CL上に発生させる電流(Xi+)を第1コイル31に流し、且つ、第1方向(+X)とは逆の第2方向(−X)に向かう磁束を中心軸CL上に発生させる電流(Xi−)を第3コイル32に流すことにより、中心軸CL上にZ軸方向成分を有する磁束mf2を発現可能であることが好ましい。
この構成によれば、逆電流モードによって第1ヨーク30によってZ軸方向成分の磁場を発生させることが可能となる。
【0035】
図1〜4に示す第1実施形態のように、一対の第1磁極端部33は、基端側から先端に向けて第2側(−Z)から第1側(+Z)へ延びる棒状に形成されており、電磁石1は、一対の第1磁極端部33を第2側(−Z)から支持する非磁性体の支持部5を更に備えることが好ましい。
第1磁極端部33が磁力によって第2側(−Z)に撓むので、支持部5によって第1磁極端部33の撓み変形を防止可能となる。
【0036】
[第2実施形態]
以下、本開示の第2実施形態について、
図6〜8を用いて説明する。第2実施形態は、第1実施形態と異なり、Y軸方向成分を有する漏れ磁場を低減させる課題に対応する実施形態ではない。第2実施形態の実施形態は、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を印加可能に構成された電磁石において、Z軸方向の磁場を強める課題に対応する。
【0037】
<磁場印加システム>
図6は、磁場印加システムを構成する電磁石101を示す模式的な平面図である。磁場印加システムは、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を前記中心軸上に発生させ、印加対象物に印加可能に構成されている。前記任意方向には、Y軸方向は含まれない。磁場印加システムは、
図6に示すように、電磁石101と、電磁石101に電流を供給する電流供給部102と、を有する。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する方向であり、発明の説明を容易にするために用いる。電磁石101の向きは使用方法に応じて異なるため、本開示の図面で示す方向に限定されない。
【0038】
<電磁石>
図6及び
図7に示すように、電磁石101は、X軸方向成分の磁場を生成するためのX軸用電磁石103と、Z軸方向成分の磁場を生成するためのZ軸用電磁石104と、を有する。
【0039】
X軸用電磁石103は、第1ヨーク130と、第1ヨーク130に巻き付けられる第1コイル131及び第3コイル132と、を有する。
【0040】
第1ヨーク130は、軟質強磁性体で形成されており、先端の磁極133aがギャップGpを挟んでX軸方向に沿って離間する一対の第1磁極端部133を有し、ギャップGpと共に閉磁路mp_Xを形成可能である。
図6に示すように、一対の第1磁極端部133は、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている。これにより、中心軸CL上にXY平面に平行な磁束を発生させることができる。本実施形態では、第1ヨーク130は側面視でC字状であるが、これに限定されない。第1磁極端部133は、棒状部位134の先端に設けられている。棒状部位134は、直線状に延びる形状であるが、長尺状であれば、これに限定されない。例えば、屈曲しつつ延びる形状や、曲線状に延びている形状でもよい。本実施形態において、第1ヨーク130は、
図7に示すように、第1磁極端部133を含む棒状部位134と、棒状部位134の基端部からZ軸方向の第2側(−Z)に延びる第1延在部135と、第1延在部135のZ軸方向の第2側(−Z)の端部同士を接続する第2延在部136と、を有する。この構造により、第1コイル131及び第3コイル132の少なくとも1つに電流を流せば、第1ヨーク130は、ギャップGpと共に閉磁路mp_Xを形成する。また、この構造により、第1磁極端部133を含む棒状部位よりもZ軸方向の第1側(+Z)にヨーク及びコイルが配置されていない領域Ar2が形成されるので、この領域を磁場印加領域Ar2として利用可能となる。
【0041】
図6に示すように、第1ヨーク130の第1磁極端部133対はそれぞれ、基端側から先端に向かって先細りとなる形状に形成されている。X軸方向成分の磁力を強くするためである。
【0042】
第1コイル131及び第3コイル132の少なくとも1つに電流を流すことで、中心軸CL上の所定領域PにX軸方向成分のみを有する磁束が生じる。
図7に示すように、第1コイル131及び第3コイル132に電流(Xi+)を流すことで、中心軸CL上に第1方向(+X)に向かう磁束mf1が発生する。逆に、第1コイル131及び第3コイル132に前記電流(Xi+)とは逆の電流を流せば、中心軸CL上に第1方向(+X)とは逆の第2方向(−X)に向かう磁束が発生する。
【0043】
Z軸用電磁石104は、第2ヨーク140と、第2ヨーク140に巻き付けられる第2コイル141と、を有する。
【0044】
