(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物に、複数の部屋に隣接するリターン区画を形成し、前記部屋には、DCモーターを搭載した送風部から送られる空気を吹き出す吸気部を設け、前記部屋と前記リターン区画との間には、前記部屋から前記リターン区画に向けた排出気流を形成する排気部を設け、前記リターン区画に、複数の前記送風部と少なくとも1台の空調部とを設置し、
前記送風部と前記吸気部をダクトで接続し、
前記リターン区画にて、前記空調部からの吹出気流を拡散させながら前記送風部の吸込気流に合流させて混合し、
各前記部屋に吹き出す吹出気流温度と室温との温度差を、前記空調部の吹出気流温度と各前記部屋の前記室温との温度差より少なくした空調システムであって、
前記部屋には少なくとも1つ以上の前記送風部で送風し、
それぞれの前記送風部に、前記送風部の吸込み温度を検出する温度センサーユニットと、温度設定ユニットと、前記DCモーターの運転を制御する制御装置を設け、
前記温度センサーユニットにより検出した前記吸込み温度と前記温度設定ユニットで設定した設定温度とにより、前記制御装置で、それぞれの前記送風部の送風量を決定する
ことを特徴とする空調システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における空調システムの構成を示す建物の1階平面図、
図2は同建物の2階平面函である。
【0010】
図1に示すように、高気密高断熱住宅である建物1の1階には玄関2、リビング3、キッチン4が配置され、トイレ5、浴室6、洗面脱衣室7等が設けられている。リビング3には、2階に上がる階段8が設けられている。そして、建物1の1階天井には、1階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)9a、9b、9c、9dが設けられている。吹出グリル9a、9b、9c、9dには、1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dの一端がそれぞれ接続されている。1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dの他端は2階に配設されている。なお、吹出グリル9a、9b、9c、9dは、天井に代えて床に設けてもよい。吹出グリル9a、9b、9c、9dを床に設ける場合には、1階用送風ダクト10a、10b、10c、10dは床下に配設する。
【0011】
図2に示すように、建物1の2階には、1階からの階段8と廊下11とで構成される階段室12が配置されている。建物1の2階の部屋A13、部屋B14、及び部屋C15は、階段室12に隣接して配置される。部屋A13には納戸A16が設けられている。部屋B14には納戸B17が設けられている。そして、建物1の2階天井62には、2階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)18a、18b、18c、18dが設けられている。吹出グリル(吸気部)18a、18bは、2階の部屋A13の天井62に設けられている。吹出グリル(吸気部)18cは、2階の部屋B14の天井62に設けられている。吹出グリル(吸気部)18dは2階の部屋C15の天井62に設けられている。
吹出グリル(吸気部)18a、18b、18c、18dには、2階用送風ダクト19a、19b、19c、19dの一端がそれぞれ接続されている。なお、吹出グリル18a、18b、18c、18dは、天井62に代えて床に設けてもよい。吹出グリル18a、18b、18c、18dを床に設ける場合には、2階用送風ダクト19a、19b、19c、19dは2階の床下に配設する。
【0012】
図3は本実施の形態における空調システムの建物の2階の階段室部分の拡大平面図、
図4は
図2のA-A断面図、
図5は
図2のB-B断面図である。
【0013】
図3〜
図5に示すように、階段室12は、階段8の側壁20と階段8を1階から上がったところの壁A21、2階の各部屋A13、B14、C15との間の仕切壁22、及び壁A21に対向して設けられた壁B23とで囲われている。壁A21と壁B23の間隔は約3.8mであり、階段8及び廊下11の幅は約0.9mである。なお、建築設計図面における柱の中心寸法を用い、壁の厚みを考慮しない寸法を記載したため、寸法に“約”を追記している。以下の寸法表示でも同様である。
廊下11の階段8側には手摺24が取り付けられている。手摺24は、横桟25と縦桟26とで構成されている。縦桟26と縦桟26との間は、スリット27になっている。階段8の1階空間側にも同様の手摺28が取り付けられている。
【0014】
階段室12の壁B23の上方には、側壁20に寄せて、空調システム29の空調機(空調部)30aが設置されている。この空調機30aは、冷媒と空気の熱交換を行う熱交換器(図示せず)と空調送風機(図示せず)が一体の筐体に収められ、圧縮機(図示せず)を搭載した室外機(図示せず)と冷媒配管(図示せず)及び信号線(図示せず)で接続されるセパレート型のエアコンディショナーの壁掛型室内機である。この空調機30aには空詞風量として、強風、中風、弱風のように室内機の送風量と空調の設定温度を16℃から30℃の間で設定する機能がある。また、室内機には吸込空気温度センサー(図示せず)を有し、吸込空気温度が設定温度に早く近づくように、吸込空気温度と設定温度により、圧縮機(図示せず)のインバーター駆動周波数と電動膨張弁(図示せず)と室外送風機(図示せず)を制御し、熱交換器(図示せず)に流入する冷媒のエンタルピーや循環量を調節して、空調機30aの空調能力を制御する。空調機30aの上面31には、吸込気流32aが吸入される吸入口を設けている。また、空調機30aの前面下部には、吹出気流33aを吹き出す吹出口を設けている。吹出口には、上下方向風向制御板34を設けている。上下方向風向制御板34は、吹出気流33aを略水平方向に吹き出すように設定する。ここで、略水平方向とは、水平方向から15度以内の下向きを含む。また、吹出口には、水平方向風向制御板(図示せず)を設けている。水平方向風向制御板は、吹出気流33aを側壁20と略並行に壁A21に向かって吹き出すように設定する。
【0015】
壁B23には、空調システム29の1階用送風機(送風部)40a、40b、40c、40dと2階用送風機(送風部)41a、41b、41c、41dとが取り付けられている。1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dとは空調機30aの下方に配置している。1階用送風機40は4台、2階用送風機41は4台設置され、1台の1階用送風機40には1本の1階用送風ダクト10を接続し、1台の2階用送風機41には1本の2階用送風ダクト19を接続している。
1階用送風機40及び2階用送風機41の内部には、ACモーターよりも省エネで、無段階で回転数をより広範囲で制御可能なDCモーター(直流モーター)65(
図7参照)とシロッコファン42が設けられている。シロッコファン42の回転によって、階段室12から空気を吸い込み、吸い込まれた空気は、1階用送風ダクト10および2階用送風ダクト19内を流れて建物1内の各部屋に吹き出している。階段室12から空気を吸い込むことで、吸込気流43が発生する。吸い込まれた空気は、吹出気流44として1階用送風ダクト10および2階用送風ダクト19内を流れる。