第2ヨーク140は、軟質強磁性体で形成され、第1ヨーク130に磁気的に接続されている。第2ヨーク140は、中心軸CLと同軸の棒状部位143を有する。棒状部位143は、先端の磁極143aがZ軸方向の第1側(Z+)を向いている。第2コイル141に電流を流せば、中心軸CL上の所定領域PにZ軸方向成分のみを有する磁束が生じる。第2コイル141に流す電流の向きを変えることで、中心軸CL上に発生する磁束の向きを変更可能である。
【0045】
第1コイル131と第2コイル141に同時に電流を流すと、X軸成分とZ軸成分が合成された方向の磁場を発生させることが可能である。すなわち、第1コイル131及び第2コイル141に流す電流の向き及び大きさを変化させることで、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を中心軸CL上に印加可能である。
【0046】
図6に示すように、中心軸CLの径方向における第1磁極端部133の磁極間距離をL1と示す。中心軸CLを中心として半径R1がL1よりも大きい円領域である第1領域Ar1には、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークの磁極対が配置されていない。更に、半径R1がL1×1.5よりも大きいことが好ましい。このように、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークの磁極対が第1領域Ar1に配置されていないので、XZ平面上の任意方向の磁場を適切に印加可能となる。
【0047】
<Z軸方向磁場の強化構成>
第2実施形態の電磁石101は、Z軸方向の磁場を強くするために、次の構成を採用している。
【0048】
すなわち、
図6〜8に示すように、第2ヨーク140に磁気的に接続される第3ヨーク160が設けられている。第3ヨーク160は、中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第3磁極端部163を有する。第3磁極端部163の先端の磁極163aそれぞれが中心軸CLを通るY軸方向に沿って離間している。
【0049】
具体的には、第3ヨーク160の基端部が第1ヨーク130の第2延在部136に接続され、これにより、第3ヨーク160は、第1ヨーク130の第2延在部136を介して第2ヨーク140に磁気的に接続されている。第3ヨーク160は、基端部からY軸方向の外側に延びて、その後、Z軸方向の第1側(+Z)へ延び、その後、Y軸方向の内側に延びて先端部が磁極を形成している。磁極163aは、中心軸CLを中心とした半径R2に沿った円弧形状端である。R2>R1である。
【0050】
第3ヨーク160にはコイルが巻かれていない。第3ヨーク160は、第2ヨーク140から出たZ軸方向の磁束を第2ヨーク140に戻すためのリターンヨークとしての役割を果たすために設けられ、第3ヨーク160にコイルを巻くことが不要である。
図6に示すように、第3ヨーク160の第3磁極端部163の先端の磁極163aは第1領域Ar1外に配置されている。このような条件を満たすことで、第3ヨーク160がリターンヨークとして機能し、Z軸方向成分の磁場を強化することが可能になる。
【0051】
第3ヨーク160が、X軸方向の磁場とZ軸方向の磁場の発生を阻害しないようにするためには、
図6及び
図8に示すように、第3磁極端部163の先端の磁極163aから第1ヨーク130までの最短距離Mi1はL1よりも長く、且つ、第3磁極端部163の先端の磁極163aから第2ヨーク140までの最短距離Mi2はL1よりも長いことが好ましい。
【0052】
図8に示すように、第2ヨーク140の棒状部位143の先端143bは、第3磁極端部163の第1側(+Z)の面163bよりも第1側(+Z)に突出している。この構成によれば、第2ヨーク140の先端143の中心軸CLの径方向外側の領域に第3ヨーク160が配置されないので、他の機器との干渉を避けることができ、電磁石の利便性を向上させることが可能となる。
【0053】
第2実施形態において、第1実施形態で説明した逆電流モードが適用可能である。
【0054】
<変形例>
(1−1)
図6〜8に示す実施形態では、第2ヨーク140の先端143bは、第3磁極端部163の第1側(+Z)の面163bよりも、第1側(+Z)に突出しているが、これを変更可能である。例えば、下記構成A及び構成Bが考えられる。
構成Aは、第2ヨーク140の先端143bと、第3磁極端部163の第1側(+Z)の面163bとを面一にした構成である。このようにすれば、Z軸方向磁束成分のX軸方向磁束成分に対する割合又は比率を、下記構成Bに比べて高くすることが可能となる。
構成Bは、第3磁極端部163の第1側(+Z)の面163bを、第2ヨーク140の先端143bよりも、第1側(+Z)に突出させた構成である。このようにすれば、X軸方向磁束成分のZ軸方向磁束成分に対する割合又は比率を、上記構成Aに比べて高くすることが可能となる。
【0055】
(1−2)
図6〜8に示す実施形態では、第2コイル141を設けているが、逆電流モードによってZ軸成分の磁場を発生させるのであれば、第2コイル141を省略することが可能である。
【0056】
(1−3)