1階用送風機40a、40b、40c、40dと2階用送風機41a、41b、41c、41dは風量調節手段として制御装置80(
図8参照)を備えている。制御装置80は、ファンの回転数を無段階に変えることができる。
DCモーター65は、高効率で耐久性の高いブラシレスDCモーターである。
【0016】
2階の各部屋A13、B14、C15には、階段室12からの入り口となるドア50の下側隙間51とともに、仕切壁22の空調機30aよりも高い天井62付近に排気部52が設けられている。下側隙間51や排気部52には、2階の排出気流53が形成される。1階の各部屋には、階段室12と連通する開口部が設けられている。この開口部が階段室12への排出部55に相当し、この開口部には、1階の排出気流56が形成される。
よって、階段室12は、リビング3、キッチン4、部室A13、部室B14、部室C15で構成される建物1内の複数の部屋から排出された空気が合流するリターン区画となる。すなわち、リターン区画となる階段室12は、リビング3、キッチン4、部室A13、部室B14、及び部室C15と隣接している。
【0017】
リビング3、キッチン4、部室A13、部室B14、及び部室C15それぞれに送風する送風量は、リビング3、キッチン4、部室A13、部室B14、及び部室C15のそれぞれの容積から決定する。そして、リビング3、キッチン4、部室A13、部室B14、及び部室C15へのそれぞれの送風量を合算した合計送風量(以下合計送風量:Vhという)を算出する。決定した送風量から、リビング3、キッチン4、部室A13、部室B14、及び部室C15のそれぞれに送風する送風機の送風能力及び台数を選定する。なお、本実施の形態では、送風用ダクトは送風機の一部を構成する。すなわち、送風機の選定に用いる送風量は、送風用ダクトを経由し吹出グリル(吸気部)から吹き出される送風量である。空調のために必要な送風量は、部屋2.5m
3あたり少なくとも8m
3/h以上、理想的には20m
3/h程度が望ましく、部屋の大きさや日射などの空調負荷に応じて送風量を調整する。
【0018】
空調機30aの空調能力は、建物1についての空調負荷計算によって決定する。
すなわち、空調負荷計算は、壁・窓・天井等からの伝達熱、窓ガラスを透過する日射の輻射熱、在室者からの発生熱と水分、照明や機械器具からの発生熱、取入れ外気や隙間風による熱量や水分を空調負荷として計算する(山田治天,“冷凍および空気調和”,日本,株式会社養賢堂,1975年3月20日,p,240-247)。そして、この負荷計算結果に余裕をもたせ、能力でラインアップされている空調機の中から、建物1全体の空調機30aを選択し、建物1全体を空調する。
空調機30aの最適空調風量(以下最適空調風量:Vqという)は、合計送風量算出ステップで算出した合計送風量:Vhから決定する。
最適空調風量:Vqは、空調空気と排出空気を確実に混合させ、各部屋との温度差が少ない均一な温度の混合空調空気が、送風機40、41で、合計送風量が大風量で送風されるように、合計送風量:Vhの50%以下の風量であり、多くても100%未満の風量であり、空調機30aが空調負荷に対応して能力を発揮できる風量である。
空調機30aは、決定した空調能力を備え、決定した最適空調風量:Vq以下の空調風量を設定できるものを選定する。
なお、空調風量とは、空調部30aの熱交換器(図示せず)を通過する風量であり、大風量で各部屋に混合空調空気を吹出せるように、熱交換器通過による圧力損失を避けるため、熱交換器をバイパスする風路を有する空調部の場合は、バイパス風路の風量は空調風量から除くものとする。
【0019】
本実施の形態では、建物1の床面積は約97.7m2、天井高さは2.5mであり、4kW相当の冷房能力をもつ空調機30aを設置しており、弱風モードでは冷房運転時700m
3/hが還流ファンによって送風される。各室に送風する1階用送風機40、2階用送風機41とも、1台あたりの送風量が中風量で15Om
3/h程度のものを設定する。本実施の形態での建物1内へ送風される合計送風量:Vhは1200m
3/h程度になり、空調機30aの空調風量よりも多い。すなわち、本実施の形態では合計送風量:Vhの58%の風量が空調機30aで設定できる空調風量(弱風モード)として設定している。
送風機40、41の送風量は、各部屋の空調負荷によって、最小100m
3/hから最大250m
3/hまで、無段階で調節可能となっており、送風機40、41が全て最小送風量としても、合計送風量Vhは800m
3/hであり、空調機30aの空調風量700m
3/hより多い。
【0020】
図6は送風機設置部の斜視図、
図7は送風機の斜視分解図、
図8は送風機の電気回路図、
図9は温度設定ユニットの操作部を示す図である。
【0021】
図6に示すように、壁B23には、1階用送風機(送風部)40bが取り付けられ、壁B23内で、1階用送風機40bには1階用送風ダクト10bが接続されている。
以降、送風機40、41の説明については、他の送風機40、41も送風機40bと同様なため、送風機40b以外の送風機40、41の説明は省略し、代表で、送風機40bで説明する。
1階用送風機(送風部)40bは、箱形の本体ケース70と、壁B23の上面から本体ケース70を覆うように、ルーバー71が着脱自在に取り付けられている。
また、ルーバー71には、通気口72が設けられており、壁B23の開口部(図示せず)を介して、階段室12と本体ケース70内、1階用送風ダクト10b内が、空気流路として繋がっている。
【0022】
図7に示すように、ルーバー71が本体ケース70の取付部73と取付ばね74で着脱自在に取り付けられている。
本体ケース70内には、DCモーター65とシロッコファン42が設けられており、シロッコファン42の側方には、電装箱75が設けられ、本体ケース70とルーバー71との間には、オプション取付台76が、電装箱75とリード線77にて接続されて設けられている。
シロッコファン42はDCモーター65の回転によって、ルーバー71から空気を吸い込んで、送風ダクト10bを通って、吹出しグリル9bから、リビング3に吹出す。
オプション取付台76には、複数のオプションユニットである温度センサーユニット78と温度設定ユニット79(温度設定部)が、ルーバー71を外した場合、本体ケース70の前方から、操作及び着脱自在に取り付けられている。
温度センサーユニット78は、送風機40bの吸込み空気の温度を検知するユニットであり、温度設定ユニット79は、送風機40bによって送風ダクト10bを通って、吹出しグリル9bから吹出されるリビング3の温度を設定するユニットである。
なお、一つの部屋に複数の吹出しグリルが設けられ、それらに複数の送風機が接続されている場合は、温度設定ユニット79は、部屋の中の吹出しグリル近辺の位置の温度を設定するユニットとして機能する。
電装箱75の中には、DCモーター65の運転を制御する制御装置80が設けられている。
【0023】
図8の送風機の電気回路図と
図9の温度設定ユニットの操作部により、送風機40bの制御について、説明する。
制御装置80には、送風機40bのDCモーター65の運転を制御する送風制御部81と、送風制御部81に電源を供給する電源部82とが設けられている。