図6〜8に示す実施形態では、第1コイル131及び第3コイル132の両方を設けている。しかし、第1コイル131及び第3コイル132のいずれか一方は、逆電流モードを実行しない場合には省略可能である。
【0057】
[第3実施形態]
以下、本開示の第3実施形態について、
図9を用いて説明する。第3実施形態は、第2実施形態から第3ヨーク160を除去した構成である。第2実施形態と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、電磁石201は、中心軸CLを中心として半径R1がL1よりも大きい円領域である第1領域Ar1には、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークの磁極対が配置されていない。更に、Y軸方向及びZ軸方向に平行であり且つ中心軸CLを通るYZ面(
図9にてPyzと表記)に重なる位置に、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークが配置されていない。更に、半径R1はL1×1.5よりも大きいことが好ましい。
【0058】
以上のように、第2及び第3実施形態の電磁石101,201は、先端の磁極133aがギャップGpを挟んでX軸方向に沿って離間し、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第1磁極端部133を有し、ギャップGpと共に閉磁路mp_Xを形成可能な第1ヨーク130と、第1ヨーク130に巻き付けられる第1コイル131と、第1ヨーク130に磁気的に接続され、中心軸CLと同軸の棒状部位を有する第2ヨーク140と、第2ヨーク140に巻き付けられる第2コイル141と、を備え、中心軸CLの径方向における第1磁極端部133の磁極間距離をL1とし、中心軸CLを中心として半径R1がL1よりも大きい円領域である第1領域Ar1には、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークの磁極対が配置されていない。
このように、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークの磁極対が第1領域Ar1に配置されていないので、XZ平面上の任意方向の磁場を適切に印加可能となる。
【0059】
第2実施形態のように、第2ヨーク140に磁気的に接続される第3ヨーク160を更に備え、第3ヨーク160は、先端の磁極163aが中心軸CLを通るY軸方向に沿って離間し、中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第3磁極端部163を有し、第3ヨーク160にはコイルが巻かれておらず、第3磁極端部163の先端の磁極163aは第1領域Ar1外に配置されていることが好ましい。
このように、リターンヨークとしての第3ヨーク160を設け、上記条件を充足することで、第3ヨーク160によって第2ヨーク140から発現するZ軸方向成分の磁場を強化することが可能となる。
【0060】
第2実施形態のように、第2ヨーク140の棒状部位143の先端の磁極143aがZ軸方向の第1側(+Z)を向いており、第2ヨーク140の棒状部位143の先端143bは、第3磁極端部163の第1側(+Z)の面163bよりも第1側(+Z)に突出していることが好ましい。
この構成によれば、第2ヨーク140の先端143の中心軸CLの径方向外側の領域に第3ヨーク160が配置されないので、他の機器との干渉を避けることができ、電磁石の利便性を向上させることが可能となる。
【0061】
第3実施形態のように、Y軸方向及びZ軸方向に平行であり且つ中心軸CLを通るYZ面(Pyz)に重なる位置に、第1ヨーク130及び第2ヨーク140以外のヨークが配置されていないことが好ましい。
この構成によれば、第1ヨーク130及び第2ヨーク140のY軸方向の両側にヨークが配置されていない領域を得ることができるので、他の機器を配置するといった利便性を向上させた電磁石201を提供可能となる。
【0062】
第2及び第3実施形態のように、第1ヨーク130に巻き付けられる、第1コイル131とは異なる第3コイル132を更に備え、第1方向(+X)に向かう磁束mf1を中心軸CL上に発生させる電流(Xi+)を第1コイル131に流し、且つ、第1方向(+X)とは逆の第2方向(−X)に向かう磁束を中心軸CL上に発生させる電流(Xi−)を第3コイル132に流すことにより、中心軸CL上にZ軸方向成分を有する磁束mf2を発現可能であることが好ましい。
この構成によれば、逆電流モードによって第1ヨーク130によってZ軸方向成分の磁場を発生させることが可能となる。
【0063】
[第4実施形態]
以下、本開示の第4実施形態の第1例、第2例及び第3例について、
図10〜12を用いて説明する。第4実施形態の課題は、第1〜3実施形態の課題と異なる。第4実施形態は、Z軸方向磁束成分の他方向磁束成分に対する割合又は比率をコントロールする課題に対応する。
【0064】
図10(a)に示す第4実施形態の第1例は、
図1〜4に示す第1実施形態の第2ヨーク40の形状を変更したもので、それ以外の変更はない。