オプション取付台76には、温度センサーユニット78と温度設定ユニット79(温度設定部)を接続するための2つのコネクター88a、88bを備える。これらのコネクター88a、88bは、リード線77により、制御装置80の電源部82および送風制御部81に接続されており、温度センサーユニット78と温度設定ユニット79のコネクター87a、87bを介して、電源部82から温度センサーユニット78、温度設定ユニット79への電源供給が行われるとともに、温度センサーユニット78、温度設定ユニット79から送風制御部81へ情報が入力される。
送風制御部81には、温度センサーユニット78、温度設定ユニット79から入力される情報(検出情報)に基づいて、予め設定されたアルゴリズム(制御ロジック)を用いてDCモーター65の送風風量を演算して決定する演算部83が備えられている。この演算部83が用いるアルゴリズムの詳細については後述する。演算部83で決定した送風風量情報が送風制御部81に入力され、送風制御部81はDCモーター65の回転数を制御する。
【0024】
温度センサーユニット78は、温度センサー85と、温度センサー85の検出動作を制御するユニット制御部84aとコネクター87aとを備える。
温度センサー85は、送風機40bのルーバー71から吸い込む吸込み空気の温度を検知する機能を有しており、例えば、温度の変化を電圧に変換するものが用いられ、抵抗変化型や静電容量変化型などの形式のセンサーが用いられる。
ユニット制御部84aは、温度センサー85よりの検出信号に基づき、DCモーター65にて動作すべき風量を決定するため、送風制御部81に出力する。また、ユニット制御部84aは、温度センサー
85からの出力信号であることを識別できる識別情報を送風制御部81に出力する機能を有している。
【0025】
温度設定ユニット79は、温度設定部86と、温度設定部86の検出動作を制御するユニット制御部84bとコネクター87bとを備える。
図9に示すように、温度設定部86は、送風機40bによって吹出す部屋(リビング3)の温度を設定する操作部89を有しており、操作部89には、回転することにより温度を16℃から30℃まで設定可能なSW90を有する。
このSW90は、設定温度を無段階で設定可能なダイヤル式のスイッチを設けているが、ダイヤル式のスイッチに限らず、切替設定ができればその他様々な構成のものを用いても良い。
ユニット制御部84bは、温度設定部86よりの検出信号に基づき、DCモーター65にて動作すべき風量を決定するため、送風制御部81に出力する。また、ユニット制御部84bは、温度設定部からの出力信号であることを識別できる識別情報を送風制御部81に出力する機能を有している。
【0026】
なお、本実施の形態では、空調部を熱交換器(図示せず)と空調送風機(図示せず)が一体の筐体に収められた空調機30aとして、送風部を送風機40a、40b、40c、40d、41a、41b、41c、41dとして、リターン区画を複数の部屋と隣接した階段室12として説明しているが、リターン区画を複数の部屋と隣接した空調室(図示せず)のような、四方を断熱壁に囲まれた1坪程度の比較的狭い部屋として、そこに、空調機(空調部)と送風機(送風部)を設けてもよい。
また、リターン区画を板金などに囲まれた筐体とし、筐体を複数の部屋に隣接した場所に設け、筐体内に、空調部として、熱交換器だけを設け、送風部として、複数の送風機を設け、複数の送風機により、排出空気を熱交換器に通過することにより空調空気とし、熱交換器をバイパスして通過させない排出空気と空調空気を筐体内で混合させ、混合空調空気として、各部屋に送風してもよい。
【0027】
また、それぞれのオプションユニット78、79が有するコネクター87a、87bと、オプション取付台76のコネクター88a、88bとは、それぞれが接続可能なように共通した形態を有している。
そのため、オプション取付台76のコネクター88a、88bには、複数のオプションユニットより選択された任意のオプションユニットを接続することができる。オプションユニットとしては、温度センサー、湿度センサー、外気温度センサー、二酸化炭素センサー、日射センサー、人感センサー、温度設定部、湿度設定部、センサー設定部等を備えるものが用いられる。また、一度接続されたオプションユニットの接続を解除して、別のオプションユニットを接続することもできる。
【0028】
本実施の形態1では、これらのオプションユニットの中から選択された温度センサーユニット78と温度設定ユニット79とがユニット取付台76に装着された場合を一例としているが、他のオプションユニットが装着される場合であっても良い。
上述の説明では、2個のオプションユニットがユニット取付台76に選択的に装着される場合について説明したが、1個のみ装着される場合や3個以上が装着される場合であっても良い。
また、オプションユニットとオプション取付台76を送風機40bの本体ケース70外の場所(例えば、部屋の天井、窓付近、ダクト内)に設けられるよう、オプション取付台76に接続可能な、オプション取付台と延長リード線とコネクターとカバーから構成されるオプションユニット延長ユニット(図示せず)を設けて、接続してもよい。
また、送風機40bの風量が、無段階に風量を決定する場合を例としたが、多段階の風量に決定する場合であっても良い。
【0029】
上記構成において、空調機30aを温度設定して運転すると、空調機30aの空調送風機(図示せず)が運転し、吸込気流32aの温度を空調機30aの吸込空気温度センサー(図示せず)より検出して、吸込空気温度と設定温度から空調負荷を決定し、室外機(図示せず)の圧縮機(図示せず)のインバーター駆動周波数と電動膨張弁(図示せず)と室外送風機(図示せず)を制御し、熱交換器(図示せず)に流入する冷媒のエンタルピーや循環量を調節して、空調機30aの空調能力を制御する。
熱交換器で冷媒と熱交換された空調空気は空調機30aの吹出気流33aとなり、略水平方向に、そして側壁20と略並行に壁A21に向かって吹き出す。また、1階用送風機40及び2階用送風機41が運転されると、送風機の吸込気流43と吹出気流44が発生する。
【0030】
空調機30aの吹出気流33aの風速3〜5m/Sに対し、送風機の吸込気流43の風速は0.4m/s程度であり、送風機の吸込気流43は、空調機30aの吹出気流33aの風速より遅い。さらに、空調機30aの吹出気流33aは還流ファンで送風されるため気流が遠くまで到達しやすく、シロッコファン42の運転により周囲の空気が吸い込まれて発生する送風機の吸込気流43には吸い込まれにくい。従って、空調機30aの吹出気流33aの大半は、拡散しながら壁A21付近に到達し、反転して階段8に沿って壁B23の方向に戻り、送風量の多い送風機の吸込気流43に合流して混合され、混合空調空気となる。よって、空調機30aからの吹出気流33aの吹出方向を避けて1階用送風機40、2階用送風機41の吸込口を設けると、階段室12内をほぼ循環して拡散していく空調循環気流45が形成され、ショートサーキットが起こりにくくなる。
なお、冷房時よりも暖房時の方が吹出気流33aの比重が軽く上昇しやすいので、吹出気流33aが略水平方向に送風されるように、暖房時の吹出気流33aの方向は、冷房時の吹出気流33aの方向よりも下向きにしておくことが望ましい。
【0031】
建物1の複数の部屋に送風されると、2階の部屋A13、B14、C15からの排出空気の一部は2階の排出気流53として、また1階の各部屋からの排出空気は1階の排出気流56として階段室12に戻る。このとき、排気部52は天井62付近に開口しているので、2階の排出気流53の大半は天井62に沿って空調機30aに向かって流れる空調戻り気流57を形成し、空調機30aの吸込気流32aに合流する。よって、空調機30aは各部屋の温度に近い空気温度を検出して運転制御される。排気部52は階段室12に導通しておればどこに設けても構わないが、階段室12の天井62に近く空調機30aに近いところに設ける方が、排出気流53がより多く空調機30aに吸い込まれ、吸込気流32aの温度が室温に近くなるので、空調機30aを運転するときの設定温度と建物1内の実温度の差が少なく運転制御される。
【0032】
空調循環気流45は反転するまでは排出気流53や吸込気流43に対向して流れ、周囲の空気を巻き込み拡散していく。従って、空調循環気流45の温度は、流れていくにつれて、冷房時は空調機30aの吹出気流33aの温度より上がり、暖房時は吹出気流33aの温度より下がる。
空調循環気流45は、主に階段室12の階段8側に形成され、空調戻り気流57は主に階段室12の2階の廊下11側に形成される。さらに、建物1の部屋に送風される合計送風量が空調風量より多いので、階段室12内では空調機30aの吹出気流33aと、1階の排出気流56と2階の排出気流53とが、しっかりと混合され、混合空調空気となる。そして、混合空調空気を送風機40、41が吸い込んで各部屋に吹出すことで、空調循環気流45の温度と各部屋の温度差はさらに少なくなる。
手摺24また手摺28のスリット27を空気が流通して、この混合を助ける。1階の排出気流56の一部は、階段8と廊下11の境から空調戻り気流57にも合流する。また、廊下11に1階からの気流が合流しやすくするために、建物1の1階と2階を導通する通気スリットを設けてもよい(図示省略)。
【0033】
本実施の形態の空調システムでは、各部屋に吹き出す吹出気流44の温度と各部屋の室温との温度差は、空調機30aの吹出気流33aの温度と各部屋との温度差より少なくなるので、部屋内にいる人は吹出気流44の室温との温度差によるストレスを感じにくくなるので快適性が高まる。
なお、本実施の形態のインバーターで圧縮機の回転数を制御するエアコンでは、室内機の空調風量が一定のときは、空調負荷が少ない場合に吹出温度と室温との差が少なくなるように運転する。よって、空調負荷が少なく、室温が安定している場合には、部屋への送風量を少なくしても快適性は損なわれないので、長時間でなければ、合計送風量:Vhを少なくし、空調風量が合計送風量:Vhの100%以上となっても構わない。
空調機30aと1階用送風機40、2階用送風機41全てが壁B23に設置されていなくてもよい。送風機の一部を階段室12の1階部分に設けることもできるし、仕切り壁22に設けることもできる。
本実施の形態の空調システムでは、空調風量より各部屋への合計送風量:Vhが多いので、各部屋からリターン区画へ戻った排出空気の一部は、空調機3Oaに吸い込まれ、残りの排出空気は空調機30aの吹出空気とリターン区画で十分に混合されて空調され、混合空調空気となって各部屋に戻る。
送風機40、41の風量調整手段で送風量を調節すれば、部屋の空調負荷の変動に送風機40、41ごとに対応することができる。
【0034】
次に、送風機40bの運転動作について、
図10に示す送風機の送風量調節フローチャート1を用いて説明する。
送風機40bの電源部82に電源が印加されると運転を開始し、温度センサーユニット78と温度設定ユニット79では、ユニット制御部84a、84bにおいて、送風機40bの吸込み温度を検出し、部屋の設定温度が認識される。
次に、これらの情報が、演算部83に入力され、演算部83では、認識した設定温度を目標値、検出した送風機の吸込み温度を入力し、送風機により吹出す部屋の空調負荷を決定し、各送風機の送風量(回転数)を操作量としてPID制御を行う。
【0035】
各部屋の空調負荷については、建物1が、高気密高断熱住宅であり、屋外に面している壁の断熱性、気密性が良いため、外気負荷が小さく、隣室等からの侵入熱の影響が最も大きく、又、送風機40、41の大送風量により建物1内が全体的に均一な温度になりやすく、各部屋からの排出空気は、排気部52から直接的にリターン区画である階段室12に入り、各送風機40、41に吸い込まれ、空調風量は合計送風量より少ないため、空調空気と排出空気が混合しても、各部屋の室温と送風機40、41の吸込み温度の温度勾配が少なく、送風機40、41の吸込み空気の温度から各部屋からの排出空気の温度と各部屋の室温を推定し、簡易的に、送風機の吸込み温度と部屋の設定温度の温度差に定数を掛けて求めている。
しかし、より正確に空調負荷を算出するために、オプションユニット延長ユニット(図示せず)を接続して、そのオプション取付台76を、室外温度を検知可能な場所に、例えば、室外空気の給気ダクト内に設け、オプションユニットとして、外気温度センサー(図示せず)を設けて、送風機40、41と信号通信を行い、外気温度情報を演算部83に入力し、外気温度と設定温度との温度差による外気負荷を空調負荷に加えてもよい。
また、各部屋の窓付近に、日射センサー(図示せず)を設けて、送風機40、41と信号通信を行い、窓からの日射量情報を演算部83に入力し、日射負荷を空調負荷に加えたり、各部屋の天井に、人感センサー(図示せず)を設けて、送風機40、41と信号通信を行い、在室者情報を演算部83に入力し、在室者の人体負荷を空調負荷に加えでもよい。
【0036】
決定した送風量(回転数)は、送風制御部81に入力され、DCモーター65を決定した回転数で回転させる。
通常、回転数と送風量は比例関係にあり、送風量が、最小100m
3/hから最大250m
3/hの間になるよう、DCモーター65の回転数を制御する。また、一般的にDCモーター65では、ACモーターと比較して、回転数の最小から最大の制御範囲が広く、回転数と消費電力は比例関係にあり、送風量(回転数)を減少させれば、消費電力も減少するため、特に最小送風量にて、ACモーターと比べて消費電力の差が大きく、5W未満と非常に消費電力が少ない。
【0037】
吸込み温度から推定した室温と設定温度の差が大きく、空調負荷が大きいほど、送風機40、41の送風量を大きくし、送風機40、41が吹出す部屋の室温が設定温度に早く近づく。
例えば、冬季、吸込み温度が30℃で、推定した室温が14℃、設定温度が20℃の場合は、暖房空調負荷が大きいので、送風機40、41の送風量を最大風量の250m
3/hと大きくし、部屋の室温を設定温度20℃に早く近づける。夏季、吸込み温度が23℃で、推定した室温が32℃、設定温度が28℃の場合は、冷房空調負荷が大きいので、送風機40、41の送風量を最大風量の250m
3/hと大きくし、部屋の室温を設定温度28℃に早く近づける。
そして、吸込み温度から推定した室温と設定温度との差が小さく、空調負荷が小さいほど、送風機40、41の送風量を小さくし、設定温度に近づくにつれて、DCモーター65の回転数は減少し、消費電力も減少し、より省エネで、設定温度付近で安定する。