図10(a)に示すように、第2ヨーク40’の棒状部位43’の先端がZ軸方向の第1側(+Z)を向いている。第2ヨーク40’の棒状部位43’の先端43a’は、第1磁極端部33の第1側(+Z)の面37bよりも第1側(+Z)へ突出している。Z軸方向の高さで表現すれば、第1ヨーク<第2ヨークである。
【0065】
図10(b)に示す第4実施形態の第2例は、
図6〜9に示す第2、第3実施形態の第2ヨーク140の形状を変更したもので、それ以外の変更はない。
図10(b)に示すように、第2ヨーク140’の棒状部位143’の先端がZ軸方向の第1側(+Z)を向いている。第2ヨーク140’の棒状部位143’の先端143a’は、第1磁極端部133の第1側(+Z)の面137bよりも第1側(+Z)へ突出している。Z軸方向の高さで表現すれば、第1ヨーク<第2ヨークである。
【0066】
図10(a)及び
図10(b)に示す構成によれば、X軸方向及びZ軸方向に平行なXZ面上における任意方向の磁場を印加可能に構成された電磁石において、第1ヨーク≧第2ヨークの場合に比べて、Z軸方向磁束成分のX軸方向磁束成分に対する割合又は比率を高くすることが可能になる。
【0067】
図11及び
図12に示す第4実施形態の第3例は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも1つの方向成分を有する任意方向の磁場を印加可能に構成された電磁石301を示す。電磁石301は、第1ヨーク330と、第2ヨーク340と、第3ヨーク350と、第1ヨーク330に巻き付けられるコイル331と、第3ヨーク350に巻き付けられるコイル351と、を有する。電磁石301は、第2ヨーク340に巻き付けられるコイルを有していてもよい。第1ヨーク330は、先端の磁極333aがギャップGpを挟んでX軸方向に沿って離間し、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第1磁極端部333を有し、ギャップGpと共に閉磁路を形成可能である。第2ヨーク340は、中心軸CLと同軸の棒状部位343を有し、棒状部位343の先端がZ軸方向の第1側(+Z)を向いており、第1ヨーク330に磁気的に接続される。第3ヨーク350は、先端の磁極353aがギャップGpを挟んでY軸方向に沿って離間し、中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第3磁極端部353を有し、ギャップGpと共に閉磁路を形成可能である。第2ヨーク340の棒状部位343の先端343aは、第1ヨーク30(130;330)の第1磁極端部33(133;333)の第1側(+Z)の面37b(137b;337b)よりも第1側(+Z)へ突出している。
【0068】
図11及び
図12の構成によれば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくとも1つの方向成分を有する任意方向の磁場を印加可能に構成された電磁石において、第1ヨーク≧第2ヨークの場合に比べて、Z軸方向磁束成分のX軸方向磁束成分及びY軸方向磁束成分に対する割合又は比率を高くすることが可能になる。
【0069】
以上のように、第4実施形態の電磁石は、先端の磁極がギャップGpを挟んでX軸方向に沿って離間し、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる位置に配置されている一対の第1磁極端部33(133;333)を有し、ギャップGpと共に閉磁路を形成可能な第1ヨーク30(130;330)と、第1ヨーク30(130;330)に巻き付けられる第1コイルと、中心軸CLと同軸の棒状部位43’(143’;343)を有し、棒状部位43’(143’;343)の先端がZ軸方向の第1側(+Z)を向いており、第1ヨーク30(130;330)に磁気的に接続される第2ヨーク40’(140’;340)と、を備え、第2ヨーク40’(140’;340)の棒状部位43’(143’;343)の先端43a’(143a’;343a)は、第1ヨーク30(130;330)の第1磁極端部33(133;333)の第1側(+Z)の面37b(137b;337b)よりも第1側(+Z)へ突出していることが好ましい。
【0070】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【解決手段】電磁石1は、先端の磁極33aがX軸方向に沿って離間し、Z軸方向に平行な中心軸CLを中心として互いに軸対称となる一対の第1磁極端部33を有する第1ヨーク30と、第1ヨーク30に巻き付けられる第1コイル31と、中心軸CLと同軸の棒状部位43を有し、棒状部位43の先端の磁極43aがZ軸方向の第1側(+Z)を向く第2ヨーク40と、を有する。第1磁極端部33の先端部の第1側(+Z)の面37は、Y軸方向の両側に配置される一対のテーパ面37aを有する。一対のテーパ面37aはそれぞれ、Y軸方向における中心C1から外側端33bに向かってZ軸方向における第1側(+Z)から第1側(+Z)とは反対側である第2側(−Z)へ向けて傾斜している。