例えば、冬季、吸込み温度が30℃で、推定した室温が14℃、設定温度が16℃の場合は、暖房空調負荷が小さいので、送風機40、41の送風量を最小風量の100m
3/hと小さくし、部屋の室温を設定温度16℃で安定させる。夏季、吸込み温度が23℃で、推定した室温が32℃、設定温度が30℃の場合は、冷房空調負荷が小さいので、送風機40、41の送風量を最小風量の100m
3/hと小さくし、部屋の室温を設定温度30℃で安定させる。
【0038】
このように、階段室12(リターン区画)にて、各部屋の排気部52からの排出空気を空調機30aにて空調した空調空気と空調されていない排出空気が、その空調空気の風量より多い合計送風量の複数の送風機40、41に吸引されることにより、空調空気と排出空気を確実に混合し、室温との差が小さい均一な温度の混合空調空気となり、それを回転数の制御範囲が広く、高効率なDCモーター65を搭載した複数の送風部40、41で吸込み、各部屋の吹出しグリル(吸気部)9a、9b、9c、9dより送風することにより、省エネで家全体を均一な温度にできる。
また、日射量、在室人員等の変化により、部屋毎の空調負荷が変化した場合、送風機40、41のDCモーター65の回転数をより広い範囲で調節することにより、省エネで各部屋への混合空調空気の送風量をより広い範囲で調節し、各部屋の温度、日射量や在室人員等の影響を少なくし、快適空間にすることができる。
また、温度設定ユニット89で、部屋毎に個人の好みの温度に設定可能で、階段室12(リターン区画)にて、各部屋に送風する送風機40、41により、各部屋からの排出空気と空調空気を混合した混合空調空気を、各部屋の吹出しグリル9a、9b、9c、9dから吹出すので、送風機40、41の吸込み空気の温度から各部屋からの排出空気の温度と各部屋の室温を推定し、各部屋の設定温度と送風機40、41の吸込み温度により各部屋の空調負荷を決定し、送風機40、41の送風量を調節するため、省エネで、より早く、より確実に、各部屋を設定温度に近づけ、個人の好みに応じた快適空間にすることができる。
【0039】
さらに、DCモーター65の最小回転数は、送風機の送風量の最小送風量100m3/hとしているので、複数の送風機の最小合計送風量800m3/hでも、空調機30bの空調風量700m3/hより多く、空調空気と排出空気が確実に混合されて、室温との温度差の少ない均一な温度の混合空調空気となって、各送風機に吸い込まれ、各部屋に送風されるため、各部屋は、送風機40、41のDCモーター65の最小回転数での運転により、より省エネで、均一な温度に、空調される。
仮に、送風機40、41が故障等で、一時的に合計送風量が空調風量より少なくなっても、高気密高断熱住宅でもあり、長時間の運転による空調安定時で、建物1内全体として、混合空調空気が循環していれば、1時間等の短時間であれば、各部屋の温度や快適性への影響は少ない。
また、仮に、階段室(リターン区画)12に障害物があってショートサーキットが発生し、十分混合されなかったり、階段室12の窓からの日射により階段室12の位置により温度差が生じたりするなど、複数の送風機40、41の吸込み空気の温度に大きなバラツキがあった場合でも、それぞれの吸込み温度に応じて、送風量を調節するため、結果的に、各部屋の温度は設定温度に
早く近づく。
不在時や、空調開始の部屋の温度が安定していない時には、送風量の調整開始時の送風量を最大風量からとすると、各部屋が設定温度に早く近づき、在室時や、長時間運転により部屋の温度が安定している時は、送風量の調整開始時の送風量を最小風量からとすると、ドラフト感を感じにくい送風となり、好適である。
【0040】
また、別途、風量設定SW(図示せず)を送風機に接続し、個人の好みで、送風機の送風量をその風量設定SWで設定可能としてもよく、風量設定SW(図示せず)を自動に設定した場合に、上記のフローで運転制御してもよい。
また、本実施の形態では、送風機の吸込み温度から、部屋の室温を推定し、吸込み温度と部屋の設定温度で、部屋の空調負荷を決定したが、オプションユニットとして、湿度センサー(図示せず)と湿度設定部(図示せず)を追加して、送風機の吸込み湿度を検知し、部屋の湿度を推定し、部屋の設定湿度を認識して、送風機の吸込み温度と吸込み湿度と部屋の設定温度と設定湿度で、特に夏季冷房時に、部屋の空調負荷を決定してもよい。
【0041】
(実施の形態2)
図11は本発明の実施の形態2における空調システムの構成図、
図12は送風機の送風量調節フローチャート2、
図13は送風機の送風量調節フローチャート3、
図14は空調機の設定温度調節フローチャートである。
【0042】
図11に示す空調システム100は、建物101に設けられ、実施の形態1の建物1に設けられた空調システム29と基本的な構成は同じで、説明の簡単化のため、同じ構成要素には同じ番号を付与し、一部の構成要素は省略している。つまり、
図11では、空調システム100と建物101は、4つの部屋を有し、それらの部屋を空調しているが、部屋数、送風機数などの構成はこの建物101のものに限定されない。
建物101の1階のリビング3、キッチン4の天井には、1階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)9a、9cが設けられている。吹出グリル9a、9cには、1階用送風ダクト10a、10cの一端がそれぞれ接続されている。
【0043】
建物101の2階の部屋A13、部屋B14は、階段室12に隣接して配置され、部屋A13と部屋B14の天井には、2階の室内に送風する吹出グリル(吸気部)18a、18cが設けられている。吹出グリル18a、18cには、2階用送風ダクト19a、19cの一端がそれぞれ接続されている。
リターン区画である階段室12には、空調システム100の空調機(空調部)30aと1階用送風機(送風部)40a、40cと2階用送風機(送風部)41a、41cが設けられている。
1階用送風ダクト10a、10cと2階用送風ダクト19a、19cの他端には、1階用送風機40a、40cと2階用送風機41a、41cとが取り付けられている。
【0044】
リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14には、それぞれ、空調システム100の操作が各部屋で可能なリモコン110、111、112、113が設けられ、リターン区画である階段室12には、リモコン110、111、112、113、空調機30a、及び送風機40a、40c、41a、41cと電気的に繋がった集中リモコン115が設けられ、階段室12で、各部屋の設定操作が可能である。
リモコン110、111、112、113、集中リモコン115には、温度センサー120、121、122、123、125を有し、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14及び階段室12の室温を検出する。
また、リモコン110、111、112、113、集中リモコン115には、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14及び階段室12の温度を設定するSW130、131、132、133、135を有しており、回転することにより温度を16℃から30℃まで設定可能である。
リモコン110、111、112、113と集中リモコン115は、信号線140、141、142、143で繋げられ、リモコンの温度センサー120、121、122、123で検知された室温とSW130、131、132、133で設定された設定温度の情報を通信する。
また、集中リモコン115と空調機30a、送風機40a、40c、41a、41cは、信号線145、146、147、148、149で繋げられ、空調機30aの設定温度と送風量、送風機40a、40c、41a、41cの送風量を通信により調節する。
集中リモコン115では、表示部150で、リモコン110、111、112、113及び集中リモコン115自らの設定温度や室温を通信により確認でき、SW135により、リモコン110、111、112、113の設定温度を通信により変更することが可能となっている。
【0045】
上記構成において、集中リモコン115にて、階段室12の温度を設定し、リモコン110、111、112、113にて、部屋の温度を設定して運転すると、空調機30aは、排出空気を吸い込んで、冷房または暖房の空調運転を行い、空調空気を吹出す。そして、空調空気は階段室12で、他の排出空気と混合して、混合空調空気となって、送風機40a、40c、41a、41cのDCモーター65の回転により吸い込まれ、1階用送風ダクト10a、10c、2階用送風ダクト19a、19cを通って、吹出グリル9a、9c、18a、18cから、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14に吹出して、それぞれ空調し、排出空気となって、リターン区画である階段室12に戻る。
実施の形態1と同じく、複数の送風機の合計送風量は、空調機30aの空調風量より多く、空調空気と排出空気が確実に混合されて、室温との温度差の少ない均一な温度の混合空調空気となって、各送風機に吸い込まれ、各部屋に送風されるため、各部屋は、省エネで、均一な温度に、空調される。
【0046】
次に、送風機の運転動作について、
図12に示す送風機の送風量調節フローチャート2を用いて説明する。
送風機に電源が印加されると運転を開始し、リモコン110、111、112、113に設けられた温度センサー120、121、122、123で、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14の室温を検出する。
また、リモコン110、111、112、113のSW130、131、132、133により、設定されたリビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14の設定温度を認識する。
そして、各部屋の室温と設定温度の情報は、信号線140、141、142、143で、集中リモコン115に通信し、集中リモコン115の制御部(図示せず)では、それに基づいて、各部屋の空調負荷を決定し、各送風機の送風量(回転数)を操作量としてPID制御を行う。
【0047】
各部屋の空調負荷については、建物101が、高気密高断熱住宅であり、屋外に面している壁の断熱性、気密性が良いため、外気負荷が小さく、隣室等からの侵入熱の影響が最も大きいとして、簡易的に、部屋の室温と設定温度の温度差に定数を掛けて求めている。
本実施の形態2では、リモコン110、111、112、113に設けられた温度センサー120、121、122、123で、リビング3、キッチン4、部屋A13、部屋B14の室温を検出し、SW130、131、132、133により、各部屋の設定温度を認識して、集中リモコン115で、各部屋の空調負荷を決定し、各送風機の送風量を調節しているが、実施の形態1と同じく、送風機40、41のオプション取付台76に、オプションユニット延長ユニット(図示せず)を接続して、そのオプション取付台76を、各部屋の室温検知が可能な場所、例えば、各部屋のドア付近や排気部52付近に設け、それに温度センサーユニット78と温度設定ユニット79を接続し、送風機40、41と信号通信を行い、室温と設定温度の情報を演算部83に入力し、各部屋の室温と設定温度の温度差に定数を掛けて、各部屋の空調負荷を求めてもよい。その場合は、リモコン110、111、112、113と集中リモコン115は不要となる。
また、より正確に空調負荷を算出するために、外気温度センサー(図示せず)を設けて、集中リモコン115に外気温度情報を入力し、外気温度と設定温度との温度差による外気負荷を空調負荷に加えたり、各部屋に日射センサー(図示せず)を設けて、集中リモコン115に窓からの日射量情報を入力し、日射負荷を空調負荷に加えたり、各部屋に人感センサー(図示せず)を設けて、集中リモコン115に在室者情報を入力し、在室者の人体負荷を空調負荷に加えたりしてもよい。
【0048】
決定した送風量(回転数)は、信号線146、147、148、149で、各送風機40、41の送風制御部(図示せず)に入力され、DCモーター65を決定した回転数で回転させる。
各部屋の室温と設定温度により、各部屋の空調負荷を決定し、DCモーター65の回転数を制御し、送風機40、41の送風量をPID制御するため、室温と設定温度の差が大きく、空調負荷が大きいほど、送風機40、41の送風量を大きくし、送風機40、41が吹出す部屋の室温が設定温度に早く近づく。
例えば、冬季、室温が14℃で、設定温度が20℃の場合は、暖房空調負荷が大きいので、送風機40の送風量を最大風量の250m
3/hと大きくし、部屋の温度を設定温度20℃に早く近づける。夏季、室温が32℃で、設定温度が28℃の場合は、冷房空調負荷が大きいので、送風機40、41の送風量を最大風量の250m
3/hと大きくし、部屋の温度を設定温度28℃に早く近づける。
そして、室温と設定温度との差が小さく、空調負荷が小さいほど、送風機40、41の送風量を小さくし、設定温度に近づくにつれて、DCモーター65の回転数は減少し、消費電力も減少し、より省エネで、設定温度付近で安定する。
例えば、冬季、室温が14℃で、設定温度が16℃の場合は、暖房空調負荷が小さいので、送風機40、41の送風量を最小風量の100m
3/hと小さくし、部屋の温度を設定温度16℃で安定させる。夏季、室温が32℃で、設定温度が30℃の場合は、冷房空調負荷が小さいので、送風機40、41の送風量を最小風量の100m
3/hと小さくし、部屋の温度を設定温度30℃で安定させる。
これにより、各部屋の室温から、各部屋の空調負荷をより正確に判定でき、省エネで、より早く、より確実に、各部屋を設定温度にし、個人の好みに応じた快適空間にすることができる。
【0049】
次に、その他の送風機の運転動作について、
図13に示す送風機の送風量フローチャート3を用いて説明する。
送風機40、41の送風量(回転数)をPID制御中に、部屋の室温を検出し、部屋の設定温度を認識し、暖房時では、部屋の室温が設定温度より高く、室温の上昇率が高い場合、冷房時では、部屋の室温が設定温度より低く、室温の下降率が高い場合、送風機40、41の送風量を最大風量とする。そうでない場合は、送風機40、41の送風量(回転数)のPID制御を継続する。
【0050】
例えば、冬季、室温が26℃で、設定温度が20℃で、室温の上昇率が10分間で2K以上の場合は、送風機40、41の送風量を最大風量の250m
3/hとする。日射量が増えた又は、他の暖房機を運転したなどの何らかの理由で、一部の部屋の温度が急に上昇し、設定温度以上となった場合は、その熱量を回収して、他の部屋の暖房に使用するため、送風機40、41の送風量を最大として、その部屋の空気をリターン区画に早く大量に戻して、各部屋に送風することにより、他の部屋を省エネで暖房できる。そうでない場合は、
図12に示す送風機の送風量調節フローチャート2に基づいてPID制御される。
夏季、室温が24℃で、設定温度が28℃で、室温の下降率が10分間で1K以上の場合は、送風機40、41の送風量を最大風量の250m
3/hとする。他の空調機を運転したなどの何らかの理由で、一部の部屋の温度が急に下降し、設定温度以下となった場合は、その熱量を回収して、他の部屋の冷房に使用するため、送風機40、41の送風量を最大として、その部屋の空気をリターン区画に早く大量に戻して、各部屋に送風することにより、他の部屋を省エネで冷房できる。そうでない場合は、
図12に示す送風機の送風量調節フローチャート2に基づいてPID制御される。
【0051】
次に、空調機30aの運転動作について、
図14に示す空調機の設定温度調節フローチャートを用いて説明する。
空調機30aに電源が印加されると運転を開始し、集中リモコン115に設けられた温度センサー125で、リターン区画である階段室12の室温を検出する。
また、集中リモコン115のSW135により、設定されたリターン区画である階段室12の設定温度を認識する。
そして、集中リモコン115の制御部(図示せず)では、それに基づいて、リターン区画である階段室12の空調負荷を決定し、空調機30a設定温度を操作量としてPID制御を行う。
【0052】
階段室12の空調負荷については、建物101が、高気密高断熱住宅であり、屋外に面している壁の断熱性、気密性が良いため、外気負荷が小さく、隣室等からの侵入熱の影響が最も大きいとして、簡易的に、階段室12の室温と設定温度の温度差に定数を掛けて求めている。
しかし、より正確に空調負荷を算出するために、外気温度センサー(図示せず)を設けて、集中リモコン115と信号通信を行い、外気温度情報を入力し、外気温度と設定温度との温度差による外気負荷を空調負荷に加えたり、階段室12に日射センサー(図示せず)を設けて、集中リモコン115と信号通信を行い、窓からの日射量情報を入力し、日射負荷を空調負荷に加えてもよい。
【0053】
決定した設定温度は、空調機30aの空調制御部(図示せず)に入力され、吸込空気温度情報と共に、圧縮機(図示せず)、電動膨張弁(図示せず)等を制御し、空調能力を制御する。通常、吸込空気温度と設定温度の差は、空調能力と比例関係となる。
例えば、冬季、階段室12の室温が14℃で、設定温度が20℃の場合は、暖房空調負荷が大きいので、空調機30aの設定温度を26℃と高くし、階段室12の室温を設定温度20℃に早く近づける。夏季、階段室12の室温が32℃で、設定温度が28℃の場合は、冷房空調負荷が大きいので、空調機30aの設定温度を20℃と低くし、階段室12の室温を設定温度28℃に早く近づける。
そして、階段室12の室温と設定温度との差が小さく、空調負荷が小さくなるほど、空調機30aの吸込空気温度も設定温度に近づき、空調機30aの圧縮機等の消費電力も減少し、より省エネで、設定温度付近で安定する。
例えば、冬季、階段室12の室温が14℃で、設定温度が16℃の場合は、暖房空調負荷が小さいので、空調機30aの設定温度を22℃と低くし、階段室12の室温を設定温度16℃で安定させる。夏季、階段室12の室温が32℃で、設定温度が30℃の場合は、冷房空調負荷が小さいので、空調機30aの設定温度を22℃と高くし、階段室12の室温を設定温度30℃で安定させる。
【0054】
階段室12(リターン区画)の室温と設定温度により、階段室12(リターン区画)の空調負荷を決定し、空調機30aの設定温度をPID制御するため、結果的に、空調機30aの空調能力が制御され、階段室12(リターン区画)の室温が設定温度に早く近づく。階段室12(リターン区画)の温度は、各部屋で空調した後の排出空気と空調空気の合流した混合空調空気の平均的温度のため、各部屋の空調負荷が大きい場合などは、冷房時はより高い温度、暖房時はより低い温度となり、空調機30aの設定温度によっては、空調能力が不足して、階段室12(リターン区画)の設定温度に近づかない。そういった場合に、階段室12(リターン区画)の室温をより早く、確実に設定温度に近づけ、各部屋の室温も設定温度に早く、確実に近づく。安定時には、空調機30aの必要空調能力も下がり、圧縮機及びDCモーター65の回転数は減少し、消費電力も減少し、より省エネで、設定温度付近で安定する。
このように、空調機30aと送風機40、41に吸い込まれる階段室12(リターン区画)の空気の温度と設定温度から、階段室12(リターン区画)の空調負荷を、早く、正確に判定し、空調機30aの設定温度を調節することにより、空調機30aの能力が調節され、送風機40、41の吸込み温度も調節されるので、送風機40、41の送風量を調節しても、部屋の空調負荷に対応できず、個人の好みの温度にできない場合、より早く、より確実に、各部屋を設定温度にし、個人の好みに応じた快適空間にすることができる。又、部屋の空調負荷に十分対応でき、部屋を個人の好みの温度にできる場合でも、より省エネで、個人の好みの温度に安定させることができる。
【0055】
送風機40、41の送風量調整フローと空調機30aの設定温度調節フローのタイミング(時間)は、あくまでも送風量調整フローを頻繁に行い、時々、設定温度調節フローを行う。空調機30aの設定温度を頻繁に調節すると、家全体の送風量に及ぶため、消費電力が増えるのを防止するためである。
タイミング(時間)の例としては、下記の1〜4があるが、いずれにせよ、実際の最適タイミング(時間)は、建物の空調負荷と空調機の能力、送風機の送風量等によって異なるため、集中リモコン115、リモコン110、111、112、113又は、送風機40、41にタイミングSWを設けて、タイミングSWにてタイミング(時間)を変更できる構造がよい。
1.送風機40、41の送風量調整フローは5分毎に行い、空調機30aの設定温度調節フローは1時間毎に行う。
2.空調立ち上げ24時間以内は1とし、それ以降は、送風機40、41の送風量調整フローは10分毎に行い、空調機30aの設定温度調節フローは2時間毎に行う。
3.送風機40、41の送風量調整フローは5分毎に行い、各部屋の室温と設定温度との差がある閾値以上での時間が1時間以上継続した場合、空調機30aの設定温度調節フローを開始し、以降、閾値未満になるまで、10分毎に行う。
4.空調立ち上げ24時間以内は3とし、それ以降は、送風機40、41の送風量調整フローは10分毎に行い、各部屋の室温と設定温度との差がある閾値以上での時間が1時間以上継続した場合、空調機30aの設定温度調節フローを開始し、以降、閾値未満になるまで、20分毎に行う。
【0056】
本実施の形態では、集中リモコン115から空調機30aの設定温度と送風量、送風機40a、40c、41a、41cの送風量を制御しているが、集中リモコン115を設けず、リモコン110、111、112、113から直接制御しても構わない。また、逆に、リモコン110、111、112、113を設けず、各部屋に室温を検知する温度センサーを別途設けて、その信号を集中リモコン115と通信し、集中リモコン115で、各部屋の設定温度を設定し、空調機30aと送風機40a、40c、41a、41cを制御してもよい。
また、集中リモコン115とリモコン110、111、112、113との通信は、信号線140、141、142、143で、集中リモコン115と送風機40a、40c、41a、41cとの通信は、信号線146、147、148、149で、集中リモコン115と空調機30aとの通信は、信号線145で、有線方式で行っているが、それぞれに無線通信部を設けて、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)、赤外線などの無線方式で行っても構わない。
【0057】
(実施の形態3)
図15は本発明の実施の形態3における空調システムの制御システム図である。
図15示す空調システム160は、建物161に設けられ、実施の形態1の建物1に設けられた空調システム29と建物101に設けられた空調システム100と基本的な構成は同じで、説明の簡単化のため、同じ構成要素には同じ番号を付与し、一部の構成要素は省略している。
【0058】
建物161内のリターン区画(図示せず)には、空調システム160の空調機(空調部)30aと1階用送風機(送風部)40a、40cと2階用送風機(送風部)41a、41cが設けられ、キッチン(図示せず)には、レンジフード162が、浴室には暖房乾燥換気扇163等の換気機器が設けられ、それらの運転情報を入力し、運転情報を出力することにより運転制御可能なHEMS(Home Energy Management System)リモコン164と、通信線165で接続されている。
【0059】
建物161には、リビング(図示せず)、キッチン(図示せず)、部屋A(図示せず)、部屋B(図示せず)の4つの部屋があり、各部屋には、送風機40a、40c、41a、41cと繋がったダクト(図示せず)を通して、混合空調空気を吹出す吹出グリル(図示せず)と、各部屋の室温を検知する温度センサー175、176、177、178を有する。
また、リターン区画(図示せず)に、リターン区画の室温を検知する温度センサー179を有する。
HEMSリモコン164は、温度センサー175、176、177、178、179と通信線165と繋がれ、各部屋及びリターン区画の室温情報を入力している。
HEMSリモコン164は、各部屋及びリターン区画の温度設定手段(図示せず)を備える。
また、HEMSリモコン164は、通信機(通信手段)166を備え、通信機166は公衆回線168と接続され、建物外部との情報通信、例えば、通信装置(スマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット、カーナビ等)169、サーバー170と、運転情報の入出力などの情報通信が可能となっている。
また、通信機166と無線方式で繋がれた、対話での音声認識によるAIアシスタント機能を有するAIスピーカー(通信装置)167を有し、公衆回線168を通して、外部のサーバー170と繋がって、HEMSリモコン164と運転情報の入出力など、音声での情報通信が可能となっている。
【0060】
上記構成において、HEMSリモコン164の温度設定手段(図示せず)にて、リターン区画及び各部屋の温度を設定して、空調機30a、送風機40a、40c、41a、41cを運転すると、実施の形態2と同様に、温度センサー175、176、177、178、179からのリターン区画及び各部屋の室温情報と温度設定手段(図示せず)による設定温度により、リターン区画及び各部屋の空調負荷を決定し、空調機30aの設定温度を調節し、送風機40a、40c、41a、41cの送風量を調節し、各部屋の室温を個人の好みに合った設定温度に早く、確実に近づける。
また、AIスピーカー(通信装置)167で、音声で、各部屋及びリターン区画の設定温度を変更するなど、その都度HEMSリモコン164を操作しなくても、利便性良く、快適性を高めることも可能である。
【0061】
さらに、屋外から、携帯電話等の通信装置169からの指示で、不在時は、省エネのために、各部屋及びリターン区画の設定温度を変更し、帰宅時に、個人の好みに合った室温に安定させておくことも可能である。
これにより、建物の内部及び外部の通信装置169から各部屋の温度設定が可能となり、建物内でも近くに温度設定手段がない場合や外出中に部屋を個人の好みに応じた快適空間にすることができ、利便性が高くなる。
さらにまた、外部のサーバー170とデータを通信して、地域の電力事情や天候等に応じて、各部屋及びリターン区画の設定温度を変更し、地域として安定した電力で、個人としては省エネで、快適な運転に制御可能である。
【0062】
本実施の形態では、各部屋及びリターン区画の設定温度の指示だけ記載しているが、設定温度だけでなく、空調機及び送風機の運転/停止、運転モード、風量、風向等の指示、変更も可能である。
また、HEMSリモコン164と各部屋の室温を検出する温度センサー(図示せず)以外に、外気温度を検出する外気温度センサー(図示せず)と各部屋の日射量を検知する日射センサー(図示せず)と各部屋の人の存在を検知する人感センサー(図示せず)も接続し、HEMSリモコン164で、各部屋の設定温度と室温と外気温度と日射量と在室人数で、各部屋の空調負荷を決定し、送風機40a、40c、41a、41cの送風量を調節してもよい。
さらに、HEMSリモコン164とリターン区画の室温を検出する温度センサー(図示せず)以外に、外気温度を検出する外気温度センサー(図示せず)と日射量を検知する日射センサー(図示せず)も接続し、HEMSリモコン164で、リターン区画の設定温度と室温と外気温度と日射量で、リターン区画の空調負荷を決定し、空調機の設定温度を調節してもよい。
さらにまた、HEMSリモコン164に、IHコンロ、照明機器等の家電機器を接続し、運転操作可能としてもよい。
そして、HEMSリモコン164と太陽電池、蓄電池、パワーコンディショナー、電力計測装置等と接続し、各機器の消費電力、太陽電池の発電量、蓄電池の蓄電力量等によって、より省エネルギーで効率的に各機器を運転制御するようにしてもよい。
そしてさらに、通信方式については、有線でも無線でもよい。
建物に、複数の部屋13、14、15に隣接するリターン区画を形成し、部屋13、14、15には、DCモーター65を搭載した送風部40a、40b、40c、40dから送られる空気を吹き出す吸気部18a、18b、18c、18dを設け、部屋13、14、15とリターン区画との間には、部屋13、14、15からリターン区画に向けた排出気流を形成する排気部52を設け、リターン区画に、複数の送風部40a、40b、40c、40dと少なくとも1台の空調部30aとを設置し、複数の送風部40a、40b、40c、40dの合計送風量が空調部30aの空調風量よりも多く、部屋13、14、15の空調負荷によって、送風部40a、40b、40c、40dの送風量を調節することで、比較的シンプルな構成のシステムで、省エネで、家全体を快適で均一な温度にしながら、必要であれば、部屋13、14、15毎に温度を変更することや、日射などによる負荷変化に対応できる空調システム29を提供する。